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シナリオ詳細

巫女よ、聖衣を纏いて神舞をとり、悪しき者を封ぜよ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●BGM『リア・クォーツ (p3p004937)が炎堂 焔 (p3p004727)を追いかけまわすときの曲』
「ッ~~~~焔ァ! 」
「こ、これは違うんだよリアちゃん! ボクもこんなことになるだなんて知らなかったんだよ!」
 いつものやり取り。いつものBGM。いつもの光景を、イレギュラーズ達は放心した様子でそれを眺めている。
 ここは練達、再現性東京2010。希望ヶ浜と呼ばれる、臆病者たちの理想郷。此処には夜妖(ヨル)と呼ばれる怪異が存在し、イレギュラーズ達は日夜それと戦う狩人(ハンター)として活躍していた――。
 それはさておき。
「ええっ!? 皆さん再現性コスプレ同好会じゃなかったんですか!?」
 と、ひょろっとした男が言う。彼は今回の依頼のクライアントである。
「そんなものに入った記憶はありませんが」
 己のギフトで感情も翼もバッキバキに凍らせながら、凍てついた瞳で冰宮 椿 (p3p009245)が言う。ギフトは戦闘中にしか発動しない? もうこれ戦闘中みたいなもんだろ。
「しかし、確かに私はローレットの再現性コスプレ同好会の皆さんに依頼を……!」
「ごめん見落としてた!」
「焔ァッ!!!」
 リアがバレーボールをぶん投げたのを、焔は跳び箱の上に飛び乗って回避した。バレーボール、跳び箱、というワードから想像できた方もいるかもしれないが、今イレギュラーズ達がいるのは、希望ヶ浜学園の体育倉庫の中である。大きな学園という事もあり、体育倉庫も一般的なそれに比べればだいぶ広く、掃除も行き届いているために比較的綺麗だ。

 さて、一同がなぜこんな所にいるのかと言えば、話は数日前のこと。ローレットの有する、とある酒場にて。

「ねぇ皆! 神聖な衣装を着て神の舞を踊る事で悪霊を退治する依頼があるんだって!」
 と、焔が言ったのである。
「……神の舞? 神事の類でしょうか?」
 小金井・正純 (p3p008000)が小首をかしげた。
「興味深いですね。カムイグラでのお仕事ですか?」
「んーとね、希望ヶ浜だから、練達の再現性東京だね」
 依頼書を斜め読みしながら焔が言う。おや、と言ったのはすずな (p3p005307)である。
「珍しいですね。かの地は、そう言った神秘は排斥するものだと思っていましたが」
「再現性東京、日本って言うのは特殊な所みたいでね」
 白薊 小夜 (p3p006668)は、くすりと笑いながら言う。
「科学を基準の価値観にしながら、それでも神秘的な何かを無意識に受け入れているものなの。例えば、新しく家を建てる際には、土地の神様に挨拶をする地鎮祭を行うのが常識だったりするわ」
「そう言えば、そう言う場面を見た事が有りますね。なるほど、そうなれば、神事を行う事も彼らの日常の範囲になるわけですか」
「という事は、正純さんのような格好をして、舞を踊る、という事になるのかな?」
 タイム (p3p007854)口元に手をやりながら、むむ、と唸る。
「確かに、正純さんの服は素敵ですけれど。でも、神事の舞ってなると、ちょっと難しいのかな……?」
「あまり気負うものではないと思いますよ」
 正純は微笑んだ。
「確かに色々と作法はありますが、奉納の舞とはいわゆるダンスなどとは違い、そう激しい動きが求められるものではありません。それに、こういった形で急募するものですから、さほど難しいものではないと思いますよ」
「そうだよタイムちゃん! タイムちゃん、豊穣の着物とか持ってるし、神衣も似合うと思うよ!」
 焔の言葉に、
「うーん……だったら、少し興味あるかも……」
「そうですね。こういう事、中々体験できないと思います」
 リディア・ヴァイス・フォーマルハウト (p3p003581)が、ぽん、と手を叩いてい頷く。
「じゃ、決まりだね! 早速このメンバーで依頼申し込んでくる!」
 ぴょん、と飛び跳ねる焔が、てとてととカウンターへと向かっていく。その姿を仲間達はにこにこと見つめていたが、ここにきてリアだけが妙な悪寒を感じ、その身を震わせていた。
「……なんか。滅茶苦茶嫌な予感がする……」
 軽く頭痛を覚えながら、リアは呟いた。そしてその予感は見事的中することになる。

 後日、意気揚々と指定の場所へ向かったイレギュラーズ達を迎えたのは、風光明媚な神社、等ではなく、希望ヶ浜学園の体育倉庫である。そこに居たクライアントに話を聞いてみれば、「ではよろしくお願いします」と聖衣を手渡され――。
 全員がその場に硬直した。
 手渡された聖衣とやらは、どう見ても、チア服だったのである。
 ひくぐらいのミニスカ。へそ丸出しのタンクトップ。当然袖なんてものは存在しない。春は暖かいとはいえ、この格好は些か肌寒くないか、というものである。
「では、よろしくお願いしますね! 『チア服を着てチアダンスで夜妖をおびき寄せて撃退する』お仕事を!」
 と、クライアントがにこにことそう言ったあたりで、全員が全員、この依頼の本質に気づいた。そしてリアは当然のごとくキレて、焔を追いかけまわしたのだ。
 冒頭に戻る。

「えっと……この恥ずかしい衣装、着ないといけないんですか……?」
 リディアが尋ねるのへ、クライアントが困った顔で頷く。
「ええ……目標の夜妖なのですが、チアダンスしないと出てこないので」
「えっ、馬鹿にしてるの?」
 タイムが死んだ目でそう言うのへ、クライアントは頭を振った。
「いえ! いえ! これはそう言う伝統なんです!」
「滅んでしまえそんな伝統」
 椿が氷のように冷たい瞳で言う。
「で、ですが……チアダンスしてもらわないと困るんです! 依頼書にも書いてある通り、当日は練達ネット中継もありますし、今更中止するわけには」
『焔ァッ!!!』
 その一言に全員がキレた。焔はスチールラックの最上段に飛び乗り、『><』みたいな顔をしてペコペコ頭を下げていた。
「こんなことになるなんて思わなかったんだよー!」
「……こうなったら仕方ないわね」
 リアが深い深いため息をつきながら、言う。
「受けてしまったものは仕方ないわ。ハイ・ルールにも違反することになるしね。ええ、しょうがない。チアダンス、やるしかないじゃない」
 もはや焔の失態でこういう目に遭うのは慣れた、と言わんばかりに、リアが死んだ魚みたいな目をして言う。
「問題は」
 こほん、とチアは、じゃなかったリアは咳払い一つ、続けた。
「……誰がセンターやるの?」
 ぎぎ、と。
 全員の視線が交錯した。
 センター。せ・ん・た・あ。文字通りど真ん中、最前線に立つリーダー的存在。
 目立つ。一番目立つ。激しくちょっとエッチなポーズもたくさん取らなければならない。そう言う存在である。
 全員が警戒する。全員がけん制する。もちろん、やりたいわけではない。やりたくないのだ。ただでさえチア服でチアダンスである。その上で、さらなる恥の上塗りなどしたくはない。
「……えっと、それじゃあ、当日までに決めていただいて……」
 その、魔種も裸足で逃げだしそうなきつい雰囲気の中、クライアントの男はそう告げた。
「あ、練習用の教本とかは此処にありますんで……当日まで練習お願いします……それじゃ、また!」
 ばたん、と扉をしめて、クライアントの男は去っていく。
 かくして、バチバチの火花を散らす乙女たちによるチアダンスバトルが始まろうとしていた……。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 リクエストありがとうございました、再現性コスプレ同好会のみなさん!

●成功条件
 センターを決め、チアダンスを踊り、現れた悪霊を倒す。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はC(cheer)です。
 絶対にチアリーディングしてもらう! チアダンスもしてもらいます!
 チア服から着替えることはできません! 恥ずかしい思いをする覚悟の準備をしてください!

●状況
 きわどいチア服を着て、チアダンスをして、夜妖をていやーってすることになったぞ!!!!!!

●シナリオの流れ
 まず、プレイングにて誰が生贄(センター)になるかを決めてください。相談でバチバチに押し付け合っても構いませんし、プレイングでGMのランダム性に投げても構いません。
 その後はチアリーディングとチアダンスの練習をすることになります。チアリーディングとチアダンスは厳密には別物ですが、ここは夢のあるPBW、PPPですので、いいとこどりの何でもありになります。練習ではジャージを着てもいいなどと言うとでも思ったか! 常にチア服を着てもらいます。スパッツやアンスコの着用は認められません。
 最後は本番になります。これまで鍛えたチア能力、そして戦闘スキルから非戦スキルまでをふんだんに利用し、夜妖をおびき寄せるため一生懸命チアしてください。チア服を着てもらいます。スパッツやアンスコの着用は認められません。
 なおこの模様は、P-tubeにて後日配信されます。おめでとうございます。

●敵
 チアが好きすぎてチアにおびき寄せらるタイプの夜妖 ×1
  チアが好きです。チアが好きです。チアが好きです。
  でてきたらていやーってしましょう。

 以上となります。
 それでは、皆様のチアをお待ちしております。

  • 巫女よ、聖衣を纏いて神舞をとり、悪しき者を封ぜよ完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年05月03日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日のフルール
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
アベリア・クォーツ・バルツァーレク(p3p004937)
願いの先
すずな(p3p005307)
信ず刄
白薊 小夜(p3p006668)
永夜
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
冰宮 椿(p3p009245)
冴た氷剣

リプレイ

●センター決めの日
 これまでのあらすじ
 ~『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)のうっかりによって、「きわどいチア服を着て、きわどいチアダンスを踊って、チアダンス大好きな夜妖を鎮める(物理)」という依頼を受けてしまった再現性コスプレ同好会の皆。受けてしまった以上今更仕事を断られることなく、皆絶望の淵に沈んでいく中、『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)のさらなる一言……「で、誰がセンターはるの?」の一言が、さらなる地獄へと一同を引きずり込むのであった~

「クソがよ」
 めっちゃ怖い顔で『天地凍星』小金井・正純(p3p008000)が言う。頭に響く星の声は、今日はおかしい。「正純、今日から胸を強調した系P-tuberとして投げ銭と広告収入で食っていくんや!」とか言っている気がする。
「ええ、やる事やってこの地獄を終わらせましょう。で、センター? 嫌です」
「それは嫌でしょうね!」
 『優光紡ぐ』タイム(p3p007854)ちゃんが梅干し食べたみたいな顔で言った。
「って言うか教本読みました!? この格好で! 足を高く上げたり下げたりするの! それを皆に注目されながら!? 絶対無理!」
 うわーん、と泣き出しそうなタイム。
「センターとなれば、やはり運動神経があって、若くて、背の高い子がやればいいのではないかしら」
 と、手をあげたのは『盲御前』白薊 小夜(p3p006668)である。じろり、と視線――を向けたわけではないが、その、気配のようなものは、リアを絡めとったような気がした。
「いや、私はフィジカル3だから……えっと、元気よさそうな子がいいと思うわよ! ちっちゃくてぴょんぴょん飛び跳ねるような子!」
「なるほど、すずなちゃん!」
「なるほど、焔さん!」
 と、その言葉に同時に反応したのは焔と『妹弟子 』すずな(p3p005307)である。二人は視線をぶつけ合い、ふふふ、などと渇いた笑いを浮かべた。
「いえ、私はFBが30なので、いざという時に転ぶ癖がありますから。此処はライブ的な経験がある焔さんが適任では?」
「ライブとチアリーディングは違うと思うよ! それにほら、ボクは罰が憤怒だから憤怒だよ! すずなちゃんは罰が色欲だから、すごくあってると思う!」
「はぁ? 今罰が関係あるんですかー!? 確かにこの依頼罰ゲームみたいなものですけれど!」
「仕方ありません、ここはダブルセンターという事にしましょう」
 タイムが提案するのへ、
『それだ!』
 とすずなと焔以外の全員が同意した。すずなと焔はキレた。
『ダブルって何!?』
「あのー」
 『木漏れ日の魔法少女』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)がおずおずと手をあげる。
「センター、やってもいいですよ」
 マジで? という空気が流れる。
「マジで?」
 というか、リアが言った。
「い、いいの? リディアちゃん! こんな依頼でMVP取ったって、得られるものは精神的重症とパンドラ減少、それから『センターチアガール』みたいなしょうもない称号位なものだよ!?」
 焔の言葉に、リディアは優しく笑った。
「でも、皆さん嫌そうですし……このままでは話も進みません。私で良ければ……センター、頑張ります! 今回最年少魔法少女として、魅力をアピールします!」
 おお、と一同は声をあげた。なんかまぶしかった。ついでに、生贄が自ら手をあげてくれたので、一同はほっとした。
「あなたの勇気、敬意を表します……どうか、星の加護を――」
 正純が祈る様に瞳を閉じた。割と本気で感謝の念がにじみ出ていた。
「でも、一人でセンターというのも、申し訳ないですね」
 正純が言った。
「ここはどうでしょうか、同じ新人という事で、椿さんにお願いするのは」
「えっ」
 突然話をふられたので、『氷翼』冰宮 椿(p3p009245)が声をあげた。
「あの」
「いいですね、二人なら適任!」
 自分は関係なかったので、タイムはにこにこしながらそう言った。
「え、なんで?」
「では二人をセンターにして、練習を始めましょう! 小夜さん、小夜さんには私が手取り足取り教本の内容をお伝えしますね!」
「あら、ありがとう、すずなさん」
「あの、え、わたしが?」
「よーし、じゃあやりたくないけどお仕事頑張ろうか!」
「大体アンタのせいでしょうが! 焔ァ!」
 笑う焔に、リアがツッコミを入れる。
 椿の困惑――それを意図的に放置しながら、皆が更衣室へと向かっていく。
 ぽん、と椿の肩を、リディアが叩いた。
「頑張りましょうね、センター!」
 割と屈託のない笑みだった。
「感情凍りそう」
 椿がぼやいた。
 戦闘中じゃないので凍らなかった。

●練習の日
 練習は、希望ヶ浜学園の体育館で行われていた。一同はあちこちにケガ防止用のマットを敷き、練習だというのに、感心な事にチア服を着ている。皆損にチア服を着たかったんだね。おじさん嬉しいよ。
「練習でも着ろって言ったんだろーが!!!」
 虚空に向けてリアが叫んだ。ちなみに、スパッツやアンスコの類は禁止されているので……あとは解るな?
 さておき。
「まず柔軟ね。すずなさん、ぐぐっと、ぐぐーっと行きましょう。関節や背筋を伸ばすのって、気持ちいわよね……」
 と、地面に座り込んだすずなの背中をぐーっと押す小夜。
「いたたた! 小夜さん、もっと、もっと優しく……!」
「ふふ、だめよ、すずなさん。ちゃんと力を入れて、解さないと」
「痛、痛いです! こ、こんなにされるの、初めてで……っ! もうちょっと、優しくして下さい……っ!」
「あら、すずなさんったら、こんなになっちゃって……」
 そんな二人のやり取りを横目で見つつ、
「意外と体固いんですね、すずなさん……」
 ぺたーん、と座った状態から状態を地面につけて見せる椿。
「あ、いたいた、すずな。ちょっと手伝って」
 と、リアが声をかけるので、すずなは顔をあげた。
「え? なんですか?」
「ほら、チアリーディングで投げ飛ばされるじゃない? あれでどんな感じになるか、外から確認したくて。ちょっと飛んでみてよ」
「はぁ、まあ、いいですけど……」
「よし。じゃあお小夜さんも手伝って。私が足持つから、お小夜さんは腕。1,2の、3で……こっち、こっちの方」
 と、リアは小夜の身体に触れて、方向を示すと、
「ここにマットがあるから、そこに投げるの」
「ええ、構わないわよ」
 小夜は微笑んだ。
「じゃあ、すずな。いくわよー。1,2の」
「3っ」
 リアと小夜が、すずなを放り投げる。ふわり、とはためくスカート。覗く下着。ぱたぱたとすその遊ぶタンクトップから覗く、意外と大きな胸。ぽてん、とマットに落下したすずなをみやり、リアは、ふむ、とうなった。
「じゃあ次。香草女」
「リアさん、香草女ってわたしの事ですか?」
 露骨に嫌そうな顔をするタイム。
「大体あなたフィジカル貧弱だし無理が……」
 と、言うや否や、リアと小夜二人に抱えられ、有無を言わさず持ち上げられるタイム。
「じゃあ、1,2の」
「3っ」
「あああっやああああ!」
 悲鳴をあげるタイムが宙を舞う。はためくスカートから大胆に見せつけられる可愛らしい下着。タンクトップから覗くのは、形の良いバスト。見せたらヤバい所はギリギリ見えない。ぽてん、と落下して、リアはそれを見ながら、うん、頷いた。
「……なるほど、あっちこっち捲れてこれやべぇな」
 ひき、とひきつった笑みを浮かべるリア。
「なるほど、じゃないんですけどおぉ~!?」
 自身の演じた痴態にを察したタイムが、顔を隠してその場にうずくまった。
 一方。正純は死んだような顔で、ラインダンスの練習をしていた。並んで肩を組んで、足を上下に上げるあれである。
「1,2,3,4……1,2,3,4……」
 数字が進むごとに、正純の形の良い脚が上下する。その都度、ふわり、ふわりとスカートの裾がはだけ、しかし恥じらいがあるのか、中を見せるほど足は上がらない。
「あれ? 正純ちゃん、教本だともっと脚を高く上げるようになってるよ?」
 焔がそう言うのへ、正純はぎぎ、と視線を向けた。
「これでいいんです」
「良くないよ! 教本通りにやらないと! 正純ちゃんならやれるよね! ほらもっとこうぐいーって」
 焔が、正純の脚を持ち上げて、ぐーって上げる。高らかに上がらう正純の白い脚。あらわになる太もも。健康的なその肌、翻るスカートから覗く、正純らしい下着――。
「や、やめてください! やめて、やめ、やめろぉ! キレそう!」
 正純が悲鳴を上げて逃げ出すのを、焔が追いかけまわしている。
「ここが地獄ですか」
 椿が死んだ魚みたいな目で言った。
「うーん、あんなに下着とか、胸とか見られちゃうんですね……」
 リディアが、その胸を押さえながら、ぼやいた。
「でも……ぱんつを見られるのは恥ずかしいけど、恥ずかしがってたら何も出来ないし……。
 やるしか、ないんですよね。これもお仕事ですから」
 前向きな発言に、椿はまぶしい思いをした。なんでこの子こんなに前向きなんだろう、これクソ依頼だよ?
「でも……恥ずかしくて顔が熱くなるのはわかるけど、お腹の辺りがムズムズするのはどうして?」
 不思議気にリディアが言うのへ、椿は答えた。
「ストレスで胃液が沸騰してるんじゃないんですか?」
「そっかー!」
 そっかー!

●本番の日
 全員が健康・健全・健勝のまま、練習を終え、そして本番の日を迎えた。タイムなどは風邪ひいて当日休もうと目論んでいたらしいが、正純による献身的な健康管理の結果、誰一人離脱することなく当日を迎えることができたのである。これは正純の、
「当日ケガや病気などと言って逃げることなど許しません、全員地獄に道連れにしてやる」
 という温かな、正純の優しい思いからなせるものであった。
 さて、希望ヶ浜学園の校庭である。春のうららかな日差しの中、宙を飛ぶはドローンカメラ。上からも下からも、舐めるように録画してP-Tubeに流してやるという執念を感じられた。
 校庭の観客席には、無数の観客たちが男女問わず詰め寄せ、この一世一代の祭を目にせんと、勢いを持っている。
 そんな彼らの視線にさらされながら、イレギュラーズ達は校庭の真中に一列に並んでいた。もちろん、中央にはリディアと椿。皆の頬は皆紅潮している。タイムなどは耳まで真っ赤だった。これはダンススタート前の緊張故、ではなくて、イレギュラーズ達全員が、『引くぐらいギリギリのローライズの赤いパンツ』と『ヤバいくらい面積の小さい赤いブラ』をつけていたからである。

 何でそんなことになっているのかと言えば、本番当日準備時間にて。
「スパッツやアンスコがダメだというのなら」
 更衣室で、小夜がそう言う。ぱさり、と手に下着をとって、
「チア服と同じ系統の色の下着を選んでおいたわ。これならアンダースコート感も出るでしょう」
 そう言って差し出したのが、『引くぐらいギリギリのローライズの赤いパンツ』である。すずななどはギャグマンガのように目を見開いた。しっぽがぶわーってなる。
「ささささささささささ小夜さん!?!!?!?!?!?!?!!?!?」
 ぎゃあ、と悲鳴をあげんばかりに小夜に飛び掛かった。下着を奪い取る。ためつすがめつ手に触れるが、何度見てもヤベーくらいローライズの赤いパンツだった。
「こ、これ、これこれこれこれ!!!!」
「あら、おかしいかしら」
 小夜が小首をかしげるのへ、タイムが悲鳴を上げた。
「どう考えてもおかしい……っていうか、わたしのし、下着も変なのに入れ替わってるぅ!!」
 うわーん、と鳴き声をあげるタイム。慌てて一同が自分のロッカーを探ってみれば、今日の日のために用意した下着が、軒並みローライズの赤いパンツに変わっているではないか! いや、パンツだけではない! ブラもヤベーくらい布面積のない赤いブラになっている!
「下着が入れ替わっている? あら?」
 小夜も流石に異常に気づいたらしく、小首をかしげる。
「こ、これは! これは一体!?」
 あわあわと目を回す椿。その時、ふふふ、とあたりに笑い声が響いた。
「ボクだよ」
「焔ァ!!」
 ポンポンを投げつけるリア。それを回避しながら、焔はロッカーの上に飛び乗った。
「これにはやむにやまれぬ事情があるんだよリアちゃん!」
「一応聞いてやる!」
「今日、着るための下着を用意しようとしたら、その何のために買ったのか分からない変な下着しかなかったんだよ!」
「それで?」
「ボクだけこれだと、ボクがエッチな子みたいになっちゃうから、皆お揃いにすれば恥ずかしくないかなって」
「もう駄目です!」
 正純が頭を抱えてうずくまった。心が折れそうだった。
「でも――やるしかありません!」
 リディアがぐっ、と手を握っていった。
「何でそんなに前向きなんですか!?」
 椿が叫ぶのに、リディアはにこりと笑う。
「だって……やらないと終わらないじゃないですか……」
 それは、確かに。
 と、とんとん、と更衣室の扉をノックする音が聞こえた。それから、依頼人の声が聞こえてくる。
「再現性コスプレ同好会さん、そろそろ出番です」
「再現性コスプレ同好会じゃないけど分かりました!」
 リディアが返事をして、にこり、と笑う。
「やりましょう。さっさとやって……もう忘れましょう。忘れるんです」
 なるほど。
 もう、そうするしかない。
 一行は覚悟を決めた。
 ローライズの赤いパンツ。布面積の少ないブラ。
 二つを着こみ、その上からギャグみたいなチア服を着こむ。
「さっさとやって、忘れよう」
 リアが言った。皆が頷いた。この時、皆の気持ちは一つだった。皆、この困難を打破するために一つとなって協力
「まぁ、忘れるって言っても、P-Tubeに動画投稿されるんだけどね」
「焔ァ!」
 リアがキレた。
 みんな頭を抱えた。

 という事が有ったわけだがさておき、本番の時はやってくる。鳴り響く軽快な音楽。皆はフィールドいっぱいに散った。
 ばっ! ポンポンを手にした腕を高く掲げる。中央に向けて、軽やかに駆けだす一同。風が、スカート揺らした。どよめきが走る。
「キレそう」
「リアちゃん、スマイルだよスマイル!」
 ひきつったスマイルを維持しながら、リアたちは走った。続いてはラインダンスだ。一列に並んで、タイミングよく足を掲げる。もちろんスカートは派手にめくれるので、「ヤベーパンツ」も丸見えになる。どよめきが走った。
「終わったら絶対焔さんと依頼人をお仕置きしますね……」


 すずなが言った。ラインの真中に居た、リディアと椿が、一歩、二歩と前に出る。観衆から最も目立つ位置。センター。それは、栄光と耳目を集める場所。リディアと椿が、抱き合うように身体を寄せた。それから、手を繋いで、ジャンプ! 翻る裾からもう色々と見えたが、もういちいち描写するのも野暮なくらいいちいち見えているので、もう好きなタイミングで好きなだけ見てください。
「やってやろうではないですかぁ!!!!!!!!」
「そうです、椿さん、その意気です!」
 メンバー全員が一か所にまとまる。スタンツ、肩や手に乗っかって、高い位置でポーズを決める奴である。
 まず台になったのは椿、焔、すずな、タイムの四人。リディア、リア、小夜、正純がそれぞれに乗っかり、思い思いのポーズを決め、ぽん、と飛ばされる、上空でくるり、と回転して、着地。色々見えたのはもちろんん、技術的に素晴らしい演技に、観客がわいた。
「それじゃあ、最後。入れ替えて、スタンツね」
 小夜が言った。再びみんなが中央に集まると、さっきとは逆、リディア、リア、小夜、正純が代になって、椿、焔、すずな、タイムがそれぞれの上に乗っかる。
「あとは、椿さんが中央でI字バランスをすれば完了です!」
 正純が言った。とんでもないオーダーだったが、椿はもう一周まわってなんか壊れていたので、気にならなかった。
 と――強い風が、吹いた。
 春一番だった。
「あーっ、焔! 春一番が! スカートを隠してあげたいけど手が離せない!」
 リアが叫ぶ。とたん、ぶわっ、と巻き上がるスカートとタンクトップ! 丸見えになる下着とブラ! 流石の焔もこれは恥ずかしい。
「んにゃああっ! ちょ、ちょっとまって!」
 ぐらり、と揺れる焔。
「ちょ、ちょっと焔さん! あ、暴れちゃダメ……!」
 タイムが悲鳴をあげる――揺れるスタンツ。耐えて居た一同は、しかしついにバランスを崩した。どた、と塔が崩れる。崩れた先には、あられもない姿をさらした乙女たちの姿あった。
 大事なものをさらけ出して、絡み合う乙女たち。詳しい描写を行うには字数と倫理の壁があるので、ピンナップでも作って補完しておいてほしい。
「うえええ、どうしてこうなるのぉ……」
 タイムが嘆きの声をあげた。その姿はバッチリ人々の耳目にさらされていた。最後の最後にこのような姿を見せてしまったが、其れは其れとして可愛い女の子たちがくんずほぐれつしているのは大変健康に良いので、観客たちは総立ちして拍手していたし、後日公開されたP-Tubeにはものすごい数のいいねと再生数を稼いだという。

 余談だが、この後出てきた夜妖は、小夜が「がんばれ♡がんばれ♡」と応援する中、全員でボコった。
 割とすっきりした。

成否

成功

MVP

リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日のフルール

状態異常

リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)[重傷]
木漏れ日のフルール
冰宮 椿(p3p009245)[重傷]
冴た氷剣

あとがき

 ご参加ありがとうございました!!!!!!!!!!!!!!!
 ありがとうございました!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 皆さんのやべーロライズの赤いパンツとヤベー布面積の少ない赤いブラを履いたチア服のイラストもお待ちしています!!!!!!!!!!!!!

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