PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<SiRVE/La>今朝釣れたての魚はなんてったって活きが良い

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●リヴィエ・ラという女
 リヴィエ・ラという女が、昨日からうちに泊まっている。
 こういった―――外部とあまり接点のない小さな村では、余所者というのは好奇と、排他の目で見られるもので、彼女に関しても例外ではなかった。
 皆、口には出さなかったものの、警戒心は顕にしていたし、『早く出ていけ』という空気を醸し出していた。
 雰囲気が変わったのは、向かいの若い夫婦の子供が彼女と楽しそうに話をしていたあたりからだ。余所者というのはこういう田舎を馬鹿にし、不遜な目で見てくるものだと思っていたが、見てみろ、優しい顔をしているではないか。
 子供が思わず近寄るほどの柔和な笑み。所作のひとつひとつが貴族のように洗練されているが、まるで嫌味がない。見るものを引きつける、一切の光がない濁った泥の底のような瞳に見つめられた日には、いい年をして、思わず顔を赤らめてしまうほどだ。
 そんなだから、リヴィエ・ラはすぐに村に受け入れられた。親しい存在になった。気軽に話ができ、悩みがあれば相談に乗ってくれて、料理はうまい。昔からそうだ。そういえば、小さな頃、一緒に川に魚を釣りに行ったっけ。あの時見かけたオクターヴァの群れは今でも元気だろうか。
 嗚呼、なんて良い日なのだろう、リヴィエ・ラと出会えるだなんて。空は今日も緑と紫の斑に輝いて雲ひとつないし、節くれだった街灯が、ハハ、通行人を食べている。
 そう言えば、向かい夫婦の子供はなんて名前だっけ。思い出せないな。最近、記憶力が落ちれいるのかも知れない。あんなにもエ・ゼ・デディヴェが空を泳いでいるのになあ。
 子供を食べれば思い出すかと思ったけど、そうでもないらしい。それにしても、リヴィエ・ラの料理はうまい。君もきっと気にいるよ。知ってるって? そりゃそうだよな。
 だって僕らはみんな、リヴィエ・ラから生まれたのだから。

●グールと推定される怪物の群れ
「村ひとつ分のグールぅ? ニャんだいそりゃあ。大規模な魔術実験でもあったのかい?」
 その話に、情報屋は露骨に顔を歪ませた。
 彼女の耳にその話が入ってきたのは今日の昼過ぎのことだ。
 とある―――外部とあまり接点のない村で、グールの群れを見たというのだ。
 発見したのはたまたま立ち寄った行商人。村についた頃には、既に活気というものがまるで感じられず、見回しても動くものはグール以外に何も居なかったらしい。
 グールというのは基本的に、例外なく人を食う。恐ろしくなった行商人は、それらに気づかれる前に逃げ出したというわけだ。
「そのあたりはこれから調査だけど、小さな村とは言え、その見渡す限りのグールというのは放っておいていい数じゃないわ。生存者もいるかも知れないし、調査班の安全を確保するためにも、まずは駆除をしないと何も始まらないのよ」
 女の言うことも最もだった。グールがひと所で留まっているということは、まだ生存者がいる可能性が高い。そして生存者がいなくなれば、他の村や町が次の標的になるだろう。
「わかったよ、すぐにチームを編成しニャきゃね」
 情報屋がうなずいたのを見て、濁った泥の底のような目をした依頼人は、柔和な笑みを浮かべるのだった。

GMコメント

皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。

アゾミダという村がグールの大群に襲われています。
これを駆除し、村に一体のグールも残さないようにしてください。
また、生存者がいる可能性があります。発見した場合、その保護をお願いします。

【キーワード】
■グール
・人を食べる怪物。人間のような見た目をしていますが、関節の節榑が目立ち、手足の指の間にはエラが張っています。会話のような素振りを見せることもありますが、その殆どは意味不明な単語の羅列で、意思疎通が成功した例はありません。

■リヴィエ・ラという女
・彼女の存在はキャラクターには非公開の情報です。

【エネミーデータ】
■グールの群れ
・アゾミダの村全体で徘徊しており、数十体はいると思われます。機敏な動きは苦手ですが、力が非常に強く、掴まれれば振りほどくことは困難でしょう。
・むせ返るような血の匂いがします。時間が経過するほどその臭いが鼻について、行動にペナルティを生じさせます。

【シチュエーションデータ】
■アゾミダの村
・特に言うことのない普通の村。多少、余所者への警戒心が強かったものの、近隣の村や町、行商人とはそれなりにうまくやれていた様子。
・近くに川があるが、流れが急で、子供を遊ばせることは出来ない。
・現在は道にも家々の中にもグールがおり、非常に危険な場所。
・どういうわけか、街灯が全てねじ曲がっている。
・生存者の存在は今の所不明。

【注意事項】
・少々、凄惨な描写が含まれます。参加の際にはご一考を。

  • <SiRVE/La>今朝釣れたての魚はなんてったって活きが良い完了
  • GM名yakigote
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年05月03日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費200RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
不遜の魔王
※参加確定済み※
ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)
自称未来人
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
※参加確定済み※
ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)
咲き誇る菫、友に抱かれ
※参加確定済み※
ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)
名無しの
九重 伽耶(p3p008162)
怪しくない
クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
海淵の祭司
※参加確定済み※
ヴィリス(p3p009671)
黒靴のバレリーヌ

リプレイ

●ねじくれた街灯の立ち並ぶ
 私はリヴィエ・ラから生まれ、リヴィエ・ラに育てられ、リヴィエ・ラから学び、リヴィエ・ラに恋をし、リヴィエ・ラと愛を語り、リヴィエ・ラと添い遂げ、リヴィエ・ラの子を生んだ。また同時に、リヴィエ・ラは私であり、私がリヴィエ・ラであり、私の子もリヴィエ・ラである。この子もまたリヴィエ・ラから生まれることだろう。リヴィエ・ラが望む限りは。

 ある春の、晴れ日のはずである。
 気温は過ごしやすい程度の暖かさで、動けば少し汗ばむ程度だろうか。
 爽やかに風が吹いて、それが適度に体を冷やしてくれる。
 この上なく心地よい、春の一日のはずであるのに。
 どうしてここまで、不安で、不穏で、大きな真綿がのしかかってくるような、奇妙な圧迫感を感じるのだろう。
「屍喰らう鬼と記せば読みとしては正しい。臭いを『感じさせる』程度には個を得た枝分かれと解せ、グロテスクとスプラッタは避けられぬ。相応に肉を蠢かせねば此方が餌食か。異化様に捌くが好ましい。魚肉ソーセージは如何物の類か」
 村が近いと言うだけで、既に血の匂いを感じ始めているが、『同一奇譚』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)はその中に、鉄分だけではあり得ぬ臭いを見つけたようだった。
「グールっていうと墓暴きだけでなく子供を攫うことでも有名で……ややや、おくちチャックっ」
 キュイィイイっと口真似でジッパーが閉じる音を再現しながら、自分の唇を閉じるような動作をとる『自称未来人』ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)。口は災いの元。魔術も神秘もある世界では、眉唾と笑うには留められない。
「ヨハナみたいなギャグキャラが言うのもなんですが、皆さま急がず焦らず、でも早急に。そして予め覚悟を済ませておくのをお勧めしますっ」
「……嫌な感じ」
『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)が眉をひそめたのは、臭いのせいばかりではなかった。
 感情を旋律として捉えることのできる彼女固有の能力。それが今、不協和音としてそこらじゅうで鳴り響いている。どれもこれも歪で、捻じくれて、しかし聞き入れば引き込まれそうな、人を不快にさせる調べであった。
「ただ、とても分かりやすいわね。どいつもこいつも、友好的じゃないもの」
 それはある種、心休まることでもあったかもしれない。
「……グールですか。こちらでは『そう呼ぶ』のですね」
『影を歩くもの』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)もまた、違和感を感じ取っているようだ。
「エラのついた手足……存外、顔も魚みたいになってたりしてるのでは?」
 血の臭い。死の臭いは嘘ではない。これが人を食らった臭いだと言うならば、確かにそうなのだろう。
「はてさて、まるで『ゆめみるように』虚ろな彼らは、何を『まちいて』いるのか」
「……グールねぇ。グールってのはエラなんざついてるもんなのかね。それにグールがわざわざ街灯を全部捻じ曲げるか?」
 グールと聞いてイメージできるのは、人間のような姿かたちをしていて、どこか死人のようでもあり、いうなればゾンビと餓鬼の間の子のような、そのようなものだ。
 『名無しの』ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)にしても例外ではなかったが、故にその実態には違和感がある。
「グール以外の何かが巣食ってやがると考えて動いたほうが良さそうだな」
「グール蔓延る村にわし見参!」
 聞こえないようにそれなりの声で、目立たないようにそれなりの距離でびしっっとポーズを決める『怪しくない』九重 伽耶(p3p008162)。
「ふむ、まぁ、わかってたことじゃがすぐ見えるところにもうおるのー」
 グールらはいたるところに居るようで、そこかしこに住み着いているようで、もはやこの村は完全に占拠されたと見て良さそうだ。
「街灯もいびつに変形しておるし……これ、生存者おるのかの?」
「なぜだろう。ここは陸なのに……あの海のような気配がする」
 すんすんと鼻を動かして、『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)もまた、その中に微細にこびりつく別の臭いを感じ取っていた。
 同じようであり、別物でもある。作られたような、イメージに当てられたような、そう見えるように作ったような歪さがある。
「うみの おとしご
 くらき ゆりかご
 まどろみ ゆめみて まちいたりしは
 あかごの かそけき うぶごえか♪」
「うーん……よくわからない村ね。グール? って何なのかしら。外は私が知らないことばかりだわ」
『剣靴のプリマ』ヴィリス(p3p009671)は漂ってきたそれにひとつ鼻を動かすと、後悔したように眉根を寄せた。むせ返る、とはこのようなことを言うのだろう。
 血の匂いを今更忌避するわけではないが、ここまで溢れかえっていれば、生物的に拒否の姿勢を取らざるを得ない。
「……嫌な臭いね。さっさと済ませましょうか」
 そうして村に脚を踏み入れた彼らを、一体のグールが出迎えることになる。

●にこやかにほがらかに
 この村の全てがそうだ。一から十までがそうだ。一から百までがそうだ。一から不可説不可説転までがそうだ。全てがリヴィエ・ラより生まれ、リヴィエ・ラであった。おかしな顔をしているね。何も理解できないって顔だ。大丈夫だよ。おかしくはない。君もいずれわかるようになる。ここにいる限りわかるようになる。もうわかっている。わかっている。わかっている。

「やあ、ローレットのひとだね。ここはアゾミダの村だよ!」
 手を上げて、友好的な笑みまで浮かべながら、そいつは元気に挨拶してみせた。
 途端に警戒心が膨れ上がる。こんなにも親密な態度を取られているのに、脳が警鐘を鳴らしてやまない。
「僕たちはみんな、リヴィエ・ラによって書き換えられてしまったんだ。ほら、この顔を見てよ。魚みたいに見えるだろう」
 理解してはならない、そんな気がする。男の言葉を、理解してはならない。
「でも大丈夫、それだって幸せを感じるようになっているからさ。君たちもすぐにそうなるよ。それじゃあ、いただきます」

●嘗て何某かであったものの群れ
 そうだリヴィエ・ラ。君もリヴィエ・ラになった。そのように作り変わった。現在も未来も、過去も生まれも育ちも遺伝子も思考も存在理由も、リヴィエ・ラのものになった。リヴィエ・ラのようになった。そのように望まれたからだ。リヴィエ・ラが君をそうでありたいと望んだから、我々がそうであれと望んだから、そのようになったのだ。

 いただきますと、グールがかぶりついたものはオラボナの用意した肉であった。
 表面上は紛れもなく哺乳類の肉。血の臭いが充満していて区別するも何もあったものではないが、我先に食らいついたところを見るに、グールとしては何らかの感じ入るものがあったのだろう。
 だが、討伐者の用意したそれが罠でないはずもなく、中に仕込まれた石は噛み付いた牙を砕き、添えられたトゲは頬を突き破る。痛みのあまり体をくの字に追って悶える姿は、とても人間のようであった。
 何かを言い出す前に、迷いなくその顔を踏み砕く。
 自分たちを惑わすような発言をしていた。そう考えれば厄介な存在である。力が強い上に、人並みの知恵も持っているのだから。
「さあ、うまい肉は此処だ」
 視線を集中させろ。村中にいると言うならおびき出せ。こっちの肉はうまいぞ。赤子の肉はしたたるぞ。

「やややっ? グールじゃなくて河童じゃないですっ?」
 エラでつながった水かきのような手足は、ヨハナにまるでジャンルの違う別生物を想起させたようだ。頭に皿でも乗っていればパーフェクト。
「尻子玉抜かれちゃうならお尻は死守せねばですよっ! 水場に近づくのはありよりのなしっ!」
 近づいてきたグールの一体を殴りつける。肉を打つ音、骨の砕ける音は知っているものと同じであったが、グールとはそのようなものなのだろうと自分を納得させた。 
 ふと、街灯に視線が行く。ねじくれた街灯。人の手で曲げたと言うよりも、生物的な何かに見えるそれ。
 それが口を開いて、近寄るグールのひとつを頭から咥えこんで、丸呑みにした。
 したように、見えた。
 気のせいだろう。首を振って馬鹿な幻視を振り払い、戦いに集中することにする。

 時間が進むに連れ、違和感は色濃くなっていく。
 人を食う化け物が蔓延っているのに、骨のひとつも見つからない。街灯の近くに寄ったグールが時折、消失しているように見える。襲ってこないグールもいる。談笑しているように見えるグールもいる。気さくに話しかけてくるグールもいる。二階の窓から洗濯物を干しているグールもいる。
「こいつら、本当にグール、なの?」
 まるで、と思いかけたその先をリアは振り払った。
 別の単語に置き換える。
「どっちかって言うと、半魚人みたいな……って、くっさ! この匂い、あまり長くは嗅いでいたくないわね」
 鼻を摘んで顔をしかめたら、馬鹿馬鹿しい妄想はどこかへ行っていた。
 戦いに集中しなければ。充満する血と、磯のような臭い。ここはもう、人間が長居していい場所ではないのだから。

「兎に角彼らがこの村を出てしまうのが最悪ですからねえ……」
 言いながらも、ヴァイオレットはそのようなことは起きないのではないかと思い始めていた。
 確かに自分の姿を見るなり襲いかかってくるグールは多数いる。今もその数は途絶えることがなく、ひとつひとつ確かに、丁寧に討伐し続けているが、それでもわらわらと、わらわらと顔を出してはこちらを見、嬉々として爽やかに暴力を奮ってくる。
「はて……?」
 今自分が抱いた感想そのものに微量な違和感を覚えたが、何のことはあるまい。ヴァイオレットとて、グール共をおびき寄せる囮となり、彼らから逃げ回っているのだ。些事に思考の大半を取られてはいけない。
 だが、一体どういう意味なのだろう。
「やあこんにちは、村の外から来た人だね。何もないところだけどゆっくりしていってよいただきます」って、どういう意味なんだろう。

「つっても本当に救助者なんざいるのかね。だがもしもがあっからな」
 いるのかどうかもしれない誰かを時間制限付きで捜索する、などということはニコラスにしても困難であった。
 血の臭いが鼻につく。荒事に慣れていないなどとは言わないが、こうも充満していると、頭がクラクラしてくる。先程もまた、街灯がグールを食らう幻覚を見たばかりだ。急がねば、気を違えてしまうやもしれない。
 ああだが、ようやっと聞こえた。
 感知できた方向に目をやる。それは助けを求める声だ。音に出さなくとも感じ取れる、窮地を脱する何かを求めるもの。
 見えたのは一般的な人家だった。迷うことなく押し入り、声を荒げながら中を探せば、その子は食卓にいた。
 歯をがちがちと鳴らして震える少女。対面に座るグールが、スプーンで食卓の腐肉を掬い、少女に差し出している。
「どうなってんだ、これ……?」

「教会はもう見たかい? あそこで明日、結婚式があるんだよ。急ぎの用がなければ、ぜひ見ていってほしいね」
 そう言ってグールが力任せにようやく捕まえたと思ったものは、伽耶の残した残像に過ぎなかった。
 回避から攻勢へと、即座に転じた彼女の居合がグールの胴を裂き、たたらを踏ませる。傷口から黒い粘液のようなものを零しながら呻く怪物。
 一歩、二歩と後ろに下がったその態勢を好機と見、伽耶は追撃すべく大きな一足を踏み込もうとした、その時だ。
 グールが突如として消失した。
「なんじゃ……?」
 眉をひそめても、何が起きたのかを見出すことはできない。
 あのグールは傷の痛みに呻きながら、街灯にもたれたように見えた。
 訝しげな瞳で、ねじくれた街灯を見る。なにもない、曲がっているだけの、普通の街灯の、はずだ。
 だが不用意に近づこうとは、微塵にも思わなかった。

 生存者の発見も、終盤を迎えようとしていた。
 ようやっと、村全体を大まかに把握することができたのだ。
 一区切りが見えれば、それだけでもほっとする。ここの悪臭は本当に、精神に堪えるのだ。
「しかし……グールか? これが本当に? 我らは最初からひどい間違いをしているのではないのか?」
 今も意味不明な言葉を投げながら襲い来るグールをいなし、反撃する。
「ふんぐるい むぐるうなふ……」
 その音も、聞いているのかいないのか。それとも聞こえてすらいないのか。
 何かがズレている気がする。自分たちが滅しているものは果たして何なのか。街灯がついぞ本性を表し、指をさしてこちらを笑っている気がする。
「正気を見失うな、クレマァダ」
 ありえない。もう街灯はただの街灯だ。ねじくれ曲がって不可思議に、ゲラゲラと笑うだけの街灯に過ぎない。
 なんだ、なにがおかしいんだ。

 ヴィリスが最後の生存者を発見した時、その子供は怯えながらグールと手を繋いでショッピングウインドウをしているところだった。
「助けて、誰か、誰か……」
「あら、だめよ。お菓子はひとつまで。誰も来ないから諦めなさい。好き嫌いをしてはいけないわ」
 即座にグールの頭を蹴り飛ばすと、子供を抱きかかえて救出する。
 おかしなことばかりだ。
 救えた生存者はどれも子供ばかり。その誰もが隠れていたわけではなく、グールと共にいた。子供は怯えきってはいたが、誰も大きな怪我をしておらず、奇跡的にも全員が無事であったのだ。
 大人はどこに。そう問いただすのは酷だろうと、憚られた。
 だが疑問は残る。しかし、現状は熟考を許してはくれないようで、音に気づいたのか。見れば多数のグールに囲まれている。
「わらわらと観客のお出ましね! ふふ、プリマの踊りを存分に楽しみなさい!」

●She≠faithless
 ああそうだ。ついさっきからそうなったんだ。

 戦いが終わって、村を捜索しては見たものの、大きな成果を得ることはできなかった。
 なんといっても、時間が足りなかったのだ。
 グールを殲滅できたものの、悪臭がおさまるわけではなく、それが常に精神を蝕んだ。
 荒事慣れしているイレギュラーズでさえ、長時間の行動継続は憚られる中、救出した子どもたちの安全も考えると、それ以上の調査は打ち切らざるを得なかったのである。
 わかったのは、どこにも人を食った残りが見つからなかったこと。壊された建物などはなかったこと。その程度で、謎は深まるばかりである。
 しかし、今はせっかく助けた子供に笑顔を向けてやろう。わざわざ不安を助長させることはない。
 救えた命があることが、何よりの戦果なのだから。

 了。


 某日。
 病院にてグールが発生。多数の被害を出したものの、グールは問題なく殲滅された。
 被害者は多く、また無残なものであったため、照合は困難極まるものとなっている。
 特に、受け入れたばかりの子どもたち十数名が、未だ死体が見つからず、行方不明扱いのままだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

海のような臭い。

PAGETOPPAGEBOTTOM