シナリオ詳細
ミッシェルのおたから
オープニング
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R.O.Oにログインを行ってから、ファーリ (p3y000006)は溜息を吐いた。
――行方不明者が出てるんですけど、お得意様も何人かいるみたいで。
それはカフェ・ローレットで音呂木・ひよの (p3n000167)が「おねだり」気分で呟いた言葉である。
――いいえ、これも佐伯製作所での仕事なので仕方が無いんですけど、お客さんが減ると寂しいですよねえ。
蒼い瞳が此方を見ていた。分かってるな、の意味合いも込めれてそうな意志の強い蒼い瞳だ。
――良いですねえ、私は危険だからお留守番だなんて言われてしまったのに。行ってしまおうかしら。
と、言うわけで『ひよののお願い』を聞いて何処かでログアウト不可になっている希望ヶ浜学園の学生を探しに来たわけである。
虱潰しに回るにもネクストは広すぎる。どうしたものだろうかと悩ましげに頭を抱えたファーリは一先ずは伝承の中を歩き回った。
「……それにしても良く出来てるよな。
やっぱり、匂いもするし、触ったら感覚もある。躓けば痛いし、死んだら――死んだらどうなんだろうな。死ぬ感覚って味わうんだろうか」
首を捻ったファーリは考えないようにした。その辺りは『実体験』するか、後程マッドハッターあたりに確認しよう。
クエストが並んでいる掲示板をまじまじと覗き込んでからファーリは「あー?」と首を捻った。
『クエスト名:ゴブリンのおねがい。
一緒に、果物を取りに行って欲しいごぶごぶ。よろしくごぶごぶ。先に来た奴等、使えないごぶごぶ』
先に来た奴等という文字列にピンッと来た。取り敢えずクエスト開始地点まで向かって見てから事前にひよのに聞いていた名前を呟いて見る。
「えーと……田中君」
「はい!」
……田中君だ。
「あーと……カフェ・ローレットのひよのが最近来ないのを心配してて、さ。取り敢えず助けるから、えっと……」
縛られて座り込んでいた田中の傍にしゃがんだファーリは田中が「後ろ!」と叫ぶ声に反応できなかった。
田中の縄ばかりに集中していたファーリの背中へと何者かの跳び蹴りが炸裂した。
「ッ――!」
その勢いの儘に倒れ伏せる。
「そいつら、使えない奴等ごぶごぶ! 勝手に取っていくなごぶごぶ! クエスト、こなせ。こなしたら返して遣るごぶごぶ!」
どうやら依頼主のゴブリンだ。ファーリは「クエストって果物取りに行くんだっけ?」と問い掛ける。
「そうだごぶごぶ、美味しい果物、取りに行くごぶごぶ!」
「オ、オーケー。簡単そうで良い――……いや、ごめん、前言撤回。友達連れてくるから、待ってて……」
あっちだとゴブリンが指し示した方向には、巨大なゴリラが見えた。
●
巨大なゴリラが動き回っている伝承のとある密林地帯。如何したことか、手入れが行き届いていない森が密林に化しているのだろう。
その中に巨大な美味しい甘蕉が存在するらしい。
ゴブリン、ことミッシェル(女の子)は甘蕉を手に入れて美味しいバナナケーキを作りたかったそうだ。
だが、希望ヶ浜の学生達はそのクエストに失敗し、見事にゴリラに返り討ちに合ったのである。
「わたし、お前等と一緒に行くごぶごぶ! だから、お前等、ゴリラ、倒せごぶごぶ!」
ミッシェルは堂々とそう宣言した。
「じゃあ、ゴリラ退治って言う簡単な仕事ってわけだな。ゴリラ倒したら約束通り田中を帰せよ! ひよのがめちゃくちゃ怒ってんだから!」
希望ヶ浜で待っているひよのの為にもごりらを退治しようではないか。
- ミッシェルのおたから完了
- GM名夏あかね
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年06月07日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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(この前のクエストであっさり死んだけれど、ログアウト後のルアナにはなんの影響もなかった。
精神に多少の損傷とかがあってもおかしくないと思ったのだけれど……)
『聖女』ルチアナ(p3x000291)は確かめるように周囲を見回した。精巧――いや、現実と違わぬ風景や感覚はどうにも慣れないものだ。勿論、これが仮想現実で在る事を彼女は嫌というほどに理解している。
1度や2度程度ならば杞憂だと笑って済ませられる範疇だと思えるが、数を重ねるごとにデスカウントが本来の精神や肉体に影響を及ぼすのではないか。それ程までにこの世界は『出来が良すぎる』――そして都合が良すぎる気がしてしまうのだ。
「ルチアナ?」
明るい声音を跳ねさせて。尾をゆらゆらと揺らしていた 『CATLUTONNY』すあま(p3x000271)は首を傾ぐ。「おなか痛い?」と問うた彼女に「いいえ、考え事をしていたの」とルチアナは微笑んだ。
「そっか。おなか痛いとバナナケーキが食べられなくって勿体ないからね! ね!
それにしてもバナナケーキ! なんという魅惑の響き。成功したらわたし達の分も作ってくれないかな。お願いしたいな。みんなで食べるともっと美味しいよ!」
涎を滲ませるすあまに「欲しいゴブ?」と問うたのは今回の護衛対象兼依頼人であるゴブリンのミッシェルだ。ゴブゴブ言ってるのはゴブリンだという事を分かりやすくするため名のだろうか。
「……密林でゴリラを撃破し、ひよのの友達の田中殿救出のため、ゴブリン……いや、ミッシェル殿を護衛しつつバナナを収穫するものか。ふむ、なるほどな」
相手がゴブリンだと言えども、突然種族名で呼ばれてはいい気もしないだろうと気を配った『正義の騎士』ジャスティーナ(p3x009816)にミッシェルは「そうだゴブ!」と高らかにぴょこぴょこと跳ねて応じている。
「突然でまじ申し訳ないっていうか……怖いお姉さんからのお願いだから……」
そう肩を竦めるファーリ (p3y000006)に怖いお姉さん=ひよのだと思い当たってからジャスティーナは小さく笑みを零す。夏の気配を孕んだ風が頬を撫で、汗ばんだ肌に僅かな潤いを与えてくれる。
「良い風ゴブ~」と悠長な言葉を吐いたミッシェルを一瞥してから『雷火、烈霜を呼ぶ』キサラギ(p3x009715)は「ファーリ」と呼んだ。
「確認するぜ。このちまっこいのお守りをしながらゴリラを倒しゃいいのか? ああ、そりゃあ一人や二人じゃクリア出来ねぇよな」
因みに『ちまっこい=ミッシェル』、『お守り=護衛』と言い分けて本心を上手くヴェールに隠したキサラギにファーリはそうなんだよと肩をがっくりと落とす。ミッシェルを護ればゴリラから甘蕉を得られず、甘蕉を優先するとミッシェルが死んでクエストが失敗になって最初からになるのだ。
厄介と言えば厄介だ。「オーケー事情は分かった、協力するぜファーリ」と答えたキサラギにファーリは「あざっす」と興奮したように頷いた。
「わ、ここが依頼の場所ですが、歩きにくそう……大丈夫かな……? でも、普通のゲームだったら動かすのは手だけで良かったのに……」
ぽつりと呟いた『かつての実像』いりす(p3x009869)にとってR.O.Oの世界はまだまだ不慣れだ。操作を行うと言う意味では身体そのものの動きとは少し乖離する部分がある。
「大丈夫か?」
「あっ、えっとその……だ、大丈夫です……! なんとか頑張ってついて行きます……!」
「無理するなよ」
いりすへと気さくに笑いかけた『かみなりさま見習い』武野ミカ(p3x008658)は「バナナとゴリラ、なあ」と小さく呟く。
「まあ、ゴリラといや、バナナ。バナナといや、ごりらか。
にしてもゴリラなのに胸板薄いってまるで……いや何でもない。どこからかむきゃむきゃ言う声が聞こえてきたがきっと幻聴だそうに違いない」
『バケネコ』にゃこらす(p3x007576)の『幻聴』にファーリが助けを求めるような顔をした。そう、それこそがヘルプを求めた理由なのだ。
「ゴリラ倒せたら作ったケーキ食わせてくれねーかなぁ。きっと美味いんだろうなぁ」
「バナナケーキかあ……ゴリラさんと仲良く一緒に……というわけにはいかないよねえ。
なんだかちょっと可愛そうな気もするけれど……ああ、でもゲームだから気にしなくていいのかな……?」
皆で食べるのが一番だよね、と首を傾いだアレクシア(p3x004630)へミッシェルは「悪いゴリラゴブ!」と叫んだのだった。
――ゲームだから、倒してしまわねばいけない、というのは何だか少し慣れなくて。
●
「友達想いなんだろうが音呂木さんはやっぱり悪い女だな」
にゃこらすの呟きを、ひよのが聞いていたならば「とんでもない。こんなにも素敵な『先輩』ではありませんか!」とシラを切ることだろう。
「ま、田中君も騙されねぇように気ぃつけとけよ? かはは、いや既に遅いかね」
「は、はい……」
ミッシェルが『甘蕉を取ってこない奴』認定した田中君はイレギュラーズを見送ることになる。ひよのは彼からすれば優しくて素敵なカフェ店員だったのだろう。
「よーし早速出発! ミッシェルはみんなから離れないでねー」
すあまが手をぶんぶんと振れば、彼女を抱えた全身鎧『ラダ』がずんずんと進み始める。索敵はそうしたゲームスキルを有する者に任せて一先ずは注意を図ることにしていた。
「私、索敵に秀でた能力を持たないから、皆に合わせて動きつつサポートをさせていただくわね」
御免なさいね、と肩を竦めたルチアナは敵を見つけた際には惹きつける役目を担うと宣言する。役割分担もゲームクリアには必要だ。
伝承国内だというのに如何したことか存在する密林の足場は僅かに泥濘んでいる。巨大な花々が咲き誇り、異国情緒というよりも未開の地と称した方が良い有様だ。
「と、とりあえず、足並みを合わせますね。えっと……敵も注意しておきます」
携帯型歩兵式セーカー砲で武装していたいりすは頑張ります、と宣言する。「頑張れゴブ」とミッシェルが鼓舞してくる。
「悪戯に命を奪いたくはありませんし、全て避けるのが理想ですけど、多少のエンカウントはどうしても発生してしまいますからね……」
「ああ。戦闘になれば戦うしかあるまい。なんたって私は正義の騎士なのだから。
それに、敵であるゴリラは非常に大きく、凶暴で強いと聞く。一筋縄ではいかないだろう」
心せよ、と宣言するジャスティーナは自身こそは囮であると『ドラミング』の作法を学んできていた。つまりは、威嚇と鼓舞するという意味合いを込めた行動を見せてゴリラに対抗しようというのだ。
「ミッシェル殿の事はアレクシア殿に任せる。遠距離攻撃もいりす殿に。私は『ドラミング』で真なるゴリラになってみせよう!」
――趣旨が変わった!
だが、ジャスティーナのやる気は満ちあふれている。「任せて」と微笑んだアレクシアはミッシェルの近くで彼女を護る役目を担っていた。
「知り合いから、ゲームだと魔物って一定範囲内でしか行動しないことが多いって聞いたけどどうなんだろうね……? もしそうなら、できるだけその範囲を避けていけると楽かも?」
首を傾いだアレクシアに「ありえる」とキサラギは頷く。ファーリも同じように「確かに、このクエストはそう言う感じかも」と彼女に同意した。
「さて、道中何事もなく──なんてそうは問屋が下ろさねー、ってか。そこらを何かがうろついてるな。敵かどうかは……聞くまでもねェよな」
「うん、足跡も此処に在る。足跡がない場所まで移動して様子を見ようか」
アレクシアの発見にキサラギは頷き一行は巨大な花の下に身を隠す。ミッシェルに前に出すぎるなよ、と告げたキサラギは息を飲む。
「にゃこらす、索敵は頼んだぜ。周囲の警戒は任せろ。音を出す生き物ならオレは聞き逃しはしねェよ。
避けられないものは奇襲でパパっと倒して消耗を抑える、それ以外は避けていこうぜ」
「了解した」
尾を揺らしたにゃこらすがぐんと身を伸ばせば、彼の傍らに猫が現われる。先行して行く猫の行く手をサポートするのはミカの『電探』だ。
「ここは神様(見習い)に任せろ。電磁波の放射と反射してきた波で探る、要はレーダーよ。
これで生き物とか障害物を探りながら動くぜ。進行方向以外にも不意打ちとか受けないように周りも気を付けながらな」
ポイントポイントを確認して行けば良い。道中のモンスターを避けながら辿り着いたバナナの木の下――そこに。
「むきゃ」
ゴリラが立っていた。青い毛並みに赤いリボン。薄い胸板が特徴的なそのゴリラはナックルウォークをしながら此方を伺っている。
「……近付いたら殴られそうだね。むきゃって言ってるし」
「ああ。むきゃって言ってる」
アレクシアとにゃこらすはそのゴリラをファーリが殴れない理由に思い当たった――彼がR.O.Oで合わせてアバターを作った少女にそっくりのゴリラだったからだ。
●
「何がゴリラじゃ、こちとら神様(見習い)だぞ! で、あいつ倒せばいいのか?
甘蕉を取ってこい……? そもそも甘蕉ってなんだよ! 素直にバナナって書けよお! ああ、もう!」
叫んだミカが構えたのは破斬鋼刃。その切っ先に乗せられた雷が光を帯びる。雷光闘技(我流)は本来は武神の持つ術理であるが、R.O.Oの中なら魔改造もお手の物。雷神の権能と交われば最強に見えるのだ。
「それにしても……このゴリラ、ゴリリファ、だったか。想像よりでかいな。これは気を引き締めていかねばならないな。よし……行くぞ!」
ジャスティーナは囮役として躍り出た。ミッシェルのことはアレクシアに任せれば良い。他の仲間がゴリリファを打ち倒してくれると願って!
「ウホッウホッウッホホホホ」
「ムキャッ!? ムキャムキャムキャ!!」
リズムに合わせてドコドコドンドン。胸を打ち鳴らすジャスティーナ。外見年齢22。クラス正義の騎士――現在、ドラミングマスター。
「ウホッウッホホホホゥ!」
「ム、ムキャ」
勢いよくドラミングを続けるジャスティーナ。ソレを眺めるゴリリファは――「……引いてないか?」
キサラギの言うとおり、ゴリリファが途惑っている。攻撃をして良いのかも途惑ってしまうが、そうしていてはクエストも終わらない。
いりすはありったけの弾を撃たねばならないと構え、ゴリラへと向けて攻撃を開始する。続くのはルチアナだ。
「凄い……ゴリラがドラミングから目を逸らしているわ」
ウッドスタッフより飛び出した魔術。その気配に反応してゴリラがルチアナの下へと飛び込んでゆく。ひらりとスカートを揺らしたルチアナの前へと飛び込んだのはすあま。
「危なーい! わたしもドラミング!! ……あんま音しないな。まいいや、この隙にみんな殴ってね!」
惹きつけるから、と身を滑り込ませるすあま。そして、置いてけぼりになったドラミングマスターはぎぎぎと錆付いた人形のように首を動かした。
「私を無視するでないぞゴリラぁぁぁぁぁっ! ウホッウホホホホホホゥッ!」
「ウホッウホウホホ!」
懸命にドラミングを行い続けるジャスティーナに続き、すあまもドラミングを行い至近距離へと近付いてゆく。
「こいつは食べたら美味しいやつ? 美味しくないならさよなら!」
キャットでキュートなねこねこパンチより放たれた必殺技。ソレを受け止めてゴリリファのドラミングがピークへと達してゆく。
「全くもって恨みはないけどごめんね! これもバナナと田中君のため!」
アレクシアは雲を纏わせるが如く、凍て付く気配に停滞の泥濘をゴリリファへと放った。ゴリラの叫び声がびりびりと周囲を震わせる。怯えるミッシェルを庇い、身体を滑り込ませたアレクシアはソードスレイヤーを構えた。
「ッ――こっちじゃ魔法は使えないけど、その分身体は動くんだから! 狙われてる限り庇い続けて絶対に護るよ!」
ミッシェルは喜んでいるようだ。
「ミッシェルが怪我したら一大事、世界から希望が失われるんだから!」
「ゴ、ゴブ……」
ミッシェルがときめいた気がする。口説き文句だったのだろうか……。
すあまの一言にすう、と背後に下がったミッシェルに「見てろよ」とにゃこらすは飛び込んだ。
「来いよゴリリファ。そんなちんけな胸版じゃドラミングしても音響かねぇからちっとも怖かなんざねーぞ!」
「ム――ムキャア……?」
その瞳に恐ろしき炎が宿された気がした。それでもいい。殴られ続ける事がにゃこらすの役目なのだ。ファーリは「猫ちゃんの虐待現場」と呟くが此れはゴリリファとの神聖(?)なる戦いなのだ。
「どうした、ゴリリファ! 胸板が薄っぺらすぎてドラミングでも何も聞こえねえぞ! オラッ!」
ゴリリファは激怒した。かの邪知暴虐(?)の目付きだけリアルに寄せている猫を倒さねばならぬと。
ゴリリファは胸板が薄かった。どうしたことかムキャムキャと泣くが、それも個性だと許容していた――と言うのに!
「ムキャアアアアアア!!!!!!!」
突進してくる。キサラギが「構えろ!」と叫んだ。ゴリリファの叫び声が増援を呼ばぬように、真っ直ぐに雷撃を飛び込ませたミカは小さく笑みを零す。
「しかしあのゴリリファ、ゴリラのくせに胸薄っすいな! 私よりなさそうで笑える。まぁ私は美乳系だし? むねがうすくてこうげきがあたらねー」
「ムキャアアアアアアア」
にゃこらすの元へと突進してゆくその動きを反転させて、鋭い勢いでミカの元へと飛び込みにゆくゴリリファ。キサラギは驚いた様にその様子を眺めていた。
だが、性質が分かったならばクエストクリアとて近いか。
(しかしこのゴブリンが死んだらクエストリセットとはなァ。ふゥん、リセットねぇ……。
『最初からやり直し』っつーことならコイツを……いや。まァ全うな手段じゃねーし、奥の手にしちゃちと物騒か、これは胸に秘めておこう)
いざという時の奥の手も存在して居る。だが、それを使わずともクリアできそうだ。尊い犠牲は二つほど出てしまいそうだが。
「――動如雷震」
恵璽御魂刀静神楽を構え、キサラギは踏み込む。稲妻の如き太刀筋で暴れ回るゴリリファへと一撃、そして、凍て付かせるは流麗の氷刃、二撃目。
ゴリリファの腕が振り上げられた。腹へと飛び込んだ痛みに小さく呻く。
「オッと、そんな大振りな攻撃じゃ剣士には当たンねェよ……まァ当ててくれてもいいんだぜ、追い込まれれば追い込まれるほど技が冴えるってモンよ。"背水"ってなそーゆーもんだからなァ!」
ソレさえも味方に付けると叫んだキサラギにいりすは小さく頷いた。ミッシェルを庇い、流れ弾を受け止めるアレクシアは「ゴリリファさんが弱ってきてる!」と叫ぶ――今だ。
「ありったけ、行きます……!」
「ウホッ、ウホホホホホホ!!!!!」
いりすへとドラミングで返答するジャスティーナが金の髪を振り乱す。ドラミングのバックミュージック付きとなったその空間で、ファーリも取り敢えずジャスティーナに倣ってドラミングをする異様な空間が生まれ始める。
「うお、なんだてめえ! こっち来るんじゃねえよ!」
「ムッキャアアアアアアアア!!!」
「は!? リアルではバインバインだが??」
特徴:意外とあるを有するリアルを宣言するミカをゴリリファは鋭い勢いで殴りつけたのだった。――だが、それも尊い犠牲だ。
その間に畳み掛けられる。にゃこらすは此処で惹きつけると言わんばかりに叫んだ。
「薄っぺらいんだよ! 胸板が!!!」
「ムキャアアアアアアア!!!」
――胸板って言うな、とでも言うようにゴリリファが飛び込んでくる。メスだから、胸板と言われたのは心外だとでも言うのだろうか。
ゴリリファがにゃこらすを遠く空へと打ち上げる勢いで殴りつける。だが、そのダメージを反射させて一筋縄ではいかないと猫は尾を揺らしたのだった。
「ゴ、ゴリリファさん……」
「ム、ムキャ……」
アレクシアがミッシェルを庇いながらごくり、と息を飲む。
「もうちょっと出来ることを増やさないと色々と不便だわ……このクエストが終わったらスキルや装備を見直しましょう。面倒がってられないわ」
溜息を吐いてからルチアナは「だから、行ってくれるかしら」とファーリの背を押した。
「……後少しだからね」
「うん、一緒に行こう! ルチアナとアレクシアは気をつけてね。私がぶっとばされたら後ろに来るよ!」
すあなは走り出す。そして、飛び込むことになったファーリは―――
●
「はーバナナ。この為に頑張った。先に一本食べていい?」
「勿論ゴブ」とミッシェルはすあまにバナナを差し出した。勿論、一緒に田中も解放されている。
「田中、わたし達ひよののお願いで助けにきたから。お土産にこのバナナケーキとか持って顔出してやるんだぞー」
「あ、は、はい」
肩を竦めた田中の傍らでルチアナは「バナナ」と小さく呟いた。
「ゴリラを倒せたら甘蕉を持ち帰ればいいのよね? ふむ。こちらでものを食べても、眠っている本体の空腹は満たされないのよね。
……美味しいものを食べてその記憶だけが残っているって考えたら、少し寂しい気持ちもするわね」
――最も二つの人格を有する彼女には『片方の彼女』の記憶には何も残らないのだけれど、と小さく自嘲して。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
ムキャムキャムキャ(ドラミング)
GMコメント
ひよのさんはお留守番です。彼女の代わりに友達やお得意様を取り戻しましょう。
●成功条件
ゴリラの撃破
●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
※重要な備考
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
●フィールドデータ
伝承のとある密林。普通の森に謎に大きな花などが咲いてしまった結果、密林とかしました。
様々なモンスターがいます。モンスターに注意して進んで下さい。
甘蕉に近付けばとても巨大なゴリラが出現します。とても巨大です。
●ゴリラ(巨大)
とても巨大なゴリラです。3m近くの大きさでありこの密林の主のようです。
やけに胸板が薄いです。メスです。胸板が薄いです。
ドラミングを行い、雄叫びを上げて攻撃を繰り返します。このゴリラとは意思の疎通は不可です。
フィールドに存在するボスデータでも所有しているのかと言うくらいに大騒ぎします。
8人+ファーリの力を合わせて撃退しましょう。
※追加データ
・ファーー!リリー!!と鳴きます。
・ミッシェルは『ゴリリファ』と呼んでいました。
・胸板は薄いです。とても強いです。
●味方NPC『ファーリ』
月原亮のMMOの姿。リリファ・ローレンツと合わせてキャラメイクしましたがどちらが兄か姉かを毎日喧嘩しています。
銃を使用した後方支援を行います。いざとなれば、剣での対応も可能。二刀流。
●味方NPC『ミッシェル』
可愛いメスのゴブリンです。ゴブリンと言えばごぶごぶ言うだろう的に作られました。
護ってあげて下さい。放置すると直ぐにゴリラに殺されてクエストがリセットされます。
●甘蕉
ばななです。密林の置くに生えています。とても美味しいそうです。ゴリラを倒せば簡単に手に入ります。
●救出NPC『田中君』
ひよののお得意様。ひよのが「田中さんがくると結構楽しいのですよ?」と行っていました。
ミッシェルが甘蕉を手に入れたら解放することを約束してくれています。
それでは、ゴリラを倒して田中君を救ってあげて下さい。
いってらっしゃい!
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