PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ねことらっぷ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 黒い空間の中心から白い光が溢れ、後方へ過ぎ去っていく。
 一瞬の静寂から浮上すれば、聞こえてくるのは雑踏のノイズだ。
 瞼を瞬かせ、焦点を合わせれば、其処は見慣れた――<レジェンダリア>の町並みが広がる。

「あ、廻くんこっちこっち~!」
 集合場所にてくてくと歩いて来た『子猫のしっぽ』廻(p3y000160)を呼ぶ声に視線を上げれば、ホワイティ(p3x008115)が手を振っていた。
 白い髪とペリドットの瞳。頭から生える触覚に柔和な笑顔は名前を見なくとも誰だか分かる。
「シルキィさんですか?」
「ふふふ、こっちでの名前はホワイティだよ」
 此処は仮想世界R.O.Oの中だ。
 こちらでの名前がある場合、リアルネームを呼び合うのはマナー違反だろう。
「あ、そっか。すみません」
「それにしても、すっごく可愛いアバターだねぇ」
 ホワイティは廻をひょいと持ち上げる。
「わわっ!?」
 視界が大きく揺れて思わずホワイティにしがみ付く廻。
 普段も決して大きくは無い身長だが、今の廻は幼子のサイズまで縮んでいた。
 しかもいつの間にか猫耳尻尾まで生えていたのだ。
「何かバルバロッサさんみたいな大男を作ってたんですけど。何故かこんなに小さくなっちゃって」
 ホワイティに片手で持ち上げられ、柔らかいほっぺをぷにぷにとされる廻。恥ずかしさに顔が赤く染まって行くのを両手で覆い隠す。何故か、このアバターだと感情を上手く隠すことが出来ないのだ。
「それは、大いなる意志……かな」
 二人の背後に忍び寄るは真読・流雨(p3x007296)だ。何処か見覚えのあるメイド服に目を瞠る廻。
「あ、愛無さん……じゃなかった、えっと流雨さん」
「やあ、廻君。今日は一段と可愛いじゃないかね」
 ぱんだのみみと眼鏡をかけた流雨が廻の頭についた猫耳を撫で繰り回す。
 流雨が頭を撫でる感触が不思議で心地よくて、本物の猫でなくて良かったと思った。本物の猫だったらゴロゴロと喉が鳴ってしまうに違いない。しかし、そちらに気を取られて尻尾の制御は出来なかった。
「わわっ!」
 尻尾が勝手に流雨の手に絡むのを照れくさそうに捕まえる廻。
「まだ、尻尾が上手く操作できなくて……」
 顔を真っ赤にした廻が視線を逸らす。
「その頭撫でるの、俺には絶対させてくれねーのに。俺にも撫でさせろ」
「やだ」
 即答された『道案内の達人』龍成(p3y000215)が羨ましそうな目で流雨とホワイティを見つめる。

「にしても、ボディのやつおせぇな。もう集合時間過ぎてるじゃねーか」
 龍成は友人(親友だとは思っているけれど、それを口に出すのは照れが有るため便宜的に友人と一括りにしておく)へと悪態をつく。
「私はここにいますよ」
 自分をぺしぺし叩く少女に視線を落とす龍成。
 首を傾げ、友人が辺りに居ない事を確認し、再び少女へと視線を向ける。
「だから、私は時間通り来ましたよ。龍成。貴方が私を此処へ呼び出したのを忘れましたか」
 確かに友人であるボディ・ダグレを呼び出した。
 だが、目の前に居るのはエメラルドグリーンの瞳が愛らしい、胸の大きな少女ではないか。胸が大きい。
 いや、ボディも胸が大きい事は大きいが。
 このデイジー・ベル(p3x008384)は龍成が知っている筋肉ムキムキのマッチョではない。
 つまり。
「ボディ……、お前」
「MMOで美少女アバターは基本って本で抜かりなく学習しました」
「どこの本だよ。それ」
「アキバケイ・オター著『これを読めば誰でもネトゲが分かるんだが?』に書かれていましたよ。『MMOのキャラは美少女かネタアバターだろ常識的に考えて』と。龍成は何故美少女アバターじゃないんですか?」
「……てめぇ、アキバケイ・オター出てこい、オラァ!」
 龍成の怒号が建物に反響し、数人の住人が振り返った。

 ――――
 ――

「今日は何処へ行くのかなぁ?」
 ホワイティは廻と手を繋ぎながら首を傾げる。ボブに切りそろえられた白い髪がさらりと流れた。
 廻を挟んで反対側には流雨がもう片方の手を握っている。見た目が幼子だからか完全に子供扱いである。
「えっとですね、今日はダンジョンに行ってみようかなって。装備も揃えたのでっ!」
「そうだよ。その為に俺は金策してたんだぜ。廻が行きたいっつーからよ」
 龍成は両手を繋いでいる廻の背後に回り込み、先ほど撫でられなかった頭を猫耳ごとこねくり回した。
「ダンジョンですか……初めて行きます」
 デイジーが龍成の腕を掴み、廻の頭をこねくり回すのを止めさせる。
 まだ撫で足りないと手に力を込める龍成。拮抗する力。
「まあ、何があるか分かんねーから気を付けるに越した事はねーな」
 デイジーの無表情なエメラルドグリーンの瞳が龍成を見上げ。それに観念したように力を抜いた龍成は今度は随分と小さくなった親友の頭をフードごと触った。
 現実世界では彼の頭部には箱形のモニターが乗っているからこれはこれで新鮮な感触なのだ。
 それはデイジーも同じで。頭を撫でられるという感触を追うように龍成の好きにさせている。


 そそり立つ岩肌の合間を縫って立てられた仮設のログハウスと作業場。
 土塊の中から石を探し出し、その中から原石を見出す。そして、自分達の手で加工する。
 それがレジェンダリアの宝石工アーホルン社の矜持。

「……それで、この地下洞窟には精霊や妖精のトラップが仕掛けられていてね。俺達の力では中々先に進めないんだ」
 クエスト発生フラグであるアーホルン社の採掘現場でチームリーダーの男は困った顔をした。
 何でも悪戯好きの妖精達が至る所にトラップを仕掛け人々が引っかかる様子を楽しんでいるらしいのだ。
 命を奪われた者は居ないが、採掘が中々進まないから困っているのだという。
「悪い妖精じゃないんだけどね。ちょっと悪戯好きなだけで。だから、君達には妖精が満足するまで遊んで来て欲しいんだ」
「それは、遊ばれて来てほしいの間違いなのでは」
「…………」
 デイジーの鋭い指摘にばつが悪そうに視線を逸らすチームリーダー。
「とにかく……この地下洞窟には精霊や妖精のトラップが仕掛けられていてね。俺達の力では中々先に進めないんだ。割と困ってる。だから、済まないが、悪戯好きの妖精の相手をしてやってほしい」

 チームリーダーの男が言うには、トラップに引っかったり、時には上手くくぐり抜けたりして妖精を湧かせるのが重要らしい。
「妖精と喋ったり交流したりも出来るみたいだから、上手く手懐けるのも手だと思う。力試しと攻撃してくる妖精も居るから注意してほしい」
 チームリーダーの言葉にイレギュラーズは頷く。
「トラップに引っかかるってどんな感じなんだろうねぇ?」
「明らかに怪しいボタンを押してみるとかでしょうか」
 ホワイティの疑問に廻も一緒になって首を傾げる。
「ぜってー巨大な岩が転がってくるヤツだろ。あと、針山があるな。お約束ってやつだ」
「毒の沼とか溶岩とか。上から落ちてくる天井とかですかね」
 龍成が口の端を上げ、デイジーが無表情ながらも返事をした。
「オレンジ色のまあるいオブジェクトがある所に近づくと、小さくなったり、低身長童顔成人男子になったりするかもしれない」
 流雨の予想に怪訝な表情を向ける廻。何故そこだけ妙に具体的なのだろう。聞いてはいけないような気がしてくる。これが大いなる意志だろうか。
「ね、猫がたくさん居る部屋とかどうですか? 全身を包み込んでくれる巨大なのから子猫まで」
「可愛いね」
「そこで暮らしたいねぇ」
 廻の言葉に流雨とホワイティが顔を綻ばせる。

「では、よろしくお願いします」
 頭を下げたチームリーダーはイレギュラーズの背を押してダンジョンの入り口へと誘った。

GMコメント

 もみじです。
 はじめてのダンジョンってわくわくしますよね。
 トラップに引っかかって楽しみましょう。

●目的
 ダンジョンで妖精と遊ぶ

●ロケーション
 ゴルゴツとした岩肌にクリスタルやヒカリゴケが生えている地下洞窟です。
 暗い場所があります。廻と一緒の場合はランタンを持っているので安心です。
 別々に行動しても問題ありません。
 皆一緒でも、グループに分かれても大丈夫です。
 何回挑戦しても良いです。

○トラップ
 悪戯好きの妖精が仕掛けたトラップです。
 下記は一例です。皆さんが思い描いたものがあります。
 引っかかったり、上手くくぐり抜けたりして妖精を満足させましょう。

・怪しいボタン、色の違う床、壁
・巨大な岩が転がってくる
・穴の中に剣山
・落ちてくる天井、狭まってくる壁
・底なしの沼、毒の沼、溶岩
・力試しの門(ガーゴイル付)
・オレンジ色のまあるいオブジェクトがある所
・猫がいっぱいいる空間

●妖精
 悪戯好きの妖精たちです。結構居ます。
 おしゃべりが大好きで入って来る人達に興味津々。
・元気な
・大人しい
・お転婆
・けんかっ早い
・弱気な
・人なつっこい
 等々、色々な妖精が居ますのでお友達になって悪戯をコントロールするのも手です。
 積極的に話しかけてあげると喜びます。

●戦闘
・力試しの門(ガーゴイル二体)では戦闘を行えます
 けんかっ早い妖精を喜ばせるのに最適です。
 二体ともかなり強いので注意が必要です。

●NPC
『猫のしっぽ』廻(p3y000160)
 ケープを被ってカンテラの付いた杖を振り回しています。
 バルバロッサの様なむくつけき大男のアバターに新調したのに、何故か猫耳尻尾で幼児化しました。あら不思議! バグですかね。
 カンテラ付の杖で周囲を照らしてくれます。

『道案内の達人』龍成(p3y000215)
 基本的に燈堂廻と一緒にR.O.Oにログインして遊んでいます。
 金策はダンジョンに潜る為の資金調達でした。
 称号はなんか貰ったのをつけてます。
 アバターはとりあえず使いやすいので現実世界の姿のまま使っている様子。
 現実世界より少しはしゃいでいるように見えます。
 話しかけても噛みついたりはしないのでご安心ください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

  • ねことらっぷ完了
  • GM名もみじ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月11日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

パンジー(p3x000236)
彼誰-かわたれ
エイル・サカヅキ(p3x004400)
???のアバター
イルー(p3x004460)
初心者
真読・流雨(p3x007296)
恋屍・愛無のアバター
ホワイティ(p3x008115)
ホワイトカインド
カノン(p3x008357)
仮想世界の冒険者
デイジー・ベル(p3x008384)
絵空書き
リラグレーテ(p3x008418)
大樹の嘆きを知りし者

リプレイ


 宝石工アーホルン社の有する鉱山。そそり立つ岩肌にぽっかりと開いた洞窟の入り口。
「わ、わ、廻さま、なんてお可愛らしいお姿に」
 小さな『子猫のしっぽ』廻(p3y000160)の視線に合わせるように屈んだ『初心者』イルー(p3x004460)は優しい笑みを向ける。視線を上げれば『道案内の達人』龍成(p3y000215)の姿も見えた。
「龍成さまも、ご一緒でした、か」
「もしかして……メイメイさん?」
 耳元に廻の囁き声が聞こえるのにイルーは頷く。実世界では可愛らしい少女だがR.O.Oのアバターは成人男性なのだ。
「ふふ、見知ったお顔に出会えると、安心しますね」
 イルーの視線はこれから向かうダンジョンの入り口に向けられる。
「今日のクエストは、ダンジョン探検。トラップがあるみたいですががんばりま、しょう」
 小さく拳を握った『白雪』パンジー(p3x000236)は子供っぽい仕草で、その手を天に掲げた。
 アバターの中身がクラリーチェだと悟られぬよう子供の時は子供らしく振る舞うのだ。
 されど、それは中々に難しい問題だった。年端もいかない頃から修道院に放り込まれ、大人に囲まれて育った彼女は子供らしい生活とは無縁だったからだ。
「ふむふむ。洞窟の妖精さんに楽しんでもらえば良いのです、ね。いろんないみで。
 猫……猫のトラップなら掛かってみたいです。ぜひ。ぜひともに」
 イルーの言葉にパンジーが頷く。

「わたしは廻君や龍成君と一緒に行動するよぉ。えへへ、頑張ろうねぇ!」
 廻を抱き上げた『ホワイトカインド』ホワイティ(p3x008115)は満面の笑みを見せた。
 抱っこされたままの廻のほっぺをツンツン突くのは『???のアバター』エイル・サカヅキ(p3x004400)の指だ。
「なるなる、妖精ちゃん達とわちゃわちゃね、りょ!
 シル……じゃなくてほわほわも恋……じゃなくてぱんだちんもよろー」
 エイルの言葉にホワイティは小首を傾げる。現実世界の詮索はよくないから言葉には出さないが。何だか心当たりがあるような気がするとホワイティの瞳が告げていた。
「え? いやいやほら皆パない有名人だから知ってんの。ほらほらめぐりんのほっぺの触り心地がサイコーだよ。触ってみ?」
 視線を逸らしたエイルは溜息をついて考え込む。
 どう考えてもまずい。隠し通せる距離感ではない。こうなったら『M』ラベルのアレを飲むしかない!
 オレンジ印のあれだ――!
「うぇーい乾杯! 皆でひゅっぱつひんこぉ!」
 ……ところで相談中からたまに発言がバグるような( ・◡・*)
 そんな。まさか。
「しかし、ホワイティ君もだが、ここまで知り合いが集まるのも珍しい。
 エイル君も何だか他人とは思えぬし。気苦労多そうな所や酒好きな所とか」
『恋屍・愛無のアバター』真読・流雨(p3x007296)はホワイティとエイル、廻を眺める。

「廻君は、まっちょというよりも頑強で健全な肉体に憧れているのだろうが」
 病弱な身体の軛から解放されたいと思っているのかもしれないと流雨は思う。
「まぁ、それは置いて置こう。今のが可愛いし」
 流雨は廻の尻尾を掴んでみせる。ふわふわの毛がリアルに再現されている。興味深い。現実世界では味わえない尻尾の感覚。尾てい骨の当たりがそわそわするのに廻が「ひにゃぁぁ」という情けない声を上げた。
「しかして猫という事は伸びるのだろうか。其処は気になる。伸びる廻君。一寸かわいい」
 ホワイティに抱っこされている廻の脇に手を差し込んで持ち上げる流雨。
 持ち上げられる服に引っ張られ、ブラウスの裾からお腹が顔を出す。
 じっと廻のお腹を見つめる流雨。いくら待っても一向に伸びない。じっと見つめる。伸びない。
「あの……」
 されるがままの廻の胴は猫の様には伸びなかったが、おへそは見えていたし顔は真っ赤だ。
「可愛い……何はともあれ攻略といこう」
 流雨は無表情のまま廻をホワイティに戻しダンジョンの入り口へと向かう。

「悪戯好きな妖精のダンジョン――と言うと、可愛らしい罠からガチめの罠まで幅が広いんですよね」
 洞窟の入り口の前で仁王立ちするのは『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)だ。
「でも、そこを対処してこそ冒険者の仕事です。制覇してみせましょう!」
 心躍るダンジョンへの好奇心は追随を許さない。そこにダンジョンがあるのならばそれはカノンが踏破すべき道筋なのだ。だが、今回のクエストの目的はダンジョンクリアではない。
「……え、満足させなきゃダメ? 好敵手的な感じにならないでしょうか……」
 もしかしたら。或いは。その可能性もあるのかもしれない。
「金策クエスト振りですね。龍成さん」
 龍成の肩を叩いた『虚花』リラグレーテ(p3x008418)。龍成とは以前のクエストを機に仲良くなれた気がする。そんな彼を肘で小突きその隣でちんまりと可愛くなってしまった『少女』を見遣る。
「ボディ……いえ、デイジーさんも随分と可愛らしくなっちゃって」
「美少女アバターですからね」
 エメラルドグリーンの瞳をリラグレーテに向ける『機械の唄』デイジー・ベル(p3x008384)は彼女の言葉に素直に頷いた。
「お前ら知り合いか?」
「ふふふ。そこはほら、追々」
 リアルを知られていない現状で身バレするのは得策ではない。そこは段階というものがある。
「今日という日の花を摘め――という事でね」

●Let's ダンジョンブレイク!

 しかし、初手はガーゴイル戦だ――!
「荒事は得意だが」
 流雨が選んだ道に進むと力試しの門が突如として現れ、行く手を阻んだのだ。
「見ててねぇ喧嘩っ早そうな妖精さん!」
 門の周りに集まっていた妖精がホワイティの声に嬉しそうな光を放つ。

 流雨とホワイティは同時にガーゴイルの目の前へ飛び出た。
 ホワイティのはガーゴイルを盾で押さえつける。されど、押し返される力も凄まじい。
「敵は強いけれど、望む所。白き騎士の守り、崩せるものなら崩してみてねぇ!」
 ガーゴイルの鋭い爪とホワイティの盾が摩擦を起こし、戦場に火花を散らす。
「しかして妖精を満足させるという事ならば、何か『魅せる』ような戦いをしたいな」
 ホワイティの向かいでナイフを握るのは流雨だ。
 氷の力をナイフに乗せて解き放つ鉤爪がガーゴイルの表皮を抉り取る。
 噴き出す緑色の血に重なるはエイルの回し蹴りだ。
「ほわほわが頑張ってくれてるし、とりまジョッキからのMK5!」
 傷口を狙い繰り出される必中の蹴り技。ガーゴイルの腕が良い感じに画面の手前に表示されスカートの中は見えない。絶対にだ。
「え、このまま戦うのこれ??? と、とりあえず……武装<メイクアップ>、ロゼッタネビュラ!」
 紅いルージュが空を舞い。七色の瞬きがリラグレーテを包み込む。

「けんかっ早い妖精を満足させるなら一番適してますからね。頑張ります」
 デイジーは杖を掲げ、魔法陣を組み上げる。エメラルドグリーンの光を帯びた雷光が戦場を駆け抜け、洞窟内に轟音を響かせた。
 反動で蹌踉けるデイジーの身体を龍成の腕が支える。
「大丈夫か? 無茶すんなよ」
 アバターの影響なのだろうか。龍成の当たりが柔らかい。胸が大きいからかとデイジーは自分の胸元に手を当てる。
 ロザリオを握り込みガーゴイルを殴り付けるパンジー。
 意外とアグレッシヴな攻撃だ。それに重なるはイルーの呪縛の魔術。戦場に光が溢れ、ガーゴイルを包み込んでいく。

 ――――
 ――

「余裕があればピンチを演出したいが。はて、意外と強い」
 流雨は隣に立つ廻の首根っこをひっつかみバックステップで飛び退く。次の瞬間にガーゴイルの毒液が二人が居た場所に降り注いだ。
「戦闘は得意ではありませんが、援護ならお任せくださいっ」
 戦場全体を見渡すカノンが当たりを警戒をしながら仲間を援護する。
「……後は妖精の気紛れで増援とかがなければ良いんですけどね?」
「そういうのはフラグというのでは」
 カノンの言葉にリラグレーテが首を傾げた。
 戦場は混沌を極める――!

「お前、それ痛くねぇの? 無表情すぎてわかんねぇ」
「痛いですね」
 仲間を庇い深手を負ったデイジー。その彼女を守る為に龍成も重傷を負っていた。
「ばっか、お前。くらいすぎだ……!」
「龍成こそ」
 廻の回復も追いつかず。デイジーと龍成は二人揃ってキラキラと粒子を散らす。
 だが、安心してほしい。サクラメントは洞窟の入り口にある。なんて親切設計。

「こうなったら、皆の力を合わせるよ!」
 ホワイティのかけ声と共にイレギュラーズが頷いた。
 仲間の攻撃が繋がり、ホワイティの剣が陽だまりの力を帯びる。
「――陽光の熱を受けてみろ、なんてねぇ!」
 洞窟内がまるで日の光に晒されたように真っ白になり、見事ガーゴイルは消滅した。
 その白熱のバトルに妖精達は歓喜の声を上げる。


「気を取り直して廻様や龍成達がいるグループにお邪魔して探索しましょう」
 サクラメントから戻って来たデイジーと龍成は無事に仲間と合流する。
「折角の友人たちとの機会ですから、一緒に遊びたいです」
「怪しいボタンは押すなよ」
「はい」
「振りじゃねーぞ?」
「……」
 龍成の言葉に視線を逸らすデイジー。

「妖精とは折角だし仲良くいこ!」
 エイルは力試しの門で仲良くなった妖精にハイタッチをして。
 パンジーは置いて行かれぬようついていく。
「小さい子は1人になると迷子になっちゃうかもしれませんからね。大事なことです」
 ふわふわのワンピースに何時もより低い視線はまだ慣れないけれど、少しだけ楽しく思える。
 広がるスカートのフリルが邪魔をして足下のボタンを踏んでしまうパンジー。その瞬間に少女を吊り上げるネットの罠。
「きゃー」
 子供らしくきゃぁきゃぁと声を上げるパンジー。
「おやー? ソンなところで何をしてるのかなー?」
 パンジーが罠に掛かっているのを恐る恐る覗く妖精を見つけたエイルは「護ったげるよっ」と胸の谷間に突っ込んだ。しかし、そこは恐怖のジェットコースターの特等席である。
 エイルが怪しそうなスイッチを押す度に恐怖の声が上がった。
「やっばw逃げなきゃwww」

「妖精の事です、吊り天井や迷い路、リドルにミミックやこたつと言った凶悪な罠を用意してくる事でしょう。しかし私は冒険者。その挑戦受けて立ちますよっ」
 カノンは高めたスキルを存分に発揮する。
 廻の明かりだけでは先の見えない暗い場所にはランタンを。遠くの壁に付いているボタンには10フィートの棒をインベントリから取り出す。
「おお」
「ふふ。この程度の罠、熟練の冒険者には通用しないのですよ」
 パチパチとイルーが拍手を送り。照れくさそうにカノンが笑った。
「えと、ここに触れれば良いのです、か?」
 妖精に促されるままイルーは罠スイッチを押す。
「あっ! それは!」
「ド、ドリルだぁーーーーーーーーーッ!!???」
 リラグレーテの声に振り向けば、男の子ならみんな好き! って感じの巨大穿孔機が迫ってきてる。
「これちょっとマズくないですかうわかっこいいやばいーーー!!!!」
 逃げ出すリラグレーテに続くカノン。
「……私達が華麗に罠をくぐり抜けたからって物理で攻めてくるのはルール違反ですよねー!?」
「妖精さん!? ミンチになれば良いのかな妖精さん!??」
 巨大穿孔機がリラグレーテ達に迫る。
 しかし、間一髪の所でカノンが傍を流れる川への落下トラップを発動し巨大穿孔機が動きを止めた。
「し、死ぬかと思った」
 肩で息をするリラグレーテとカノン。
 その背後に居るのデイジーは妖精の声に耳を傾ける。
「……何でしょうこの怪しいボタン。もしそこの妖精、これはなんでしょうか?
 押してからのお楽しみ? よし、えい」
「デイジー! てめぇ!」
 今度は落ちてくる針天井に龍成の怒号が響き渡った。

●ねことらっぷと
 その部屋には猫と( ・◡・*)が存在していた。
 敷き詰められる猫に一早く飛びついたのはパンジーだ。
「ねこさんーーーー!! 主よ。はしたない私をお許しください。猫だけは、猫だけは別格なのです!!」
 猫に埋もれもふもふしながら許しを請うパンジー。大きな猫のお腹に埋もれるパンジーの姿は見ていてとても微笑ましい。今の自分はパンジー。クラリーチェだと識る者は居ない。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ……」
 良い訳をしながらもふわふわの毛並みを味わう事を諦めない少女。
 その隣でエイルもまた猫に埋もれていた。
「ねこはまずい、まずいって、抜けられな……
 た、たすけてだれか……永遠にこれ幸せで起きられない……」
 もふもふは正義。エイルと同じようにもふもふの毛を腕いっぱいに抱きしめるホワイティ。
「力じゃなく、誘惑を振り切る強い心が求められる。何というトラップ……妖精さん、策士だねぇ……?」
「妖精さん、妖精さん、一緒に遊びましょう。……こ、この指とーまれー」
 イルーの指に集まる妖精達。一緒になって大きな猫のお腹にうずもれる。
「ふかふか。ふぉ……これは帰りたくなくなる罠です、ね……」
「ヤバイよねぇ」
「はい……」
 大きな猫のお腹のふかふかを頬で堪能するエイルとイルー。
 ホワイティが猫じゃらしを振れば猫が沢山集まってくる。
 その中には我慢出来なくなった廻の姿もあった。
「あ……見てたら身体が勝手に」
「えへへ~。廻君、捕まえたぁ」
 猫じゃらしを手で抑えた廻を抱っこするホワイティ。何と言う罠だ!
「ぼ、僕は猫じゃないですよぉ」
 もふもふの猫にするようにホワイティは廻のお腹に顔を埋める。
 ペリドットの視線を上げればソレと目が合った。
「その節はどうもだよぉ( ・◡・*)にこ」

「……おや、オレンジで丸い物体がありますね」
「なんだろうこの、妙に安心というか……信頼、良い趣味してるみたいな謎のこの感じ……」
 デイジーとリラグレーテはオレンジ色のまあるいオブジェクトをじっと見つめる。
「うん、ここは龍成に行かせましょう」
「おもしろそーだしりゅーちぇるの背中押して触らせよっと」
 エイルは猫のお腹から起き上がり龍成の背中をぐいぐいと押す。
 その様子を眺めるホワイティは応援するように拳を上げた。
「突然幼児化したりしたら、きっと妖精さんも喜ぶ。依頼達成の為に止める理由はないねぇ!!!」
「鬼ヤバいSS撮れそうじゃね!?」
「おい、どういう事だ!?」
 振り向いた龍成に流雨が腕を掴む。
「此処は魔法の言葉があるのだ。『スベテオマカセ』と唱えると色々と良い感じになるのだ。龍成君も唱えると良い。君の痴態は、きっと僕の愛し子も喜ぶだろう。故に唱えたまえ。唱えろ!」
「怖すぎだろ!」
「安心したまえ。僕も唱える。全てをさらけ出して委ねると良い。おら! 童顔成人スパッツワイシャツエプロン低身長男子になるんだよ! はよ! ( ・◡・*)」
「そうよだよー! りゅーちぇる! 大いなる意志の仰せの通り( ・◡・*)」
 押された龍成が流雨を引っ張り、それに慌てた廻が蹌踉けてリラグレーテを巻き込みながらオレンジ色のまあるいオブジェクトに転がる。

 ( ・◡・*)( ・◡・*)( ・◡・*)

「どれぐらい小さくなるのでしょう。廻様みたいな感じなのでしょうか、それとも……?」
 デイジーの期待通りに廻と同じぐらいの大きさになった龍成。
「何なのさ! 君達、僕の事を苛めて!」
「……龍成その口調は」
「っ!」
 自分の手で口を被ったチビ龍成は顔を真っ赤にして首を振った。
「ち、違うよ。これは……普通に喋ってるだけなのに、どうして……」

『――子供の時の口調を再現しました』

 デイジーたちの脳裏に過るメッセージウィンドウ。
「そうですか。……えぇ、出発前のお返しです。頭でも撫でてみましょう。こんなに目線が近くなるなんて、中々に無い機会ですから。よしよし」
「や、やめてよぉ! デイジーはお胸が大きいから照れ……」
 自らの発言に唇を噛みしめる龍成。好奇心のままに頭を撫で続けるデイジー。
「……予測よりも感触が良いのでデータ採取の為にもうちょっとだけ撫でてみましょう」
 耳まで紅く染めて龍成は撫でられるのを耐えていた。
 その様子をにこにこと見つめるイルー。
「ほら、廻さまと、並ぶととても、お似合いです、よ( ・◡・*)」
 廻を龍成の隣に置いてイルーは微笑む。恥ずかしそうに口を塞いでいる龍成の頭を撫でた。
「かわいいのは正義、なのです。ええ、ええ」

 廻は一緒になって転がったリラグレーテと流雨を見遣る。
「大丈夫ですか?」
「うん……あ、あれ」
 リラグレーテの髪は短くなり、何故か青い羽根がはえているではないか。
 其処には小さくなった『ハンス』が存在していた。
「や、やあ……廻くん、龍成くん……」
「リラグレーテさんはハンスさんだったんですね! わぁ!」
「僕だよ」
「嬉しいです!」
 手を広げる廻がリラグレーテをむぎゅうと抱きしめる。廻と自分の体重を支えきれずリラグレーテは後ろにころんと転がった。

 カノンはメモを取っていた。
 このダンジョンで起こった一部始終を全てスクリーンショットと共に記録している。
 もちろん色々な対策や改善案を考えたり、後で攻略サイトに情報載せたりするのに必要だからだ。
 決して他意は無い。
 こうして、イレギュラーズ達の奮闘により、妖精達を満足させる事ができたのだ。

成否

成功

MVP

カノン(p3x008357)
仮想世界の冒険者

状態異常

デイジー・ベル(p3x008384)[死亡]
絵空書き

あとがき

 お疲れ様でした。如何だったでしょうか。
 ねことらっぷに埋もれたい。
 ご参加ありがとうございました。

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