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シナリオ詳細

あかず【きん】と不器用なオオカミ

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●獣の乾き
『赤ずきん』が組織に入った時、俺はすぐに死にそうな奴だと思っていた。
 吐きそうなほどメルヘンな名前のコードネームで呼ばれようと、ニコリともしねぇ愛想ゼロの顔。
 仕事の帰り際には返り血で染まりあがるパーカーのフード。
 
 何もかもが気に食わねえのに、やたらと目につく。
「そこで寝ないで、ウルフさん」
「あぁン? 俺の勝手だろうが。食われてぇのか赤ずきん!」
 俺の方が年上で先輩だってのにズバズバものを言いやがる。
「……風邪、ひくと思ったから」

 なのに――どうして、俺の胸はこんなにも苦しい?
「てめぇババァ! 今なんつった?!」
「赤ずきんを殺しなさい、と言ったのです。……ウルフ。貴方にはいずれこの暗殺組織を継いでいただきます」
「それと赤ずきんに何の関係があるってんだよ! ブチ殺すぞ!!」
「それです。貴方は赤ずきんを意識しすぎている。好意はやがて弱みとなり貴方を屠る牙となりえるでしょう」

 ガウン!! と銃声がひとつ部屋に響く。
 コードネーム『グランドマザー』――暗殺組織の長たる彼女が部下の凶弾に倒れた事により。
 組織に激震が走った事は言うまでもなく。

「……はぁ、はぁ…っ」
 走る。走る。薄暗い森の中、足元の花を踏み越えて。
 俺は今や、組織に追われて命からがら逃げるだけの負け犬だ。
 差し向けられる追手は馴染みの顔が多く、銃の引き金を引くのがこんなに重いと感じたのは子供の頃以来の事で。

「これが"赤ずきん"という物語の真実? 随分とねじ曲がっているな」

 ふと、すぐ横に新たな気配を感じて飛び退る。銃口を向けられようと、突然現れた女は平然とした顔だ。
「君に危害を加えるつもりなら、とっくに殺しているよ」
「そんなら今から試してみるか? あぁン?」
「援軍の僕まで殺すなら、君もいよいよ狼ではなく狂犬という訳だ。……コードネーム『ウルフ』。君の物語を救いに来た」

●オオカミ青年救済
「――さて、集まってくれたね、特異運命座標諸君」
 所変わって、境界図書館。案内人である神郷 黄沙羅(しんごう きさら)は床にしゃがみながら淡々と話を続けた。

「今回の依頼は戦闘だが、依頼主が我儘でね。ふたつばかり頼まれて欲しい。
 ひとつ、命を狙われている『ウルフ』という依頼主を守り抜くこと。
 ふたつ、襲撃者である『赤ずきん』という少女を生け捕りにすること」
 
 黄沙羅の足元でウィーンと機械の駆動音が絶えず鳴っている。
 手にした花の花びらを一枚一枚丁寧にちぎり、ロボット掃除機の前へ落としているのだ。
 何をしているのかと問われれば、彼女はしれっとした真顔で答える。

「ただのゴミより花びらの方が美味しいのではないかと思ってね。……彼はゴミばかりの偏食家だから」

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 あかずきんには機関銃とか持たせたい派です。

◆目標
 物語を終わりに導く

◆場所
異説『赤ずきん』の異世界にある夜の森です。
 赤ずきん達を迎え撃つのは、月の光が降り注ぐ花畑。足元には名もなき花達がそよそよと心地よい風に揺れています。
 視界や足場のペナルティはありません。

◆敵情報
『赤ずきん』
「裏切り者は殺します。……必ず」
 コードネーム『赤ずきん』の女の子。暗殺組織に所属する暗殺者です。外見は10代後半に見えます。
 カジュアルなパーカーとホットパンツ、スニーカーを好んで着ています。
 重たいチェーンソーを軽々と担ぐ豪腕の持ち主で、至近~近接戦闘が得意で出血の技をくり出します。

『ハンター』
「未だ実感がわかないよ。まさか『ウルフ』が裏切るなんて」
 赤ずきんと同じ組織に所属する青年。外見は20代前半くらいで、黒いスーツを纏っています。
 中距離からライフルで狙撃してくる他、飼っている猟犬達の指揮をとり支援をするようです。
 ウルフとは組織の中でも切磋琢磨しあう良きライバルであり、赤ずきんへ思いを寄せ合う恋のライバルでもありました。

猟犬×18
 ハンターに訓練された猟犬達です。主人の指示に忠実で、鼻もきく優秀な狩猟者でもあります。
 戦闘では至近に噛み付く、ひっかくなどの出血の攻撃をかけてきます。


◆その他登場人物
『ウルフ』
 目つきの悪い20代前半くらいの青年。所属していた組織を裏切りボスを殺したため、追っ手に追われ続けています。
 口は悪いが根はいい奴で、赤ずきんに密かに恋心を抱いていました。銃の射撃力をかわれアサシンとして活躍していたのですが、
 組織を抜けてからは拠り所がなく、交戦し続けた結果、得物の残り弾数は1発のみになったのだとか。
 今回の護衛対象です。

『境界案内人』神郷 黄沙羅(しんごう きさら)
 謎多き女性の境界案内人。男装の麗人で、白い中折れ帽と白いジャケットがトレードマーク。
 ポーカーフェイスの奥底には何か秘めた思いがあるようで、特に鉄板の物語から少し逸れた『異説』の世界に強い執着があります。
 仕事の傍ら、魔術師グリムという人物を探し、異世界を渡り歩いています。

◆備考
 依頼をかけたのはウルフですが、彼らの未来は特異運命座標に委ねられています。
 依頼通り赤ずきんを生け捕りにして、二人のわだかまりを解いてあげるもよし、ハンターに肩入れしてウルフを殺害してもよし。
 全員暗殺者である以上、殺される覚悟はできています。

 ただし、パーティーメンバー全員がバラバラに意見を通そうとすると上手くいかない可能性が高いため、出発の前にどうしたいか方針を相談しておく事をオススメします。

 説明は以上となります。それでは、よい旅路を!

  • あかず【きん】と不器用なオオカミ完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年04月30日 22時00分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛
長谷部 朋子(p3p008321)
蛮族令嬢
首塚 あやめ(p3p009048)
首輪フェチ

リプレイ


「言っとくが、俺はアンタらを信頼してねぇ」
 群れる事に疲れた男は何処までも一匹狼だった。同じ釜の飯を喰らった仲間をエゴのために殺し続け、こんな痛みを背負うならば弱い仲間は必要ないと、特異運命座標を巻き込むまいとする様で――手負いながらも眼光鋭く威嚇する様は痛ましい。
「すまない、私の交渉不足だ」
 謝る交渉役の黄沙羅を咎めず『蛮族令嬢』長谷部 朋子(p3p008321)がウルフの前に出た。
「なんだァ、てめぇ」
「あたしは朋子! ウルフさん、惚れた女のために全てを捨てるなんてちょーかっこいいじゃん!
 だから応援させて貰うよ。言っておくけど、この場の全員強いから!」
 二人の間で威圧と威嚇の応酬が始まり、バチバチと散る火花。
「グルルル、ワウッ!」
「ネアン、デル、タールッ!!」
「……! チッ、好きにしろや」
「待ってください、今の叫び合いで何に納得したんですか!?」
 その場の疑問を『しろがねのほむら』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)が代表して口にしたが、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は首を緩く横へ振る。
「争いは同じレベルの者同志でしか発生しない……奴らにだけ通じる何かががあるんだろう」
「もっともらしい事言ってますが、世界さぁん。細かい所をツッコんだら面倒くさいとか思ってません?」
 的確な返しをしたのは『首輪フェチ』首塚 あやめ(p3p009048)である。
「……何でわかった?」
「クヒヒ。そりゃバディも組んだ事のある仲ですから♪」
 ところで首輪はいかがです? と怪しいデザインの首輪も持って迫られて、世界はひたすら牽制に回る。
 仲良く喧嘩しはじめた2人から視線をそらし、ウルフはじっと睦月を見た。
「この中じゃ一番線が細そうだが……くたばるなよ」
「ご心配ありがとうございます。でも、僕は大丈夫です」
 かつて報われない恋があった。例えどれだけねじ曲がり、周囲に仲を引き裂かれようと……愛があれば、奇跡は起きた。
「僕は貴方を応援しますよ、胸に愛がある限り」
「よーし、そうと決まったら、みんな……張り切っていくよー!!」
 朋子のかけ声におー、とテンションばらばらの合いの手を入れ、特異運命座標が準備を初めたその瞬間――
 猟犬のアギトが、あやめを穿った。


 組織の誰もが僕とウルフを並べ立て、ライバルだと盛り上がる。
――惨めだった。ぶつかってきた僕は、本当の実力を知っていたから。
『野外の言葉に振り回されんな。お前は俺にねぇ物いっぱい持ってるだろうが』
「……」
「ハンター、震えてる?」
「武者震いさ。行こう赤ずきん」
 ウルフは既に弱った獣だ。おまけに手数はこちらが有利。まずは猟犬達をけしかけて――

「いいですねェ滾りますねェ! この首輪!」
「な、っ……!?」

 ゾクン、とハンターの背筋が震える。撤退の命令を口にする前に何匹かの猟犬が跳ね飛び、キャインと悲鳴をあげた。
「もっと私に良く見せてくださいよォ! そして出来れば私に首輪チョイスさせてください。
 飼い主である貴方にだって極上のものを選んであげますから! さあさあさあ!!」
 あやめの挑発にのり、猟犬達は再び彼女へ群がり始める。予想外の援軍にハンターは驚くばかりだったが、聡い彼はすぐに気づいた。
……これは囮だ。
「お前達、退くんだ! 僕達の目的を忘れるな!」
「いいえ退かせませんとも。ねえ世界さん?」
「馬鹿、俺が援護する前につっこんで行くな!」
 奇襲返しのH・ブランディッシュから防戦一方、多勢をブロックしようと立ち回るあやめへ、遠方に待機していた世界が片手をかざす。
 己が調和を賦活の力へ変換し、放たれる癒やしの力は彼女の身体を癒やしきる。
「襲撃者を生け捕りにしろだなんて、これまた中々に無茶な要求をしてくれる」
 おまけに惚れた相手が豪腕でチェーンソーを振り回す少女ときた。そんな傑物を好きになるとはこれまた物好きな奴だと世界は思うが、他人の恋路に外野が口を挟むのは野暮というものだ。
「ハンターとやら、すまないがこれも仕事だ。――"染まれ"」
 虚空に描かれた白蛇の陣が蠢き猟犬へ牙を剥く。焦りながら応戦しようとするハンターに静かな声が降る。
「そのまま2人を引きつけていて。ウルフは私が」
「駄目だ赤ずきん、君はウルフの事を……」
 ハンターの制止を振り払い、微笑みを残して走る赤ずきん。両手に持ったチェーンソーが唸り出し、ウルフに向けて斬撃を放とうと振り上げて――
「やらせないよっ! とぉりゃああーー!!」
 凶悪なる一撃を棍棒が受け止めた!
 侮るなかれ、『原始刃 ネアンデルタール』は神器である。たとえノコ刃に削られようと決して折れる事はない。
「どんな強烈な一撃だって……気合があれば、耐えきれるっ!!」
「想いだけで戦えるなら、私は絶対に負けない!」
 ウルフは息を飲んだ。いつも感情の起伏の薄い人形じみた赤ずきんが――泣いている。
「邪魔しないで! もう終わりにするの。これ以上、ウルフさんが傷つくのを見たくない!」
「赤ずきん……」
「だから私は、この刃で……命を抉ると決めたんだッ!!」
 殺す事しか知らない少女に救う術は限られた。そこが悲恋に嘆いた赤ずきんと睦月との絶対的な"差"だ。
「決意の強さは受け止めます。けれど、成就させる訳にはいきません!」
 ヒュキィン! と鋭く空間が凍る音が響く。睦月の放ったピューピルシールは赤ずきんの足を確かに捉えた。
 片足の力を封じられ、ぐらつく赤ずきん。その隙を見逃さず、朋子はチェーンソーを弾き返す。
「ナイスアシストだよ、睦月ちゃん!」
「朋子さんとデルさんのおかげです。とりあえず襲撃合戦はこちらの勝ちですね……いきなり死角から襲ってくるなんて」
「これだから暗殺組織って陰気臭くて嫌なんだよねー。まぁあたし暗殺組織なんて今まで見たことないんだけど」
「初めてなんかい。……気を緩めるなよ。敵はまだやる気みたいだからな」
 世界の支援を受け、朋子がまた立ち上がる。
 その隙間をぬって睦月が猟犬を気絶させ、数を減らし――猟犬の攻撃を一手に引き受けていたあやめが反攻撃で払いきる。
 巧みな連携と立ち回りに、赤ずきんとハンターは次第にジリ貧になっていた。
 血が沸き立ち、感情を押さえきれないウルフが立ち上がる。その腕を掴み引き止める黄沙羅。
「特異運命座標がどんな気持ちで戦っているか、君も分からない訳ではないだろう?」
 ギリ、と奥歯を噛む音が響いた。


「僕の猟犬達を殺さず全て気絶させるなんて、やるね君達」
「このまま続ければ、あなたは僕たちに倒されるのが関の山。どうか組織に戻り、ウルフさんと赤ずきんさんは死亡したと伝えてくれませんか」
 持ちかけられた交渉にハンターは目を細めた。すでに己は満身創痍。配下にも頼れないこの状況。暗殺者であるならば引き際を考えておくべきだ。
「睦月さん、だっけ。貴方の提案はありがたいけど、暗殺者である前に僕も男だ」
「ハンターさん、やはり貴方は……」
 そこから先は撃ち合いだ。殺意を込めた弾丸とヴェノムジュエルが乱れ飛び、激しい攻撃の応酬が足元の花の花弁を散らす。
 やがて互いに構え合い、悟る。――次が最後の一撃であると。
「赤ずきんの隣に立つのは、この僕だぁっ!」
「僕だって負けません、帰るべき場所がある限り!」

 銃声。硝煙が立ち上り倒れ伏す影。最後まで立っていたのは――睦月だった。

「ハンター……?」
「ほらほらっ、よそ見してる場合じゃないよ!」
 朋子の攻守兼ね備えたバトルスタイルに赤ずきんは苦戦していた。おまけにこちらが肩で息をしようと、彼女は未だピンピンしている。
「なんて持久力。恐ろしいわ、ネアンデルタール・レディ」
「世界君の回復と相性バッチリだからね! それより、ハンター君が倒れたみたいだよ。まだやる気なの?」
「そうだそうだ、投降しろー。そして俺に楽させろー」
 本音ダダもれな世界を赤ずきんがギッと睨みつけた。多勢に無勢。朋子が彼女の攻撃をさばいているうちに包囲網が出来ている。
 体力の消耗も激しく、これ以上闘うのは得策ではないのかもしれない。
「それでも、私は……前に進むんだぁっ!」
「そうですか」
 ヒュ、と風を切りあやめが拳を振り下ろす。赤ずきんの死角から背後を捉え、もはやその一撃は避けきれないものとなった。
 赤ずきんがぎゅっと目を瞑る。しかし、鈍い音とともに倒れたのは――
「ウルフさん!? ぁ、嫌……! いやあぁぁーーっ!!」


 赤ずきん。奴の事が気に食わねえ。だが――いい女のために死ぬのは、悪くない。
「そう思ってたんだが、まさか『不殺』の一撃とはな……いい腕だ特異運命座標。いてて」

 赤ずきんを庇い、ウルフが受けたトドメの一撃はノーギルティ。
 慈悲を帯びた一撃が、彼の命を繋ぎ止めた。

 そして生きているのはもう一人。
「ハンターさん、見ているだけでいいんですか?」
「ありがとう睦月、もういいんだ」
 命を張って好きな人を守る意思。ウルフなら或いは、赤ずきんを幸せにするかもしれない。

「僕の負けだよ」

「私は貴方を殺す事しか出来ないのに、どうして助けようとしたの?」
「そりゃ、惚れたからな。……愛してる、赤ずきん」

 ウルフが紡いだ本当の気持ちが赤ずきんの殺意を溶かす。
 倒れたウルフを抱き上げて、彼女はわっと子供のように泣きじゃくった。

「あの様子だと、裏社会から足を洗う感じになるかもな」
「大変かもしれないけど、がんばれハンサム!!」
 様子を伺っていた世界と朋子も肩の荷が降りる。帰り支度を始める特異運命座標。その中であやめは、黄沙羅の曇った表情に気づく。
「この世界も魔術師グリムさんに歪められた物でしたか?」
「時々ね、思うよ。もっと早くに特異運命座標と会えていたら、僕の故郷も救われたのかもしれない」
 彼女は境界案内人であり復讐者だ。反撃の牙は未だ、標的に届かない――

成否

成功

状態異常

なし

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