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シナリオ詳細

<フィンブルの春>いいえ、わるいゴブリンではありません

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●その勇者の冒険譚
 大きな籠を背負って歩く、この先の村へ帰るのであろう少女の姿が見えた。
「あぶないっ!」
「きゃあっ」
 茂みから飛び出すと、オレは彼女の腰を抱えて跳んだ。
 衝撃で背中の籠から大量の草が飛び出す。
「あっ、薬草が!」
 もがく彼女を押さえつけ、そっとその唇に指で触れた。
「静かに! モンスターだ」
 驚きで目を大きく開いた彼女は中々可愛らしい顔をしている。きゅっと唇を結んでオレの肩越しに魔物の姿を見ようと首を伸ばした。
「……あれですか?」
 囁くような小声で尋ねる彼女にコクリと頷く。
「ゴブリン?」
「よく見て。皮鎧を着て武器も持っているでしょう。あれは邪悪で凶悪な古代獣、ハイパーゴブリンだ」
「ハイパー……っ」
 青ざめた彼女は震える声で訴える。
「この道の先には私たちの村があるんです! 冒険者様、どうか助けてください!」
 できるだけ声を抑えながらも、彼女はそう言って押し倒したままの体勢のオレの胸に縋りついた。
「わかった。仲間が先に行っている。追っ払ってやろう────それと」
 ハイパーゴブリンの姿が見えなくなってから、オレは紳士的に手を差し出して彼女の身体を起こした。
「オレは冒険者じゃない。『勇者』だ」
 微笑むと、彼女はまた目を丸くした。


「怯える村人のために、こっちにはこさせんぞ!」
「!!」
 村の入り口で拳を固めた武道家が構えを取って威嚇した。
「邪悪なゴブリンめ! 去れ!」
 村の近くの木の上に陣取っていたアーチャーが雨のように矢を放つ。
「ううっ!」
 ハイパーゴブリンは腕に着けた盾で顔を庇いながら慌てて村から逃げ出した。
「やつらは悪賢い! 罠かもしれません、追います!」
 オレは横抱きにしていた少女を村の入り口で下ろすと、武闘家と共にハイパーゴブリンを追って森の中へと駆け込む。
 背後で木の上のアーチャーがハイパーゴブリンの逃げた方角を教えてくれた。
 森の中へと入ると、すぐにヤツの姿が見えた。オレはクロスボウを構えると、ヤツに向かって警告する。
「村人に頼まれた! これ以降、ここに近付くなら殺すぞ!」
 ヤツは足を止め、振り返ってオレを見る。
「……勇者さん! 僕は悪いゴブリンじゃ──」
 風を切って、放った矢がヤツの足下に突き刺さる。
「依頼を受けた。オマエが何であろうとこの辺りの平和を乱すことは許さん!」
 すると、ヤツはがくりと膝をついた。
「お願いします……もう何日も休んでいないんです。何もしないから追い回すのはやめてください……」
「泣き落としても無駄だ。休みたいなら文句を言う前にさっさと幻想から出るんだな」
「だって、僕が街道に出ようとすると邪魔をするじゃないですか……!」
「フン! 貴様のような魔物をたくさんの人々が通る街道に出せるか! 今すぐ殺さないだけ感謝しろ」
「そんな……」
 ひゅんとまた一本、オレの放った矢がヤツの足元に刺さった。
「オマエが悪いモンスターじゃないと言うなら、大人しくここから去るんだな。オマエに遭遇した娘さんは泣いてたぞ」
「……っ」
 悔しそうな顔をしたヤツは茂みの向こうに消えていく。
「なんだ、今日は粘ったな。アイツ」
 武闘家が呆れたような顔をした。
「『約束の日』も近いことだし、そろそろアイツを倒して魔物討伐の報告しねーか」
 勇者ごっこも飽きたしよ、とうそぶく武闘家にオレは苦笑した。
「バカ。死体を持って行ってアイツの素性がバレたら厄介だろ。余計な事を言いふらさないうちに殺して埋めてしまおうぜ」
「手とか耳とかだけ持ち帰ればバレねーだろ。まあいいや、そろそろ殺るのには賛成だ」
 勇者が笑った。
「ああ。悪いゴブリンはきっちり倒さないとな」



●どうもハイパーゴブリンです
「……ううっ、ぐすっ」
 古木の陰で泣いているのはゴブリンそっくりの外見をした新米冒険者の少年、ゴロリンだ。幼い頃に異世界からやってきたウォーカーで、少なくともこの世界では小さな村の村長の息子として生活して来たふつうの少年である。
「うう……」
 村では自分の外見が皆とはちょっと違うかな? くらいの認識で幸せに暮らしていた彼はめげない強さとそれ以上の優しい心を持っており、冒険者志望としてローレットの門を叩いた後も周囲の人々は彼の内面に気付いて交流してくれてそれなりに順調に過ごして来たのだ。
 それがここ一週間ほどばかり「自称勇者」の一行に理不尽に追い立てられて、心身共に酷く傷ついていた。
「どうすれば……あの人たちだったらどうしたんだろう」
 ゴロリンはかつて自分の村に来たイレギュラーズたちを思い浮かべた。
 彼の不安など吹き飛ばしてくれた憧れの冒険者。
 自分もそうなりたいと村を飛び出したのに、村で健やかに育まれた心はぽっきりと折れそうになっている。
「僕は……悪いモンスターなのかな……」
「えっ、そこは『ボクは悪いゴブリンじゃないよ』って言うべきでは」
「えっ!?」
 ビクリと身体を震わせて振り返ると、いかにもグツグツとした薬草釜をかき混ぜていそうな老婆がいた。
「あ、あの……僕は美味しくないです!」
 震えながらそう言ったゴロリンに、魔法使いの老婆は顔をしかめた。
「ワタシ、悪い魔女じゃないよ。ぷるぷる」
 ぷるぷるとは? と涙をひっこめて微妙な表情を浮かべたゴロリンに老婆は呵呵大笑した。


「へー、ニセモノ勇者? そんなイベントが起きてるのね」
「イベント……?」
「でも、そういうのってちょっと許せないな。弱い子を追いまわせて孤立させて、それってイジメじゃん!」
 古木の下で並んで座って一連の事情を話し終えると、老婆────ミッカタンは憤慨した。
「そいつら、いっちょぶっ飛ばそうよ」
「え、でも、僕にはまだそんな力はないし、失礼ですが、ミッカタンも力持ちには見えないし危ないよ」
 もしかしたら、凄い魔法使いなのかもしれないが、腰の曲がった老婆が自分のせいで怪我したらと思うとゴロリンの腰はひけてしまう。それに、久しぶりに自分の話をまともに聞いてくれて同情してくれる彼女の存在が、萎びれた心を少しだけ元気にしてくれた。
「僕なら大丈夫。この森から国外へ出れるルートを教えてくれないでしょうか」
「甘い!」
 ミッカタンはシワシワの指を一本立ててゴロリンの顔をじっとみた。
「さっき実験で失敗しちゃって国外へ行ける街からこの村へと続く橋を落としちゃったから、復旧には三日ほどかかるはずよ。運よくイレギュラーズの一行がこちら側で立ち往生してたから、あの子たちに助けを求めましょう」
 少し聞き捨てならない言葉が混じっていたが、イレギュラーズと聞いてゴロリンは顔を輝かせた。



●1,2……スタート!
「というわけで、ニセモノ勇者をこらしめる依頼をしたいの」
 渡って来た橋が突然爆発して呆然としていたイレギュラーズたちの前に颯爽と現れたミッカタンはゴロリンの事情を説明した。
「あのバカ者たちはこの先の村で歓迎会を開いてもらってたわ! 今から行ってすべてをバラしてやってもいいんだけど、来る時にこっそり覗いて来たらアイツら『お強い正義の勇者様御一行』としてだいぶ村人に信用されてもてなされていたの。対してワタシは村人に信用無いし、アナタたちもこの村には初めて来たのだろうし……」
 ミッカタンは爆破した橋の向こうに住む自称『魔法使い』で、様々な不思議アイテムを作っては暴走させているらしく、村人たちとの仲は良好だが信用は薄いという微妙な関係らしい。それでも、ゴロリンの件とは別に、普段から仲良くしている村人たちがあの勇者たちにいいように騙されているのが我慢ならないのだという。
「それに、ゴロリンくんの話を聞いたところ、強い強いって言ってるけどあいつらそこま強くは無いんじゃないかしら。それに、根性も無いわよ。それなのに群れていい気になってこんな子供に酷いことをするなんて腹が立つったらありゃしないわ!」
 そして、彼女は提案した。
「そこで一発、ドカンと派手なことをやってアイツらの嘘を村人の前で暴露する手伝いをして欲しいの」
 ゴソゴソと彼女が取り出した杖は一度だけゴブリンに変身できるものだと言う。
「だから、ゴブリンに変身してあいつらをボコボコにしてその後ネタバラシなんてどうよ?
 そうね……『偽物勇者許すまじ、正義のハイパーゴブリンズ見参!』とか、『グエフェッフェ、悪いゴブリンが来たぞー!』なんてパニックホラーテイストもいいわね」
「えっ、でも、暴力なんて……それに村のヒトたちも怯えるんじゃ……」
 ためらうゴロリンへミッカタンはにこやかに笑った。
「あいつらの嘘を暴いてやらないと頭の固い村人たちは信じてくれないよ! それにこんな悪戯はしょっちゅうだからあの村で許されるラインはわかってるの。理由もあるし、怪我人とかに気を付ければバレてもちょびっと怒られるだけよ!」
 そして、ミッカタンは曲がった腰を更に屈めて、心細げなゴロリンの顔を覗き込んだ。
「……それに勇者詐欺にかかって泣いてる被害者がいるって噂も聞いたの。それ、たぶんあいつらよ。このままだったら、報酬と称して村の皆もひどい目に合っちゃうわ」
 なんとなく心当たりがあるのだろう、ゴロリンはハッとして助けを求めるようにイレギュラーズたちを見て、ミッカタンは軽く自分の胸を叩いた。
「大丈夫! 多少あいつらをボコりすぎちゃっても、この村の特産品はとてもよく効く薬草だから!」
 それなら大丈夫かな。



●勇者ランキング

 ────功績をあげた者にブレイブメダリオンを与え、多く集めた者を勇者とする────

 奴隷市、レガリアの盗難、それから魔物の大量発生などの事件が連続して起こった幻想王国。
 勇者王アイオンの直系子孫にして幻想国王であるフォルデルマン三世は、その状況の中、『思いつき』でイレギュラーズの協力を仰ぐために現代の英雄を決めるブレイブメダリオン・ランキングこと通称『勇者総選挙』を開始した。
 すると、メダルを集めるイレギュラーズたちのかたわらで幻想ではにわかに勇者ブームが巻き起こった。
「己こそが勇者に」
「この機会にあわよくば……」
 本来ギルド『ローレット』だけで行われるはずだったランキングにギルド外の勇者志望の人々が次々に名乗りを上げ始め、喜んだフォルデルマン王から『有力な貴族が擁立したならばローレット・イレギュラーズ以外の勇者候補生にもメダリオン・ランキングへの参入を認める』というおふれが出る。
 そうして、ローレットの勇者達(イレギュラーズ)と勇者候補生によって幻想国内で発生するモンスターや奴隷といった問題が解決してゆく一方、メダリオン争奪戦もさらに白熱していったのだった。

 現代人たちへの憎しみによる古廟スラン・ロウの古代獣(モンスター)たち、地上人たちの文化根絶を狙った神翼庭園ウィツィロの古代獣たち、双方からの襲撃は依然として続いており、これらを解決した者こそが新世代の勇者であると考える貴族たち。
 騒ぎに紛れた一部の貴族による悪行や奴隷商人の暗躍、不正に擁立した勇者候補生モドキなどの噂、今回狙われた地域のほとんどがイレギュラーズの持つ領地であったという事実。

 そんな中、フォルデルマン三世からメダリオン・ランキングの最終集計日である『約束の日』が告知された。
 ランキングは最終段階へと突入し、国内には大きな動乱が巻き起ころうとしている。

GMコメント

●目的:偽勇者たちをこらしめよう
ゴブリンに扮して襲撃し強いふりをしている偽勇者たちの嘘を暴き倒した後に、
彼らの悪事を村人にばらし、偽勇者一行を捕まえてしかるべきところへ報告するというのがミッカタンの計画です。
多少のアレンジは構いませんが、参加者同士のプレイングで大きな齟齬があると思う通りの結果にはならないかもしれません。

偽勇者たちが悪人である証拠はミッカタンが持っていますが、
偽勇者たちがノーダメージの場合、村人は偽勇者たちに言いくるめられてしまうでしょう。
悪依頼ではないので、村人と村の施設にはなるべく損害を出さないよう気を付けてください。


●ステージ:村
広い村の広場>周囲をぐるりと囲む木立>更にその外側に村人の家(二十件くらい)が並ぶ小さな村
老人から子供まで住んでいます。
村人たちは明るくそこそこ善良で切り替えが早い人々です。
偽勇者の醜態を暴けば、ゴロリンへの誤解を解いて偽勇者の悪行を信じてくれるでしょう。


●NPC
・アルバート・ゴロリン・チャニング(p3n000031)
通称「ゴロリン」。
若干パステルカラーではあるもののゴブリン似の、異世界から来た気のやさしい少年。
召喚後の記憶はあるが召喚前の記憶は無く行き倒れていたところを村長に拾われ、以降、彼の実子として村で育った。
村では皆彼を「若干ゴブリン似」くらいにしか思って居なかった為、八歳まで自分の外見が人間種と大分違うことに気付かなかった。イレギュラーズに憧れて新米冒険者になった。
今回、ひとりで居たところを見つかり偽勇者一行に追い回されている。
登場シナリオ:「ゴブリンごろごろごんゴロリン」

・ミッカタン
大変好奇心と正義感の強い魔法使いの老婆。外見は絵本の悪役の魔女。
橋の向こうの森に住んでいてトンチキな物を製造し騒動を起こすので村人からの信用はないが仲は良好。
今日は空飛ぶオレンジを作って試運転していたが、オレンジの群れが橋にぶつかって爆発した。反省はしている。次に生かしたい。
今は手持ちの作品は「ゴブリンになる杖」のみ。
ちなみにオレンジは全滅した。
(この辺の事情はPCたちに説明済み)

・偽勇者御一行
勇者(グーシラ)、武闘家(猪鬼:ちょっき)、アーチャー(パパーラ)
・全員が武器に軽いしびれ薬を塗っていてヒットごとに特殊抵抗で判定、三回有効となるとそのPCは一回行動不能となる(スキル等で解除可)
・実際は並みの冒険者×3の強さだが、素早さが高い
・アーチャー:開始時に即座に距離を取るので中~遠距離からの戦闘となる(事前対策無効)
雰囲気イケメンだが大変外道でいじめっ子体質な三人。
騙して村人から信頼を得ている。
実は悪い貴族の紹介でランキングに参加し不正にメダルを集めている。
最近はゴロリンを使って『魔物退治』『村人救助』などといって活動していた。
口がうまく、ランキング上位の戦士だと大言壮語して強そうな技名を叫んだりかっこつけて勇者っぽく振る舞う。
ピンチになると村人を盾にして逃げようとする。


●アイテム
・ゴブリンになる杖
その場にいる者を双方の任意で一度だけゴブリンに変身させる杖。(ミッカタン以外)
元々の能力値と身体の大きさは変わらないが、肌の色は自由にカスタマイズできる。
半日経つと元に戻る。半日経たないと戻らない。


●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオン・ランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。


●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。


●GMより
こんにちは、依です。
戦闘はありますがそこまで強くは無いので気楽に楽しく遊んでくださいね。

  • <フィンブルの春>いいえ、わるいゴブリンではありません完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月29日 22時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
ドゥー・ウーヤー(p3p007913)
海を越えて
ヴェルグリーズ(p3p008566)
約束の瓊剣
晋 飛(p3p008588)
倫理コード違反

リプレイ

●訪れた依頼人
「つまりこの橋の惨状はミッカタン様が原因ということでございますか」
 『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)の指摘に悪びれる様子もないミッカタン。
「まあね。それにしても、ちょうど良くローレットのゴブリンがいるとは思わなんだわー」
「俺もゴブリンになれなんて依頼を受ける日が来るなんぞ思わなかったわ」
 サラリと返す『最期に映した男』キドー(p3p000244)。
 『海を越えて』ドゥー・ウーヤー(p3p007913)が厚く前髪を下ろした顔を揺らした。
「勇者になりたいって気持ちは理解出来るけど、やり方が本当に酷いね……。こんな悪事は見逃せないし許せないよ。絶対に止めなきゃ……!」
 『全てを断つ剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)の表情も険しい。
「勇者を騙るだけならいざ知らず、その上悪行までとなると放ってはおけないね。ゴロリンくんとこれまでの被害者さん達の分までしっかりお仕置きしようじゃないか」
「いろんな外見の種族がいるのがここだし、悪いことをしている種族と似ているのを利用して自分たちが悪いことをするのはよくないよね……」
 スカイウェザーである『空歌う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)もゴロリンを見た。
 すると、ミッカタンは胸を反らした。
「さすがローレットの先輩方。ところで、ワタシにいい案があるんだけど」

「ほうほう。空飛ぶオレンジもですがゴブリンになる杖ですか? 中々面白い魔術形式ですねぇ。……コホン、それはともかく、その『正義のハイパーゴブリンズ』計画に乗らせて頂きましょう!」
「そうだね。それで、出来ればゴロリンさんの名誉もしっかりと回復させたいな」
 ミッカタンの提案に『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)とドゥーがまず乗った。
「正義のハイパーゴブリン作戦……ま、まあ方針としては悪くねぇ! 一丁やるかい!」
 一瞬頬をひくつかせた『倫理コード違反』晋 飛(p3p008588)も一拍遅れて頷く。
「おう、果たし状は俺に任せろ。イカしたヤツを書き上げてやるぜ?」
 そして、『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)はニヤリと親指で自分を指した。


●潜入
「いいねェ、よく書けてるじゃん。正義の味方ってカンジじゃん」
「まあな!」
 千尋の果たし状をキドーはにやつきながら賞賛する。
「それでは、こちら預からせて頂きます」
「よろしく頼むぜ」
「行ってくるね」
 寛治を始めとした工作部隊として、ドラマ、アクセル、ヴェルグリーズ、ミッカタン。
 そして、村に入れないゴロリンと共に誤解を受けそうなキドー、他に千尋とドゥー、飛が森に隠れた。

 寛治たちを見送った後も村の方角をいつまでも眺めるゴロリンの隣に男がどかりと腰を下ろす。
「お前さんは人の村で育ったってぇのに、どこの誰かもわかんねぇ勇者ってぇ奴の一言でこの有様かい。笑いごとなのかもしんねぇが、俺ぁあんまり笑いたくねぇぜ、こういうのは」
「ま、いきなり邪険にされんのってマジで辛いよな」
 飛の隣に座る千尋。
「僕の村はここではないので気にしな──」
 だが、ゴロリンの弱々しい訂正を飛はばっさり斬り捨てた。
「それでも、お前さんは傷ついてんだろが」
 ドゥーがミッカタンの残した水筒をそっとゴロリンの手元へ寄せた。
「ずっと気を張り詰めてたよね。少しでも休んで。俺達がなんとかするから、もう大丈夫だよ」
「ありがとう……」
「ま、我らハイパーゴブリンズ一同にドンと任せときな、ゴロリン」
 立ち上がった千尋のニンマリ顔が、潤んだゴロリンの視界で歪んだ。
「偽勇者たちの被害が本当なら村の人たちだって危険なんだ。だから……僕も何かしないと」
 飛は目を瞬かせた。
「お前ェ、本当にいい奴だナァ……」
「え?」
「俺ぁはっきり言って簡単に丸め込まれた村の連中にもかなりムカついてたんだがよ、ま、お前さんがそういうなら、お前さんの望む形で、な?」
「飛さん……」
「でも、念のために今は控えとけ」
 黙っていたキドーが頭を掻いた。
「ま、下準備は新田たちに任せて大丈夫だろうさ」

「ポンコツ魔女がご迷惑をおかけしまして」
「いえいえ。こちらとの和解はすでに成立しておりますので」
 寛治のコネクションの利く村人が居た為、『橋を爆破した加害者のミッカタンと、行路を壊された被害者』として村への潜入はすんなりと成功した。
「キミって本当に顔が広いんだね」
 感心するヴェルグリーズへ、村人が笑顔を向ける。
「ちょうど今、村を救ってくださった勇者様の歓迎の宴を催しているので、皆様も是非」
「いや、俺たちは遠慮しておくよ」
 ヴェルグリーズが断ると、ドラマは忙しそうな大人たちの傍らで騒いでいる子供たちを示した。
「落ち着くまで私たちはあの子たちと一緒に待ってますね。読み聞かせくらいはできると思います」
「そ、それは」
「気にしないで。オイラも一緒に遊びたいから!」
「そういう訳ですので、こちらはお気になさらず」
 アクセルが元気よく声を上げ寛治が言葉を添えれば村人は大人しく折れた。接待しているのはたった三人のはずだが、忙しかったのだろう。離れてゆく彼を見送って彼らは油断なく周囲に目を配る。
「果たし状を張り出すのにちょうど良さそうな目立つ場所、子供たちに聞いてみましょうか」
「あと、やっぱり手紙と立て看板の両方あった方がいいかな。千尋殿の名文を是非見て欲しいからね」
「うん、しっかり皆に見て貰わないとね! お手紙を握りつぶして逃げるなんてさせないよー?」
「他に何人か事情を理解して味方になってくれそうな方もいれば良いのですが」
 ドラマ、ヴェルグリーズ、アクセルと寛治は村を見回した。


「やっぱり昼間っからの酒は最高だな!」
 アーチャーが陽気に笑った。
「せめて昼まで待てねーのか」
 そういう武闘家の両手には肉の塊。
「悪いね。ずっとあのハイパーゴブリンを追っていてオレたちも休むのは久しぶりなんだ」
 勇者は隣に侍らせた娘にぐっと身を寄せた。
 鳥肌を立てた少女は不安に思う。
 助けを求める相手を間違えたのではないかと──。
 そこに一人の村人が飛び込んで来た。
「ゆ、勇者様! こんなものが村長の家の前に!」
 卓上に広げられた紙を皆が覗き込む。


 ── 果 た し 状

善良な者を虐げ
その尊厳を踏み躙り
あまつさえ勇者を名乗る悪党共よ
貴様達の天に唾するかの如き行為
まことに許し難きものである
我々の同朋の名誉のため
時刻は正午
村の郊外にて
ここに正々堂々
武と武をもっての決闘を申し込む

正義のハイパーゴブリンズ
総勢八名────


「ハイパーゴブリンズ!?」
「総勢八名!?」
 これと同じものが貼られた看板も村内に立てられているのだと言う。
 村のあちこちから香ばしい匂いが漂い始めていて、時計を見ずとも正午が近いのがわかった。


●真打登場!
「ただいまー!」
「お疲れさん。首尾は良さそうだな」
 戻って来たアクセルたちの表情を見てキドーが軽く肩を竦めた。
「ついに変身ですね」
 取り出したミッカタンの杖を見てヴェルグリーズが呟くとドラマが息を飲む。
「……ゴブリン種の良し悪しなんてわからないのですが、私がゴブリンになったらどんな姿になるのでしょうか?」
 アクセルが目を輝かせる。
「オイラがゴブリンになるならもとの体色と同じブラウンの体色でお願いしたいな」
 だったら、と千尋が身を乗り出す。
「俺はイカしたゴブリンだぜ! 顔の方もイケゴブにしてくれよ?」
「色指定しかできないからなー。やってみよ──そおれ!」
 ためらいもなくミッカタンが杖を振るとボフンと煙が広がった。
 やがて、その煙が晴れた後には。
「ふむ。装備は元のままのようですね。いきなり腰ミノなどにならなくてよかった」
 オーダースーツをばっちり決めたゴブリンは寛治だ。茶色の羽毛のような毛髪を持つのはアクセルで、銀の瞳が涼やかなゴブリンはヴェルグリーズか。
 厚い前髪のゴブリンがミッカタンの鏡を覗き込む。
「なんだか不思議な感じがする……貴重な経験だし、楽しんでいこう」
「ドゥーさんかな?」
 ゴロリンがキラキラした目で彼らを見る。
 ドレッドヘアーが特徴のゴブリンが得意げに顎に手を当てた。
「どうキドーさん、ゴブリン的にイケメンになってる? 目鼻立ちとか」
 堪えきれず、ぶはっと吹き出すキドー。
「いやー似合ってるよー。本業ゴブリンが言うから間違いない。特に千尋くんなんてお望み通りイケゴブじゃん、俺には負けるけど。カメラ持ってくりゃあ良かったな、ガハハ!
 誰かスマホとか持ってない? レオンに見せてやろっと」
「やめましょう」
 白いゴブリンことドラマが慌てた。
「ゴブリンの、いやゴロリンの名誉回復だな!」
 赤いゴブリンになった飛が檄を飛ばし、すかさず嘯く。
「ゴブリンは最近じゃコミックでエロモンスター枠だから商売敵だぜ! っはー……どうせなら俺もそっち方面のゴブリン役やりたかったわー」
「今回は正義のハイパーゴブリンズ、私はメガネゴブリンで」
 ゴブリン寛治はメガネをクイっとあげる仕草をした。
「行きましょう」


●正義のハイパーゴブリンズ!
 一部にやたらと急かされ、更になぜか全員でついてくる村人のせいで、偽勇者一行は逃げ出すことも叶わなかった。
 渋々辿り着いた場所で彼らを待っていたのはゴロリンと、八つの影だった。

「どういうつもりだ、悪人ども!」
 叫ぶ勇者。遠巻きに見ている村人たち。
「はい、わるいゴブリンです。俺は同族っつーかが虐げられる事に憤るとかそういうのはねェんだけどよぉ。単純に、エラくもないくせにエラそうにしていい気になってるヤツの考えをブチ壊してやると気分いいよな。へへ」
「……」
「キドー様」
「おう」
 メガネゴブリンに窘められたキドーは素直にお口にチャックをした。
 改めて見得を切るアクセル。
「オイラ達は正義のハイパーゴブリンズ!」
「ゴロリンさんに行った卑劣な行為の数々。勇なきモノに勇者を名乗る資格はありません。貴方達を成敗させて頂きます!」
 後を継いだドラマが怒りの声を上げた。
「貴方達が本物の勇者だと仰るのなら、我々を倒してみなさい!」
 ドッカーン!
 ミッカタンの仕業だろうか、ゴブリンズの後ろで白煙があがった。
「ならば真の正義にひれ伏すがいい!」
 朗々と勇者が宣言すると武闘家は構え、アーチャーは軽やかに距離を取る。
「いくよ!」
 素早く距離を詰めたアクセルが勇者と武闘家へ神気閃光を放つ。
 食らう勇者、ぎりぎりで避ける武闘家。
 寛治が涼やかにステッキ型得物で死神の狙撃が武闘家を捕らえた。
「メガネゴブリン、実は芋砂スナイパー、いわゆる芋砂なのでした」
 それでも、アクセルに狙いを定める武闘家。威力はそれほどでもないがそれが辛うじて自分を捕らえたことにアクセルは驚く。
「決まった、爆裂紅蓮暗黒走流ゲッ!」
 技名を叫ぶ武闘家へ千尋の顎を狙ったアッパーカットがきれいに決まった。
「ヒギョーナッ!」
「失礼、隙だと思────っと」
「秘儀! 飴霰五月雨!」
 口元から血をダラダラと流しながら距離を取る武闘家へしらっとのたまう千尋を今度はアーチャーの矢が降り注ぐ。
「遠くに逃げたって逃さないよ……!」
 走るアーチャーへドゥーがベリアルインパクトを使う。
 踵を返そうとした射手を挟み込むように炸裂榴弾が破裂し、爆炎の陰から揺らめく赤がぬるりと手を伸ばす。
「さぁ来いよ! 殴り合おうぜ!」
 飛の三節棍が射手の横っ面を殴り飛ばした。

「栄光の光、スペシャルレーザァアア!」
 珍妙な叫びを上げながら勇者が突いてくる。捕らえてくるが安い攻撃だ。
 対峙していたヴェルグリーズが眉を顰める。
(村人の目があるとはいえ、こんなに実力差があるのになぜ退かないんだ)
 彼の使った運命剪定は目の前の敵を追い詰めていることを示している。
 怪訝に思ったその時、勇者の顔が醜悪に歪んだ。
「叡智の光、デッドレーザーアアア!」
 共に相対していたドラマが息を飲む。
 身体を強張らせるヴェルグリーズ。
 サディスティックな表情を浮かべて勇者は声を張り上げた。
「邪悪なゴブリン共は女神の祝福を受けた我らの武器の前に屈した!」
「ヴェルグリーズさん!」
 ゴロリンが叫んだ。
「次はおまえだぞ!」
「何が邪悪だよ! こっそりしびれ薬を使ってるそっちが言うー?」
 ヴェルグリーズを包むアクセルの大天使の祝福。
「くそ、邪悪だろう! 大人数で三人を囲んでおきながら!」
「そっちも三人がかりでゴロリンを攻撃してたじゃん!」
「……フン、モンスターと対話など無駄だったな!」
 勇者の歯がギリギリと鳴る。

 戦力差は歴然だった。
 ハイパーゴブリンズたちの猛攻は偽勇者たちの頼みの綱であったしびれ薬でも崩れない。
 追い詰められたアーチャーは脂汗をぬぐう。
(ゴブリン冒険者に仲間が──まさかコイツらローレットか!?)
 泳ぐ彼の目に、木立に隠れて親と覗く子供が目にとまった。
「程よく腐ってンなァ」
 間合いを取っていた飛が目を細め、村人側を護るべく立ち回るゴロリンを見た。
「ここでヒーローやるべきは俺達じゃなくお前さんだろ?」
 離れていたはずのゴロリンに何故かその声はよく聞こえた。アーチャーの注意をひくように飛がふらふらと動く。呼応するように彼は村人とアーチャーの間に走る。
「こ、これ以上酷いことはさせない!」
 気付いたアーチャーの矢がゴロリンに向き、その肌を裂く。
「ダメだ!」
 ドゥーが呼び出した土壁がアーチャーを捕らえ雪崩落ちると、ドラマがゴロリンと村人たちに駆け寄った。
「ゴロリン君! 皆さんは今のうちに退がって」
 逃げる村人たちを追うように腕を伸ばすアーチャー。その掌の先に緑。牙の見える口角が吊り上がった。
「正義の味方なんぞ勝手もわかんねェが」
 キドーの妖精の霧を喰らったアーチャーは、そのまま膝を折った。

「素早さが自慢のようですが、この命中精度を回避できますかね?」
 回避にしくじった武闘家が呻き声をあげる。
「勝てねえなあ。勇者様方、いい加減観念したらどうでしょーか?」
「くそぉおお! どうすんだよ!」
 その有様を見て極めて『紳士的に』降伏を勧めるキドーの言葉に武闘家が地団駄を踏んだ。
「チッ、仕方ない!」
 『勇者』がクロスボウを向けたのは彼に助けられたはずの少女だった。
「動くならこの娘は痛い目を見ることになるぞ」
「馬脚を現すとはまさにこのことですね」
 勇者を視界に入れながらも武闘家から照準を外さず、寛治がぼやく。俯瞰する彼には次の展開が手に取るようにわかった。
「た、助け」
「黙れ」
 言うや否や少女の太腿目がけて放たれる矢。
「くっ!」
 だが、矢は少女ではなく飛び出したドゥーを貫く。しびれ薬が効いてぐらりと揺れる。
 即座にヴェルグリーズが少女を庇う。
「決闘で無関係の者を巻き込むなんて不作法にも程がある。戦士以外の人間を盾にする……卑怯の極みだね」
 震える少女へドゥーは大丈夫だと頷いてから偽勇者へ叫んだ。
「これ以上罪を重ねても、あなた達が苦しむだけだ。ちゃんと捕まって反省するんだよ……!」
 すると、誰かの声が上がった。
「こいつらは偽勇者だ! 正義のハイパーゴブリンは悪者なんかじゃなかったんだ!」
 タイミングよく叫ばれたそれに寛治の口角が僅かに上がった。
「くそ!」
 走り出そうとした武闘家を寛治の一撃が抉る。
 村人を護るべく躍り出るアクセル。
「仮にも勇者を名乗るならそんなことはしちゃダメだよー!」
 不遜な勇者ご一考への不信感は確信とともに波紋のように広がってゆく。
 その時、緊張感に満ちた場にそぐわない呑気な声が響いた。
「とんだ勇者ご一行様だね! 近くの町で散々悪さを働いてる破落戸ってのはあんたたちでしょ!」

 絶妙なタイミングで現れたミッカタンの説明の後、偽勇者一行は縛り上げられた。後日、しかるべき機関へと突き出されるらしい。
「ありがとう、正義のハイパーゴブリン様!」
「村で休んでくださればいいのに」
「いいえ、急いでますから。お気遣いなく、ほんとうに」
 山のような昼食を振る舞われ、さらに引き留めようとする村人たちになんとか別れを告げるドラマ。ゴブリンの杖の効力が消える前に村を後にしたいのだ。
 ──ローレットが村人と不遇なゴロリンの窮地を救ったのではなく、どこからともなく現れた正義を謳うハイパーゴブリンズが村を救ったことにしたかった。
 去り際に千尋が総出で見送る村人たちを振り返る。
「村人の皆、ゴロリンはとても優しくて勇敢な我等の仲間だ。まずは、彼に正式な謝罪を。そして願わくば、今後はああいった連中に騙されないように気を付けてほしい」
 ヴェルグリーズも補足する。
「彼はローレットの冒険者だし、正確にはゴブリンではないんだよ。あくまでゴブリン似の旅人なんだ。とても優しい心の持ち主だから安心して欲しい」
 紳士的なハイパーゴブリンたちに促されて、村人たちは改めて誠心誠意謝った。
「騙された皆さんも僕と同じ被害者ですから」
 逆に彼らを気遣うゴロリンを見て、ドゥーはそっと思う。
(……ゴロリンさんみたいに頑張ってる人も、ブレイブメダリオンを貰うのに相応しいんだ)
 だけど。
 のんびり歩く一行の最後尾を歩くゴロリンへドゥーは声をかける。
「これからどうする? また冒険に出るのかな?」
 ドゥーとしては彼のその道をとても応援したいと思うのだが──。
「……僕には、まだローレットの仕事をやるのは難しいのかも」
 心配していた通り、嵐のような一連の事件が落ち着くと少年の心には不安の影が首をもたげていた。
「ゴロリン君はもっと、強くなりたいですか? ……でしたら、もっともっと鍛錬を積まないと、ですね!」
 凛と道を指し示すドラマを少年は眩しそうに見た。
「やっぱりローレットは、ヒーローだ」
「君だってローレットだよ」
 ヴェルグリーズがそう言った時、ボフンと煙が上がり杖の効果が切れた。
「思ったより早かったね」
 ミッカタンの呑気さにアクセルがいい加減だなあと呆れる。
「……ま、気の利いたことなんて言えねぇけど、頑張れよ」
 肩を叩いて通り過ぎたのがキドーだと気付いたゴロリンは目を丸くして息を飲んだ。
 道の先で立ち止まっていた寛治が仲間たちを振り返って鷹揚に尋ねる。
「で、橋、どうします?」
 あ、と誰かが呟いた。
「そうだった、どうしよう!」
「村に、一旦戻った方がいいのでしょうか」
 慌てるアクセルと考え込むドラマ。
「仕方ねェな。俺らがあのイケゴブだとはわかんねーだろうけど」
 ゴロリンとキドーさんはどうすっかなと千尋が頬を掻くと、寛治はさらりと提案した。
「ついでだから、我々で直していきましょうか」
「えっ!?」
 素っ頓狂な声を上げるゴロリンを促すようにヴェルグリーズとドラマ、アクセルが笑った。
「仕方ない、ローレットの『皆で』もうひと頑張りだね」
「なるほど──そうですね」
「みんな困るもんね!」
「タダ働きかよ。まァな、とりあえず渡れればいいンだろ?」
 苦笑しつつ飛はゴロリンを横目で見てニッと笑い、千尋は口を尖らせて見せる。
「しゃーねェ。ハイパーゴブリンズはイカした正義の味方だし?」
 目を丸くしたゴロリンは、すぐに破顔した。
「は、はい! 僕もがんばります!」
「じゃあ、橋が完成したら依頼料代わりに夕飯と今夜の宿を用意するよ!」
 ミッカタンが悪びれなくそう申し出て、やがて対岸ではささやかなハイパーゴブリンたちの宴が開かれたという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

正義のハイパーゴブリンズの皆様、お疲れさまでした!

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