PandoraPartyProject

シナリオ詳細

雅なる藤棚を仰いで

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 国の在り方すらも変えた豊穣での騒乱を超え、高天京に訪れた春が徐々に終わりを迎えてきている。
 街のあちらこちらで満開になっていた桜はすでに散ってしまい、葉桜となっている。
 新緑も芽吹き、忙しなくも活気に満ちた新たな豊穣といった印象のこの地へと、ローレット所属のイレギュラーズは足を運ぶ。
「こんな時期だからこそ、行きたい場所があるんです」
 まだ、昼前ではあるが、ぽかぽかとした陽気の中、小柄な幻想種の少女、フルール プリュニエ (p3p002501)はニコニコして、旅人である紅楼夢・紫月 (p3p007611)と橋場・ステラ (p3p008617)の2人の手を引く。
「ぽかぽかあったかいねぇ」
「こんな所に何かあるのですか?」
 2人の質問にも小さく笑って返すのみのフルールは、高天御所の外郭である高天御苑へと向かう。
 ここは普段、八扇所属の役人らが仕事の合間に出歩くこともある場所だが、まだまだ騒乱の事後処理や新体制の強化に忙しいこともあってか、かなり閑散とした印象を受ける。
 ただ、さすがは貴族達が普段から歩く場所。鬼人種の若い者達が清掃や木々の手入れなどを行っている姿が散見された。
「つきましたよ」
 フルールが紫月とステラを連れて行ったのは、多数の藤が咲く道。
 目に入るのは一面の薄紫。並ぶその上品な色は無数に垂れ下がる様はまるで滝のようだ。
「「うわあぁぁ……」」
 紫月もステラも、圧巻な景色に思わず見とれてしまう。
 この時期満開となった藤の花を見ながら歩くことができる高天御苑の名所の一つ、紫天亭。
 そこは藤棚となっており、藤でできたトンネルのようだ。
 紫色の帳の下を歩くと、夢心地気分を味わえる。豊穣の貴族達も普段の激務を忘れ、藤に囲まれることでそうした気分を味わっていたのだろうか。
「あら、皆さんこんにちは」
 そこを歩いていたのは、情報屋のアクアベル・カルローネ(p3n000045)だ。
 彼女もこの場所の話を聞いて興味を抱き、藤の花が咲いている間にと豊穣を訪れたのだという。
 藤棚は思った以上に広く、紫天亭へと通じている他、いくつか休憩所も設けられている。夏場は日差しを避けることができるスポットにもなるのだとか。
「休憩所で腰かけて、のんびりと語らうのもいいですね。……あっ、紫天亭では、詰めている鬼人種女性に緑茶を振舞っていただけるそうですよ」
 アクアベルはそう説明し、この場を離れていく。
 見れば、紫天亭の藤を一目見ようと、フルール達の他にもローレットイレギュラーズの姿を確認できる。
 彼らは非常に美しい藤の花開くこの場所でいかにして過ごすのだろうか。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。この度はリクエストいただき、ありがとうございます!
 豊穣は今、藤の花が満開です。皆様、どうぞお立ち寄りくださいませ。

●概要
 日常シナリオです。
 高天御苑内にある紫天亭と呼ばれる建物の周囲には、多数の藤の花が咲く名所がございます。
 藤の花を見ながら建物内でお茶を楽しんだり、藤の花が咲く通りをのんびりと歩いたりと、自由に一時をお過ごしいただけます。
 リクエストのお三方との交流、あるいは独立してのご参加、いずれの参加も歓迎です。どうぞお楽しみくださいませ。

●NPC
○アクアベル・カルローネ(p3n000045)
 お誘いあればご参加いたします(お誘いがなければ登場しません)。
 彼女は藤の花を見上げながら歩き、足を止めてのんびり過ごす予定のようです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 雅なる藤棚を仰いで完了
  • GM名なちゅい
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年05月12日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
セリカ=O=ブランフォール(p3p001548)
一番の宝物は「日常」
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
※参加確定済み※
ルミエール・ローズブレイド(p3p002902)
永遠の少女
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
紅楼夢・紫月(p3p007611)
呪刀持ちの唄歌い
※参加確定済み※
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
※参加確定済み※
アリス・アド・アイトエム(p3p009742)
泡沫の胸

リプレイ


 平穏が戻った豊穣の地。
 とある情報を耳にしたイレギュラーズ達は高天御所の外郭である高天御苑へと向かっていた。
「豊穣に来るのもいつぶりかなっ?」
 メンバーの近場を飛び回る小人の少女、『リトルの皆は友達!』リトル・リリー(p3p000955)が独特の趣のある神威神楽の空気を吸い込む。
 こう見えて、リリーは豊穣に領地を持っていることもあり、この地に思い入れが深い。
「お花見……初めて……でも、楽しみ……」
 長くした前髪で右目を隠し、後ろはポニーテールとした『蕾蜘蛛』アリス・アド・アイトエム(p3p009742)は、この日を心待ちにしていた。
「女の子いっぱい……みんなかわいい……アリス……選べない……」
 ただ、彼女の場合は花自体よりも、花見に来たメンバーの方に強い関心を抱いており、誰と一緒に行こうかと頭を悩ませていた。

 程なく、園内へと入ったメンバー達。
 しばらく歩いていると、桃色交じりの金髪、橙と紺碧の『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)が叫び声を上げて。
「わーーーーー」
 彼女が開放的な気持ちになるのも無理はない。
 園内の一角には鮮やかな藤の花が咲く藤棚があったからだ。
「わーーーーー……っ!」
 視界へと飛び込んでくる広がる藤の彩りに、赤いカチューシャで金髪を飾る『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)は目を見張り、少しずつ小さくなる長い長い感嘆の声を周囲へと響かせていた。
 これだけの光景はなかなかお目にかかれるものではない。その雄大さに彼女は興奮し、その繊細さに息を潜めてしまう。ウィズィの一挙一動が彼女の心の動きを表す。
「拙も日本人ですから、春と言えば桜でしたが、成る程、藤の花もとても素敵ですね」
 こちらは、金髪に、天色と唐紅の瞳の『ジョーンシトロンの一閃』橋場・ステラ(p3p008617)が上品な印象を抱かさせるその藤を領地に植えてみようかと考えながら、一面薄紫の世界をそのオッドアイの瞳に映す。
「藤の花って初めて見るけど、鮮やかな紫色がすっごく綺麗……!」
 小柄な錬金魔導士、『一番の宝物は「日常」』セリカ=O=ブランフォール(p3p001548)は晴れやかな表情で頭上を見上げる。
「はい、情報以上の美しさです……」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)も初めてだったらしく、しばらく藤の花々に見とれていた。
「藤の花が満開なんはええなぁ」
 豊穣探索は久々だという身に纏う着物の背から6枚の翼を生やす『呪刀持ちの唄歌い』紅楼夢・紫月(p3p007611)は花見でゆっくりできると嬉しそうだ。
「フルールは見つけてくれてありがとうねぇ」
「はい、精一杯楽しみましょう!」
 紫月の礼に、フルールは笑顔で返す。彼女は蒼い薔薇を金の髪に差した『永遠の少女』ルミエール・ローズブレイド(p3p002902)と一緒にのんびりお花見ができると微笑ましげな様子だった。


 イレギュラーズ達はそれぞれ、藤棚が伸びる紫天亭の周囲で憩いの時間を過ごす。
「うーん、やっぱりいつ見ても綺麗だねっ、豊穣の景色っ」
 改めて、リリーはこの庭園内を飛び回り、この地独特の草木、建築物美しさを目にする。
 久しぶりに豊穣でのんびりしたいと考えていたリリーは、この誘いを受けて良かったと考える。
「最近、色々あったし、お花見、楽しまなくちゃ」
 折角こうして伸び伸びとするなら、1人過ごすのももったいないと考えたリリーが同行相手に決めたのは……。
「あ、リリーも1人……? なら一緒に……行く……?」
「……ん? 一緒にいくかー、って? いーよ♪ じゃあ抱っこしてっ♪」
 両手を差し出し、リリーはアリスの方へと止まる。
「抱っこ……? いいよ♡  ……えへへ……リリー……あったかい♡」
 改めて、景色よりも女の子の方が……とアリスはしばしもごもごと言葉を詰まらせていたのだが。
「でも、リリーと一緒……楽しいのは……ホント……。お花も綺麗……嫌いじゃ……ない……」
「アリスさんも楽しい? ……そっか! 綺麗だもんね、ここっ」
 とはいえ、満開の藤の花は今だけ。それらをのんびりと見られる場所もリリーはしっかりと探していて。
「……ねぇねぇ。折角だし、あそこでゆっくりしない?」
 リリーが指さしたのは、藤棚の通路にいくつか設置された休憩所。
「リリー……休みたい……? いいよ……」
 アリスもそれに同意し、その休憩所へと向かう。
 椅子に腰かけるアリスの膝の上でリリーが横になって。
「うーん、やっぱり気持ちいい……」
「ん……、アリスも……気持ちいい……。お日様あったかい……ね……」
 木漏れ日を浴びる2人は、心地よい眠気に誘われる。
「眠くなっちゃいそう……」
「リリー……眠くなっちゃった……? ちょっとだけ……お昼寝しちゃう……?」
 2人は藤の香りに抱かれ、しばし夢の中へ……。

 皆、それぞれの一時を過ごしており、紫月は1人、藤棚でできた通路の下をのんびりと歩く。
「優しさ、歓迎、決して離れない、恋に酔う、とかやったねぇ?」
 紫月が口にするのは、皆、藤の花言葉だ。
 練達の再現性東京でも語られるように、古来から日本なる地で愛され、和の風情を感じさせる花。
 高貴な者達に愛され、女性にも例えられるその花は繁栄のシンボルともされていたという。
「折角やし、花言葉の言葉を使った唄でも創って歌うとするかねぇ」
 普段から、紫月は作詞作曲しながら世界探索を行う。
 他の人の邪魔にならぬよう歌を口ずさむ彼女は、のんびりと散歩を続けるのである。
 そんな紫月から少し離れた場所を、セリカとアクアベルが歩く。
 藤は通路となった柱と天蓋に巻き付いている。その為、藤のトンネルの下を歩けば、所々仄かに木漏れ日の光が零れる。
「わぁ……!」
「藤を包む太陽の光……素敵ですね」
 その柔らかく煌く光景が何とも綺麗で、2人は思わず見入ってしまう。
 セリカはアクアベルとたわいない話をしながら、藤の花々に心を躍らせていた。

 デートとうきうきするウィズィは自らを姉と慕うステラと一緒に過ごす。
 紫の中を抜けた彼女達は散歩を後にし、いち早く休憩所へと到着していた。
「お弁当を持ちよるお約束、楽しみにしてましたっ」
 時折、ステラが体を揺らしてそわそわしていたのは、互いにリクエストしていた相手のお弁当の中身が楽しみだったからだろう。
(リクエストはおむすび、でしたね)
 ぐっと手を握るステラがこの日の為にと用意したお弁当は、竹の葉に包まれていた。
 中には、可愛らしく三角に握られたおむすび。それらは具材が異なり、程よくすっぱい梅干しに濃い目の味付けがされた昆布の佃煮、甘めでしっとりとしたおかか、ほんのりしょっぱい塩むすび。
 それらには海苔が巻かれており、沢庵が添えられている。
 なお、水筒もお弁当の外観に合わせて竹筒で作られており、併せてステラ特製お弁当セット。雰囲気も和のテイストにピッタリだ。
「……お口にあえば、良いのですけれど」
 早速、ウィズィは一口。彼女の手で握られたおにぎりは愛情が込められており、嬉しさもひとしおである。
「うん、美味しいです!」
 大切にステラの弁当をいただくウィズィがリクエストを受けて作ったのは……。
「ボリュームたっぷり肉増し増し弁当!」
 作った本人も、分厚い肉は藤に似合わないな~なんて考えていたものの、ステラは再びぐっと拳を握っていて。
「拙のリクエストはお肉でしたが……、これは食べ応えがありそうです」
 この日の為に、朝食を抜いていたというステラは、肉厚で歯ごたえも量も抜群なお弁当も余裕と食べ始める。
 勢いよく食べ始めるステラだが、しっかりとそのお肉を噛みしめていて。
「焼き加減も丁度よくて、時間が経っても固くない……なるほど、お姉ちゃんはお料理も天才では?」
「かわいいな~、この子はもう~!」
 嬉しそうに頬張るステラの姿に、ウィズィは釣られてにこにこしてしまうのである。

 メンバーに先んじて、フルールとルミエールは紫天亭へとやってきており、その一室でのんびりと過ごしていた。
 鬼人種女性が運んでくるお茶を口にする2人は、なかなかな御手前の一杯と感嘆しつつ、外に咲き乱れる藤の花々を眺める。
「こんな美しい光景を眺めていると、世界に破滅の危機が迫っているなんて夢のように思えてしまうわ」
「そうですねぇ」
 ルミエールが感じたままを口にしたその一言に、フルールは相槌を打ってからこう返す。
「でも、命に終わりがあるように世界もいつかは終わるもの。早いか遅いかの違いがあるくらい。それでも、少しでも永らえたいと抗うのが私達イレギュラーズなのかもしれませんね」
 続けて、藤の花言葉を問うフルール。
 「優しさ」「歓迎」「決して離れない」「恋に酔う」。中でも「決して離れない」はとても良い言葉だと彼女は語る。
 そこで、ルミエールはふと、フルールへと尋ねる。
「ねぇ、フルールちゃん。貴女には離れたくない人っているかしら」
「私の離れたくない人……今は、ルミエールおねーさんかしら。他にもいたけど、もういないのです。あなたはいなくならない?」
 少し考えて答えたフルールは、やや悲しげな面持ちで問い返す。
「私には、沢山。父様に、ルクス。サヨナキドリの家族のみんな。それに貴女。私、フルールちゃんのこと好きよ」
 ルミエールには、なんとなく、フルールが自分と似ているように感じていたらしい。
「ふふ、私もおねーさんのこと、大好きですよ。花は蕾でも咲いても散っても美しいもの」
 フルールは外の藤を見つめ、風に吹かれて散る花びらに目をやる。
「あの美しい藤の花もいつかは散るもの。私もいつかは散ってしまうものだと思うから、だからこそ、永遠を夢見るのかもしれませんね」
 フルールもまたあの花と同様に、いつかは散ってしまう。彼女は永遠の生を受けた旅人ではなく、ただ他の種族より少し長生きできる幻想種でしかない。
「花は散るから美しい、とは言うけれど、どうか永く咲いていて」
 遥かに長い時を経ているルミエールは、お別れにはいつまでも慣れないと言う。
 それには、フルールも私もと同意する。いつだって悲しみは向き合うことができても慣れることはない、と。
「いつかは私も、ルミエールおねーさんも離れ離れになるのかしらね」
 フルールとてそれを望んではいないが、時間は無情だ。
 愛していればいる程、身を引き裂かれる思いがしていたルミエールは、繰り返した年月の中で、随分と命が擦り切れてしまっていた。
「だから、もしかすると貴女より、私が散る方が先かもしれない。そうなる前に、精霊になる方法でも探しておこうかしら」
 そうしたら、永遠に離れることなく一緒にいられる。
 もしかしたら、契約して本当に一つにだって。
「今は精霊天花で半分しか精霊化できないけど、いつか本当の精霊になれたら永遠を共に生きられるかしら?」
「――私は望みます。あなたと共に在る永遠を」
 互いの望みを確かめ合う2人。いつか、精霊としていつまでも……。


 セリカとアクアベルは、途中で紫月を誘いつつも、紫天亭へとたどり着く。
「藤の花を堪能しようってゆっくり歩いてたのに、あっという間についちゃったね!」
 それだけ、藤の花々の雅さにセリカは見とれてしまっていたということだろう。
 3人はそのまま、空き部屋となった一室に通され、鬼人種の人々の点てたお茶をご馳走になる。
 少し熱めのお茶をすすると、ややほろ苦さも感じた味ではあったが、飲むだけで心身共にほっこりと落ち着いてしまうような不思議なお茶だった。
 それに加え、用意された茶菓子がほんのり甘く、お茶と相互に美味しさを際立たせる。
「戦うんも好きやけど、こうしてゆったりするんもええなぁ」
「はい、こうした一時もいいものですね……」
 紫月もまた一緒にほっこり。アクアベルもまたその味に笑顔を見せる。
 セリカも時折、湯呑みを口に運び、心からのもてなしを感じさせる一杯で喉を潤しながら、ふすまの外に広がる沢山の藤の花々に癒されるのである。

 セリカは歌を創るという紫月と別れ、再びアクアベルと2人で藤の花を堪能しながらそぞろに歩く。
「この辺りで一休みしよう」
 そこで、セリカが話すのは世間話。情報屋のアクアベルからは各地の情報を聞くことができた。
 ただ、一休みしている間に、程よく日差しがカットされた休憩所の暖かさもあって、思わず2人はうとうと……。
「……とってもあったかいし、ちょっとだけおやすみなさいしても、いいよね……?」
「ええ、少しだけ……」
 2人は寄り添うように、寝息を立て始める……。

 別の休憩所にいたアリスとリリーは昼寝から目覚めて。
「あ、そうだ……。アリス……おやつ……もってきた……」
 ふと、アリスが思い出して取り出したのは、『アルタ・マレーア』という海洋王国の五つ星レストランのお菓子。
「んっ、お菓子持ってきたの? 良かったら、リリーにも分けてほしいなー♪」
「良かったら……一緒に……たべよ……」
 仲良くそのお菓子を分け合う2人。
 珊瑚礁を思わせる美しい砂糖菓子なのだが、人間サイズのそのお菓子はやはり小人サイズのリリーには大きい。
「ん……、大きすぎた……かな……。少し割って……あげる……ね……はい……!」
「えへへ、ありがとっ」
 笑顔で受け取るリリーはそれを頬張りつつ、藤を見上げる。
「今日はもっといっぱいゆったりしよねっ♪」
 まだまだ、時間はたっぷりある。
 リリーがファミリアーに運ばせたお菓子や、紫天亭へとお茶を飲みに行くのもいいだろう。
 互いに距離感を縮めながらも、たわいない会話をする2人。
 お菓子を食べていたリリーに、アリスが今度はaPhoneを取り出して。
「記念に1枚……撮ろう……ね……」
 紫の花々を背景に、2人はシャッターに合わせて笑顔を見せていた。

 お弁当を食べ終わったステラとウィズィはのんびりと藤棚の中をお散歩。
 混沌は初夏に差し掛かってはいたが、風に揺れる藤が揺らす音は涼し気に感じられ、目にも耳にも優しいとステラは感じる。
 ウィズィは頭上に広がる紫の天蓋を仰ぎつつ、すぅっと深呼吸していた。
 藤の花の香りには、疲れを癒し、頭をすっきりさせる効果があるといわれる。
 そんな満ちる香りをウィズィは体の隅々にまで行き渡らせ、この空間の一部になるよう願う。
「……ねえ、ステラちゃん。藤の花言葉ってさ」
「……はい、藤の花言葉ですか?」
 興味津々のステラに、ウィズィはいくつかある中で心に浮かんだただ一つの花言葉を口に出す。
「『決して離れない』」
 そして、ウィズィはそっとステラの手を強く繋ぐ。
「……成る程、そんな意味があるのですね」
 こちらを見つめてくるステラに、ウィズィは確かな愛情を込めた真っ直ぐな視線を向けて。
「こまで歩いても続く、この藤の路みたいに。ずっと……一緒に居れたらいいね」
「ふふふ、それは勿論ですとも! だって、拙とウィズィお姉ちゃんは仲良しですから」
 繋ぐ手を揺らすステラは、そうだと何かを思い立つ。
「指切りをしてみる、というのはどうでしょうか」
 差し出されたステラの小指に、ウィズィが顔を綻ばせて自身の小指を差し出す。
 ――夏は向日葵、秋には紅葉を、冬には椿、春にはまた藤を。
「他にも、沢山見ましょう。来年も、勿論その先も!」
 紫天の光の下で、そう告げるステラと一緒にウィズィは大切な約束を蒸しびながら祈る。
 ――二人の心が、これからも決して離れませんように。

 思い思いの一時を過ごしたイレギュラーズ達。
 紫の花々を照らす光は徐々に赤みを帯びていく。
「橙色の光に照らされた藤の花……とっても綺麗だね……」
 藤の花のトンネルを通るセリカは違った景色に感嘆しながらも、まるで絨毯のように散った藤の花びらの上を歩いて帰路につくのである。

成否

成功

MVP

ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開中です。
 リクエストにお誘いいただいたことに加え、いつまでも一緒にいたいという思いにMVPを。
 今回はリクエスト、並びにご参加、ありがとうございました!

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