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シナリオ詳細

ヴァル・ベールデ共和国の野望Ⅲ ~エイリアンゾンビの逆襲~

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●今日の被害者
 人々の行き交う足音、がやがやとした喧噪。
 エスカレーターがブティックの階を過ぎれば、香水の匂いが鼻先をかすめる。
「××様、○○町からお越しの××様、――△△ちゃんがお待ちです――」
 大型連休ということもあって、希望ヶ浜「丸呑デパート」には、がやがやとした人の気配があった。
 外には、『ALL LIFE! アナタの望むモノは、きっと全てここに御座います!』という紅白の幕がぱたぱたと瞬いている。

「丸呑デパート」は、豪華な10階建ての大型デパートだ。
 創業50年はさすがに嘘くさいが、「なんでもある」というのはあながち間違いではないだろう。最も、一般的なモノに限ればだが。
 生活用品から少々高級なジュエリー、雑貨品、映画館まで。みっしりとエンターテイメントの詰め込まれた娯楽施設だった。
 屋上は、開放的なプールとなっていた。
「ひゃっほう!」
 派手な大学生の男女4人が、次々とプールに飛び込んだ。
 ゆったりと泳いでいた子供が波にあおられてイルカの浮き輪から落っこちた。
「おっと、ごめんよ」
 ちびっ子は泣き始めるが、4人組はたいして構うことはない。防水仕様のスマートフォンで自撮りに興じている。
「夏といったら、やっぱりプールよね!」
 美女のナイスなプロポーションに口笛を鳴らした。
「今日こそ彼女にアタックしてオタクを卒業するんだろ?」
「し、しないよ! でも……でも……ジェニーが振り向いてくれたら……」
「ぼーっとすんなよ!」

●予定調和
「うーん、いいねえ、いいねえ」
 ビーキュウ・エイガスキーは指でカメラのファインダーを作り、大学生4人を収めている。いかにもである。
「美女にギークにジョックに親友枠。アレは間違いなく絵になるに違いない! とはいっても、好感度はぜんぜんないし……せいぜいが掴みってところか……5分も持たないな……」
「まっさか、タダで招待していただけるなんて! いやー、カンゲキデスね!」
「そうだろう、そうだろう、わんこ君!」
 ぷかぷかと浮き輪でプールに浮くわんこ (p3p008288)と肩を組み、映えのある映像をSNSにあげるエイガスキー。
 巻き込まれたくない紫電・弍式・アレンツァー (p3p005453)は水着を着て、なるべく身を縮こまらせて知らない人のフリをしている。
 今回は前の映画の大成功(いろんな意味でバズった)を祝しての招待、という名目だったのだが、いかんせんエイガスキーの挙動が怪しい。……なぜか、エイガスキーの母親、ホラースキーまでついてきている。
「次の映画は何を撮るのかしら? 私、自信があるのよ。怖がる演技には! まかせて!」
「しかしデスよ、まあそうそう映画見たいな場面など現れないワケデシてねぇ」
 わんこがフラグを建築する。いや、そのせいではないだろうが……。

「うわあああああーーー!」
 突如、暗雲が立ちこめる!
 理不尽なトルネードが巻き起こった。
『ALL LIFE! アナタの望むモノは、きっと全てここに御座います!』の幕がバタバタと空を舞った。
「あ、あれはーーーっ!」
「「トルネードエイリアンゾンビ!?」」
 奇妙なゾンビの塊が空から降ってくる。
「キャアアアアア!」
「FOOOOOO! やはりか! 都市伝説は本当だったんだっ!」
 はしゃぐエイガスキーとは対照的に、ホラースキーは金切り声で悲鳴を上げている。
「いや! もういや! あなたたちのせいでこんな目に遭うのよ!」
 あっ、これ、ホラースキー(お袋さん)足を引っ張る枠だ。肌身離さず持っていた刀を構え直した紫電は悟る。
「紫雷クンッ! ……これはきっと、共和国の残党による陰謀に違いない!」
 違う。絶対に違う。けれどもこの撮影のチャンスを逃すわけには行かなかった。
「むむ、閃いたぞ! そこのキミ!」
「……どうしたの? 戦闘なら、そうね。この人たちを見捨てるわけには」
 司書……ことイーリン・ジョーンズ (p3p000854)は既に戦闘態勢だった。
「いいぞ! 構想が湧いてきた! 湧いてきた!キミを映画のキャストにスカウトしよう!」
「答えは決まっていますよ! イエス! クレジットはどうされます? 司書サマ? それとも馬の骨サマ?」
「……まあ、放っておく訳にはいかないわ」
「足下をみやがって……」
 なかなか損な性分である。
 デパートに取り残された一般人を逃しつつエイリアンゾンビキングを倒し、平和を取り戻すのだ、イレギュラーズ!
「ほかにも役者がいるはずだ! コレはすごい映画になるぞ!」

GMコメント

ごきげんよう! 布川です。
エイガスキーの映画も3作目となりました。
デザイアを質に入れてでも見よう!

●目標
・ゾンビキングの討伐
・撮れ高(アホらしい/かっこいい演出をお願いします)

●敵
トルネードエイリアンゾンビ軍団×30(ヨル)
・ゾンビたちが寄り集まってできた群れ。
・ゾンビの感染能力はないが、猛毒、ショック、足止、呪いなどの状態異常を持つ。
(ただし、命中はそれほど高くはない模様)

ゾンビキング
・EXF高め、やはり状態異常を高く持つ。
・王冠をかぶっており、ゾンビたちの指揮を執る。
トルネードエイリアンゾンビらの群れに埋もれるように存在し、ゾンビ軍団はキングをかばおうとする。

もともとB級映画に取り憑いたヨルだったようです。
共和国は完全に関係ないですね。

●場所 希望ヶ浜、「丸呑デパート」
10F建てのデパートです。屋上がプールになっています。
トルネードエイリアンゾンビの群れが空から降ってきました。
商業施設にありそうなものならあります。9Fは映画館……など、設備があっても構いませんし、唐突に場所を移しても何か用意していたり持っていてもかまいません。
客は逃げようとしていて、たまにこけたりしていますが、コメディなりの頑丈さです。割と頑丈です。

●味方NPC
ビーキュウ・エイガスキー
「ぶえーーーくし!!!」
B級映画の監督として一躍有名になりつつある監督。
今日は風邪気味。
じわじわ人気が伸びて天狗になっているところ。
その場にいたイレギュラーズたちを、急遽「キミには才能がある!」とスカウト。

ビーキュウ・ホラースキー
「コレで有名になるかしら!?」
エイガスキーのオカン。
比較的温和だがいい意味でも悪い意味でも怖いもの好きで有名。
「こんなところにいられないわ!」とパニックを起こそうとしますが、まあ、守ってあげてください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • ヴァル・ベールデ共和国の野望Ⅲ ~エイリアンゾンビの逆襲~完了
  • GM名布川
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年05月21日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
※参加確定済み※
紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)
真打
※参加確定済み※
わんこ(p3p008288)
雷と焔の猛犬
※参加確定済み※
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
Night Crow(p3p009084)
エンカウンター・カウンター
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
人間賛歌
日高 天(p3p009659)
特異運命座標

リプレイ

●居合わせた役者たち
「ゾンビの群れだと?!」
『特異運命座標』日高 天(p3p009659)は、逃げ惑う人々とは逆方向に階段を駆け上がってゆく。
(ショッピングモールならぬデパートでゾンビパニックというシチュエーション……まさかゾンビ怪人の仕業か!? くそ、ちょっと遠出をしたらこんな事に出くわすとはな!)
 緊急事態への対処の早さ、それは、天が――かつての世界で何度も経験してきたことだ。
詳しくは『ヴァル・ベールデ共和国の野望Ⅲ ~エイリアンゾンビの逆襲~』円盤予約特典のパンフレットを参照(予約サイトによって特典が違うので注意)。
(いや、ここは俺の故郷の世界じゃない。怪人でなくともゾンビ映画のような事を起こす奴だっているだろう。なんといってもここは混沌世界だからな……)
 なんにせよ、市民をゾンビの危機に晒すわけにはいかない。
 転んだ客をかばい、刃で一撃を受け止めた。
「こんなところで死んでたまるか、俺には帰りを待っている子がいるんだ……!」

 巨大なフラグが立った。

 じゃじゃじゃじゃん、とギターが鳴る。スペースロックなテーマソングをぶん回すのは、『陽気な歌が世界を回す』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)である。
「はっはっは、出世したなあエイガスキー! まさかあのトルネードエイリアンゾンビを呼んじまうなんて」
「ヤツェク君! 来てくれたのか!」
「銀河辺境ではたまに降ってきたなあ、エイリアンゾンビ――んなわけあるか!」
 帽子をぱしっと取り、なごやかになれあう音響監督(成り行き)と映画監督。
「まあ、いい映画を撮りたいという職人根性は前回の依頼でよくわかった。ならばおれもそれに応えにゃならん」

 緊迫した様子のデパート内。
「なるほど、サメではなくてゾンビですか、まぁ確かにB級ホラーでは鉄板なジャンルですね。
……え、撮影???」
『花盾』橋場・ステラ(p3p008617)は向けられるカメラをしげしげとながめる。きょとんとして手を振ってみて「?」を浮かべた。
 カメラには、希望ヶ浜中等部の制服を着た『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が映る。
 何やら真剣な表情で、――おそらくは仲間に指示を出しているものとみえた。
「久々の休暇で練達用におめかしもしてきたのに、3日間煮込んだドブみたいなことに私を良くも巻き込んでくれたわね紫電!!」
「3日間煮込んだドブとは言い得て妙だが、いやしょうがねえだろ! あの映画監督にマークされたのが運の尽きだぞ!?」
 頭を抱える『戦神護剣』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)。
「エイガスキーサマに紫電サマ! もう3度目だぞ3度目!!」
『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)がエイリアンの波をサーフィンしていった。「いいぞ!」とカメラを向けるエイガスキーとともども、どうにも仕組まれているような気がしてならない。
「今までに2度も、こんなことを……?」
『金色のいとし子』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)の髪の毛が「?」のかたちをつくる。
「しかも今度はデパートでATZ(字幕:エイリアントルネードゾンビ)だって!?
映画撮影&人命救助たぁイカれてやがるぜ……やってやろうぜ!」
「君たちも戦ってくれるんだな、ATZと!」
「えー、つまり……片っ端からからぶっ飛ばせば良かろうなのだ、みたいな感じで大丈夫でしょうか」
 すぐさま適応する天とステラ。
 状況の理解が早い。そんなことに割く尺はないのだ。
「イエッス!」
「お休みの日でしたがこんな事もあろうかと、装備は持っていて正解でしたね」
 流れるようにゴルフバックからバスター砲――OVER ZENITHを引きずり出して接続するステラ。
「ついてきたイッヌはともかく、オレだって司書までは巻き込みたくなかったのにその場に居合わせたのが悪いとしか言えんわ!」
「デスネ! いやわんこis狼(字幕:イッヌ)やぞ!!!」
「どうしてあの一家はオレばっか変なことに巻き込んでいくんだ!?」
 ホラースキーは旧ラズベイチェ領の観光グルメガイドを読んでいる。
「畜生、後でグルメスキー以外領地出禁にしてやるからな……!」
『デザイアを質に入れてでも見よう』という理不尽な横断幕が飛んできて、イーリンの進行を妨げた。
「デザイア幾らすると思ってんのこれ!!」
 もうめちゃくちゃだ――。
「あったまきた……全員まとめてミンチにしてやるわ!!」
 弟子のマニエラから借りてきた練達式魔導三輪バイクは「感覚で動かせます」といわんばかりに素直に流星をぶっぱなす準備をしはじめる。マスタードライブが火を噴いた。
「いいぞ!」
「まあ、いい。ゾンビの群れを、食い止める。ソンビの王を、仕留める。民間人を守る。やたらうるさいホラースキーを、黙らせる。
すべてやらねばならないのが、特異運命座標の辛い所だ、な。覚悟はいいか? マリアは、したくない」
「同感だ」
 紫電がしみじみと言った。
「……だが、盟友がああも痛ましい有様、だ。マリアが冷静にならねば、な」
 それもまた同感。
「え? 決め台詞? あるわけないでしょ!!」

「んぬう?」
 カメラを確信し、撮れ高を確認していたエイガスキーの手が止まる。
 覚えのないフィルムに、覚えのない役者。
「やあやあやあやあやあ!愛おしき我が『同族(キョウダイ)』よ。今回はキミタチの舞台に合わせようじゃないか」
『エンカウンター・カウンター』Night Crow(p3p009084)の姿。
「終盤に正体がわかる(わかるとは言っていない)味方の異形だなんて『B級映画(キミタチの舞台)』にはピッタリだろう?」
 思い返してみれば、たしかに、その姿があったようなきがするが……逃げ惑う人々の中に、不可思議な存在が紛れ込んでいたような気がするが。
「嗚呼、なんて愉しいのだ。演者というのは!
さあ、食べさせて貰うとするよ。キミタチの『存在/情報(ウワサバナシ)』をね」
 映像は途切れる。
 エイガスキーは確信した。
 これは、映画の神託である。
 さあ、伝説のB級映画の幕開けだ――。

●僕らのヒーロー
 揺れるエレベーターの中、ひとり、酔っ払ったヤツェクは立ち上がった。
 いくつも酒瓶が転がっているが、歩調の乱れはない。
 カツカツと靴音を高らかに鳴らし、どこかへと去って行く……。

 なだれるゾンビたち。おぞめく亡者の声。
「こっちだ!」
 天の身体は、自然と動いていた。家具売り場にいくと、手近なベッドでバリケードを築いていった。
「もういやあああーーー!」
 椅子をぶん投げて敵地へ身を投じるホラースキー。ペットの犬を探しに行くご婦人。寝ぼけながら窓をのぞき込むご老人。
「SNSにアップロードしようぜ」などと試みる若者など、わざとやってんだろの渋滞である。
(まずい!)
 バリケードの奥に急ぐ人々を、天は追いかける。
「心配しないでくれ! 俺がここにいる!」
 キャッスルオーダーで身を固め、果敢に名乗り口上をあげた。
 人助けセンサーがそれを感知する限りそうするだろう。
 ずっと、そうしてきた。
(そうさ、おれたちはヒーローだ)
 老人、子ども、学生ども。
……予想外の行動をするのは大体そのあたり。
 デパートの屋上、ヤツェクは変身バンクをかかげ、コートを羽織った。
 ピィ、と高らかな音が鳴った。
 口笛である。
 その呼び声に応えて、ハイペリオンがぱたぱたと必死に羽を動かした。
 くたびれたのんべのジジイから、白馬の王子様となったヤツェクは、颯爽と吹き抜けから飛び降りてくる。
 逃さじの雨を伴って。
「待たせたなっ!」
「ヤツェク、来てくれたのか!」
 天の加勢をするヤツェク。背中を預け合う男ふたり。聖骸闘衣がによって、ゾンビの群れは傷ついていく。
「ありがとう! これで、数を減らせる……!」
「いいか、おれ達に任せてくれよ?」
 監督に目配せをすると、どこからかペンライトを箱で持ってくる。
 ヤツェクはぽいぽいとオーディエンスにライトを配る。まばゆいライトに、ゾンビたちはひるんだ様子をみせた。
「アンタらがするべきは、心配じゃない。ピンチになったら「イレギュラーズがんばれー」とペンライトを振るのがアンタらの仕事だ」
「ああ。元はこういう仕事をしていたんだ、任せてくれ」
 応援上映である。
「そう、おれたちは死なない。ヒーローは、語り部がいる限りは死ねないもんさ。じゃ、そこのエレキ借りるぞ」
 家電量販店のエレキギターをかき鳴らすヤツェク。
 天はそれに呼吸を合わせ、ブロッキングバッシュで敵を打ちのめした。

 敵はばったばったと簡単に倒れていき……。
「ノオーーッ!」
 頭を抱えるエイガスキー。いったい何が不満だというのか?
「なに? 撮れ高? ふむ、映画撮影と誤魔化す以上は、その辺りも考慮せねばならない、か」
 致し方、ない。
 マリアは広域俯瞰を使用し、第三者の視点を手に入れる。各人の立ち位置を把握し、カメラ映えする構図になるように調整する。邪魔ながれきはひょいとどかした。
(編集はするといえど、生の勢いは、やはり重要、だ)
「すんばらしい! それじゃあ、マリアくんはそこだ!」
「ん? マリアも演者、だと? アシスタントのスカウトでは、なかった、のか?」
「ノーーー! 君には絶対王者! ヒロインの風格があるっ!」

●騎兵隊神(キヘガミ)
 マリアがよいしょ、と髪でがれきを避けた。
「今ね」
 ゾンビのうなる声。高らかな悲鳴などよりも遙かに大きいそのエンジン音が、全てをかき消すかのごとくうなった。
 近未来観測が映画の商業的展開を予測する。
 ぶっ込むなら今だ。視聴者の後頭部をわしづかみにして釘付けにする最大のタイミング。
「いくわよ、ステラ」
「はい」
 後部座席に乗ったステラがヘルメットと、ヘルメットにくっついた「!?」を調整する。
 ずどん。
 ステラのバスターから放たれる、2種の大型ビーム砲がビームライトのごとくに交錯した。
 派手にプラチナムインベルタが敵を仕留める。
 ゾンビの在庫一掃セールである。
「ふふふ、所謂Turkey Shoot! というヤツでしょうか。距離を詰められなければ、どんなBSを持っていようが関係ありませんね」
 ばるるんばるるんとイーリンのバイクの後輪がフル回転し、急ブレーキをかけた。
「デッパツよ! この野郎!!」
 異界の「ラ・ピュセル」。ガンガンと床をたたき付けながら、マギウス・シオン・アル・アジフを起動する。魔書内の全術式を平行励起。焼け付くフィルムに魔力が焦げあとを作った。
「ヒューーーッ! 騎兵隊神(キヘガミ)っ! 続けてエントリーデス! 策を伏せたまま場にバイクで突っ込んでターンエンド! 唸れ「ファブニール」!」
 ガクガクとエスカレーターを乗りこなし、無理矢理に駆け上ってゆくわんこ。上下のエスカレーターを飛び移りながら、前輪をあげての走行。
「更に「星夜ボンバー」でコンボ発動!」
 突っ込むと同時に起動する、安全爆弾特攻。
 どっかんと演出ではない爆発がとどろく。
 音に群れるゾンビども。
 これこそがねらいだった。
 ゾンビ共は固まって行動する様子、ならば、そこをねらえばいい。
「『わんこブランディッシュ』!」
 次々とゾンビだけにカーソルがぶち当たり、次の瞬間、攻撃が直撃する。
「やってやったわ! オラァ!」
「ダメだこの司書最高にハイってやがる!?」
 紫電は覚悟を決めた。
 こうなったら、もう、当たって砕く。
「どけどけぇ! 騎兵隊(臨時隊員)のお出ましだッ!」
 役割は、ゾンビの大群に持ちこたえる人間バリケード。
「加勢(ランニュウ)する者だ」
 対抗神話の豪鬼喝が、ゾンビの挙動を押さえ込んだ。
 逃げる一般人の先、「あそこだ!」と指す”誰か”の判断は、ひどい映画の割には”正しかった”。やれやれと対抗神話は姿を現し、再び、カメラに向かって指を鳴らした。場面が切り替わる。

「良い音色だ」
 ちーん。
 持ち込んでおいたトライアングルがヤツェクのギターとセッションとなる。
 ワンツー。逃げ遅れた人とゾンビ共を集め、正々堂々とスタッフロールに名乗りをあげた。
「!」
 天はゾンビの攻撃を受け止める。
「大丈夫か!?」
「大丈夫だ。毒には慣れている! それよりも、ここの人たちを……!」
「畜生かかってこいや死人(ヨル)ども! オレはここだ!!」
 紫電は攻撃の代わりに防御を固め、紫電一閃【蒼破】を繰り出した。素早く、蒼く迸る雷光と共に放たれる強力な居合一閃が、あたりをなぎ払った。
「あんたらシャバ僧がぁ、私を集団殴打(ヤ)れると思ってんのかしらねぇ? ねぇ!!」
 カメラ目線でメンチを切ったイーリンが、紫苑の魔眼・紅蒼を光らせた。オーバーキル。怒濤のごとき連鎖、雪崩が押し寄せるゾンビの波を押し戻す。
「ヘイヘイヘイ! 止めよう温暖化! STOP! 息の根!!」
 ゾンビを倒すと惑う子羊(客)にコールを求め、環境保全のアピール。
 余興の一環と認識されれば混乱が減るはずだ。社会派映画にもなるかもしれない。
「騎兵隊神(キヘガミ)……帰還ってきた……」
「有難ッス! 俺マジ輪廻転生(リサイクル)っす!」
 サラリーマンが泣きながら崩れ落ちる。
 おそらくはスクリーンの前の人間もこうなっただろう。
「……よくわからんが、わかった」
 マリアのコーパス・C・キャロルが、傷を癒やしていった。幾多もの禍々しい気配が遠ざかる。襲ってくるゾンビを、髪を地面にたたき付けることで飛び上がって回避する。
 光翼乱破が、敵を一網打尽に切り刻んでいく。
「いくわよ!」
 ステラの享楽のボルジアは、ゾンビたちの毒よりも格上だ。勢いよくたたき付けて加速する。狙いは――。
「おやおや、水浸しですね」
 作動したスプリンクラーがあたりをびしょびしょにする。
(これだけの大型施設、大容量の電源や、配電ケーブル何かも通っている事でしょう)
 ステラはキラリと輝いた。
「なるほど。おびき出すってワケね。協力するわ」
 電線とバッテリーを持って走るバイク。的確な工業技術と改造が路線図を描く。まるで魔方陣のように。

 そして、流れる高圧電流。
「アバアアアアアア!」
「! 今だ」
「わかった、任せろ」
 天が足止めをしている隙を突いて、颯爽と量産型ハイペリオン様を走らせるヤツェクは、ホラースキーを姫抱きで救出する。
「お名前は?」
「名乗るほどのもんじゃないな」
 何も言わずに優しく寝かせる。曲芸射撃が、追加のスプリンクラーを食らわせる。
「さぁどうデス、ホラースキーサマ?
イカしたメンバーが揃ってんだぜ、"こんなところ"とは言わせマセン。
パニクってる場合じゃねぇ、安心して我らの活躍見てって下サイ!」
「わんこ様……っ!」
 スタッフロールを確認しようと心に決めるエイガスキー。

●BOSS
「再会だ」
 マリアの女神の口付けが、仲間たちに力を与えた。
「おうおうおう、わんこたちはまだおわらねぇデスよ!」
「リクエストは?」
「コーパスを一曲行くとしよう、か」
「承知した」
 ギターを担いだ星屑野郎は、いつだってぴったりな曲を見つけ出す。
「もうヤケだ! ヤケ!」
 トライアングルとエレキギター。そしてマリアのルリルリィ・ルリルラ。
 バイクのエンジン音を背に、ごごごごご、と祇園を奏でながら、キングが群れから姿を現した。
「待ってたわぁ、この瞬間(とき)をねぇ!」
 バイクの後輪で、顔面を紅葉おろしにする。
 後ろから、流星が飛び出した。
「雷・電・斬・煌!」
 ゾンビキングに対してもやることは同じ、だ。アデプトアクションで斬り上げ、黒顎魔王にて屠りにいく。上から見下ろしているのは紫電の方だった。
「『王』は『魔王』には勝てない! 黒き顎(アギト)に食われてしまえ!」
『集合知(ズノウ)よ!』
 それは、Night。怪異狩りの夜鴉。ヒーローに非ず、ただあるのみ。天下御免で、零落する敵をねじ伏せる。
「チェックメイトだド外道ーーー!!」
 わんこのアロガンフレストが、とどめを刺した。
「ヒャッハーーー!」

(一先ず一般客に、被害が出なければ、良いだろう)
 マリアはくるりと振り返る。
(……あ、素面になりたくない)
 ゾンビは、ただの情報の列になり、対抗神話におさまった。まるで息を吸うように、それは片付いていく。
「さて、諸君!ワタシは『対抗神話(エンカウンター・カウンター)』! 怪物を喰らうもの!!
さらばだ!!」
 翼を広げて、飛び去っていった。
「あれ? なんだったっけ……」
 対抗神話が怪異を食らう。書き換えていく。怪異は弱くなった。ただの都市伝説はウワサ話になり、それはひそひそ話になり――。
「なら、今見てたのはなんだったんだ……?」
 わんこがくるりと向き直る。
「今日の我らの活躍、何と映画になるんデス。"ヴァル・ベールデ共和国の野望Ⅲ ~エイリアンゾンビの逆襲~"デザイアを質に入れてでも見よう!!」

●NGシーン
・全部映画の宣伝に書き換わるゾンビ
・グロッキー状態で煙草を吹かすイーリン。さすがにその服装ではアウトだと止めるマリア。
・バイクに乗ってみるヤツェクと、ハイペリオンに乗ってみる天。
・「バイクで来た」とポーズを決めるステラとイーリンとわんこと紫電――。
・へこんだファブニールを直すわんこ。

成否

成功

MVP

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女

状態異常

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)[重傷]
流星の少女
わんこ(p3p008288)[重傷]
雷と焔の猛犬
橋場・ステラ(p3p008617)[重傷]
夜を裂く星

あとがき

お疲れ様です!
サメゾンビは鉄板ですね。
またしても妙な方向にバズり、また、新たな狂信者を獲得することになったことでしょう。

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