シナリオ詳細
迷工鍛冶師は戦闘狂!
オープニング
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鉄帝にある大闘技場ラド・バウには様々な闘士が名を連ねる。
入れ替わり立ち代わり参加する者も数えきれないほど登録しているが、やはり常連参加の闘士はその存在感を強く示し、人気も高い。
そんな中に、アリス・メイルという闘士がいる。
旅人である彼女は元々火竜だったそうだが、混沌へと召喚された際に人化したまま竜に戻ることができなくなり、今のまま至る。
すでに齢100を超える彼女はこちらの世界で一緒になった夫の稼業である鍛冶師を営み、ラド・バウの闘士達の武器を整備しつつ、思いつくままに武器を作りながらもそのテストにと闘士として実戦に臨むこともある。
「邪魔するよ。雪之丞はいるかい」
そんな彼女がある日、はるばる幻想ローレットまで足を運び、鬼桜 雪之丞(p3p002312)を呼び出す。
「……ようこそ、おいでくださいました」
程なくしてやってきた着物姿の雪之丞は丁寧に頭を下げる。
2人の関係は、雪之丞が刀鍛冶としてアリスを紹介されたところから始まる。
時折、雪之丞が彼女の鍛冶場を訪ねて刀を手入れしてもらうだけでなく、ラド・バウで出会った時など茶飲み友達としてひと時を過ごすこともある。
普段、鉄帝から出ないアリスのこと。わざわざ自分を訪ねてきてくれたのだから、感情を出すのが苦手な彼女とはいえ、その態度は少し嬉しさも感じさせた。
アリスがこうして外に出てきたのには理由がある。
鉄帝で刀鍛冶と闘技場の行き来する日々に、彼女も不満がないわけではないのだが、竜であり、戦闘狂である本能がうずくことがあるのだそうだ。
鍛冶の合間、モンスター討伐を行うことにしたのだが、常連客などを誘ってみたもののタイミングが合わない者も多かった。
「折角だからな。雪之丞やローレットに依頼してみようと思ったんだ」
彼女を含むローレットと共闘するのも面白いと考え、アリスは幻想ローレットまでやってきたというわけだ。
「さて、本題なんだがな。場所はここから北……鉄帝の南側にある鉱山だな」
そこでは、鉱山夫が汗水垂らして働いている。
中には、闘士として参加することもある手練れもいるのだが……、そんな彼らでも手をこまねく相手が鉱山内部で確認された。
鉱山内部で掘削作業を進めるうち、奥に別の空間があることが発覚し、そこにはオーガ2体とコボルトの集団が寝床としていたのだ。
「狡猾な連中さ。一気に攻め込もうとすれば、すぐに奥側の入り口から出て逃げ出してしまうのさ」
だが、しばらくすればまた元の場所へと戻ってきて、何事もなく過ごすのだという。
その為、向こう側の入り口と鉱山側に空いた穴、二手に分かれて同時に踏み込むしかない。
「ただ、内部の空間がどれだけの広さがあるか、併せてコボルトの数がどのくらいいるかが不透明だ」
突入に当たってそれが気になるのであれば、直前にできる範囲で調査しておくといいだろう。
今回、鉱山夫達は雪の溶けた後の書きいれ時とあって、無用な傷を負いたくないとのこと。その為、ローレットイレギュラーズとアリスとで全てを対処したい。
「相手の特徴や数は向かいながら説明するよ。馬車を用意したから乗ってきな。……ああ、うずうずするね」
アリスは戦いが待ちきれないのか、早速現地へと向かうつもりらしい。
それもあって、イレギュラーズも手早く身支度し、出立の準備を進めるのだった。
- 迷工鍛冶師は戦闘狂!完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年04月30日 22時00分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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依頼を受けたイレギュラーズ達は、依頼主……正確には直接事件の解決依頼を受けた赤髪女性と共に彼女の用意した馬車で鉄帝へと向かう。
「アリス・メイル……ああ、ドラゴン・アリスを製作した方ですか」
「ほう、人化した竜の刀鍛冶か。興味深いな」
長身の鉄騎男性、『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)はその女性の名に心当たりがあったらしい。別世界の鍛冶師、『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)は同職とあってか、かなり興味を示す。
「あの鎧は、その、扱うのに特殊な技術が要る物でしたね。ですので、自分の手には余りました」
「そうか、そいつは残念だった」
実際にオリーブが触った鎧の話に、その製作主であるアリスは少しばかり申し訳なさそうな態度をとる。
「アリス様は……、いえ、様付けは、怒られましたね」
「ああ、アリスでいい」
無表情な『玲瓏の壁』鬼桜 雪之丞(p3p002312)だが、アリスと共にいようとするところを見るに、再開が嬉しかったのだろう。
「共闘は、久し振りですね。ふふ。成長を見せられるなら、楽しみです」
「ああ、楽しみにしている」
折角、アリスからの依頼。雪之丞も腕を鳴らして現地への到着を待つ。
「話してみたいこともあるが、まずは仕事だ仕事、魔物退治と洒落こむとするか」
錬が外を見れば、馬車が幻想から鉄帝へと入るところだった。目的地は鉄帝の南とのことなので、さほど距離はないはずだ。
「ともかく依頼です。戦う上で鍛冶の技術やセンスは関係無いので、頼らせて貰いましょう」
「任せてくれ」
そんなオリーブに対し、アリスは意気揚々と背にしていた大槌を握り、炎を迸らせるのである。
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一行を乗せた馬車は昼過ぎに目的の鉱山へと至る。
この内部に、討伐対象がいるとのことだが……。
「鉄帝で坑道を占拠するモンスターなんて最近出会ってなかったから、ちょっとシンセンな気分なんだよね」
鉄帝育ちの『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)が言うには、弱いモンスターなどは現場の人々があっさりと倒してしまうのだとか。
ただ、今回は狡猾な相手で、巣穴となった場所へと攻め込もうとすると、逆側から逃げ出してしまうのだという。
「中々、悪知恵も働く敵のようだ。彼らには悪いが確実に叩いてしまいたいね」
「鉱山に居座る鬼退治ですか!」
『雷光殲姫』の二つ名で知られる『雷はただ前へ』マリア・レイシス(p3p006685)の言葉に、ヴィーザル地方出身の獣種である『挫けぬ軍狼』日車・迅(p3p007500)が血を滾らせて。
「内部の詳細など不明なところもありますが、ただ見つけて殴り倒せばいいのは分かりやすくて良いですね!」
久々に、余計なことを考えずに拳を振るえそうだと迅は腕を鳴らし、1匹でも多く片付けられるように頑張ると気概を見せた。
ただ、全体作戦としてはそうもいかない。坑道に見つかった新たな空洞……モンスターの巣穴の大きさ、敵の数など不透明な情報もある。
それを調べる為、錬が事前調査を行い、アリスや鉱山夫からの話と自身の地質学を合わせて鉱山のの把握に努める。
「開けた空間……だが、横穴があるな。オーガ2体と共にいるコボルト……多ければ15体前後はいるだろうか」
錬は今回突入する坑道穴から敵の巣窟、外への入り口に至るまで内部の簡易地図を描き、仲間達と情報共有する。
その地図を元にして、一行は2班に分かれる。
こちらは鉱山夫の開けた穴から突入する1班。
「さて……気を引き締めていこう」
マリアは敵に抜かれないようにと注意しつつ、坑道を進む。巣穴からこちら側の坑道へと敵が出てきている可能性も考慮していたのだ。
こちらは4人。先頭を行くのはイグナートだ。
「オレはガンジョウだし、自然知識もあるからね」
そう主張する彼はトラバサミも用意しており、戦闘から逃げ出したコボルトを捕えられるようにと設置していく。
オーガ討伐と意気込む一際巨漢のボクサー、『ドラゴンスマッシャー』郷田 貴道(p3p000401)は腕を鳴らすが、彼にとっては通路はかなり狭そうだ。
もう1人はメイドを思わせる姿をした鉄帝の騎士『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)。
彼女は奇しくもこちらのメンバーが無手での戦いを得てとする者ばかりだと指摘して。
「何だか面白くなって来たであります」
地図によれば、時期に巣穴へと至るはず。作戦が無事にいくといいのだが……。
逆側、巣穴の向こう側にある鉱山外からの入り口側からは、少し時間を遅らせて5人が突入する。
こちら側は自然の洞穴をそのまま流用して通路としているらしいが、人の手が入ってないこともあってか内部に明かりはない。
「内部が暗くてもギフトで対応出来るので、その点は楽ですね」
ギフト「明暗順応」を持つオリーブはそれで視界を確保し、仲間達から離れぬよう進んでいく。迅はというと、携行品の「月灯りの雫」を目に点して闇に眼を慣らしていた。
雪之丞は同じく携行品で対処していたが、こちらは「鬼灯の燈會」を使って闇を照らす。「さすが、私の炎は出る幕がないな」とは、アリスの弁だ。
なお、隊の中央にいた錬はここでも地質学を生かして、巣窟までの道に枝分かれした道がないかとチェックしていく。
自然の洞穴もさほど巣穴地点まで距離はなさそうだが、2,3つほど枝分かれした道がある。行き止まりとなった場所ばかりで、そこから外には出られなさそうだ。
「不意打ちに注意はしなければなりませんね」
「逃げ道になりそうなら、多少雑でも塞いでおきたいところですが」
迅のいうことももっともであり、オリーブが重ねて対処すべきと主張したのだが。
「いや、ここは逆にこちらからの不意打ちに利用できそうだ」
小さく笑う錬は、雪之丞に明かりを消すよう願い、その枝分かれした地点の袋小路側へと仲間と共に身を潜めるのである。
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坑道側からモンスターの巣穴へと向かう1班は、敵の姿を捉えていた。
「敵をハッケンしたよ」
先頭を行くイグナートが後続の仲間達へと伝え、その対処をと申し出ると、貴道が相手に聞こえぬ声量で笑う。
「HAHAHA、なんだ、拍子抜けじゃねえか」
オーガは2.5mほどと一般成人人間種と比べればはるかに大柄なのだが、旅人である貴道もまた巨躯であり、さほどその背丈は変わらない。
「ったく……もうちょい育っとけよ」
やっぱり、コソコソしているような連中では期待できないと一度は諦観していた貴道だったが、すぐに考えを改めて。
「いや……早合点は良くないな、デカけりゃいいって話じゃねえ」
相手がどんな力を持っているか、油断はできない。特に混沌在住の相手は見た目で相手の力量ははかれないのだ。
「うーん、この場合侵略者はどちらかと言うと我々でありますなあ」
エッダとしては、この状況に些か心が痛み、申し訳なさも感じていたようだが、それはそれ。
「鉄帝の鉱山であれば、そこに居た彼らに運がなかったと思ってもらうでありますよ」
イグナートのトラバサミ設置を待ち、一行は示し合わせてから一気に飛び出す。
「「アオオォォッ!?」」
「マタ、ニンゲンカ!?」
驚きの声を上げるコボルト達に、緑と青のオーガがすぐさま後退するよう指示を出すが、貴道がブルーオーガの前に立ちはだかって。
「ヘイ、青い鬼さん、ユーの相手はこのミーだ。ぶちのめしてやるから、せいぜい頑張って抵抗してくれよ?」
赤鬼とフレンドじゃない青鬼に、情けをかける必要はないと笑う貴道に、魔法を操る敵は苛立ちも見せるが。
「ヒケ、ヒケ!」
「閉所での天槌裁華は少々、使い勝手は悪いね! だが、撃てさえすれば……」
それでも、この場から離れようとしていたコボルトらを捉え、マリアは素早く詠唱して。
「受けろ! 降り注ぐ雷光の鉄槌!」
マリアは多くの敵を巻き込み、ブルーオーガを中心に落雷を叩き落とす。
すでにグリーンオーガと数体のコボルトがこの場から退避してしまっていたが、それでも通路の横幅もあって一度に出られず、半数程度はこの場に残っていたようだ。
「さて……魔術遣いでありますね」
雷に焼かれる青鬼を注視し、エッダは遠距離から振るった拳を叩き込む。
どこから殴られたのかと確認していた敵はエッダに気付き、鬼気迫る形相で睨みつけてくる。
「なんかシンセンな気分だね。おいでよ、オレが相手になるよ!」
そこに、イグナートが迫り、名乗りを上げて引きつけに当たれば、我を失ったモンスター達が彼へと集まってくる。
貴道もまた素早くブルーオーガへと追いすがって。
「誠心誠意、全力で、真心込めて、死に物狂いで来やがれよ? じゃねえと、ミーが楽しめないからなぁ!」
鉱山夫とは比べ物にならぬ素早さで攻め来る貴道が先制して我流のボクシングを見せつければ、さすがのブルーオーガも青銅製の錫杖を大きく振るって距離をとろうとする。
グリーンオーガは逃がしてはしまったが、1班メンバーはオーガ2体の分断ができたことを良しとしつつ、巣窟に留まるモンスターの掃討に乗り出すのである。
分岐点で身を潜める入り口側の2班。
そこに、ドタドタと足音を立ててコボルト達が近づいてくる。
「来ましたね」
超聴力でその接近を察した雪之丞。オリーブもそれらを視認していたようで。
「面倒が増える前にさっさと始末してしまいましょう」
それに頷く錬も圧倒的な眼力を働かせて不意打ちをと動き出すが、素早さに勝る迅が拳を突き出してコボルトへと殴り掛かる。
「アオオオオオッ!」
敵も初撃では倒れず、毒で煌めく刃を振るって迅に応戦してくる。
また、後続としてやってくるコボルト達へ、オリーブは長剣による乱撃を叩きこむ。
「簡素で合理的で効果的な動きですね」
最も火力の出る戦法だと、オリーブは思いっきり攻勢へと出る。
(アリスに、あまり不甲斐ない姿は見せられません)
前に出る仲間達に続き、普段よりも気合を入れる雪之丞は柏手を鳴らす。
「おいでませ。おいでませ。美味しい獲物は、今此処に」
霊気を籠めることで高質化した手からはまるで鈴の如き音が響き、コボルトだけでなく、その後ろにいたグリーンオーガもつり出すことができた。
「アリス、背中はお任せを。好きに暴れてください。合わせます故」
「ああ、頼むぞ」
小さく了承の意を示したアリスは焔舞わせた大槌を振り上げるのである。
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巣窟では、貴道がブルーオーガと力をぶつけ合う。
貴道は己の拳で殴りつけていくのに対し、ブルーオーガ得意の魔法を繰り出す。その相手は貴道だけでなく、注意を引くイグナートにも向けられていた。
闘争心で己を満たすイグナートはコボルトの攻撃も引きつけており、手あたり次第に敵を殴りつけていた。
「私の雷撃なら!」
こちらは比較的洞穴内に置いてもスペースを確保できたこともあり、マリアは多くのコボルトへと蒼い落雷を打ち込み、次々と地へと伏していく。
しかしながら、ブルーオーガはさすがにタフであり、イレギュラーズの攻撃を幾度くらっても倒れはしない。
「源泉を断ってしまいましょう。合わせるでありますよ、マリア――雷神拳、始動」
重ねて、エッダはスパークさせた腕で全力の一打を打ち出す。
マリアの蒼雷に置いて行かれてはなるものかと渾身の殴打でブルーオーガを圧倒しようとするエッダ。
そこに、コボルトを殴り倒していたイグナートが竜撃で硬いオーガの皮膚をも穿たんと叩き込む。
「グウウウウ!」
その負担は決して小さくなく、唸るブルーオーガは
しかも、マリアのエッダに魔力を奪われ続け、雷の魔法を反撃としてイレギュラーズへと放つ。
だが、さほど多くない魔力はすぐに枯渇してしまって。
「HAHAHA!」
笑う貴道は一気に決めてしまおうとほぼ同時に上下からの二連撃で相手を地に沈めようとする。
だが、敵もまた生きるのに必死だ。その太い脚は倒れてなるものかと地面を踏みしめた。
「……丁重に弔ってあげる」
ただ、そんな敵へと壁、天井を蹴ったマリアが襲い掛かる。
彼女は敵の関節部を重点的に狙っていたが、ここぞと雷撃を撃ち込んだのは相手の眼球。
「グガオオオオオオオオオオッ!!」
悶え苦しむブルーオーガはやがてその痛みに耐えられなくなったのか、重い音を立てて地面に横たわったのだった。
そこでエッダがすぐさま周囲を見回す。自分達の入ってきた方向に仕掛けられたトラバサミにかかったコボルトを発見し、すぐさま踊るように殴りかかっていくのだった。
入り口側の戦いは分岐点を中心に繰り広げられる。
さほど広さが確保できぬこともあり、雪之丞は邪魔なコボルトを倒すべく防御を破壊力へと変えて切り刻む。
傍で炎槌をコボルトへとクリーンヒットさせていたアリス。
彼女の焔に負けじと錬が式符から炎の大砲を鍛造して火弾を撃ち込む。
暗がりの中、激しく巻き起こる爆発に、黒焦げとなったコボルトが倒れていく。
敵が密集していたこともあり、オリーブは至近で敵と刃を交差させていたが、毒の刃が体へと食い込めば審判の一撃で相手を切り裂き、自らの不浄をも拭い去ってしまう。
相手の数が減れば、怒りを滾らせたグリーンオーガが衝撃波を放つ。
「ヨクモ、ワレラノスミカヲ……!!」
それはあくまでモンスター視点の主張。実際に鉄帝の民は彼らに襲われているし、鉱山夫も迷惑している相手。慈悲など与えようはずもない。
錬が今度は式符から鍛造した氷の薙刀を突き出し、さらに切りかかると、グリーンオーガの体のところどころが凍り付く。
早々にコボルトが倒されたことで、グリーンオーガは鉄槌でイレギュラーズを叩き潰そうとするが、皆、その討伐の為にと攻撃集中して。
迅は自身の安全装置を外し、激しい殴打を見舞って硬いはずのオーガの皮膚をも傷つけ、血を流させる。
「さすがに1人では辛い相手だったろうが……」
イレギュラーズの強さを肌で感じながらも、アリスは焔纏った槌で相手の体を叩き潰しつつその上半身を燃え上がらせて。
そこに雪之丞が両手の夜刀に禍々しい闇と呪いを纏わせ、緑の肌を一閃する。
「グオオォォ、オ、オノレェェ……」
悔しそうに口から衝撃波を吐き出しながらも、崩れ落ちるグリーンオーガ。
皮肉にもそれによって天井が落盤し、そいつは岩の下敷きとなってしまった。
「コボルト……逃がしません」
その落盤からも逃れ、巣窟の方へと逃げようとした1体へとオリーブが肉薄し、長剣でその体を真っ二つに切り裂いて見せたのだった。
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残るコボルトを掃討し、2班は合流する。
「後は敵が残っていないか入念に調べましょう」
このタイミングでオーガが残っているとは考えづらいと迅も考えていたが、コボルトくらいは潜んでいるかもと考えたのだ。
仮に残っていれば、鉱山夫達の仕事に支障も出る。オリーブもまた生き残りがいないかと坑道側、巣穴の向こう側の入り口方面とチェックしていく。
落盤もあり、メンバー達は一旦外から回り込んで確認を行っていたが、新たなモンスターが鉱山へと入り込む可能性が減ったのは結果オーライというべきだろう。
生き残りがいないことを確認した一行は坑道を通って外へと出て、鉱山夫達へと事後報告を行う。
「おお、お疲れさん。大したもてなしはできないが、休んでってくれや」
彼らは詰所へとイレギュラーズを案内し、茶菓子を振舞ってくれる。
それらを口にするメンバー達の興味は、やはりアリスへと向いて。
「ラド・バウの興行を考えれば極端な武器もアリだとは思うがな、俺はシンプルな機能美の方を優先するなぁ」
幅広い物品の鍛冶を行う錬としては、迷工とも言われるアリスの鍛えた品に一定の理解は示すが、自分の主張もしっかりと行う。
「そうか、物は試しだと思っているのだがな」
アリス自身は元々亡くなった夫の稼業を手伝う形で始めた鍛冶とあって、別の武器などにも興味を抱いてしまうのだとか。
その後、彼らは鉱石についても語り合う。
とんでもギミックに耐えられる武具は鉱石の違いもあるのだろうかという錬の疑問に、アリスは混沌固有の鉱石や、彼女愛用の火槌による独特な鍛え方などを指摘していたようだ。
「しかし、竜というのはどこに居ても存在感があるでありますね」
その話の合間を見て、アリスの戦いぶりをエッダが褒め称える。
混沌の竜は何をしているのかは知れぬが、それでも、やはり元は竜であったアリスだ。人であるエッダが強い関心を抱くのも無理はない
「できるなら、本来の姿で戦ってみたいものだがな……」
そんなエッダに、アリスは本来の姿で戦えないのを少し残念がっていた。
「待っていてください。必ず、ラド・バウにて、貴方のいる場所まで追いついて見せますから」
それでも、のんびりとお茶を元にしていた雪之丞ではあったが、アリスの強さを肌で感じて。
「その時は、全力でお相手。願えるでしょうか」
「ああ、約束しよう」
アリスと交わした約束に雪之丞は気を良くし、口へと放り込んだ茶菓子を美味しそうに食べていたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは悩みましたが、内部の構造把握や作戦の立案などを行ったあなたにお送りいたします。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
鉱山で確認されたモンスターの一団の討伐を願います。
●目的
鉱山に現れるモンスター討伐で腕試し
●概要
鉱山の坑道奥にある横道はモンスターの巣窟となっているようです。
その情報提供をしてくれたアリスと共に、腕試しへと向かうことになります。
●敵
事前情報として、確認されているモンスター達です。
手練れの鉄帝の闘士達から隠れつつ、近隣で悪さも行うことが確認されています。
○グリーンオーガ
体色が緑色のオーガ。身長は2.5mほどあります。
並々ならぬ筋力で直接殴りかかってくる他、冒険者が担いでいたと思われる2m程ある鋼鉄製の大金槌を獲物ととして力任せに振るってきます。
また、口から衝撃波を放つことあり、遠距離に下がったからといって油断なりません。
○ブルーオーガ
体色が青いオーガ。こちらも身長は2.5mほど。
見た目に似合わず炎、冷気、雷と魔法を操る他、仲間達の回復、治癒も行うことができるようです。
冒険者の持っていた青銅製の錫杖を手にしており、近距離ではそちらを使って殴りかかってきます。
○コボルト×10体程度?
2体のオーガに服従する部下達です。数がどれくらいいるのかはわかりませんが、鉱山夫の証言からある程度の数は判別がついています。
咆哮して相手を竦ませ、色々な成分を含む毒の塗られた長剣と盾を使って器用に戦ってきます。
●NPC
○アリス・メイル
鬼桜 雪之丞(p3p002312)さんの関係者です。
20歳前後の見た目をした赤髪ツインテールの旅人女性。既婚者。
実年齢はすでに100を超えている火竜で、ラド・バウにも時折出場する闘士です。
また、普段は鍛冶師も営んでおり、闘士用の武具の制作、整備も行っているようですが、扱いに困るような武器を作る迷工としても知られます。
戦いとなれば、愛用の炎槌を使って相手を叩き潰すだけでなく、その炎を生かして相手を燃やすこともあるようです。
作戦はローレットに一任するとのことですが、できれば友人である雪之丞さんと同じ班として戦うことを希望しています。
●状況
到着は昼過ぎくらい。そこから事前調査がなければすぐ突入となります。
普段、鉄帝の鉱山夫らが使っている鉱山の奥、そこにある通路から抜けた先はモンスターの巣と繋がっていたようです。
鉱山に空いた穴から攻め込んでも、奥にある外の出口から逃げてしまうようです。この為、鉱山側と入り口側から同時に攻め込む必要があります。
ただ、内部の広さ、状況は不明ですので、多少幅を利かせて戦略を練る必要があるでしょう。
事後は鉱山の外で待機していた鉱山夫に状況報告後、彼らに茶菓子をもらって一息つくことができます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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