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シナリオ詳細

ごろごろ羊と毛刈りの季節

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●深緑のごろごろ羊牧場
 ごろごろごろ。
 ごろごろごろ。
 深緑の村、そのはずれの牧場で、ごろごろごろ、と白い毛玉が転がっている。
 大きさならば、1メートルほど。球形のそれは、ごろごろごろ、と転がって、ふと、ぽん、とはじけた。いや、厳密には弾けたのではなくて、丸まっていた足を伸ばして、四足で立ち上がったのである。
 め~、とそれは鳴いた。よく見れば、それは羊であることに気づいただろう。とはいえ、いわゆる普通の羊とは雰囲気が違う。それは、ふわふわの毛皮を持つ、深緑の名産品、『ごろごろウール』の毛を持つ、ごろごろ羊である。
 ごろごろ羊、というその名の通り、彼らはごろごろと回転して移動する。器用に足を折りたたみ、さながらアルマジロのごとく球形を作り、一塊の毛玉のようになって転がるのである。
「今年もみんな元気ですねぇ」
 『星翡翠』ラーシア・フェリル(p3n000012) は、牧場を見学しながら、そう言った。ごろごろ羊がごろごろするのは、元気の証である。元気であれば、毛ヅヤもよくなる。毛ヅヤもよくなれば、取れるウールの質も上がる。質が上がれば高く売れる。というわけで、ごろごろ羊はごろごろ転がるのが仕事のようなものである。
「まぁ、元気なのは良いんだけど、元気すぎて困ってるのもあるんだよね」
 と、牧場の作業員のハーモニアが言う。
「困ってる、ですか?」
「ああ、今年は特にやんちゃなのがいてなぁ。それもそろいもそろって、でっかいんだよ。見るかい?」
 作業員の男の誘いに、ラーシアは乗った。ゆっくりと歩きながら牧場を横断して、策に覆われた、大きな広場にうつる。
 そこには、2~3メートルほどの大きさだろうか? 大きなサイズの毛玉が、縦横無尽に転げまわっていた。その数、8個。毛玉はごろごろ、ごろごろとあたりを転がり回り、太く巨大な柵に身体をぶつける。丸太ほどのサイズもある柵が、ぎしぎしときしんだ。壊れてしまいそうで、ラーシアは少しはらはらした。
「だ、大丈夫なんですか?」
「ま、今のところはね。毎日柵はチェックしてるし、別にこいつらだって、ワザと壊してやろうってわけじゃないからな。ただなぁ、見た通り、デカくてパワーがある! それだけいい『ごろごろウール』が取れるってもんだが、俺たちじゃ如何せん、捕まえるのも一苦労だ」
 ふぅ、と柵にもたれかかり、作業員の男がぼやく。
「金は払うからさぁ、姉ちゃん、なんか作業員の当てはないかね。こう、あいつらに負けないくらいの奴さ」
「そうですねぇ」
 ラーシアは、口元に指を当て。うーん、と唸ると、言った。
「あ。もし報酬をご用意できるのでしたら、ローレットに頼んでみませんか? 私、ローレットの所属ですから、依頼として持ち帰りますよ?」
「本当かい」
 作業員が驚いた顔で言った。
「ローレットに頼めるなら万々歳だ。金はちゃんと払うよ。仕事内容は、あいつらを捕まえて、保定して、毛を刈るんだ。毛の刈り方は教えるし、道具はこっちでそろえるから、素人でもいい、とにかくあいつらに負けないようなのを頼むよ」
「かしこまりました。依頼が成立したら連絡しますので、しばらくお待ちください!」
 ラーシアが微笑む。その後ろで、何も知らないごろごろ羊たちは、ごろごろ、ごろごろと激しく転がっていたのである。

●ごろごろ羊と毛刈りの季節
「というわけで、羊を捕まえて、毛刈りをするお仕事です」
 ラーシアは、ローレットの出張所、テーブルに着いたイレギュラーズ達に、にこにことそう告げた。
「ごろごろ羊は、ふつうは30センチメートルから1メートルくらいのサイズの可愛い羊なのですが。今回皆さんが相手にするのは、2メートルから3メートルサイズの、大きくて力強いごろごろ羊です」
 ラーシアがテーブルの上に置いたペーパーには、まん丸い毛玉のような羊の姿が描かれている。隣に描かれている棒人間の絵は、比較対象用の者だろう。その棒人間より明らかに大きな毛玉だ。
「ローレットの皆さんでしたら大丈夫だと思いますが。一応、怪我などはしないように気を付けてくださいね。もふもふふかふかの毛ではあるんですが、それでも、結構な勢いで転がってきますから」
 もふもふふかふかの毛により、ある程度の攻撃に対しても防御能力を持つというごろごろ羊。という訳なので、遠慮なく攻撃してもよいらしいが、当然ながら、殺害してしまう事は禁忌である。
「相手を攻撃したり、一緒に遊んであげたりして疲れさせて、保定……ようするに、羊が怪我などをしないように抱きかかえて体を固定することですが、それを行って、毛を刈ります。毛の刈り方は、現地の従業員の方が教えてくれますし、道具なども用意していますから、気軽に考えていただいて大丈夫ですよ」
 ラーシアはそう言ってほほ笑むと、イレギュラーズ達一人一人に視線を移した。
「相手も凶暴な怪物というわけではありません、羊と遊ぶ気持ちで大丈夫ですよ。それではどうか皆さん、お気をつけて。お仕事、頑張ってくださいね!」
 そう言って、ラーシアはイレギュラーズ達を送り出した。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 ごろごろ羊の毛刈りの時期です。
 お手伝いしてきましょう!

●成功条件
 全てのごろごろ羊を捕まえて、毛刈りをする

●失敗条件
 一匹でも、ごろごろ羊が死亡する

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 深緑に存在する、ごろごろ羊。脚を丸めて球形をとり、ごろごろと転がってくる特性を持つ羊で、このウールは交易品の一つとなっています。
 皆さんは、そんな牧場に招かれた毛刈り部隊です。此処には、牧場厩務員でも手を焼くくらい、大きくて、元気なごろごろ羊がいます。
 皆さんはその羊に、攻撃したり、遊んだりして疲労させて捕まえます。その後、毛を刈ってあげて欲しいのです。
 作戦決行タイミングは、御昼過ぎ。天候は晴れ、周囲は広い牧場広場となっており、何らかのペナルティは発生しません。

●毛刈り対象
 元気で大きいごろごろ羊 ×8
  名前通り、元気で大きいごろごろ羊です。元気よく、ごろごろあたりを転がっています。
  巨大なため、マークやブロックなど、相手の動きを止めようとするならば、2人の人員が必要になるでしょう。(ハイ・ウォールを使用した場合、スキル一つにつき2人分として計算します)。
  分厚い毛によって防御技術やHPが高い他、行ってくるごろごろ攻撃は『飛』属性を持つ、威力の高い物理属性攻撃です。
  真面目に戦っても構いませんが、いっそ相手が遊び疲れるまで、追いかけっこをしたり、もふもふしたりして遊んでやるのも手です。
  とはいえ、遊んだら遊んだで、皆さんも相当疲労することになるかと思いますが……。
  どちらを選ぶにせよ、死なせてしまう事だけは厳禁です。その点はお気を付けください。

●NPC
 『星翡翠』ラーシア・フェリル(p3n000012)が現地には同行します。
 戦闘に参加することはありませんが、皆さんを応援したりしている他、指示などありましたら、毛刈り程度なら手伝ってくれたりします。

 以上となります。
 それでは、皆さんのご参加とプレイングをお待ちしております。

  • ごろごろ羊と毛刈りの季節完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月13日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
ポシェティケト・フルートゥフル(p3p001802)
白いわたがし
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
メイメイ・ルー(p3p004460)
祈りの守護者
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
箕島 つつじ(p3p008266)
砂原で咲う花
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
クアトロ・フォルマッジ(p3p009684)
葡萄の沼の探求者

サポートNPC一覧(1人)

ラーシア・フェリル(p3n000012)
星翡翠

リプレイ

●ごろごろ羊の遊び方
「……普通、ローレットに羊と遊んでくれなんて頼むか?」
 むす、とした表情で羊たちを眺めるのは、『航空猟兵』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)である。腕を組みつつ、ため息を一つ。
「何故羊の毛刈りなんて雑務を俺たちがやらねばならん。
 ここの牧場主は羊の毛刈りすら上手にできないってのか?
 たく、いくら報酬があるとはいえそんな仕事――」
「そうですか? とても楽しいお仕事だと思ったのですが……」
 苦笑するラーシア。
「と言う事を言う奴がいるかもしれませんがね、ええ、俺は全然、まったく、この仕事を楽しみにしてきました。こんなレアな仕事、そうそうない。と言うわけで、このアルヴァ、全力で羊と戯れてやらぁ!」
 とん、と胸を叩くアルヴァに、ラーシアは微笑んだ。
「よかった。お仕事を紹介した甲斐があります!」
「と言うわけで、それじゃあね、本日はごろごろ羊さんと一緒にね、遊んで毛刈りをしていきたいと思いますんでね、はい」
 『死神二振』クロバ・フユツキ(p3p000145)がこほん、と咳払い一つ。
「うおおおお! 応援しててくださいねラーシア様ァ!! ってか手伝ってくれると嬉しいのですがァ!!」
「私もお手伝いできればよかったのですが、皆さんの足手まといになりそうで……そのぶん、一生懸命応援しますね! 頑張って下さい、クロバさん!」
「うおおおお! がんばります!」
 と、やる気充分な二人であるが、他のメンバーももちろん、やる気と言う面に関しては負けていない。
「ごろごろ大きな羊の子、ほんとうにまんまるお大きなお山みたいねえ」
 『金色砂のクララ』をその傍らに、『謡うナーサリーライム』ポシェティケト・フルートゥフル(p3p001802)が言う。柵の中にいるのは、大きな羊。ごろごろと転がっていても、そうでなくても、おっきくてふかふかの、可愛い奴らだ。
 めぇ、めぇ、とごろごろ羊たちが声をあげるのへ、ポシェティケトはくすくすと笑ってみせる。
「元気いっぱい、遊びたいって。楽しみね。ね、クララ」
「うむ……実に楽しみだ」
 その傍らで腕を組み、うんうんと頷く『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)。些か緩んだ頬を意識して引き締めながら、ゲオルグは柵の中へと視線をやる。
「おお、ぽんぽんと飛び跳ねて、ごろごろと転がって……こんなかわいいふわもこアニマルが存在してたとはな……私のジークに負けず劣らずの可愛さだ」
「可愛いのはええんやけど、ちゃんと毛も刈ってやらんといけないんよな?」
 『砂原で咲う花』箕島 つつじ(p3p008266)は、むぅ、とあごに手をやった。
「ウチ、出来るかなぁ? ちゃんと教えてくれるらしいけど、難しいんちゃうかな?」
「難しい所は、わたしもお教えできますよ」
 『あたたかい笑顔』メイメイ・ルー(p3p004460)が、微笑していう。
「昔は、羊さん達のお世話をしていたものですから、少しはお手伝いできると思います。一緒に頑張りましょう、つつじさま」
「おー、ほんま? よろしうたのむで、メイメイ!」
 メイメイと握手して、楽し気にぶんぶん振るつつじ。メイメイも少しだけびっくりした顔をした後、にこにこと笑って振り回されるがままにした。
「ではみなさん、よろしくお願いします」
 厩務員の男性が言うのへ、イレギュラーズ達は頷いた。入り口を開いて、柵の中に入ると、土と牧草の感触が、靴からも伝わってくる。すぐにごろごろと、ゆっくりと大きな一つが転がってきて、イレギュラーズ達の目の前で、ぽん、と両手足を伸ばした。ふかふかでまんまるな、大きな羊である。
「こんなに大きくなるものなのね……なんだか最近、大きくなり過ぎた動物の相手ばかりしているような気がするわ……?」
 小首をかしげる『葡萄の沼の探求者』クアトロ・フォルマッジ(p3p009684)が、小首をかしげた。それに合わせるみたいに、めぇ、とごろごろ羊も首をかしげる。
「あら、可愛い。でもやんちゃなのよね? 負けないように頑張らなくちゃ」
「おっきいのです。触っても大丈夫なのですか?」
 『はらぺこフレンズ』ニル(p3p009185)がそう言うのへ、厩務員は「だいじょうぶですよ」と答えた。ニルがおずおずと、ごろごろ羊へと触れてみると、ふかふかとした羊毛の手触りが、ニルの手一杯に広がった。
「うわぁ、ふかふかなのです。ぎゅーってしたら、きっと気持ちいのでしょうね……」
 ごろごろ羊はめぇ、と一鳴きすると、ごろごろと転がっていった。それからしばらくして、球体から顔をだして、めぇ、と鳴く。
「あそぼう、って言っているのです?」
「そうみたいですね。それじゃあ、皆さん、頑張ってください!」
 ラーシアがそう言うのへ、イレギュラーズ達は頷いた。
「ラーシアさんが見てるんだ、全力で遊んでやるぜ!」
 と、アルヴァがぐっ、と手を握って言う。各々の目的はさておき、イレギュラーズ達の全力の羊遊びが、始まろうとしていた。

●ごろごろ羊と転がって
「よし、まずはここにこう、杭を立ててだな?」
 アルヴァが敷地内に、二本の杭を間隔をあけて突き刺した。そして、杭の間にネットを張り巡らせる。
「これでサッカーゴールの出来上がり、ってね。まぁ、本当にサッカーをやるわけじゃないけど、こうやってネットで受け止めてやれば、羊が転がってきても受け止められるだろ?」
「なるほど……アルヴァさん、すごいです!」
 策の外側からラーシアが応援の言葉をあげるのへ、アルヴァは満足げに頷いた。
「よっしゃ、こっちだ! どいつでも来やがれってんだ!」
 と、名乗り口上……と言うよりは、羊を呼び寄せるのへ、果たして一匹の羊が、目を輝かせて、めぇ、と鳴いた。ぴょん、と飛び跳ねて球形になると、そのままごろごろと転がってくる。
「よし、思った通りだ! このまま受け止め、受け止め、て……?」
 ごろごろ、ごろごろ、結構な勢いで転がってくる巨大な球体! いくらふかふかだとは言え、流石にこれを受け止めるというのは、ちょっと。
「うおっ!?」
 たまらず飛びずさるアルヴァ。間一髪。避けたそこを、羊が転がっていく。ぐわ、ときしみ音を立てて、羊がゴールに包まれた。羊はしばらくもぞもぞとしていたが、やがてぴょん、と飛び跳ねてネットから身体を逃がすと、めぇ、と鳴いた。それからしばらくは慣れて、またごろん、と球形になる。
「ああ、なるほど……一回では満足できない、と。くそ、満足するまでやってやろうじゃねぇか!」
 アルヴァが悲鳴のような決意の声をあげるのへ、羊は嬉しそうに鳴き声をあげた。果たして再び、ごろごろとゴールに向けて転がっていく。

 一方、その横を駆け抜けていくのはつつじだ。手にはハンドベルを持って、ちりりん、とならしながら走り抜ける。
「こっち、こっちやで!」
 ちりりん、とベルを鳴らすと、その後を追いかけるように、ごろごろと転がっていく一匹のひつじ。牧場内は充分に広くて、二人……いや、一人と一匹が追いかけっこをしても全然問題ないくらいだ。
「んぎゃっ!」
 やがて追い付かれたつつじが、ひつじにぽよん、とひかれた。ふかふかの羊毛故に、押しつぶされるようなことはない……むしろ、ふかふかの毛玉に包まれる感触が、少し心地よいかもしれない。
「あはは! 追いつかれてもうた! 速いなぁ、君!」
 ケタケタと笑うつつじのよこで、羊がぽん、と手足を出して立ち上がった。めぇ、めぇ、と鳴いて、鼻先をねころがったつつじに押し付ける。
「え、またやるん? 元気やなぁ」
 ぽんぽんと土を払いながら、立ち上がつつじ。ちりりん、とハンドベルを鳴らして、
「よーし、ついてこーい! まだまだ走るでー!」
 と、走り出すのだから、嬉し気に羊が転がって後を追う。

 羊を沢山運動させて、疲れさせようとしているのは、やはりみんな同じようだ。今回は平和的に解決しよう、と言う所である。
「えっと、ミュミューちゃん。はい、こちらです、よ……!」
 両手をあげて、ぱたぱたと手を振るメイメイ。ミュミューとは、教えてもらったごろごろ羊のうち一匹の名前で、メイメイの担当は、このミュミューと言う女の子らしい。呼ばれて、ごろごろと転がっていくミュミュー。メイメイはわわわ、と声をあげながら、その場からとてとてと逃げ出す。果たして数秒後に、ミュミューがごろごろとそこを転がっていった。
「ふふ。今度はこちらですよー……!」
 その間に、メイメイはまた距離をとって、両手をふる。ミュミューはくりくりとした眼をそちらへ向けて、またごろごろと転がっていった。追いかけっこともまた違う、メイメイの遊び方に、ミュミューは満足気にごろごろと転がっていく。
「ふふふ。なんだか、昔を思い出します……わたしの時は、貴方よりもずっと小さい子を相手にしていましたが」
 メイメイが笑うのへ、めぇ、とミュミューが鳴いた。おはなしよりも、遊んでほしい。そう感じ取ったメイメイがくすくすと笑う。
「わかりました。こちら、ですよ、ミュミューちゃん……!」

「よし、私が君を追うから、君は逃げるんだぞ、レレン」
 ゲオルグが、傍らでまるまる羊、レレンへとそう告げた。レレンはめぇめぇ、と鳴くと、ころころと転がっていく。
「ふむ、なかなかのスピードだ。……しかし、あれに飛びついたら、さぞかし心地よいだろうが……」
 うむ、と頷きつつ、ゲオルグは走り出した。ぴょん、と飛びついて、もふもふにその身を埋めたい……だが、レレンはなかなか、その距離を縮めてはくれない。向こうも向こうで、追い付かれないように、一生懸命コロコロしていた。
「ふっ、ただではモフモフを堪能させてはくれないか……いいとも、レレン。私も全力で遊ぼうじゃないか」
 一段と速度をあげて走り出すゲオルグ。だが、レレンは楽しそうに一鳴きすると、さらに速度をあげてころころと転がっていく。
 追うゲオルグ。逃げるレレン。牧場内を走り回る追いかけっこは、しかしいつまでも決着はつかない。
「なるほど、これはハードだ……だが、私ももふもふのため……そう簡単には諦めないぞ!」
 果たして追いかけっこはしばし続き、ゲオルグがレレンをモフモフできたのは、しばらく後、レレンが遊び疲れた時だったという。

「……改めて見ると、中々の迫力ね。私、あれにぶつかったら簡単に吹き飛ばされそうだわ……」
 と、柵を背に立つクアトロ。その前方には、一匹のごろごろ羊が、転がる時を今か今かと待ち構えている。
「こほん」
 と、クアトロは咳払い一つ。
「さぁ、いらっしゃい。遊んであげるわ。言葉通りにね」
 ぴょん、と飛び跳ねたごろごろ羊が、まるまってごろごろと転がってくる。ひかれる、というタイミングで、クアトロは衝撃の術式を解き放った。ぽーん、と飛んでいくごろごろ羊。ぴょんぴょん、とバウンドすると、またこちらに向かって転がってきた。
「一回じゃ満足しないわよね? いいわ、なんどでも?」
 再び衝撃術式を放つクアトロ。ぽーん、と弾かれる、ごろごろ羊が、再び速度をあげて転がってくる。
 弾かれる、羊。速度をあげて戻ってくる、羊。再び弾かれる、羊。戻ってくる、羊……。
「……もしかして、これ、一度でも外したら凄い速度でひかれるんじゃないかしら……?」
 たらり、と冷や汗をこぼしつつ。
 羊とのラリーは続いていった。

 そんな風に羊をころころ転がしながら、同時に自分自身で受け止めて見せたりする者もいる。ニルなどがそうだ。
 ごろごろごろ、と結構な勢いで転がってくる羊。それを、両手を掲げて、ぽふ、と受けてめて見せるニル。
「わふっ」
 顔いっぱいに押し付けられるふわふわの羊毛の感触に、ニルが息を吐いた。ふかふかと、ふわふわとした感触。痛くはない。衝撃はもちろんあったが、ニルには耐えられるくらいのものだ。
「わぁ、ふかふかです……気持ちいいですよぉ」
 ニルがにこにこと笑う。羊はめぇ、と鳴いて、少し弾んだみせた。ぽわ、とした感触が、ニルの体中を包む。このまま倒されても、きっと心地よいだろうな、とニルは思う。
「この毛が、お洋服になるんですね……なんだか不思議です」
 きょとん、と呟くニルに、羊はめぇ、と鳴いた。
「はい、遊びたいんですよね。任せてください」
 そう言って、ニルがぽん、と術式で羊を飛ばした。ぽんぽんと地面をはねて、羊は再び、ころころとニルに向って転がっていく。
「わふっ」
 それを受け止めて、ニルは再び、びっくりしたように息を吐くのであった。

「ごろごろさん、こちらですよ」
 たたたっ、と白銀色の鹿……ポシェティケトが牧場を走った。その後を追いかける、ごろごろ羊。
「ポシェティケトさん、頑張ってください!」
 ラーシアの声援を背に受けて、ポシェティケトが走る。心地の良い香りを風にのせて羊を誘えば、ごろごろ、ごろごろと、羊は転がってくる。
「ごろごろさんも、速いですね……わわっ」
 果たして追いつかれたポシェティケトが、羊とぶつかる。ぽーん、と柔らかく飛ばされて、しばし滞空の後に着地する。
「……びっくりしました。でも、楽しかったかも」
 ポシェティケトがくすくすと笑う。その後を追って、再び羊が転がってきた。
「ふふ、今度はつかまりませんよ。さぁ、ごろごろさん、おいでなさい」
 と、ポシェティケトと羊の追いかけっこは、まだまだ続くのである。

「うおおおお! 全深緑民よ、刮目せよ! クロバ・フユツキ、此処に在りだあああ!」
 ばっ、と両手を掲げて立ちはだかるクロバ。間髪入れず、その場に転がってきた羊たちが、クロバをひき潰していった。
 羊たちが転がっていった後には、ぺたり、と倒れるクロバの姿があって、
「だ、大丈夫ですか? クロバさん?」
 ラーシアが声をかけるのへ、クロバはがばっ、と立ち上がった!
「大丈夫です! アイアムゴリラ! サブクラスの話ですが!」
 再び両手を掲げて羊たちの前に立つクロバ。
「見せてやるよ、これが受け継がれしゴリラ魂だ! クロバ・フユツキの魂だ!」
 ごろごろごろごろ、と羊たちが転がっていく。クロバが潰された。がば、と立ち上がる。
「HPは積んできた……この程度でやられる俺ではない! さぁ、来い! まとめてゲッチュしてやる!」
 ごろごろごろごろごろ! 羊たちが転がっていく! クロバが潰された! 立ち上がる! 潰される! 立ち上がる――!
 かくしてクロバの戦いは、羊たちが満足するまで続けられた、と、後にラーシアは語った。

●毛刈りの時間
 さて、すっかり遊び疲れてご満悦のごろごろ羊たち。だが、イレギュラーズ達は休むわけにはいかない。すぐに毛刈り作業にうつることになったのだ。
「ほてい、というのは、羊さんを、安全に、抱き留める事をさします」
 メイメイの言葉に、一匹に対して数名がかりで身体を押さえる。
「後は、傷つけないように、はさみを入れていきます……少しの間、我慢してください、ね。いいこ、いいこ…」
「おっけーや! じゃ、早速ちょきちょきするで!」
 つつじが声をあげて、鋏を入れていく。ちょきちょきと、大きな毛が刈られて行って、羊は心地よさげに、めぇ、と鳴いた。
「うわぁ、めっちゃ刈れるなぁ。これでどれくらいのウールになるんやろうか……?」
「普通の羊の倍以上だからな……しかし、これ、持ち帰りたいものだな。この段階で、既にふわふわだよ」
 もふ、と顔を刈ったばかりの羊毛に埋めるゲオルグ。羊のジークが、その袖口をつんつんと引っ張った。
「おっと、いけない。これを籠に集めないとな」
「おう、どんどん運ぶぞ。じゃんじゃん刈ってくれ……しかし、こいつら本当に元気だったな……流石の俺も疲れたぜ」
 アルヴァが、羊毛を持ち上げつつ嘆息するのへ、
「ふふ、お疲れさまでした、アルヴァさん。もう一息、頑張りましょう?」
 ラーシアがそう言うので、アルヴァが頷いて、
「了解、最後まで頑張りますよ、っと」
 少しだけ笑って、そう答えるのだった。
「刃物の扱いにはなれたものだが、しかし毛刈りとなると勝手が違うな」
 ふぅ、と息を吐いて、クロバが言う。
「中々の重労働だ……これを毎年となると、牧場主には頭が下がる思いだ」
「よし、よし。いい子さん、すっきりさっぱり、古いお洋服を脱ぎましょう」
 ポシェティケトが、毛を刈り終えた羊たちの頭を優しく撫でた。めぇ、と羊が鳴いて、プルプルと顔を振った。
「また来年まで、沢山着こんでくださいね。来年また、会えると良いですね」
 ポシェティケトの言葉に、めぇ、と嬉しそうに、羊が鳴いた。
 羊たちの毛刈りは順調に進んで行って、沢山のモフモフの毛が、イレギュラーズ達を包んでいた。
「羊さんは、どんなご飯を食べるんですか? お腹、すきましたね」
 ニルがそう言うのへ、
「そろそろそんな時間だろうと思って。羊乳のチーズをのせたピザを作ったわよ。休憩に、皆で食べましょう?」
 と、クアトロがピザをさらに載せて差し出した。
 さすがに疲れた一行も、思わずその匂いにお腹が鳴ると言うものだ。
 一行は、刈ったばかりの羊毛に包まれながら、休憩にと食事をとることにした。
 傍らでは、身軽になった羊たちが、籠に入った牧草を食んでいる。
 静かな、牧場での時間が、穏やかに過ぎていくのであった。

成否

成功

MVP

メイメイ・ルー(p3p004460)
祈りの守護者

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様のおかげで、今年もごろごろ羊の毛刈りは無事に完了しました。
 羊たちも、久しぶりに思いっきり遊べて、とても喜んでいたようですよ。

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