PandoraPartyProject

シナリオ詳細

君と一緒に空を飛べたら

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 ――近くからぴちゃぴちゃと水音が聞こえる。
 ――足や腕、その他も至る所の感覚が無く、全身が金縛りに遇ったように動かない。
 ――朦朧とする意識の中、最後に感じたのは最愛の■■■■■■■.........Setting error...

●滅びた世界の二人
「よかった、今度はちゃんと上手くいった……!」
 耳元から聞き覚えのある女性の声が聞こえる。
「ごめんね、本当にごめん……次こそ私はあなたと……」
 手術台の上に横たわっていた僕は何も言わず静かに瞳を開いた。
 まず目に入ったのは、涙を流しながら僕に取り縋る女性の姿。名前を思い出すことはできないが、その姿は確かに見覚えのあるものだった。
「……マスター?」
 その言葉はまるで脊髄反射の如く僕の口から呟かれる。何故だかわからないが、彼女のことはそう呼ばなければいけない気がしたからだ。
「そう……だったね。おはよ、身体の具合はどう……?」
 マスターは一瞬悲しそうな表情を浮かべたが、その理由を話すことはなかった。
 僕は両腕と両脚を動かしてみて、良好だと伝える。ただ一つ、肌を軽くつねってみても痛みを感じないことが不思議だったが、大きな問題ではないだろう。
「よかった、なら早く行きましょう?」
 マスターの言葉に僕は“何処へ?”と首を傾げた。
 だが、マスターは僕の質問に答えることなくただただ僕の腕を引いて上を目指した。

 ――私が手を離してしまったばかりに。
 ――私に少しの勇気がなかったばかりに。
 ――今度こそ、私は■■■と一緒に■■■■■■■......... error reading...

●白紙のページ
「おやおや……これは」
 境界図書館で読書をしていたイヴ=マリアンヌは、読んでいた本が途中から白紙で切れていることに気付き声を漏らす。この図書館に置いてある本の内容が途中で切れて白紙になっていることは珍しいことではなく、それは物語が完結していないことを示していた。
「なるほど、あくまでも彼はその結末を望まないのですね……ふむ」
 本を一度閉じたイヴは少しの間考えた後、紙と羽ペンを取り出した。
「では、貴方の世界に使者を送りましょう。その悲しい結末を変えるために……」

NMコメント

 偶には趣向を変えた物語を。
 与太時々シリアスな牡丹雪です。

●目的『物語をハッピーエンドに導く』
 境界図書館にて終わりの決していない物語が見つかりました。
 貴方達の力で主人公の望まない負の結末を変えてあげてください。
 また、想定される結末は1つとは限らず、イレギュラーズの行動により変則的に変わります。

●物語のあらすじ
 これは戦争によって荒廃し、見るも無惨に滅びてしまった世界の物語。
 すぐ傍で見覚えのある女性が見守る中、青年は手術台の上で目を覚ます。
 青年の記憶は甚く断片的なものばかりで、現状を理解するにはあまりにも情報が足りない……が、彼は本能的に『定められたバッドエンド』を理解していた。
 定められた結末、そして青年と女性の関係とは……?

『登場人物』
・オルーサ
 手術台の上で目を覚ました青年。
 身体の所々に縫い合わせたような跡がある。
 ナンシーのことをマスターと呼び、共に建物の屋上を目指す。
 また、異形を対処する程度の戦闘力は持ち合わせている。

・ナンシー
 青年の傍で見守っていた女性。
 オルーサとの関係性は謎だが、彼に対して強い執着心を抱いている。
 彼女はひたすら謝りながら、オルーサを屋上へ連れていこうとするが……?
 また、異形を対処する程度の戦闘力は持ち合わせている。

※PL情報(PCは知っていても知らなくても構いません)
 オルーサとナンシーは元々恋人関係にありました。
 滅んでしまった世界で先に逝ってしまったオルーサをナンシーは死者蘇生の儀で復元させましたが、それは甚く不完全なもので生還を果たしたオルーサは何もかも忘れています。
 そんな彼の体が永いこと保つなんてことは有り得ず、それを悟ったナンシーは絶望しつつもせめて一緒に死のうと廃病院の屋上を目指しています。

『敵(?)』
・異形
 文明が滅び異形化した生物たち。
 イレギュラーズに対して攻撃はしませんが、登場人物へは攻撃します。
 イレギュラーズの攻撃で簡単に排除することもできますが、意図的に配備させることも可能です。

●ロケーション『廃病院』
 かなりボロボロの高層ビルですが、元は医療大学院だったように見えます。
 登場人物の二人がいた手術室を始め病院にあるものは殆ど揃っている他、中央部には屋上手前まで一気に上がることができるエレベーターが存在しています。
 また、所々に『異形』と呼ばれる化け物が沢山徘徊しているそうです。

●このシナリオでできること
 特に制限は設けていません。
 例として〇〇として〇〇に登場するという形が一番書きやすいかなと思っています。
 明確な登場人物として登場し、そのキャラ説明に字数を割くなどでも構いません。敵キャラ、味方キャラどちらでも、彼らの前に立ち塞がりアクションを起こせば物語の結末に変化が起きる筈です。
 また、この物語で起きる出来事は全て本の中だけの出来事として完結します。

●アドリブについて
 本シナリオではアドリブが多めに含まれることがあります。
 アドリブがNGの場合、通信欄かプレイングに一言ご記載いただければ幸いです。

  • 君と一緒に空を飛べたら完了
  • NM名牡丹雪
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年04月29日 22時16分
  • 参加人数4/4人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
長谷部 朋子(p3p008321)
蛮族令嬢
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)
流星の狩人
星影 昼顔(p3p009259)
陽の宝物

リプレイ

●絶望の彼女
 ――嫌、嫌なのオルーサ……お願いだから私を独りにしないで
 ――どうして、どうして私との約束を破って先に逝ってしまったの?
 ――貴方の居ない世界なんて、生きてる価値すらないわ

「……マスター?」
 暗い通路を歩いている中、どうして突然彼女を呼び止めたのか分からない。
 ただ、後ろから見た姿が何となく消えてしまいそうな雰囲気をしていたから。それが自分にとって、どうしようもなく儚く脆いものに見えたから。
「どうしたの?」
「いえ、何も……」
 でも、彼女は調子を崩さずいつも僕に見せていた笑顔で振り返った。
 気のせいだっただろうか、だとすれば意識が覚醒したばかりで知覚処理が上手くいっていないのだろう。早く本調子に戻り彼女の役に立てるようにならねばならない。
「(彼が元に戻ってしまう前に、早く屋上に行かないと……)」
 彼、オルーサの思考処理は甚く機械的だったが、根本は人間的で彼らしい思考であることに間違い無かった。このまま全てが戻り、彼が彼らしくなればどんなに幸せな事だろう。
 だが、継ぎ接ぎだらけで腐敗臭すら漂うその身体は心臓すら動いておらず、暫くすれば全ての機能が停止するだろう。そんな中、真の意識が戻ってしまったら彼に二度の死を体験させてしまうことになる。
「マスター?」
「…………」
「マスター……!」
「っっ、考えごとしちゃってた。どうしたの?」
 気持ちだけが急ぐナンシーはオルーサに二度呼ばれてやっと気付く。
 自分たちの終着点、屋上に昇る為のエレベーターホールが存在する通路に見知らぬ影が二つ蠢いていたのだ。
「またバケモノが入り込んだのかしら……?」
 文明が滅んだこの世界で、その存在は特に珍しくもない。
 荒廃してしまった環境で死にきれなかった生物の成れの果て。犬や猫、延いては人まで身体は腐食し自我を失ったように肉を貪る生ける屍。
 ナンシーは咄嗟にナイフを構えるが、そこにいたのは人間だった。
「や、やぁ……」
 二人にとって全く見知らぬ存在、『陽の宝物』星影 昼顔(p3p009259)と『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は生存者として、初めて対峙を果たす。
「生存者……? でも、昨日までここには誰も居なかった筈よ」
 ナンシーがそう警戒するのも無理はない。とはいえとはいえ正体を明かすわけにもいかないと知っていた世界は汚れた白衣を揺らしながら表情を変えずにナンシーを見やった。
「ああ、つい今しがたここに到着したばかりだからな。にしても先客が居たのか、邪魔って言うなら別の場所を探しに出ていくが……」
 彼の冷静な返しにナンシーは疑う余地もなく、構えたナイフをしまう。
 ただでさえ生き残るのに大変なこの世界で、生存者どうしが争い合っても何も生まれない。ましてや大した物資も持って居なさそうな相手なら尚更だ。
「その必要は無いわ。私たちが時期にここから居なくなるのだもの」
 ナンシーのその返しに、昼顔は思わず眉を顰めてしまう。
 いくらボロボロになった病院とはいえ、電力が生きている上に探せば物資もある。生存者がここから動くのは色んな意味で自殺行為を意味していた。
「居なくなるって、行く宛はあるの?」
「……あるわ?」
 嘘だな。世界は思わずそう言いそうになり口を噤んだ。
 何にせよこのまま彼女らを黙って通してしまえばバッドエンドを迎えてしまうと知っているイレギュラーズは、何としても先に進むことを阻止しなければいけない。
「この先はバケモンがわんさか居たぜ? たった二人じゃ自殺行為も良いとこだろ」
 世界は小さなため息を吐きながら言った。
 あくまで他人としてはあるが、世紀末真っ盛りで生きるのが困難な所を見てしまえば、いっそのこと死んでしまった方が楽なのではないかと彼は考えてしまう。
「だったら、どうしろって言うのよ」
 早く先に進みたいという気持ちが露骨に表情に出ているナンシーは少し食って掛かる。
 その態度が『止めないでほしい』と言っているようにも見えて世界は再び溜め息を漏らしてしまう。なかなか頑固な登場人物だ。
「じゃあ、この通路を抜けるまで拙者たちもついていく……というのはどうかな?」
「そんな必要は――」
「マスター、お言葉ですが……」
 三人のやり取りをただ後ろから見守るだけだったオルーサが初めて口を挟んだ。
 意思のこもった言葉にナンシーは一瞬驚いたような表情を浮かべるが、オルーサは彼女に構わず話を続ける。
「僕は、マスターの安全を最優先したいです」
「決まりだな」
 オルーサにそう言われてしまえば、ナンシーは返す言葉が無かった。
 何故なら彼女は、自分の目的をオルーサに話すことが出来る訳がなかったから。言ってしまえば彼が反対することなんて目に見えてわかっていたから……。

●天へと続く道
「(何とかして、オルーサ氏を助けてあげれないかな……)」
 薄暗い通路を行く。昼顔はオルーサを見やるが、想像していたよりも遥かに状態は悪い。
 不完全とはいえ死者蘇生の儀とは名だけでなく、彼は生きているのが有り得ない状態で確かに動き、会話を交わしていた。
「……?」
 思考を巡らせていると、不意に前を歩くナンシーが足を止める。
 気が付けば通路の先から異様な雰囲気。思わずそちらに目を凝らすと、奥の方で禍々しい黒い影が蠢きながらこちらへ向かって来ていたのだ。
「何、なの?」
 それはこの世界のなれ果てを沢山見てきたナンシーにも未知の存在だった。
 世界と昼顔もその姿には目を見開いたが、『日向の狩人』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)がこの物語の登場人物として姿を変えた姿だということをすぐに理解する。
「おかあ……さ……ん」
 黒く蠢いていた影はやがて人の形を作り始め、ナンシーに迫った。
 驚くことにミヅハはどことなくナンシーとオルーサの面影がある子供の姿に置き換わる。
「嫌、誰……誰なの?? 私はあなたの母親じゃないわ!」
 ナンシーが後退りをすれば、子供姿のミヅハは寂しそうな表情を浮かべた。
 オルーサを『動く死体』にしてしまった彼女にとって、その姿は有り得ないのだ。
「おかあ――」
「違うって言ってるじゃない!!」
 ナンシーが叫びながらナイフを突き付けてくる様子を見て、ミヅハは一度足を止めた。辛うじて攻撃に移らなかったのは、『その姿』をしていたからだろう。
「おとう……さん」
「……」
 今度はオルーサに呼びかけてみるが、やはり返事を得ることはできない。
 ミヅハが寂しそうな表情のまま立ち竦んでいると、通路の奥から何かを引きずる音と共に更に禍々しい気配が増えた。
「……っっ!!」
 ナンシーは思わず跳んだ。
 ――後ろにじゃない、前だ。
「マスター……!」
 気が付けばナンシーは反射的にミヅハを抱いて地面に倒れていた。
 彼女がそうしなければいけなかったのは、まさにミヅハが立っていたその場所に重々しい石斧が振り下ろされたからである。
「今度は、何よ……」
 地面を抉るほどの斧に直撃したらひとたまりも無かっただろう。
 振り下ろされた石斧の先を目で辿れば、そこには植木鉢をひっくり返したような三角錐物体を被った異形が立っていた。ボロボロの学生服に身を包み、全身は返り血で染まっている。
「どうして……?」
「どうしてかしらね、でもあなたの言う母親は人違いよ。わかったらあっちに行って!」
 ナンシー自身もどうしてミヅハを助けようとしたのか分からない。
 だが、彼女が今のミヅハの姿に何か未練のようなものを感じていたことは間違いない。
「はぁ……しょうがねぇな、本当に」
 全部知りながらずっと見ていた世界は三度ため息を吐きながら三角頭の異形に立ち塞がると、ナンシーを見やって更に追い打ちをかけた。
「どうしてもこの先に行かないといけない理由があるんだろ? ほら、行けよ」
 その場にいたイレギュラーズたちにとって、そのやり取りは茶番に過ぎなかった。
 しかし、それこそが現実だったナンシーはミヅハとオルーサの二人を交互に見ると、ふと込み上げてきた言葉をぽつりと漏らすのだった。
「……ごめんね」

「ナンシーのその言葉を聞いたオルーサは全てを思い出しました。自分が彼女を残して死んでしまったことや、彼女がそれを受け入れることができず自分を蘇らせようとしたことを……」
 そこは境界図書館。まるで植木鉢のような三角錐の被り物を脱ぎながら、『蛮族令嬢』長谷部 朋子(p3p008321)は一冊の完結した物語を読み上げた。
「ナンシーは何度も懺悔しました。自分に勇気が足りず、オルーサの死を受け入れることができなかったこと。彼を蘇らせるために、その死体を異形化させてしまったこと。そしてオルーサと一緒に死のうとしたこと……」
 結局、オルーサの自我が戻ったことでナンシーは全てを諦めることになった。
 それをオルーサが望まなかったこともあるが、ミヅハが彼女にかけた言葉も大きかっただろう。
「今度はちゃんとおわかれしてあげてね!って、結構可愛い事言うじゃん?」
 朋子が少し笑いながらミヅハの方を向けば、当の本人は少し恥ずかし気な表情をする。
「ナンシー氏は、寂しかったんだね。オルーサ氏が居なくなったことも、独りで死ぬことも……」
「そうね、死者蘇生なんて元から存在しなかった。でもせめて、一緒に死にたくてオルーサに異形化っていう仮初の命を吹き込んだ……って所だね」
 オルーサを助けたかった昼顔だったが、それは最後まで叶えることができなかった。
 死んでしまった人が決して生き返ることがなかったのは、あの世界も混沌も同じことなのだ。
「まぁ、遅かれ早かれってやつだな。だが、悪い終わり方じゃなかったと思うぜ」
「最後は二人とも幸せそうな表情をしてたから、ね」
 朋子たちは本を置くと、境界図書館を去っていく。

 そのページには、身を寄せながらもオルーサを看取るナンシーが写っていた。

成否

成功

状態異常

なし

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