PandoraPartyProject

シナリオ詳細

曙明けても未だ滲む

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 いたい、いたい。
 あの時はいたかったっけ? あんまり、覚えてないや。

 夜明けの近づく静謐な夜。だんまりを決め込んで空に淡く輝く月は、私にも、私を引っ立てていく男たちにも等しく光を注ぐ。
 けれど男たちにはそんな光に見惚れる余裕もないらしい。
「さっさと歩け!」
 背中をどつかれよろめく。その直後に辺りへさざ波立つのは恐れや不安だ。小声で囁こうと夜の静けさがそれを明瞭にする。
「おい、やめろよ。何かしてきたらどうすんだ」
「そ、そんなことできるわけねぇだろ」
「できるかもしれないから連れていくんだろうが」
(嗚呼……)
 どうやら町人の、というよりは男たちの自分に対する怯えがある一点を超えてしまったらしい。何も、していないのに。
 恐れながら連行する男たちによって、私は町から一番近い崖へと連れてこられた。その頃にはすっかり星も月も光を弱め、代わりに太陽の光が徐々に空全体を明るく照らしていた。白み、黄金に、そして燃えるような赤へ。
「今日は不気味なくらいに濃い赤だな……」
「魔女を殺そうなんてするからじゃないか……? 何かが起こるかも、」
「おい! 下手なこと言ってんじゃねえ!」
 後ろでひそひそと言葉を交わす仲間を一喝し、男が私を突き飛ばした。一瞬血の気が引くも、崖のギリギリで尻餅をつく。男はそれが気に入らなかったのだろう――あからさまに舌打ちして剣を腰から抜いた。
「自分で飛び降りろよ。そこから少し後ろにずれるだけだ、簡単だろ?」
「……私が、何をしたの」
 口を開くと後ろに控えた面々が情けなく小さな悲鳴を上げる。男の子分といったところか。しかし男は私の問いかけをはっと鼻で笑った。
「何をした、だぁ? 何もしてなくても害悪なんだよ! さっさと――死ね!」
 容赦のない一閃。反射的に後ろへと傾いた体が重心をそちらへ移す。
「あ、」
 子分たちも同じようにぽかんとしていて、それが無性に可笑しいと心の隅で思って。

 一瞬の浮遊感の後、私の身体は海面へ向かって急降下を始めた。



「焔さん! 先日の、曙の悪魔のことなのですが」
「何かわかったの!?」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)の言葉に炎堂 焔(p3p004727)は身を乗り出した。
 曙の悪魔。それは幻想のとある町で連続殺人犯として名を上げる魔種である。生存者が限りなく少なかったことからこれまで姿も定かでなかったが、イレギュラーズが交戦し、撃退させたことによってその正体が明らかになったのであった。
 前のめる焔に後ろへ引くユリーカ。彼女はすまなさそうな顔をして「ごめんなさいなのです」と続ける。
「まだ居場所は分かってないのです……が、別の事件が起きてるのです」
 その事件が曙の悪魔と関係ありそうだ、ということでユリーカは声をかけてきたらしい。焔が内容を聞くと、ユリーカは依頼書として整えられた羊皮紙を持ち出してくる。
「これなのです」
「ええと……魔物や人間の暴走?」
 文字に視線を走らせる焔。どうやら曙の悪魔はあれ以来出没していないようだが、代わりに魔物や凡そ正気でない人間が夜な夜な街を徘徊し、人を襲うようになったらしい。
「いかにもって感じだね」
「でしょう? 魔種の手先や狂気にあてられた人たちだと思います」
 昨日まで正常に見えていた人間までもが徘徊しているとなれば、そんな奇妙な事態に耐性のない町民たちは酷く動揺するだろう。イレギュラーズが奇妙な事態に慣れているとまでは言わないが、それでも踏んだ場数はケタ違いだ。
「それでもどうにか、自警団が奮起して少しずつ解決にあたっているのです。焔さんも、この依頼に参加される皆さんと一緒にお手伝いしてくれませんか?」
 これは魔種の時間稼ぎだ。しかしうまくいなしてしまえばこちらも居場所を探る時間が確保できる。これ以上の犠牲を広げないために、急いでの対策が求められるだろう。

GMコメント

●成功条件
 エネミーの撃退・撃破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。不明な点もあります。

●エネミー
・キュピーグル×3
 四つ足の大きな獣です。元々魔物だったモノが魔種の狂気によってより狂暴になったようです。
 黒い毛並みは闇によく隠れます。しかし月明りの下に出てくれば大きさも相まって見つけやすくなるでしょう。
 額に三つめの瞳があるようですが、その瞳がどのような力を持っているかは不明です。言葉を交わすような知能はありません。
 夜目が利き、素早い動きで攪乱してきます。また、通常攻撃に【復讐30】をもちます。

・狂気にあてられた住民×15
 魔種の狂気にあてられており、刃物や武器などをもって所かまわず暴れる住民たちです。比較的若者が多いです。意思疎通は難しいでしょう。
 攻撃力が非常に高く、常人とは思えないような力です。ただし動きはそこまで機敏でありません。
 彼らは不殺で倒せば正気に戻る『可能性があります』。いつから狂気に曝されていたのか分からない以上、絶対ではないでしょう。

●フィールド
 夜の街です。相変わらずどこもかしこも門扉は硬く閉ざされていますが、こんな状況でもエネミー・自警団関係なく外出している者はいるようです。それは時に酔っ払いであったり、どこぞに忍び込もうと言う悪人だったりします。捨ておいても構いませんし、何らかの対処をしても構いません。
 街は大通りとそこから伸びる路地で構成されており、そこまで入り組んだ経路はありません。ですが街自体はそれなりに広く、ただ走り回っているだけではなかなか見つからない可能性もあります。
 灯りとしては月が若干照らしてくれる程度です。暗視などがなくてもなんとか見える程度です。

●友軍
・自警団のメンバー×15
 一般人ですが、多少戦える町民たちです。3人×5パーティに別れ、巡回しています。
 3人でようやく狂気にあてられた人間1人を相手取れる程度です。しかし近くに危険が迫っていれば、彼らは町民を守る為に限界を超えてでも戦おうとするでしょう。
 友軍の生死はシナリオ成否に関係ありません。必ず彼らと遭遇できるとは限りませんが、遭遇できたならイレギュラーズの命令に従うでしょう。

●ご挨拶
 愁と申します。
 敵をどのように見つけるかも工夫が必要と思われます。街の被害を食い止めるべく、夜の街を駆けましょう!
 それでは、よろしくお願い致します。

  • 曙明けても未だ滲む完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月05日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

マルク・シリング(p3p001309)
軍師
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)
叡智の娘
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
ラヴ イズ ……(p3p007812)
おやすみなさい
ニーヴ・ニーヴ(p3p008903)
孤独のニーヴ
ヴィリス(p3p009671)
黒靴のバレリーヌ

リプレイ


(あの子が見つかったわけじゃなかったんだ……)
 『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は皆の武器や持ち物にギフトで灯りを付けながら考え込んでいた。
 此度依頼を出したこの街は、一度訪れたことがある。曙に行われる無差別殺人事件の犯人から住民を護衛する仕事があったのだ。

 ――明けの時間に人が死ぬのは、曙の悪魔に魅入られてしまったから。

 この街にはそんな噂が流れている。無差別殺人事件だと怯える者もいれば、曙の悪魔は本当にいるのだと信じる者もいる。いずれにせよ、死を恐れぬ者以外はしっかりと夜に門扉を閉ざすこととなっていたのだ。
 そんな曙の悪魔の正体は魔種。見た目は可憐な少女であったが、その強さはこれまでの魔種と同様に侮れないものであった。焔たちはそれを撃退することには成功したが、トドメをさすまでには至らなかったのである。
(あれから出て来てないって言ってたけど、狂気にあてられた人がこんなにいるなら遠くにはいっていないはず……)
 遠くに行ってしまったのなら、何の為にこんな事をするのだろう? その狙いが読めないのだ。
「魔種の狂気とは……洒落にならないものなんだね」
 『孤独のニーヴ』ニーヴ・ニーヴ(p3p008903)は周囲を見渡して呟く。窓も扉もぴったりと閉じられている家は正常なのだろう。この状況自体は正常と言い難いが。
 正気であった、或いは正気である罪なき人々を見殺しにするわけにはいかない。曙の悪魔を倒さなければ根本的な解決に至らないだろうが、まずは目の前のことに対処する必要がある。
「でも今なら狂気から戻せる可能性はあるんだよね」
「うん。もしかしたら、だけれど」
 『銀なる者』リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)の問いに焔は頷いた。絶対とは言えないから可能性という言い方だが、それでも一縷のそれをつかみ取りたいものである。そのためにも――狂気の深度が増すほど戻れなくなると言う――いち早い無力化が迫られるだろう。
「それじゃあ皆、よろしくね」
 焔はリウィルディアと『剣靴のプリマ』ヴィリス(p3p009671)、『汚い魔法少女』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)に声をかける。この4人でひとつのチーム、残る4人でもうひとつのチームだ。全員でまとまっての行動は敵がいれば早急に倒せるが、そうでなければ大きな時間のロスになる。ファミリアーはさして遠くまで行けないが、それでもある程度は相手チームの状況を把握できるだろう。
 地図を用意しながら進む焔の傍ら、ヴィリスはとん、と義足で軽く地面を蹴る。その自慢が瞬間的な手数の多さなれば、ここにいる誰よりも色々な所を見て回れるのだ。
(でも離れすぎには要注意ね)
 孤立した状態で戦えば確実に不利だろう。すぐさま仲間が加勢に入れる範囲で地を、時には壁を蹴って進むヴィリスは仮面にバジリスク・サイトを仕込んで闇の中を軽やかに舞う。

「――ローレットのイレギュラーズよ! 自警団は合流して!」

 不意に聞こえた大音量の声はメリーのものだ。スピーカーボムで増幅された声は遠くへとその言葉を運んでいく。眠っていた者も、見回っていた自警団も――徘徊している敵も、気づくことだろう。
(逃げるでも寄ってくるでも構わないわ。『こちらを認識した』のでしょう?)
 スピーカーボムとエネミーサーチの範囲は同じ。敵対心をこちらへ持ったのならば、それが近づいて来るは範囲外へ消えるかで動きは察せられる。
 それを探し取り、その凡そを仲間たちに共有していたメリーは自警団と思しき男たちに遭遇した。
「さっきの声はあんたたちか?」
「ええ、そう。わたしたちだけで敵は倒せると思うから危ないことはしないでくれる?」
 メリー的に言うなら『危ないことをしないでほしい』ではなく『自分の邪魔をしないでほしい』なのだが、素直に従ってくれるのならば言葉に棘を持たせる必要もないだろう。お優しい仲間たちが多少の補足はしてくれるはずだ。
「ボクたちでおかしくなっちゃってる人たちは対処するから、正気の人たちを避難させてほしいんだ!」
「今夜はお家で大人しくしているよう伝えてくれるかしら?」
 焔とヴィリスの言葉も重なり、自警団の男たちは頷いてばらけていく。避難を促す者が増えるならより戦いやすくなるだろう。
 その後も敵を探しながら進んでいた一同は、帰路についているらしき男たちに早く家へと促す。そんなことを何度か繰り返している最中、リウィルディアが『声』に気が付いた。
「こっちだ」
 人の呻くような――正常とは思えぬ声。微かなそれを捉えたリウィルディアに従い、一同は路地を進んでいく。その相手を視認した瞬間、硬質な音が地面を蹴って戦いの始まりを告げた。
「まずはここから」
 華麗なるステップを刻み、ヴィリスの義足が狂気にあてられた住民を蹴り飛ばす。峰打ちを出来る限り心掛けたつもりだが、普段と異なる舞いは難しい。
(だからといって楽なほうへ逃げる気はないのだけれど)
 難易度の高い踊りが全てではないけれど、それでもそれを見事成功させたならば期待以上の結果が出るだろう。舞台に上がる者は須らくして、観客以上にそれを求めるのだ。
「ボクが相手だよ!」
 攻撃の手がヴィリスへと集中しようとしたところへ焔の声が上がる。そこへ降り注いだネメシスの光にリウィルディアは走り出し、2頭の悪性を放つ。
「一応殺さないでおいてあげるけど、正気に戻るかどうかは知ったこっちゃないわよ」
 優しい仲間に合わせて不殺攻撃をするメリーだが、勝手に攻撃し死ににくるような者を助けるほど物好きではない。彼らも望んで向かってきているわけではないだろうが――これで死ぬのなら運が無かった、としか言えないのだ。
 焔も殺さぬようにと不殺攻撃を放っているし、ヴィリスも最大限の手加減を心掛けている。リウィルディアについては殺してしまうかもしれないから、と比較的序盤から回復手へと切り替えていた。
 そこそこの数の住民を相手取り、多少の時間がかかったものの――ほぼ確実に、一同は殺さぬ無力化をやり遂げていた。

 一方、もうひとつのチームも正常な者や自警団を助け、敵を倒す為に動いていた。守るべきものはこの街の不特定多数。多くはあるけれど、チャンスを掴むための努力は逃したくない。そんな『おやすみなさい』ラヴ イズ ……(p3p007812)の想いにマルク・シリング(p3p001309)は頷いた。
「1人の犠牲も出さない。そのために力を尽くそう」
 間に合わないかもしれない命を、だからと言って手放したくないから。
 一同は暗視の力で暗闇に目を凝らしながら、それ以外の感覚でも捜索する。主たるのはラヴのエコーロケーションや人助けセンサーだ。
(曙の悪魔……アリスちゃんの仕業、なのかなぁ)
 『青と翠の謡い手』フラン・ヴィラネル(p3p006816)は顔を上げ、月を見る。果たして彼女がこんなことをするのだろうか。しないと思いたいけれど――それは勝手に自身が願っている事だと言われてしまえば、それまでで。
「まずは、街の人を助けないと」
 言い聞かせるように呟いたフランは深呼吸すると意識を集中させ、広域を俯瞰するようにイメージした。人、あるいは獣。正常か、そうでなさそうか。
 ラヴの人助けセンサーも生かしながら帰り損ねている人々を助けていた一同は、酔っ払いらしく道端へ座り込んだ男と遭遇した。早く帰らないと、と言っても聞いているのかいないのか。
「――今この街には危険な魔物が徘徊しているんだ。このまま外を出歩いていれば、キミが餌食になってしまうかもしれないね?」
 そこへ不意に、ニーヴがいっそ恐ろしい程の静かな口調で告げ始める。ただならぬ様子に男も良いが醒めたかのような顔でニーヴを凝視した。
「そうでなくても自警団が町を巡回しているよ。このままウロウロしていたらとっ捕まって――」
「か、帰る! 帰ります!!」
 その後に何が続くと思ったのか。男は跳ねるように立ち上がり、猛然とどこかへ向かい始めた。本当に家へ帰れるのか、酔いっぷりから思うとそれも定かでないのだが――自警団にあったらあんな男がいた、と報告しておくことにしよう。
「私の出番、必要なかったわね?」
 あっという間に消えた姿を見送りながら、ラヴが小さく笑う。涙ながらに逃げて欲しいと懇願する用意があったのだが、ニーヴのそれだけでもきっちり効いたようだ。ラヴのそれはまたいずれの機会に、である。
 だが、その前に。
 道の向こうからやってくる、足元のおぼつかない住民。先ほどのような酔っ払いの気配ではなく、そして1人でもない。誰より早く地面を蹴ったラヴは神をなびかせ、空が落ちてくるような錯覚と共に彼らの中心へと降り立った。
「――夜を召しませ」
 ぐにゃり、と歪む様な。そんな幻に住民たちの幾人かがラヴの方を向く。マルクは完全に引き付けられたわけではないその前衛へ立つと神聖なる光を瞬かせた。
「絶対に殺さない」
 傷を受けることは覚悟の上。
「命さえあれば、きっとまだ戻れる」
 時間をかけてしまえば、戻れなくなってしまうから。
「――連れ戻してみせるんだ!」
 相手の攻撃に怯えていてはいつまで経っても終わらない。ニーヴもまた前へと出て威嚇術で応戦する。少しでも存在している生の可能性を掴むために。
「お願い、正気に戻って……!」
 そこへフランも神気閃光を放つ。自分の放ったもので誰かが傷ついている、その事実に震えてしまいそうになるけれど。
(癒す為じゃなくたって、救うことには繋がるから!)
 怖がってなど、いられない。



 住民たちの無力化を終えたマルクたち一同は、再び索敵と救出をと探し回る道すがらに自警団へ接触していた。
「できるだけ戦闘はせず、外出中の市民を非難させたり、無力化された者の保護に徹してほしいんだ」
 イレギュラーズであると明かされた自警団たちは頷き、先ほど無力化したという者たちの場所を一同より共有してもらう。
「街の皆を助けたい気持ちは、私たちも一緒なの。お願いね」
「もし無事な人を見つけたら、魔物がいなかったり明るい方へ逃げてもらうように伝えて欲しいな!」
 ラヴとフランの言葉にも頷いた自警団たちは立ち去ろうとして、ニーヴに呼び止められる。念押しになってしまうけれど、と前置きながらも彼は言葉を紡いだ。
「危なくなれば声を上げて――ボク達が、駆け付けるから」

 かくして。狂気にあてられた住民たちを退け、他の者たちへの避難指示を進めていた一同は大きな獣を発見した。フランの上から見る視点でバッチリ映るほどのそれへ、ラヴがまっさきに駆けていく。
 ひとつ。
 ふたつ。
 月のように静粛に、星のように一瞬で舞い降りた彼女は両手に握った拳銃を獣へ向けた、銃声がひとつ、ふたつ。
 追いかけたマルクは魔光閃熱波を放ちながら、さらに向こうからやってくる個体に目を見張る。
「応援を――」
 その瞬間差した影に、マルクは咄嗟に地を蹴った。微かな痛み。致命傷ではない。けれど。
(3体目……!)
 まさか一気に3体を相手取る事となろうとは。フランが咄嗟に全力のフォースオブウィルを打ち放ち、ニーヴがマルクを癒す。応援を呼ぶ暇すら存在しない絶体絶命に、しかし一瞬新たな影が空から差したことを一同は見逃さなかった。
「――ごめんなさい。ここで終わらせるわ!」
 容赦のない光撃が幾度も放たれ、敵の1体を翻弄する。光の中、舞うように空中を踊るヴィリスが見えた。直後、メリーの放った神気閃光が敵の眼前で激しく瞬く。
「お待たせ! ボクたちも加勢するよ!」
 ラヴと並んで名乗り口上をあげた焔。素早い動きの獣たちだが、全員が集まった今執拗に攻撃を浴びせたなら確実に――手の内へ堕ちてくる。
 小妖精を具現化させたリウィルディアの攻撃に、注意を引き付け終えたラヴが敵の毛皮へと触れる。そこから侵食する呪いの蝕みに獣は低い唸り声をあげた。
 攻撃をすればするほど苛烈になっていく相手の攻撃に、第三の眼が合わせて怪しく光る。しかしニーヴが飛び出し、癒しの光を放つことですぐさま一同は態勢を持ち直した。
(仲間も、街の人も、この身ひとつで守り切る……!)
 躱し、時に受けながらラヴは撤退の2文字を脳裏に浮かばせない。それをしてしまえば、犠牲になるのは他の人だから。
「こんなところで――負けられない!!」
 意志の力にパンドラが呼応する。同時に、フランの放った魔力が新緑の香りと共にラヴを包んだ。
「大丈夫! あたしたちもついてるよ!」
「仕方ないわね」
 フランに続いてメリーもヒールオーダーで回復支援へ束の間回る。後半になるほど攻撃は苛烈になるのだ。ここをもたせなければあと一歩で全員が力尽きかねない。
「ボクも、負けられない」
 ニーヴもまた、天使の歌で自身の周囲にいる者たちを鼓舞する。体を張る彼女が負けぬのなら、彼女を治癒する自分も同様だ。
 デッドリースカイを打ち放つ焔。そこへリウィルディアもクェーサーアナライズで仲間たちに活力を分け与える。
(あの眼は見ない方が良い)
 その視線は一瞬、獣の第三の眼へ注がれたもののすぐさま外された。先ほど不調に見舞われる仲間が出た通り、こちらにとっては不都合な能力を持っている。視線を合わせないことで完全回避できるかはさておいて、出来る限りはすべきだ。
「そろそろ幕引き。グランギニョルはこれで終わりよ」
 ヴィリスのステップが苛烈に刻まれ、敵の1体がどうと倒れる。残りの2体も傷を抱えた状態で、不利を察したか一目散に逃げだした。

 一同はその後も狂気にあてられた住民がいないか捜索し、最後に自警団の者たちと合流した。
「正気に戻れなかった人たちは……」
 どうしたら良いのかしら、と問おうとしたヴィリスは首を横に振った仲間に口をつぐんだ。
 狂気にあてられた者は気絶させれば正気に返る可能性がある。けれど正気に返らなかったということは――手遅れ、なのだ。
「街で異変が多発するようになった時期に、何かあったのかい?」
「アリスちゃんって子を見たりしたのかな?」
 魔種(アリス)の手掛かりを掴まんとするリウィルディアと焔。その会話を離れたところから耳にしながら、フランは再び空を見上げる。
 今回は頑張って、人々を守り助ける為に攻撃をした。することができた。
(じゃあ、次にアリスちゃんに出会ったら……あの子を、攻撃できるのかなぁ?)
 わからない。その覚悟が本当に出来ているのかどうか。

 淡く光っていた月は、いつしか薄曇りに隠されてしまっていた。

成否

成功

MVP

メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 概ねの人を助けることができました。

 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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