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シナリオ詳細

<フィンブルの春>悪意なす蜘蛛糸は未だ見えず

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 幻想、西の湾岸地帯。
 とある仕事を終わらせたシラス(p3p004421)は、人目から死角となる路地裏で声を掛けた。
「何の用だ?」
 声を掛けた相手は2人。
 つけられていることに気付いたシラスが誘導し、逃がさない距離で尋問する様に言った。
(こいつ……)
 つけていた2人の内、1人の顔は知っている。
 以前、奴隷にされそうになっているスラムの子供を助け出してくれという依頼を受けたが、その依頼人だった男だ。
 そして少し前、幻想種が奴隷にされそうになっているのを助けてくれと依頼してきた男でもある。
「そっちの奴は、あの時いたもう1人か?」
 シラスは美形な男を示し、もう1人の赤目の男に訊く。
 奴隷にされそうになっていた子供達を助け出した、あの時。
 依頼人である2人は仮面を着けていたのだが、赤目の男はイレギュラーズ達の言葉を受けて素顔を見せていた。
 ただ、もう1人は仮面を着けたままだったので、目の前の美形な男がそうだと当たりを付けたのだ。
 すると赤目の男が応える。
「ああ、そうだぜ。こいつはオドってんだ。んで、俺はガイ。よろしくな」
「名前を言うんだな」
 以前に素顔を曝した時は、名前までは言わなかった。
 どういうつもりなのか尋ねる意味で言ったのだが、ガイと名乗った男は笑いながら返した。
「可愛い子に名前を聞かれてさ、気分良くなっちまったから喋っちまったのよ。だったらこれからは、隠さず名乗った方が良いじゃん、てなことになったのさ」
 笑みを浮かべたまま続ける。
「アンタみたいに、仕事を頼みたいと思う相手には」
「……仕事、ね」
 2人の挙動から視線を外さないようにしながらシラスは尋ねた。
「仕事を頼みたいならローレットに行けばいい。それとも、ローレットに頼めないような仕事を俺にさせたいってことか?」
「いやいや~、どっちかというと、アンタ達が切っ掛けだから、その時いた誰かにまずは声を掛けたかったってだけさ」
「どういうことだ?」
「幻想種の人達を助けてくれた時、奴隷商人達を訊問しただろ? その時、アンタらが聞き出した『ビブリオ』って奴等を、どうにかできないかと思ってさ」
 少し前、幻想種を助け出した依頼で、シラスは他のイレギュラーズと共に奴隷商人達を訊問している。
 その時、彼らに協力しているらしい犯罪組織の名を聞き出したのだが、それが『ビブリオ』だった。
「詳しいことは立ち話もなんだし、ゆっくり話せる所でしたいんだけど、構わねぇか?」
「……」
 シラスは黙考する。
 素性のしれない相手の元に訪れるのはリスクが高いが、色々と気になることもある。
「分かった」
「助かるねぇ。じゃ、ついて来てくれよ――と、そうそう、こいつは言っときたかったんだ」
「なんだ?」
「誰も殺さずにいてくれてありがとな。こっちの我儘だったけど、ありがたかったよ」
「……そうか」
 返す言葉を少し悩み、そのまま先導する2人の後を付いて行くことにしたシラスだった。

 そして今、貴族の屋敷に招かれている。

「いや~、わざわざすまないね」
「……」
 来客用の部屋で、シラスを招き入れたのは屋敷の主であるペンウッド男爵だった。
 彼はシラスを気遣うように続ける。
「突然、どこの誰とも知れない相手に招かれて困惑したと思う。非礼なのは謝らせて貰うよ」
「いえ……」
 シラスは曖昧に応えながら、目の前のペンウッド男爵の内心を探ろうとする。
 見た目は人が良くて気の弱そうなオッサンなのだが、実際そうとしか見えない。
(演技をしてる? なんのために?)
 こちらを好きに使ってやろうとしているようにも見えない。
 ただただ、人が好くて気の弱そうなオッサンにしか見えないのが逆に不気味だ。
 腐敗と退廃が渦巻く幻想貴族の中で、そんな男が生き残れるのか? 単純に運が良い可能性もあるが、そうでなければ――
 シラスが見極めようとしていると、ペンウッド男爵は言った。
「早速なんだけど、君達が名前を聞き出した『ビブリオ』っていう犯罪組織。場合によっては食い潰そうと思うから手伝って欲しいんだ」
「……どういうことです?」
 いきなり剣呑なことを言い出したペンウッド男爵に尋ねると、最初から見せていたぼんやりとした笑みを崩さず応えた。
「色々と悪いことをしてるみたいだから、潰した後に持ってる財産は盗めるだけ盗んで世の中に還元しようと思うんだ」
「……泥棒をさせようってことですか?」
 シラスは、同席しているガイとオドに視線を向けたあと尋ねた。
 この2人も、恐らくは泥棒をしていたことは、以前の依頼の時の行動で推測は付けている。
 すると、ペンウッド男爵は応えた。
「君達にさせようとは思ってないよ。君達に頼みたいのは、その前の段階。ビブリオが、どういう組織なのかを調べて欲しいんだ」
 ペンウッド男爵は、自らの手札を知らせるように説明する。
「君達が奴隷商人からビブリオの名前を聞き出してくれたあと、こちらも調べられる限り調べたんだ。最初は単に、貴族の紐付きな犯罪組織かと思ったんだけど違うみたいでね」
 ため息をつくように続ける。
「犯罪仲介組織。そう言った方が良いみたいなんだ」
「どういう組織なんですか?」
「犯罪の企画立案から実行のための人材斡旋。それを実現するための連絡網を持った組織だね。基本的には、誰かから犯罪の依頼を受けて実行するための活動をしてるみたいだけど、中には直接犯罪行為をしている端末もいるみたいだ」
「……犯罪を請け負いつつ自分達も犯罪を行っている、ということですか?」
「うん。組織構造としてはピラミッド型というよりは、細胞型組織に近いみたいでね」
 細胞型組織とは、確固とした組織や中枢は持たず数名からなる『細胞』が緩やかにつながる形式のものだ。
「これだと普通は、それぞれの小さな組織が好き勝手に動いてまとまりが無いはずなんだけど、どうも連携して動くこともあるみたいだから、どこかに司令塔の役割を持った中枢組織か、人物が居るんだろうね。例えるなら――」
 ペンウッド男爵は、思い出し笑いをするような笑みを浮かべ言った。
「張り巡らされた巣の中央に陣取る老獪な蜘蛛のような人物が居るのかもしれないね」
 ペンウッド男爵の表情を見て、怪訝な表情を見せたシラスに、ペンウッドは男爵は慌てたように返す。
「あ、勘違いさせちゃったらごめんね。別に、具体的に心当たりがある訳じゃないんだ。昔、練達から流れてきた小説で読んだ物の中に、そういったのがあってね。向こうの世界だと、世界で一番有名な名探偵の宿敵らしいんだけどね――」 
「本が好きなんですか?」
 ペンウッド男爵の人となりを図るようにシラスが話を合わせると、彼は笑顔のまま続けた。
「ああ。特に、練達の人達が書いた物が好きなんだ。ためになるしね。フランス革命について書かれた物とか、色々と勉強になったよ。と、ごめん、話が逸れちゃったね」
 ペンウッドは謝ると話を戻す。
「とにかく君達には、ビブリオについて調べて貰いたい。私の領内にも居そうな場所の目星を付けているから、そこを探って貰っても良いし、もし君達の個人的な伝手や調べたい場所があるなら、そこを調査して貰えると助かるよ」
「調査中に組織の人間を見つけたらどうして欲しいんです?」
「情報源になるから、可能な限り生かして捕まえて衛兵に突き出して欲しい。もし突き出す前に情報を搾り取れるなら、取っておいてくれると助かるね」
「他には?」
「今回の依頼なんだけど、いま陛下が進めている勇者ランキングに関わりたい貴族が出した依頼ってことにするから」
「どういうことです?」
 訝しげに聞き返すシラスに、ペンウッドは変わらぬ笑顔で応えた。
「ビブリオが、どの程度の貴族と関わっているか分からないからね。積極的にビブリオを潰して、関わった貴族をあぶり出そうとしているのがバレたら怖いから」
「他の貴族からの報復が怖いということですか?」
「それはもちろん。単純に権力で潰そうとして来るなら、向こうに非があればそこを突いてのらりくらりと躱すぐらいは出来るけど、実力行使に出られると困るんだ。だから、私達が怖いのはローレットだよ」
「……」
 僅かに眉を寄せるシラスに、ペンウッドは笑顔のまま言った。
「私の首を取れとか、うちの領民を殺せ、ぐらいの依頼なら受けるでしょ、ローレットなら」
「随分と、思ってることを正直に話しますね」
 真意を探るように見詰めるシラスに、ペンウッドは終始笑顔のまま応えた。
「可能なら、君達イレギュラーズとは、これからも関わっていきたいからね。それも、出来れば信頼関係を築きたいんだ。そのためには、嘘をついてたら始まらないから。とはいえ――」
 息を抜くような間を空けて続ける。
「正直言うと、おっかないから関わらないで済むなら、そうしたかったんだけどね。でも世の中、そうも言ってられないみたいだし。賭けにはなるけれど、私達は君達に積極的に関わることにした。その方が、世界平和に近づくかもしれないから」
「世界平和……」
 胡散臭げに言ったシラスに、ペンウッドは応えた。
「別に、崇高な理念とかで目指してる訳じゃないよ。単純に、自分や家族や領民達を生き延びさせたいから、私達は目指してるだけだよ。まぁ、この辺りは話すと長くなって退屈だろうから、もし君達が気が向いたら、その時にでも話させて貰うよ」
 そう言うとペンウッド男爵は、ローレットに依頼を出すことを告げた。


「ビブリオっていう犯罪組織の情報を集めて来て欲しいのです」
 招集されたイレギュラーズに向けて、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は依頼の詳細を説明してくれる。
「悪いことする人達の斡旋する組織みたいなのです。薄ーく色んな所に広がってるみたいなので、居そうな所を探って欲しいのです」
 詳しく話を聞くと、依頼を出してきたペンウッド男爵は、自分の所の領地でも居るらしいので、どうにかしたいと思ったらしい。
 それと同時に、いま賑わっている勇者ランキングに少しでも関わって目立ちたいので、他の地域でも探れるなら探って欲しいということみたいだ。
「だから今回の依頼が成功すれば、ブレイブメダリオンを貰えるよう手続きはしてくれてるみたいなのです」
 実益と一緒に、お祭り騒ぎにも加わって名声やらも手に入ればめっけもの。
 そんな、ある意味せこい依頼主っぽい。
 ユリーカの話を聞く限りでは。
「調べてると襲われる可能性もあるので気をつけて欲しいですけど、皆さんの実力なら楽勝なので楽チンな仕事なのです」
 ユリーカの気楽な声で送り出され、依頼に向かうイレギュラーズ達だった。

GMコメント

おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
十三本目のシナリオは、アフターアクションでいただいた内容を元に、<フィンブルの春>として作った物になります。
今回のシナリオでは、以下の特殊アイテムを取得することが可能です。

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

奮ってご参加いただけると幸いです。
それでは、以下が詳細になります。

●成功条件

犯罪組織ビブリオを探り情報を得る。

●方法

ビブリオが出没しそうな場所に訪れ、誘き出すような行動をとる。
具体的な方法は、以下のような種類があります。

1 依頼人の領地で行動する。

依頼人であるペンウッド男爵領の、とある酒場に出没するようです。
夜に薬の売買を行いつつ、仕事となる犯罪依頼をしてくる相手を見定めたりしています。
すでにペンウッド男爵の配下がある程度調べ済みであり、罠に嵌めたりするのは簡単。

どういうように接触し、どのように関わるかプレイングにお書きください。



最初は薬を求めて接触し、その後に酒を奢るなどして関わった後、犯罪依頼をするなどし、相手の本拠地に案内される。

上記以外の方法も自由にお書き頂けます。
より多く情報を引き出し、ビブリオの構成員を最終的に捕縛できると判断できるプレイングであればオッケーです。

2 仕事で得た貴族や裏社会との繋がりを頼りにビブリオについて調査する。

こちらは幻想での名声が関わってきます。
もし幻想に領地を持っておられる方が居れば、そこを舞台にしていただいても構いません。
どのように探り、情報を引き出し構成員を捕縛するのか?
自由にプレイングでお書きください。
情報収集する場所については、犯罪組織が出没しそうだなという場所であれば自由に書けます。



幻想に領地を持っているPCの伝手を頼り、ビブリオの情報収集。
犯罪者が集まり易い場所に目星をつけ話を聞いて回る。
目立つように動くことで、襲撃させるよう誘導する。

上記以外の方法も自由にお書き頂けます。
より多く情報を引き出し、ビブリオの構成員を最終的に捕縛できると判断できるプレイングであればオッケーです。

1と2の、どちらを選んで頂いても構いません。
ご参加いただいた皆さまが、それぞれ個別に進めるのも可能ですし、協力して進めるのも可能です。
ロールプレイングの自由度が高めになっています。



1と2に分かれ、それぞれのチームで協力して行う。
囮役が人気のない所に誘き出した所で、仲間が周囲を囲んで一網打尽、など。

●流れ

以下のような流れで進みます。

1 事前準備。チーム分けやミーティングなど。
2 情報収集とビブリオ構成員との接触。
3 構成員との戦闘。捕縛できれば成功。

という流れになります。
ですので基本的に、最終的には構成員との戦闘になります。

●敵

ビブリオ構成員。
どのように情報収集したり、誘い出したりするのかにより、敵の強さが変わってきます。
情報をより多く引き出せるようなプレイングの場合は、敵が強くなります。

ですので、情報があまり引き出せない場合は、敵は雑魚になりますし、情報を引き出せるほど、強い敵と戦うことになります。

戦闘場所については、プレイング次第で変わります。

敵については、場合によっては、問答無用で死にます。
PCが殺さなくても死にます。
この場合は、失敗になりません。

●情報精度

このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

こちらに関しては、依頼人は可能な限りの便宜を図ってくれていますし、情報も提供しています。
その上で、彼らも知りえない情報があるために、この精度になっています。

説明は以上になります。

それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリプレイに頑張ります。

  • <フィンブルの春>悪意なす蜘蛛糸は未だ見えず完了
  • GM名春夏秋冬
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月26日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シラス(p3p004421)
超える者
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者
イスナーン(p3p008498)
不可視の
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと
クルル・クラッセン(p3p009235)
森ガール

リプレイ

 犯罪組織の情報収集依頼。
 引き受けたイレギュラーズ達は、チームを組んで動いていた。


「依頼遂行のため協力して貰えないでしょうか」
 ペンウッド男爵の元に『ジョーンシトロンの一閃』橋場・ステラ(p3p008617)は仲間と共に訪れていた。
 今回の依頼はペンウッド領と、それ以外の地で個人的な伝手を使って動くグループに分かれている。
 ステラを含めた、『恋する探険家』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)と『不可視の』イスナーン(p3p008498)、そして『もう少しだけ一緒に』シルキィ(p3p008115)はペンウッド領で探ることにしたのだが、ステラの提案により事前準備としてペンウッドへの協力要請を行っていた。
「必要なことがあったら言ってね」
 温和な笑顔を浮かべ気遣うように応えるペンウッド。
 彼を見てステラは思う。
(随分と、食えない方ですね)
 一見すると、犯罪組織にちょっかいを出して食い潰そうとしている人物にしては見えない。
 どう見ても、気の抜けたオッサンである。
(……何だか、面白そうな方ですね)
 そう思いつつも表情には出さず要望を口にする。
「領内で探りを入れる皆さんの支援をお願いします」
 了承するペンウッドに、イレギュラーズは頼んでいく。
「まずは、ビブリオが出没しそうな場所を教えて貰えませんか」
 イスナーンの要望にペンウッドは応える。
「もちろんだよ。ヘルズ、調査書を渡してくれるかな」
「承知いたしました、旦那さま」
 傍に控えていた初老の男性、家令であるヘルズが全員に調査書を配る。
「他の領に近い酒場が多いんですね」
 中身を確認しイスナーンが言うと、ペンウッドは説明する。
「どうも周辺の他領から入って来たらしくてね。あの辺りは他領の人達も多く入って来るから、そういった人達に薬を売りつつ、うちの領民にも薬を蔓延させようとしてるみたいなんだ」
「なら、わたしは薬の売人のフリをしようと思う」
 シルキィは説明する。
「酒場に行って、最初は薬を買って顔を繋いでから、売人にしてくれるよう頼んでみる。その後は、手に入れた薬を蔓延させるわけにはいかないから――」
「なら、薬の引き取りと、囮捜査に使うお金はこちらで出すよ」
「うん、そうして貰えると助かる。経費かかってごめんねぇ……」
「気にしなくていいよ。他に必要なことはあるかな?」
「なら、持ち運びがし易くて高価な物を貸して欲しい」
 フラーゴラは説明する。
「ワタシ達は、ペンウッドさんから依頼を受けていたけど、強盗をするから手を貸して欲しいと提案するつもり」
 先を促すペンウッドに、フラーゴラは続ける。
「相手を信用させるために、ペンウッドさんの所から持ち出したことにする。それだけのことをしても気づかれないって、相手には油断させたい」
 フラーゴラの言葉を受け、ペンウッドは宝石が散りばめられた懐中時計を用意させた。
「……いいの? かなり高そうだけど」
「相手を信用させるなら、欲で目をくらませた方が良いからね。それにこれなら売り捌くのに足が付き易い。万が一があっても、そこから手繰り易くて良いんだ。これぐらい、世界平和のためなら安い物さ」
「世界平和……奇遇だね。ワタシも世界平和目指してる……利己的由来の平和なら気が合うかも」
「もちろん、個人的な理由だよ。私は家族や領民が生き延び続けるために世界平和を求めてるんだ。と、話が逸れたね。他に、何かした方が良いことはあるかな?」
「なら、銀行に何度か足を運んで貰えますか」
 ステラは説明する。
「話を持ち掛けた後に、裏取りをされないとも限りませんから、卿には銀行への接触をして貰い、それらしい欺瞞行動や部下の方を使って噂をそれとなく流していただきたいです。それと、ことを起こす際は邸宅も使わせて頂きたいのですが」
 笑顔で快諾するペンウッド。
 そのあと少し話す。
(ペンウッドさんの推察だとモリアーティ教授のような人物がいるらしいね。じゃあホームズごっこと行こうかな……)
 フラーゴラは心の中で呟きながら、やる気を見せるのだった。

 事前準備を十分に行ってから皆は行動する。
 それが功を奏しビブリオとの接触に成功した。

「美味そうなネタだ。乗らせて貰うぜ」
 酒場で懐中時計を受け取ったビブリオ構成員に、フラーゴラは言った。
「それは手付け替わり。成功すれば分け前は渡す」
「大丈夫か? あんたらみたいな小娘じゃ、お宝運び出すのも一苦労だろ」
「はい? 小娘に見えます?」
 揶揄する様に言う相手から情報を引き出すため、わざとステラは威圧する。
「そうですか、良い眼科を紹介しましょうか?」
「ちょ、冗談だ。そっちの兄さんも睨むなって」
 護衛のように傍に立つイスナーンに、ビブリオの男は卑屈な笑みを浮かべる。
(これが構成員なのか?)
 チンピラに毛が生えたような相手に訝しむ。
(聞いていた話とは違うが……囮か?)
 捜索しつつ超嗅覚も使い探っているが、他に怪しむような相手は見当たらない。
 イスナーンが警戒しつつ、フラーゴラが相手を持ち上げその気にさせながら情報を引き出す。
「ビブリオって、トップはどんな人物なの?」
「知らねぇ」
 あっさりと男は言った。
「俺達は元の細胞から分割されてここに来ただけだからな。俺らが知ってるのは元のグループのトップだけだ。そっから上は名前も知らねぇよ」
 話を聞くと、ビブリオは一定以上の人員に増えると分割して別れるらしい。
 その後の連絡は、元のグループを介してしか行われないとのことだった。
(何かあれば切り離し易い組織ということか)
 イスナーンが分析する中、話は進む。
「しっかし、アンタらローレットだろ? こんなことして良いのかよ」
「ローレットは汚い仕事をするからこれは普通だよ……?」
 フラーゴラは、あっさりとした口調で言うと続ける。
「とにかく、金品を邸宅から銀行へと運ぶ、この日以外にチャンスはないよ。嫌なら、手付を返して」
 フラーゴラの言葉に男は卑屈な笑みを浮かべ承諾。
 その後、酒場に残ったイスナーンが情報収集。
「やあ、兄弟飲んでるかい。これは私から奢りだ。所で聞きたいことがあるんだが、いいかい?」
 ラサから来たばかりの傭兵という触れ込みで酒を奢りつつ話を聞いていくと、イスナーン達に渡りをつけた細胞組織以外では、ビブリオがもうひとつあるらしかった。

 そちらをシルキィが探りを入れる。

「随分、沢山の薬を用意するんだね」
「捌けないのか」
「それは大丈夫だけど」
 ビブリオと接触したシルキィは、予想以上に相手から薬物売買を持ちかけられた。
「あいつらに負けるわけにゃいかねぇ」
 どうやら、ステラ達が接触したグループよりも人手が少ないらしく、功を焦っていたようだ。
 とはいえ警戒していないわけではないので、話を合わせ信用させる。
「イレギュラーズは一枚岩じゃないし、わたしはただお金が欲しいだけだよぉ」
 話を合わせた上で、薬を大量に捌いた実績で信用させ、美味い話を持ちかける。
「あるお貴族様から大口の依頼を受けたんだけどね」
 詳細を聞くためにアジトに案内されると、手のひら返しで戦闘開始。
 雑魚は無視してリーダーに集中攻撃。
 取り押さえた所で残りに言った。
「他の人の身柄は要らないから、退いてくれないかなぁ?」
 すると残りはリーダーを見捨てて逃亡。
 捕えた相手をギフトの糸で縛り薬の出所を訊く。
「衛兵さんにちゃんと便宜を図ってあげるから……素直に教えて欲しいなぁ」
「上の組織から勝手に送られてくる。どこが大元なんか知らねぇよ」
 それ以上のことは知らないようだった。

 シルキィと同じく、ペンウッド邸に誘い出したビブリオ達も捕まえた。

 イスナーンは逃げ出そうとしたビブリオの足をへし折るような勢いで蹴戦。戦闘不能にした上で拘束した。
 彼と同じくフラーゴラとステラも捕まえている。
 事前準備でペンウッドとやり取りし、待ち構えた中で誘い出したのだ。危なくなる要素がひとつもない。
「知ってることを話して貰おうか」
 イスナーンと同じくステラも尋問する。
「真っ二つにはなりたく無いでしょう?」
 情けない声を上げるビブリオ構成員。
(あまり情報を知らないかな?)
 フラーゴラは構成員の様子に思いながらも、自害されないよう口に布を詰めた。

 捕まえたあと訊問し、衛兵に差し出すことに。
「あとはこちらで搾り取ります。お疲れ様でした」
 ペンウッド領なので家令のヘルズが受け取り、礼を言われ依頼は完遂。

 他の地域でも同様に捕縛が行われていた。


「私達は犯罪者組織、『ビブリオ』の実態を探っています。何か知っている事があれば教えて頂けますか」
 王都近郊の貴族達に、『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)は話を聞いて回っていた。
 実際に情報を得ることが目的ではない。
 幻想での名声が高い彼女が聞いて回ることで、ビブリオを引き付け誘き出すのが目的だ。
「もし、懇意にしておられる方で何か知っている方がおいでなら、ローレットのサクラがそれを知りたがってると伝えて頂きたい」
 少しでも情報を広め、ビブリオに伝わるように。
 サクラは伝手を最大限に使い、聞いて回っていた。
(私だと、下手に策を講じるより、こちらの方が自然な筈だ)
 天義の騎士として知られているサクラが悪事に加担すると言われても、相手は信用しないだろう。
 ならば真っ直ぐ、犯罪組織を暴こうと動いている、という方が真実味がある。
「時間を取って頂き、感謝します」
 サクラは貴族に礼を言い、邸宅を後にする。
(情報を流し始めて日にちが過ぎたが、そろそろ伝わり始めているだろう)
 日に何件も貴族を回り、中には訪れる前からサクラの話を知っている者も出始めている。
(『ビブリオ』にとって、頭の固い正義感の権化みたいな天義の騎士に探られるのは迷惑だろうから排除に動く筈だ……私の実力は知られてるだろうし、弱い構成員じゃあ話にならないから強い構成員が来る……と良いな!)
 すでに戦う気満々で、サクラは王都近郊の街を歩いている。
 一見すると無防備に見えるが、超聴力を使い自分をつけている者がいないか探っていた。
 聞こえてくる幾つもの物音の中、聞き慣れた足音を聞き分ける。
 それは今回の依頼で組んだ『森ガール』クルル・クラッセン(p3p009235)の物だ。
(悪の組織なんて物語の中だけのだと思ってたけど……また同胞達を捕まえて奴隷にする悪巧み……とかされちゃ堪んないし、何とかしたいなぁ)
 サクラが不意打ちを受けないよう、距離を取った上で、サクラの周囲を警戒する。
 クルルは弓矢での遠距離攻撃が得意なので、離れた位置からの護衛は得意だ。
 サクラが怪我をしないよう注意して動いているが、クルルがしていることは、それだけじゃない。
(とっておきのお酒をあげたんだから、巧く噂を流して欲しいなぁ)
 クルルは幻想での伝手が薄いので、そこは賄賂で融通を利かせている。
 豊穣の極楽印の祝酒を手土産に貴族に渡し、サクラと同じくビブリオについて聞いて回っていた。
 聞き込みはそれだけでなく、サクラが貴族の屋敷でやりとりをしている間、周辺の飲食店で噂話を広げることに一役買っている。
 お代を多めに払って店員さん達にお願いしたり、色々な人にお酒や料理を奢ること数日。
 その効果は、現れた。
(……あの人達って)
 クルルは、サクラの後をつける数人の男達に気付く。
 周囲を探り怪しい人物達に目星を付けると、サクラは人通りの少ない路地裏に向かっていく。
(サクラちゃんも気付いたんだ)
 事前に話し合っていたので、スムーズに動く。
 サクラをつけている男達に気付かれないよう、いつでも攻撃できる距離と位置でついていく。そして――
「サクラちゃん!」
「クルルちゃん、そっちはお願い!」
 男達が動く寸前で、クルルとサクラは連携攻撃。
 先んじてクルルが、サクラを巻き込まないよう気をつけて泣き叫ぶマンドレイクを放つ。
 不意を突かれまともにマンドレイクの絶叫を受けた男達は混乱状態になり、そこをサクラが各個撃破。
 2人は見事な連携を見せながら、男達を無力化した。
「さぁ、知ってることを全部喋って貰うよ!」
「さあキリキリ吐いてよね? 犯罪者組織『ビブリオ』とやらの情報、君の知ってる限りねっ」
 反撃する余力が残らないほどボコられた男達は、自分達がビブリオの末端だと話す。
 そのあと聞き出せるだけ情報を聞き出すと衛兵に突き出すサクラとクルルだった。


(幻想に巣食う犯罪組織。手早く手を打たねば後々面倒なことになりそうだ)
 街を巡りながら、『猪突!邁進!』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は噂を広めていた。
 彼女の役割は、今回ペアで行動する『双竜の猟犬』シラス(p3p004421)の情報操作に合わせて動くこと。
 最後の詰めでは、誘い出したビブリオの的となる貴族令嬢の影武者だが、その前に動くことは多い。
(今回はいい機会。シラス殿の案に乗り奴らの尻尾を掴んでやろう)
 気配遮断を使って目立たぬ様に、噂を広めていく。
「領主が犯罪を取り締まろうとしているらしい。色々と動きにくくなりそうだ」
 可能な限り、その場に融け込むよう注意しながら、様々な場所を回る。
「ここだけの話だが、報復に動いている者もいるらしい。どうせやるなら、早くして欲しいものだ」
 目立たぬよう気をつけながら、焦らず確実に話を広めていく。
 今回のブレンダの役割は、シラスのサポート。
 彼が動き易く、信憑性が出て来るようにするのが彼女の仕事。
 それは十分に効果を発する。
 元より、メインで動いているシラスは、幻想ではズバ抜けて名が知られている。
 その多くは名声だが、悪名も下手な犯罪組織の長よりも高い。
 双竜の猟犬のふたつ名で呼ばれる彼が、表と裏、そのどちらも使い動いているのだ。
 情報の広まりは、ブレンダのサポートもあり、十分『過ぎる』ほどに広まっていた。

「少し、いいかね?」
「なんだ?」
 わざと治安のよろしくない場所の料理店で食事をとっていたシラスに、初老の男が声を掛けてきた。
(釣れたか?)
 ここ最近、あえて行動パターンを変えず動いていたのだが、それはビブリオに接触させるため。
 接触の可能性を高めるため、わざと治安の悪い街を罠の舞台として選んでいたのだが、それが功を奏したのか。
 事実、男はビブリオだった。
「領主の令嬢を拉致するらしいね。手伝わせてくれないかね?」
 男は、自分はビブリオという犯罪仲介組織の連絡役だと言った。
「何が目的だ?」
 すぐには食いつかず、あえて焦らす。
 相手に、こちらの真意を気付かせないためのものだったが、男は笑顔で言った。
「キミをスカウトしたいんだ、シラス君」
 話を聞けば、自分達の組織に取り込みたいと言う。シラスの席にメモを置き言った。
「もし私の申し出を受けるなら、メモに書かれた場所に行ってみたまえ。キミの要望通りの人員を用意してくれる」
 そう言って男は、ふわりと去る。
「名前ぐらい言えよ」
「モリアーティと呼んでくれ。シラス君」
 シラスが振り返ると、すでに男は居なかった。
 その後、メモに記された場所に行くと、男が1人。
 情報を聞き出そうとしたが詳細は語らず、シラスが必要とする人員を用意するとだけ告げ交流を拒んだ。

 ブレンダに状況を伝え、当初の予定通り動く。

 元の世界で令嬢であったブレンダは、持ち込んだドレスとメイク道具を使い、ヴェールと帽子で顔を隠し、立ち振る舞いは完璧。
 騒動から避難する名目で馬車に乗り、郊外に差し掛かった所で、ビブリオの人員を引き連れたシラスが合流。
 最初はブレンダを襲うように見せかけ、ブレンダは油断を誘うためにも驚いた振りをして逃げ、引きつけた所で2人は攻勢に動いた。
「掴んだ糸は放さない。これで一網打尽といこうではないか」
「蜘蛛退治だ、絶対に手繰り寄せてやるからな」
 ブレンダとシラスはお互いの背を預け合うようにして戦う。
 ローレットでも指折りの実力者である2人に、ビブリオ構成員は敵にもならない。
 10人ほどいたが、6人ほどを殺さず叩きのめし、残りの4人にも手傷を負わせる。
 かなわないと見た4人は逃走。
 戦えば勝てたが、戦闘不能にした6人を放置するわけにはいかず。
 自害や口封じを警戒して拘束する中――

 襲撃者の1人の胸が、内側から爆ぜた。

 危険を感じ2人が距離を取ると、爆ぜた胸から大人の頭ほどもある蜘蛛が這い出、憐れな被害者の頭に飛び掛かり自爆。
 死体からでも情報を抜き取らせないとでも言うように、頭部を粉々に破壊した。 
「なんなんだ、これは……」
「お前らがやったのか」
 残った構成員に訊くと、顔を青ざめさせながら知らないと応えた。
「俺達は、いま死んだ奴に雇われただけだ、それ以上は知らない……こんなの、聞いてない」
 どうやら今回の襲撃のために急遽集められた人員であるようだった。

 その後、生き残っている5人を領主に突き出す。

「こいつらを締め上げて捜査を進めるべきだ」
「恐らく既に、街に巣食っている。排除は早い方が良い」
 シラスとブレンダの進言に、『治安の悪い街』の領主は暗い顔で頷くのだった。

 手掛かりを得ると同時に、ビブリオの不気味さを感じさせる依頼の終わりだった。

成否

成功

MVP

シラス(p3p004421)
超える者

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした!
見事、皆さまの活躍で、ビブリオ構成員を捕まえ情報を取得することが出来ました。

それと、ビブリオの首領も顔を出しました。
当初は、今回は出す予定は無かったんですが、プレイングの内容や知名度などを考慮に入れると、こいつは出て来やがんなぁ、と思ったので出てます。
もっと出番は後の予定だったんですが、そうなりました。

ちなみにこいつは、のらりくらり裏に隠れて暗躍するタイプなので、今後もこそこそする予定です。
いずれ長編とかで出していきたいな、とか思っています。

ではでは、これにて。
最後に重ねて、皆さまお疲れ様でした。ご参加、ありがとうございました!

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