シナリオ詳細
もふもふのひだまり
オープニング
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「へえ……?」
首を傾いだのは『光彩の精霊』イヴ・ファルベ(p3n000206)その人である。
ラサ傭兵商会連合の代表として『凶頭』ハウザー・ヤーク(p3n000093)を連れて深緑との国境沿いの視察を行うと決めたファレン・アル・パレスト(p3n000188)からヘルプの声が掛かったのはつい先程のことである。
「全く以て、恐ろしい話だが、ハウザーは毛並みの手入れをしていない。そしてこの顔――幻想種はさぞ怖れることだろう……。
イヴ、分かりますね? 貴女も髪の手入れは聞いて置いた方が良いでしょう。フィオナは……あまり教導には向きませんか」
肩を竦めたファレンにイヴはこくりと頷いた。
そもそも、ハウザーは毛並みを整えても『可愛く』なる事は無いだろう。幻想種だって見れば驚いてしまう気がする。
勿論、イヴだって怖かった。
女! 酒! 金! と豪語する獣種傭兵団のTOPだ。イヴと相対した際にじろりと見て「ガキだな」と笑ったこともよく憶えている。
(……だって、頭からばくっといかれちゃうかと思った)
実際はガキは守ってやる。女なら危険を教えてやる。と、悪人面でも悪人ではないハウザーの心配りであったのかもしれないが――
(……私はハウザーが怖くないことを知ってる。けど、初対面の幻想種だったら屹度怖い。
誰に、教わるんだろう? 髪の手入れ、とか……ハウザーの毛並みの手入れとか……)
悩んでいたイヴの元にファレンが招致したのは彼女にとっても『いつものお助け人』であるローレットであった。
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「ハウザー様の、毛並みを……? ええ、確かに、ごわごわしていて、毛玉になっているけれど。
これを『どうにか』するのが今回の任務だというのですね。手強そうだわ……ううん、ファレン様のお願いだもの、頑張らないと」
そうやる気を漲らせたのはエルス・ティーネ (p3p007325)であった。『髪フェチ』であるエルスはラサ国内で髪にまつわる依頼をこなすことも多々あるらしい。
商家の令嬢であるココ嬢の髪を手入れしドレスの宣伝を成功させたことはファレンも耳にしていたのだろう。
「顔が怖く、毛並みも悪いからこそ手入れを為て欲しい、と。顔はどうしようもないのでは……?」
エリス曰く、仕事に行こうとしたら偶然其処に立っていた事でラサまで連行されてきた浜地・庸介 (p3p008438)は悩ましげにそう呟いた。
「私も、そう思う。けれど、ハウザーの毛並みは悪いでしょう……?」
「確かに……」
「だから、どうにかなるなら、綺麗でふわふわで石鹸の匂いにしたい。絵本の獣は太陽の匂いがするらしい。
けど、ハウザーは……なんていうか……違う。ファレンは清潔な匂いがするけど、ハウザーは……ええと、か、」
「か?」
ごそごそとメモを見直したイヴは「加齢臭?」と首を傾いだ。今まで大人しく座っていたハウザーの表情が凍りイヴを凝視する。
「そう言うって聞いた」
「誰にだ!?」
「…………」
「ファレンか!?」
――ファレンがこう言えばハウザーに聞くと考えたのだろう。幼児の姿をしており、ハウザーも可愛がって居る精霊種の娘の一撃が彼の心のパンドラを無残に砕いた。
「ハウザーの匂いは、さておき。イヴの髪の手入れも、と聞いたが」
髪と言えばこの人、とエリスが豪語するエクスマリア=カリブルヌス (p3p000787)はこてんと首を傾げる。
鮮やかな藍色の髪を持ったイヴは「そう、髪の手入れ、分からなくて」と肩を竦める。折角ならばオシャレもしてみたいという乙女な心を抱いている。
「それじゃあ、ハウザー様の毛並みを綺麗に整える所から始めましょうか」
そう宣言したエルスが手にしていたのは『ファレンの手紙』であった
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急なお願いになり申し訳ありません。
皆さんもご存じの通り、イヴはファルベライズ遺跡の守護者です。ファルベリヒト亡き後、彼女は精霊種となりました。
彼女は常識も知らず、普通の女の子には程遠い存在です。
ですが、普通の女の子として過ごす方法を多少教えて遣ってはくれませんでしょうか?
ハウザーの剣が終わった後で宜しければ、イヴをドレスアップしてささやかなホームパーティーを致しましょう。
――ファレン・アル・パレスト
- もふもふのひだまり完了
- GM名夏あかね
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年05月09日 22時03分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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「……しかし、何故ハウザー君なのだ?」
ラサと深緑の交流のために――その為に凶悪なかんばせをしたハウザーの外見をある程度、『なんとか』する依頼が遣ってきた事を聞いた『赤と黒の狭間で』恋屍・愛無(p3p007296)の第一声はそれであった。
「……幻想種との接見が予測されるなら、もっと相応しい者も居たのでは、とは思わずにはいられない。
イヴ君との会話を聞く限り、女心を始めとする対人スキルが著しくかけているように思われる。イルナス君とかダメだったのだろうか。適任という気もするのだが」
「イルナス、どうしても、忙しいらしい。ハウザーしか居なかった」
そう肩を竦めたイヴに愛無は「それならば仕方が無い」と頷いた。仕方が無い以上に、そのお陰で『楽しく』なりそうなのは確かである。
ハウザーとイヴのヘアケアを担当することとなったイレギュラーズの中では偶然、ラサに向かう途中に拿捕(?)された『凡骨にして凡庸』浜地・庸介(p3p008438)の姿も存在した。
偶々鉢合わせだけである庸介はどうしてここに居るのか分っていない。面識自体も少ないが、連行されたときに暇であり、これも『仕事』なのだというならば断る理由もないのは確かだ。流れ流され、ここに居る――が。
「否そもそも俺にファッションセンスを求められても困る。エルス殿もそう思わないか?」
「どうかでしょう?」
意見をハウザーへと求める『竜首狩り』エルス・ティーネ(p3p007325)は楽しげである。『髪フェチ』であるエルスは自身が予想していなかったメンバーの髪の手入れが行える事もあり張り切っている。大して、意見を求められた側のハウザーは「お前等にセンスなんざ求めてねェよ」とそっぽを向いている。先程、イヴに「加齢臭っていうの?」と誰ぞの入れ知恵で『余計な事』を言われたことがショックだったのだろう。
「まさかハウザー様を手入れ出来る機会が訪れるなんて…ふふふ!
気合い入っちゃいます。ああ、大丈夫です、ちゃんとカッコよく仕立てますよ?」
「……」
本当か、と伺う視線が何とも愉快である。『月夜に吠える』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)は気落ちしているハウザーの傍らにどすりと腰掛けた。
「おうおぅ、お前さん、こないだのラサの件で暴れまわってたお偉いさんだろ?
獣種の顔張ってんならよ、ちったぁ小綺麗にしろよ。てめぇの毛並みだろ? 加齢臭はさすがに言い過ぎだがよ。ミドル脂臭って、知ってるか?
毛並みと臭いがよくなりゃ、嬢ちゃんが抱き着いてくれるかもしれねぇぜ? 『ふわふわ』『いい匂い』ってよ」
ルナの言葉にハウザーの頭の中には『存在しない記憶』が流れていた――
「ハウザー、ふわふわ、良い匂い」
そう言ってイヴがもふもふと自身にしがみ付いてくる。背後では何故か悔しげなファレンとレオンが立っている。
良い。悪い気はしない。
「よしよし、どうか気を落とさないで下さい。
きっと私達が、いい匂いでキューティクルなサラサラハウザーにしてあげますから」
「俺でもなるのか?」
やる気が溢れている、と『砂漠の蛇』サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)はハウザーを見遣ってから小さく笑った。どうやら、ルナの言った『イヴにふわふわしていると喜んで貰える』という状況が彼にとっては良かったのだろう。
「みんなでハウザーさんとイヴさんをおめかししてあげるんだね! みんなで力を合わせて、お二人を素敵な姿にしてあげちゃおうねー!」
頑張ろうと櫛を手にした『一番の宝物は「日常」』セリカ=O=ブランフォール(p3p001548)に『金色のいとし子』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)がこくりと頷く。
着飾ることは『希望の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)達に任せておけば良い。髪の毛の手入れを教わるとしか聞いていないイヴは「素敵な姿」と首を傾げた。
「ほうほうイヴちゃん……精霊種で、おしゃれに興味がある。これは私が出なければ! えっと、じゃあまずはファッション誌を持って行こう!」
きゅぴーんと閃いたアリアは百科事典クラスに分厚いファッション誌を手にして微笑んだ。
エルスを一瞥、それからイヴは「よ、宜しくお願いします」とおずおずと頭を下げたのだった。
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ハウザーの様子を見るに彼は粗にして野でも卑ではないことが見て取れる。俄然やる気になっているが、真摯に遣ることを伝えれば暴れたがることも出来る限りは抑えられるはずだ。
「イヴを可愛がっているようだし、それなりに慕われても、いるよう、だ」
エクスマリアの言葉に庸介は確かに、と頷いた。一度は頼まれた仕事だ。確りとこなしたいとは思うが、風呂に入ることも拒絶しそうな彼をどうにか説得しなくてはならないのだ。
「ハウザー殿、一度風呂に入って貰えないか。裸の付き合いは万能だが、汚れは落とした方が良い」
庸介の提案に「風呂だァ?」とあからさまに拒絶するような表情をしたハウザーに「嬢ちゃんのためだろう?」とルナが揶揄う。
同じ獣種として冷やかし半分、そして、酷い毛並みに苛立つ気持ちが半分。粗雑に見えて獅子としての毛並みの手入れは確りしているルナはぴかぴかシャボンスプレーを持参していた。
「まあ、一度風呂に入った方が良いのは確かだな」
「……」
どうしてもか、とでも云う様にハウザーがルナと庸介を睨め付ける。その視線に怯むようではこの『仕事』は務まらないのかと庸介は成程と肯いた。
「ええ、どうしてもですよ。……ほら、この状態では櫛も通らない。
話に違わず荒れた毛並みですね。まずは戦場で付いた汚れから綺麗にしたほうが良いかも知れませんね。シャンプーとコンディショナーを持って来ましたから……」
「……風呂、行ってくる」
周りにそう言われた事で渋々重い腰を上げたハウザーだが……サルヴェナーズは驚いたように「えっ、自分で洗う?」と首を傾いだ。
「駄目です、洗浄が不十分だから、今のようになっているのでしょう。
大きい分、犬よりも洗い甲斐があります。終わったらご褒美にお肉をあげますからね」
肉――に少し気を取られたようだが拒絶を続けるハウザー。一先ず一度自分で風呂に入ってから女性陣に任せる事で手を打った状態だ。
だが――
「ああ、ほら。駄目じゃないですか。この様な毛並み」
「そうね……ハウザー様、駄目です」
サルヴェナーズとエルスのダメ出しにハウザーは何が駄目なのだと頭を抱えた。その様子を眺める愛無は「残念だが、こうなった女性という物は何よりも強いのだ」と肩を竦める。
「はーい、ハウザー様! こちらへどうぞっ。今回ばかりは私、思いーっきりやっちゃいますよ? ふふ、そんなに警戒しなくても……良くしてあげますから、ね?」
周囲を取り囲むイレギュラーズにハウザーが「もう良いだろうが!」と騒がしく声を張り上げる。
エクスマリアは表情を変えず目だけで「駄目だろう」と語っているかのようにも見えた。……その視線にハウザーが居心地悪くたじろいだ。
「髪は、女の命、というだけでは、ない。獅子や駿馬の雄々しき鬣のように、イワトビペンギンの飾り羽の様に。
男女雌雄の別なく、己の誇り、だ。その牙や刃と同じく、美しくも雄々しい毛並みでこそ、戦場で『凶(マガキ)』の名をより轟かせる、だろう……多分」
シャンプー(二回しっかりとシャンプーとコンディショナーで毛並みを整えてからオイルで保湿、ちゃんと香油も付けておきました)が行われて苦しげなハウザーを遠目で見詰めるイヴは凄いことになったと感じていたのだった。
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「私はアリアって言うの。おんなじ精霊種なんだよ! お耳はハーモニアみたいだけど……イヴちゃんの仲間、だね」
そう微笑んだアリアにイヴは「イヴです」と緊張したように頭を下げた。セリカは「イヴちゃんの髪の毛もしっかりと手入れしようね」と微笑んだ。
短く切り揃えてある髪をエルスに確認してか確りと手入れする。ハウザーと違ってイヴの場合は彼女の好みをしっかりと確認しての作業だ。
「エルスさんがシャンプーは二回って。さ、頑張ろっか!」
「……怖い?」
ハウザーの様子を見ていてそう思ったのだろう。セリカとアリアは顔を見合わせてから怖くはないよ」と微笑んだ。
ハウザーが苛立ち、愛無とルナ、庸介に暴れるから付き合えと叫んでいるのを横目に見ながら、エルスは「さ、次はイヴさんよ」と手招く。
「ハウザー様の場合は抵抗も凄いけれど……シャンプーはちゃんとやれば気持ちいいものよ。今回は二回だけど……ゆっくり丁寧にすれば一回でも大丈夫だから」
「一回でも良い?」
やり方を教わっておいで、とファレンに言われていたからだろう。エルスのレクチャーを真面目な表情で聞いている。そんな彼女が可愛らしく見えてアリアは「イヴちゃんなら直ぐに可愛く変身できるよ」と微笑んだ。
「……なんだか、違う匂いがする」
ふと、驚いた様子のイヴにエルスは「分かる?」と柔らかに微笑んだ。
「イヴさん、これどう? いい匂いでしょ? この前お仕事で頂いた香油なの。凄くいい香りだからイヴさんにも試してみたくて。気に入ったら後で商人さんを教えるわ!」
「え、え、」
良いのかな、とおどおどとするイヴは自分で上手く出来る自信が無いと不安げに小さな声音で呟いた。彼女は未だ人間としての生活にも疎い。出来れば普通の少女のように過ごして欲しいというファレンの心遣いだろうが、イレギュラーズを目にして少し不安がわき上がったのだろう。
「イヴ。髪の手入れは、まずは簡単なもので、いいだろう。
パサジール・ルメスの者達と同じ様に、出来るのが、いい。ある程度質の良いオイルで、丁寧に扱うこと、だ。
今日覚えたことを伝えたり、新たに教えてもらうのも、いい。整えるのも、飾るのも、心地よく楽しいことだと、教えよう。
……いつか誰かにも、同じ様にしてやれるように」
エクスマリアはそっとイヴの髪を撫でた。彼女の艶やかな髪のように、自分も美しくなれるのだろうか。そして、その『覚えたこと』を誰かに教えて上げられるときが来る――そう思えば、やる気も溢れてくる。
「イヴの髪は短め、だな。編み込んだり、装飾品を使ってみる、か」
「装飾……」
「ああ。そうだ、イヴ。このリボンをやろう。もう一つあるから、あとでハウザーにも結んでやるといい。お揃いに、なる。
嫌がられたら、じっと目を見つめ続けろ。少し涙も浮かべると、効果的、だ」
エクスマリアの言葉を聞いてイヴが真剣な表情で頷いた事を確認してセリカとアリアは耐えきれずに吹き出した。屹度、リボンを付けたサラサラふわふわハウザーがお目見えすることになるのだろう。
さて、早速の『ファッション』の時間だ。アリアの持ち込んだ本には載っていない服はない。そう豪語する彼女は洋服には困らなさそうだからと準備されている洋服を何でも着用してみようとイヴを試着室へと誘った。
「ドレス、メイド服、それともストリートファッション……パジャマ!」
「アリアさん」
「……え? 着せ替え人形にして楽しんでる? そそそ、そんなことないよ!」
震えた声でアリアがぶんぶんと首を振る。セリカがじとりと見遣ったその瞳に彼女は大慌てだ。だが、アリアはちゃんと『大事な事』もするよとイヴを鏡の前に立たせる。
「イヴちゃんはおめかししたら、まず誰に見てもらいたい? なんて声を掛けてもらいたい? そういう所からオシャレって始まって、色んな人が頑張っていくんだよ!」
「誰に……」
「誰に見てもらいたいか、イメージできた? 次は、その人が喜びそうな服を選んで……ふふ、お化粧も一緒。大切な人に褒めてもらえれば、次のやる気に繋がるよね!」
今日は、ハウザーで、明日は、ファレンで。そうやって毎日違う人に見て欲しいという気持ちだって十分だ。セリカは今日のパーティーに合う煌びやかで可愛い物にしようねと微笑んだ。
ラサのお姫様風のアラビアンテイストなものも良い。幻想風のフリル沢山のドレスを初めて多種多様なドレスをイヴに合わせて往く。袖の有無やトップスの構造、スカートの丈だけでもイメージは様変わりだ。
「あ、よかったら、これどうぞ! 私がしている蒼い鍵の首飾り、そのレプリカを渡してつけてあげるね! イヴちゃんがもっと友達ができて、もっと色んなアクセサリーで飾れますように」
アリアが此れに合う服でも良いかも、とアドバイス。イヴはセリカにエクスマリアが付けてくれたリボンとアリアの鍵に合うような、可愛いドレスが良いとそう求めた。
――白いドレスは煌びやかに。リボンと鍵を揺らして、ラサと幻想の二つの国を調和させたようなデザインは愛らしく彼女の体を粧った。
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「さて、それはそれとして、もふもふふぁんしーきゅーてくるにすれば良いのだろう。
思うに肉ばかり食べてるからダメなのでは無いだろうか。海洋では海産物にキャベツを食わせたりしているらしい。そうすると肉の臭みが取れるのだと」
愛無による『匂い講座』にハウザーが渋い顔をした。ルナが頷き、庸介も確かにそうだと追従する。サルヴェナーズはふわふわに仕立て直したハウザーの毛並みを確かめながら、俯く獣を見詰めていた。
「つまりハウザー君にも肉ではなく野菜を与えていれば、肉の臭み、体臭も根本から解決されるのではないだろうか。
そう思って、キャベツ料理を用意した。千切りキャベツ。ボイルキャベツ。ロールキャベツは肉が入るからダメ。野菜が9。肉が1くらいの割合で食べよう」
「葉っぱじゃねェか!」
「ああ。葉っぱだ。だが侮る勿れ。食物によって匂いが変わるのは確かだ。まぁ、それに匂いは左程気にせずともいいのではないか。悪くない匂いだ。実際、僕も腹が減った。ラサきっての実力者と『食事』の機会などそうはない」
再度の模擬戦を終えたらパーティーの用意をしようとハウザーに向き直った愛無が彼のストレスを発散させるように飛び込んだ。彼も模擬戦のつもりで全力ではない。それは少々気に入らないがそれも強者の特権だ。
ルナは自身と近しい存在であるとハウザーを見て感じていた。だが、獣種で自身より年嵩の先達。そして傭兵集団という”群れ”の長。
今回ばかりはイヴに振り回されている事で冷やかし半分もあるが、彼が『長たる者』であるのは模擬戦を見て居ればイヤという程に感じられる。
庸介は「そろそろパーティーが近付いているようだが」と声を掛けた。
エルスが「見て下さい、イヴさんもとっても可愛らしくなりましたよ!」とハウザーに『お披露目』を行うが、ハウザーは「悪かねェ」としか言えなかった。
「やはり、女性の扱いには長けていないようだが」
「テメェ!」
「……いや、野暮だな。止めておこうか」
首を振った愛無は「ハウザー君、君もめかし付ける良い」と彼へと着替えを促す。エルスはうきうきとハウザーの毛並みを再度整えるために彼を誘った。
「気付けばもうすぐパーティーですね。口紅とドレスは何になさいますか?」
サルヴェナーズをぎろりと見たハウザーに彼女は臆すること無くくすくすと笑みを零した。
「ふふ、冗談ですよ。イヴのところへどうぞ。怖がらなくても大丈夫。あれだけ頑張ったのですから、きっと褒めてくれますよ」
イヴに振り回される様子は矢張り可愛らしい。ルナは「お前さん、良い案があるんだが」と囁いた。獣種二人で変化してかっちり正装すればファレンとフィオナの面白い顔も見れるだろうという提案だ。
「渋カッコイイ姿を見せりゃ、イヴもカッコイイっていってくれるかもしれないぜ」
「悪かねェな。だが俺のスゲェ姿はテメェらだけの秘密だ」
悪巧みをする二人にエルスは「そう言えばハウザー様はあまり変化を使われませんけど……何か理由があったり?」と問い掛けた。
「コッチのがイケてんだろうが。慣れてねェんだよ。だから秘密だ。分ったな?」
「……ふふ、そうですね」
くすくすと笑ったエルスにそれはそれとしてルナとの『作戦』も悪くはないとハウザーはこそこそと何やら用意をして居るようである。
イヴに褒めて貰いましょうね、と彼の背を叩いたサルヴェナーズは何となく彼が自身から離れると寂しくなって来たと肩を竦める。
「こうしているのも何ですから、皆で美味しいものを食べて楽しみましょうか。私、ナツメヤシが良いです。可能であれば紅茶も頂けると……」
「サルヴェナーズさん、これ」
どうかなあ、と差し出すアリアにセリカが「こっちもいいかも」と取り分ける。
「これは何ですか? ナツメヤシのケーキ! 人の世には、このようなものもあるのですね。ええ、それでお願いします。ありがとう」
ホームパーティーはまだまだ始まったばかり。
庸介はエルスに『連れ回された』分、話し相手になって貰おうかと彼女へと提案した。
思い切り楽しみましょうと声を掛けたエルスがサルヴェナーズに「後ろを」と促される。
そうして、驚愕した表情で「ええ」と呟いたのは――ルナの作戦で『イケてる獣種』としてドレスアップしたハウザーがイヴのエスコートに現われたから……というのはまた別のお話である。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした!もふもふふわふわ良い気持ち、ですね。
GMコメント
夏あかねです。部分リクエスト!
戦闘ありません、模擬戦は出来ます! ラサで楽しく過ごすシナリオです。宜しくお願いします!
●成功条件(?)
・ハウザー様をもふもふにする
・イヴをドレスアップしてホームパーティーへ
●行動
ハウザーに対しては『毛並みを整える』『肉を与えて大人しくする』『暴れたがったら模擬戦で手合わせしてみる』事ができます。
イヴに対しては『お化粧や髪を整える』『ドレスアップ』を行う事ができます。
また全てが終わった後はファレンのホームパーティーへと参加が可能です。
●ターゲット『ハウザ-・ヤーク』
ご存じ獣種傭兵集団『凶』の頭領。獣種です。毛並みはごわごわ、傷んでいるし汚れもあんまり気にしない模様。
イヴが「ハウザーは良い匂いがしない」と云う程の……流石に彼女に(ファレンの作戦ですが)くさいと言われたのはショックだった模様です。
彼の毛並みをもふもふのキューティクルにしてやって下さい。
肉を食べさせれば大人しくなります。また、時々「暴れてぇーー!」と叫ぶので適度に模擬戦などしてやると喜ぶでしょう。
模擬戦ではとっても手加減してきます。本気は出しませんが、其れでも其れなりに強いです。
●ターゲット『イヴ』
ファルベライズ遺跡の守護者。現在はパレスト商家にご厄介になってる精霊種。外見は女の子です。性別は不明。
髪はショートボブですが、手入れの仕方やお化粧や可愛い服などにはご縁が無かったようです。
皆さんの指示には積極的に従います。全身コーディネートをお願いします。
●準備
・化粧品やヘアオイル等々備品は全て揃っています。
・ドレスなども皆さんの分もあります。是非、全員でお洒落してみて下さいね。
・その他必要なものもファレンにお願いすれば準備して貰えます。
●ホームパーティー
ファレンが準備したホームパーティーです。ラサでは有力商家で有るために、それなりの質の料理やデザートを楽しむことが出来そうです。
オアシスでの楽しい食事をお楽しみ下さい。ここでは、お好きなものをお好きなだけ! 勿論お酒もございます。
ここにはファレンがおります。パカダクラも居ります。イヴとハウザーも連れて行きましょう。
・ファレン・イル・パレスト
ラサの有力商家の当主。イヴのことは心配しており、皆さんと関わることで彼女が人らしくなればと望んでいるようです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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