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シナリオ詳細

ロイヤル・ロイヤル・スイーツロワイアル

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ここに伝説の逸品アリ
 鉄帝――質実剛健とした部の国たるこの国では、食事もまたトレーニングととらえ、栄養価の高い食事をとる事が多い。が、其れは其れとして、娯楽を目的とした食というものはもちろんある。
 例えば、甘味(スイーツ)。栄養素の摂取という意味では(エネルギーの迅速吸収という面ではメリットはあるが)あまり重要視されないそれも、鉄帝にはしっかり文化として根付いている。
 クッキー。フルーツケーキ。コンデンス・ミルクを使ったケーキ……鉄帝にも独自のスイーツ文化は確かに存在し、鉄帝人たちの舌と心を楽しませているのだ。
 さて、ここにとあるスイーツ店がある。『ヴィーシニャー』という名前のその店は、とある時代の皇帝が、その旨さから御用達(おきにいり)にしたという触れ込みの老舗である。その売り文句の通り、非常に高価ながら、非常に上質のケーキやお茶、甘味類を提供するこの店は、鉄帝人庶民にとっても、特別な日のデザートとして親しまれているのである。
「……おいしそうだなぁ」
 むむ、と唸りつつ、ヴィーシニャーの店舗に張られた張り紙を見つめるのは、クルル・クラッセン(p3p009235)である。鉄帝の街中でウインドウショッピング中、クルルはたまたまヴィーシニャーから香る甘い香りに誘われたわけである。
 ショーウィンドーから覗く、様々な甘味。それらももちろん魅力的だが、クルルが興味をひかれたのは、前述したとおり店舗に貼られた張り紙。それは、『ツヴィトーチヌイサート』と名付けられたケーキの宣伝であった。
 ヴィーシニャーには、『ツヴィトーチヌイサート』と呼ばれる、豪華絢爛なケーキがある。件のとある時代の皇帝のお気に入りとされたそのケーキは、季節の様々なフルーツを大胆にあしらい、真っ白なクリームでコーティングされたケーキである。その時々での最上の材料を使い作られるというそのケーキ。多くのモノが一度は食べてみたいと夢に見ると言うこのデザートは、しかし通常の手段で口にすることはできない。
「値段が書いてない……ん? なんだろう」
 かつて皇帝が所望したという伝説に乗っ取り、このケーキを食べるものは『皇帝の如き強者でなければならない』とされるのである。
「……ケーキを食べる権利を巡ってのバトルロイヤル? 優勝チームには賞金にツヴィトーチヌイサートを贈呈……さらに一日貸し切りでヴィーシニャーのデザートを食べ放題……!」
 ぱぁ、と目を輝かせるクルル。ケーキを食べるために戦え、というのがなんとも鉄帝的ではあるが、しかしクルルもローレットのイレギュラーズ。腕に覚えがあるのは間違いない。
「ツヴィトーチヌイサートも気になる……けど! それ以上に、スイーツの食べ放題!」
 クルルが頬に両手をあげて、にまにまと笑った。スイーツ。食べ放題。それは悪魔の誘惑にも天使の祝福にも似た魅惑の言葉である。しかも、タダ。もちろん、戦いに勝てれば、という条件はあるが。それでも。それでも。
「これは、おいしい条件なのでは……!」
 クルルは食い入るように張り紙を見る。参加条件は、最大8人一組でのチーム戦。賞金も出る。ケーキも食べられる。つまりこれはケーキが食べられる普通の依頼と同じなのでは?
「さ、早速ローレットに戻って、仲間を募らなきゃ……!」
 クルルはうきうき顔で街路に飛び出すと、スキップ気分でローレットの出張所へと向かった。
 そしてその日、こんな依頼が貼りだされるのである。
『バトルロワイアルに勝ってケーキを食べよう!』
 と。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 此方のお仕事は、クルル・クラッセン(p3p009235)さんのアフターアクションによって発生した依頼になります。

●成功条件
 バトルロワイアルを制し、ケーキを食べる

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 いつかの時代の鉄帝皇帝がお気に入りにしたといわれる伝説の残る高級ケーキ、『ツヴィトーチヌイサート』。
 最も強いものしか口にできぬ、といわれるそのケーキを食べるためには、ケーキ店が主催したバトルロワイアルに勝ち残り、優勝しなければなりません。
 ケーキを食べたい皆さんは、このバトルロワイアルに参加し、見事優勝を勝ち取らなければならないのです。
 大会開始時刻は午前。天候は晴れ、ラド・バウの一角を借りて行われるため、戦場ペナルティなどは発生しません。

●エネミーデータ
 基本的に、敵は最大八名のチームを組んでいます。
 バトルロワイアル式なので、すべての敵と同時に戦う事はありません。敵チーム同士での潰し合いもあるでしょう。
 皆さんがこのシナリオで戦うのは、この中から大体2チームくらいになるかと思います。
 プレイングによっては、減る事も、増えることもあります。

 Aチーム 鉄帝スイーツ女子探検隊
  鉄帝女子で構成された、スイーツを食べたい女子達の集まりです。
  皆一般人ですが、護身術などは其れなりに嗜んでいるため、戦闘能力は相応に有ります。
  特筆すべき点はありませんが、目立たない故に最後まで残りそうなチームです。

 Bチーム 鉄帝騎士団スイーツ買い出し隊
  娘にスイーツをプレゼントしたい将校の命令でやってきた、割と暇な鉄帝騎士の皆さん。
  新人のため、鉄帝騎士としてはランクの下の方の存在ですが、本職のため実力はあります。
  目立つため、他のチームの目の敵にされそうかも。

 Cチーム 鉄帝脳みそは筋肉じゃないぞ軍団
  鉄帝には珍しい、魔術主体としたチームです。
  フィジカルエリートな他のチームには舐められていますが、魔術を用いたからめ手は脅威。
  意外とダークホース的な立ち位置かもしれません。

 Dチーム 鉄帝頑張れおとうさん軍団
  娘にいい所を見せたいお父さんたちの軍団。職業は様々ですが、体を鍛えている点では全員共通です。
  猪突猛進な戦闘を仕掛けており、ありとあらゆる勢力に喧嘩を吹っ掛けます。
  消耗は激しいですが、意外な底力を発揮するかも。

 Eチーム 鉄帝ラド・バウ闘士軍団
  まつりと聞いてたまらず駆け付けた、ラド・バウの暇な闘士達。
  スタープレイヤーに比べれば実力は劣りますが、それでもラド・バウで闘士をやっているだけの実力はあります。
  戦闘のプロだけあって、バトルロワイアルでも己を魅せる戦法をとってきます。
  常に派手な場所に姿を現すでしょう。戦場を引っ掻き回す担当に近いです。


 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングをお待ちしております。

  • ロイヤル・ロイヤル・スイーツロワイアル完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月30日 22時01分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
ラヴ イズ ……(p3p007812)
おやすみなさい
クルル・クラッセン(p3p009235)
森ガール
鬼灯 長門(p3p009738)
特異運命座標

リプレイ

●スイーツロワイアル!
「さぁ始まります、『ヴィーシニャー』プレゼンツ、『ツヴィトーチヌイサート』争奪バトルロワイアル!」
 うおおおお、とラド・バウ闘技場の観客たちが歓声をあげる。
 とある時代の鉄帝皇帝が愛したという伝説の残るケーキ、ツヴィトーチヌイサート。それを食べるためには、己が皇帝の如き強者だと示さねばならない。かつては一対一のバトルが繰り広げられていたらしいこのケーキ屋『ヴィーシニャー』主催のバトルも、今はイベントの様相を呈していて、8名のチーム戦による何でもありのバトルロワイアルに様変わりしている。
 という話はさておき。
「頑張ってこのバトルロイヤルを勝ち抜こうね……スイーツ食べ放題の為に!」
 ぐっ、とガッツポーズを決めるのは、今回のイベント情報の提供者である『森ガール』クルル・クラッセン(p3p009235)である。ローレット・イレギュラーズチームとして参加したクルルたちの目標は、もちろん伝説のケーキ……それと副賞であるスイーツの食べ放題である。
「うん! スイーツの食べ放題を賭けた戦いなんて、乙女としても闘士としても見逃せないベントだよ!」
 ぐーっと腕を伸ばして柔軟をしつつ、『新兵達の姉御』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)が言った。
「……鉄帝もたまにはまともなイベントを開催するんだな……あ、いや、今のは気にしないでくれ。
 主催者が怒ってスイーツ無しですって言われても困るしな」
 そう言うのは『こむ☆すめ』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)だ。
「皇帝のケーキに夢のヴィーシニャーのデザートを食べ放題。
 それら全てを勝ち取るためにもこの戦い決して負けるわけにはいきませんっ!
 仲間達と力を合わせて闘志全開! 全力マッスル! 勝つぞー!!!」
 ノリノリなのは『無敵鉄板暴牛』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)。
「全員ぶっ飛ばせば手に入るスイーツ! バトルも出来る上にオイシイものが食べられるなんて二度オトクだね!」
 此方も気合充分、『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)だ。
「伝説のケーキ……が、食べ放題……」
 どこかぽやぽやとした空気を纏いながら、『おやすみなさい』ラヴ イズ ……(p3p007812)が言う。
「私たちの本気、見せてあげましょうね。
 絶対勝ちましょう」
「ところで……これはバトルロワイアル。どのチームと戦うかも重要だわ」
 ラヴの言葉に、頷いたのは『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)だ。
「ああ。ケーキのためにも、ここは外せん。確か敵対チームは……」
「色々いるけれど……厄介なのはCチームじゃないかな?」
 『特異運命座標』鬼灯 長門(p3p009738)が言う。その目は――長門に限った事ではないが――イベントごととは思えぬ、本気の戦術を練る瞳である。
「Bチームの兵士や、Eチームのラド・バウの闘士達は、後に回して消耗してくれた方がいい。問題は、潜んで漁夫の利を狙ってきそうなCチームだと思うな。彼らは前衛に出るよりは、後方で策を練るタイプのようだし」
「なるほど、一理あるな」
 ゲオルグが頷く。
「では、最初はCチームを探して攻撃を仕掛けるとしよう。他に意見は?」
「イギなし!」
 イグナートは笑い、
「ん。私は誰が相手でもやる事は変わらないからな。皆のサポート。それでケーキが食べられるなら、ちゃんと従うよ。だからみんなも頑張ってくれ」
 メーヴィンがうんうんと頷く。
「じゃ、方針は決まりね? Cはちょっと手段選ばなそうだよねー、試合ってのはエンタメなんだから。
 悪いけれどさっさと退場してもらおうっ!」
 ミルヴィが頷き、
「分かりました! ボク達のマッスルを見せつけてあげましょう!」
 リュカシスも、ぐっ、とこぶしを握り締めた。
「よーし、じゃあ行くよ、みんな! スイーツ食べ放題のために!」
 クルルの言葉と同時に、戦闘開始の合図が鳴り響いた。かくして全チームは、一気に戦場へと飛び込んでいったのである。

●勝ち抜けスイーツ争奪戦!
「見つけた! Cチームの方々です!」
 長門が声をあげてその先には、やや細身の鉄帝市民たちで構成された、術式部隊がいる。
「ろ、ローレットだ! 何でこっちに!」
「それはやっぱり我々の潜在能力に気づいて……!」
「なんでもいいけど、まずは足を止めなきゃね! さぁ、わたし達と勝負だー! ごめんだけど、手加減しないよ! けーきっ、すいーつっ、ぷりんあらもーどっ!」
 うっきうきのクルルが、早速の挨拶とばかりにその手にした弓を引き絞る。放たれた矢はマンドレイクの絶叫を乗せて、着弾地点を中心に狂乱の渦を巻き起こす!
「ぎゃーっ! いきなり目の敵にされるのは予定にないぞ!」
「あら、戦いは生き物よ。臨機応変に接してあげなきゃ」
 ラヴはにこりと笑って、一礼する。夜を召しませ? 世界が回転して落下するような錯覚。夜空が落ちて、大地が昇る。錯覚の果てに、ラヴから視線を外せなくなる。
「くっ、予定では潜伏して美味い所を狙おうとしていたが予定変更だ! 正面からぶつかるぞ!」
 術式部隊が魔術書や杖を掲げて、魔術の弾丸を撃ち放つ。だだだっ、と降り注ぐ銃弾が、ラヴの足を止めた。
「あら、あら」
「そのまま敵の足を止めておいてくださいね!」
 ぐわん、とその鉄腕を振り上げて、リュカシスが突撃する。その横を駆け抜けていく、ミルヴィ!
「お先にっ!」
 たんっ、と跳躍したミルヴィが、手にした曲刀を手に、敵陣へとステップ。そのまま流れるように、その身体をしならせた。その動きは舞のごとく。激しく、而して蠱惑的に。術士たちの身体を切り裂いていく。
「うわっ、攻撃の流れがつかめない!」
「残念、踊り子には手を御触れにならないように、ってね?」
 にっ、と笑ったミルヴィの斬撃が、術士の男を倒す。
「くっ、とにかく反撃よ!」
 女性術士の号令――だが、追い付いてきたリュカシスが、鉄腕を振るいあげながら突撃。
「行きますよーっ! マッスル、アターック!」
 シンプルなぶん殴りの一撃が、女性術士を殴り飛ばした! おもちゃを投げ飛ばしたみたいに吹っ飛んだ女性術士が、目を回しながら地面にたたきつけられた。
「ああっ、リーダーとサブリーダーがやられた!」
「お前がリーダーを引き継げ、サブサブリーダー!」
「おっと、役職を決めるのはイイけど、それに囚われてると頭がこんがらがらない?」
 イグナートが飛び込んできて、サブサブリーダーを強かに殴りつけた! 吹っ飛んでいくサブサブリーダー!
「指揮系統が!」
「もうアドリブで行きましょう!」
「そうそう、こういうのはコントンを愉しむモノだよ! シャオラー、かかってこい!」
 ぐっ、と挑発のジェスチャーを見せるイグナート。そんなイグナートに向けて、残る術士たちの反撃の魔術弾が襲い来る。イグナートはそれを素手で叩き落すと直撃を回避。
「皆、頑張って……援護、始めるよ!」
 長門が静かに舞を踊る。神聖なるその舞が仲間達の身体を軽くし、降り注ぐ魔術弾を回避。そのまま一気呵成に攻め込んでいく。
 さて、ここでクルルのファミリアーの目を借りて、上空から現在の状況を確認してみよう。イレギュラーズはCチームと衝突。Dチームは娘たちの応援の声を背に、Eチームと戦闘を開始。必然的に残ったBチームは、Aチームと順当に戦闘に入る。
 しかし徐々に追い込まれたA、Dチームがリタイア。ここでB、Eチームは少しの逡巡を見せてから、B、Eチーム同士での戦闘に入った。
 質実剛健な騎士チームに対し、トリッキーな魅せる戦いをとる闘士達。騎士とは言え新人、いまだ教本通りの戦い方しか身についていない騎士たちに、闘士たちの戦い方は手に余るものだっただろうか。
「と言った形だな。私達は休息時間が得られて僥倖、と言った所だ」
 仲間達に治療を施しながら、ゲオルグが言う。この段階で、ローレット・チームに脱落者は存在しなかったが、相応に傷を負い、息を切らせている。ゲオルグ、そしてメーヴィンの手により治療は施されたものの、全快とまではいかない。
「だが、連戦続きのあちらに比べたら、私たちはかなりのアドバンテージを得られたというべきだろうな。スイーツの神に愛されてるな、私たちは」
 メーヴィンが、にっ、と笑う。
「ならば、絶対に皇帝のケーキをボク達のモノにしなければなりません!」
 リュカシスがぐっ、と手を握った。
「そうだね! ここまで来たら、絶対に負けられない! 元から負ける気はなかったけれどね!」
 おーっ、と片手をあげるクルル――だが、その意気を挫くように、高らかに声が響き渡った。
「残念ね! 皇帝のケーキは私達、ラド・バウ闘士軍団が頂くわ!」
 戦いを制したのは、Eチームのようだった。流石に消耗が激しいようだが、その目に輝く戦意には如何ほどの鈍りもない。
「おっと、息を整えるクライは待ってあげるよ?」
 イグナートが言うのへ、Eチームの闘士が笑う。
「かくいう君たちも、全快というわけじゃあるまい。ラド・バウの洗礼、受けて行ってもらおうか」
「ふふっ、上等だね」
 ミルヴィが笑った。曲刀を手に、構えて見せる。
「最後の戦いだ。皇帝のケーキのため……やるよ、皆!」
 長門が声をあげて、再び神威の舞を踊る。その身が軽くなった一同に、
「さて、では最後の援護と行こう!」
「派手に暴れてこい! そしてケーキを私たちの手に!」
 ゲオルグ、そしてメーヴィンの回復術式がその背中を押す! 両チームとも、一気に駆けだした。剛腕の闘士が、ミルヴィへと迫る。振るわれる巨大な腕の一撃。ミルヴィはしなやかな体さばきでそれを躱すと、ウインク一つ、残して曲刀で切りつける。
「撃ちますっ! まかろん、すこーん、びすけっとっ!」
 放つクルルの『アルラウネの口づけ』が、剛腕の闘士の身体に直撃した。魅惑の毒がその身体を蝕み、剛腕の闘士が意識を失う!
「私たちは……このチームは、強いわ。
 だから……。
 私は、絶対に支えてみせるの。絶対に倒れないの。
 皆を守れさえすれば、絶対に勝てるチームなんだもの。
 皆を信じれば、絶対に……!
 ケーキを食べられるんだもの……っ!」
 夜を召しませ? ラヴの魔惑が闘士たちを絡めとり、その注意を引き付ける――。
「そこまで言われたんじゃ、ゼンリョクゼンカイで行かないとね!」
 イグナートの拳が、長剣使いの男闘士へと突き出された。隙をつかれた形で、とっさに剣で受け止めた闘士が、しかしその剣を砕かれ、胸に強かな一撃を喰らう。
「オマツリ騒ぎの締めがジミになっちゃ闘技者の名折れだよ! ハデに行こう! 出し惜しみはナシでね!」
 フッ飛ばされていく長剣使い。その横で突撃するリュカシスが、短剣使いの女闘士へと迫る。
「ケーキのために、吹っ飛んでください!」
 リュカシスの、シンプルながら強烈な右ストレートが、短剣使いの腹部に突き刺さった。短剣使いが意識を失い、倒れる。
「くそっ……こうも押される……!?」
 リーダーの闘士が舌打ちをする。闘士達の攻撃も果敢ではあったが、しかし疲労と消耗はいかんともしがたい。イレギュラーズ達に相応の傷を負わせてはいたが、しかしその意識を刈り取るまでには、届かなかった。
「本気でいくよ! アタシの剣舞をご覧あれ!」
 ミルヴィの曲刀が舞う。その一撃一撃が、リーダー闘士の体力を奪っていく。
「やるじゃない……だけど!」
「いいえ、ここでお終い! ケーキは、アタシたちの、ものだぁっ!」
 ミルヴィの振るう曲刀、それがリーダー闘士に直撃する。果たしてリーダー闘士はそのまま意識を失ってくずおれた。
 ――勝者、チームローレット!
 実況席から声が響き、続いて観客席から歓声が鳴り響く。
 息を切らせながら、しかしイレギュラーズ達は勝利の余韻と、これから訪れるご褒美の時間に思いをはせているのであった。

●いらっしゃいませ、皇帝陛下
「ケーキの時間ね!」
 と、ラヴは思わず声をあげて、それからすぐにハッとした様子で口を押さえた。それからこほん、と咳払い一つ。
 見事激戦を勝ちぬいたイレギュラーズ達は、しばしの休憩の後に、ラド・バウ闘技場内にあったホールに通された。そこは、見事なまでに華麗に飾り付けられており、さながら王宮の様である。
 イレギュラーズ達はすでにテーブルについてる。そのテーブルも、どこか豪奢な飾りのついた一級品のようで、なんだか緊張してしまうかもしれない。
「皇帝陛下の皆様方。この度は、当店のツヴィトーチヌイサートをご所望いただき、誠に光栄の極みにございます」
 給仕の男がそう言うのへ、一瞬、皆はきょとん、とした顔をした。
「皇帝……? なるほど、そう言う設定なんだね……えーっと、こほん、私は、すぐにでもツヴィトーチヌイサートを食べたいぞー」
 クルルが威厳をつけようと、声を低くしてそう言うのへ、給仕の男は笑う事もなく、恭しく一礼をした。
「それでは、ご堪能ください。此度のツヴィトーチヌイサートでございます」
 そう言うと共に、パティシエたちがケーキの乗った台車を押してやってくる。おお、と思わず感嘆の声を、皆は上げてしまった。そこに乗っていたのは、この時期のフルーツをふんだんに盛り付けた、まさに花園のような美しいケーキだった。
「ツヴィトーチヌイサートは、各国より取り寄せたフルーツを用いております。メロン、マンゴー、オレンジにチェリー。甘みを抑えたクリームとよく合うでしょう。一口ごとに変わるとされる美味、ごゆるりと堪能ください」
 パティシエが、1ピースずつ切り取って、イレギュラーズ達の前に持ってくる。断面から見える、フルーツ。鮮やかなそれが、食欲を掻き立てる。
 一同はゆっくりと、一切れ、口の運ぶ――途端、口の中で弾けるのは、さわやかな甘み。フルーツの甘味を、柔らかなスポンジが受け止め、甘みを押さえたクリームが包み込んで混然となった快感を口の中ではじけさせる。
「まさに花畑だわ……!」
 ラヴが感動したように、口元を押さえ……それから、おずおずと手をあげた。
「あの……私、人より、少しだけ食べるほうだから……お代わりを……」
「かまいませんよ、皇帝陛下。他のデザートもご用意いたします。メニューをご用意いたしますので、どれでも好きなものを」
「ありがとう……! では、皇帝のケーキを、もう5ピース……それから、このメニューのスイーツを、ひとまず、ぜんぶを2つずつ、お願いするわ……!」
「かしこまりました、皇帝陛下」
 瞬く間に、スイーツの花畑がテーブルに咲いた。追加の注文をしたのは、もちろんラヴだけではない、皆が好きなものを好きなだけ頼んだし、それを心から堪能していた。
「これを食べられるボク達は皇帝のようなものですね。フフフ! みなさん、お疲れ様でした! ナイスバルク!」
 感激のあまりテンションマックスなリュカシス。
「あ、その、友達にも食べさせてあげたいなあ、って。……少しだけ持ち帰ってもいいですか? だめ?」
「皇帝陛下のお友達であれば、私共に断る理由等ございません」
「やった! ありがとうございます! フフフ、今日はなんて素敵な日なんだろう……!」
「あ、お土産大丈夫なら、アタシの分、今日の試合を見に来た子供達に上げられないかな……?」
 ミルヴィがそう告げるのへ、
「そうなさった陛下も存在いたします。大丈夫ですよ」
 給仕の男が恭しく一礼したので、ミルヴィも頭を下げて返した。
「ふ……これが勝者の報酬という奴か。たまらないな……」
 ゲオルグは、にゃんたま達、そして呼び出した羊のジークと共にケーキを堪能しながら、嬉し気にそう言った。
「お前達も嬉しいか。そうか。戦った甲斐があると言うものだ……」
 ゲオルグはゆっくりと、コーヒーを飲む。苦みが口を洗い流して、また新たな甘味を楽しませてくれると言うものだ。
「皇帝が甘いもの食べるって想像つかないけどな、なんかこう、鉄帝の皇帝って全体的に脳筋っぽいし」
 メーヴィンが嘆息しつつ、紅茶を飲む。とはいえ、皇帝と言えど、たまには甘いものを食べたいときがあったのかもしれない。
「ま、何にせよ、直接戦闘してない、最強とは程遠い私も食べれるなら何よりだ」
 味は解らんけどね、と付け加えつつ。しかし、今この時は、とても楽しい時間のはずだ。
「色々なデザートがあるんだね……できれば、甘さ控えのモノを」
 長門の注文に、パティシエたちはすぐに別のモノを持ってくる。甘さ控えめのビスケットや、マカロンの類など。何でもそろえているのだ。
「うーん、これは確かに、勝たなければ得られない贅沢なのかもだね」
 長門の笑顔に、
「そう言うコト! ま、これが勝者の特権だね!」
 イグナートが笑ってケーキをほおばった。
「うーん、本当においしい!」
 クルルは口いっぱいにケーキをほおばって、感動の声をあげる。
 テーブルにはまだまだいろいろなデザートが並んでいる。
 次は何を食べようか? 迷いは尽きない。
「頑張ってよかったねぇ、皆ぁ~!」
 クルルの感激の声に、仲間達は同意の笑顔で返した。
 かくして、激戦を勝ち抜いた皇帝たちによるティータイムは、まだまだ続くのであった。

成否

成功

MVP

リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 デザートタイムは楽しめたでしょうか?
 

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