シナリオ詳細
NEXT『Canon』『Zantman』
オープニング
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イレギュラーズ達に『Rapid Origin Online』が解放されて暫く。
伝承、鋼鉄、正義、航海、砂嵐、翡翠……と。各国を渡り歩いた者もいるだろうか。
それぞれの国には現実世界と似た――しかし『異なる』者達が存在している。
例えば皇帝の地位に付いていないヴェルス。
例えば体になんの問題もない提督王女たるエリザベス。
例えば悪でありながらそのまま国に属するキング・スコルピオやコルボ――
この世界は『そういう』世界だ。では……
「アイタ――!! いたたたたた、ちょ、やめ……ぎゃああああ――!!」
『翡翠(エメラルド)』という国はどうなのだろうか――?
大樹ファルカウの下にて暮らす幻想種たちの国家は、現実世界よりも排他的要素が強い。幻想種たちは外を受け入れぬ姿勢を示し、更には火の魔術を好む者も多いという……火を使えば当然迷宮森林も燃えやすいと思うのだが、知ったこっちゃねぇと言わんばかりだ。
――ともあれそんな翡翠の一角にて、イレギュラーズ達を待っている影が二つあった。
が、その内の一つは絶叫を挙げている。
なぜならば数度の腹パンを受けているから。涙を流して救いを求めるは――
「ひ、酷いですぞいつもいつも! 私が何をしたというのですか!!
この愛の妖精ザントマンに対して!!」
「いやなんかこういう風にしないといけない気がして……」
「訳が分かりませんぞ!!? ちょっと、ホントやめ、あっ――!!」
翡翠によく来る妖精のラブリーザントマン。
そしてそいつをまるで長年の恨みを晴らすかのように暴行を加えているのが――深緑の巫女の妹たるカノン・フル・フォーレだ。腹パンからそのまま巨大な目玉を叩いて叩いて叩きまくる。根本掴んで逃がさぬかのように。
……二人の間にある『現実世界の因縁』がここでも影響しているのだろうか?
しかし似ていても異なる歴史、異なる世界である。
訪れた『悲劇』は存在せず――ザントマンも只の妖精の一種である、らしい。
ともあれ依頼を出したのがこの二人なのは間違いない。
暴行をなんとか止め、依頼の内容を聞き出そうとしてみれば。
「ぜぇ、ぜぇ……た、助かりましたぞ……はっ! こんな事をしている場合ではないんですぞ――そう! 実はこの先にある図書館が今、紙喰蜂に襲われておりまして!!」
紙喰蜂――その名通り紙類をよく狙う魔物であるらしい。
翡翠には多くの書物があり、それらが狙われる事も多い為――本喰蜂とかブック・ビーとかでも言われるそうだが。ともあれそれらが今、困った事に大量に湧いているのだそうだ。
「翡翠には優秀な魔術師の方々が多くおりますが、すーぐ火の魔術を使おうとするので困ったものなのです……いくら何でも図書館でそんなもの使えば護るべき書物が全部即時ダメになってしまいます――ですので皆さんにお願いしたいのですぞ!」
成程。現実世界の深緑と異なり、火が御法度ではない……が、だからの依頼という訳か。
幾ら火を使う事に抵抗が無い国と言っても、貴重な書物がある場でも振舞おうとすると困る訳だ。だからこそ外部の人間――詰まる所イレギュラーズ達に依頼するという『クエスト』な訳である。
なるべく施設に被害が出ないように立ち回りつつ紙喰蜂たちを殲滅する。
これだけなら普通の戦闘依頼とも言える――が。
「まかせっきりというのも性に合わないし、私も手伝う……けれど攻撃的な魔術を使うと本ごとやっちゃうかもしれないから、基本は貴方達に任せる。よろしくね」
「いやそれは良いんですが、別に私が同行する必要はないと思うのですが。私、戦闘能力ありませんし……え、何? 盾にはなる? ちょっと? 今なんて不穏な事を?」
どうやらカノンとザントマンも参戦してくるらしい。
あくまでも支援程度らしいが……これもR.O.O世界ならでは、という事か。
現実にはあり得ぬ組み合わせ。あり得ぬ邂逅――
そんな事が起きるのもこの世界なのだと――誰かが呟いた。
- NEXT『Canon』『Zantman』完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年05月31日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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図書館への扉を開けば羽音がどこからか響いてきた。
――近くにいる。
どれだけの数がいるかは分からないが、油断は禁物だ――
「だからとりあえずコイツを突っ込ませて様子を見るね」
「いやナチュラルに生贄にするのはやめてほしいですぞ!!」
だからとカノンはザントマンを前に突き出し囮とせん。
抵抗する愛の妖精。全く、現実では本当にあり得ない光景である……
\ な ん で 二 人 一 緒 に い る ん や /
「……まぁ、この世界は『ゲーム』と考えればこういう事もあるのでしょうね。
そう、ゲームなんだから気にしては負けなのです……」
「話には聞いていたけど、随分と愉快な存在になっている様で……」
もう本当に心の奥底から突っ込みを入れたい所なのだが、二人の視点からすればこれが正常なのだろうと『爆弾魔』アレキサンドライト(p3x004247)は必死に叫びを堪えるものだ。少なくともザントマンは無害な存在になっている様だし、わざわざ追及する事もない。
『朝霧に舞う花』レインリリィ(p3x002101)にとっても、この世界の善良な人々を助けることに異論はないのだ。元々の世界の事はともあれ、一つ頑張ってみるとしよう。
「……成程、そちらの妖精の扱いは心得ました。そのように取り計らいましょう」
「まっさかカノン様……じゃなかった、カノンにザントマンと一緒の仕事をする事があるなんてなぁ。ま……こっちじゃ楽しそうで何よりだな」
そして同様に二人の関係性を見る『人型戦車』WYA7371(p3x007371)は、ただ頷き……『回し車大好き』ハーヴェイ(p3x006562)も『このくらいご愛敬だぜ!』と、殴られる様を寛容に許している。許さないでほしいですぞー!
まぁラブリーザントマンの扱いはアレでいいとして蜂共の討滅を行わねばならぬ。
そもそも本は日光や湿度の関係ですぐ痛む貴重な物なのだ……それを好んで食す存在などミーティア(p3x008617)は許せぬ。
「なんて度し難い虫なんだろうねぇ。
真新しい本を開いた時、時を経た古書を開いた時、どちらもワクワクするだろぅ?
――その感覚を奪おうだなんて、いい度胸をしてるじゃあないか」
「うう、本を食べるなんて武器破壊に繋がるかもしれないし……! それにここの図書館の情報は気になるし、蜂達に隙に差せるわけにはいかないね! 一刻も早く倒さないと……!」
奴らは潰す。それは『妖精粒子』シフルハンマ(p3x000319)にとっても個人的重大事案であった。そのために取る策が――蜂を引き付ける班と攻勢の班に分かれる事だ。
怒らせ引き連れそのままトレイン。攻撃しやすい場所で奴らを一網打尽にする……!
「カノンさんには一度待機しておいてもらおうかね!
あ、ラブリーザントマンさんは引き付ける班に付いてきてもらう形で」
「酷い事しないですぞ?」
「するする。あ、間違えた。しないしない」
何と言いました今――!? ザントマンが叫ぶが『疑似人格』ハンモちゃん(p3x008917)は口笛吹いて誤魔化すぐらいだ。まぁ耐久力は異常にあるみたいだし大丈夫だろう……
とにかく。引き付ける為に動くのはミーティアにハーヴェイ。WYA7371、それから『勧善懲悪超絶美少女姫天使』ひめにゃこ(p3x008456)達だ。外から水を汲んできていたひめにゃこがバケツを、ふっー、という吐息と共に床に置いて。
「万が一火とかに繋がったら危ないですからね! よーしこれで行きましょうか! ラブリーザントマンさんには負けませんよ! だって、ひめにゃこの方がもっともっとラブリーなんですから!」
いや別に張り合ってないですぞ! という言をひめにゃこはスルー。ふふ……ここでザントマンよりもラブリーであることを証明し、自らが美少女要因であると皆に示すのだ! えっ? 自爆芸人とかいう称号……? それはR.O.Oの行った重大なバグなので。芸人とは認めません!! ひめは綺麗枠なんです!!
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さて! 自爆芸人ひめにゃこの心からの叫びはともかく、作戦は開始された。
とにかく走り抜ける彼ら――蜂を見つければWYA7371は即座に。
「目標捕捉。排除を開始します……さっさと終わらせましょう」
穿つ。有効打を加えることで蜂が牽引可能と見ていたが、実際そうである様だ。
彼女の一撃が加われば本を食していた蜂共が怒る様に接近を試みてくる――
「ひゅー! 来たぜ来たぜ! 追いつかれる前にダッシュだ――!
まったく全部燃やしちまえば楽なんだけどなー! はは、そういう訳にもいかねぇか!」
「本を傷つけないようには注意しないとね! それからボク達が死んでも当然ダメ!」
同時にハーヴェイとミーティアも引き付ける様に蜂共へと撃を叩き込むものだ。
さすればWYA7371と同じく奴らが寄ってくる……あとはこのまま引き付けて広い空間の場へと連れていくだけ――ではあるが。しかし牽引も言うほど簡単ではない。
蜂が追いついてくれば当然刺されよう。
一発や二発ならともかく、包囲されるように集まられれば数の差で圧し潰される。
つまり作戦の破綻もあり得るのだ――だからこそ必ず生き残られねばならぬ。WYA7371やミーティアはそれも考慮して極力遠くから射撃を加える様な形で蜂共に干渉している。特にWYA7371の撃ち方は『引き撃ち』か――つまり後退しながらの射撃行動。
天井近くを飛ぶ蜂も逃さず狙って彼女は動く。
砲撃を繰り返し、走り。一往復の間に可能な限りの敵を己に寄せるのだ。
「ンッ”みゃ――!! たくさん来ましためっちゃやばいですよこれシャレにならな、うわー!」
が、図書館は室内であれば縦横無尽に駆け巡る事が出来る訳ではない――ひめにゃこの逃げるルートの先に偶々いた蜂達にも追い詰められそうになりつつあった。迂回が出来にくい事があるのが室内の弱点か……!
だから。ひめにゃこは掴む。
付いてきていたザントマンの服を――そして。
「いっけぇえええ――!! 必殺・ラブリー・バリアァー!!」
ぶん投げた! これぞ必殺――ラブリー(ザントマン)バリア!!
バリアなのに必殺って付いてる秘密奥義である!!
「悪魔――!!」
「何を言うですか! こんな天使みたいなひめに向かって……
おらっ! ひめの盾になれる事を光栄に思うと良いです!!」
生贄……違う、尊い盾として活用するひめにゃこ。蜂がザントマンに気を取られてる間に再度距離を稼ごう――なんか悲鳴が聞こえてきた気がするけど気のせいだろう。そうこうしている内に待ち構えているメンバーの付近までやってこれた!
「それにしてもさぁ、翡翠は『深緑』よりも随分と武闘派な気配があるみたいだけど……虫とかも武闘派にならなくてもいいだろうにねぇ? どうしてこんな事になってるんだか。あ、でも紙喰蜂が作ったハチミツって食べたら頭がよくなりそう、よくなりそうじゃない?」
「奴らのハチミツって花粉じゃなくてインクっぽいから食べられるかどうかという観点もありそうだよね……と、それはともかく来たみたいだよ!!」
戦いの気配を伴いながらこちらへと来る蜂達。随分と武闘派だとハンモちゃんが呟けば、しかしその武闘派を上回らなければならないのだとシルフハンマは攻撃の準備を。
図書館への被害を減らすためにも速攻が大事である。
初撃をもって敵に打撃を与えるのだと――敵が現れると同時に一斉砲火。
「さあ俺の爆弾の物理的な餌食になるのですよ! あははは!!
躱せるものなら躱してみせなさい――まぁ無理でしょうけどねぇ~!!」
その先陣を切ったのがアレキサンドライトだ。
彼女は拳を振る――いや違うアレは爆弾だ――!! 爆弾で殴るという非常に頭のいい物理的神秘パワーによって蜂共を粉砕するのである!
不思議な引力によって避けられず必ず当たり、爆弾の威力を浸透させる事によって防御を貫く完璧な一撃である。これが大宇宙爆弾の神秘か……ごめんなさい、今適当に書きました。ともあれ確かな威力が炸裂し蜂共を悶えさせて。
ハンモちゃんとシルフハンマの撃も続くのだ――
突然の一斉攻撃に慌てふためく蜂。だがこれで終わりな筈もあるまい!
「さてさて、前情報通り確かにそれなりに大きい蜂みたいだけど……うん、臆す訳にもいかないね」
駄目押しとばかりにレインリリィの撃も連打されるものだ。
奴らが冷静さを取り戻す前に。奴らが分散したりする前に、効率よく排除していく。
この図書館の平穏の為にも――少し荒っぽいが彼らには退場してもらおう。
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「愛の妖精、みんなのラブリーザントマン。あなたの力が必要なのです。
この戦いを制する為に――ついてきてくれますね?」
「はぁ、はぁ……えっ? さっきようやく蜂から逃げられたんですが二週目ですぞ!?」
「どうしても。あなたでなければならないのです」
広場の方で幾つもの炸裂音が響く中。WYA7371は戻ってきたザントマンに声を。
集合場所まで牽引したは良し――しかし一度のみで全てを引き寄せられたなどと彼女は考えていない。通っていないルートも調べるべくもう一度行くのだ――当然ラブリーザントマンを連れて。ヘイト役で。
「うんそうだよ! ボクの方も手伝ってほしいなぁ、ほらほらあっちのさ。多少離れた所に蜂がいないかも調べないといけないし、連れてきてほしいんだ。ああ大丈夫一人で行かせたりなんてしないから!」
「ホント? ホントですぞ?」
「勿論さ――治癒の術は任せてくれたまえ! きっちりサポートするとも!」
「それ結局私が囮ですぞ――!!」
そしてミーティアも凄い笑顔を見せながらザントマンを連れて行こうと画策する。大丈夫。ちゃんと治癒スキルは施すから。量で言えば雀の涙かもしれないけど、無いよりはマシだろぅ。だから信用して。トラスト・ミー。
さすれば『いやですぞー!』と抵抗するザントマンを連れ出し再度牽引へ。
「へへ、ていう訳で俺たちはもう一周してくるな! なぁにザントマン盾にすればやり過ごせるだろうよ!」
「そうですね! あの妖精、結構便利ですし! 蜂にモテモテですね!!
あ、でも一番モテるのはひめですよ!
なんたって本よりひめのが美味しいですし! なんちゃって!」
そしてハーヴェイも同様に囮を出すことを念頭にいれながら図書館を巡り――ひめにゃこは冗談交じりに蜂に声を掛けてみた、ら。頭になんか一匹寄ってきて、あ、あー! 噛んだら駄目です!! ひめの髪がぁ~~!!
「ザントマンが妖精? なにいってるの? あれは精霊でしょう?」
同時。素のガチトーンで妖精とは絶対に認めないシフルハンマ。
まぁザントマンはどうでもいいとして、とにかくシフルハンマは本棚に被害がいかぬ様に射撃に注意を払っていた――単体にしか攻撃出来ぬ反面、無駄に周囲を傷つける様な事が無いのがシフルハンマは己が利点だと思考している。
「本棚も……まぁ修理は出来るだろうけど、極力アフターケアの必要性が無いように終わるのが重要だからね! あとで本読みたいし」
「ああ――確かに。R.O.Oでの翡翠の歴史も知りたい所だ」
「……? 歴史? そんなに面白いものじゃないと思うけどなぁ」
射撃を繰り返すシフルハンマ。次いでレインリリィも索敵と攻撃を繰り返し。
同時に己に治癒術を施すカノンに視線を向けるものだ――
可能であればここの本を後ででも読んでみたい。
それにより知ることが出来る事もあるかもしれぬと。
「ッ、ぉらあ! よし! 第一陣はこれぐらいですかね!?
ってわぁ、隅から寄ってきたのがいますよ、どんどん減らしていきましょう!!」
「大き目の虫の羽音って結構恐いよね~。気づいたらすぐ後ろとか耳元にいたりするしさ」
そしてアレキサンドライトは来ていた蜂を潰し終えた……と思ったら騒ぎを察知したのかなんなのか、蜂がこちらに向かって飛んできている個体を確認した。数は多くない故にそう苦労はしないだろうが、ハンモちゃんの言う通りいきなり予期せぬ羽音がすると怖い面もあるものだ。
奴らの針は流石に大きく、注意せねばならない。
尤も――今回の依頼ではカノンが治癒を施し、メイン盾としてラブリーザントマンがいる故に非常に被害が小さくなっているが。
「それでも油断すれば一気に押し込まれる可能性もありますよ……ていうか思ったんですが、いざとなったら連れてきたラブリーザントマン諸共、範囲攻撃に纏めちゃってもいいんじゃないですかね? だって耐久力は結構あるんですよね?」
「それ、ナイスアイディア」
カノンの同意も得ることが出来たので次来たらやっちまおうかとアレキサンドライトは思考を。
……別にこっちのアレに罪はないのでしょうけど。
それでも幻想種として――色々と思う所もあるのだ。
「一発や二発くらいなら怒られないかなって」
「え、何!? 何か呼びましたぞ!? あなたの! 幻想種たちへの愛の妖精ラブリーザントマンをお呼びになりましたかぞ――!?」
「うん、呼んだ」
なんか大量に蜂を引き連れてきた上に反応がうざかったので、アレキサンドライトは心往くまま全部まとめて吹っ飛ばしてやった。
●
「お疲れ様です! ナイスメイン盾! さっすがぁ~!
でもなんでこの人こんなに堅いんですかね……もしかしてこの人もバグの一種です?」
爆発の衝撃で天井に突き刺さってるラブリーザントマンをひめにゃこは見据えながらつぶやいた――結局。あの後も順調に牽引と攻撃を成すことが出来た事によって比較的スムーズに蜂の殲滅は完了したのだ。
落ちてた木の枝で、虫を突く様に突きつつ息も絶え絶えなザントマンの様子を見る。
「まぁ一応依頼人の一人だから治療ぐらいはした方がよさそう……かな?」
「いや放っておいていいよソイツ。どうせ殺しても死なないぐらい堅いから」
「カノンさんは結構辛辣だなぁ……」
ともあれ念のため治癒だけはしておいた方がいいかとハンモちゃんは呟くのだが、カノンは冷たい態度で放置を勧めてくる。まぁ彼らの間柄の話を聞いていたレインリリィにとっては、さもありなんと思わないでもないのだが。
随分と愉快な存在になってはいるが『ザントマン』は『ザントマン』だ。
許せぬ輩もいよう――特にカノンはその辺りの現実のデータが影響しているのかもしれない。
「ま、そこの精霊はともかく……ちょっと周りを見てみようかな。
修繕が必要な個所があるかもしれないし。色々と見て回りたくもあるし」
同時。シフルハンマはアフターケアがてら周辺を見て回ろうと歩を進める。
あわよくばちょっと本も覗いてみたいところだ……もしかしたら迷宮ヘイムダリオンの情報があったりするかもしれない。まぁR.O.Oの情報であって、現実と情報がリンクするとも限らないものだが、調べてみるだけの価値はあろうと。
「そうだねぇ、とりあえず最後に後片付けまでしておこうか。
うーんこれで平穏になって、また本の匂いで満ちればなぁ……」
「ところでカノンとザントマンってどういう出会いだったんだ? なんか色々面白いけれど……初めからこうだったとか?」
「うーん……なんていえばいいのかな。コレは昔から存在した妖精だからね。出会いっていうか、なんていうかいつの間にか翡翠に住み着いていた輩というか……でもなんか見る度叩かないといけない気がしてそこから知り合ったというか……」
ミーティアも周辺の状況を確認しに行き、一方でハーヴェイはカノンへと言葉を。
ザントマンとは一体どういう関係なのか。
どうにも不明瞭と言うか、曖昧な回答だったが……少なくとも現実世界の悲劇は一切ない形での出会いなようだ。出会う度に毎回叩かれてるっぽいが、ザントマンはいじめられるのが好きなのか……?
「違いますぞ! 私は何度も殴られるのには文句を言って、アイタ――!!」
生きてたと思ったらまたぶん殴られて天井に突き刺さった。幻想種つよい。
しかし成程。こういう『可能性』もあるという事か。
この世界では。R.O.Oという――もう一つの混沌では。
「ラブリーザントマン……『ザントマン』と言う名を聞いた時、如何なる事態が発生するのかと思いましたが――あなたという可能性があったこと、あなたに出会えたことを、私は感謝致します」
故に。WYA7371は思うものだ。
「――これからも頼りに致しますね」
「え、それは囮としてって事ですぞ?」
「さて」
いずれにせよ『扱いは心得た』のだ。改めて。
……さて。それでは事態が済めばあとは一度イレギュラーズ達は帰還するのみ、だが?
「……あの、私の足元で何してますぞ?」
「待って。いいから、動かないで。いい感じに爆弾が設置出来てるんだから」
「あの。会話を」
その前にもう一度やりたいことがあると。
アレキサンドライトは図書館の外の方でザントマンに爆弾を設置していた。
いや。うん、そうですね、なんというか――
「――あと一回ぐらいやってもいいかなぁって思って」
「サイコパスですぞこの人――!!」
何を人聞きの悪い事を。
にっこりと微笑みながら、アレキサンドライトは万感の思いを込めて――愛の妖精をもう一回ふっとばしてやった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
ラブリーザントマンをあちこち盾に使いすぎてザントマンの手が足りなくて笑いました><
分身してほしかった。ともあれ依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!!
『こういう事』も――R.O.Oではあるのでしょう。
GMコメント
世界が異なればこんな事も……
以下詳細です!
●依頼達成条件
紙喰蜂(ブック・ビー)全ての撃破
●フィールド
翡翠首都ファルカウの一角に存在する図書館です。時刻は昼。
それなりに多くの本があるそうで、内部は中々横に広い空間となっています。
見渡す限り本棚が並んでいます。撃破目標の蜂達はあちこちに存在していますので、奴らが多くの紙を食べてしまう前になんとか撃破してください。
●敵戦力『紙喰蜂』×??
本喰蜂、或いはブック・ビーとも呼ばれる紙類を好んで食べる蜂の魔物です。
人間の手の平程度の大きさがあり伴って針も結構大きめです。奴らは食欲を優先していますが、自らを攻撃してくる輩がいればそちらへの攻撃に転じる事でしょう。
奴らの針には『麻痺』『痺れ』『毒』のいずれかのBSをランダムに一つだけ付与してくる能力があります。ご注意を!
数は不明ですが10体程度どころではない数がいるみたいです。
●カノン・フル・フォーレ(味方NPC)
翡翠の巫女リュミエの妹です。姉とは過去に『事件』とも言われる規模の大喧嘩をしたのですが、今では仲直りしています。
本気を出すと火の魔術をつい使ってしまう事もあるらしく、本を守るには不得手な様で皆さんに依頼が出されました。戦闘中は治癒の術(BS解除含む)を用いて皆さんを支援するようです。
●ラブリーザントマン(味方NPC)
翡翠によく来る愛の妖精さん。商人見習いらしい。
あんまり強くありませんが耐久力だけは異常にあるようです。
カノンとかはザントマンを積極的に盾にします。皆さんもしてしまいましょう。
「なんでですぞ――!!」
※重要な備考
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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