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シナリオ詳細

強火女子達の花嫁修業 ~妻として、家を守れ~

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●花嫁修業の誘い
「ユメーミルさん。一緒に、花嫁修業しない……?」
「花嫁修業? 考えたことはなかったけど、いいかもしれないねえ。
 その修行が終われば、きっとアタシも幸せな結婚が……」
 六月某日のギルド・ローレット。フラーゴラ・トラモント(p3p008825)、ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)、澄恋(p3p009412)の三人はユメーミル・ヒモーテ(p3n000203)に花嫁修業の誘いに来ていた。この四人には、特定の相手の有無は別として、幸せな結婚を強く望んでいると言う共通点が存在している。
 フラーゴラの出した花嫁修業というキーワードに、ユメーミルは修行をクリアした後を妄想して一人の世界に入った。
「も、戻ってきて下さい、ユメーミル様」
「……はっ!? ところで、何で急に花嫁修業なんだい?」
「混沌にはジューンブライドはないみたいっすけど、あたしのいた世界では、六月はJuno(ジュノ)って結婚を司る女神が守護する月なんっす。その話を先輩達にしたら……」
「そんな由緒ある月なら、花嫁修業をするしかないでしょう!!」
「と、こんな感じに盛り上がってっすね……」
「六月がそんな月だったなんて……それは確かに、花嫁修業をやるしかないね!」
 澄恋の呼びかけに我に返ったユメーミルが花嫁修業を思い至った理由を尋ねると、ウルズが澄恋に割り込まれながらもその経緯を説明した。説明を受けたユメーミルの反応に、ウルズはこの人も先輩達と同じだったかと言う顔をする。
「……だけど、花嫁修業って一体何をするんだい?」
「みっちりトレーニングして鍛える、とかかな……」
「魔物を狩ってレベルアップもいいですね」
「いや、花嫁修業って、そう言うのじゃなくてっすね……まぁ、いっか」
 そして四人の話題は、花嫁修業で何をするかに移っていく。ただ、混沌出身のユメーミル、フラーゴラ、澄恋と異世界出身のウルズとでは、花嫁修業の概念にも大きな隔たりがあるようだった。

●幻想北方、バシータ領主居館
「……で、それが如何してこんなことになるんだ?」
 目の前に訪れた客を前にして、ウィルヘルミナ=スマラクト=パラディース(p3n000144)は頭を抱えた。突然ローレットの情報屋から、居館を花嫁修業のための演習場として貸して欲しい、ついでに夫の役をやって欲しいなどと言われれば、そうもなろう。
「いやあ、花嫁修業をするのにちょうどいい場所が他に思いつかなくてですね」
 ウィルヘルミナの問いに、羽田羅 勘蔵(p3n000126)がいけしゃあしゃあと答える。
 ――フラーゴラ、ウルズ、澄恋、ユメーミルの四人が花嫁修業で何をするかは、けっきょくその場では決まらなかった。その後、花嫁修業の内容についてユメーミルに相談された勘蔵は、「私にいい考えがあります」と答えると、ウィルヘルミナの元に赴いた。
 何故なら、勘蔵の考えた花嫁修業の内容は、夫と家に見立てたウィルヘルミナとその居館を、盗賊に見立てたユメーミルの元部下達から守ると言う演習だったからだ。
 勘蔵自身は本来の意味での花嫁修業を知っていたが、ユメーミルの挙げてくる花嫁修業の内容があまりに物理方面に偏っているものだから、悪戯心を起こしてそちらに乗っかったのである。
 ウィルヘルミナからすればいい迷惑だが、頻繁に起こる領内のトラブル解決にイレギュラーズ達の力をしばしば借りており、その窓口である勘蔵を無碍には出来なかった。故に、ウィルヘルミナは皮肉っぽく難色を示しながらも、勘蔵の要請を受けることにした。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。リクエスト、ありがとうございます。花嫁修業、どんな内容にしようかあれこれ迷いましたが、こんな内容となりました。
 この演習を成功させ、自分達には夫や家を守れるだけの花嫁力があると証明して下さい。

●成功条件
 盗賊(に見立てたユメーミルの元部下達)の撃退

●失敗条件
 以下の何れかの発生
 ウィルヘルミナが攻撃を受ける(=夫の死亡扱い)
 財物ポイント(後述)を50%以上奪われる

●特殊ルール
 このシナリオは夜に家で休んでいる状態を想定しての演習となっているため、一部の例外を除き武器、防具、携行品はリプレイ上では持っていたり使っているものとしては描写されません。
 一部の例外とは、自身の肉体に付随するもの(拳だとか、身体に刻印された魔術紋だとか)、もしくは、普段から枕元などに置いていて、起き抜けでもすぐに手に取れる様なものを指します。
 なお、包丁や鍋の蓋、モップなど家庭に普通にあるものを探して持ってきた場合は、描写の対象となります。
 ただし、以上はあくまで描写上の問題ですので、データ上は例外以外の装備を装備していても、何らペナルティーなどは発生しません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 ウィルヘルミナの居館。2階建て。
 時間帯は夜。天候は曇天。
 暗視、もしくはそれに類するスキルやアイテムが無い場合、命中と回避にペナルティーが発生します。
 なお、ランタン等は探せば見つけることは出来ます。

●初期状況
 ウィルヘルミナの執務室で、寝袋にくるまって寝ている(起きててもいいのですが、少なくとも横になっている必要はあります)ところからのスタートとなります。
 事前準備等は、建物の構造を把握するのと、財物の位置を確認しておくこと以外、一切不可能です。

●盗賊(に見立てたユメーミルの元部下達) ✕約30
 今回の演習で相手役を務める、ユメーミルの元部下達です。敬愛する姐御のためにと、演習での敵役を買って出てくれました。
 一撃は大きくありませんが、命中回避に長けている、スピードタイプです。なお、イレギュラーズが相手と言うことで、身体強化の魔法がかけられていますので、それなりに手強い相手になっています。この魔法を【ブレイク】することは出来ません。

●ウィルヘルミナ
 今回の演習での夫役です。今回の演習ではただのかよわい夫ですので、一撃でも盗賊からの攻撃が命中した場合、死亡扱いとして演習は失敗となります。
 演習開始時は、執務室の奥の寝室で寝ています。

●財物ポイント
 盗賊が相手となれば、館の中の財産を持って行かれるかも知れません。しかし、いくら演習とは言え、実際にウィルヘルミナの居館の財産を持っていかせるわけには行きません。
 そこで、この演習では館の中に、財産に見立てた紙が置かれています。紙には見立てた財産の価値に応じたポイントが記されており、この紙が盗賊役に持ち去られるとポイントに応じた財産が奪われたという扱いになります。
 館に用意された財物ポイントのうち、50%以上を館の外まで持って行かれると演習は失敗となります。
 なお、財物の傾向として1階はポイントは少ないけれど数は多く、2階は数は少ないけれどポイントは多くなっています。1階と2階とのポイントの比は、1:1とします。

●ウィルヘルミナの居館
 今回の演習の演習場です。2階建てであり、保護結界は予めかけられています。
 1階には玄関ホール、会食場、炊事場、洗濯場などがあります。
 2階には執務室、寝室、倉庫などがあります。
 入口は玄関と裏口ですが、窓から侵入される可能性は十二分にあります。

●同行NPC:ユメーミル・ヒモーテ(p3n000203)
 ローレットの情報屋見習いです。皆さんと一緒に、演習に参加します。
 今回は装備が無い状態となりますので、能力は高くもなければ特徴も無い、ややパワー型の前衛と言った程度となります。
 行動に関しては、皆さんの指示があればそれに従います。特になければ、GM判断で適当に動きます。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • 強火女子達の花嫁修業 ~妻として、家を守れ~完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月02日 22時05分
  • 参加人数6/6人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

咲々宮 幻介(p3p001387)
刀身不屈
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと
※参加確定済み※
ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)
母になった狼
※参加確定済み※
耀 澄恋(p3p009412)
六道の底からあなたを想う
※参加確定済み※
アリス・アド・アイトエム(p3p009742)
泡沫の胸
皿倉 咲良(p3p009816)
正義の味方

サポートNPC一覧(1人)

ユメーミル・ヒモーテ(p3n000203)
夢見る非モテ

リプレイ

●夫を護れる花嫁たらん
(花嫁、修業……? えっ、花嫁修業ってこんなので御座ったっけ……拙者の知ってるものと違うので御座るが???)
 『バシータ領主』ウィルヘルミナ=スマラクト=パラディース(p3n000144)の執務室に用意された寝袋にくるまりながら、『傷跡を分かつ』咲々宮 幻介(p3p001387)は困惑していた。
 既に灯りは消され、盗賊役がウィルヘルミナの居館に侵入するのを待つばかりとなっている。何故なら、夫と財産に見立てたウィルヘルミナと館の中の紙を、盗賊役の手から守ると言うのが今回の花嫁修業の内容だからだ。
(確かに、混沌は物騒で御座るし……ある程度は戦う力が無ければ危険という意味では、花嫁修業と言えなくもないか?)
 花嫁には夫や家を守れる「花嫁力」が必要であり、その「花嫁力」があると証明するのが今回の花嫁修業と言う理屈は、混沌で幾多もの依頼を受けて敵と対峙してきた幻介からすればわからないではない。
 それにしても、と幻介は思う。
(よくもまあこうまで色物……もとい、我の強い女子ばかり集まったもので御座るな?
 ウルズや澄恋、フラーゴラみたいな爆弾……げふんげふん、色々と「強い」女子には一抹の不安が……)
 その不安がすぐに的中することになるのを、今の幻介はまだ知らなかった。
(あたしが立派な花嫁だと証明する為に、旦那様を守ってみせるっす!)
 その幻介の内心を知ってか知らずか、幻介に想いを寄せる『先駆ける狼』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)は、やはり寝袋の中で「花嫁力」を証明してみせようと意気込んでいる。なお、ウルズの言う「旦那様」は、幻介のことであったりする。今回の花嫁修業で守るべきは、ウィルヘルミナであるのだが。
(……あれ? 旦那様が二人居る……!?
 えーと……これから一緒に戦ってくれる、こっちのカッコいい旦那様はオリジナルの幻介先輩っすね。
 それなら、奥の部屋にいる方の旦那様はか弱い幻介先輩っすね)
 すぐにウルズも、幻介とは別に守るべき旦那様がいることを思い出す。だが、ウルズにとって旦那様とは幻介のことだ。故に、幻介が二人いるという事態に直面したウルズは、一緒に戦う幻介と護衛対象の幻介と言う形で、幻介とウィルヘルミナを区別した。
「本日に限り、我が旦那様に代わりウィルヘルミナ様を旦那様認定します!」
「うん……ワタシも、ウィルヘルミナさんをアトさんに見立てて頑張るよ」
 『花嫁キャノン』澄恋(p3p009412)の声に応じたのは、隣で寝ている『恋する探険家』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)だ。
「ええ、ええ。プロ花嫁たるもの、愛しの旦那様を護りとおすべき! 訓練とはいえ全力で臨みましょう!」
「そうだね。それにしても、アトさんを、護る……かぁ。ふふっ」
 夫を護りきるべく澄恋が意気込めば、フラーゴラもコクンと頷く。そしてフラーゴラは、ダンジョンの中で歴戦のイレギュラーズである想い人を自分が護るという光景を想像して、もしそれほど強くなれたら、と嬉しそうに笑った。
(好きな人がいるの、いい、な……。アリスも……好きな人できたら、守れるように、つよく……なりたい……。
 あと立派な花嫁……なるためだから、花嫁修業……がんばる……! いつか、アリスも……)
 澄恋とフラーゴラの会話を聞いた『泡沫の胸』アリス・アド・アイトエム(p3p009742)は、特定の想い人がいるのを羨ましいと感じる。もっとも、フラーゴラの方はともかくとして、澄恋の言う「我が旦那様」は夫を求めるあまりに自ら錬成した置物に過ぎないのだが、アリスはその事実を知らない。
 小柄でまだ幼い少女のような外見のアリスだが、もう誰かと結婚していてもおかしくはない年頃である。それだけに、花嫁修業に向けて意気込みつつ、想い人と結ばれて花嫁になった時を想像して微かに胸をドキドキとさせた。
「花嫁修業かぁ……。正義の味方にもなりたいけど、ウエディングドレスを着てお嫁さんになるのもまた捨てがたいんだよなぁ」
「そうだよねぇ……純白のウエディングドレスは、女の夢だものねぇ」
 『正義の味方(自称)』皿倉 咲良(p3p009816)のつぶやきに、『夢見る非モテ』ユメーミル・ヒモーテ(p3n000203)がわかるとばかりにしみじみと頷いた。
「でもでも、お嫁さんは、やっぱり強くないといけないよね」
「ああ、今回の花嫁修業のように、不埒な奴らから家を護るのは花嫁の務めだからね。弱くちゃやってられないよ!」
「うんうん……よし! お料理もできて、お掃除もできて、戦えるお嫁さん……あたしの目指す花嫁はそこだ。やってやるぞー!」
「頑張りなよ。アンタなら、きっとそんな花嫁になれるさ」
 ユメーミルとの会話の中で、咲良は花嫁としての理想を見出し、そこに向けて気合いを入れる。そんな咲良を、ユメーミルは励ました。

●破壊されし壁
「説明は以上です。では、よろしくお願いします」
「ああ、これも姐御のためだからな。しっかりやってくるぜ」
 『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)の説明を受けた、今回の花嫁修業で盗賊役を務めるユメーミルの元部下達三十名ほどが、闇に紛れてウィルヘルミナの館に侵入を試みる。窓の鎧戸は破壊されたと言う想定のため予め開かれており、盗賊役達をあっさりと通した。
 その際に盗賊役達が立てた音は決して大きなものではなかったが、尋常ならざる聴力を持つ澄恋が聞き逃すことはない。澄恋によって盗賊役達の侵入を知ったイレギュラーズ達は、寝袋から飛び出した。
「さあ、いくっすよ! まずは、縦横無尽に駆け回れるようにしないとっすね」
 まず、闇の中でも普段と同じように物が見えるウルズが真っ先に動き――体当たりで、執務室の壁をブチ抜いた。ドカッ! と大きな衝撃音が響き、人一人は余裕で通れる穴が空く。
「何で、そこで壁を破壊してるで御座るか!?」
「旦那様を護るためです。壁の犠牲など惜しんではいけません」
 突然のことに幻介が驚きツッコんでいる間に、澄恋が手刀を同じく執務室の壁に叩き付ける。城すら破壊すると言われる武技によって放たれた手刀は、やはり執務室の壁を容易くブチ抜いた。
「さあ! 流星の如く駆け巡り、盗賊たちに天誅喰らわせてやりましょう!」
「それはよいが、家が壊れては意味がないで御座ろう……」
「安心なさい、柱は無事ゆえ骨組みは崩壊せず家は守られます」
「そう言う問題ではないで御座ろうが……これ、修理代を請求されぬで御座るよなぁ……?」
 幻介はツッコミに疲れ、不安を感じながらも、次々と壁を破壊していく澄恋の後を追った。
「ユメーミルさん、あたし達も行こう! まずは、さっさと灯りを手に入れないとね」
「……あ、ああ。そうだね」
 仲間達が突然壁を壊しだしたことに呆然とするユメーミルに、咲良が声をかけて光源の入手を促す。それによってハッと我に返ったユメーミルは、平然とウルズの開けた穴を通っていく咲良の姿に、驚いている自分の方がおかしいのかと思いながらその後をついていくことにした。
「……一体、何だ! この音は……」
「大丈夫。アトさ……じゃなかった、ウィルヘルミナさんには指一本触れさせないから……!!
 その部屋の中で、待ってて……」
「アリス達……ウィルヘルミナ、守る……。あっ、ランタン……貸して、ね……」
 次々と居館の中で起こる、壁が突き破られていく際の衝撃音に、執務室の奥の寝室からウィルヘルミナがランタンを手に何事かと飛び出そうとする。だが、フラーゴラは盗賊役達から護るから寝室の中に戻るように要請し、アリスはフラーゴラに同調しつつ、半ば強引にウィルヘルミナの手からランタンを借りて光源を入手した。
「うむ、そうか……では、頼むぞ……」
 普段ならいざ知らず、寝起きで頭が働いていないウィルヘルミナは、館には保護結界がかけられているはずだと言う先入観もあり、フラーゴラ達に促されるままに鷹揚に頷きながら寝室に戻っていった。もしこの時ウィルヘルミナの頭がもう少ししっかりと覚醒していて、大穴を二つも開けられた執務室を目の当たりにしていたら、演習はここで強制的に終わらされていたことだろう。

●撃退される盗賊役達
「あたしの邪魔をする不届き者は一人残らず殲滅するっす、それが花嫁として家庭を守るという意味……さあ、掛かってくるっす!」
「ひっ!? な、何でこんなに早く!? しかもそんなところから……。まさか、さっきからドッカンドッカン中で響いていた音は……」
 一階、玄関ホール。この場にある財物を現す紙を漁っていた盗賊役二人は、壁を突き破ってその場に現れたウルズの姿に驚愕するとともに、館の中で鳴り響いていた音の正体を理解した。
「くっ、ここは俺に任せろ! お前はそれを持って、早く外に逃げるんだ!」
「すまねえ、兄弟」
 だが、驚いてばかりもいられない。盗賊役達は、一人を足止めに残し、一人はこの場で入手した紙を手に外に出ようとする。だが、ウルズの動きの方が速かった。
「来ないのなら、こっちから行くっす! 逃がさないっすよ!」
「のわあっ!?」
「ああっ、兄弟!?」
 ウルズはこの場から逃げようとしている方の盗賊役の前に回り込むと、熾烈な勢いでタックルを仕掛けた。低い軌道の突進を受け、盗賊役はその場に突き倒されて動かなくなる。
「ちっ……こうなったら、俺だけでも……」
「そうはさせないよ! 『正義の味方』皿倉 咲良、参上!」
「なあっ!?」
 足止めに入るはずだった盗賊役は、やむを得ず館の中に入り込んで、別の財物を現す紙を漁ろうとする。だが、その前に咲良が立ちはだかり、高らかに名乗りを上げた。
 こうなったら咲良を突破して先に進むしかないと覚悟を決めた盗賊役が、咲良に挑みかかる。しかし間にユメーミルが割って入り、盗賊役の攻撃を盾となって受け止めた。
「あ、姐御!?」
「いつも言ってるだろう!? アタシのことは『お嬢様』と呼べって!」
 咲良の前に割って入ったユメーミルの姿に、盗賊役は驚愕する。その盗賊役をユメーミルが叱る間に、咲良が動いていた。
「受けてみよ! およめパンチ!」
「ぐべっ!?」
 咲良の渾身の右ストレートが、盗賊役の顔面に突き刺さる。顔を強かに殴られた盗賊役はノックアウトされ、バタリと倒れ伏した。

「強火女子同盟のか弱い乙女担当・澄恋推参っ!
 旦那様に手を出そうとする蠅ども……一匹たりとも、逃しはしません!」
「何をっ! お前ら、やっちまえ!」
 二階の倉庫の前では、六人ばかりの盗賊役の行く手を澄恋が阻んでいた。か弱いと称する女一人と甘く見たか、盗賊役達は寄ってたかって澄恋に襲い掛かる。
「お箸よりも重い物を持てないか弱い乙女に、何て無体なことをするのでしょう……。
 思い切りぶん殴……んん゛っ、優しくぼでぃたっちして差し上げます」
「ぐわっ! 何処が箸よりも重い物を持てないんだーっ!?」
 だが澄恋は、盗賊役達の攻撃を受けて傷を負いながらも、拳で的確に反撃を行い受けた傷以上のダメージを盗賊役達に返していく。次々と、「ボディタッチ」によって叩きのめされていく盗賊役達。
 辛うじて澄恋の手を耐えて逃れた盗賊役もいたが、倒される相手を変えたに過ぎなかった。
(……そうツッコミを入れたくなる気持ちは、よくわかるで御座るよ)
 盗賊役の叫びを聞いて駆けつけてきた幻介が、盗賊役達に内心で同情を示しつつ、手にしたモップを刀代わりにして神速の抜刀術を繰り出す。抜刀から納刀までの刹那の瞬間に打ち据えられた盗賊役は、何が起こったのかも理解出来ないままその場に崩れ落ちた。

 穴だらけになったウィルヘルミナの執務室にも、盗賊役達は押し寄せていた。狙いは、その奥の寝室にいるウィルヘルミナだ。本来は軍人上がりでそれなりの戦闘力を有しているウィルヘルミナだが、今回はただの一般人と言う想定になっている。そのため、ウィルヘルミナが盗賊役と遭遇したら、先ず間違いなく夫が殺害された扱いとなって、演習は失敗に終わってしまう。
 それだけに、当然ウィルヘルミナを護るベく、フラーゴラとアリスが執務室に陣取っていた。
「ここは愛の巣……アリス達の不可侵領域……侵入、許されない……。
 ましてや盗賊が……アリス達の幸せ、邪魔していいわけない……覚悟、してる……よね……」
「うん。アトさんを狙うなんて、絶対に許さない……」
「……うっ。何だかやべぇぞ!」
「だけど、行くしかねえだろ!」
 盗賊役達の姿を目にしたアリスが静かに言葉を紡ぎ、フラーゴラが続く。二人とも、これが演習であることを忘れたかのように本気になっていた。そのただならぬ様子に、盗賊役達は気圧される。だが、盗賊役達は覚悟を決めて執務室の中に突っ込んでいった。
「これで……動き、封じる……」
「うわっ! 何だこれはっ!」
 アリスはその盗賊達を目掛けて、己の血から創り出した紅い蜘蛛の糸を放つ。糸は盗賊役達に次々と絡みつき、その動きを封じた。のみならず、糸からにじみ出ている毒が、盗賊役達の体力を徐々に削り取る。
「ワタシは……アトさんを、護るんだ……!」
「ぐえっ……」
 想い人を護ると言う強い意志を込めつつ、フラーゴラは蒼い燐光を纏い、盗賊役の一人に急接近する。想い人を護るという意志と、それに応じたかのような速度を乗せたフラーゴラの脚が、盗賊役の腹部に直撃した。フラーゴラの脚を受けた盗賊役は、呻き声をわずかに上げながらぐりんと白目を剥いて、昏倒した。

●怒りのウィルヘルミナ
 ウィルヘルミナの館に侵入した盗賊役達は、イレギュラーズ達によって次々と倒されていった。財物を現す紙は完全には守りきれなかったものの、その被害は軽微であり、ウィルヘルミナが攻撃されなかったことも含めて、花嫁修業自体は成功に終わった。だが。
「……どうして、こうなるんですかねええ!?」
 空も白んできた頃、花嫁修業の成否を判定しにきた勘蔵は館の中を見回して驚愕の叫びを上げた。さもあろう。保護結界に護られているはずの館は、至る所で壁に大穴を開けられていたからだ。
「――それは、私が聞きたいものだな。勘蔵?」
 その勘蔵に、般若か夜叉を思わせるような威圧感を纏ったウィルヘルミナが、にこやかな笑みを浮かべながら問いかける。だがウィルヘルミナの目は笑っておらず、表情も冷たさを感じさせる。
「これはヤバいね! さっさとトンズラするよ! 勘蔵、後は任せたからね!」
 ウィルヘルミナの威圧感に危険を察知したユメーミルは、勘蔵をウィルヘルミナに文字通り押しつけると、速やかに館から離脱するようイレギュラーズ達に促し、自らも共に逃れ去った。
 外に出たイレギュラーズ達は、和気藹々と花嫁修業の成功を喜び合い、これで自分達もきっと素敵な花嫁になれると希望を抱く。ただ一名を除いて。
「……終わってから言うのも何なので御座るが、やはりコレ、花嫁修業では御座らんよな!?
 ぶっちゃけ、ただの戦闘訓練では御座らぬか!? どうして、こんな事に……?」
 誰にと言うわけでもなくそう問いつつ頭を抱える幻介の声は誰の耳にも届かず、応える者もいなかった。

 なお、幻介が心配した破壊された壁の修理代については、ウィルヘルミナから逃れられずにその憤怒を一身に受けることになった勘蔵が、今後のローレットへの依頼料金を代わりに支払う形で弁済することになったと言う……。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 シナリオのリクエスト、また、シナリオへのご参加、ありがとうございました。まさか館の壁をブチ抜くプレイングが来るとは、予想だにしていませんでした……。

 それでは、お疲れ様でした!

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