PandoraPartyProject

シナリオ詳細

偽神NoiseyNoisey

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●両刀JK VS 両刀JK
「そーあーいむすかーりー♪ すかーりー♪ すかーりー♪」
 刀を抜いて、砂漠にひとり。
 数軒の建物だけが建ち並ぶさびれた宿場町を、歩く。
 タンブルウィードとすれ違い、足を止めるは酒場前。ウェスタンドアを潜るその姿に、酒場の『女』たちはぴたりと動きを止めた。
 黒いセーラー服を来た女学生の集まりにすた、それは見えた。
 彼女たちはコップを置き、両腰にさげた直刀の鞘にてをかける。
 ウェスタンドアが勝手に戻るカタンという音を背に――。
 砂蠍盗賊団戦神中隊長、御幣島 戦神 奏は抜刀した。
 黒いセーラー服をなびかせて、両目に星を宿した少女が。
「戦神が一騎、御幣島カナデ! 陽が出ている間は倒せないと思え!」
 抜刀の音がしたときには既に立ち上がり、名乗った時には既に飛びかかり、何本もの斬撃が奏を襲う。
 せまる斬撃のすべてを回避『せずに』――防御『せずに』――全弾自らの身体で受けながら、歌いながら相手をまとめて横一文字に切り裂いていく。
 一秒とたたずにあちこち切り裂かれた制服がぼろけて落ちるも、知ったことではないという風に奏は暴れ回った。
 死ぬより楽しいことが、この世にはあるのだと。
 死ぬほど楽しいことが、この世にはあるのだと。
 生き様が、証明していた。

●希望ヶ浜救出依頼
 ローレットへ新たに届いた練達三塔よりの依頼は、これまでと継続した研究員救出を目的としたものだった。
 しかしいつもとどこか違うところが、三つある。
 研究員の意識が取り込まれたという集団は、奇妙なほど全員の姿が酷似していたということ。
 まるで運命を意図的につなぎ合わせたかのように、かつて砂蠍の戦いで死したローレット・イレギュラーズが関係していること。
 そしてもう一つは……。

「いやぁー、新田さんが来てくれてほんと良かったっすわぁ。俺女の子には手ぇ出せないんすよ、犯罪っぽくなるから」
 サングラスにスキンヘッドで更にちょび髭という見るからにマフィアみてーな格好をした男が、練達中央塔のROOログインルームにちょこんと座っていた。身長がかるく190センチ以上はあるらしく、椅子が子供用にすらみえる。
 新田 寛治(p3p005073)は眼鏡の位置を直し、彼の前まで歩いて行った。
 そして、相手の語りに応えるでもなく本題を切り出した。
「R財団に動きがあったそうですね。タカジさん」
「新田さん……」
 サングラスの奥で目が鋭くなるタカジ。
 ROOの調査員として活動し、ネクスト世界ではSPタカジという名のアバターを使うフィールドワーカーである。
 一方の新田もまた、ファン・ドルドというアバターを用いてファンドの限りを尽くしているが……。
「奴が動いているなら、その目的は確実に人類の大量抹殺。なんとしても阻止しなくてはいけな――」
「なにこれフィギュア? めっちゃエロいんだけど」
 横から茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)がフッツーに割り込んできた。
 ズレる新田の眼鏡。
 『でしょう?』と不敵に笑うタカジ。
 さっきからずっとスルーしてたけど、ゲンドースタイルで座るタカジのテーブルには造形のめっちゃエロいフィギュアが並んでいた。
 その中には秋奈や、秋奈のROOアバターである玲、更には今なき奏をかたどったものまである。
「あの……」
「皆さんもご存じかと思いますが、ROOというのは練達が混沌法則の研究のために作った仮想空間なんですわぁ。けど原因不明のバグでネクストっていう世界ができあがってしまいまして、研究に加わってた研究員やフィールドワーカーも意識ごと閉じ込められてしまったんですわぁ」
「あの……」
「で、この世界を調査してる間に砂嵐(混沌のラサに相当する国)に戦神中隊っていう盗賊団……っていっていいんですかね、武装集団がいることがわかりまして」
「ふんふん、ソレで?」
 かがみ込んでフィギュアを下から覗き込んで『黒』ってつぶやく秋奈。
「その戦神中隊が、ある時期から一斉に行方不明になったんですわぁ。体調の御幣島奏をのこして」
「ほう」
 そこでやっと、新田が真顔にもどって話に加わってきた。あとフィギュアを手に取ってひっくりかえし『白』ってつぶやいた。
「砂嵐(サンドストーム)のクリムゾンっていう宿場町でその消息がつかめたんですが、どうやら中隊のメンバーが全員――」
 新田からフィギュアを奪い返し、トンと机の中央に置く。
「この子の姿に変わっていた、らしいんっすわぁ」
「「…………」」
 新田も、秋奈も、この姿に見覚えがある。
 『笑いながら死ねる兵隊』を量産するためのプロジェクト、通称――偽神計画。
 白い髪に黒いセーラー服。そして独特な背面装備偽神ストライカー。
「で、さっきROOの研究員が閉じ込められたって言ったじゃないですか。
 この偽神部隊のなかに三人ほど、囚われた研究員がいるんっすわ」
 ローレットはROO内に閉じ込められた研究員の救出も請け負っている。
 介入する理由は充分だ。
「偶然にしちゃあ……できすぎてないっすか?」

GMコメント

●オーダー
・成功条件:偽神部隊を一定以上殲滅する
・オプションA:????を殲滅する
・オプションB:奏(ROO版)の生存

 宿場町に乱入し、偽神部隊を残らず殲滅します。
 というのも、部隊員の外見とデータ構造が全員ほとんど同じなので見分けがつかず、とりま全員ぶっ倒さないと誰が囚われた研究員の意識を封じ込めてるフラグ持ちかわからないからであります。
 倒していけばどっかのタイミングでフラグが解放され、囚われた研究員たちも解放されるでしょう。ですので『一定以上』という成功条件になっています。
 オプション要素が設定されているのは、状況的にいかにも新田氏たちが乱入しそうな状況なのにコレだけってことはないだろうとタカジが考えたがゆえです。根拠はないのですが、もしかしたら皆さんの中にはピンとくる方がいるかもしれません。し、いないかもしれません。

●シチュエーション
 奏が単独で偽神部隊の酒場に特攻(ブッコミ)かけた所に皆さんも乱入していきます。
 このとき奏が敵なのか味方なのかはっきりしないというか、彼女のことだから『めんどくせー全員ぶっころすぜーい!』とかいって斬りかかってきそうです。話とか、戦闘中は特に聞いてくれなさそうなきがします。

 現場は西部劇にでてきそうな感じの酒場です。
 二階建てでフロアの半分は吹き抜けになっています。
 バーカウンター脇に階段があって、二階部分は宿かなんかになってるんだとおもいます。

●エネミー
・偽神
 人数不明の少女達です。
 全く同じような見た目してますが、戦闘中の個別認識はまあまあできるものとします。ペイントボールとか投げるのめんどいので。
 彼女達の戦闘スタイルは一貫して『突っ込んでぶっ殺す』です。
 防御とか回避とか考えてないしリソースを近接戦闘火力に全部つっこんでいます。
 ストライカーで機動力を底上げして後衛射撃キャラの引き撃ちにも対応する、ような気がします。
 なにで学習したのか同士討ちはさけるみたいです。

 数が数だし個体ごとの戦力もわりかし高いので、戦闘難易度はちょい高めです。
 敵の性質やいまの状況を利用しながら上手に戦いましょう。

●おまけの解説
・R財団とは
 世界中にコネクションをもつ死の商人。ウォーカーを中心に構成されており世界人類を激減させることを主目的とする。
 そのため安価な武器流通の他にも様々な方法で死をばらまこうと画策している。
 https://rev1.reversion.jp/scenario/replaylist?title=%EF%BC%9C%EF%BC%B2%EF%BC%9E

・偽神計画とは
 旧名『戦神偽造計画』。
 笑って死ぬ兵士を量産する計画。
 ものすごく色々な部分を省いて説明すると、お得な訓練プログラムを販売することによって各国に大量のバーサーカーを生み出し、各国をつぶし合わせるというもの。
 過去にその実験段階の兵隊たちをローレット・イレギュラーズの急襲によって破壊した。
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/1909

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

  • 偽神NoiseyNoisey完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2021年05月27日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

雪之丞(p3x001387)
ばぶぅ……
ジェック(p3x004755)
花冠の約束
ファン・ドルド(p3x005073)
仮想ファンドマネージャ
タント(p3x006204)
きらめくおねえさん
玲(p3x006862)
雪風
リュカ・ファブニル(p3x007268)
運命砕
ベネディクト・ファブニル(p3x008160)
災禍の竜血
現場・ネイコ(p3x008689)
ご安全に!プリンセス

リプレイ


 ゆりかごに、赤子がひとりころがっていた。
「ばぶぅ、あぅあー……ばぶぶ?
 あぅ、あぅあーう……ばぁぶ!
 あーうあ、だぁぶ……ばぶ、ばーぶぅ!
 ばーぶぅあーう、ばぁぶ!」
「なんて?」
 赤子を抱えあげ、とりあえず上下に振ってみる『緋衝の幻影』玲(p3x006862)。
 赤子っていうか『ばぶぅ……』雪之丞(p3x001387)は『う゛あ゛ー』っていいながら首を振った。
 多分アバターがこうなだけで喋ろうと思えば普通に喋れるはずだが、こういうプレイにどうやらハマっているようだ。無意識に。
「まあよい。えっとなんだっけ今日の依頼は? 偽神計画?
 にゃーっはっはっはっは、よくわからんが莫迦に似た莫迦がここにもいたとは!
 よかろう! 余興として撃滅してやろう!乱入してきた者も、必ず」
 二丁拳銃を指でくるくるとやって交差に構える玲
 その様子を、『せなかにかくれる』ジェック(p3x004755)と『きらめくおねえさん』タント(p3x006204)はのんびりと眺めていた。
 そしてちらりと、クエスト内容をまとめたメッセージウィンドウを開く。
 敵の戦闘力はやや高く、数は『いっぱい』というあたまのわるい数字(数字じゃない)が書いてある。
「ん。いっぱいいるの、厄介。しかも攻撃、痛い。でも、クエストのため。がんばる」
「うぅん、穏やかじゃないわねぇ。折角のバーなんだから、お酒でも飲んでゆっくりすればいいのにね?」
 頬に手を当ててゆったりとかしげるタント。
 その様子にジェックが振り向いて顔をあげると、タントは両眉をわずかに上げることでこたえた。

「混沌で悪さしてるやつがこっちでも悪さしてんのか?
 ゲームで何かして、どういう意味があるのか俺にゃわからねえが……」
 きわめてまっとうな、ある意味で誰もがいだきそうな感想を言葉にしてくれる『赤龍』リュカ・ファブニル(p3x007268)。
「わかるのか? 頭のいいやつに任せるぜ」
「Rの思考を『理解し解明できるか』といわれれば難しいですが……」
 『仮想ファンドマネージャ』ファン・ドルド(p3x005073)は青白いボディにユイツくっきりと浮かぶ黒縁メガネを掴むと、くいっと位置を整えた。
「悪と戦うなら悪と同じ思考ができなくてはなりません。仮に外からこの仮想世界にちょっかいを出す理由があるとしたら、『人口調整』のシミュレートとか……」
 自分で言ってみて、『ない』と思えた。混沌そっくりの研究用仮想世界であったなら利用価値があるが、このバグによって歪んだネクスト世界でそれを行って果たして実用性があろうか。もっと直接的な、あるいは内向的な……。
「まあいいや。俺は敵をぶちのめす事を考えるぜ。
 しっかしまあ、ギシン?っつーのも厄介だが暴れるオジョーチャンも困りもんだな。な、キリン!」
「「キリン!」」
 石油王みたいな頭のやつをかぶったキリンが、キメ顔で振り返った。
 隣ではふさふさの金髪がついたキリンが一緒に振り返る。
 その背にのった『白竜』ベネディクト・ファブニル(p3x008160)が、すっくと立ち上がる。白竜っていうかベネディクトっていうかポメラニアンだったが。
「今回のクエストはハードな内容だな
 が、それでも未帰還者が居るというのであれば放っては置けない
 どうやら裏で糸を引いている者が居る様子だが…先ずは目の前の状況を越えるとしよう」
 なあ兄上、とキメ顔で振り返るポメディクト。リュカはこの子と兄弟設定むりない? って一瞬思ったが彼がドラゴニックなドラディクトになるのをとりあえずは待つことにした。
 キリンの首んところにぶら下がって遊んでいた『ご安全に!プリンセス』現場・ネイコ(p3x008689)がぴょんと飛び降り、帽子をかぶり直す。
「偶然にしては出来過ぎって事ならナニカがあるって事だよね? だったら、そのナニカを先ずは見極めないとだろうけど……。
 なにはなくとも目の前の敵はぶっとばさなきゃハナシになんないか! それじゃあ早速いってみよー!」


 開くウェスタンドア。差し込む光に振り向く白髪の少女たち。
 一斉に立ち上がる彼女たちの抜刀とストライカーユニットの点火。
 室内に立ち込める熱と圧を前に、黒いセーラー服の少女は笑った。
「戦神が一騎、御幣島カナデ! 陽が出ている間は倒せないと思え!」
 互いを壊し合う激突――のほぼ同時に。
「ちょおっと待った!」
 吹き抜け二階の通路から、宿の扉を蹴り開いて室内から現れる者があった。
 方に担いだ鬼棍棒。かち割られた窓から吹き込む風に黒髪をなびかせた、リュカが手すりに足をかけて見下ろした。ぺろりと上唇を舐める彼を、偽神の一部が振り返る。
「お前らコトバはわかんのか? ニンゲンの言葉だよ。アユースピーク?」
 リュカの呼びかけに怪訝な表情をしめす偽神。リュカは目をぐるりと一周時計回りに一周させると口を開けた。
「ま、どーでもいいか。行くぜ『兄弟!』」
 手すりの上へ立ち上がり、豪快に偽神達へと飛び降りるリュカ。と同時に部屋からダッシュしたベネディクトもまた跳躍。
「これだけ同じ顔が並んでいると些か狂気を覚えるな。いや、例の計画そのものが狂気の様な物か……!」
 ボールのように回転しながらタックル。地面への衝撃が波となって走り、周囲の偽神たちが吹き飛んでいく。
 残る偽神へはリュカの大上段回転打が直撃。
 常人ならば首から上を激しく損壊しているところだが、偽神は大きく前のめりの姿勢になっただけでぺろりと流れた血をなめた。
「なんだこいつ。まあいっか!」
 顔をあげ、『とりま死んどけ!』と叫びながら二刀抜刀交差斬撃風圧破裂波動拡散衝撃浸透。ガード姿勢のまま吹き飛んだリュカがバーカウンターを粉砕しながら酒瓶だらけの棚に激突。
 激しい粉砕音とガラス片を散らしながら起き上がるその一方で階段をネイコが駆け下りる。
「くらえカラミティ――!」
 駆け下りる勢いのまま壁を蹴り三角飛びで手すりを飛び越えると、空中でワンスピンかけてから握りこぶしを振り込んだ。
「ストライック!!!!」
 振り抜き拳が対物ライフルのごとく地面を粉砕。木目の床とそのやや先にあった椅子とテーブルを粉砕し分解し、腕でうけた偽神の腕もまたへし折れた。が、偽神はネイコの首を掴んで大きく振り込み地面へ顔面から叩きつける。
「誰だこいつ!」
「しらん! けどブッコロ!」
「賛っ成!」
 抜刀し切り刻もうと振り上げたその腕を、回転して飛ぶ斧が切断していく。
 振り返ると窓の外。ジェックが斧を思い切り投げつけたところだった。
 ちらりと奏に視線をむけるジェック。
(話、聞いてくれそうにない。あんまり共闘向いてない。でも、アタシ達と違う。死んだらこれっきり)
 こういうとき、人類ってのは不便だ。言語が通じないだけで疎通を諦めそうになる。
 けど、こういうときのコミュニケーションを知らないわけじゃない。
「――」
 ジェックは無表情のままダッシュすすと飛び蹴り姿勢で窓枠ごと破壊し突入。
 飛び散るガラス片をまといながら侵入した彼女の足をがしりと掴んだ偽神のその横っ面を、走る閃光が撃ち抜いた。
 抜いたというべきなのだろうか? 白銀の光となって走った一条の柱が偽神のボディごと吹き飛ばしその場で爆発。周囲の偽神たちをメチャクチャにストライクしたその中心に、拳を地面に打ち付ける姿勢のタントがいた。
 そっと手を出しジェックとつなぐと、共に立ち上がって長い髪を払う。余った電流が天使の輪のように散って消える。
「行くわよぉジェックちゃん! 姉妹の絆、見せてあげましょ?」

「兄弟コンビとか姉妹コンビとか引きが良すぎる……よし、ここは親子コンビじゃ。日本語で言うと親子丼じゃっ」
「だぁぶ(それは違うとおもう)」
 真顔の雪之丞を握り込んで片足を天高く振り上げる玲。
 一度燃えるオーラを背景に纏うと、体全体を使って雪之丞を投擲した。
 シンカーの回転をかけながら飛んでいく雪之丞が偽神へ直撃。
 その顔面めがけて高速で突っ込んでいった玲の膝蹴りが更に炸裂。
「そぉら!」
 つないだコンボ。銃のグリップで横っ面を殴りつけるとさらなる回転をかけて銃身で更に殴りつける。
 転倒しころがっていく偽神を睨みつけ着地した玲は、ビッと振り抜いた銃を構え……てから、ハッとした。
「あ、これ射撃武器じゃった」
 トリガーをひいてみるがしゅかしゅかとしか音がしない。よーく見てみるとマガジンすら入っていなかった。
 一度空をあおいでから、玲は銃をくるくると回してから反転。銃身部分を握り込んでからグリップ部分にハンマーピック状の突起をはやした。
「さー、お主ら! 盛大に遊んでやろうではないか! なんかが来ちゃう前にさっさと――」
 唱えた、瞬間。
 壁が消えた。
「危ない!」
 ファン・ドルドが走りからのスライディングをかけ奏と玲を両脇にかかえつつ走り抜ける。
 そのすぐ後ろを七色の光が突き抜け、転倒した状態からすばやく復帰する……と、そこにあったものは跡形もなく消えていた。
 椅子も。
 テーブルも。
 バーカウンターも。
 数人ほど残っていた偽神も。
 なんなら、玲たちでさえ消えていたかもしれない。
「おー、避けたねえ」
 感心したような声。聞き覚えのあるその声に、ファンは――新田の意識は反射的に叫んだ。
「リッチモンド!」
「うん」
 巨大な穴と化した壁の前に立ち、ハンバーガーをかじるザムエル・リッチモンド。半分ほど食べ残したそれを放り捨てると、親指についたケチャップをなめた。
 消えた偽神たち。
 片腕を消し飛ばされた奏。
 それを庇うように立ちはだかるタントたち。それらを指差し確認すると、一瞬だけにこりとわざとらしく笑って無表情に戻った。
「ここまでは計画通り。あー、そこのイレギュラーズ。『外』ではローレットって組織の連中だっけ? その『アバター』と保持してるデータ、こっちによこしてもらえるかな」
 そう言いながらパチパチと連続で指を鳴らすと、数人の少女たちが現れた。
 その顔を。
 その武装を。
 その集団の名を、玲――否、『茶屋ヶ坂 戦神 秋奈』はよく知っていた。
「『あなた』……」


 説明せねばなるまい。

 ――御幣島 奏
 ――天王寺 昴
 ――心斎橋 芹那
 ――茶屋ヶ坂 秋奈
 ――桜ノ宮 雅
 ――香里園 櫻
 ――千里丘 小時

 以上七名の少女たちが、ある世界で対地球外文明決戦兵器として開発、投入された。
 彼女たちは戦いのなか半数ほどを喪失し、残る三体のみが真の『戦神』として覚醒したという。
 ……お察しのとおりである。御幣島 奏、そして茶屋ヶ坂 秋奈。彼女を除く五人の戦神が、フル装備で集結していたのである。
「リッちゃん、こいつが例の……ナントカから世界を守るっていう?」
 ポニーテールを結び直して口笛をふく天王寺 昴。ストライカーユニットから無数のビームライフルが展開。
「高倉さんってテキトーですから、案外ちがうかも」
「高倉さんって真面目ですから、違うなんてことないですよ」
 頭に長いはちまきを巻いてきゅっとしめる桜ノ宮 雅。ストライカーユニットから十二の刀が飛び出し中に浮く。
 色違いのはちまきを巻いてしめた香里園 櫻。大量のビームビットが展開し浮遊する。
「戦えばわかる。死んで終わるならこの世界の住人。終わらないならアバターだ」
 腰までのびた黒髪と長すぎる前髪の千里丘 小時。ストライカーユニットから四連ガトリング機関銃やミサイルポッドやらの実弾兵器が大量展開。
「とりあえず、ヤればわかるってこったな!」
 ベリーショートカットにバンダナ巻きの天王寺 昴がストライカーユニットをパージ、指ぬきグローブに黄金の光を纏う。
「ま、そういうこと」
 リッチモンドは数歩後退すると、『やっちゃって』とゴーサインを出した。
 2丁拳銃(ハンマー)を交差するように構える玲。
 奏がそんな彼女の横で二刀流の構えをとった。
「誰? 知り合い?」
「むしろおぬしが知らんのかい!」
 顔を見合わせ、次の瞬間。
「よそ見したやつは――死ぬぜ!」
 芹那の黄金の拳が豪速で炸裂した。
「プリンセス――ストラーイク!」
 魔法飛行で間に割り込んだネイコが直角にカーブし、芹那へ拳を叩き込む。正面衝突した拳が爆発のような衝撃をあたり一面に飛ばし、互いの髪をなびかせる。
「『千年雅楽(ソードビット)』!」
「『千本櫻芽(ガンファング)』!」
 同時に構えた雅と櫻。豪速で飛んできた無数の剣と素早く包囲を組むビームライフルたちに囲まれたが中央に飛び込んだタントが光の翼を展開。
 全方位へ向けて光の光線を乱射すると、続けて親指の付け根をかじる動作をとった。
 魔術の波動がはしったが、花のように重なったソードビットが急速ターンし盾となり、衝撃を吸収。
「奏様。こういうときは、どうするのかしらぁ?」
「ムカつくほうを殴る」
「シンプル」
 いず、べすと。と言って親指を立てるジェック。
 迎撃しそこねたガンビットによる四方八方からの銃撃を斧で撃ち落としていく。
 そこへ、昴の展開した大量の大口径ビームライフルと小時の重火器が一斉に向いた。
「あぅ、ばぶぶ……だぁーぶぅ!?」
 危機を察した雪之丞が瞬間的に大人フォームへ変化。高速で距離を詰めると斬撃――を浴びせようとしたところで雅の直接握ったソードビットと鍔迫り合いとなる。
「ちょ、まっ! うごけねえ!」
 足を止めての高速斬撃。互いに大量に打ち合い払い合いを繰り返す中で、大量のミサイルとガトリング射撃が襲った。
「リュカ!」
「応!」
 そこへ割り込んだのはリュカ&ベネディクトであった。
 リュカはまるで竜のごとき姿を晒し、実弾を体で受けると急速接近。
「手負いの竜は、おっかねえぞ!」
 コンバットナイフを抜いた小時と激突する。
 更にベネディクトによるタックルが浴びせられ、小時は激しく吹き飛んだ。
 ターンして迫るミサイル群だが、割り込んだファン・ドルドの刀によって切り落とされ爆発する。
「皆さん、ここは退きましょう」
「あぁ!?」
「狙いは私達のアバターのようです。倒せば回収できるものでもないでしょうが……倒されるのは厄介だ」
「……」 
 玲がちらりと奏の顔を見る。頭上にハテナを浮かべて首をかしげる奏。
 この分では、奏は流れるように殺されるだろう。無理に戦うよりは……。
「賛成! まだ生きてるやつ、ついてこい!」
「「キリン!」」
 決め顔のキリンたちが爆走し、玲や奏たちがそこへと飛びついていく。
 七色の光が走り片方のキリンごとぶち抜いていくが……猛烈な逃げによってその場を撤退することには成功した。


「俺の『電子妖精Fevnir』が、どうやら解析に成功したようだ」
 流れてくるデータを表示するベネディクト。
 そこは戦闘現場から遠く離れたサクラメント前。
 死亡した仲間たちもリスポーンし、休憩室へと集まっていた。
「あの場に現れた『ザムエル・リッチモンド』と『戦神』たちは、どうやらネクストNPCのようだな」
「厄介なのは……あのザムエルがこの世界を仮想世界だと理解してて、かつ『リアル側』の事情も理解してるっぽいことだ」
 腕組みするリュカ。ファンはため息をついた。
「バグだれけの世界です。仮想世界を理解しているNPC自体はいてもおかしくありませんが……外の事情を理解しているのはやや不自然ですね」
「どゆこと?」
 ドーナツかじるネイコ。その横では雪之丞がゆりかごに揺られ、ゆりかご自体をジェックとタントがゆーらゆーらさせていた。
 ポンと手をうつ玲。
「わらわたち、いつも普通にログインしておるが……逆に言えばROOにログインできるのは一部の研究員とわらわたちローレットだけということか」
「ネットワークが構築されているとはいえ外部から遮断されていますから、外から新規に情報を入力することほぼありえません」
 メガネを外し、ファンが真剣な顔つきになった。
「研究チームの腹の中で、何か悪しきものが動いている……かも、知れない」
 と、その時。
 ファン・ドルドの腕に突如として文字が浮かび上がった。
 『Svto6ZA3sxd5』――それは暗号処理を通して文字列へと変換され……。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

雪之丞(p3x001387)[死亡]
ばぶぅ……
ファン・ドルド(p3x005073)[死亡]
仮想ファンドマネージャ
玲(p3x006862)[死亡]
雪風
ベネディクト・ファブニル(p3x008160)[死亡]
災禍の竜血
現場・ネイコ(p3x008689)[死亡]
ご安全に!プリンセス

あとがき

 ――クエスト完了
 ――研究員の救出に成功しました
 ――NPC奏が生存しました
 ――NPCザムエル、戦神ガールズが発見されました。
 ――特殊な暗号テキストを取得しました。これより解析と調査が行われます。

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