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シナリオ詳細

<Genius Game Next>滅びの暴風

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「お頭ぁ!」
 獣種の男が声を張り上げた。
「あぁん? どうしたァ!」
 それを塗り替えるように更なる大声で吼えたリカオンの獣種の視線がじろりとそちらを見る。
「へへ、村人共の数が想像以上に少なかったでしょう?
 その理由が分かりました!」
「……ハッ、それで?」
「村人め、あの山ン中に逃げ込んだらしいです!」
 そう言って獣種が声を張り上げて山の方を指し示す。
「……へぇ、いいじゃねェか。
 逃がしたとあっちゃぁ、ハウザー様に呆れられらぁな。
 おいてめえら! 山狩りだァ! オーフェルヴェークの獣をおちょくるやつら全員なァ!」
 リカオンが雄叫びを上げる。
「それで、この村はいかがします?」
 山を示した男が顔を上げれば、ニヤリとリカオンが笑い。
「逆らった村人共は適当に見繕って磔にしとけ。見せしめにな。
 それ以外は縛り上げて適当なところに放り込め」
「分かりました!」
 身体を伸ばしたその獣種から視線を外し、リカオンが首をごきりと鳴らし胡乱な瞳を山へ向けた。


 <Genius Game Next>――ROO側から告知されたそのイベントの依頼一覧を眺めていた君塚ゲンム(p3x000021)の指が1つを見て止まる。
「滅びの暴風……」
 ROO内部であるがゆえに『破滅への憎悪』自体は不思議と抑え込まれている。
 それでもなお、やはりその単語には意識が向かざるを得ない部分があると言えよう。
 無意識に止まった指で、そのクエストをタップすると、詳細が浮かび上がった。
「なんだ? ……滅びの村、か。<Genius Game Next>にはどっちみち参加しない手はない。
 その上、俺を誘うかのような文章……行くべきか」
 少しばかり考えていたゲンムの視線が、再びぴたりと停止する。
「……都市伝説、だと?」
 それはその山のふもとにある村落でまことしやかに語られる都市伝説。
 なんでも、フィールドとなる山の中には、滅びの獣が存在しているという。
 山に入り込んだ村人がぽつり、ぽつりと姿をくらまし、次には何も知らぬ旅人が入り込んだという。
 彼らは全員、その姿を見た者は既にないが、共通して彼らが入った場所付近で『不自然に変質した』場所が残っていたという。
 それ故、村人たちは山の中を一種の神聖視することで立ち入りを辞め、荒神にも等しいその獣から目をそらしたという。
「その村に傭兵が襲撃し、村落は焼け落ち、一部の村人が山の中へ避難したんだな……だがそうなると」
 引き続き読めば、傭兵の一部が山狩りを開始したという。
(待て、そうなると、その傭兵も村人も……いや、それどころか俺達もこの奥に住まうというそれにとっては……)
 少し考えれば分かる。
 そうだ、それにとっては『全部が侵入者』だ。
「つまり、山狩りを始めた傭兵を狩るのと一緒に、この滅びの存在とも戦わねばならない、ということか」
 ゲンムは静かに目を閉じて、そっと受注をタップする。
 ほぼ同時、定員枠が一気に埋まっていった。

GMコメント

そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
ROO全体2本目でございます。

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

※重要な備考『情勢変化』
<Genius Game Next>の結果に応じて『ネクスト』の情勢が激変する可能性があります。
又、詳細は知れませんが結果次第によりR.O.Oより特別報奨が与えられると告知されています。

●オーダー
【1】『断岩の獣』シドニウス・オーフェルヴェーク及びその盗賊団の討伐
【2】『滅びの暴風』R.R.による被害を出来る限り抑える


●フィールドデータ
伝承内部にある山の中です。
生い茂った木々の所々に朽ち果てた箇所が不自然に存在する不思議な森です。
その状況故に奇襲を受ける可能性が高く、射程の確保も少々手間取るでしょう。


●エネミーデータ
・『断岩の獣』シドニウス・オーフェルヴェーク
 リカオンの獣種。大剣を握る大柄で隆々とした筋肉質な大男です。
 けんかっ早く、人の話を聞きもしません。
 現実にも同名の人物がおりますが、まるで別人です、気にすることはありません。
 あちらは多少なりとも道理を弁えていましたが、ROOでは残念ながら道理など吐き捨てています。
 戦闘スタイルは豪快な近接物攻型パワーファイターです。
 黒顎魔王にも似た闘気を収束させて放つ超高火力の至近攻撃が一番の大技です。
 それ以外にも攻撃スキルばかりです。

・オーフェルヴェーク傭兵団×10
 シドニウス配下の傭兵です。
 全員が獣種で構成され、非常に強力かつ残忍な攻撃スキルの数々を有します。
 シドニウス含め、回避に関しては基本殆どせず前に突き進む野蛮スタイルです。
 剣や槍、斧と言った近接武器を多く所持しています。


●中立データ
・『滅びの暴風』R.R.
 R.R.(p3p000021)さんのネクスト上での姿です。
 ただし、何らかの状況で理性を摩耗した暴走状態であり、その存在は都市伝説となっています。
 行動は無秩序的で読める物ではありません。
 戦闘スタイルは物神両面前衛アタッカーです。
 レンジも至近から超遠まで様々なうえ、HPが一定まで削れるとより強力になります。
 なお、彼はオーフェルヴェークの傭兵はもちろん、皆様やなんなら山に避難した村人だろうと見つけ次第襲い掛かってきます。
 『彼』の視点からすれば、全ては『侵入者』なのです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <Genius Game Next>滅びの暴風完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月20日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

君塚ゲンム(p3x000021)
胡蝶の夢見人
ルチアナ(p3x000291)
聖女
梨尾(p3x000561)
不転の境界
イデア(p3x008017)
人形遣い
壱狐(p3x008364)
神刀付喪
Λ(p3x008609)
希望の穿光
座敷童(p3x009099)
幸運の象徴
天狐(p3x009798)
うどんの神

リプレイ


 クエストの開始後、8人はそれぞれで山の中に入っていた。
(クエスト内容から見れば実に“破滅的”だが、破滅の音色は聞こえないな)
 山を行く『胡蝶の夢見人』君塚ゲンム(p3x000021)は思う。
 普段の脳髄を書き乱す音色が聞こえないことは心地よい。
 戦略的に見れば、それは明らかに不利なことではあるのだが。
「……流石に高所からは難しいか」
 木の上へパルクールを駆使して駆けあがり、ぽつり。
 木々は生い茂っている。多くの木々が邪魔でとてもここから地上を見下ろすことなどできない。
 それは同時に村人にとっては隠れる場所が多いという証拠でもある。
 降りようとしたその視線に、それ――3つの獣の背が見えた。
 武骨なガトリングキャノンを構える。

「ゲーム内での大規模なイベント、ていう位置づけらしいけれど誰が黒幕なのやら」
 独り言つ『聖女』ルチアナ(p3x000291)は現実と見まごう景色を歩いている。
 ある意味で『作られたもの』として不思議な親近感のようなものがあった。
「捜索に秀でたものを持ち合わせていないし、ひと先ずは皆の力に頼るしかないわね……」
 ぽつりと呟いたその視線の先に、3人の獣種が見えた。
 別角度から飛来した銃弾が獣種を撃ち抜く。
 ルチアナは魔力を纏うと、それを弾丸として1人の獣種へ叩きつける。
 胡乱な色を帯びた魔力が1人の獣種の身体を裂いた。
 獣種の眼が、ルチアナを見る。

(盗賊団の討伐と村人たちの避難。
 どちらもやらねばいけないのがつらいところですが、メイドにできぬことはございません。
 ええ、完璧に成し遂げてみせましょう)
 指先から伸ばした糸を駆使して木の上に乗る『人形遣い』イデア(p3x008017)は次の木へと移動しながらも周囲を見ている。
 その視界に、2人の獣種が見える。
「……あれは」
 それを見た瞬間、糸を彼らの近くの木へと走らせ、木々の上を疾走して近づいていく。。

「傭兵の一部が山狩り……時間をかけると残りが来るかもしれない」
 満足して帰ったかとも思ったが、彼らにとってのリーダーであるところのシドニウスが山狩りに出ている以上、それはなさそうだ。
 その分、村に残る傭兵の事もどうにかする必要性は感じていた。
 考え事をしながらも『陽光のような焔』梨尾(p3x000561)は足取りを確かに進んでいる。
 ある程度歩いていたところで、梨尾は立ち止まってスンスンと鼻を鳴らす。
 こびり付いた血と鉄と獣臭。超嗅覚に導かれるように、梨尾は走る。

(傭兵団の討伐も重要だけど滅びの獣ねぇ~侵入させないようにしている?
 それとも何かを護っている? う~ん気になるところではあるよねぇ……)
 『汎用人型機動兵器』Λ(p3x008609)はクエスト情報に書いてあったことに思いを馳せる。
 何かを守っているのか、侵入しないようにしているのか。あるいはそのどれでもないのか。判然としない相手だ。
「まぁ、何にせよ村人さんの保護最優先で傭兵団の始末か……R.R.は成り行き任せだね此れは」
 反響で返ってくる音には今のところ気になるような物はない。
 ――と思っていた。
 不意に聞こえてきたのは恐る恐ると歩く足音。
「あっちね」
 麒麟型のユニットに姿を変えた黒麒に跨るや否や、一気に駆け抜ける。

「ま、触らぬ神に祟りなし、じゃ。無視するに限るの」
 R.R.の事を思い浮かべ、『幸運の象徴』座敷童(p3x009099)はピンと立つウサ耳をピコピコと動かす。
 こう言ってはなんだが、誰だろうとぶつかっていく無秩序な動きの存在を相手にまともな対応は無茶だ。
(村人のほうが僅かに先行しておるはず……とあれば、R.Rと遭遇するのも恐らく村人が先)
 普通に考えれば、そうだろう。わざわざ無秩序と書かれていた以上、そうとも限らないのだが。
「とはいえ、普通に考えて奥の方へ逃げるじゃろう、指向性上げて急ぐぞい」
 ピンとそばだててぴくぴくと動かす。
 なにか、声のようなものが耳を打つ。そちら目掛けて座敷童は走り出した。

「村は再び作り直す事は出来る、だが人はおいそれと作り直す事は難しかろう。
 救うぞ、この手が届く限り」
 エコロケーションで周囲の様子を感じ取りながら『きつねうどん』天狐(p3x009798)はリヤカーを押しながら山を進んでいる。
 ふと天狐は立ち止まる。そこには名状しがたい変異を見せる木の残骸があった。
 動物や何かにどうこうされたような感じではない。
 根本から何かが致命的に歪んだような、そんな感じだった。
「うむ、これが言っていた『不自然に変質した』場所とやらか……この角度ということは……」
 視線を、その方向へ向ける。しかし、そちらには何もなかった。
 訝しむ中でその耳を打った木々をかき分ける音。
 そちらに振り返ったその瞬間、そこから村人が姿を見せた。

(砂嵐の傭兵団か、規律がなければただの賊だなこれは……
 そして山に潜む滅びの襲撃者……三つ巴とは中々厄介な戦いになりそうだ)
 誰彼構わず全てを敵に相手取る襲撃者が相手では共闘どころではない。
 『妖刀付喪』壱狐(p3x008364)は少しばかり考えていた。
 不意に聞こえたのは人々の怯える声。
 そちらに歩いていくと直ぐに2人組の村人の姿を見た。
「麓の村の方々ですね?」
「は、はい……」
「助けに来ました。イレギュラーズです。
 着いてきてくださいますか?」
 そういうと、ほっと2人が安堵の域を漏らす。
「村に戻って復興するまでが脱走ですからね。
 気を抜かずに、けれど張り詰めないで行きましょう」
「は、はい!」
 こくこくと頷く村人を連れて、壱狐は一度村へと降りていく。


 戦いが開始されてから少し。
 合流を果たしたゲンムとルチアナは会敵した3人の獣種のうち2人を倒していた。
 ガトリング砲を構えなおして、ゲンムは引き金を弾いた。
 魔力弾は散らばることなく真っすぐに片方の獣種に傷を負わせていく。
 それに続けるようにルチアナも動く。
 魔力を帯びた両腕を叩きつけた。
 触れた魔力が複数の刃に変質して獣種の命を削り落とす。
 イデアは糸を操り黒騎士を動かす。
 黒騎士に備わっていたライフルが真っすぐに叩きつけられていく。
 2人ともにまとめてぶち抜ける銃弾が獣種の身体に風穴を開き、崩れ落ちた。
 Λは木々の間を走り抜ける。
 木々を駆け抜けたその先で、人々が集まっていた。
「麓の村の人だね」
 びくついた村人にΛは自分の身分を明かすと彼らを連れて山を下りるべく動き出す。
 超聴覚を頼りに駆け抜ける梨尾の視界に、それらの姿が見えた。
「ちぃ――面倒くせぇ、なんだてめえ!?」
 リカオンの獣種――シドニウスが舌打ちを一つ。
 絶えず聞こえる木々を打つ音――いや、眼にも止まらぬ速度で木々を蹴っているのか。
 梨尾はその様子を息を潜めて見つめていた。
 梨尾は聖杖を握ると、魔力を整えた。
 美しき波の音色が響き渡り、シドニウスを中心とする傭兵へ錨火が触れる。
 敵の眼が、梨尾を見た。
 リヤカー引きずり、天狐はそこへ姿を見せた。
「シドニウスとR.R.が両方じゃと」
 その様子を見て天狐は直ぐに走り抜け、シドニウス目掛けて突撃をぶちかます。
 無数にも見えるエフェクトを齎しながら、リヤカー屋台が何度も何度もシドニウスの身体を叩きつける。
 座敷童が姿を見せたところには数人の村人がお互いを寄せ合って隠れていた。
「そなた達は麓の村の者じゃな?」
 こくこくと頷く村人に運命帰還の祝詞を紡いでから、彼らの様子を見る。
 幸い、怪我をしている者はなさそうだ。
 戦場から離れてもらおう――と言おうとしたが、それも難しい。
 どこに敵がいるのか全てを把握できぬ以上、一番いいのは――自分達の近く。
 それを説明してから、座敷童は村人を連れて歩き出す。


 戦闘が始まってから少しずつ時間が経っている。
 散らばり各地で戦っていた8人は徐々に剣戟の音を頼りに集まりつつあった。
 梨尾は魔力を収束させる。陽光の輝きが杖を温かく包み込んでいく。
 煌々と輝く紅蓮の焔は美しく、山中を苛烈な火に彩っている。
 収束した輝きが一条のレーザーのように変質、振り抜かれた弾丸は不殺を帯びて駆け抜ける。
 それはシドニウスと獣種共を巻き込み焼き尽くす。
「――鬱陶しいやつらがよ!」
 シドニウスの腕に握られた大剣に闘気が集束していく。
 踏み込みと同時、闘気を帯びた剣閃が梨尾の身体を焼き尽くした。
 天狐は自らの内側に仮想展開する。
 それはあらゆるものをごり押しに変える強化術式。
 そのまま天狐は駆け抜ける。
 荒々しいまでの猛連撃がシドニウスへと吸い込まれていく。
 エフェクトとSEが連続で打ち込まれれば、シドニウスの身体がぐらりと揺らいだ。
「この位置であれば狙えそうじゃのう」
 座敷童は天へ向けて蹴鞠を蹴り飛ばし、そのまま木を足場のように駆けあがり跳躍。
 ふわふわと浮かぶ鞠は闇色の炎を纏う。
 打ち込んだ蹴鞠はそれは炎を司る鳥の如く輝きながらシドニウスを中心とする傭兵団へと炸裂する。
 炸裂した獣種達は身体を凍てつかせ、身動きを留めていく。
(R.R.の侵入者へ襲い掛かってくる理由……知ることができれば対応しやすいのだけど……)
 思考するΛは敵が見える場所へまで麒麟を進める。
 空気中の魔力素を取り込んだ。魔力は自身の物と結合、収斂されていく。
 バチリと魔力が爆ぜて高い直進性と貫通力をもって薙ぎ払っていく。
 イデアは黒騎士を連れて跳躍を繰り返しながら戦場へ踊りこんだ。
 ばらまかれる数多くの弾丸が複数の傭兵達を巻き込み、その多くが崩れ落ちていく。
 黒騎士の身体が軋み、人形の一部が割れる。
 真っすぐに劈く滅びの砲撃がイデアの身体を焼き払う。
 糸を木に巻き付けて体勢を立て直しながら地面へ。
「申し訳ありませんが、戦う理由もありませんね」
 着地と同時、イデアは砲撃の主を見て、直ぐに視線をはずしてシドニウス目掛けて黒騎士を走らせた。
「この世界における俺のあの姿……ルイン・ルイナという存在のIF、という訳か」
 木の上、イデアを撃ち抜いた灰色の影を見据えゲンムは思わず言葉に零す。
 間違いなく、あれは自分自身だった。
 一歩間違えれば、あの姿になっていておかしくない。
 重い現実に胸を掻き抱きたくなりながらも、引き金に手をかけた。
「――だとしても、何呑まれてんだよ、“俺”」
 『俺』の視線が確かにこちらを狙っているのが分かる。
 そして――刹那の間にその姿が消えた。
 ――背後。
 とっさの判断で飛び降りて、空中で後ろを向き――銃弾をぶちまけた。
「――そんな破滅にまみれた醜い面見せんじゃねぇ、ブチ滅ぼしたくなるだろうが
 血走っているのにハイライトの消えた恐ろしく醜い瞳がゲンムを向いていた。
 入れ替わるようにルチアナは跳躍する。
(進んで死ぬような役割なんて、本来まっぴらごめんなのよね。ルアナなら、みんなのために頑張る!
 ……だとか言ってやる気出すんでしょうけれど。まぁいいわ)
「なるべく惹きつけるように動いてみるからその間にシドニウスや盗賊団を潰して頂戴」
 入れ替わり途中、そう言葉を交わせば、ゲンムが頷いていた。
 掌に帯びた魔力を叩きつければ、R.R.が手に滅びを纏って勢いを殺す。
 敵の胡乱な瞳にぼんやりと怒りが覗く。
「アナタに対して特に思うことはないけれど、しばし私と遊んで頂戴」
 ぐるりと回し蹴りを受け流すが、殺しきれなかった分で吹き飛ばされ木に叩きつけられた。
 続くように壱狐は太刀をおさめると共に構えを取って跳躍、R.R.の背後へ回り込む。
 術式を籠められた五行を為す洗練された斬撃を振り下ろす。
 勢いをそのままに2度。切り返すように叩きつければ、敵の身体が揺らぐ。
 煌く陽光の如き刃に切り裂かれたR.R.の身体から妖刀へと生命力が吸収されていく。
「どうして暴れるのかは分かりませんが、皆さんはやらせませんよ!」
 枝を握ってぐるりと身を翻して飛び降りた壱狐は視線をR.R.から離さない。


 烈しき剣戟が響き渡る。
 Λの四肢に帯びるは虚無の刃。
 跳躍した瞬間、Λは真っすぐにシドニウスへ足を向けた。
 鮮やかに軌跡を描いた蹴撃が敵の腕を跳ね飛ばし、胸を貫いた。
 黒騎士の刃が横薙ぎにシドニウスへと炸裂する。
 色彩を削った深淵の如き純黒の刃が連撃となってリカオンの身体に傷を叩きつけていく。
 シドニウスの大剣がイデア目掛けて振り下ろされる。
「やれやれ、野蛮ですね。
 貴方が私に触れるべきではありませんよ」
 言ったイデアが腕を後ろに引っ張れば、シドニウスがその場でこけた。
 それはイデアが仕掛けておいた罠。地面へ隠した不可視の糸。
「な、なに!?」
 後ろ脚を引っ張り上げられたシドニウスの驚愕顔目掛け、黒騎士の刃が振り下ろされた。
 天狐はボロボロのシドニウスを見ながら舞い踊る。
 それは闇よりも深き深淵にて灯す確かな光。
 深淵の底に沈んだ希望の炎(はな)
 青白き幽世の炎が天狐の身体に舞い散っていく。
 それに指向性を持たせて、敵へと叩きつけた。
「ぐぅぅぁあああ」
 絶叫するシドニウス目掛け、壱狐は続くように走り抜けた。
 背後に迫る無秩序的な軌道のR.R.を無視して踏み込んだ。
 空を照らす陽の光を思わせる温かな燐光が振り下ろされていく。
 それはシドニウスが対応するより早く、強かに上段から斬り下ろした。
「村人はあと何人ぐらいです?」
 それを見下ろしながら壱狐が告げれば、各々、村人を助けた数を申告する。
「あとはもう帰るだけだね」
 互いの申告の末、もう村人がいないことに気づいてΛも頷く。
 ――あとは、R.R.から逃げながら下山するだけだ。
 互いに頷きあって、イレギュラーズは走り出した。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

ルチアナ(p3x000291)[死亡]
聖女
梨尾(p3x000561)[死亡]
不転の境界
座敷童(p3x009099)[死亡]
幸運の象徴

あとがき

お疲れさまでしたイレギュラーズ。

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