PandoraPartyProject

シナリオ詳細

深緑で遺跡探索

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 深緑。
 文字通り、緑深き国。
 大樹ファルカウと、周囲に広がる迷宮森林から成り立っている。
 迷宮森林はとても広大で不思議な森で、旧時代の遺跡が多数眠っている。
 そのひとつに、イズマ・トーティス(p3p009471)は訪れていた。

「この遺跡の中に、魔書があるんだ」
「はい」
 イズマの言葉に、幻想種であるリザが応えた。
 彼女は深緑で植物学者をしているそうなのだが、今回の件で同行している。
 それというのも、彼女が必要としている技術を記した書物が、目の前の遺跡の中にあるからだ。
 迷宮森林の中にポツンとある遺跡への入口。
 年月が経っているせいか、かなり緑で覆われていたが、苦労して剥ぎ取り中へと入れるようにしていた。
「結構、深そうだね」
 入り口から奥に視線を向けてみるが、見通せないほど距離がある。
「中は明かりが無いみたいだから、光源になる物を持って来た方が良いかな?」
「いえ、大丈夫みたいですよ」
 イズマに応えたのは、何度か依頼人になった事のあるヴァン。
 彼の隣には、同じく何度か依頼人になった事のあるリリスが居た。
「中に入ったら、明かりがつくみたいね」
 リリスが遺跡の中に少し入ってみると、天井に設置されているらしい光源が明かりを放ち周囲を照らしていた。
「空気の通り道もあるみたいですから、酸欠になることもないですね。となると問題は――」
「中の罠と、魔書を守っているっていう魔法植物をどうするかってことよね」
 どうしたものかと考えるヴァンとリリス。
 2人の様子を見て、イズマは言った。
「とりあえず、行ける所まで進んでみよう。情報が無いと、攻略は難しいからね」
 という訳で、イズマを先頭にして、ゆっくりと進んでみる。
「今の所、何も無いけど、このまま行けるかな?」
「だと良いんですけど……」
 イズマに、リザが不安そうに返す。
「この遺跡を作ったご先祖様、かなりイイ性格してたらしいですから」
 ため息をつくようにリザは言った。
 そんな言葉が出てしまうような遺跡になぜ潜るかといえば、この遺跡の奥には植物の合成と成長促進を記した魔術書があるからだ。
 リザのご先祖様、と伝えられているらしい人物が記したそれは、今の技術から見ても段違いらしく、植物学者であるリザとしてはぜひ欲しい代物。
 そしてスポンサーになっているリリスとヴァンにとっても、必要な物であった。
 リリスとヴァンの2人は、鉄帝で食糧増産をしようとしているのだが、その解決策のひとつとして植物の大量生産を計画している。
 植物学者であるリザに資金提供し、今回のように遺跡に潜るためイズマに助けを求めたりしたのも、その一環なのだ。
「そういえば、鉄帝で生産する植物って、魔法で作った物なんだよね?」
 遺跡を進みながら、何も起こらず代わり映えしないので、イズマは周囲を警戒しつつ訊いてみる。
「元々魔法的な植物を魔術でさらに作り変えたら、おかしなことになったりしないよね?」
「そこはトライ&エラーです」
「失敗は成功の元です!」
 不安になるようなことを返す、ヴァンとリザ。
「失敗を恐れては技術は進歩しません。とはいえ掛ける時間は少ない方が良いですから、そのためにも遺跡の魔書は必要なんです」
「安心して下さい。この遺跡に収められた魔書を記したご先祖様は、技術だけなら凄いって伝わってますから。性格はともかく」
(安心できる点が無いんだけど……)
 正直不安である。
 そんな気持ちで進んでいると――
「っ、ちょっと止まって!」
 奥の方から聞こえてくる這いずるような音に、イズマが警戒するよう声を上げる。すると――

 ずる、ずるる。うねうね。

 這いずるような音と共に現れたのは、巨大なイソギンチャクのような何かだった。
 動きは遅いのだが、筒状の胴体から伸びている無数の触手は器用かつ素早く動いている。
「アレは、拘束用植物イの八号!」
「なんなの、それ」
 思わずイズマが聞き返すと、リザが説明する。
「遺跡の侵入者を捕えて縛る植物です! 焼いて食べると美味しいって古文書に書いてました!」
「いや、味の説明は要らないかな」
「えっ、大事じゃないですか!? 生でも食べれるんですよ、あの触手!」
 リザが力説している間に、少しずつ近づいてくる拘束用植物イの八号。
「一端、入口に戻ろう。殿は務めるから、先に行って」
「分かったわ。悪いけど、お願いね。行きましょう、リザちゃん」
「はいっ」
 戦闘力のないリザを一番最初に逃がしてあげようとしたのだが――

 パカっ

「うにゃあぁぁぁっ」
 突然床が開いて落っこちるリザ。
「うひゃあ、触手、触手があぁぁぁっ」
 落とし穴の中にも拘束用触手植物が居たらしく、うねうね動く触手にまとわりつかれながら、特殊な縛られ方をする。
「縛りが甘いわね」
「今ツッコミ入れる所はそこじゃないと思いますが」
 リザに命の危機は無いと見たのか、割と余裕のあるリリスとヴァン。
 助け出そうとするのだが、うねうね触手に邪魔される。
「いま助けるよ」
 気付いたイズマが落とし穴に跳び込むと、触手を一斉に切り刻みリザを助け出す。
「うぅ、ありがとうございますぅぅ」
 リザは礼を言いながらリリスとヴァンに引き上げられ、同じようにイズマも引き上げられる。
 そのまま入り口までダッシュ。
 すると拘束用触手植物達は遺跡の外まで追ってくる気は無いのか、奥へと戻って行った。
「これは、もっと人手が要りそうね」
「うん。その方が良いと思うよ」
 イズマの賛同もあり、ローレットに依頼を出すことにしたリリス達だった。


「深緑に行って、遺跡の奥に収められた魔書を取って来て欲しいのです」
 招集されたイレギュラーズに向けて、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は依頼の詳細を説明してくれる。
「途中で落とし穴があったり、イソギンチャクみたいな植物がいたりするので、気をつけて欲しいのです」
 捕まると触手で縛り上げられて遺跡の外に、ぺいっ! と捨てられるらしい。
「あと一番奥には、魔書を守るイソギンチャクみたいな植物の親玉が居るらしいので、そいつにも気をつけて欲しいのです」
 気をつけろと言われても……。
 などと思うイレギュラーズもいたが、ここでそれを言っても意味が無いので現地に向かうことにするのであった。

GMコメント

おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
21本目のシナリオは、アフターアクションでいただいた内容を元に作った物になります。

いただいた内容だと、単に遺跡などの探索だったんですが、そこに落とし穴やらをプラスして、遺跡調査のシナリオにさせていただいています。

そして以下が詳細になります。

●成功条件

遺跡の最奥にある魔書を手に入れる。

●舞台

そこそこの広さのある遺跡。
最奥は数十人が戦っても支障のない広さになっていますが、そこに辿り着くまでの通路は、横に4人ぐらいが余裕を持って並んで歩けるぐらいの幅になっています。

遺跡の中を移動するのに合わせ照明がつくので、光源を持って行く必要はありません。

床は平たんなので、戦闘の際に支障はありません。

●敵

拘束用植物イの八号

見た目はデカいイソギンチャクみたいな植物。
触手状の蔦を使って、近・中距離攻撃をしてきます。
動きは鈍いです。
捕まると、縛られて拘束され、遺跡の入口まで、ぺっと捨てられます。

遺跡の通路と、最奥の広場に出てきます。

参加者のレベル帯やノリに合わせて、数は増減します。
なので、新規の方でも気軽にご参加いただける敵になってます。

拘束用植物イの八号・マザー

家ぐらいの大きさのイソギンチャクみたいな植物。
触手状の蔦を使って、近・中距離攻撃をしてきます。
動きません。
触手は切り落としても、次から次に生えてきます。
触手以外に攻撃すると、ダメージが通ります。

マザーから定期的に、拘束用植物イの八号が生えてきます。
マザーを倒すと、それ以外の植物は攻撃を停止します。

マザーを倒して魔書を見つけ出せれば依頼は成功です。

●落とし穴

罠です。
気をつけていれば、落ちることは無いでしょう。
落ちてもダメージは無いです。
中には、拘束用植物イの八号がみっちりと詰まっており、触手状の蔦がうねうねしてます。
落ちても、拘束されて縛られて、入口まで捨てに行かれるだけですので、それ以外には何もありません。

落ちても良いですし、落ちなくても良いです。

●同行者

依頼人リリス・ヴァン・リザ

皆さんの後ろを付いてきます。
話し掛けたり関わっても良いですし、関わらなくても良いです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

説明は以上になります。

それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリプレイに頑張ります。

  • 深緑で遺跡探索完了
  • GM名春夏秋冬
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月08日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
雪梅(p3p008787)
特異運命座標
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女

リプレイ

 遺跡に入る前。
 依頼人達から詳細を聞いた『あの虹を見よ』美咲・マクスウェル(p3p005192)は興味深げに言った。
「へー、魔術と植物の組み合わせって薬と触媒くらいしか知らないや」
 ウォーカーで元の世界では神秘の家系に生まれついたこともあり、自分なりの考えを口にする。
「食料増産の策のひとつねぇ……科学的な手段の方が早そうだけど。鉄帝でしょ? 土壌改良と保温策主体である程度はいけるんじゃないかなぁ」
「そちらも模索中でして」
 依頼人の1人、ヴァンが応える。
「土壌改良は深緑の腐葉土などを輸入して。保温策は必要なエネルギーをどこから供給するのかが課題です。それ以外で出来そうな品種改良が今回の目的ですね」
 その後も説明してくれ、それを聞いた『はらぺこフレンズ』ニル(p3p009185)は素直な気持ちを口にする。
「食べ物を増やすために、本が必要なのですね。みんながおいしいものを食べられるのは素敵なことなのです」
『おいしい』ということが味として分からないニルだけれど、みんなで同じ物を食べるのが『おいしい』ことだと思っている。
 だから、そうなると良いなと思い、やる気を見せていた。
 そんなニルを依頼人の1人、リリスは微笑ましげに見詰めたあと言った。
「みんなで沢山食べれるようになるためにも遺跡の魔本が必要なんだけど、障害となる魔法植物が居るから気をつけてね」
 話を聞いて、『ドラゴンスマッシャー』郷田 貴道(p3p000401)は楽しげに返す。
「闘う相手が居るなら退屈せずに済みそうだ。HAHAHA!」
 明るく笑いながら続ける。
「それに行き先がハッキリして、目的のブツがある場所もわかってるのなら話は早い。邪魔な魔法植物をぶっ飛ばして手に入れようぜ」

 貴道の言葉に皆も同意して、一行は遺跡の入口に。
 それを前にして、『特異運命座標』キルシェ=キルシュ(p3p009805)は好奇心一杯の声で言った。

「森林迷宮はリチェとよく遊びに来るけど、こんな遺跡あったのね!」
 そしてリザに呼びかけるように続ける。
「リザお姉さんは色んな所知ってるのね! 楽しいところがあれば、ルシェにも教えてほしいわ!」
 探検に出かけようとする子供のように目を輝かせていた。
 彼女のように遺跡の攻略を楽しみにしているのは、『死神二振』クロバ・フユツキ(p3p000145)も同じだ。
(奥で待ち構えるボスと合わせて冒険って感じがするのはとても心躍るよな)
 大人として落ち着いているので言葉にはしないが、乗り気になっている。
「さぁて浪漫の探求と行こうか」
 クロバの呼び掛けに応え、皆は洞窟の中に。
 隊列は、先頭に『激情の踊り子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)。
 フルムーンのお蔭で不意打ちを避けることが出来るので最適な配置だ。
 しかも熟練したアクロバットの技術も持っているので、狭い通路でも体裁きと立体運動はお手の物。しかも――
「背中は任せて。いつでも動けるから」
 美咲が、いつでも連携を取れる位置に就いてくれている。
「頼りにしてるよ、美咲さん!」
 信頼できる相手が傍に居てくれるので、ヒィロは安心して前に進む。
 その少し後ろを進むのが、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)。
 彼は、先んじて遺跡に入ったことがあったので、攻略の助けになるよう皆にその時のことを話す。
「このまましばらくは大丈夫だけど、しばらくしたら魔法植物が出るから気をつけて」
 イズマの言葉に続けるようにしてリザが言った。
「死んじゃうような罠とかは無いですけど、落とし穴があるので気をつけて下さい。あと、拘束用植物イの八号も出るので気をつけて下さい」
「拘束用植物イの八号……」
 詳細を聞いて、じと目でヒィロが言った。
「リザさんのご先祖様謹製だとしたら、ちょこっと趣味を疑っちゃうかなぁ」
「うぅ、それは……」
 ぐうの音も出ないリザだったが、誤魔化すように言った。
「その、触手部分は美味しいんですよ! しかも部位で味の違いもあるらしいですし」
 リザの話を聞いても、大半は胡散臭そうな視線を向けていたが、ニルとキルシェは目を輝かせて言った。
「触手部分は、食べれるのですか? 生で?」
「触手は誰か食べたのかしら?」
「ニルは、終わったら、皆様と触手を食べてみたいです」
「美味しいならルシェも食べてみたいの!」
 興味津々に盛り上がる。
 とはいえ探索の途中なので、全ては終わってからにすることに。
「まずは目的の本ね!」
「もしかして本に書かれているのも、おいしい触手のことなのでしょうか? 早く手に入れて知りたいです」
 気合を入れるキルシェとニル。
 ニルは遺跡が傷つかないよう保護結界を展開しながら進み、キルシェは持って来ていた棒で落とし穴を探りながら進もうとする、のではあったが――
「……長くて先が持ち上がらない……引きずるしか出来ないわ……!」
 病弱非力なちびっこに3mの棒は長かったのか、引き摺るような動きになってしまう。
 それを近くで見ていたイズマが、落とし穴を探るのを手伝ってあげる。
「ありがとう、イズマお兄さん」
 そんな風に、道中話をしながら進むのは、クロバも同じだ。
「植物計画の話に関する書物、って話らしいけど。もしかしてここってその実験場所だったみたいな可能性ってありそうかな?」
 依頼人の3人に訊いてみると――
「言われてみれば」
「その可能性はありますね」
「え? だったらあのけったいな植物、実験体だったってこと?」
 盛り上がる3人に、クロバが続けて言った。
「だとしたら育成には十全どころか十二全くらいはあってもいいんじゃないか」
 その言葉が、予想外の発想に結びつく。
「なら拘束用植物イの八号も合成して新植物作っちゃいましょう!」
「トライ&エラーが捗りますね」
 学者、というかマッドサイエンティスト肌なリザとヴァンが盛り上がる。
 それを見たイズマは、微妙な表情で言った。
「……まぁその、取り返しのつかない失敗じゃなければいいと思うよ。トライ&エラーが大事なのはわかるし」
 というわけで、鉄帝で栽培される魔法植物は、さらに魔改造されることに決まった。
 それは別の話なので、とにかく今は、遺跡の攻略に皆は集中する。
 大半は、何度か依頼を熟していることもあり余裕を見せながら進んでいるが、今回が初めての依頼な『特異運命座標』雪梅(p3p008787)は、緊張しつつ意気込み進んでいた。
(初めての依頼、頑張らないといけませんね!)
 何かあればすぐに動けるよう、イメージしながら進んでいく。
(襲われたら、ぬいぐるみを囮に使ってクイックアップを使いながら避けて)
 そのために、くまのぬいぐるみを持って来ている。
 一所懸命にイメージトレーニングを重ねながら、皆と進んでいった。
 そうして進んでいると、エコーロケーションで周囲を警戒していた貴道が皆に呼び掛ける。
「何か来るぜ」
 貴道の呼び掛けのお蔭で、皆は先んじて行動する。
「美咲さん、先に行くよ」
 先頭を進んでいたヒィロは、拘束用植物イの八号の姿を確認すると即座にダッシュ。
 敵は触手を放ち捕えようとするが、軽快な動きで全て回避。
 それでも敵は触手を伸ばし続け壁に追いやるが――
「そんな色気のない触手じゃボクは捕まえられないかなぁ」
 ヒィロは壁を足場に跳び上がり、全ての触手を置き去りにする。
「ボクを捕まえたいなら、美咲さんくらい魅力的じゃないと……ね!」
 回避と同時に闘志を放つ。
 反射的に引き付けられる敵。
 その隙を逃さず、美咲が連携攻撃。
「拘束は趣味じゃないんだよ」
 虹の魔眼を解放。
 視界に収めた敵から体力と魔力を奪いダメージを与えた。
 2人の連携攻撃で敵の動きが鈍った所に、後続の仲間が連続攻撃。
 瞬く間に倒し切る。

 その後も何度か襲撃を受けつつ、目的地へと辿り着いた。

●ボスを倒そう
 家ほどもある巨大なマザーの周囲に、無数の拘束用植物イの八号が。
 数だけでいえば敵の方が圧倒的だったが、それを蹴散らすようにイレギュラーズ達は戦っていった。

「さぁ、こっちだ! 文字通り道を切り開くぞ!」
 先陣を切って、クロバが駆ける。
 狙いは最奥に居る敵のボス、マザー。
 取り巻きの敵を置き去りにするような速さで突進すると、敵は危機を感じたのか一斉に触手を放って来る。しかし――
「邪魔だ」
 黒炎と殺気を纏ったクロバは、津波のように襲い掛かってくる触手の全てを切り刻む。
 昏ノ太刀・滅影。
 銀髪紅眼へと転じたクロバは、まさしく死神の如く刃を振るい敵の守りを突破していく。

 それを見て、仲間の闘志に火が付いた。

「HAHA! ミーも負けてられないな!」
 貴道は野性的な笑みを浮かべ、ボスに向かって突進。
 させぬとばかりに拘束用植物イの八号が向かって来るが、軽快なステップで躱し前へ前へと進む。
 しかし敵の数が多い。
 敵の1体が壁のように立ちはだかり、鞭のように触手をしならせ放つ。
 だが敵は貴道を捕えられない。
 巧みなフットワークで、貴道は攻撃の全てを避け切ると、拳の間合いに踏み込み真・コンビネーション。
 左の拳で連打を叩き込み動きを止めると、本命の右ストレート。
 深々と拳をめり込ませ、あまりの威力に敵は裂けるように破裂した。
 倒すなり、さらに前へと踏み出す。
 狙いは、もちろんマザーだ。
「イソギンチャクにこっちまで走ってこいとは言わねえよ」
 取り巻きを避けながら距離を詰めていく。
「こっちからインファイトに行ってやるぜ。さっさと撲殺してやるから、覚悟して待ってやがれHAHAHA!」

 敵はマザーの守りに向かいたい所だが、イレギュラーズの猛攻に分散せざるを得ない。

「まずは取り巻きの数を減らさないと」
 イズマは敵の取り巻きの数を減らすため、側面から踏み込む。
 敵の群れに跳び込みながらH・ブランディッシュ。
 決して足を止めることなく動き回り続け無数の乱撃。
 触手を切り落とし、敵の守りが無くなった所で黒顎魔王。
 巨大な黒の顎が、敵を潰すような勢いで食い千切った。
(これで怯んでくれればいいんだけど)
 植物疎通で反応を調べるも、敵は平然としている。
(たいまつの火も平気みたいだし、怖がる感じは無いのかな?)
 道中で試してみたが、火にも平然としていた。
 というよりは、遊んでいるような気配すらあった。
(これは、引き付けておいた方が良いな)
 仲間がマザーに向かえるよう、イズマは名乗り口上も使い引き付けに動いた。

 それでもマザーの周囲の敵の数は多い。だからこそ――

(さて、撃ち貫くべきか薙ぎ払うべきか……とりあえず、両方やってみよう)
 邪魔な取り巻きを一掃する様に、美咲が動く。
「巻き込まれないよう気をつけて!」
 同士討ちを避けるため、声を掛けてから攻撃。
 大規模魔術を起動。
 多量の魔力と引き換えに、万物を砕く鉄の星を展開。
 多数の敵に目掛けて降り注ぎ薙ぎ払っていく。
 纏めて仲間が攻撃され脅威と見たのか、敵が美咲に向かって行くが、ヒィロが盾になるように立ち回る。
 素早く動き回るヒィロを捕えようと触手が放たれるが、ヒィロは回避。
 回避しながら、美咲と一緒に戦っているせいか、少しばかり思考が横道に。
(もし美咲さんに縛られたらどんな気持ちになるんだろ……)
 などと思っていると――
「痛っ!」
 触手の攻撃を幾らか受ける。
 慌てて戦闘に集中。
「植物ごときにボクの身体は穢させないよー!」
 固い決意で回避に専念。
「ボクを好きにしていいのは美咲さんだけ!」
 そんなヒィロを援護する様に、美咲の破式魔砲が、ヒィロに襲い掛かろうとする敵を貫いた。

 連携し援護する様に皆は戦っていく。

「みんなの邪魔はさせません」
 キルシェはマジックロープを発動し、ヒィロの死角から近付く1体をオーラのロープで縛る。
(これでヒィロお姉さん達の安全は少しは増すよね?)
 キルシェが敵の動きを抑える分、マザーに向かう仲間達の負担は減る。
(出来ればマザーもどうにかしたいけど)
 熟練のイレギュラーズ達の激しい戦いの中に混ざるのは少し難しい。
 なので戦闘の外周で敵を引き付けるように動いていると、わらわらやって来た。
「うわわっ」
 数が多いので慌てていると、雪梅が助けに来てくれる。
「そっちに行っちゃダメです」
 雪梅は敵の間合いに踏み込むと多段牽制。
 動きを止めるように牽制の攻撃を連続して叩き込む。
 攻撃を受けた敵の動きが止まった隙にキルシェが安全圏に退避。
 しかし今度は雪梅が囲まれてしまう。
 連続して攻撃を受けた所で――
(一瞬でも注意を逸らせれば)
 雪梅は持って来ていたぬいぐるみを投げ、反射的に触手の群れがそちらに向かう。
 その隙に距離を取ると、ニルが緑の抱擁で回復してくれる。
「痛い所は無いですか?」
「大丈夫です。ありがとうございます」
 雪梅は礼を言い、敵の引きつけに復帰。
 そこにニルが後衛で回復に専念していると、敵が近付いてくる。
「ニルはおいしくないですよっ?」
 襲い掛かってくる敵を誘導するように動き、神気閃光で複数を薙ぎ払う。
 雪梅やキルシェと協力して、外周部の敵を引き付けていった。

 戦い続き、敵の数は減らしていくのだが、マザーが次から次に生み出す。
 しかしイレギュラーズが刈り取る方が速く、ある程度減らした所で一気に勝負に出た。

「外周部の敵を引き付けましょう」
 雪梅は、ニルやキルシェに呼び掛け前に出た。
 積極的に戦っているためダメージも多いが、それでも頑張る。
 援護する様に、キルシェも前に出てマジックロープを使い敵を縛り、さらに式符で攻撃。
「お姉さんやお兄さん達の邪魔はさせません」
 白鴉や毒蛇を使い敵を抑えていく。
 攻撃を受けて来は距離を取ろうとするが、そこでニルが前に出る。
「こっちです」
 敵を誘い出す様に引き付けると、ダークムーン。
 生み出された輝く闇の月に敵は照らされて、怯んだように蠢いた。

 外周部の敵を引き離した所で、中衛の敵を美咲とヒィロがまとめて潰す。

「捕まえたいなら掛かって来なよ」
 ヒィロは敵の触手を潜り抜け接近すると、斬神空波。
 素早い動きから放たれる刃が次々切り裂き、敵は捕まえようと追い駆けて来る。
 しかしヒィロの方が圧倒的に速い。
 縦横無尽に駆け回りながら闘志を放ち、敵を1箇所に誘導する。
「美咲さん!」
「分かってる。任せて」
 ヒィロの動きに合わせ照準を合わせていた美咲は、直線上に集まっていた敵に向け破式魔砲を叩き込む。
 収束性を高めた魔砲は、粉砕するように貫き破壊した。

 皆の活躍でマザーの守りは、ごっそり減る。
 この好機を逃さず、イズマと貴道とクロバの3人は、マザーに肉薄した。

「邪魔だよ」
 行く手を遮るように伸ばされた触手の群れに、イズマは跳び込む。
 剣撃の間合いに踏み込むとH・ブランディッシュ。
 絶え間ない乱撃で触手を粉砕する様に切り刻みながら突進は止まらない。
 マザーは危険を感じたのか分散していた触手を1点に集中して放つが、イズマは黒顎魔王で迎え撃つ。
 イズマは傷を受けつつも本体へと辿り着き、雷切。
 まさしく雷の煌めきの如き剣閃を振るい、大きく斬り裂いた。

 感電し動きが鈍るマザーに、貴道が剛拳を叩き込む。

「喰い殺してやるよ、HAHAHA!」
 マザーが苦し紛れに放った触手を避けダーティクロス。
 ノーモーションで打ち込まれた変則カウンターが深々とめり込み、そこから立て続けに真・コンビネーション。
 左右の連打は、一撃ごとに拳の跡を刻み、マザーの動きを一瞬止める。
 そこに渾身の餓狼王。
 巨狼の顎を思わせる、上下同時の2連打の衝撃は、マザーを食い破るように破壊した。

 連続して叩き込まれる強力な攻撃。
 マザーは確実に弱り、止めを刺したのはクロバだった。

(悪いな、”美味しい”ところは狙わせてもらう)
 それまで仲間の援護に動いていたクロバは、マザーに目掛け疾走。
 襲い来る触手の全てを叩き切り間合いを詰めると、内なる力を解き放つ。
「焼いて斬り裂いて、文字通りに料理してやろうじゃないか!!」
 刃に焔を纏い、鬼神の如き剣戟を叩き込む。
 神気斬界・暁焔。
 剣閃と共に炎が走る。
 無明の闇を切り裂く焔の剣は、マザーの一部を炭化させる勢いで焼き斬った。

 その瞬間、勝負は付いた。
 マザーは倒され、残りの敵は動きを停止する。
 安全になった所で、リザ達が奥を探索。
 お目当ての魔本を見つけ出すことが出来た。

 魔本の注意事項などを確認し、依頼は完了。そして――

「触手……お勉強のため、是非作らせてください!」
「私も、少し作ろうかな」
 雪梅や美咲が料理をする事に。
 味は、先端はバナナで中ほどがマンゴー。
 根元が里芋だったので、根元は鍋にしてそれ以外はデザート系に。
 見た目とは裏腹に、非常に美味しかった。
「はわ……意外と美味しい……色んな調理法がありそうです」
「これ干したら、旨味増すんじゃないかな?」
 雪梅と美咲が言うように、可能性を感じさせる食材だった。

成否

成功

MVP

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者

状態異常

雪梅(p3p008787)[重傷]
特異運命座標

あとがき

お疲れ様でした!
皆様のお蔭で、無事魔本を手に入れることが出来、新たな魔法植物が作られることになります。
ちなみに、今回出てきた拘束用植物イの八号も合成され、さらに魔改造された物が鉄帝で育てられることになります。
竹も合成素材のひとつにするので、多分筍味の触手とか生やす植物になると思います。
それでは、最後に重ねまして。
皆さま、お疲れさまでした。ご参加、ありがとうございました!

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