シナリオ詳細
<Liar Break>破滅狂気のピッコリーナ
オープニング
●反撃
「――来たわね。待っていたわ」
イレギュラーズ達の顔を見て、『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)が和やかに声を掛けた。
ローレットはにわかに活気付いている。リリィもまた忙しそうに依頼書を纏めているところだった。
幻想楽団『シルク・ド・マントゥール』の公演以来、混乱の続いたレガド・イルシオンだったが転機が訪れた。
「貴方達のおかげで、自体は大きく動き出したわ」
『ノーブル・レバレッジ』と呼ばれた一大作戦により、貴族や民衆は味方となり、サーカスの絶対的庇護者であった国王フォルデルマン三世をもが動いた。そして、ついにはサーカスへの公演許可を取り消したのだ。
これは事実上ローレットの味方の立ち位置を取る貴族達の思惑を考えれば、彼等に討伐指令が出るのは時間の問題といえた。
これを察知したサーカスは、王都を脱出しようと動き出す。
当然だが、一連の事件を不倶戴天の天敵・魔種の仕業と位置付けるローレットはこれを逃がす心算は無い。貴族派や民衆はローレットに協力的であり、各地で検問を張り巡らせる。幻想国内を封鎖し、サーカスは幻想内に釘付けとなった格好だ。
「彼等も事態をよく理解しているわね。ここに来て、一部だけでも国外へ逃そうと乾坤一擲の反撃にでたようだわ」
リリィの言うことは、手にした依頼書の数が物語る。バラバラに起こされる大規模な事件はすべてサーカス絡みだ。その混乱のどさくさに国外へと逃げるつもりだろう。
ほとんど暴発のような有様だが、暴発が故に捨て置けば重大な被害もでるだろう。レオンはイレギュラーズにこうも言う。
「お貴族様方には何が何でも封鎖を維持しろ、と伝えてある。
渋った連中も居たが、フィッツバルディ翁やお嬢様の一喝で簡単に黙ったよ。
つまり、お歴々の信頼を一身に受ける俺達がサーカス連中を直接やればいい。
サーカスの狙いが逃走なら、遊撃勢力の俺達が始末をつければ向こうの狙いは御破算だぜ」
「と、言うわけで、貴方達にはもう一頑張りしてもらうわ。大変な依頼になるだろうけど、気をつけて。――そして無事に帰ってきてね」
依頼書には、魔種と思われる少女の情報が書かれている。
一筋縄ではいかない。強敵との戦いになるはずだ。依頼書を受け取ったイレギュラーズは覚悟を決め、ローレットを後にした。
●破滅狂気のピッコリーナ
「あーはっはっはっ、団長もクラリーチェも全部あたしに任せてくれればいいのに!」
無数のナイフを突き立てられ倒れ伏す警備兵の屍の上で、高らかに笑い声をあげる少女が一人。
手にしたナイフを放り投げては手にとって。ウインクするように左眼を閉じた。
「あたしの右眼から逃れられる奴なんてノン! いるわけないっしょ!」
そうして手を伸ばし右眼で狙いをつけ構えると、手にしたナイフを目にも止まらぬ早さで投げつける。ナイフは吸い込まれるように、倒れ空を仰ぐ兵士の右眼に突き刺さった。
「そう! シルク・ド・マントゥール最カワッのあ・た・し、ナイフ使いのピッコリーナに全部任せればいいのよ! あはっ、あーはっはっはっ」
笑う少女の周囲に、無数に現れるナイフの群れ。夥しい量のナイフが何もない空間に現れ制止していた。まるで少女の指示を待つように。
少女は自分達が破滅に向かっていることなど構うこと無く、ただ陽気に狂気に満ちた笑いを繰り返す。そう、今をメチャクチャにすることだけを考えているのだ。
その笑いと共に狂気は伝播し、少女を取り押さえようとしていた周囲の者を狂気へと引き摺りこんでいった。
助けを求める声。救出に現れた新たな兵士を、無数のナイフと狂気が待ち構えていた――。
「本気の呼び声はじめちゃおっか! ――さぁ踊れ! 狙いが外れるのを祈りながら、死ぬまで踊り続けろォ!」
魔種の少女。破滅狂気のピッコリーナが笑った。
- <Liar Break>破滅狂気のピッコリーナLv:5以上完了
- GM名澤見夜行
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2018年06月29日 22時46分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
●狂気に相対す
狂気に歪んだ笑みを浮かべる少女――サーカス団員ナイフ使いのピッコリーナ。
傷つき呻く声がひしめく市街地をピッコリーナは歩いていた。
その頭上。
風船を捕まえた鳥が三体。編隊を組んだ鳥が、一斉にその『爆弾』を投下した。
「――ふん」
投下と同時に、視線を向けたピッコリーナ。手を空を落ちる風船に手を伸ばす。するとどこからか現れたナイフが、次々にその風船に突き刺さった。
小さな破裂音とともに爆発する風船。その中から粉霧がまき散らされる。
「うぇぇ、何よこれ。新手の嫌がらせか何かなわけ!? げほ、げほ」
鼻をつまみながら咳き込むピッコリーナだが、その効果はまるでないような様相だった。
それを見届けたところで、ピッコリーナの行く手に十人の男女が立ちはだかった。
「あら、個性的。今度はあなたたちがこのあ・た・しの相手をしてくれるワケ?」
十人の居並ぶ姿を見てピッコリーナが笑う。
フードを目深にかぶり自身の特徴を隠す『夜鷹』エーリカ・マルトリッツ(p3p000117)が油断なく様子を伺う。
空を飛ぶ鳥に視線を送る『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)はピッコリーナにシンパシーを感じていた。空飛ぶ三匹のうち一匹がレジーナのそばへと戻り待機した。
「あっ! さっきの風船あんたの仕業なワケ? ホントくだらないイヤがらせとかやめてくんない? シルク・ド・マントゥール最カワのあたし汚すとかホント考えられないんですけど?」
ぷんすこ怒っているピッコリーナは傍目に見れば年相応の少女だ。しかし、その周囲には並々ならぬ狂気とともに殺気が立ちこめている。
その気配を感じ取ると『潰えぬ闘志』プロミネンス・ガルヴァント(p3p000719)は口の端をつり上げる。
「久しく強者との立ち合いがなかった、が。こうしてみると血沸き肉躍る、といったものか」
強者を求めるのはプロミネンスだけではない。
「うむ! これが魔種であるか!
最カワよりも最強が良かったがその辺は仕方あるまい!」
力強く声を上げるのは美少女(種族名)の『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)だ。
「いやねえ、殺気まき散らして。もっと楽しくいかなきゃノン・ノン。ほらそこの女の子見習って」
ピッコリーナの指し示す先には、どこか気弱そうにも見える銀髪の少女――『兄の影を纏う者』メルナ(p3p002292)がいた。
しかしその本質は、ピッコリーナにも見抜けなかったようだ。
心の中で自己暗示をかけるメルナは自身の兄ならばと、心を武装していく。
「皆の為に……必ず、殺す……!」
「わお。急に雰囲気が変わっちゃった。可愛かったのに残ー念! はいはい、それじゃ次の方?」
「まるでお遊戯でございますね。狂気に染まりすぎた影響でございましょうか?」
「これが魔種……。人間に見える」
『朱鬼』鬼桜 雪之丞(p3p002312)がピッコリーナの態度に言葉を零せば、その人間的な外見に自分たちとの違いを見つけられない『応報の翼』ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)がつぶやいた。
「あーはいはい、そういう反応はもう聞き飽きたよ。……あーなんか急に飽きちゃったな、もういい? あたしまだやることあるからもう行きたいんですけど!」
飽きっぽいピッコリーナはわかりやすい声をあげて歩みを進めようとする。
それを、一歩前にでた『生誕の刻天使』リジア(p3p002864)が立ち塞がった。
「サーカスだけならば好きにするがいい……が。
ただ……お前は、お前達は壊した。壊しすぎた。その破壊は過剰と判ずる」
――故に、お前を破壊する。
リジアの力強い言葉に、ピッコリーナは大きく口を開けて笑いをあげた。
「あーっはっはっはっ、無理無理。あたしに敵うわけないっしょ! 数そろえたって無駄無駄。あーはは、おかし」
笑いながら、ピッコリーナはどこからかナイフを取り出し、道すがらに倒れる兵士の死体に投げつけた。
「なんと無体な。さーかすでさいかわと言われておった者の正体がコレとはの。やはり可愛さならわらわの方が上じゃったか」
『くるくる幼狐』枢木 華鈴(p3p003336)が憐れみにも似た視線を向けると、ピッコリーナが華鈴を見下すように睨めつけた。
「はっ、ちんちくりんがちょっと可愛いからって調子に乗るんじゃないよ!? サーカス以外でも最カワはあたしだっての!」
「ナイフ使いね。私からは……話すことはないわね。私はローレットからのオーダー通りに動くだけよ」
『揺蕩いの青』アイオーラ・イオン・アイオランシェ(p3p004916)が誰よりも先に得物のナイフを取り出す。薄水の刀身に少し濃い青いろの模様が浮き上がっている。
「あはっ、素敵なナイフじゃない。あなたには勿体ないわ、あたしがもらってあげる」
瞬間、爆発的に殺気と狂気がふくれあがると、ピッコリーナの周囲に夥しい数のナイフが姿を現す。
同時に、路地に倒れていた死にかけの兵士や一般人が血ぬれた身体を揺り動かして立ち上がった。
「あはっ、狂気に当てられて痛みも忘れてるみたいね」
その様を楽しむように笑顔を見せるピッコリーナ。
狂気に駆られた人々は訳もわからず武器を取ってイレギュラーズに襲いかかった。
「さあ、楽しい殺し合いの始まりよ! 百発百中のお家芸! 見事あたしのナイフから逃れることはできるかしら! ――さぁ踊れ! 命つきるそのときまで、死ぬまで踊り続けましょォ!!」
まるでサーカスの演目を読み上げるように、ピッコリーナの狂気に満ちた声が響き渡った――。
●破滅狂気のピッコリーナ
戦いはまず、狂気に駆られた一般人達を対処するところから始まった。
魔種の狂気に当てられ、治癒の見込みがあるかは不明だったが、だからと言って無残に殺させるわけにはいかなかった。
「わたしたちは特異運命座標、魔を退けるもの!
わたしたちは敵じゃない、あいつを、このせかいを乱すものをやっつけにきたの」
人と相対することに恐怖を覚える夜鷹だが、それでも精一杯に声を張り狂気に感染したもののみならず倒れ伏した人々に声をかける。
「動けるひとは出来るだけ遠くへ。動けないひとに、手を貸してあげて。
……だいじょうぶ。きっと、あなたたちを守ってみせるから」
その声は危機的状況にある人々の心に届く。ピッコリーナの狂気から逃れるべく人々が動き出す。
「あー……そういうのつまんないから、やめてほしいですけど?」
快く思わないピッコリーナがそれを止めようと、独特の構えを見せ一般人達へと狙いを定めるが、それに立ちふさがるようにプロミネンスを筆頭としたピッコリーナ対応組が突撃する。
その隙に、一般人達は狂気の影響下から逃げ出すことに成功する。狂気に駆られた者たち十五名は、元々傷ついたものばかりということもあり、鎮圧するのは容易かった。
「貴様らの敵は此処ぞ! 吾は白百合清楚殺戮拳! 咲花百合子である!」
狂気感染者の鎮圧に貢献したのは百合子だ。注意を引き、狙いを自分に定めさせ、ピッコリーナから距離をとって一人ずつ拳で昏倒させて行った。
この距離をとる作戦はピッコリーナの狙いを外すもので、一般人がピッコリーナの操るナイフの餌食になることはなかった。ピッコリーナの思惑を外す見事な作戦だっただろう。
百合子と夜鷹が一般人の相手をしてる最中も戦況は変化していく。
「あは、あはは。無駄無駄、警戒してるのモロバレなんだから!」
まず、イレギュラーズが百発百中の警戒を高め様子を伺う動きを見せたことで、その思惑はピッコリーナにすぐに察知された。
ピッコリーナは自身のナイフ操作術が破られない自信があるのか、これ見よがしにナイフを舞わせ、イレギュラーズに深い傷を負わせていく。
まるでナイフの結界を思わせるその状況に、レンジ内で戦うメルナ、プロミネンス、アイオーラ、華鈴はその肌を鮮血で染めていった。
「そう、いいようにはやらせないよ」
ミニュイの超遠距離からの挑発めいた射撃は、幾度かヒットするも効果が見られず、効果があった際も、ピッコリーナはすぐさま冷静さを取り戻し、そう長い間ナイフの舞を止めることは叶わなかった。狙いは悪くなかったが、命中力が今ひとつ信頼におけなかった形になる。
「ナイフの数は十分? 無尽と散ってちょうだいな」
レジーナの権能『天鍵:緋璃宝劔天』による、召喚した無数の武具とピッコリーナの夥しいナイフの相殺も目を見張る効果はあったものの、反応速度の差からピッコリーナに先手をとられ、後手に回る場面がおおく見られた。
構えは変わらず、手を突き出して、左目を閉じてウインク。吸い込まれるナイフ。吹き上がる鮮血。
雪之丞はその構え、またはカラクリがあるのではないかと注視するが、見つからず。
メルナもまた直感を頼りに動作を観察する。しかし、何一つ引っかかりを覚えることはなかった。
そんな中、強引にディストラクションで構えを崩すことに成功する――だが。
「タネも仕掛けもございません。ご覧あれピッコリーナの百発百中ナイフ投げ……ってね。あははは!」
演劇めかして崩れた構えの中自慢のナイフ投げを披露するピッコリーナ。――構えに意味はない!
――十分に油断は誘えただろうか。
肉薄するプロミネンスは、めまぐるしく展開する戦況のなか、隠し持ったインクを隙を見てぶちまける。
狙いはそう、開き続けるその右目だ。
「きゃあ! なに!?」
それは確かな隙だった。油断もしていただろう。攻撃の最中掛けられたインクに右目が塞がった。
「もらった――!」
振るわれる武器が、金属音を立てて防がれる。
確かに右目は封じたはずだった。しかし、同時に、ピッコリーナを守るようにナイフが盾を作り上げていた。
事前情報にない防御的手段。打ち破ることのできないナイフの盾を前に、イレギュラーズの戦慄が走る。
「あーもう、女の子の顔にインクかけるなんて信じられない。最カワッのあたしの顔が台無しじゃない」
インクをぬぐって、ナイフの盾を解除したピッコリーナの右目は、黒く染まりながらも確かに開いていた。
「狙いがわかってるようだから、バラすけどね。右目を狙ったのは正解よ。――でもね、あなた達じゃあたしの右目は傷つけられない。だってまぶたを閉じたってナイフは動かせるんだもの。……だから言ったでしょ無駄だって。あはっ、あーははは! 残念ねえ! 残念ねえ!」
心底おかしいと言うように笑うピッコリーナ。
だが、その笑いを遮る力強い声が響く。
「ならば、その瞳。潰して見せようぞ!」
一般人をすべて昏倒させた百合子だ。
その言葉にイレギュラーズ達は頷く。そうだ、右目さえ潰してしまえば、勝ち筋が見える。
「あーはっはっはっ! なら、やってご覧よ! あたしも遠慮なく行かせてもらうからさあ!」
今までの倍以上のナイフが出現し、イレギュラーズに狙いを定める。
そこからは、今まで以上に鮮血が飛び交った。
失血にもなろうとする被害の中、イレギュラーズはナイフの舞をくぐり抜け三度目の目つぶしを敢行する。
それはミニュイの用意した劇物による攻撃だ。
だが、最初の風船爆弾から合わせ、三度目。敵も狙いがわかっている以上そう易々と通してはくれない。強固な防壁となるナイフの盾が、その悉くを防ぎ、もはや打つ手がなくなっていた。
超遠距離より的確にダメージを刻んでいたリジアも、味方の被害が夜鷹の回復だけでは追いつかなくなり、自身も回復に回るようになっていた。
(このままでは、まずいか……)
なにか一打、逆転の手があれば――。
前衛はすでにパンドラへと縋っていた。もう次はないだろう。
希望へと縋りたくなっていく。
「あーはっはっはっ! 終わり、終わりよ! みんな一緒に破滅を迎えましょう!」
勝利を確信するピッコリーナの笑い。だが、それを否定するつぶやきが漏れ聞こえた。
「破滅なんてごめんだわ。一人で勝手に破滅するのね」
その肌を血に染めて。果敢にナイフで立ち向かうのはアイオーラだ。
その悉くをナイフの盾に防がれながら、隙を伺い続け、ミニュイの託した劇物を投げつける。
「はいはい、それはも知ってるから――」
ナイフの盾が劇物を防ぐ。――同時にアイオーラの髪が意思を持って蠢いた。
それは、針の穴を通すかのようで、偶然であり、奇跡ともいえる。
ナイフとナイフの細い隙間を、一本の髪の毛が通り抜け、ピッコリーナにまぶたを閉じさせるよりも早く、その邪悪なる力持つ瞳に突き刺さった。
「ぎゃ、あああ――!」
ピッコリーナから悲鳴があがる。右目を押さえもんどり打って転げ回る。
『奔髪毒花』。カツオノエボシのディープシーであるアイオーラが普段は押さえている毒の魔力のスイッチをオンにし、長い髪を刺胞持つ触手へと変化させる技である。
弱点を狙う毒性を持った一撃は、確かに奇跡の一打となって、防御を貫通し貫いたのだ。
「――おしまいよ。
ナイフの一番イイ使い方はこうやって、自分の手に持って、しっかりと相手に刺すこと。
手から離れた刃は、どこに行くかわからないでしょ?」
そういってアイオーラは手にしたナイフを心臓へとつきたてようとする。
「くっ――!」
転げながらよけようとしたピッコリーナの腹部にナイフが刺し抜かれる。鮮血がピッコリーナを染め上げた。
「覚悟してください」
「あは、あはは、まだ、まだよ! まだ破滅には早いわ!!」
毒によって充血した瞳を見開いて、なおもピッコリーナは笑う。
「もうナイフは使えんじゃろ。汝に勝ち目はないのじゃ」
「あは、あはは。ばーか! 敵の言ったこと信じてるんじゃないよ! 右目が見えなくたってナイフは生み出せるし、操れるんだよ! ――ただし、コントロールなんて聞かないけどなァ!!」
瞬間、膨大な数のナイフが現れて――。
「――! このっ――!」
「終わりよ――!」
履行される大技、ナイフの嵐が、その場にいるすべてを飲み込んだ――。
●求めた破滅
ナイフの嵐が過ぎ去ればそこには、重傷を負って倒れたプロミネンス、メルナ、華鈴、アイオーラ、パンドラに縋ることができず倒れた夜鷹とリジア、パンドラに縋り辛くも倒れることは避けたレジーナ、百合子、雪之丞、ミニュイの姿があった。
「四人残ったのね……あは、あはは。なんだ思ったよりやるじゃん」
奥の手である履行技を耐えられて、ピッコリーナは力なく笑った。
すでにナイフは力を失い地面に落ちている。その一本をピッコリーナは拾い上げた。
「そこで倒れてるおねーさんが言うように、たまにはナイフを握って刺すのもいいかもね」
「最後の最後までナイフにこだわるか――それもよかろう」
百合子が傷ついた身体を押して白百合清楚殺戮拳、その構えを取る。
「修羅道狂わば、身は堕ちるばかり。
修羅に堕ちた拙の首を落として頂く方もまだ、おりませぬ故――拙はまだ、堕ちるわけにはいきませぬ」
雪之丞も武器を構え最後の戦いへと気を集中する。レジーナ、ミニュイも同様だ。得意レンジで武器を構えた。
「あーははは。楽しいなぁ。終わりが、破滅がもうすぐそこまで来てる! さぁ一緒に踊ろう!」
駆け出すピッコリーナ。手にしたナイフを構え――そして投げる。
ナイフを握って刺すと言うのは当然ブラフで、最後の最後まで百発百中を体現しようというのか。
当然百合子も雪之丞もそれを察知していた。直線的なナイフを紙一重で躱すと、一気に肉薄する。
「あは、あーはっはっはっ!」
空間に出現する少量のナイフが、空を舞う。その悉くをレジーナが召還した武具で相殺する。その隙に再度生み出したナイフを二本手に取るピッコリーナ。百合子に牽制するように投げつけると、勢いそのままに雪之丞へと襲いかかる。
その瞬間を狙って、挑発めいたミニュイの狙撃が直撃する。ピッコリーナの視線がミニュイに向いた隙を雪之丞は逃さない。風のように体勢をさらい、強かな投げを打つ。
「あっ、ああああ――!」
体勢を取り戻そうとしたピッコリーナの身体を無数の武具が貫いていく。
そして身動きの取れなくなったピッコリーナに破滅という終わりをもたらしたのは、百合子の強き拳の一撃だった。
「見事な戦いであった――貴様と死合えたこと吾の胸に刻もう」
「あーははっ……、負けちゃった。絶対負けないつもりだったのになあ……。
でもいっか、これが私の切望する破滅だったんだもの。
最後にナイフ当てれなかったのは悔しいけれど……まあいっか。
あはは、これでも玉乗りジョージのバカの顔も見れなって清々するわ。あは、あはは。あーはっははっ……」
出会ったときと変わらぬ笑いを零しながら、ピッコリーナは息絶えた。
その顔は、破滅することを心底喜ぶように、何もかも愉快そうな笑顔だった。
死闘だった。
その戦いにおいて、奇跡が起こり辛くも勝利を手にしたイレギュラーズだったがその傷は深い。
恐るべき魔種との戦いに安堵とともに、同じような敵がまだ存在することに、危機感を覚えるのだった。
――戦いは終わった。イレギュラーズ達は傷つき倒れた仲間を手当し、勝利の報告をローレットに持ち帰るのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
澤見夜行です。
依頼お疲れ様でした。詳細はリプレイをご覧ください。
目つぶしという作戦は想定通りで、狙いもよかったのですが、実際に目つぶしをどういうタイミングで行うか、その作戦が弱かったです。
すべてにチームワークが発揮されていればもっと有利に進められたと思います。
失敗も十分あり得ましたが、目つぶしのダイス判定の最中奇跡的に一度だけクリティカルがでましたのでリプレイの結果となりました。
全体的にプレイングはよかったと思いますが、難易度的にも、また奇跡に頼った面も含めての損害となりました。
MVPはクリティカルを引いた、ピッコリーナと同じナイフ使いのあなたへ。
スキル的にもその特性的にもかみ合ったように思えます。
MVP報酬として称号が与えられます。
依頼お疲れ様でした。初めての魔種との戦いとなりましたが、今後に備えて一層の鍛錬を積んでおきましょう!
GMコメント
こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
サーカスを追い詰める時が来ました。
待ち構える強敵を倒し、狂気の伝播を止めましょう。
●依頼達成条件
魔種の少女ピッコリーナの撃破。
●情報確度
情報確度はBです。
想定外の事態が起こる可能性があります。
●ピッコリーナについて
歳の頃なら十六、七。長い青髪をいくつも緩く結んだ少女。
サーカスでは百発百中の投げナイフ使いでしたが、その正体は無数のナイフを操る魔種の少女です。
把握できてる情報は以下の通り。
ナイフの舞(物特レ域・出血、乱れ)
特殊レンジ:遠距離以下は全て射程となる。
狂気拡散(物特レラ・狂気)
特殊レンジ:中距離以下は全て射程となる。
万全の状態のピッコリーナが使うナイフの舞は攻撃力が低いが、高命中高CT。
また、ナイフの舞は同じ対象にヒットするごとに出血をより上位の状態へと変化させる。
(出血状態でナイフの舞を受けると流血へ、流血状態で受けると失血となる)
彼女が狙いを付ける時に見せる構えが、百発百中を打ち破るヒントとなるかもしれない。
●周囲の一般人
ピッコリーナより狂気感染した一般人が十五名います。
狂気に染められ手にした武器を振り回します。
場合によっては敵対することも考えられるでしょう。
●想定戦闘地域
幻想はある市街地での戦闘になります。
ある程度の広さがあり戦闘は問題なく行えます。その他目に付く障害物はなく戦闘に支障はでないでしょう。
そのほか、有用そうなスキルには色々なボーナスがつきます。
皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
宜しくお願いいたします。
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