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シナリオ詳細

パカダクラの背に薬を乗せて 越えろ砂漠の危険地帯

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●街の人々を蝕む熱病
「熱い、よう……苦しい、よう……」
「頑張るのよ。もうすぐ、お父さんが薬を持ってきてくれるからね……」
 幼い少年が、ベッドの上で苦しんでいる。その顔は高熱によって赤く火照っており、ダラダラととめどなく汗が流れ落ちていた。少年の額には、頭を冷やすために水に濡らした布が置かれていたが、それもすぐに温くなってしまう有様だった。
 少年を励ましている母親も、少年と同様に熱に侵されていた。その顔は赤く、歩みはふらついて危うい。それでも、夫が薬を持って帰ってくるまで息子を死なせるわけにはいかないと、自らの病を押して息子を看病していた。
 熱病に冒されているのは、この母子だけではなかった。母子が暮らすベウミの街全体に、熱病が蔓延していたのである。

●パカダクラを借りに
 母子から、そしてベウミの住民全体からの期待を受けた鷹の飛行種サクルは、全速力でベウミからネフェルストへと飛び、必要な分の薬を買い付けることに成功した。
 だが、それをベウミに持って帰るにあたって、問題が発生した。
 持ち帰るべき薬の量は多く、今度はサクルが飛んで持って帰るというわけにはいかなかったのだ。故にサクルは、パカダクラを借りられないか商人達に当たってみたのだが――。

「真っ直ぐベウミに向かうだって!? 馬鹿言っちゃあいけないよ!
 そんな馬鹿に、誰が大事なパカダクラを貸したりするもんか!
 如何してもと言うなら、パカダクラを買い取ってくれ。それが無理なら、諦めな!」
 平身低頭でパカダクラを貸して欲しいと願うサクルに、商人は剣幕を変えて怒鳴りつける。大体、どの商人もこのような態度を取ったが、商人達からすれば当然だった。
 ネフェルストからベウミの直線コース上にある砂漠では、少し前から巨大なデザートワームが出現しており、何組もの隊商が襲撃されていたのだ。傭兵達が何度か討伐に向かったものの、ことごとく帰ってきていない。故に、今はネフェルストからベウミに向かうにはデザートワームが出現する地域を大きく迂回するのが当然となっていた。
 パカダクラを買い取ってそこに言くのならサクルが死ぬだけですむが、買い取るよりも安い金で貸しただけのパカダクラをそんなところに連れて行かれてはたまらない。まず帰ってくることはなく、大損をするだけだ。
 だが、パカダクラを買うだけの資金はサクルには無い。かと言って熱病に冒されながら帰りを待つ妻子や住民達のことを思えば、例え危険だろうと迂回するよりも直進してベウミに戻りたいと、サクルは焦っていた。

 ――ネフェルスト中を歩き回った末に、サクルはある若い商人と出会った。
「そんな事情がなぁ……いいぜ、パカダクラは貸してやるよ。だが、条件がある」
 その条件とは、商人がローレットにサクルとパカダクラを護衛すると言う依頼を出すので、サクルはイレギュラーズ達に護衛されながらベウミへ戻ると言うものであった。サクルは商人の厚情に感謝したが、商人からすれば同情はしつつも損はしないように手を打っただけのことである。なお商人はサクルにある事実を隠しているが、この時点でサクルがそれに気付くことはなかった。

●商人の、二重の保険
「今回の依頼だけどね、内容はサクルと言う男と、サクルが借りたパカダクラ二頭、そして熱病の薬を含む積み荷のベウミまでの護衛、となっているよ。
 依頼人は、サクルにパカダクラを貸し出した商人。だね」
 そこまで『夢見る非モテ』ユメーミル・ヒモーテ(p3n000203)が告げると、ユメーミルの前に集まったイレギュラーズ達は違和感に首を捻った。
「……と、なっている?」
 どう言うことだと言わんばかりにイレギュラーズが尋ねると、ユメーミルは渋い顔をしながら答える。
「……サクルには口外するなと、キツく言われてるんだけどねえ。
 もしパカダクラが死んだ場合、サクルなりベウミの街なりから手段を問わず相応の金品を取り立てて、損失の穴埋めをしろ、とさ。
 パカダクラが全部無事なら、めでたしめでたしですむ話なんだけどね」
 ユメーミルは肩をすくめて、イレギュラーズ達の方を身やった。つまり商人は、イレギュラーズ達による護衛を第一の保険とし、その保険が及ばなかった場合に損害分をイレギュラーズ達に回収させることで第二の保険をもかけたわけである。
「出来れば、頑張ってパカダクラを全部守り抜いておくれ。
 そうすりゃ、ハッピーエンドで話を締めくくれるってもんだよ」
 そこまで言うと、ユメーミルはイレギュラーズ達を激励するように、その肩をバン! と叩くのであった。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。今回は、熱病に苦しむ妻子やベウミの街の人のために敢えてアークデザートワームの出現する危険地帯を突っ切ろうとするサクレ、並びに熱病の薬などの積み荷、そしてそれを運搬するパカダクラの護衛をお願いします。

●成功条件
 サクレ、積み荷の無事。
 パカダクラも全て無事であることが望ましいが、パカダクラが死んだ場合は、サクレやベウミの街から金品を取り立てて商人が損をしないよう補うことで、依頼達成とする。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 ネフェルストとベウミの直線コース上にある平坦な砂漠です。時間は昼間、天候は晴。
 環境による戦闘へのペナルティーはありません。

●初期配置
 皆さんの索敵次第で変わります。索敵が上手くいかなければデザートワーム達が足下から突然出現する可能性もあり得ます。
 一方、索敵が成功すれば、デザートワーム達とは距離を取った状態で、戦闘を始めることが出来るでしょう。

●アークデザートワーム ✕3?
 砂漠に住むワームがアークモンスター、すなわち怪王種となったものです。直径3メートル以上、全長50メートル以上あります。
 砂の中を潜行しているため、奇襲されずに発見するには何らかの非戦スキルを用いる必要があるでしょう。
 能力傾向として、巨体故か特に生命力が極めて高く、攻撃力と特殊抵抗も高くなっています。命中はそれなりで、回避と防御技術に至っては皆無です。

・攻撃手段など
 牙 物超単 【移】【弱点】【鬼道】【流血】【失血】
 体当たり 物超単 【移】【弱点】【鬼道】【崩れ】【体勢不利】
 砂のブレス 神超貫 【万能】【石化】
 マーク、ブロック不可

●怪王種(アロンゲノム)とは
 進行した滅びのアークによって世界に蔓延った現象のひとつです。
 生物が突然変異的に高い戦闘力や知能を有し、それを周辺固体へ浸食させていきます。
 いわゆる動物版の反転現象といわれ、ローレット・イレギュラーズの宿敵のひとつとなりました。

●サクレ
 傭兵の街ベウミに住む鷹の飛行種で、今回の護衛対象です。ベウミで流行っている熱病の薬を求めてネフェルストを訪れ、手に入れた薬をベウミまで運ぶ手段として、苦心の末に商人からパカダクラを借りました。
 一刻も早く薬を妻子やベウミの住民達に届けたいと考えており、ベウミまでは迂回コースを取ることなく、アークデザートワームの出現する直進コースで帰るつもりです。
 戦闘能力は皆無であり、アークデザートワームに攻撃された場合、かなり高い確率で死亡します。

●パカダクラ ✕2
 サクレが商人から借りた、積み荷を運ぶためのパカダクラです。2頭います。
 戦闘用の訓練などはされていないため、騎乗戦闘などに使うことは出来ません。
 戦闘能力も皆無で、アークデザートワームに攻撃された場合、ほぼ間違いなく死亡します。
 全速力で走らせても、アークデザートワームは振り切れません。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • パカダクラの背に薬を乗せて 越えろ砂漠の危険地帯完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月02日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
箕島 つつじ(p3p008266)
砂原で咲う花
ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
ヴァルハラより帰還す
ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針
視万斗 境(p3p009580)
凶視の傍観者

リプレイ

●パカダクラは守りとおす
 熱病に苦しむベウミの街の人々のために、ネフェルストまで文字どおり飛んで来た鷹の飛行種サクレは、薬の買い付けに成功した。だが、帰りは薬を抱えて飛ぶことが出来ず、薬を運ぶための足が必要になる。折しもネフェルスト~ベウミ間を結ぶ直線上の砂漠には巨大デザートワームが出現しており、一刻も早く薬を届けるべく真っ直ぐベウミに向かいたいというサクレにパカダクラを貸す商人はいなかった。
 だが、最後にサクレが訪れた商人は、護衛にイレギュラーズを雇うことを条件に、二頭パカダクラの貸与を承諾した。その裏には、パカダクラに損害が出た場合、イレギュラーズがサクレやベウミの街から金品を取り立てて損害を補填しろと言う条件があった。
「面倒な取り立てなんて、御免だね。パカダクラは必ず二頭とも生かしたまま、仕事を終えてやる!」
「ああ、彼等を無事守りとおせば万事が解決だ。ユメーミルからも言われたが、気を引き締めてかかろう」
 商人から示された条件を聞いた『最期に映した男』キドー(p3p000244)が息巻くと、『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)が静かに深く頷き、同意を示した。サクレと薬はもちろん、パカダクラもしっかりと守り切れれば、損害補填のために取り立てなどやる必要はないのだ。
「命に係わる品の流通が、こんな? 簡単ではないけど、国として早急に変わるべきよね。できなきゃ、傭兵の先行きは暗いわ」
 依頼に至った経緯を聞いた『あの虹を見よ』美咲・マクスウェル(p3p005192)は呆れたように愚痴をこぼしたが、今はそれよりもベウミの人々を一刻も救うのが優先だと思い直す。
「さ、まずは大雑把でも地図出して! 経路や地形の把握!」
 ベウミへの薬の輸送を成功させるべく、美咲はベウミまでの道のりについて調べ始めた。
(ボクは別に善人じゃないから、サクレさん必ず助けたい! とかはないけどさぁ。でもさぁ。
 誰かのために命懸けてる人見たらさぁ、ちょっとはこう……お手伝いするのもいいかなって、うん)
 パートナーである美咲の様子を眺めつつ、『特級回避盾』ヒィロ=エヒト(p3p002503)は物思いに耽った。そんなヒィロの今回の目標は、不幸になる者を誰も出さないことだ。
(サクレさんもベウミの人達も依頼主の商人さんも、みーんなハッピーエンド! えへっ)
 それが叶った時のことを想像したヒィロは、にへらとした笑顔を浮かべた。
「嗚呼、なんて不幸だ……サクレ一人に頼らざるをえなかった街も、二重の保険をかけた商人も、デザートワームも悪くない。そして状況は一刻を争うときている。サクレに委ねられた、希望はあまりに重い。
 だけど、そういう時のために俺たちがいる。万が一なんて起こさせやしない―――サクレの不幸、俺が拭ってやるよ」
 他人の不幸を見ると放っておけずに躊躇せず手を差し伸べる『凶視の傍観者』視万斗 境(p3p009580)は、当然この件も放っておけず、サクレの護衛依頼に名乗りを上げた。そしてサクレには伏せられた条件を聞いて大仰に嘆いてみせた後で、自信満々に言い放った。

 その後、イレギュラーズ達は護衛対象であるサクレ、そして薬を積んだ二頭のパカダクラと合流する。
「さぁ、疾く行こう。私たちが護るから、あまり前には出ないように」
 『夜に這う』ルブラット・メルクライン(p3p009557)は、サクレにそう話しかけた。それにしても、薬があるだけ恵まれた話だ、とルブラットは医者として思う。薬もなく、罹れば死を待つしか無い病気が世にどれだけあることか。ならば、その幸運を損ねないようにするのが自分達の役割だと、ルブラットは考えている。
「……暑苦しいなぁ」
「日差し、強烈やもんねえ」
「あ? 日差しじゃねぇよ。あの飛行種、正義感ってやつかね。眩しいこった」
「ベウミに帰りを待つ妻子がいるそうやから、それもあるんやろと思うけど」
 サクレを見た『月夜に吠える』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)のつぶやきに、『砂原で咲う花』箕島 つつじ(p3p008266)が応じた。ルナとしては、病に苦しむ街の人々のためにわざわざ砂漠を越えてネフェルストまで薬を買い付けに来るサクレに言いようのない暑苦しさを感じていたが、つつじに帰りが待つ妻子の存在を指摘されると、ふうん、と顎を撫で、少しサクレを見る目を変えたようだった。
 ともあれ、サクレがどうあろうと、依頼は依頼である。ならば、ルナもつつじも成功させるべく付き合うまでだった。

●最前部への集中攻撃
 ヒィロを先頭に、一行は巨大デザートワームが出るという砂漠を進んでいく。地中からの奇襲が予想されているため、イレギュラーズ達は可能な限りの索敵手段を講じていた。
 尋常ならざる聴覚で砂の中を移動する巨大デザートワームの音を探らんとするのはラダ、ルブラットであり、尋常ならざる視覚で砂漠に不審な状況がないか探っているのはつつじだった。ルナは尋常ならざる聴覚と視覚に加えて、嗅覚も用いて風の匂いを嗅ぎながら巨大デザートワームの存在を探る。
 美咲は使い魔によって空からおかしな事がないか俯瞰し、境は敵意を持つ者を感知する能力を働かせていた。

「まだ大分遠いだろうが、いるな……よりにもよって、正面だ」
「ああ、私も聞いた。戦闘は、避けられそうにないな」
 最初に巨大デザートワームが地中を移動する音を耳にしたのは、ラダだった。続いてルブラットも、その音を耳にする。
「仕方ねえ、ちょっと、釣って来るか……まるで、釣り餌だな」
「釣り餌? いやいやそんな、とんでもねェ。へっへっへ……頼むぜ、後で一杯奢るからさ!」
 さらに続いて巨大デザートワームの移動音を確認したルナが、不本意と行った様子ながらも一行から飛び出して、巨大デザートワームのいる辺りへと向かう。その際にルナはキドーをジロリと睨んだ。キドーはその視線を平然と受け流して笑うと、酒を奢る約束をしてルナを送り出す。
「巻き込まれないように、今のうちに下がっておいて」
「行こうぜ。俺がついておくから、安心しな」
 美咲はサクレにパカダクラと共に交代するよう指示し、そのサクレが不意の襲撃を受けたりしないように、境がサクレの側にいることにした。
「さあ、いつでも来るといいよ!」
「よっしゃ、やったるでえ!」
 ヒィロとつつじは何時でも来いとばかりに、気合いを入れた。

「いるんだろ? 相手してやるぜ、かかって来いよ」
 真下に巨大デザートワームがいるであろう地点に着いたルナは、その敵意を煽るように地中に向けて語りかけた。
(さぁて、おっかけっこだ。いくらでも、逃げてやるよ)
 ズザザザザ、とこれまでよりも違った激しい音がルナに迫る。すぐに、ガバアッ! と巨大デザートワームが砂の上に姿を現した。直径は三メートル以上、長さは数十メートルはありそうだ。それを確認したルナは仲間達の方へと、付かず離れずで巨大デザートワームを誘引し始めた。
「来たわね。準備はいい? ヒィロ」
「OKだよ! 任せてよ、美咲さん」
 ルナに誘引されてきた巨大デザートワームを目の前にして、美咲がヒィロに尋ねる。ヒィロは、美咲に深く頷いた。ヒィロの返事を確認した美咲は、二十メートルを切るところまで接近してきた巨大デザートワームを、魔眼に魔力を込めて睨み付けた。
 その視線を受けた巨大デザートワームが、ビクッと身体を震わせる。それを確認したヒィロが、好戦的な雰囲気を醸し出しながら、人差し指をくいくいと曲げて巨大デザートワームの敵意を煽った。それが理解出来たかは不明だが、ともかく巨大デザートワームは、ヒィロにその狙いを変える。
「変わってくれてありがとうよ。こいつは散々追いかけ回してくれた礼だ!」
 巨大デザートワームの敵意をヒィロが引き付けたのを確認したルナは、ヒィロに礼を述べると逃げるのを止めて巨大デザートワームに急接近し、その最前部にスピードの乗った蹴りを叩き付けた。ぐにょりとした感触と共に巨大デザートワームの前面が横を向き、その動きがわずかに硬直する。
「この機は逃さない、食らえ!」
 その隙を衝いて放たれたラダの、『九人の賢者』から立て続けに放たれた四発の銃弾が、巨大デザートワームの最前部側面に突き刺さる。銃弾は四発とも巨大デザートワームの体内へと突き刺さり、巨大デザートワームの身体を微かにではあるがピクピクと痙攣させた。
「よっしゃ、さっさと落としにいくで!」
 これだけの巨体を闇雲に狙っても仕方ないと、つつじはラダが穿った弾痕に重ねるようにして、風鷹剣『刹那』を大上段に振り下ろす。目にも留まらぬ神速の一閃は、ざっくりと巨大デザートワームの身体を深く斬り裂いた。ビクッ、と巨大デザートワームの身体が大きく跳ね、どろりとした血が大量に流れ出してくる。
「水妖にはちと相性が悪い環境だが……水分はワームの血でも啜って我慢してくれや!」
 キドーは盟約を交わした邪妖精フーアを召喚すると、巨大デザートワームへとけしかけた。フーアは「ちっ、仕方ねえな」と言う表情を返すと、巨大デザートワームへと向かっていく。そして、つつじによって刻まれた傷や、ラダによって穿たれた弾痕を短剣で抉っていった。それが苦痛であるのか、ビクッ、ビクッと巨大デザートワームは立て続けに最前部を中心に身体を小刻みに震わせる。
「その傷から、こいつをねじ込んでやるぜ!」
 目を覆う液晶バイザーを外した境が、つつじに斬られた巨大デザートワームの傷を狙って、掌を前に突き出す。そして掌に魔力を集めて凝縮させると、砲弾の形にして撃った。魔力の砲弾は狙いを過たず巨大デザートワームへと突き進んでいくと、つつじが刻んだ傷を圧し拡げるようにしてその間を潜り、体内を貫いていった。その衝撃に、巨大デザートワームは身体をぐねぐねと捻らせた。
「私の操り人形に、なってもらおうか」
 美咲の魔眼によって巨大デザートワームの状態異常への抵抗力が落ちていると見たルブラットは、無数の不可視の糸を放った。不可視の糸は巨大デザートワームの最前部を斬り裂き、体内へと食い込んでその動きを束縛していく。その巨体故に、不可視の糸は完全に巨大デザートワームを操り人形とすることは出来なかったが、最前部の動きさえ束縛してしまえば、巨大デザートワームの動きは封じたも同然と言えた。
 巨大デザートワームは、ヒィロにその牙で噛みつかんとする。だが、不可視の糸に束縛された巨大デザートワームは、最前部を動かすことが出来ずうねうねとその長い身体をくねらせるのみであった。

●ベウミ到着
 巨大デザートワームは、その巨体に相応しく膨大な生命力を有していた。だが、イレギュラーズ達に頭とも言える最前部を集中攻撃されては、長く持ち堪えることは出来なかった。なかなか動きを止めない巨大デザートワームに手を焼きつつも、イレギュラーズ達は最初に遭遇した巨大デザートワームを斃すことに成功する。
 その後三体の巨大デザートワームを発見したイレギュラーズ達だったが、一体は方向が違い、距離も離れていたため如何にか気付かれずにやり過ごした。だが、残る二体のうち一体は最初の個体とほぼ同様に前方にいたために避けられず、もう一体は方向は別であったがイレギュラーズに気付いて接近しつつあったため、交戦を余儀なくされた。
 だが、三体目との交戦時には何人か気力の消耗しきった者が出たものの、一体目で戦い方を掴んだイレギュラーズ達にとって巨大デザートワームは敵ではなかった。巨大デザートワームはイレギュラーズ達に最前部を集中攻撃される一方で、イレギュラーズ達に傷一つ付けることは出来なかった。
 その主な要因は、巨大デザートワームの抵抗力が美咲の魔眼によって落ちたこと、そこをヒィロに衝かれて敵意を煽られ、かつルブラットの不可視の糸で動きを束縛されたことだった。巨大デザートワームはそもそも攻撃自体を封じられてしまい、如何にか束縛を振り切って攻撃を行っても、卓越した回避の技量を持つヒィロには掠り傷一つ負わせられなかったのだ。

 巨大デザートワームの出現する砂漠を越え、無事にベウミに到着したイレギュラーズ達は、大いに喜び合った。パカダクラが二頭とも無事である以上、サクレやベウミの人々から金を取り立てなくてもいいのだ。取り立てをするのはイレギュラーズ達も好まなかったらしく、何人かは、もしパカダクラが死亡した場合、依頼の報酬をその弁済に充てるつもりでさえいた。
 その後、薬が早期に届いたこと、ならびにルブラットが医者として治療に手を貸したことで、ベウミで流行していた熱病はなりを潜めた。何人かサクレの帰還前に死者は出ていたものの、その後は誰一人として命を落とすことなく、サクレの妻子を含むベウミの人々は無事に健康を取り戻した。
 もう少し遅ければもっと多くの人々が死んでいただろうとサクレやルブラットに聞かされたイレギュラーズ達は、巨大デザートワームが出現する砂漠を真っ直ぐ進もうとするサクレを守った甲斐があったと、感慨深いものを感じるのであった。

成否

成功

MVP

ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
ヴァルハラより帰還す

状態異常

なし

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。サクレと薬、パカダクラは皆さんの手によって巨大デザートワームからしっかりと守られ、持ち帰られた薬とルブラットさんの協力もあってベウミの人々は流行していた熱病から無事に回復しました。
 MVPは、巨大デザートワームに対して確実に先手を取らせることに寄与したルナさんにお送りします。

 それでは、お疲れ様でした!

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