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シナリオ詳細

傭兵たちはクソ野郎に反旗を突き立てたい

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●傭兵団の揉め事
 夢の都ネフェルスト――ラサ傭兵商会連合に属する傭兵団のためのギルドの前で、2人の男が何やら深刻そうに話し込んでいた。
「だめっすね、どこも協力する気がないっつーか……」
「よその団の揉め事で、余計な消耗はしたくないんだろうよ」
「どうしたらいいんすか? このままじゃ、兄貴が解雇になるのは確定じゃないすか」
「……リカルドの野郎。金に物言わせて好き放題やりやがって……仲間の半数もやられた上に、レグナさんまで――」
 そこへ現れた救世主――ネフェルストの風情ある街並みにも溶け込む商人風の男、『強欲情報屋』マギト・カーマイン (p3n000209)は、胡散臭さ全開の笑顔で男2人に営業をかけた。
「何かお困りのようですね?」

●模擬戦をしてもらいます
 マギトはやたら上機嫌な様子で、ローレットに招集されたイレギュラーズに向けて、依頼内容の説明を始めた。
「皆さんには、ラサの傭兵団の揉め事を解決する手助けをしてもらいたいのです」
 依頼人は、ウエストインディゴ傭兵団という中小系の傭兵団の人間だった。
 今回の依頼の中心的な人物となるレグナについて、マギトは説明を続ける。
「レグナという男が傭兵団のナンバー2として献身していたのですが、あることがキッカケで団長と決裂してしまいまして――」
 その理由とは――レグナが団長の息子、リカルドを殴ったことが原因だった。
「顔だけが取り柄のクソ野郎として有名なリカルド殿は、バーメイドに対するセクハラ行為でレグナの反感を買ったらしく、鉄拳制裁を食らったという訳です。けれども、団長である父親がクソ息子に激甘でね……息子側の言い分をすべて鵜呑みにして、レグナに解雇を言い渡しましたとさ――」
 傭兵団から追い出されそうになったレグナだったが、ナンバー2としての人望を築いていたこともあり、多くの舎弟たちが団長に抗議した。今でも一部の傭兵たちがストライキを続けているという。
「解雇通達もそうですが、リカルドの甘やかされっぷりにも切れたんでしょうねぇ……」
 と、マギトは言い添えた。そんな傭兵団では、すべてのいざこざに決着をつけるため、リカルド派とレグナ派に別れた模擬戦を執り行うことが決まっていた。レグナのチームが勝てば、解雇が取り消される約束になっていたのだが――。
「言い出しっぺはリカルドの方でね……
不運な偶然とは思えませんよね? レグナのチームの人間が、半数も暴漢に襲われるなんて」
 リカルドの指示に違いない妨害工作によって、レグナのチームは壊滅的な痛手を受けていた。
「そこで! 皆さんにはレグナのチームに加わっていただきます」
 依頼の目的は、レグナのチームを模擬戦で勝利させることだった。
「相手もプロですからねぇ、そこそこの相手にはなるでしょう。特に、リカルドのチームにはウエストインディゴのナンバー1と称される『ラヴェス』という獣種の男も加わっています……とはいえ、うっかり殺すなんてないことのようにお願いしますね? リカルドもそれほどの人望はないようですし、ある程度ボコって降伏を促すのが有効かと」
 模擬戦は、イレギュラーズ8人を含めた15対15で行われる。場所は傭兵団が所有している訓練場で、戦闘にも適した広さと言える。
 マギトは傭兵団への手配を進めようとする一方で、
「いや〜、皆さんのお蔭で賭け試合――ゲフンゲf模擬戦が成立しそうで何よりです♪」
 どこか含みのある言い方をした。

●傭兵団の訓練場
 ウエストインディゴ傭兵団の所有する訓練場に訪れたイレギュラーズは、レグナを慕う舎弟たちから歓待を受けた。
 訓練場の周囲には、模擬戦の行方を見守ろうとする大勢のギャラリーが存在している。
 人間種や獣種などが集う中、そこには特徴的な額当てを身に着け、片腕に包帯を巻いた状態の人間種――レグナの姿があった。負傷しているレグナだったが、
「大した傷じゃない。俺は俺で、あの野郎と決着を着ける必要があるんだ」
 レグナの視線は、リカルドのチーム陣営を見据えていた。レグナの視線の先には、優男風の青年と、そのそばに控えている虎の獣人――マギトが名前を上げた、リカルドとラヴェスの姿があった。

GMコメント

●情報屋からの挨拶
「どうも皆さん、マギト・カーマインです。……は? 賭け試合? 何のことですか? そんなことより仕事に集中してくださいよ。皆さんなら必ず勝利を納められると信じていますよ!!」

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。
(導入内容はオープニングの3章目になります)

●成功条件
 レグナたちのチームを模擬戦で勝利させること。チーム全員を倒した方が勝利となります。
 【不殺】スキルがない場合でも、戦意を喪失させ、脅して降伏させるのも可です。
 傭兵たちは、全員【不殺】スキルを持っています。

●戦闘場所&レグナのチームについて
 時刻は日中。ウエストインディゴ傭兵団の所有する訓練場。
 レグナと舎弟ら7人は、全員近接武器を扱います。負傷してハンデを負っているのはレグナだけです。

●敵チームについて
 人間種、獣種で構成された傭兵ら15人。
 全員が近接武器を扱う。攻撃手段は、主に物近単。飛び道具を扱うイレギュラーズに対抗するために、遠距離系の武器を扱う場合もある。
 リカルドは双剣、ラヴェスは双戟を扱い、【追撃】を加える攻撃を得意とする。

 個性豊かなイレギュラーズの皆さんの参加をお待ちしています。

  • 傭兵たちはクソ野郎に反旗を突き立てたい完了
  • GM名夏雨
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年07月18日 22時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
矢矧 鎮綱 景護(p3p009538)
忠義はかくあるべし
八剱 真優(p3p009539)
忠義はかくあるべし
サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)
砂漠の蛇
皿倉 咲良(p3p009816)
正義の味方
ウルファ=ハウラ(p3p009914)
砂礫の風狼

リプレイ

 ウエストインディゴ傭兵団の訓練場――その周辺には、勝負の行方を見届けようとする野次馬たちが群がっていた。
 群衆の中に、何やら複数の男たちから金を集める情報屋のマギトの姿があった。ゲスい笑みを浮かべて勘定をするマギトを見つけた『竜首狩り』エルス・ティーネ(p3p007325)は、呆れた口調でつぶやいた。
「マギトさんたら……全く、人の揉め事にお金を賭けるのは如何なものかしら?」
 賭け事を仕切るマギトからひとまず視線を外し、エルスは訓練場を挟んだ真向かいに陣取るリカルドやラヴェスらの様子を眺める。
 互いのチームはそれぞれ武装を整え、模擬戦の準備を進めていく。そこにはリカルドの父親、団長の姿もあった。
 やる気をみなぎらせているというべきか、殺気立っているというべきか――『正義の味方(自称)』皿倉 咲良(p3p009816)は、卑劣なリカルドにお灸を据えてやろうと勇み立っていた。
 団長と話すリカルドの姿を認めた咲良は、ますます険しい表情を浮かべた。
 ――レグナさんをクビにしようとする団長さんも正直どうなのって思うけど、そこに胡坐をかいてるリカルドはもっと許せない。
 人一倍正義感を燃やす咲良は、団長親子に憤りを禁じ得ないほどだった。
 ――正々堂々戦って、ボッコボコにしてやるんだから!
 咲良と同様に、『忠義はかくあるべし』矢矧 鎮綱 景護(p3p009538)も団長の対応には思うところがあった。
 ――喧嘩であれば双方の言い分を聞くものだが。
「……俺が思っても、言うことではないな。そこは団内の話だ」
 そうつぶやいた景護の横で、『忠義はかくあるべし』八剱 真優(p3p009539)はどこか上機嫌な様子で訓練場を見渡していた。
「義を見てせざるは勇無きなり――」
 ――レグナ様という方の筋の通し様に、私は義を見出しました。
 レグナたちのチーム側に義があることから、真優は存分に腕を振る構えだった。
「景護、ヤってやりましょう!」
 気勢をあげる真優は、従者の景護と共に張り切って戦場に臨む。
「リカルドさんって人が悪いのはよくわかったわ。甘やかされて育った方々はどんな方でも愚かになってしまうのかしら――」
 どこか考え込むような表情でつぶやいたエルスは、不思議そうにその様子を見つめる『砂礫の風狼』ウルファ=ハウラ(p3p009914)の視線に気づいた。
「……いえ、こちらの話だけれどね?」
 ウルファの視線に対し苦笑してごまかしたものの、エルスは自らの心情を語る。
「これはまぁ、私情でしかないの。私が求めていたものを一心に受けて、それを利用して……最後には頬笑みを浮かべて、死を受けいれた子がいたわ」
 エルスが依頼を請け負ったのは、義妹を愛する義父のせいで、辛酸をなめた過去の自身をなぐさめるためとも言えた。
 ウルファはエルスの事情に深入りするようなことはせず、話題を変えるように言った。
「しかし、レグナの心意気は見事だな――」
 卑劣な妨害工作にもめげず、あくまで模擬戦の場で決着をつけようとするレグナをウルファは賞賛した。
「ただの数合わせで納まるつもりはないが……赤犬の女にローレットが7人居ることが卑怯とは、相手も言うまい」
 エルス自身のことを『赤犬の女』と称したウルファは、目を白黒させるエルスから二度見された。

 開始の時刻が迫っていることを示す予鈴として、連続で鳴らされる銅鑼の音が響き渡る。
 訓練場の開始位置に向かう直前に、レグナは改めてイレギュラーズに謝意を示した。
「模擬戦のためにチームに加わってくれたこと、感謝する」
 『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)はレグナの言葉を素直に受け取ったものの、「リカルドから逆襲されるのも納得であります」と爪の甘いレグナを表していた。
 敵の面子を潰す時は、戦争する覚悟で――。
「反撃する気が無くなるくらい、徹底的にやるであります」
 そう言って、エッダは鉄甲に覆われた拳を掲げてみせた。
 訓練場の隅に団長の姿を認めつつ、『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)は心中でつぶやいた。
 ――レグナさんの顔に泥を塗らないようにしないと、ですね。
 訓練場の中央に向かって進み出た模擬戦の参加者たちは、各々武装した相手チームと向かい合う。
 ウィズィは堂々たる仁王立ちで、等身大のテーブルナイフそのものの武器を地面に突き立てた。そのウィズィと視線が合ったリカルドは、ニヤニヤと笑みを浮かべ、これみよがしに声を上げた。
「おいおい、レグナ……チアガールは場外から応援するもんだろ?」
 イレギュラーズの女性陣を前にして、侮蔑的な冗談を飛ばすリカルド。団長の息子であるリカルドに媚びへつらう取り巻きたちは、それを聞いて一斉に笑い出した。
 咲良は今すぐにでもリカルドを殴り飛ばしたい気持ちを抑えつつ、相手を挑発し返す。
「アタシが弱そうに見えるんだったら、それは舐めすぎだよ?」
 咲良に同調し、エルスもリカルドに向けて不敵な笑みを浮かべると、
「レグナさんを退けてもあなたがやっていけるか……私も見てあげましょうか?」
 粗暴な傭兵たちを前にしても、余裕な態度を見せつける。
 エルスに続き、エッダも冷静に言葉を返す。
「その股の間にぶら下がってるものがただの飾りじゃないことを、証明できるといいでありますね」
 相手チームの傭兵には、見た目に反して口が悪いエッダに眉をひそめる者もいれば、性懲りもなく口笛を鳴らす者もいた。その中でも景護は、リカルドやチームメイトに同調せず、泰然自若としたラヴェスの様子を注視していた。
 互いのチームが開戦の瞬間を待ち望む中、団長が鳴らした銅鑼の音がその合図を告げた。
 一斉に相手へと向かい、手にした武器を振り向け、互いの腕を競い合う傭兵たち。
 負傷した状態を押して勝負に臨むレグナのために、イレギュラーズは各々が定めた目標、役目のために動き出す。
 リカルド、ラヴェスらの両名を他のチームメイトから分断しようと、
「さあ、Step on it!! 泣いて謝る準備は出来たかッ!」
 気合を入れたウィズィは、実力ナンバー1と称されるラヴェスを真っ先に狙う。
 等身大のテーブルナイフを瞬時に振り抜いたウィズィに対し、双戟を構えたラヴェスは即座に反応する。
 横に突き出た戟の刃でウィズィの攻撃を受け止め、機敏な動きでウィズィのナイフを弾き返す。わずかな間に刃を翻し、ウィズィは果敢にラヴェスに食い下がる。
 ウィズィとラヴェスは、苛烈な勢いで互いの刃を交える。相手を凌駕しようとウィズィに傾注していたラヴェスだったが、一瞬で攻め上がる咲良の動きに気づく。
 ウィズィとの間を縫うようにして、咲良はラヴェスに肉弾戦を仕掛ける。伯仲していた両者の間を裂くように、咲良はラヴェスに向けて鋭い蹴りを放った。その動きに対してもラヴェスは隙を見せず、咲良の蹴りはラヴェスの虎柄の毛皮を勢いよくかすめた。
 ラヴェスは連続で攻めかかろうとする咲良やウィズィの動きをけん制していく。相手を貫くことにも斬り払うことにも特化した双戟を、ラヴェスは巧みに振りさばく。2人の勢いをくじこうと動くラヴェスは、視界の端に景護の姿を捉えた。
 ラヴェスを狙う景護は、一瞬の間にその能力を発揮する。自らの生命力を糧にすることで、景護は鋭利な爪を立てようとする鬼の手を具現化させた。鬼の手はラヴェスへと真っ直ぐに向かい、その刃や体を突き抜ける。幽体のように飛翔し、外傷を与えない鬼の手だったが、何かをえぐり取るような動作によって、ラヴェスの体を芯からむしばむ。
 景護はラヴェスに向けて言い放つ。
「貴殿の意図も立ち位置も知らぬ……が、外れてもらおう」
 すでにラヴェスはリカルドと分断され、エルス、サルヴェナーズ、ウルファらは他の傭兵たちを押さえ込もうと立ち向かう。
 サルヴェナーズは、災厄の精霊としての能力を見せつける。タールのように暗い光沢を帯びた泥――汚泥がサルヴェナーズの武装の隙間から周囲へとあふれ出す。その泥からは無数のヘビやサソリが這い出し、周囲で耳障りな羽音を立てる羽虫の群れが、サルヴェナーズの不気味さを一層引き立てた。
 傭兵たちは、人間離れしたサルヴェナーズの様子に尻込みしていた。だが――。
「君たちの相手は我らだ」
 ウルファはその一言の直後、躊躇いなく魔力を放つことで傭兵2人を吹き飛ばす。ウルファの魔力は砲撃と化して放たれ、相手を大いに戦慄させた。
「おや、何を怖気づいているのですか――」
 そう言って、サルヴェナーズは傭兵らを挑発する。
「本当に腕に覚えがあるのであれば、倒して先に進むのが当然では?」
 自信に満ちた言動のサルヴェナーズは、その両目を布で覆っていた。両目を覆う布の下からは、魔眼の強い輝きがもれ出し始める。
「――それとも、ご主人さまが居なければお散歩も出来ませんか?」
 魔眼の力を帯びたサルヴェナーズの蠱惑的な声は、傭兵たちの精神を大いに揺さぶった。
 サルヴェナーズに引きつけられる傭兵たちは、魔力を操る相手に対し、無謀とも思える勢いで攻撃を仕掛ける。サルヴェナーズらと連携し、傭兵らを迎え撃とうとするエルスはつぶやいた。
「やり過ぎないように手加減するのは、骨が折れる事なのよね」
 エルスは野獣のごとく対象へと食らいつく漆黒のオーラを放ち、相手を容赦なく一掃する動きを見せた。
 エルスらが傭兵たちの陣容を掻き乱す中で、真優はその中心へと進み出る。イレギュラーズと共に激しく攻めかかるレグナや傭兵らを後押ししようと、真優は癒やしの力を込めた歌声を響かせる。
 周囲の者の治癒の力を引き出した真優は、レグナに向けて声高に言った。
「後顧の憂いはこちらで断ちます、思いの丈をぶつけてきてください!」
 レグナは真優を一瞥し、リカルドへと接近する動きを見せた。
 サルヴェナーズらが傭兵の注意を引きつける一方で、リカルドはラヴェスに加勢しようと動く。しかし、エッダはリカルドの進路に立ち塞がる。
「私はあなたに正論を飲み込む頭など期待しません」
 エッダはその言葉と共に、リカルドに向けて鉄の装甲に覆われた拳を突き出した。わずかな差でエッダの攻撃を避け切り、リカルドは後方へと飛び退く。エッダは態勢を整える隙を与えまいと、一気にリカルドとの距離を詰めた。
「――徹底的に潰します」
 その言葉通り、エッダの一撃が放った重圧は凄まじいものだった。双剣を構えたリカルドは、衝撃を受け流せずに更に押し込まれる。
 エッダの動きに目を見張るリカルドだったが、瞬時に反撃の構えを見せた。応戦するエッダに対し、リカルドの剣先は1ミリも触れることはなかった。リカルドの動きを先読みし、巧みに立ち回るエッダは息ひとつ切らさない。
 エッダはリカルドを翻弄し、挑発するような動きを見せつけた。エッダの行動に無駄に高いプライドを刺激されたリカルドは、なおも食い下がる。
 次第にエッダはその勢いを加速させ、鉄帝の騎士としての本気を発揮する。顔を執拗に狙うエッダの攻撃に圧倒されるリカルドは、3人に囲まれているラヴェスに応援を求めた。
 ラヴェスは3人の包囲を崩そうと、景護に向けて狙いを定める。ラヴェスの動きに応じ、景護は刀を振り抜く構えを見せた。
 互いの刃がかち合う中で、景護はラヴェスの勢いを利用するように攻撃をいなし、自らの間合いへと引き込む。その直後、景護は手甲をはめた手でラヴェスのミゾオチ付近を強打し、ラヴェスの動きはわずかに鈍る。その隙に乗じようと、ウィズィはラヴェスに接近する。
 更に攻撃を畳みかけようとするウィズィに対し、ラヴェスは双戟を振りかざしてけん制する。ウィズィはラヴェスの動きを見定めつつ、自らの魔力を全身に巡らせることで、ラヴェスを圧倒する機会を窺った。
 魔力を宿したウィズィと対峙するラヴェスも、どこかただならぬ気配を感じ取っていた。
 一気にラヴェスの間合へと踏み込んだウィズィは、格段に研ぎ澄まされた動きを見せつける。全身に力をみなぎらせたウィズィの苛烈な一撃は、ラヴェスを激しく突き飛ばした。
 地面に転がるラヴェスに対し、咲良は追撃を試みる。ラヴェスは咲良の相手を余儀なくされ、リカルドとの合流を阻まれ続けた。3人を相手に手こずるラヴェスに痺れを切らしたリカルドは、
「おい、ラヴェス! 早くしろ――」
 ラヴェスに向かって声を荒げた瞬間、リカルドはエッダによって剣の1つを弾き飛ばされる。そのまま勢いに乗るエッダは、執拗にリカルドの顔を殴打し、4発、5発と強烈な一打を重ねていく。
 サルヴェナーズやエルスと共に大半の傭兵の数を減らしたウルファは、リカルドの相手をするエッダに加勢しようと動く。
「――夜の風よ、疾く来たれ」
 ウルファがそうつぶやいた直後、リカルドの頭上を中心に、バラバラと雹が降り注ぐ。時折拳ほどの大きさの氷の塊がリカルドの目の前をかすめていった。異様な光景を生み出しているウルファのことを、リカルドは忌々しそうに見つめ返した。
 リカルドはエッダと応戦しつつも、「卑怯だぞ!」とウルファを罵る。ウルファは何食わぬ顔で言葉を返す。
「腕と剣に命を預けるものなれば、
狡猾に立ち回るのはむしろ戦場の華であろう?」
 ウルファは周囲のヤジウマを指して、「君も少しはギャラリーを楽しませることだ」と不遜な態度で言い添えた。
「リカルド!」
 鋭く声を上げたレグナは、リカルドと対峙する戦線へと加わる。
「お前とはここで決着を着ける」
 レグナは一帯に降り注ぐ雹にも構わず、正面からリカルドへと突撃する。
 エッダにぼこられ、ウルファの雹にさらされ、手負いとはいえナンバー2のレグナと相対するリカルドの様子を気にかけ、ラヴェスは視線のみをそちらに向けた。目まぐるしく入れ替わる攻防により、ウィズィらを相手にするラヴェスの体力は削られていく。
 ――レグナ様……その心意気、私達も見習いたいものです。
 義を以って立つレグナの戦いを見届けようと、真優も張り切って歌声を響かせる。戦線の維持に務める真優は、その癒しの力を存分に行き渡らせていく。
 サルヴェナーズとエルスは、他の傭兵たちに向けて降伏を促した。
「これだけ戦えば、雇い主への義理は果たしたはずです。そろそろ楽になりたいでしょう?」
 大蛇の群れの幻影を操るサルヴェナーズは、怯え切った様子で剣を構える4人を誘導する。
 サルヴェナーズが慈悲を示すのに対し、エルスは口元だけに笑みを浮かべ、
「ただまぁ、下手を打つなら……骨を折るぐらいどうって事ない、かしら?」
 「ふふ、冗談よ?」と言い添えつつも、その眼差しは冷たいものだった。
 積極的に攻めかかるウィズィに対し、ラヴェスは徹底的に抗戦する。ウィズィも気力を振り絞り、次の一撃でラヴェスを仕留めようと、全力でナイフを振り抜く。
「オッラァアア!!」
 ナイフの背の部分で激しく打ち据え、ウィズィはラヴェスの体を宙へと突き上げた。その直後、リカルドを降すために刃を交えていたレグナは、リカルドの剣を弾き落としていた。レグナは、自らの剣先をリカルドの首筋に達する寸前で止めた。
 レグナが降伏を促す前に、リカルドは両手を上げると、
「こ、降参だ!!!!」
 レグナはリカルドのことをしばらく睨みつけていたが、リカルドに無言で背を向け、自らの陣営に戻ろうとした。しかし、リカルドはその瞬間を狙っていたように、地面に転がっていたある物を手にした。拳大の雹――氷の塊という凶器を手にし、リカルドはそれをレグナに向かって投げつけようと身構えた。
「――やっぱ卑怯者は卑怯者だね」
 リカルドの不審な動き――姑息な嫌がらせに誰よりも早く気づいた咲良は、瞬時にリカルドの至近距離へと迫った。
 リカルドを止めようとした咲良は、自身の拳をリカルドの顔面に向けて躊躇なく突き出した。正拳突きによってリカルドを激しく突き飛ばした咲良は、
「アンタのやり口は『幼稚』なの! そのクソガキみたいな頭、へし折っていいんだよ?! あぁん?!」
 殴られた拍子にリカルドは意識を失っていたが、咲良は威勢よくまくし立てた。
 ウィズィは膝を着いたままの状態のラヴェスの前に立ち、
「さあ、まだやりますか!!?」
 訓練場に響き渡る声で、他の傭兵らを威嚇する。
 リカルドの無様な姿を見据えていたラヴェスは、潔く敗北を受け入れた。
「負けを認めよう――」
 ラヴェスはゆっくりと立ち上がると、レグナに向けて語りかける。
「レグナ……俺はウエストインディゴから抜ける。お前もそうするなら一緒に来い」
 レグナは思いもよらないラヴェスの言葉に目を丸くした。
「充分恩義には報いた、もうこの団に留まる理由もない。俺と新たに傭兵団を築くのはどうだ? ……お前の実力は俺も認めている」
 団長が止める間もなく、2人を慕う多くの傭兵たちがラヴェスの言葉に賛同した。その様子を見た真優は、満足そうに頷きつぶやいた。
「傭兵団を憂うレグナ様の思いは、ラヴェス様には伝わっていたのですね」
 真優はレグナ派の団員らと共に、盛んにレグナに拍手を送る。笑みを浮かべる景護は、そんな真優の姿を見つめていた。景護の視線に気づいたらしい真優は、何か言いたげに景護を見つめ返す。景護はそれに応えるように言った。
「いや、俺は主に真っ直ぐ忠を尽くせている。恵まれているのだな、と」
 団員らの揉め事はひとまず終息を迎えた。他の団員らと負傷した者を介抱するエルスは、ぐったりしたままのリカルドを見てため息をつくと、
「全く……おバカさんね、金で物を言ってばかりいるからこういう結果を招くのよ」
 一方で、サルヴェナーズは野次馬の中にマギトの姿を見つけ、
「ところでマギト、その手に持っているお金は何でしょう?」
 静かに問い詰められたマギトは、「まあまあまあ……」と営業スマイルを浮かべ、サルヴェナーズに袖の下を握らせようと擦り寄ってきた。それを突っぱねるサルヴェナーズに対して、エッダはマギトに要求した。
「私にも配当よこせであります」
 エッダ自身も賭けに興じていた事実を知り、サルヴェナーズは閉口した。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。ウエストインディゴ傭兵団はめでたく?解体されました。ラヴェスとレグナならうまくやっていけるでしょう。

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