PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ママーーーー!! ママーーーー!!! ここだよママーーーーーーッ!!!!!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●オギャアアアアアアア!!
 ここはラサ。熱砂の大地。
 広がる砂漠、昼夜の寒暖差。生と死が隣り合わせの傭兵業。過酷な環境に生きる人々は、常にストレスに襲われ続ける。
 その結果、とある病を発症する者が増えたというのだ。
 ここは、そんな病を発症した者達の看護施設である! 清潔、かつ温かみのある室内は、ストレスを軽減するための最大限の注意が払われていた。あちこちにベッドや積み木などのおもちゃ、ぬいぐるみやままごとセットなどが置かれており、一見すれば、練達に存在する幼稚園・保育園の類を思い起こさせる。
 だが、これこそが、この奇妙な病室の光景こそが、この病が奇病たゆ所以であるのだ。
「ママー! ママー! どこ、ママー!」
 子供が鳴くような声が響いた! いや、その声を発したのは子供ではない! 筋肉と濃い髭に覆われた、傭兵の男である!
「ママー! あそんでよ、ママー!」
 おお、なんという事だろう! 此方には妖艶な大人の女性が、ぬいぐるみをバタバタと降ってママを呼んでいる! いったいこれはどういうことなのか!
 そう、これこそが、奇病の症状! 病の名を、『オギャリ病』と言った!
 それは、大人のみがかかる病である! 前述したとおり、人は過剰なストレスを負荷としてかけられた時、一線を越える! そう、『オギャる』のである! 症状を具体的にのべれば、極度の不安状態、嗚咽が止まらなくなる、知能指数の低下などがあげられる!
「はい、ギャンダくん、ママですよ~」
 と、柔和な笑顔を浮かべた女性……いや、ママである! ママが、傭兵の男……ギャンダくんへと駆け寄った。ギャンダ君は泣きながらママへと抱き着く! そこに下世話な感情は一切ない。ママがいた喜び、それにギャンダ君は満ち満ちて居た。
「ママー!」
「ギャンダくんは甘えん坊だね。ほら、そろそろお昼寝の時間だよ? 一緒に寝ましょうね~」
 一方、妖艶な大人の女性……リルミスちゃんの下にも、ママが駆け寄った!
「はい、リルミスちゃんは、おままごとがしたいのかな~?」
「ママ! ママがくまさん! あたしがライオンさん!」
 と、嬉しげにぬいぐるみを押し付けるリルミスちゃん! ママは優しく微笑んだ。
「わかったわ、リルミスちゃん、くまさんですよ~」
「きゃっきゃっ」
 一見すると倒錯した地獄めいた光景だが、これも治療の一環である。『ママ』達はオギャリ病治療の専門家――通称『ママ屋』に所属する者たちであった。
「……なるほど、これは壮絶な治療の光景なのだわ」
 と、そんな光景を眺めながら、華蓮・ナーサリー・瑞稀 (p3p004864)は言った。その後ろには、フラーゴラ・トラモント (p3p008825)、エクスマリア=カリブルヌス (p3p000787)をはじめとする、八名のローレット・イレギュラーズの姿があった。その表情は様々で、華蓮のように深刻そうな表情をしているものもいれば、正直ひいてるものもいる。
「皆さんには、ママ屋として、治療にあたって欲しいのです」
 と、ママ屋の一人が言う。今回の依頼人であった。
 ママが言うには、ここ最近の様々な情勢の変化により、オギャリ病の患者が急増。ママたちも一生懸命治療にあたっているが、手が足りないのだという。
 そこで、ママと言えばローレット、ローレットと言えばママ、と言う事で、ローレットに依頼が持ち込まれたのだ!
 ちなみに、ローレットに持ち込まれた依頼内容は『病棟での看護を手伝ってほしい』だったので、この様な病と治療法だとは知らずにやってきた者もいるかもしれない!
「ママ屋の治療を受けたくてオギャリ病を詐称する人もいるとかなんとか。恐ろしいのだわ。何とかしなくてはなのだわ」
「そんなものがいるのか」
 エクスマリアがふん、と嘆息した。
「詐病とは、感心しない。本当に、苦しんでいるもの、もいるのに」
「そうだね……みんな、苦しんでる……よね?」
 フラーゴラが言う。病室内では、ママを呼ぶ声、ママに抱かれて喜ぶ声、色々な子供達の声が響き渡っている。
「治療の方法などは、皆様にお任せします。とにかくオギャる患者さんたちにママ味を与えてあげればいいのです」
「なるほど。ままがいるなら、きっと大丈夫、だ。フラーも、いるしな。癒せば、いいのだろう?」
 エクスマリアが言う『まま』とは、華蓮の事である。エクスマリアの全幅の信頼をうけて、華蓮は頷いた。
「ええ、もちろん。フラーゴラ、あなたも大丈夫?」
「うん……アトさんも、最近疲れてるみたいだから……癒し方のお勉強、したいなって……」
 フラーゴラが微笑む。なるほど、癒しと言う点に関しては、ここで学べることも多いだろう。多分。
「では、早速看護をお願いします」
 ママが言うのへ、イレギュラーズ達は頷いた。
 かくして、イレギュラーズ達の看護が始まる――!

GMコメント

 お世話になっております。オギャ井落雲です。
 此方のシナリオは、イレギュラーズ達へのオギャリ(リクエスト)により発生したシナリオになっています。

●成功条件
 ママとなって、患者を存分にオギャらせる。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 奇病、オギャリ病。過度のストレス負荷により発症するその病は、端的に言えば、人を幼児や赤子のように変えてしまう病です。
 皆さんは、そのオギャリ病の専門家『ママ家』の依頼を受け、『ママ』として、オギャリ病患者の治療にあたります。
 別に、皆さんがオギャリ病にり患して、ママにオギャっても構いません。大丈夫です。存分にオギャリなさい。それが明日への活力になります。
 病室は、幼稚園や保育園を思い浮かべていただければ、大体そこにあるものはあります。わりと言ったもん勝ちの世界なので、宣言すればよほどのモノでない限り、大体あります。
 患者の症例としては、例えば以下のようなものがあります

 1.深刻な知能低下
   大人でも一桁歳児レベルに知能になります。ママを求めます。

 2.極度の不安状態
   すごい不安になってママを求めます。

 3.嗚咽が止まらなくなる。
   オギャアって鳴きます。ママを求めます。

  ほかにもさまざまな症状があります。これらの症状に、ママとして対処するのが良いでしょう。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングをお待ちしております。

  • ママーーーー!! ママーーーー!!! ここだよママーーーーーーッ!!!!!完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年06月18日 23時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
※参加確定済み※
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
蒼剣の秘書
※参加確定済み※
加賀・栄龍(p3p007422)
鳳の英雄
リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)
神殺し
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと
※参加確定済み※
朔・ニーティア(p3p008867)
言の葉に乗せて

リプレイ

 ――初めにママみがあった。ママみはママと共にあった。
 このママみは、初めにママと共にあった。
 万物はママみによって成った。成ったもので、オギャりによらずに成ったものは何一つなかった。
 ママみの内にオギャりがあった。ママは人間を照らす光であった――。
「つまりそう言う事! あとはよろしく!」
 そう言うや否や、『バブみを感じてオギャった』朔・ニーティア(p3p008867)は『赤子』たちの群れに飛び込むや、そのままコロン、とあおむけに倒れた。それからゆっくりと両手を緩く握りしめるや、満ち足りた表情で、こう泣いたのである。
「おぎゃあああ! ママー! ママー!」
 と――。

●オギャリ病病棟の死闘
「すごい、表題が出るより先にオギャリ始めた……!」
 『恋する探険家』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)が目を丸くした。
 ラサ、オギャリ病病棟である。見た目は、保育園や幼稚園を思い浮かべていただければよいだろうか。とにかく、多くの『赤子』達が思い思いにオギャっている場所である。
「ぼくより、反応がはやいなんて……びっくり……!」
 あっけにとられた様に『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)が言った。ちなみに、リュコスの反応値は199。朔は111である。
「オギャる時だけ反応が激上がりするスキルでも持ってるんじゃねぇの? 知らねぇけど」
 流石に感心した様子で『オギャって万馬券』キドー(p3p000244)。「っていうか」と、病棟の様子を見ながら肩を落とした。
「俺、看護の手伝いをしたら、ラサの名声貰えるって聞いてきたんだけど。なにこれ、ねぇ、なにこれ」
 味のしないガムを噛んでいる時の様な虚無の表情で、キドーは赤子、いや、患者たちを見回す。オギャリ病。端的に言えば、日々のストレスが限界突破して、幼児退行してしまう病である。幼児退行したい――そう思うものは多いだろう、かくいう洗井落雲もよくぬいぐるみ抱いてオギャってるし。
「私もよ……ただの看護の手伝いだと聞いていたのに……」
 くらり、と立ち眩みを覚えつつ、『ママみ騎士?』アルテミア・フィルティス(p3p001981)。とはいえ、誰も嘘はいっていないのである。ラサで病が流行している。看護の手伝いをしてほしい。ただ、その看護が特殊な看護だったという事が伝えられていなかったわけなのだが。
「ああ、しかし、ママみ……か?」
 『人生葉っぱ隊』加賀・栄龍(p3p007422)も、流石に困った表情を見せながら腕を組んだ。
「わからん……ママって……いや、知識としてはあるぞ? 流石に。でも、母になる、とは一体……? どうしたら、母になるんだ……? 母とはいったい何なんだ……?」
 栄龍が何やら深淵なテーマに片足を突っ込もうとしたが、それを引き留めたのが『金色のいとし子』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)の声だ。
「問題ない」
 ぐっ、とエクスマリアがおててを握りしめた。
「マリア達には、『まま』がいる。ままをお手本にすれば、大丈夫だ。そうだろう、まま」
 と、エクスマリアが視線を向ける。イレギュラーズ達の視線が、その先に向く。そこに居たのはまま――『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)である。華蓮は一瞬、「う゛っ゛」と悲鳴をあげると、肩を落としてため息をついた。それからこくり、と頷くや、
「分かったわ、ええ、私がママなのだわ! それに、皆も大丈夫! あなたがママだと思ったその振る舞いがママなの! ママは優しく、暖かで、子供達の事を考えるものだわ! その基本を押さえておけば、誰だってママになれるの!」
 正気に戻ったら負けだ、と思いながら、華蓮が声をあげる。
「なるほど……! さすが、華蓮さん……!」
 ぱちぱちと拍手するフラーゴラ。
「ぼくも、ママのこと、よくわからないけど……すこし、自信がついたよ。やってみるね……!」
 リュコスがこくこくと頷いた。
「ああ、そうか。そう言う事なんだな……母とは……」
 栄龍がうんうんと頷いて見せる。
「まぁ、オギャリたい……っつーの? 誰かに甘えたくなる気持ちはわからないでもねぇさ。その、なんだ、そう言うお店でな? 俺もな?」
 ぼそぼそとそう言うキドーと、
「確かに、人には心にゆとりが必要だものね……それが得られなくてこうなってしまったのなら、騎士として救ってあげるべきなのかもしれない……私、頑張る……!」
 ぐっ、と決意を表明するアルテミアである。
「さすがだ、まま」
 エクスマリアが、うんうんと頷いて言った。
「みなを、やる気にさせた……これが、ままの力なのだな……」
「うん。それはいいのだけれど」
 華蓮が言った。
「どうしてみんないきなり前向きになっちゃったのかしら?」
 それは誰にもわからない。或いは、華蓮のママ的な力のなせる業なのかもしれなかった。

●看護、開始
 さて、自分たちはママ、相手は赤子……と思い込んでは見ても、しかして実態は、いい年の男女が地獄のようにあぶあぶ言ってるのである。
「うう、相手は子供……私はママ……」
 アルテミアがぶつぶつと呟きながら、きゅっ、とエプロンの腰ひもを縛った。こうなればもう、あとはママとして演じ切るしかない。病室に入ったアルテミア、いや、ママテミアを、子供達の好奇の視線が突き刺した。
「ま、ママですよ~。今日はご本を読みましょうね~」
 自分ながらひきつった笑みを浮かべているな、と思いつつ、手にした絵本をゆっくりと振って見える。とことこと歩いてやってきたのは、ママテミアより明らかの年上の、引き締まった腹筋の女性だった。
「ママー! わたしご本読んでほしい!」
「あ、はい」
 一瞬素に戻りかけたママテミアは、ぎゅ、と自分の手の甲をつねったのちに、
「いいわよ~、ええっと、ロジーちゃんね? ロジーちゃんは王子様とお姫様のおはなしは好きかな~?」
 相手の名札を視つつ、そう告げる。ロジーちゃんは満面の笑顔を浮かべながら、
「うん、わたし、大きくなったらお姫様になるの!」
「えっ、明らかに傭兵の一個大隊率いる女戦士みたいな感じなのに?」
「えっ」
「ううん、何でもないの? ご本読み聞かせてあげるわね~」
「キャッキャッ」
 病室のカーペットに座って、絵本の読み聞かせを始めるアルテミア。その近くで、屈強なコルボみたいな男に膝枕をしてるのがキドーっていうかママーである。
「分かるぜ……報酬と引き換えに鉄火場に身を置くストレスってのはよ」
 コルボみたいな男の禿げ頭をなでながら、ママーは優しく笑った。
 コルボみたいな男も、きっと名のある傭兵団か盗賊団の頭かなんかなんだろう。それが今や、ばぶばぶと言いながらおしゃぶりを咥えている。
 絵面は地獄である。しかし、彼がこうなってしまったのにも、日々のストレスと言う悲しい事情があった。
「単純に仕事や環境のキツさもあるが、それだけなら別の手段で発散出来てもいい筈だ。食い物や酒、女でな。
 それで駄目だって事はつまり、損得勘定抜きで人との関わりを求めているって事だ。
 仕事仲間はコロコロ変わる。友情なんて迂闊に口に出せば笑い飛ばされる。そうでなくても人の命はあっけなく喪われる。
 アンタは、優しいんだな……じゃなきゃ、人と繋がりを求めたりなんてできねぇよ……」
 ママーはコルボみたいな男のおしゃぶりを優しくとってあげると、一肌に温めたミルクを、優しく口に含ませてあげた。コルボみたいな男が幸福そうに目を細める。
「大人には見栄ってもんがある。でも、ここでは忘れていいんだ……存分にオギャリな……この小さなママによ……」
 自分でそう言いながら、自分の膝の上で幸せそうに笑うコルボみたいな男を、ママーはなんだか悲しく、そして愛おしく思えてくるような気がした。明日無駄死にするかもしれないという不安。それは人を壊してしまうほどに強烈なストレスなのだ……其れに身を落としながら、コルボみたいな男は戦い続けてきたのだ……今ここで、穏やかに休ませてやっても罰は当たらない……。
「なるほど……とにかく、優しく、甘やかす……これがママか……」
 そんな様子を見ながら、栄龍っていうかママ龍がうんうんと頷いた。まずは見に回る。しかる後に最適なままムーヴを決めるのだ!
「そろそろ、お昼の時間なのだわ」
 まま……華蓮が言った。
「離乳食と、ミルクと……もう少し上の子には、ご飯が食べられるかしら?」
「ああ、ミルクの準備だな? 確か人肌くらいの温かさ、だったか……?」
 ママ龍が尋ねるのへ、ままが頷いた。
「ええ、あなたも準備をお願いできる? 大人用粉ミルクがあるはずなのだわ」
「ああ、俺も準備をしてきている……調理室を使おう。結構人数いるからな、大変そうだ」
「子育ては大変なものなのだわ……」
 ふぅ、と息を吐くままであった。

 と言うわけでお昼の時間である。
「はい、にんじんのグラッセですよ~」
 と、ママテミアが、ダンディなおっさんの口元に、ニンジンのグラッセを運ぶ。
「やだ! にんじんきらい!」
 おっさんがぷい、と顔をそむけた。
「もう、食べてほしくて美味しくなったのにーって、人参さんがえーんえーんって泣いているわよ?」
 ママテミアが眉を困らせる。ママテミアはよしよし、とおっさんの頭をなでると、
「がんばって、食べましょうね~? ほら、頑張れ♡ 頑張れ♡」
 ママテミアが頑張れ頑張れするのへ、おっさんはうー、と唸りつつも、にんじんのグラッセを口に運んだ。もぐもぐと咀嚼して、何とか飲み込む。
「うん、ちゃんと食べられたね、えらいえらい♡」
 涙目になるおっさんを、ママテミアがよしよしと撫でてあげた。
「紫煙を纏っていそうな渋ダンディも、お世話されてるとミルクとベビーパウダーの匂いを身に纏うようになるんだね。ふふ、かわいい?? ね???」
 若干混乱した様子でママーがそう言う。
「よしよし、いつもおつかれさま。みんなががんばってるから、ラサの人たちも、あんしんして生活できるんだよ。いまは、ゆっくり休んでいいからね」
「リュコスママ……」
 が、スプーンに離乳食をすくいあげて、男へと振る舞う。ぱくり、と、男がそれを食べた。
「まだ離乳食がはやかったら、ミルクもあるからね? ゆっくりたべるんだよ」
「リュコスママ……いや、妹……ママ……妹……? ママ……?」
 湧き出る妹力に、若干混乱しつつも、妹でママっていいか、欲張りセットだし、と思ったので男がそのままリュコママに甘えた。
「うん、ママだよ……よしよし」
 リュコママがが男をぎゅーっと抱きしめてあげた。至福の表情で、男が目を細める。
「ほら、アトさん……ミルク飲もうね」
 フラーゴラというよりママーゴラが言う。目の前にいるのは女性なのでアトさんではない。でもママーゴラが魔眼でぐるぐるしたのでアトさんである。何でアトさんにしたのかと言えば、ママーゴラがその方が気が引き締まるからだ。
「ママ……ママ……」
 甘えるように言う女性の頭をゆっくりと抱きしめてから、ママーゴラは哺乳瓶を口に含ませてあげた。こくこくと女の喉が鳴る。飲んでる。
「ふふ……ゆっくり飲んでね」
 穏やかに、食事の時間は過ぎていく……。

 食事をとった後でも、ママたちのお仕事は終わらない。むしろ、食事をとった後と言う事で子供達の活動も活発になっていく。
「ママー! こっちだよ、ママー!」
「ママー! うぇぇぇぇぇん、ママー!」
 あちこちから響くのは、ママを呼ぶ声。必然、ママたちもあちらこちらに引っ張りだこになる。
「大丈夫、だ。ママがいるから、怖くない」
 よしよし、とエクスマリアがあらためエクスマリママおっさんを抱きしめた。エクスマリママは、ママーゴラから借り受けたエプロンをつけていて、小さいながらも立派なままの風格を醸し出している。
「ママぁ……ぼく、病気なの……? 治らないの……?」
 不安げな表情を向けるおっさん。エクスマリママはゆっくりと頭を振った。
 そう、彼は病気なのだ……オギャリ病。治すには、心からオギャリ、オギャリ、オギャリ、ストレスを発散するしかない。
 だが、彼はそれを受け入れがたいのだろう……幼児退行と理性の狭間の中、彼は苦しんでいる。そう思えば、エクスマリママの心にも、どうにかしてやりと言う温かい気持ちが生まれるものだ。
「沢山頑張った、な。いっぱい我慢した、な。とても良い子、だ。でも、少し休もう、な。ママが、ぎゅっとして、撫でてやろう」
 それからぎゅっ、と、エクスマリママはその小さな体でおっさんを抱きしめてあげた。雰囲気だけなら、まさに病の子を慰める聖母の如きものを感じさせた。実際には、疲れたおっさんを可愛い女の子が怪している地獄なのだが、正気に戻ってはいけない。
「ママ……」
「うん。ゆっくり、おやすみ……」
「ママ……!」
「エクスマリア、お疲れ様なのだわ」
 ままが華蓮ちゃんぬいぐるみを手にしながら、言った。先ほどまで、年長の赤ちゃんをあやしていた所だ。
 ままの手際は素晴らしい。てきぱきと子供達をあやしていく。
「まま。ママとは、大変なものだな」
 エクスマリママが言う。ぷに、と己の掌を見つめた。
「マリアは、ママとしては未熟……マリアの手では、皆を、癒すことは、できない……」
「そこまで深刻にならなくても……」
「ままは、すごいな。いつも、こんな事をしているのか……?」
「いや、いつもはしてないけれど……」
「そうだねぇ……華蓮さんは、すごいよ……」
「フラー」
 エクスマリママが、ママーゴラへと言った。ママーゴラは、なんかすごいよだれでべとべとになったアライグマのぬいぐるみを持っていた。洗濯籠にぶち込みに行く所である。
「いつも、ワタシたちのことを、こうやって見てくれてるんだね……華蓮さん、ううん、まま。ワタシ、改めて尊敬するよ……!」
「うん……あ、ありがとうなのだわ……」
 ままは苦笑した。

「ほら、みんな見て……? マッチの火が、草原をかけるお馬さんを見せてくれるよ……」
 ママーゴラがギフトを使って子供達をあやしていく。ふと外を見れば、日はお昼からさらに傾いている。午後、三時ごろ、と言った所だろうか。
「うん……そろそろ、お昼寝の時間だね」
 アライグマの獣種のおっさんをあやしながら、ママーゴラがが穏やかな声で、子守唄を謳う。一方、遅いミルクを飲ませていたママ龍は、抱いていたおっさんの背中をポンポンと叩いてやった。
「よし、こっちもお昼寝するか」
「うん、ママ、一緒に寝よう?」
 ママ龍は笑った。
「そうだな、よし、一緒に添い寝してやるからな」
 おっさんのおなかにタオルケットをかぶせてやって、その隣にママ龍は横になった。ゆっくりと頭をなでてやると、おっさんは至福の表情で眠りに落ちていく。それを見届けてから、ママ龍がゆっくりと上体を起こすと、別のおっさんがママ龍の手を引っ張った。
「ママ、一緒に寝て?」
「おう、おまえもか……良い身体してるのに大変だな……部下に欲しいくらいだが……」
 ぼやきつつ、ブラウぬいぐるみをおっさんに抱かせてやった。
「よし、寝るまで一緒に居てやるからな……ほら、お休み……」
 一方、近くではリュコママが、女性の頭をよしよしと撫でながら、入眠させている。
「おやすみ、ママ……」
「うん……」
 そう言って幸せそうに眠る女性を見ながら、リュコママはどこか、幸せそうに笑った。
「……よかった。ぼく、おとうさんとかおかあさんとか分からなくて、ママみたいに、やさしくできるか、自信なかったけれど」
 何か、暖かいものを胸に抱きながら、リュコママは頷く。
「ぼくでも、だれかに、優しくできる……きっと、この世界でぼくに優しくしてくれた、みんなが教えてくれたからなんだね……!」
 リュコママは、或いは、この世界で大切なものを学んだのだ。それに今、気づいたのかもしれない……今このタイミングでそれに気づいたのは、幸か不幸か……絵面は最悪なのだが、洗井落雲もリュコママには甘えたい所である。
 エクスマリママもまた、男を寝かしつけている。その小さなおててでぽんぽんと頭をなでてやるのへ、しかし男は申し訳なさそうな顔をした。
「……ママ、ママ、僕……いや、俺は……」
「……分かって、いる。嘘を、ついていたんだろう?」
 男はハッとした。ママに甘えたいばかりに、オギャリ病を詐称する者もいる……男はそのたぐいのものだった。だが、エクスマリママはうん、と頷いた。
「よし、よし。辛かった、な。でも、嘘はダメ、だ。大丈夫。ママは、怒らない。正直な気持ちで、甘えていい」
「ママ……!」
 男は泣いた。男泣きに泣いた。この時だけは、エクスマリママのやさしさに甘える、男であった――。

●おわり。
「お疲れさまでした、皆さん」
 ママ屋の女性が言うのへ、イレギュラーズ達は何か真っ白になりながら頷いた。
 仕事中は、なんかハイになってママを演じられたが、素面に戻ってみればなんとも、思い起こされるのは地獄じみた風景である。
「皆さん、素晴らしいママみでした! もしよろしかったら、またお仕事をお手伝いいただければと」
 にこにこと笑うママに、イレギュラーズ達はげんなりした表情で、こうとだけ告げた。
『お断りします』
 ――お疲れさまでした。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ママー! 僕も甘えさせてよママーッ!!!

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