PandoraPartyProject

シナリオ詳細

地の如き海の上にて、歌は響き渡れり

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●マーマンに変えられた船員達
 一面に広がる海を、船が進む。そのマストに設けられた見張り台で、見張り役の男が変な声をあげた。
「何だぁ!? マーマンどもが海の上を歩いていやがるぞ!?」
 見張りの男が言ったとおり、顔は魚そのもので、身体中を魚の鱗で覆われ、所々に魚の鰭を生やし、二足歩行で歩く亜人――マーマンが、船の先で海の上に立って歩いていた。
 ともかく、目前にマーマンの集団がいるのならば刺激しない様に避けて、襲われない様にしなければならない。船は、マーマン達を避ける様に舵を切った。
 だが、その判断は遅かった。マーマン達を避けながら進んでいた船の横腹に、ガスッ! と衝撃が走ると共に、船は座礁した。
「うわあっ、一体何だよっ!?」
 船の船員達は混乱した。さもあろう、ここは浅瀬でも何でもない、一面の海のど真ん中だったのだから。そこに、マーマン達が押しかけて船員達を打ちのめし、次々と捕えていく。
「……ちっ、そう言うことか」
 マーマン達に捕えられ、海の上を歩かされて、船員達は座礁の理由にようやく気が付いた。海面が、地面の様に固くなっているのだ。そして、船はその海面が地面の様になっている場所の端を通ってしまい、座礁したというわけである。

 マーマン達に捕えられた船員達は、一人のマーメイドの前に突き出された。こちらはいわゆる上半身が人で、下半身が魚の人魚と言ったスタイルだ。
 マーメイドは船員達の前で、穏やかな、だが抗うことを許さない歌を歌う。すると如何だろうか、歌が終わる頃には船員達は、すっかりマーマン達と同じ姿になってしまっていた。

●決して、殺めることなく
「さて、今回のクエストですが――」
 仮想環境『Rapid Origin Online』の一国、航海に設けられたサクラメントの前で、『緑の騎士』ウィルヘルム(p3y000126)が依頼についての説明を始めた。
「クエスト自体は、船の座礁を切っ掛けにしてマーマンとなってしまった、船員達の救出が目的です。マーマンになった船員達は、死なせずに戦闘不能に出来れば、元の姿に戻ります。
 そして、もう一つ」
「もう一つ?」
 ウィルヘルムの言い回しに、イレギュラーズ達は首を捻り、問うた。
「マーマン達を全員倒して船員達を無事に救出すると、クリア報酬としてマーメイドがこの世界に閉じ込められた研究員の姿に戻ります」
 なので、マーメイドも殺すことなく戦闘不能とする様に、とウィルヘルムは添えた。
「なお戦場となる海は、ROOを取り巻くバグによって、海面が地面の様に固くなっています」
 そのため水の中に沈む心配はなく、泳げなくても地上と同じように問題なく戦うことが出来るはずだと言う。
「それでは、よろしくお願いします」
 ウィルヘルムは頭を下げて、サクラメントからイレギュラーズ達を見送った。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。今回のROOは航海が舞台なのですが、どうやらその海が通常とは違っている様で……。
 ともあれ、マーマンにされた船員の救出達を無事に成功させ、クリア報酬としてマーメイドとなっている練達の研究員も救出して下さいます様お願い致します。

●成功条件
 マーメイドを含むマーマン達全ての戦闘不能(死亡不可)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 航海のとある海の上。時間は昼間、天候は晴天。
 OP中にも記されているとおり、海面は地面同様であるため、地上で戦闘するのと何ら変わりありません。
 環境による戦闘へのペナルティーはありません。

 ここまで行く手段については、小舟をいくつか載せた船を貸してもらえます。船でそのまま近付くとOPに出てきた船の様に座礁してしまうので、ある程度まで近付いたところで小舟でアプローチすることになるでしょう。
 なお、イレギュラーズ達が船員達や研究員を離脱させ終えるまでは、海は元には戻りません。

●初期配置
 マーマンは、マーメイドを中心に円陣を組んでいます。およそ直径10メートル。
 イレギュラーズ達は、最も近いマーマンから40メートル離れたところで、一カ所に固まっているものとします。

●マーマン ✕30
 魚の顔、鱗に覆われた身体、所々に見られる鰭、二本の脚と言った姿の、いわゆる半漁人と言われる亜人です。
 ただでさえ攻撃力や生命力が高く、鱗が固くて防御技術も高いのですが、それが後述するマーメイドのせいでさらに悪いことになっています。また、副行動で防御集中したマーマンに対しては、範囲【貫】の攻撃はそこで止められてしまい、後ろに通る事はありません。
 なお、船員達が変化させられたマーマンはそれ以外と一切見分けがつきません。と言うよりも、それ以外のマーマンも同じように誰かが変化させられた可能性があります。
 戦闘不能になった場合に死亡する確率はそれなりにあり、確実に死亡させずに戦闘不能にするには【不殺】の付いた攻撃を用いるか、後述する手加減を用いる必要があります。

・攻撃手段など
 三叉槍 物至単 【出血】
 噛み付き 物至単 【毒】
 薙ぎ払い 物至範 【識別】
 ウォーターカッター 物遠単 【弱点】【出血】【流血】

●マーメイド ✕1
 ROOにログインしたまま閉じ込められた練達の研究員が、モンスターに変えられてしまった姿です。OPでは、囚われた船員達をマーマンに変えてしまいました。
 基本的に攻撃は行わず、歌を歌ってマーマン達にバフをかけ強化するだけです。このバフは歌が続いている限りかかり続けるため、【ブレイク】で打ち消したとしてもすぐに元に戻ってしまいます。一方で、攻撃を受けると歌は止まり、次に歌い出すまでバフはかからなくなります。
 ではマーメイドを先に攻撃すればとなるでしょうが、マーマンが庇いに入るのは容易に予測出来るでしょう。
 【不殺】や後述する手加減を用いた攻撃によるものでない限り、戦闘不能になるとほぼ高確率で死亡します。

・攻撃手段など
 鼓舞の歌 神特特レ 【付与】【自分を中心にレンジ2以内の味方に影響】

●手加減
 このシナリオでは、「手加減」を宣言することが可能です。手加減を宣言された攻撃によって戦闘不能なった場合、それが【不殺】の無い攻撃であっても対象を死亡させることはありません。
 しかし、当たり所や威力を上手く調整する必要があることから、手加減による攻撃は命中と攻撃力を半減して判定されます。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • 地の如き海の上にて、歌は響き渡れり完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月14日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

じぇい君(p3x001103)
オオカミ少年
Teth=Steiner(p3x002831)
Lightning-Magus
アウラ(p3x005065)
Reisender
九重ツルギ(p3x007105)
殉教者
壱狐(p3x008364)
神刀付喪
レイティシア・グローリー(p3x008385)
高潔の騎士
イズル(p3x008599)
夜告鳥の幻影
いりす(p3x009869)
優帝

リプレイ

●海面に降り立つイレギュラーズ
「……よもや、海がこうなるたーな」
 地面の様に固くなっている海の上に立ち、その感触を確かめるかの様に海面を踏みしめながら『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)は独り言ちた。
「ゲーム内の事とは言え、タチが悪いったらありゃしねぇ!」
 気に入らないと言った風に、Tethが吐き捨てる。海面が地面の様になっているのみならず、この海面によって座礁した船の船員達がマーマンに変えられていると言う状況もあり、「何でもあり」の様相を呈していたからだ。
「せっかくの海の上での戦いだから、ゲームのように滑るように動きたかったのですが……」
 『かつての実像』いりす(p3x009869)も、トン、トンと爪先で海面をつついてその固さを確かめる。そして、希望どおりに行かないことにがっくりとした様子を見せた。
「とか、そんなこと言ってる場合ではなさそうですね……」
 だが、いりすはやるべきことを思い出して気を取り直すと、魔改造したビーコン弾を愛銃の弾倉に装填した。
「海の上を歩けるなんて、中々出来ない体験だね。ゲーム的な処理なのだろうか、中々興味深いな。現実でも再現を……」
 物珍しい体験を楽しむかの様に海の上を歩いているのは、『高潔の騎士』レイティシア・グローリー(p3x008385)。だが、この海への興味が高じすぎたか、「中の人」が出てしまっていた。
「んんっ。つい素が出てしまいましたが、マーマンに変えられた人達を助け出しましょう」
 それに気付いたレイティシアは咳払いをし、口調をレイティシア自身のものに変えながら、意識をこれから達成するべきクエストに向ける。

「マーメイドとマーマンに変身してしまった人間、ねえ……。十中八九、これもバグの影響なんだろうけど」
「囚われた研究員がマーメイドに変えられて、さらにそのマーメイドが船員をマーマンに変えて……。
 全く、これを意図している方がいるのでしたら、大分イイ性格をしているのでしょうね」
 『Reisender』アウラ(p3x005065)がううむと考え込みながら今回の事件に触れれば、『妖刀付喪』壱狐(p3x008364)がふぅ、と溜息をつく。
 船員達をマーマンに変えたのは壱狐が言及したとおり一体のマーメイドなのだが、そのマーメイドも元は『Rapid Origin Online』にログインしてきた研究員のアバターである。そんな事態になったのはアウラが言い当てた様に『Rapid Origin Online』を蝕むバグの影響であるのだが、それにしても「イイ性格」をした誰かによって意図的に引き起こされたかの様な悪意を、壱狐はこのバグに感じていた。
「……なんか、お姫様とその兵隊みたいな構図だね? こんなところで何をしているのか気になるわけだけども……。
 まさかここが縄張り? いや、配下を増やしたいだけか? ……まあ、いいわ。ここで倒させてもらうわ」
「そうですね。殴って元に戻すなんて何か悪い気もしますが、ここのルールに従わなくてはならない以上他に手はありません。
 我慢してもらうとしましょう」
 アウラはマーメイドやマーマン達についてあれこれ考えてみるも、すぐにその思考を打ち切ってその撃破に意識を向けた。とにかく、戦闘不能にして元に戻せばいいだけの話だし、そうしなければならないのだ。壱狐も、気の引けた様子は見せながらもやむを得ないのならと、自身の本体である神刀『壱狐』に目を向けつつ意を決した。
(悲劇を広げるマーメイド……その歌声は美しくとも、悲哀に満ちているかもしれませんね。
 さあ、悲劇の歌姫を終わらない悪夢から助け出して差し上げましょう!)
 アウラと壱狐の会話を聞きながら、『宣告の翼』九重ツルギ(p3x007105)はそう意気込んだ。現実では人を殺してばかりではあるが、否、むしろそうであるが故に、そこに救える命があると言う事実だけでもツルギにとっては充分に手を差し伸べる理由になった。

「船員達が変えられたマーマンと、そうでないマーマンとの見分けがつかない、と言うのはある意味とても面倒で、別の意味では気楽だとも言えるね。
 全員不殺を徹底すれば良いのだから、今回は後者かな」
(全員を殺さない様に倒さないといけないって、難しいんじゃないかな……)
 『夜告鳥の幻影』イズル(p3x008599)が事も無げに気楽に言ってのけると、『オオカミ少年』じぇい君(p3x001103)はそう簡単なものかと内心で首を傾げた。
 イズルの言う様に、マーメイドを含めて全員を殺さない様に徹底すれば、船員達が変化させられたマーマンを殺めてしまうことはない。だが、そもそも殺さない様に相手を戦闘不能に追い込む事自体が難しい。攻撃の当たり所や威力を考えなければ、殺めてしまいかねないからだ。もっとも、イズルが事も無げにこう言えるのは、それを可能とする攻撃手段を持ち合わせている故である。
 じぇい君としても、難しいとは考えていても、出来ないと考えているわけではない。むしろ、大丈夫、自分達なら出来るはずだと言う自信さえある。あとは、その自信が過信でないことを証明するだけだ。
(――正義の少年義賊として、船員さん達や研究員さんを救うためにも、僕は頑張るよ)
 そう決意すると共に、じぇい君は救出対象であるマーメイドやマーマン達がいる方を見やった。

●開戦
 地面の様な海の上を進んでいったイレギュラーズ達は、程なくしてマーメイドと、そのマーメイドを中心に密集しているマーマン達と遭遇する。
(……マーメイドは、アリの巣や蜂における女王のような立場なのだろうか)
 その様を見たイズルがそんなことを考えるのと、マーマン達に向かって駆け出すのは同時だった。マーマン達の直前に到ったイズルは、血の様に紅い魔力の波を放つ。身構えるよりも早く魔力の波を受けたマーマン達は、襲い来る魔力の波に身体をよろめかせ、気勢を削がれていった。
「今なら誤射の心配はねぇな。こいつで、痺れてもらうぜ!」
 イズルに次いで前に駆け出したTethが、大量の金属杭をマーマン達が密集している範囲に撃ち出した。マーマン達の身体に浅くながら突き刺さった金属杭からは、その中に込められていた固体プラズマによる放電が発生し、雷となってマーマン達を包み込む。
 雷に包まれたのは、マーマン達の中央にいるマーメイドも例外ではなかった。マーメイドは周囲のマーマン達を強化する歌を歌おうとするが、雷に包まれたショックで身体の自由が効かず、何も出来ずに終わる。
(この分なら、俺の目算より早くマーメイドに届きそうですね)
 Tethの撃ち込んだ金属杭がマーメイドの行動を許さなかった様を見たツルギは、予め『美と叡智の座』に座して立てていた目算に修正が必要そうだと考えた。マーマン達も同様に動けなくなるなら、七~八割ほどではなく半分も倒せばマーメイドにも攻撃が届く様になるだろうか。必要なのが下方修正ではなくて上方修正であるのは、喜ぶべきことであった。
 同時に、ツルギも前に駆け出している。そして手近なマーマンに対して細剣『閃光乙女』で突きかかった。ツルギの刺突はマーマンの鱗を突き抜け、その肉体に突き刺さる。ピンポイントに受ける苦痛に、マーマンは顔を歪めた。
(もともと殺傷能力の無いこの弾なら、誰も死なせずにすむはずです……!)
 いりすは、マーメイドを狙ってビーコン弾を魔改造した弾を撃った。本来のビーコン弾よりも大幅に強化された光と電波が、マーマン達の視界を眩ませ、灼けるような痛みと痺れを与えていく。それでも、元々無害なものであっただけに、殺傷力は低くマーマン達を殺めてしまう心配とは無縁だ。それでいてマーマン達の行動は阻害出来るのであるから、今回の様なケースでは有効だと言えた。
(今なら、誤射の心配も無いね。まとめて、やらせてもらうよ)
 乱戦になる前のうちにと、アウラはフリントロックライフルで何体かのマーマンを狙い射撃する。放たれた弾丸は意志を持つかの様にそれぞれ狙ったマーマンへと軌道を変えながら向かっていき、過つことなく命中していった。その瞬間に弾丸は爆ぜ、周囲のマーマン達にも鱗が意味を為していないかの様に傷を負わせていく。
「いきますよ。陰陽五行──水行の太刀!」
 壱狐の振るう、水行の術式を纏った一閃は、前線の敵味方の上を飛び越えてマーマン達の一体に命中。すると、剣閃が纏っていた水行の術式が周囲に広がっていき、パキパキパキ……とマーマン達の身体を氷で覆っていった。
「 『高潔の騎士』レイティシア・グローリー、皆さんの相手を致しましょう!」
「もう少しだけ、我慢して! 僕達が、いま助けるからね!」
 レイティシアとじぇい君は、マーマン達の左半分と右半分とを分担して、その敵意を引き付けにかかる。マーマン達のうち、Tethの撃った金属杭から発したプラズマやいりすのビーコン弾による光と電波の影響で動けなくなっている者以外の大半が、左右に分かれてレイティシアとじぇい君に集っていった。

●マーメイド、倒れる
 イレギュラーズとマーマン達との戦闘は、長い消耗戦となった。イレギュラーズの付与する状態異常によって、マーマン達は能力を制限され、行動を束縛された。だが、元々マーマン達の方が数が多く、しかも強靱な生命力を持ち合わせている。さらにマーメイドがマーマンを強化する歌を歌いだしたこともあり、マーマン達の数は思う様には減っていかなかった。
 一方で、マーマン達の攻撃を自らへと誘引したじぇい君、レイティシアはその守りの技量によってマーマン達の攻撃を耐えようとする。だが、いくら守りの技量に長けているとは言え、常時十近いマーマンから攻撃を集中されては、次第に傷が深くなっていくのは避けられなかった。

 それでも、イレギュラーズ達は誰も倒れることなく、マーマンを半分近くまでは倒している。マーメイドの側で守りを固めているマーマンは、一体にまで減っていた。
「どうしたの? 僕みたいな子供、簡単に倒せるよね? ほら、かかっておいでよ」
 じぇい君はそのマーマンに向けて、だらりと腕を下げて、無防備な姿をアピールする。このマーマンさえ退かしてしまえば味方の攻撃がマーメイドに届く様になるため、自分の方へと引き寄せようと言うわけだ。
 その言葉を理解したのかどうかは不明だが、マーメイドの側のマーマンは敵意を剥き出しにして、マーメイドの側から離れてじぇい君へと迫っていった。
「私は、まだ、倒れません……!」
 満身創痍に陥りながらも、レイティシアは倒れまいとして、両足でしっかりと海面を踏みしめる。そして、渾身の力を振り絞って槍で眼前のマーマン三体を薙いだ。レイティシアの槍を受けたマーマン達は、突然視界を暗闇に塞がれて、困惑しながら首をキョロキョロと左右に振った。
 マーマン達はこれまでと同様、レイティシアとじぇい君にそれぞれ攻撃を仕掛けていく。その攻撃でさらに傷ついたレイティシアが、あわや死亡扱いとしてログアウトを強いられるかと思われたその時。
「まだだよ……まだ、キミを倒れさせるわけにはいかない」
 イズルが、医神の葉から生成したポーションをレイティシアの身体に振りかけた。ポーションを浴びたレイティシアの傷は幾分か癒えて、その身体に活力を与えていく。レイティシアが未だログアウトを強いられることなく戦闘を継続していられるのは、ひとえにイズルのこの癒やしがあってこそだった。
「ありがとよ……これで、ようやく届くってもんだぜ」
 マーメイドを守っているマーマンを引き剥がしたじぇい君に礼を述べながら、Tethは自らの背丈ほどもあろうかという巨砲を構え、砲口を歌い続けるマーメイドに向ける。その砲口に集積した光は、ドヒュゥゥゥ……! と派手な発射音を放ちながら柱となって瞬く間にマーメイドへと迫り、その身体を灼いていく。
 高速で迫り来る柱をまともに受けたマーメイドは後方へと弾き飛ばされながら、その衝撃ともたらされる熱に悶え苦しんだ。それでも苦痛を堪えて途切れた歌を再び歌おうとするマーメイドだったが、イレギュラーズ達がそれを許すはずも無い。
「魔物の姿の下に隠れた本性(なかみ)――曝け出させて戴きましょう!」
 マーメイドを追って、ツルギが『閃光乙女』を手に駆けた。マーメイドに接近したツルギは、頭や心臓の様な致命的な部位を避けながらも細剣の剣先をマーメイドの身体に突き立てて、強かにダメージを与えていく。ツルギに貫かれた部分が痛むのか、マーメイドは苦しげにその場所を手で押さえた。
「もう少しだけ、我慢して下さい……」
 度重なる苦痛に悶えるマーメイドに申し訳なさを感じながらも、イリスはマーメイドに向けて演習弾を乱れ撃った。マーメイドも含めてマーマン達を倒さなければ、魔物の姿から解放することが出来ない以上、こうせざるを得ないのだ。マーメイドは腕で横殴りの雨の様に襲ってくる演習弾を受け止めようとするが、その大半以上は止めきれず、全身を襲う痛みに動けなくなってしまっていた。
(この弾で、畳みかけるわよ)
 アウラはフロントロックライフルに毒液弾を装填すると、動けないマーメイドに撃ち込んだ。この毒液弾も狙った相手を追尾する特性を持つが、軌道を変えるまでもなく毒液弾はマーメイドに命中し、その身体を毒で蝕んでいく。直接的な攻撃とは違う苦痛に、戦闘中であることも忘れたかの様にマーメイドはジタバタとその場を転げ回った。
「……その苦しみ、この太刀で終わらせてあげます」
 マーメイドが苦しむ様を見かねた壱狐は、自身の放ちうる最高の一閃を以て、マーメイドを昏倒させようとする。素早くマーメイドへと駆け寄ると、大上段に己の本体である『壱狐』を振りかぶり、マーメイドを両断するかの様な勢いで上から叩き付けた。
「安心してください、峰打ちですよ……よし、刀使いなら言ってみたい台詞上位ですよこれは!」
 だが、壱狐の言うとおりこの一閃は刃ではなく峰を向けて放たれており、マーメイドを両断することはなく気絶させるのみに留めている。そして、意識を喪ったマーメイドに峰打ちだと告げた壱狐は、上機嫌な笑顔を浮かべた。

●魔物となっていた、全ての人々を救い終えて
 マーメイドが倒された後も、残るマーマンとの戦闘は続いた。マーメイドからの歌による支援はなくなったものの、それでもマーマン達はやはり手強く、しぶとく生き残る上にイレギュラーズ達に痛打を与えてくる。そのため、盾役を務めたレイティシア、じぇい君と、宝玉で目を惹く様に煌びやかに飾られた盾『ブレイブウォール』でマーマン達の攻撃を誘引したツルギが死亡扱いとなりログアウトを強いられたが、イレギュラーズ達はマーマンを一体たりとも死なせることなく戦闘不能とすることに成功した。
 元に戻った船員達はイレギュラーズ達に感謝を述べてから座礁した船に乗り込むと、海が元に戻ってから航海の続きを始めた。イレギュラーズ達も、海が元に戻るころにはマーメイドになっていた研究員と共に船に乗り込んでおり、サクラメントまで戻ると『Rapid Origin Online』からログアウトしていった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

じぇい君(p3x001103)[死亡]
オオカミ少年
九重ツルギ(p3x007105)[死亡]
殉教者
レイティシア・グローリー(p3x008385)[死亡]
高潔の騎士

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。皆さんの活躍によって、練達の研究員も船員達も、無事に救出されました。
 それでは、お疲れ様でした。

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