シナリオ詳細
<Genius Game Next>襲撃。救出と、そして殲滅を
オープニング
●R.O.Oの大規模イベント発生のお知らせ
『R.O.O』――――『Rapid Origin Online』の略称である。
それは練達がオンライン上に作り出したもう一つの混沌。
何かのバグが発生した事により、制御を外れたそれは『ネクスト』なる世界を作り出し、あろうことか混沌から収集した大量のデータからNPCを作成してしまった。彼らは混沌に実在した人物を反映したものであり、現実であって現実では無い存在として『ネクスト』に存在している。
さて、この『ネクスト』からログアウト出来ずに囚われたままの者達が居る。練達の研究者達や希望ヶ浜学園生徒などだ。彼らを救出すべく、イレギュラーズが『ネクスト』に入り、調査を行なっている――というのが、現在の状況である。
『ネクスト』に囚われた人々は『トロフィー』となっている事が判明している。
この『トロフィー』の獲得にして救出方法であるが、『バグ』はゲームのクリアの報奨として彼等を解放する場合がこれまでにも多かった事から、こういった筋道が用意されている以上はゲームに乗るしかないというのが練達の首脳陣の考えだ。
彼らの推論を強力に補強する重要な出来事が、この度もたらされる事となった。
『R.O.O』から全プレイヤーに『イベント開催告知』がなされたのだ。
大規模イベント<Genius Game Next>を実施するようで、大まかな内容としては、砂漠の悪漢『砂嵐』が伝承西部バルツァーレク領、南部フィッツバルディ領を襲撃する事が明らかになっている。
イレギュラーズへと出された指令は「悪逆非道の砂嵐を迎撃し、伝承領の被害を軽減すること」というもの。
R.O.O曰く『このイベントはネクストの歴史を変え得る重要なイベントです。特別クリア報奨も用意されていますので奮ってご参加下さいませ!』との事だが、その報酬の内容も明かされていない。これまでの件から、『トロフィー』の大量獲得や、情報取得、何らかのアップデートの可能性が考えられている。
また、ある人は考える。「このイベント自体の存在がもっと重要な意味での推論の構築に役立つ」と。
果たして、その結果はどうなるのか。イレギュラーズの行動如何に依るだろう。
●出来うる限りの阻止を。そして食い止めよ。
イレギュラーズは『ネクスト』内ではアバターなるものにその姿を変えている。現実ではそれが誰なのか知りようもない。そもそも、そんな事は詮索する必要も無い事。
それぞれがイメージしたアバターにて『ネクスト』にやってきた彼らは、『砂嵐』の進軍を少しでも食い止めるべく進んでいた。
彼らが向かっているのは辺境にある村や町だ。『砂嵐』が伝承領に踏み入れるとするならば、まずは近隣の村や町を襲って食糧などを奪うだろうと推測した。
そう思いながら進む内に時刻は夕方を迎え、夜に入ろうとしていた。
彼らの進む先には、木々もそんなに無い、殆ど開けたような場所にて存在する、小さな村。シンプルな造りの建物が並び、入口の頭上にはテントが張っている。田舎の村、と呼んでも差し支えないような場所だった。
平時であれば子供達の笑い声や大人達の姦しい声などが上がるだろうと思われるその村には、今悲鳴の嵐が吹き荒れていた。
一言で言えば襲撃だ。『砂嵐』の一部が村を襲撃している様子である。
イレギュラーズが到着した時には、あちこちから火の手が上がり始めた頃だった。
燃え始める家屋。逃げ惑う住民達。賊の怒声や歓声。
耳障りな音を聞きながら、村の中に足を踏み入れ、救出に入るイレギュラーズ。
年頃の少女の衣服に手をかけようとする傭兵を吹き飛ばし、少女を抱き起こす。安全と思われるルートを示し、逃げるよう指示する。少女はお礼を述べると、指し示した道を迷う事無く走って行った。
その背を見送りながら、誰かが言った。
「早くに片を付けよう」
ここに到着した者達全員はそう思っていたし、その為にもやるべき事は明白だ。
住民達の救出と保護。そして敵の殲滅。
村の様子からして、敵には火を扱う武器を所持している可能性が高い。火矢を使った可能性もあり得る為、周囲への注意が必要だ。
また、先程の傭兵が敵であるならば、剣などの武器を所持しているはずなので、近接への対応も必要になる。
敵の数などの情報が少ない以上、その辺りの情報集めも必要だろう。連携を取れれば広く散会せずに情報を得る事も出来るはずだ。
火の手があちこちから上がり始めた村の中や建物の上を走りながら、イレギュラーズは動く。
少しでも被害を最小限に留める為に。
- <Genius Game Next>襲撃。救出と、そして殲滅を完了
- GM名古里兎 握
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年06月21日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●状況知れば戦危うからずにて
村の中を走るイレギュラーズ。彼らはまず分散して村の状況及び様々な情報を得る事とした。
三手に分かれる事になったが、メンバー分けに若干の齟齬があったものの早急に落ち着き、すぐに纏まる。
ジリオライト・メーベルナッハ(p3x008256)の提案により、村で一番大きくて丈夫そうな建物を集合場所とした。先程助けた住民に聞けば、中央近くにそれらしき建物が一軒あり、そこは今の所まだ落とされていないはずだという。そこで集合する事として、イレギュラーズは三手に分かれて行動を開始した。
ペアとして行動する組その一であるジリオライトとユリコ(p3x001385)は、燃える建物のそばに住民が居ないかどうかを確認しつつ進んでいく。居る場合は自分達が来た道を教え、誘導していく。
アクセスファンタズムによって動きやすいパンツスタイルに切り替えているユリコは聞こえてくる敵の声を頼りに進む。
「吾が勝ち馬側ではないのが残念であるが務めなれば、存分に引っ掻き回してくれよう」
「味方で良かったよ本当に」
炎を前にしてテンションが上がっている彼女を見て、ジリオライトは溜息交じりに返す。
テンションが高い彼女とは対照的に、ジリオライトは落ち着いている。しかし、その胸の内は穏やかでは無い。
(群れて弱い奴らを殺して犯して奪って焼いてイキがる連中……気に入らねぇ。全員纏めてブチ殺してやるぜ……!)
怒りを覚えるジリオライトと興奮気味のユリコの視界に入る、敵の姿三名。その内二名が、二人の姿に気付いて弓矢や剣といった武器を構える。残りの一人は今まさに老人へと剣を振り下ろそうとしているであった。
優先順位は村人の救出。
ジリオライトが右腕に雷電を纏ったかと思うと、その力を借りて瞬時に間合いを詰める。一瞬の間に起こった出来事に、賊三名の動きが固まるのを、ユリコは見逃さなかった。
弓矢を構えていた者へと繰り出す拳。顔面を容赦なく殴り、賊の鼻から血が吹き出す。
我に返った賊がユリコへと剣を振るう。咄嗟にバックステップしたものの、完全には回避できず、彼女の胸部下に一筋の痛みが走った。
対峙する両者の耳に届いたのは、バチッという、短いながらも力強い音。そちらへ賊もユリコも視線を移せば、ジリオライトが右腕の雷電で賊を地面に沈める様子が目に入った。攻撃をしてもなお右腕に纏い続ける雷電が、賊に恐怖を与えたのは言うまでも無く。
その恐怖による一瞬が命取りになったのを彼が理解したのは、ユリコの拳によって地面に沈められた時である。もっとも、それが完全に理解出来たのは、数度の攻撃を受けてその命を散らした時だが。
残る一人も片付けて、座り込んだままの老人へジリオライトが手を差し伸べる。
「大丈夫か?」
「あ、ああ……」
ユリコも手を貸し、老人を立たせると、助言を送る。
「とりあえず、ここから逃げた方ガいいな。私達の来た道はあちらだから、あの道を通るといい。少なくとも、ここを襲った者達とは遭遇しなかった」
「ありがとうございます……」
老人といっても初老と呼ぶに相応しい年齢であり、彼は二人に礼を述べるとすぐに言われた通りに走り出した。
足下の賊の人数を確認したユリコが「しまった」と顔を歪める。
「どうした?」
「賊から情報聞くの忘れたまま倒してしまったな、と」
「……次に見かけたら先に問い詰めようか」
ユリコの言葉にジリオライトも苦虫を噛み潰したような顔をするのだった。
パンジー(p3x000236)と鬼丸(p3x008639)は上空を飛んでいた。矢を射られる事が無いように高度を上げ、左右に手分けして上空から村を確認していく。火に照らされて賊と住民の動きがなんとなく見える。賊の人数も数える事で情報の把握に努めていく。
「上空からの捜索、頑張りましょう」
パンジーの猫の目は夜でも活躍するもので、火に照らされていない場所に居る人物の姿も捉える事が出来る。加えて、彼女は黒のローブを纏っている。闇夜に紛れて見えにくくする為の工夫を怠らない。
村人を集める為に最適な場所も模索しつつ、彼女は地上に目をこらす。
鬼丸の方も機械の体の為、視力に問題は無さそうだ。住民が固まっていないかの確認をしつつ、旋回する。
一周した所で元の場所に戻り、合流した二人は情報を照らし合わせた。緊急性の高い場所を特定し、賊の場所も互いに共有する。
その結果、大将格と思われる賊の居場所も発見出来た。自分から動く事もなく、成り行きを見守っているような様子で村の奥に陣取っている姿を発見した事で、すぐに他の仲間との共有が必要と感じた。
もう一度分かれ、互いに違うルートから集合場所を目指す。
鬼丸は火の付いた建物を中心に回り、賊に追われている住民数名を見つけると即座に降り立った。上空から突然現れた鉄騎に一瞬怯む賊だが、彼らの武器は剣のみであり、それだけなら鬼丸の敵では無い。
彼の放ったスキルが賊を襲う。氷結が彼らの足下を固定し、動けなくさせる。だが、近くに火がある以上、悠長にはしていられない。
鬼丸の次なるスキルが展開され、賊達を貫いた。生命活動を終えたのを確認した後、へたり込んだままの住民に優しく声をかける。
「大丈夫かい?」
「あ、ああ……」
「助けに来たよ。敵を早急に倒したいんだけど、次に彼らが狙いそうな建物などは分かるかい?」
「ああ、それなら、おそらくこの先にある倉庫が狙われている所だと思う。そっちに向かった奴らをさっき見かけた」
「ありがとう。上から確認したら、あっちの道を通った方が安全そうだったよ。逃げるならそっちの道の方がいいと思う。仲間達も避難誘導していたから、多分他の無事な人達もそっちに居ると思う」
「本当か! ありがとう!」
「さ、早く」
促され、駆けていく住民達。道中の無事を祈りながら、鬼丸は再び空に飛び立った。
残る四人も村の中を駆けていた。
三人から少し離れた距離を取って先を行く『不可視の狩人』シャドウウォーカー(p3x000366)は、村のあちこちから立ち上る火の手を見て独り言を呟く。
「もう早速被害が出てるね、夜でも村が明るいや」
現実でもゲームでも賊というものの性質が変わらない事に溜息をつく。
その呟きが聞こえた訳では無いだろうが、タイミング良くSakura(p3x009861)が唇から言葉を零す。
「……ランプなんて必要なかったかもな?」
ランプの中の火を消す事も一瞬考えたが、考え直し、つけたままにした。何が起こるか分からない状況では一応持っていた方がいいだろうという判断からだ。敵に見つかる可能性もあるが、無いよりはマシというもの。
『himechan』空梅雨(p3x007470)は既に事切れた住民や一部が崩れた建物を視認して、唇をキュッと結ぶ。
(……ゲームの中とはいえ、やっぱり無力な者が蹂躙される様子を黙って見てはいられませんね)
悪党に成敗を、住民に救済を。
改めて意気込みを見せる彼女は、村人の救出を優先する。
シャドウウォーカーは物陰を使っての移動を繰り返していた。彼女のアクセスファンタズムにて気配を消し、姿も希薄になるようにしているが、移動中だけはどうしても消す事が出来ない。辺りを注意深く窺いながらの前進で敵情調査に乗り出す。
半ば単独行動を取っている彼女に偵察を任せ、ホワイトローズ(p3x000921)は他の二人と同じように住民の救出へと力を注ぐ。
「ゲームといえど人が傷つけられるのはあまり好まないわね……。できる限りのことはしましょうか」
賊を見つければ彼女のスキルで遠くから狙い撃つ事も可能だ。シャドウウォーカーが敵情調査から戻ってきたらそれを頼りに迎撃する事も出来るだろう。
三人で賊から逃れて建物の中や影に隠れている住民を見つけると、自分達の来た道を教え、避難するよう誘導する。恐怖心を和らげるように、Sakuraがポケットからビスケットを出して差し出す。
「気ぃ張れよ、俺らがどれだけ守ったって、最後にあんたを守るのはあんたの生きたい意志だからな」
半信半疑ながらも、賊とは違う様子からとりあえずは信用して貰えたのか、住民の殆どはホワイトローズ達が示した道に沿って走って行く。
それでも恐怖から信じない者も居る。その者にはそれ以上無理強いはせず、一応避難経路だけ伝えてその場を離れた。
途中で敵と遭遇した場合は空梅雨が前に出て注意を引きつけ、その隙をSakuraやホワイトローズがスキルで狙う。
そういった事を繰り返しつつ、戻ってきたシャドウウォーカーから敵の情報を得る。
どの辺りに弓矢を持っているのが居たとか、そういった情報を得た辺りで、集合場所となる建物に着いた。
現在の所賊がそこに来ている様子は無く、そして他のイレギュラーズもほぼ同時に集まってきていた。
上空偵察組から、敵の大将格と思われる者達の居場所や、見えた限りで確認した住民や他の賊の存在を教えてもらい、皆で情報を共有する。
また、ユリコとジリオライトが得た情報によれば、賊の数は大将格を含めて三十名以上。大将格は強いが、複数でかかるとかなりキレるという話も得た。一騎打ちを好むという大将格の話に珍しさを覚えるが、ゲームの世界だ。あまり深く考える必要も無いと判断する。
集ったイレギュラーズは、大将格が居ると思われる場所へと急ぐ事にした。
上空偵察組は再び空へ舞い上がり、変わる戦況の様子を適宜に仲間へと伝えていく。
数は多いが、おかげで戦いが少しは楽になっている。不意打ちを食らう事も無く、遠距離での攻撃などで牽制や住民の救出を行なう。
目指すは村の奥。待ち受ける大将格を目指して、空を、地上を、駆ける。
●そのロマンに付き合う義理など無くても、そのロマンを好ましく思うのならば
道中で救出や賊の殲滅をしつつ、また怪我も負ったものの、目的の場所に辿り着く。
そこに居るのはリーダー格らしき大柄の男。威圧的な体格を持つ、傭兵風のその男には体格に合った大きさの斧があり、その穂先は地面に突き刺さっている。
彼の周囲には剣を持つ者、弓矢を持つ者が一人ずつ置かれている。護衛か副官か。どちらにせよ、取り巻きも倒す事に変わりは無い。
Sakuraが前に進み出て、大将格と思われる男に話しかける。
「あんた、強そうだな?」
その問いに、男がニッと笑う。
「お前もなかなかに強そうだと見るが、どうだ」
「俺は……さて、どうだか。あんたの目で確認してもらおうか」
Sakuraの答えに男は「ワッハッハ!」と豪快に笑う。
しばし笑った所で、男がイレギュラーズに問う。
「俺がサシを好む話は聞いているか?」
「一騎打ちが好きで、複数でかかるとキレる、という話は聞いたぞ」
ユリコが返答し、男ガ大きく頷く。
「聞いているなら重畳。
複数でかかるなら俺の周囲に居るこいつらが狙うぞ。そうでなく俺だけを狙いに一人が来るならこいつらも動かぬ」
どうする?
言外に尋ねる男に対し、イレギュラーズの答えは一つだった。
大将格と周囲の賊を前に、方向転換して走り出したのは空梅雨。彼女が向かう先は建物の中。
彼女がつけている燻し銀のバックルの力で見つけた住民がそこに居るのを感じ取ったのだ。
彼女の真意を知らぬ賊からすれば、何かしらの作戦と思われるだろう。
空梅雨に向けて構えられる矢。
それを察知した鬼丸が火器を放つ。それは怯んだ賊に命中し、空梅雨は無事に建物の中へ入っていく。
空梅雨のこれまでの行動からその意味を察した仲間達は、それぞれのやるべき事を選択する。
大将格達を狙う者。空梅雨の救出の援護をする者。
二手に分かれ、イレギュラーズは動き出した。
まずはSakuraが大将格の周りに居る賊へと狙いを定める。
ナイトハルバードを横に振る。その衝撃は剣を持つ賊へと襲いかかり、たたらを踏ませた。
たたみかけるべく、もう一歩を踏み出す。
今度は向こうも負けてはいない。Sakuraが振るった槍斧を剣で受け流し、体勢を立て直す。
そして鬼丸が体を変化させ、三メートル程の体躯になる事で周囲の注目を集めた。これで仮に他の賊がやってきたとしても囮として十分に活躍するだろう。
鬼丸の動きに注目してやってきた賊の姿を視認したホワイトローズが指輪を嵌めた指を鳴らす。
「さて、さっさと落としていきましょうか」
住民が少しでも多く救出出来るように援護するべく、彼女は遠距離からの攻撃で賊を一人一人撃ち抜いていくのだった。
その間に、大将格へと一対一を申し込む者が二名。
ユリコとパンジーが男の前に立つ。どちらも表情は真剣そのもの。ユリコの方だけが強敵を前にした歓喜の笑みを浮かべているが。
素手のユリコに、武器と盾を持ったパンジー。先に勝負を申し込んだのはパンジーの方だった。
「一騎打ちを好むとお伺いしました。無骨な大男じゃなくて恐縮ですが、少しの間お相手頂けますか?」
パンジーの言葉に大将格は頷くのみ。
ユリコも特に異論は無く、パンジーから数歩後ろに下がって見守る。
「もし他の敵がやってきたとしても気にせず集中せよ。この美少女が相手してくれよう!」
目を輝かせて言い放つ彼女にお礼を述べ、パンジーは大将格へと向き直る。
幅広の盾を前に出し、突進していく。
大将格の男が斧を構える。
間合いに入った所で遠慮無く振るってきたのを、パンジーは盾で受け止める。
腕に伝わる衝撃。一撃では折れない盾に安堵しつつ、次はこちらの番だと剣を振るう。大技を使わない為変化しないその剣は、賊の防具を振るわせるに留めた。
純粋に戦いを楽しむ顔をする男であったが、その顔が険しいものに変わる。
目の前のパンジーではなく背後へと振り返りざまに斧を振るう。
それが命中したのはシャドウウォーカーへ。
仲間が気を引いている間に大将格の後ろへ回り込もうとしていたのがバレたようだ。
鎧が受け止めてくれたものの、不意の衝撃で彼女の体が吹っ飛ぶ。
シャドウウォーカーへ男の怒声が浴びせられた。
「随分と卑怯な真似するじゃねえか! さっきの俺の言葉を聞いてなかったのか?! あぁん?!
後で覚えとけよ!!」
サシの勝負に拘りが強いのだろう。本気の怒声に、目の前のパンジーですらも思わず息を飲み込んだ程だ。
それでも気圧されるわけにはいかないと、彼女は剣で切り結びに向かう。
盾と剣を交互に使い、男と戦うパンジーだが、斧の動きの前に膝をつく。だが、彼女は彼女の役割を果たした。男へ少なからずのダメージを与えた。後は託すのみ。
満身創痍の彼女を転がし、男はユリコを見やる。
腕組みをして不敵な笑みを浮かべるユリコに対し、大将格もまた不適な笑みを浮かべて笑う。
互いに言葉は不要。
素手で立ち向かってくるユリコに対し、嘲笑する事もなく迎え撃とうとする大将格の男。
彼女の素手や足技が男へと命中していく。その一つ一つに込めた力はイレギュラーズとしての力。
斧を前にしても怯まず立ち向かう彼女への敬意か、男もまた斧を振るって彼女の体に傷を付けていく。
再びシャドウウォーカーによる乱入もあったものの、それを男の斧がもう一度怒声付きで吹き飛ばした。
先のパンジーとの戦いが響いてきたか、途中から男の動きに精彩さが欠けるようになってきた。
そこを狙わぬ美少女ではない。容赦ない足技を下段から上段へと繰り出す。顎を狙ったそれはクリティカルヒットを叩き出し、男の脳を揺らした。
「ゲームとは言え、美少女は何時だって真剣勝負である! 楽しかったぞ!」
その一言が、男が聞いた最期の言葉となった。
トドメの一撃が男の命を刈り取られたのを、男は認識できただろうか。
地面に斃れる大将格の男。
あとは残る賊の殲滅のみである。
炎に揺れる村の中で、今度は賊の悲鳴が上がる番だった。
戦いを終え、上空から鬼丸とパンジーが住民の居場所を確認する。
残りのメンバー達も先程救出した住民を連れてそこへ集い、彼らは住民達の姿を見つけると人数を数え始める。
住民達に元々の人数を尋ね、現在集まっている住民達の人数と比べる。
迅速な動きのおかげでか、住民達の数は半数以上が生き残っていた。
その事に胸を撫で下ろすイレギュラーズ。
炎が村を焼いていく中、生存した住民達を励ますのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした。
皆さんのおかげで住民はなんとか規定数まで保護できたようです。
情報収集の仕方も工夫次第ですが、良い動きで、対応も良かったです。
ご参加ありがとうございました。
GMコメント
●詳細
お久しぶりです。初のR.O.Oでのシナリオとなります。よろしくお願いいたします。
今回は襲撃されている村を賊から守る内容となっております。今回はシンプルイズベストでお送りさせていただきます。
是非救出と殲滅をお楽しみください。
●成功条件
・住民(五十名程)の半数以上の生存
・賊の殲滅(追い返せば再び襲撃の恐れがあるので、殲滅を推奨します)
●村の状況
・時刻は夜になったばかり。
・火の手があちこちに上がっている。
・幸いにして崩れている建物は少ない。
・賊にとって、男性や老人は殺害の対象、女子供は欲望の対象であり、そのように村を襲撃している。
・食糧や金銭になりそうな物も賊に奪われようとしている。
●敵情報
(以下の情報は、調査や探索を行なう事で判明します)
・リーダー格の男
大柄で、威圧的な体格を持った傭兵風の男。武器として斧を振り回す。人間。
部下達には好きに暴れるよう指示し、後方に待機している。周囲には近接と中距離のそれぞれに長けた部下を一人ずつ置いている。
傭兵風の割に、一騎打ちを好む。強敵と戦うのが楽しいタイプ。
・部下(中距離部隊)
主に矢を使用する。傭兵の服装をしている。
火矢も彼らによるものである。背に油を背負っており、丸めた布を巻き付けた鏃に漬けて着火し、放っている。
それ以外にも麻痺毒を塗った物を放つ事もある。
・部下(近接部隊)
主に剣を使用する。傭兵の服装をしているが、中にはならず者も多い。
殺戮を好み、女子供に対して欲望を隠そうともしない。
剣の腕はそこそこ。我流で振るう者がならず者に多く、動きに無駄が多い。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
※重要な備考『情勢変化』
<Genius Game Next>の結果に応じて『ネクスト』の情勢が激変する可能性があります。
又、詳細は知れませんが結果次第によりR.O.Oより特別報奨が与えられると告知されています。
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