シナリオ詳細
人狼村とクアックサルバー
オープニング
●人狼村とクアックサルバー
その医者は村の皆に"クアックサルバー(ヤブ医者)"と呼ばれていた。
頭痛がすると訴えれば胃薬を持ち出して、
大した事ない風邪なのに、入院が必要だと院内ベッドに寝かしつける。
あらゆる処方がちぐはぐで、なのに何故か憎めない。
そんな不思議なヤブ医者と村人との生活も十年を過ぎたある日ーー村を恐ろしい疫病が襲った。
月の出ている夜の日に、人狼になる人狼ウィルス。
人狼になっている間の記憶は感染者の頭に残らず、今のところ被害にあっているのは家畜ばかりだが、その牙が村人を屠るのも時間の問題。
「おらん家の牛と羊を襲ったのはただの狼じゃねぇべ」
「なぁ先生、こん村で検死でぎんのは、アンタしかいねぇ。こいつらを襲ったんはいったい…」
「ただの獣さ。運良く牧羊犬の監視をぬって襲ったんたろう。
……なぁに、大丈夫。前向きに生きれば事態はいくらでも好転していく」
●占い師CO
「潜入してもらってから暫く経つが、この村での生活は慣れたかい特異運命座標。
長い時間を過ごしていても、君達を紹介してくれた境界案内人いわく、君達の世界では一時間たらずの出来事らしい」
曇り空広がる深夜二時。村の中に潜入した特異運命座標を召集したのはーーなんとヤブ医者先生だ。
彼は実のところ医者ではない。この人狼村で唯一、オカルトに精通した占い師。
頭痛を訴える患者には、病魔に本体が隠れている胃に処方する薬を出した。
明日事故に巻き込まれて死ぬ。そう占いで出た患者を、重症扱いにして院内で保護をした。
「昼間、村人達に報告した検死結果は偽物だ。
家畜を殺したのは人狼で間違いない。三か月前に予知していた通りだな」
事前に知っている以上、その時が来るまで手をこまねいてる訳にもいかない。
だから呼んだ。特異運命座標を。
いくらヤブ医者扱いされても、彼はこの村を深く強く愛しているのだ。いつも通り平和な日常がくるように……何としてでもウィルスを"嘘"にしなければ。
「明日の夜は満月だ。人狼は間違いなく活動し、それなりに被害が出るだろう。
君達は悲劇を食い止めるのが得意だと聞いているよ。頼んだ、特異運命座標」
- 人狼村とクアックサルバー完了
- NM名芳董
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年05月17日 22時10分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●
夜が明けて朝が来た、1日目――
トコトコと羊飼いペーターの脇をひつじが横切る。振り向けばそこにはまぁるい塊。なんと分かりやすい事か。ひつじが群れている場所には、いつも決まって彼がいる。
「ゲオルグ、そろそろ時間じゃん? 群れの移動始めるべ」
「……そうか」
『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)が起き上がると、にゃんたまと羊達が懐っこく鳴いて擦り寄りはじめた。いつもの倍以上のふわもふに囲まれ多幸感にぼーっとしかけていた頭を、横に振って切り替える。
(噛まれれば感染して人狼となってしまうウイルス……私達にも感染リスクがあるのは厄介だな)
しらみ潰しに探して対処していれば、感染者がどんどん増えて大変な事になるだろう。
何とか目星をつけて早急に対処しなければ――と考えつつ、羊飼いの務めをこなそうと両腕でもっふり羊を抱えて歩き出す。移動先を聞こうとゲオルグが近づいた、その時。
「羊くさっ!」
一歩後ずさり怯むペーター。今まで一緒に過ごす中で、羊慣れした彼がこんな事に狼狽える事があっただろうか?
「か、かったるいわ~! 遠くまで行かねぇと餌になりそうな草ねぇじゃん?」
ぐるぐると渦巻く疑心。逃げるように先を行くペーターを観察しつつ、ゲオルグは再び歩き始めた。
「日々を穏やかに生きましょう。共に祈れば不吉な気配も退きます」
時を同じくして、村の聖堂には多くの人々が集まっていた。聖母のような微笑みで、神官服の『しろがねのほむら』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)は天に祈りを捧げてみせる。
「睦月様は今日も後光が輝いておられる。あれこそが天の祝福を与えられた者の証に違いない」
「ありがたや、ありがたや……」
(本当は『発光』を使ってるだけなんですけどね)
伏し拝む村長とパン屋の娘にニコニコしながら手を振りつつ、睦月は心の中でひとりごちる。元の力を失えど、何せ彼女はかみさまだった。小さな村の信仰を蒐集するくらい朝飯前だ。
「村長さん、これから家を一軒ずつまわって祝福を施したいのです。案内を頼めますか?」
「勿論ですじゃ。ささ、こちらへ――」
目を合わせて頼み込むと、村長は快諾して先を行く。すれ違ったパン屋の娘が頬を緩めた。
「はぁ……。神官様、いい匂いのする方だぁ……」
「ふふ。同い年くらいの子に褒められると照れますね。あなたにも神のご加護がありますように」
日は高く、胸がすく様な青空だ。しかし睦月の表情は晴れない。
(平穏無事って儚い幸せですよね、だからこそ守らなくては。ね、クラインさん)
「ぶぇっくし!」
「先生お風邪なのです?」
「イヒヒ、医者の不養生たぁこの事だァね~♪」
ケタケタと笑いながら、道化師ラパパがクラインの肩へ厚手の毛布をかけてやる。すると今度は埃っぽさにクラインがくしゃみした。
「っくしゅ! ちゃんと干しとけよ、不衛生してるからすぐ風邪になるんだぞ」
「ボク怠惰だもん。いーなーヤブ医者、ボクも可愛い助手サンに世話やかれたァい♪」
そう。『魔女見習い』ハク(p3p009806)はクラインの助手として色々な家を調べて見てまわっていたのだ。ひとしきり付き添って、彼女が知った事がひとつ。それはクラインが村人達に親しみを込めてヤブ医者扱いされているという事だ。
(人狼は魔女と同じく古くから伝えられる存在…言わばお仲間さんなのです。魔女見習いとして仲良くするべきか、悩んだ事もありましたが……こんなに温かい人達を怖がらせるものなら、懲らしめるべきなのです!)
頑張ろう、とハクがやる気を出した時だった。ザクザクお見舞いのクッキーを食べていたラパパが目を細め、こんな事を口走る。
「う~ん、助手サンの手作りってだけでもう美味しいけど、ほのかに香るバジルもいいネ♪」
「そうかー? あんま味なかった気ぃするが」
「喜んで貰えてよかったのです。そろそろ行きましょう、クライン先生」
ぐ、とハクがクラインの服の袖を引いた。何だと驚く彼が、それでも大人しく従ったのは、ハクの目が真剣だったからだ。
急ぐ彼女の歩幅に合わせ、ファミリアーの猫が走り寄る。もたらされた情報にハクは眉をハの字に寄せた。
(木こりさんが日中、森にいない? 村中がどんどん怪しくなっていくです…)
「♪めえ めえ 黒羊さん 刈り取った毛はありますか?」
「何だその不吉な歌は」
「いやだって、客も来ねぇし暇だもんよ」
赤斗が口ずさんだ歌に『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は無表情ながらも訴えの眼差しを送る。
村に潜入した特異運命座標の中で、自分だけが色調の違う黒ずくめ。これは即日吊られるのでは? なんて思ってしまったが故に、いただけない歌詞である。時刻はすでに午後九時をまわっていた。昼間のうちに村の人々の家を調べたアーマデルは、囮作戦を取りやめて赤斗の近くに潜んでおこうと決めたのだ。
人狼になった人々はドアや窓から家を出て、狩りをしてから帰宅するもの。
ならばその周囲に獲物の血や毛が痕跡として残っているかもしれない。
その推察は的中した。いや――的中しすぎていた。
「来たっすわ」
酒蔵の聖女の囁きとほぼ同時、ドアベルを鳴らして男が店の中へと入って来る。
「おいブライト、木こりだからって店に斧を持ち込むなよ」
「グルル……」
唸り声と共にヒトの姿が変容する。牙を剥き出し目を血走らせた毛むくじゃらのソレは、片手を振り上げ――
「それ以上は、させない」
カウンターの下から身を踊らせたアーマデルに大きく怯んだ。音もなく伸びる毒手(あんき)が人狼を蝕み、ドゴン! と音を立てて床に倒す。
「し、死んだのか?」
「いや、悪夢を見ているだけだ。……享楽の」
致死毒に苦しむ元木こりを片腕で担ぎ上げ、アーマデルは赤斗の方へと手を差し出した。
「行こう、孤立するのは危険だ。きっと皆もクライン殿の元に集まっている」
●
夜が明けて朝が来た、2日目――
「ブライトが行方不明になったじゃと!?」
「そんだけじゃねぇ、うちの羊飼いのゲオルグもいなくなったじゃん」
「ヒィッ、やっぱ人狼いるんじゃナイ、この村ァ♪」
噂はたちまち村の中に広まった。行方不明者が出た事により人狼の存在も濃厚になる。
ざわつく村人達の元へ、木こりの家を調べていたハクとクラインが顔を出した。
「クライン、ブライトが人狼と格闘した形跡は――」
「皆に大事な話がある。今夜、俺の診療所に集まってくれ」
それだけ告げて、村人達の制止を振り切り帰路につくクライン。その背中をハクがそっと擦る。
「…なぁ、ハク。これでいいんだよな」
「ハク達を信じて下さい。皆で悪い事を止めてみせるですよ!」
やがて日が落ち、疑心暗鬼に陥りつつも村人達は互いを監視しあいながらクラインの元に集まった。
そこで見た光景は――なんと病室で眠るブライトと、それに付き添うゲオルグの姿だ!
「これは一体どういう事だべ!?」
「致死毒を癒せるのが俺だけだったからだ。ブライトには人狼化を直しきるまで動けなくなって貰っていた」
「なんと、ブライトが人狼じゃったのか!」
「彼だけではありません」
睦月の声は平静だが、言葉の端々に震えが滲む。『幽世の瞳』で村長の目を覗いた瞬間、彼女には見えたのだ。群れに襲いかかられる村長の恐怖の記憶が。
「皆さん全員"そう"ですよね?」
ゲオルグが羊飼いの正体を看破し、睦月は村長とパン屋の中身を見破った。ハクはラパパの嗅覚で人狼と特定し、アーマデルに至っては昨晩のあの戦闘である。
村人達が表情を変えた。窓辺から差し込む月明かりの中、みな姿が変貌し、獣の咆哮が重なっていく。
不意打ちの一手を食らわせようと動き出す一匹。その動きを視ていた魔眼が絡め取る!
「ハクこそが時操りの魔女アガレス様の一番弟子、魔女見習いの『†魔眼王†』ハクなのです!」
むっふー! と一番槍を捌き切ったハクが誇らしげに鼻息を吐いた。彼女の元気に後押しされ、アーマデルもまた周囲に酒の香りを展開する。
「これこれ! やっぱりこの香りっすわぁ!」
「技に巻き込まれても知らないぞ」
『捩れた一翼の蛇の吐息』でテンションがハイになった酒蔵の聖女を諌めつつ、彼はその芳香をもって加護無き者の喉を焼いた。
痛みに暴れる人狼が睦月へ迫り、鉤爪で鋭く引っ掻いた。衣が破れ、吹き出した血は――神聖なる救いの音が、あっという間に傷も残さず癒やしきる。
「すごいですね、ゲオルグさんの癒やしの力! 身体も癒やされるし、にゃんたまさん達で心まで癒やされちゃいます!」
「この可愛さが理解できるとは、睦月もいいセンスだ。……敵は近距離レンジの戦闘が得意と見える。完全に近寄られる前に攻撃を仕掛けるんだ!」
にゃんたまのユキが睦月の元へ跳ね跳んで、にゃんごろ懐いて心を癒やす。元気をもらった睦月がキリリ、気を引き締めて片手を挙げた。
「誰も命は落とさせません! 味方も、人狼さん達も!」
激しく輝く神聖の光が悪しき者を気絶に追いやる。本能だけで動く獣と、連携の取れた特異運命座標。その戦力差は明らかで――
●
そうして夜が明けて朝が来た、3日目。
「俺はやっぱりヤブ医者だ。こんな事になるまで病に気づけなかったなんて……」
村人達への処方を済ませたクラインは男泣きに泣いていた。
「ありがとう、特異運命座標。君達がいなかったら、俺も人狼になっていただろう。
幸い、村人達の身体は人間に戻す事が出来た……ここからは心のケアが必要だ」
「また様子を見に来るです。ハクはクライン先生の助手ですから」
「僕も皆さんのために祈りに来ますね」
「戯れた羊にも愛着が湧いたしな」
「だから、あまり一人で背負い込むな」
4人の言葉にクラインの顔がまたくしゃくしゃになる。
ヤブ医者は卒業だ。次に会う時こそは、胸を張れる医者になろう――そう胸の内で決意して。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
今日も貴方の旅路に乾杯! NMの芳董(ほうとう)です。
汝は悪しき人狼なりや? 違うのならば戦いましょう!
●目標
人狼?匹の討伐
●皆さんができる事
主に捜査パートと戦闘パートについてリプレイを書いてください。その他の記載も歓迎です!
【捜査パート】
皆さんは人狼村の住民のフリをして潜入捜査をしている段階からはじめる事ができます。
【戦闘パート】
人狼と夜の村で戦います。捜査パートのロールによって有利になったり不利になったりするとか。
建物などの遮蔽物はありますが、月明かりがあり視界ペナルティはありません。
●場所
異世界『ワーウルフ』
噛まれると人狼になってしまう、人狼ウィルスが蔓延する異世界。今回の舞台はこの世界にある人狼村と呼ばれる村です。
●人狼ウィルスについて
人狼に噛まれる事で感染し、月の出ている夜に人狼になってしまうウィルスです。人狼になってる間の記憶は残らず、腹を空かせて色々なものを襲うのだとか。
もちろん特異運命座標も感染リスクはありますので、対策をしなければ暴徒の群れに加わる事になります。
人狼は不殺で倒す事ができればヤブ医者が人間に治してくれます。
●エネミー情報
ワーウルフ
噛みつきや引っ掻きなど至近・近距離物理の攻撃に優れています。
一匹に見つかると遠吠えで仲間を呼び寄せられ群がられる事も……。
嗅覚が鋭いのも特徴です。
人間の姿の時も嗅覚の強さが残る他、ヤブ医者が用意したお札を貼ると尻尾が見えるとか。
●登場人物
ヤブ医者 クライン
クアックサルバーと不名誉なあだ名をつけられているヤブ医者の男。本当に医療知識は無いが占い師として病魔を祓い、未来予知で危険な村人を救ってきた。
量産はできないが、頼まれれば人狼か人かを見分けるお札を用意してくれるだろう。
『バーテンダー』神郷 赤斗(しんごう あかと)
皆をこの世界に連れてきた境界案内人。皆さんと一緒に村に潜伏しています。
戦闘力は並に毛が生えた程度なので、自衛のため麻酔銃を持っています。呼び出しがあればサポートにまわるでしょう
《その他の村人》
村長 バルトロ
羊飼い ペーター
パン屋 ジェシー
木こり ブライト
道化 ラパパ
説明は以上です。それでは、よい旅路を!
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