シナリオ詳細
にょたいかのいらい
オープニング
●……という貼り紙から想像していただきました
「女体化の依頼だああああああァぁぁっァァ!?」
「女体化……ふふ、興奮してきましたね……」
「ボクは絶対いかないからね! 絶対だよ!」
「いや……男向けの依頼でしょ? なんでこっち見てんの? 見んなオラッ!」
イレギュラーズはその依頼掲示を前に議論百出の状態にあった。というか、見事にそれだけ書いてあって情報精度Bだとか依頼としての難度は通常程度、魔種や怪王種や肉腫関連との遭遇がなく、海洋での依頼である……それだけの条件が出揃っていたのである。
海洋でなにかアレでソレな事情で女体化? とくれば唆られる者は少なくない。この国のことだから騙しやハッタリはないはずだ、是非行こう――そのような思考が働いたとしても無理はない。
だがちょっとまってほしい。海洋という国ならば、そうだ。
だが、『貼ったのはローレットで』『多分依頼書書いたのは情報屋』という事実が在る、と思われる。
だからこの文章に釣られてしまい、ついつい参加した依頼が……なんてことになっては大変だ。
「コレ本当に『にょたいか』の依頼なんだよね?」
「そうですね」
「変なところにある句読点とか省略してないよね?」
「間違った記述にはしていませんね」
「海洋、どの辺?」
「フェデリア海域ですね」
「ヨシ!」
……以上、イレギュラーズの1人と『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)とのやり取りである。
これを聞いていたイレギュラーズ達(の中で海洋とかに特に敏感な者達)は、依頼を受けて出発することになった。
『なってしまった』。
●騙しちゃいねえんだよなあ
「これが……『にょたいか』……???」
「ウゥゥゥゥゥフウウウゥゥン」
「いや、これはどう見たって」
「アァァッハアァァンン」
「『おかしな造形のイカ』……いや五月蝿いな! なんだよこの声!」
イレギュラーズはフェデリア海域のど真ん中で混乱の極みにあった。女体化の依頼。そう聞いていたはずである。だが、目の前にいるのは巨大なイカ。どうやら鳴き声ではなく、体に空いたなんかおかしな形の気孔のようなものから空気が流れ込むことでなんかいい感じになる音らしい。
「だから書いてあったゆ、依頼書に。『変に女体みたいなパーツをもったおかしなイカ』、略して『女体イカ(にょたイカ)』ゆ」
そんな絶望を抱えたイレギュラーズに同行していた『ポテサラハーモニア』パパス・デ・エンサルーダ (p3n000172)に、イレギュラーズ達は悲鳴を叩きつけたくなった。
「なんでアンタついてきてんだよ」
「いやあ久々に塩辛食べたくなったから一匹つぶしにきたゆ」
「『一匹』……?」
そう、女体イカは……なんかこう、めっちゃおるのだ!
- にょたいかのいらい完了
- GM名ふみの
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年05月05日 22時20分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●夢やぶれて大海に放り出される、また久しからずや
フェデリア海域、『女体イカ』回遊域付近。ローレットが、或いはイレギュラーズ自身が手配した3隻の小型船が大海原を疾駆し、9人のイレギュラーズを試練の海へと連れて行く。空はうんざりするくらいに快晴で、当面は気候が乱れる様子はない。……絶好のイカ漁日和というわけだ。
「おれ自身が女になっても何も得しないが、綺麗な娘っ子に囲まれるかと……期待は……期待はかなりしていた」
「大丈夫だ、問題ない。私は触手もイケる」
『陽気な歌が世界を回す』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)は依頼書を見た時、多少なり期待はしていたらしい。期待して、返ってきた回答がこれ(イカ漁)だったのはご愁傷さまというしかない。『Sensitivity』Alice・iris・2ndcolor(p3p004337)はその辺り寛容な気風なので、というか何が来ても大抵対処できるのでこの状況に全く不満を持っていなかった。寧ろ女体化とはまた違った趣を味わえるのだから良し、とまで思っている。逞しいというかなんというか。
『あはぁぁぁぁ……んん……』
「わざわざひらがなで書かれてる時点で嫌な予感はしていたが……こいつはまた、食い辛そうなイカだことで」
私船『蒼海龍王』を駆る『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)は、背後の会話に耳を傾けつつ、海面に見える魚影、そして流れる歪な『声』にうんざりしたような表情をみせた。
正確には声ではなく空気の音らしいが。そうでなくてもギフトのせいで余り気分がよくないというのに。
「うおおー! 一面のイカ! 絶景だぜー! なんか変な形と鳴き声してっけど美味そうならかんけーねーぜ! 皆のものイカ狩りじゃー!」
「私にモン娘に興奮する性癖が無くてよかった……あったらこれハーレムになってるところでした」
『マスコットのワモ口』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)は遠くに見えるイカの群れに興奮気味に声を上げた。彼はアザラシなのでイカは捕食対象である。つまり宝の山にしか見えてないわけで。これが『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)にソッチのケがあったらとんだ地獄絵図であったことは火を見るより明らかである。いや、これ『モン娘』つっていいカテゴリなの?
「俺が女になったとして、誰がいったい喜ぶのか……女体化じゃなくてほんとーによかった!」
『若木』秋宮・史之(p3p002233)はひとまず依頼が肉体の変容を伴うアレな依頼ではなく、単純な漁であることを神と女王陛下に感謝した。同じくらい海洋に身を捧げてる縁が聞いたら多分呆れ顔になるとおもうが、いいのかそれで。
「まさかネタに釣られて寿司のネタを釣ることになるなんてな……おのれ情報屋」
「情報屋のメガネは時々こういうことすゆ。仕方ねえゆ」
「でも切り捨ててしまえばただのイカと変わらないよ」
「割り切りがすぎゆ」
『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)は依頼書との相違はともかくとして、討伐対象があまりにもアレだったので己の中のシリアス要素が瓦解する危機感に直面していた。なお『ポテサラハーモニア』パパス・デ・エンサルーダ (p3n000172)はその辺りいつもの事だと割り切っているのでおとなしくサポートに回っている。
というか、『特異運命座標』時任 零時(p3p007579)の割り切り方が異様なのだろう。そこそこ経験積んでるからって大分割り切ってる辺り、長い人生で多分苦労してんだろうなあ。
「さーて……気は乗らねぇが、やるとしようかね」
縁はぐんぐんと迫る女体イカの群れを見据えると深く呼吸を繰り返し、己の精神を統一する。何者にも侵されざる信念の発露は、これから始まる戦いへの決意でもあり。
「……ヤツェクさん?」
「( ・◡・*)」
あっ、ヤツェクの顔が何処かで見たデスゲームの主催者みたいになってる。魔力の循環の効率化より先にR.S.Cを構えて弾幕を張ってる。完全にほろ酔い気分だ。船の上だぞ、虹はまだ早いぞ!
「うわっへ。めっちゃおる なかなかイカれた格好してますね……」
イカだけに、といイカけたウィズィはしかし、群れを分けて向かってくる女体イカの群れに更に顔を顰めた。
既にガトリングを構えたワモンはこれ幸いと迎え撃つ。
……もう既に惨劇の予感しかしないが大丈夫か!?
●
「折角来たからには大漁にしないとな。パパスも回収任せた!」
「人遣いがあれーゆ。でも依頼は依頼ゆ、細々したのはわたちに任せてキリキリ働けゆ」
「依頼は全滅じゃないからね。長期戦は御免だよ」
式神にタモ網を構えさせ、錬は大砲の符術を構築する。放たれた炎はイカ達をこんがりと焼き……きるには若干届かぬが、十分な手傷を負わせた。零時はそれに合わせ神気閃光を放ち、イカ一色に染まった海域を一瞬だけ光で染め上げ、その動きを鈍らせた。
「かかってこいよ! たたきのめしてやる!」
『うっ……ふぅぅん』
「……妙な声あげるなキモイ!」
史之は威勢よく啖呵を切ったが、恐ろしい数のイカから一斉に奇妙な色気ある声が聞こえると流石にヒく。ついでに言えば、イカ達から立ち込めるフェロモンがドギつ過ぎて精神に異常を来しかねない状況でもあった。兎に角数が多い。近付く個体全てを引きつけるのは厳しかろうが、それでも被害を最大限抑えることは十分、可能だ。
「分かってるだろうけど、治療はわたちがするからこまけえこと考えずやったれゆ」
「操舵も?」
「とーぜんゆ。ちったあ信用しゆ」
パパスは史之の叫ぶような問いかけに対し、極めて冷静に返した。十本足を駆使して襲いかかるイカ共の攻勢などしれたものだが、数の暴力は抗いがたい。守りに長けた者とて、長期戦となれば疲弊もしよう。
「イケイケ押せ押せレッツパーリィよ☆ ヒャッハー!」
「分かってると思うが、調子に乗りすぎてガス欠だけは勘弁だぜ?」
「大丈夫、消費が激しい分対処は完璧だから☆」
「俺もできるだけサポートするけど、期待しないでくれよ。受けに回るのは苦手なんでな」
Aliceは縁がひきつけたイカ達に当たるを幸いにブラックジャックを撒き散らし、次いで異形を模した象形拳にて相手の感覚に潜り込む。より敏感(意味深)になったそれらがヤツェクの銃弾を浴びれば、碌でもない結果を導き出すのは当然だ。問題点があるとすればその消費魔力だが、縁の懸念をよそにAliceは完璧な自己管理を以て立ち回っていたのでセーフ。
縁はイカに群がられつつも流麗な操舵で以て引き回すと、別のポイントでも新たにイカの意識を引きつけていく。
彼の頑丈さは折り紙付きで、残す2人の戦闘力も十二分ではある。問題があるとすれば、魔力消費と供給のバランスぐらいだが……ジリ貧になるくらいなら短期決戦を選ぶのがイレギュラーズだ。そう問題にはなるまい。
「さあ、Step on it!! さっさと捕まえちゃいましょう!」
「そーれイカ漁イカ漁大漁だーい!」
イカ達にイカりを想起させ、ウィズィは自らを的にかける。あらぬ感情に身を任せて襲いかかってくるイカ達が飛び上がったところをワモンが撃ち抜けば、それらはびちびちと音を立てて甲板に転がっていく……が、仕留めきれぬ分はそのままウィズィへと突貫、その肉体へと触腕を振り下ろした。
『うっふぅぅ……ん』
『あはぁぁん♪』
「うおおお! 女性っぽいのに囲まれてるのに全然嬉しくねええ!」
女性的な肢体、いろっぺぇ声(音)、そして漏れ出てくるフェロモン。それらすべて女性を愛すウィズィにとってはこの上なく好ましいものである。ある、はずだ。
だがそれを漏らして鳴らして呼びかけてくるのはイカだ。海産物だ。女性的要素など一切ないのだ!
「あ、ウィズィせんちょー! 捕れたイカ一つつまみ食いしてもいいかー?」
「私はかまいませんし依頼達成に支障ないと思いますけど、寄生虫大丈夫ですか?」
「あー……寄生虫はこわいなー。じゃあ後で食べることにするぜ!」
ワモンにとってはイカがヒトの色気を出そうがフェロモン出そうが、アザラシとしての本能が上回るので何ら問題なさそうだった。ぶっちゃけ寄生虫がいても変化で人間態にならなければなんら問題なさそう、という部分あるのだがそれはそれとして。
「なるべく早めに倒しちまってくれや、そろそろキツいぜ……!」
「魔力がもう少し余裕あれば……いや、これでも大分獲ったしいいんじゃねえか……!?」
「私ももうそろそろ魔力が尽きそうね……おかしいな、もうちょっと保つかとおもったのだけど……」
この状況で、一番ジリ貧になってたのはまさかの縁達だった。攻撃を一手に受け持ちつつ操舵を的確に行う縁は、しかし運命の力なくば立つのが難しい境地に至っている。ヤツェクとAliceは十分戦っているが、双方の魔力もあと何秒保つやら。外部から得るにしても限界があった。当然、船に乗り込んで2人を襲う個体だっている。このままでは『蒼海龍王』の3人はちょっと危ないか……と思われた。
「……零時、魔力はまだあるかゆ? あいつらの治療と魔力の回復、イケるかゆ?」
「うん、まだ余裕はあるけどこの距離から? 難しいような」
「だから……こうするんだゆ! 合図したらやれゆ!」
パパスら4人が乗る船が『蒼海龍王』へと真っ直ぐ突っ込んでいく。正面衝突の軌道をとる双方の舳先で、縁とパパスがアイコンタクトを交わした。……同時に面舵に舵を切ると、零時に向けてハンドサインが飛ぶ。零時の号令とパパスの治癒術が飛んだことで、『蒼海龍王』の3人はひとまずの窮地を脱する寸暇を得た。
「もうちょっとイケるかゆ?」
「パパスさーん! 私ちょっとイイこと思いついたんだけどいいかしらー!?」
「ろくなモンじゃねえだろうけど迷惑にならないなら勝手にしろゆ!」
Aliceは入れ違いに離れていくパパスに声を張って問いかける。この場合、大抵Aliceの考えることはエろイ(エゲツない・ろくでもない・イヤらしい)のだが形振りかまっちゃいられない。勝ちの目があるならそうしろ、ってことだ。
「ありがとー♪ それじゃ……いーとみぃ♡」
Aliceはそう叫ぶと命綱を結わえて自ら海へ飛び込んだ。食材として敵を引きつけ、撒き餌漁の要領で自身を餌にする……なんていうかもう行くとこまでいっちゃった戦法だ。なお、縁とヤツェクのもとからもイカが離れていきあっちに集まっていったので凄くアレな絵図になった。
『いやぁぁぁぁあ……ン……』
「いやもう笑いそうになるなこの音! さっさと焼きイカなり切り身になれ!」
「零時さん、パパスさん大丈夫!? 凄い無茶したけど!」
「大丈夫だよ、このまま一気にイカを捕まえて近くの島に向かおう!」
錬がやけくそ気味に近付いてくるイカ達を仕留める中、史之は引き続きイカを引きつけつつ2人の状況を確認する。零時は問題なし、無言で操舵するパパスも、ひとまず問題なしか。
「ウィズィせんちょー! あっちの船みたいなことできねーかな!」
「私、舵切って走り回るので結構精一杯なので無理ですね! そろそろノルマ達成しそうですし、ノルマ以下じゃなきゃ妥協しましょう、イカだけに!」
「そうだな、無理だけはスルメぇ!」
「スルメイカじゃないですけどね!」
「「ハハハハハ……!!」」
ウィズィとワモンは大体こんな調子だったので、特に人数少なかったにも関わらずかなり安定して逃げ切る格好となった。多分、この2人意外でもなくウマが合うのではなかろうか。
「俺達も戻るぞ! Aliceは……大丈夫だよな……?」
「水面から嬌声聞こえてるから大丈夫だぜ、きっと……」
心配そうに海面に視線を投げかけた縁は、しかしヤツェクからの報告にひとまず胸を撫で下ろした。
それを「大丈夫」と言っていいかは別問題だが……まあ、それはそれである。
●
「さあ料理タイムだ、の、前に、酒!」
「……そうだな! 酒はあるぞ! 呑むか!」
史之とヤツェクは長々とイカ達を見ていたからかそろそろ正気が正気ではなく、2人仲良く酒に興じていた。イカを食えない縁も混じり、軽い酒宴の様相を呈している。
「うひひー、塩辛にイカリングに刺身と食べたいもののリクエストならいっぱいだぞ!」
「ちょっとあいつらが正気を取り戻すまでわたちが作るゆ。まあ全部作れるゆ」
「そうそう、こんなこともあろうかと調味料なら用意してあるぜ!」
「でかした」
ワモンはこれを待っていたとばかりにあれこれと注文を重ねていく。パパスはそれに応じる形で次々と仕込みを始め、そこそこ手際よく調理を進めていく。錬が持ち込んだ調味料もあって味は折り紙付きのものとなりそうだ。史之は大根とイカの煮物とバター醤油炒め、ヤツェクはにんにくと醤油で炒める。
何れも酒のアテには最高だろう。
「…………」
「あら、何を見てるのかしら?」
Aliceはそんな中、神妙な顔で生け捕りにした女体イカとにらめっこしていたウィズィを見て首を傾げた。何かアレゲなことを考えていると、その直感が囁いたのだ。
「……いえ、何でもありません。この胸揉んだら掌の熱で傷んじゃいますもんね」
「あら、それならこの子は私の領地に連れ帰るから……どう?」
「いや、どうって言われても」
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
イカ漁成功です、お疲れ様でした。
負傷された方はしっかり休んで回復させてくださいね。
……美味しいの解せないよなあ。
GMコメント
喜べよ。にょたいかの依頼だぞ。
●成功条件
『女体イカ』の一定数の確保
●女体イカ(にょたいか)×えらい数おる
胴に当たる部分に人間の胸みたいな膨らみ、通気孔のような変な穴が空気を吸い込むと色っぽいおねーさんみたいな音を立て、謎にヒトに寄せたフェロモンを放出する何が悲しくてこんなの釣らなきゃいけないのかっていう感じのイカ。
実は刺し身と塩辛に加工すると凄いらしいけれども寄生虫には気をつけろ。
なお単位は「匹」で正しい。まだ市場に出回る前なので。
・墨とか吐く。食らうと暗闇とか精神系BSを受けるかもしれない。
・足が多く数が多いためとても相手の行動回数が多い。回避磨り潰されても泣いてはいけない。
・タコほどではないが知性があるので海中でも海上でも割と面倒。イレギュラーズ側でも水中戦闘はできなくはないけど適していない
・その他、ありそうなことは割とあるし攻撃手段にどんなBSが乗るか定かではない。
いや普通に面倒くさいなこいつ。
●現場
フェデリア海域です。今回は幽霊船とかは出ません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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