PandoraPartyProject

シナリオ詳細

テーブルをお菓子でいっぱいにして、おしゃべりをしましょうね

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「私ね、今度妹のところに遊びに行くの。先月は妹がこっちに来たから、今度は私から。見て、この子」
 セイラー航海王国、港町。
 イタリアンバーの一角で夕焼け色のワイングラスをテーブルに置いて、彼女――アリア・スピッツは写真をとりだした。
 ジャスティス正義国の首都にそびえる大聖堂。その前に立って、二つの家族が自然な笑顔で写っている。
 かたや、医者風の男性と若いシスター服の少女メディカ。
 かたや、美しい女性と髭の豊かな男性の夫婦、そしてその娘であるアリア。
 二家族の間で、メディカとアリアは肩を組み、はしゃいだ様子でピースサインを出していた。
 エイル・サカヅキ(p3x004400)は写真を受け取って、目を僅かに細める。
 そしてすぐに、アリアへ写真を返した。
「マジいい家族じゃん」

 遡ること約一日前。エイルたちイレギュラーズは情報屋からクエストの攻略を託されていた。
 場所は練達セフィロト、ROO内仮想世界ネクスト。
 不明なバグによって混沌のコピーともいうべき世界が歪みネクストという似て非なる世界が生まれていた。バグに際してログイン中だった研究員達の意識も囚われ、これを救い出すべく世界に点在するクエストを攻略する必要があったのだ。
 エイル――もといそのアバター主であるアーリア・スピリッツ(p3p004400)たちが受けたクエストは、航海王国にて旅の護衛を求めた女アリアから依頼を受け、彼女を妹の暮らす正義国まで送り届けることであった。
 数日かかる船と僅かな陸路を混ぜた旅。そのなかで得られるのは、出会いと、交流と、そして静かな非日常の風景だろう。
「偶然とは言え、君に依頼することになったのは、いささか……」
 言いよどむ情報屋に、アーリアはとろんとしたウィンクで応えた。
「いいのよぉ。これも、きっと巡り合わせだわ」
 そう。護衛する対象は。
 父も死なず夫婦が離婚しているにもかかわらず仲が良好なふたつの家族と、その双方で暮らす仲良しの姉妹。ROOの世界で暮らす、もうひとりのアーリアであった。

GMコメント

●クエスト
・成功条件:アリアの護衛を完了し、目的地へと送り届けること

 セイラー航海王国(混沌の海洋に相当するネクスト内の国)のとある港町リッツパークから船で出発し、途中『船の駅』ことノキオス島で一泊、歌ったり踊ったりお酒飲んだりしながら船旅を楽しみ、途中海賊の出るエリアで戦闘しつつもやりすごし、正義国(天義相当の港町)へとたどり着くというプランになっています。

●依頼人:アリア
 ROO世界におけるもうひとりのアーリア。この世界では本名である『アリア』を名乗っています。
 混沌世界のアーリアは医者であった父の戦死から始まり母の亡命、妹の密告、両親の断罪、ねじれた運命は姉妹を引き裂き、今も離ればなれにあります……が。
 ROO世界では父は戦争に出ておらず、新しい恋をした母とその相手に対しても人間的尊敬を失わないまま良好な関係を継続しています。
 父方はメディカと共に正義国で暮らし、メディカは修道院でシスターのボランティアをしています。
 母方は航海国の商人と再婚して港町で暮らし、娘のアリアは普通に学校を出て普通に『チョット長い大学生』を続けています。どうやらお酒は好きなようで、パーティも大好きなようです。
 性格や雰囲気は混沌のアーリアにだいぶ似ています。強いて違いをあげるとするなら、『モテるけど恋にオクテすぎる』という特徴があります。

 妹とは仲良しらしく、ひと月交代で互いの国に遊びに行くという姉妹ルールがあるようです。今月はアリアが遊びに行くばん。

●船旅パート
 心情を語ったりいつもの船旅の様子にふれたりするパートです。
 旅情を楽しんだり今回の出来事に想いをはせたり、もしくは『もうひとりのアーリア』のことを考えたりしてみましょう。

●船の駅パート
 オキノス島の宿にとまり、一緒にご飯を食べたりお酒飲んだりしましょう。
 アリアと一緒にパーティ気分で盛り上がるつもりのようです。彼女の暮らしや悩みなんかを聞いてあげましょう。最近ちょっと太ったとかそういう悩みを。

●バトルパート
 海賊の出る海域があります。お約束かってくらいちゃんと海賊が襲ってくるので、射撃で迎撃したり相手の船に飛び乗って殴り倒したりしましょう。この間アリアは船室でお留守番です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

  • テーブルをお菓子でいっぱいにして、おしゃべりをしましょうね完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月28日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エイル・サカヅキ(p3x004400)
???のアバター
イルー(p3x004460)
瑞心
ミドリ(p3x005658)
どこまでも側に
ブラワー(p3x007270)
青空へ響く声
May(p3x007582)
めい☆ちゃんねる
壱狐(p3x008364)
神刀付喪
エイラ(p3x008595)
水底に揺蕩う月の花
現場・ネイコ(p3x008689)
ご安全に!プリンセス

リプレイ


 さざなみの音に、揺れる。
 大きなクラゲが頭の笠を赤や緑に微発光させながら、船着き場の桟橋に浮いていた。海に足の一本もつけてないのに、不思議とさざ波にゆられるまま浮いているかのように、ざざんざざんと揺れていた。
「うーみぃ。ふーねぇ。楽しみぃ~」
 『仄光せし金爛月花』エイラ(p3x008595)。
 顔(?)をあげると、今回の旅に使うための船がある。どうやら旅行会社が必要な物資を諸々用意してくれるパッケージプランらしく、水夫達が木箱に詰まったインスタント食品やら食材やらを船へ運び込んでいる。
 依頼人のアリアは長い薄紅色の髪を肩にかけるように束ねて、水夫長の差し出した伝票にサインをしていた。
 ふわふわと流れるようなAの字体が、混沌世界のアーリアのそれによく似ている。
「さぁて! 今回のお仕事は船旅護衛だねっ!! よろしくね!」
 『どこまでも側に』ミドリ(p3x005658)が『ここにサインを!』と伝票を出すと、アリアは振り返ってわずかに首をかしげた。
「よろしく。今日の傭兵さんたちは個性的で楽しそうだわぁ」
 とろんとした口調に既視感を覚えながらも、ミドリは笑顔で頷いた。
「お仕事とはいえこういうのに同行出来るのは約得だよね、ぼくも楽しみだなぁ」
(よくよく考えたら、元の世界でも、混沌でも旅行なんてしたことなかったんだよね……思わぬ形で初めての旅行だなあ……)
 仮想世界とはいえこれも体験。潮の香りも潮風も、ちょっと不思議な足音がなる桟橋も。これから始まる船旅をつよくつよく予感させる。

「いやー離婚しても姉妹仲良しとか、キセキじゃん」
 桟橋のそばにあるベンチに座り、売店で買ってきたラム酒の缶をあける『???のアバター』エイル・サカヅキ(p3x004400)。
 プルタブをおこすカシュッという音が、うみねこの鳴き声にかぶる。
 きっと『離れないこと』よりも『離れても壊れないこと』のほうが幸せなのかもしれない。
 『自分』は、どうだろうか。
 離れに離れてしまったけれど。
 壊れては、いないだろうか。
「あーちょっとおセンチ入ってたわ」
 いまここにいない誰かに問いかけそうになって、エイルは缶の中身を一気飲みした。
(こうして見知った人の姿を見るのは何度目かな?
 似ているようで違っていてここが仮初の世界だとしても、
 見知った人が幸せそうに笑っているのは嬉しいな)
 隣に腰掛け、のんびりと船やアリアの姿を眺める『ご安全に!プリンセス』現場・ネイコ(p3x008689)。
 この世界は現実じゃない。いや、感じている以上現実なのかもしれないが、少なくとも混沌とは違う場所。IFの物語の中に居る。けれどその中で幸せな誰かを見つけると、『そうなれたかもしれない』という希望を感じさせてくれるのだ。『そうならなかった』という事実と抱き合わせではあるが。
(こういう『もしも』ばかりならROOも悪くないのだがな)
 『妖刀付喪』壱狐(p3x008364)は伝票のうつしに記載された積荷を一通り確認すると、ベンチから立ち上がる。
「俺も久々の船旅を楽しむとしようか」
「はい。楽しい船旅になるよう頑張ります、ね」
 おー、といってグーにした手を空たかくにあげるイルー。
(わたしの、知っているアーリアさまは、とてもやさしくて、綺麗で、どんな時でも前向きにさせてくれるような、素敵な大人の女性。
 とはいえ、プライベートなことはあまり知らなかったので、こうして関わるのも不思議な感じではあります、が……ROOのアリアさまとも、ご縁が持てて嬉しいです)
 同じくベンチをたつネイコ。自分の荷物をつめた鞄を手に歩き出すイルー。
 彼らがふと。
「混沌のアーリアさんがあの人を見たら、どう思うのかな」
 とつぶやいた。
 エイルはほてった頬に手を当て、ひざに顎肘をついて。
「さーぁね」
 と返した。

「「めーい☆ちゃんねるー♪」」
 『めい☆ちゃんねる』May(p3x007582)と『青空へ響く声』ブラワー(p3x007270)が顔を寄せ、二人でシンメトリーな横ピースをした。
「めい☆ちゃんねるをご覧のみなさんこんにちめいちゃん! ということで今回はゲストにブラワーちゃんが来てくれたのですよー!」
「どもどもー。今日は船旅するって聞いてまーす!」
「ですですよー!」
「船旅いいよねー。青い空の下を水平線の先まで進むのはとっても爽やか。今回の依頼主には感謝だね」
 メイが撮影用の妖精さんのあたまをつまんでくいっと船の桟橋を映すと、桟橋を歩いてくるネイコやエイルたちが手を振っている。その中には依頼人のアリアの姿もあった。
「この人達と一緒に正義国に向けて出航するのですよー。それでは楽しく、思い出残していきましょーう!」
「いきましょーう!」
 メイが小声でせーのとつぶやくとブラワーが指をかざす。
 二人合わせてハートのカタチを作ると。
「「めーい☆ちゃんねるー♪」」


 デッキブラシを両手で握り、長い甲板をブラシがけしながら走って行くミドリ。
 端までたどり着くと、ふうと息をついて帽子を脱いだ。
 長い髪がさらりと風に揺れ、汗が手すりへと落ちる。
 短パンに厚手の黒タイツといった格好ゆえかどうにも厚いようで、ミドリは膝脇のタイツを摘まんでひっぱるなどしてひかえめに涼んでいた。
「お世話になる船だしお掃除しなくちゃ……って思ってみたけど、八人で旅するとなると流石におっきいなあ」
 ちょっとしたお金持ちがもってるクルーザーでも詰めてせいぜい2~3人。八人が不自由しない程度に共同生活を送れる規模となると結構なデカさの、それも木造帆船が必要になるらしかった。
 ハンモックスタイルとはいえ八人がぎゅうぎゅうづめになることなく船室で眠れる。甲板に出て縁を走れば結構な運動になる。キッチンは狭いが深緑製の魔道調理器具のおかげで火や煙を出さずに陸と同じくらいの料理ができる。
「人によってはだけど、陸で暮らすよりずっと快適かも……」
 デッキブラシのこじり部分に両手を乗せそのうえに顎をのっけて水平線を眺めるミドリ。
「船ぇゆらゆらぁ揺れるぅ新鮮~。
 海でぷかぷかとはぁまた違う~。
 ん、エイラぁ、揺れるのとはぁ、普段縁がない、ずっしりだから~。
 波で船が揺れたりしたらぁ、バランス崩しちゃいそうだねぇ。
 わたわたわた~」
 そんなミドリの頭上。というか帽子の上にふよっとのっかるエイラ。
 わたわたと言っているわりにはのんびりしているようで、間食用に用意されたビスケットをサクサク食べていた。
 どこからどうやって食べるんだろうと思っていたが、なんか笠部分に現れたシンプルな落書きみたいな顔(?)からあーんと口を広げ、触手でつまんだクラッカーを普通にサクサクやっていた。いや、普通なんだろうか……? クラゲの捕食風景ってこんなだっけ?
 まあ……。
「いいか」
「うま~」

「「めーい☆ちゃんねるー♪」」
 Mayとネイコはシンメトリー横ピースでカメラのアップに映り込むと、Mayがちょきちょきと指をうごかしてウィンクした。
「今日はネイコさんをゲストに船旅の様子をお届けするのですよ。
 ネイコさん、今回の意気込みをどーぞ!」
「アリアさんを頑張って送り届けるよ!
 って事で、花丸ちゃん…ゲフンゲフン。
 ネイコさんにマルっとお任せ、だよっ!」
 いえー! と言いながらカスタネットをぱかぱか叩くMay。
 ネイコは咳払いをすると、インタビュー用のマイクをスッと手に取った。
 一方のMayは上着を腰に巻いて星型のサングラスを額にチャッとかける。
「テレビ関係者ファッションなのですよ」
「いやむしろ夏のギャルって感じだけど」
 よいしょといって首にかけるたいぷのカードホルダーをMayにかけ、透明なケースに『MayP』と書いた紙を差し込んだ。
 たまたまあった鏡に振り返るMayとネイコ。
「「テレビ関係者だ!」」

「風が気持ち良いです、ね。自然の雰囲気というか在り方も、現実と変わらなくて、すごいです」
 甲板においたビーチチェアでひとりのーんびりしていたイルーに、ネイコがマイクを向けていた。
「えっと……感想は、これだけ、です」
 じーっと見つめられたことで恥ずかしくなったのか、頬をちょっと赤くして目をそらすイルー。
 ふわふわひつじさんのメイメイがそのまま眼鏡美男子のアバターを使って動いているので、そのギャップとふわふわ感におもわずキャッと口を押さえてときめくネイコたち。
 カメラを反転させると、甲板でダンスの練習をしていたブラワーが見つかる。
「ここから見てくれたみんな! ボクはブラワー! カワイイアイドルだよー♪
 オキノス島でライブステージやるから、みんな見に来てね♪」
 ぴょんと片足の踵を上げて二本指で敬礼してみせるようなくにゃっとしたポーズをとるブラワー。
 ウィンクすると水色の星型エフェクトが回転しながらキランと飛んだ。
「あ、いいにおい……」
 ふとイルーがチェアから起き上がり、くんくんと鼻をあげる。
 キッチンから出てきた壱狐が、両手にお皿を乗っけて現れた。
 指を駆使して片手二枚の皿をもち手首との三点支えでもう一枚ずつもつというなんか古い居酒屋くらいでしか見ないような器用な持ち方である。
 ほほーといって覗き込むブラワー。
「お料理できたの?」
「はい、案外。プロ顔負けとかじゃなくて普通のですけど」
「いいのいいの、そういうのでいいんだよー」

 夜。黒くて遠くて静かな海が、どこまでも続く闇の中。
 ぽっとともったランタンの脇に、エイルが腰を下ろしていた。
 手すり越しに見える深い深い闇を見つめ、ちびちびとラム酒の瓶を口に付ける。
「はぁい、何してるのぉ?」
 足音がして振り返ると、アリアが覗き込むようにして首をかしげていた。たれた髪で隠れないように、薬指でそっと髪をかき上げる。
「ん、別に。練れなくてお酒飲んでるトコ」
 イヒ、と笑ってかえすエイルに、アリアは『じゃあ私も一緒に飲むわぁ』といって笑顔でその場に腰を下ろした。


 二人並んで、遠くの夜を見て。
「『誰かさん』は、本当にイイ性格だわ……」
 エイルはぽつりとつぶやいた。
 この世界。偶然そうなったにしては皮肉なねじれ方がいくつも見える。誰かが意図してこう歪めたように、なぜだか思えた。それは実際、以前の『イベント』が終了した際に表示されたメッセージにも現れている。
 それが誰かは、まだ分からないが……。


 たどり着いた船の駅オキノス島。
 高速道路でいうパーキングエリアのような存在だが、船の修繕や補給に必要な施設や宿泊施設。はたまた郵便サービスといったインフラ関係の施設がぎゅっと纏まった旅の要所である。
 航海国・正義国の間を船でわたるなら是非よっておきたい島だが、ここでアリアたちがすることといえば――。
「「かんぱーーーーーい!」」
「さあ! やってきました船の駅! お酒もちょっと……うん、もうちょっとだけ……えへへ」
 顔を赤くしてふにゃーっとなってるミドリ。アリアもだいぶ酔っ払ったようだが、お酒は何杯でも飲めると豪語しているようでじゃんじゃんとボトルを追加していた。
「これがお酒の感覚……」
 混沌側のメイメイが何歳かはわからないがお酒飲んだことのない成人だとあえて仮定して。イルーはワインにちびっと口をつけてみた。
「なんだか、不思議な感じです。ドキドキします……」
「それは初めてのお酒にドキドキしてるんですか? それともアルコールの作用?」
 壱狐はなんだか慣れた調子で日本酒をあけ、つまみのお刺身をぱくついていた。
「確かこの先は海賊の出るエリアなんでしたっけ。今のうちに栄養をつけて戦闘にそなえておきましょう」
「いいねいいね! あっおにぎりおかわり! 鮭とたらことウィンナーのやつ!」
 ネイコはうぇーいって言いながら空っぽのお皿をかざすと、運ばれてくるおにぎりを掴んで日本酒とおにぎりを交互に食うという豪快なマネをしていた。
「そんな食べ方すると太りません?」
「太っ――!? ら、ないよね? ROOは仮想現実だもんね?」
「イマジナリー肥満ってしってます?」
「今治!?」
 ――とかやっていると。
「みんなー!今日はボクのステージに来てくれてありがとう!
 一番奥の人まで、ボクの歌♪ 楽しんで言ってねー!」
 いえーいと言いながら酒場の端につくったスペースで突然ライブを始めるブラワー。
 Mayがスッとサイリウム棒を配ると、アリアが『可愛い~』といってピンクのサイリウムを振りまくった。
「せっかくだからぁお酒もぉ美味しくぅ~。ふわ~。酔うってぇ新鮮だねぇ」
 エイラが七色にぺかぺか光ながら歌って踊るブラワーの周りを飛び始める。
 お酒をじゃかすか飲んじゃったせいかふにゃんふにゃんになっており、クラゲが飛んでるのかふよふよした発光体なのかよくわかんない感じになっていた。
「酒ウェーイ! 乾杯ウェーイ!」
 グラスをかざして盛り上がるエイル。

 こうして飲んで食べて歌って騒いで踊って倒れて。それはもうどんちゃん騒ぎをしたその夜深く。
 イルーがエイラを枕にしてスヤァしてるところにブランケットをかけてやり、アリアとエイルは二人並んで座った。
「妹さん」
「メディカ?」
「そ、喧嘩とか……しないの?」
 言葉につまりそうになったのを、さめたイカ焼きで流し込んで続けるエイル。
「そうねぇ、毎月しちゃうわねぇ」
 頬に手を当てて苦笑するアリア。
「この前なんてね、一緒にお洋服買いに行こうって言ったのにちょっとだけ寝坊しちゃって。メディカったらね、5分遅れただけで怒っちゃうから――」
 ひとしきり喋った後、グラスを手にアリアは小さく笑った。
「でもね。お別れするときには必ず仲直りをしたのよぉ。喧嘩したまま離れてたら、不安になっちゃうでしょう?」
 彼女の笑顔を。
 エイルは。
「そ、だね」
 まっすぐには、見れなかった。


 海賊!
 に、ついて実は多く述べることなどない。
「ぼくたちはこの船旅を安心して過ごせるようにここに居るんだから、ささっと片付けてあげよう!」
 ミドリはスロットにセットしておいた術式(マクロ)を起動すると飛行の魔法を自分を中心とした仲間達に付与。歯車仕掛けの翼がいくつも現れ、ミドリたちの背中へと装着される。
 革の皮膜で羽ばたくと、隣接しようとしてきた海賊船めがけて一斉に突撃。
「多少痛めつけたくらいじゃぼくは止まらないよ! この船を襲ったことを後悔させてあげる!」
「え、ちょ――」
 なにか言おうとした海賊の顔面にミドリキック。
 海賊が最後に見たのはミドリのすらっとした黒タイツの脚になった。
 エイルも胸の谷間からすぽんと取り出したラム酒の瓶を一気飲みしてあけると、着地と同時に空き瓶を叩きつけ、さらなる後ろ回し蹴りで昏倒させる。
「あなた方と、旅をしたいわけではありません、ので……おかえり下さい、ね」
 イルーもまた杖を握って魔法のことばをつなげると、甘いカラメルソースのような魔法が広がって巨大なプリンを作り上げ、海賊をずしんと押しつぶした。
 一方で反対側から海を泳いで接近していた壱狐とエイラ。
「さあ、姉妹の逢瀬の安全のためにもご退場願いましょうかね!」
 握った刀で陰陽五行の力込めた斬撃を浴びせ、更にエイラの出したちっちゃいクラゲファイヤーばしばしに浴びせまくる。
「見せ場なのです! キューピットさん! ナイト君!」
 Mayの姿プリントされたイタ車みたいなカタパルトシールドからちっちゃい天使や騎士が発射され、それに援護されるカタチになったネイコとブラワーが魔法の力で空をアイススケートのように走り、スピンジャンプからのダブルきりもみキックを海賊の船長に浴びせた。
「これもボクのライブステージ! 一方的に踊っちゃうよ!」
 ……といった具合に、海賊はものすごい速さで片づいたのだった。
 それだけ船旅が快適で疲れが残らなかったということなのだろう。






「アリア、メディカ、またね!」
「えぇ、またねぇ!」
 港についたアリアは出迎えていた妹のメディカの隣にたって、離れていくエイルの船に手を振った。
 エイルたちの姿が小さくなっていく。声も聞こえないほどに遠くなったところで、メディカはふとアリアへ振り返った。
「姉様、あのひと……お姉様に似ています」
「そぉ?」
 もう一度小さくなる船を見て。
「きっと、優しいひと」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――クエスト完了

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