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シナリオ詳細

黒狼キャラバン

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●かつてそうであったように
 馬を引いて進む山道は、長い長い太陽の向こうに続いていた。
 帽子で日差しを陰らせた目をもうすこし細めて、フラン・ヴィラネル (p3p006816)は馬へと振り返る。
 馬の背にまたがりゆったりと身体を上下させているハンス・キングスレー (p3p008418)が、どこかぎこちなく笑った。

 もし黒いマントをつけた『彼ら』を初めて見た者がいるなら、説明しておくべきだろうか。
 かつてベネディクト=レベンディス=マナガルム (p3p008160)の生きていた世界に、『黒狼隊』という部隊があった。王国最強と呼ばれた彼らのトレードマークが、ベネディクトを象徴するこの黒いマントであった。
 召喚によって混沌世界へやってきたベネディクトは再び同じ名の部隊を作り、いまドゥネーヴに拠点を持つに至る。
 拠点にはいつも多くの人が出入りし、タイム (p3p007854)や笹木 花丸 (p3p008689)がテーブルを挟んで編み物をしていたり、圏外になったスマホをいじいじしながら時間を潰していたりする。
 コラバポス 夏子 (p3p000808)とルカ・ガンビーノ (p3p007268)が窓の外で剣や槍を使った稽古をしている事もあれば、マルク・シリング (p3p001309)が静かに木陰で本のページをめくっていることもある。
 異世界にあったという同名の組織とは随分違う光景かもしれないが、それはそれで、『居場所』というやつになりえるのだろう。
 フランも、ここに居場所を見つけた人間のひとりである。
 持ち前の人当たりの良さとボディーランゲージで皆と打ち解けていったものだが……。

「ハンスさんと打ち解けられない?」
 ある日の晴れたテラステーブルで、紅茶を淹れたタイムがかくんと首をかしげた。
 両手と首をぶんぶん横に振るフラン。
「んーんーちがくてっ、仲良くはできてるんだけど……いまいちこう、アレがむにゅってしてて」
「古参と新参の間に壁を感じてる?」
「そうそれ!」
 ビッと指をさすフラン。カップの中身を飲み干すと、ティーソーサーに勢いよく置いた。
「どうしたらいいかな」
「んー」
 タイムはぼんやりと中庭を眺めた。ポメ太郎がちゃかちゃか走って行き、ベネディクトが頭を撫でている。そばにいた夏子にフリスビーを渡すと、投げるようにジェスチャーした。
 飛んでいくフリスビーと、走って行くポメ太郎。
 たまたま通りかかった花丸がフリスビーをパシッとキャッチし、S字のカーブをかけて夏子に投げ返していた。
 なぜにという顔をしてUターンダッシュするポメ太郎。そしてソレを見て手を叩いて笑うルカ。ハンスはそのそばでぼうっと様子を見つつも、すぐに本を読むのに戻っていく。
 なるほど、ことさら問題にするほどではないが確かにちょっとだけ気になる。
 などと思いながら仲間達の様子を眺めていると、いつのまにかテラス席にマルクが一緒に座っていた。
 ビクッとして振り返ると、自分用のティーカップをスッと掲げてマルクが片眉をあげる。
「話は聞かせて貰ったよ」
「あっそれ役に立つお助けキャラが必ず言うヤツ」

●ラサウォーカー
 マルクが請けてきた仕事は幻想からラサへの輸送仕事だった。
 馬車いっぱいに詰んだ陶器を割らないようにオアシス街へ送り届けるというもので、賃金はともかくのんびりとした楽な仕事である。
 彼曰く『一緒に旅でもすれば仲良くなるさ』ということである。
 そんなこんなで始まった、旅仕事。
 黒狼隊のキャラバンツアーの、はじまりはじまり。

GMコメント

 今回は旅仕事です。
 戦闘は全く起きないですが、その代わり旅路を楽しく充実したものにしていきましょう。

●旅の行程
 出発地点から目的地まではパカダクラ数頭をつれゆったりのんびり進むことになります。
 あんまりスピード出してつっぱしると積荷の陶器がやられちゃうからですね。
 ですので、途中でテントを二つ三つたててたき火を囲み、野営をすることになります。
 通るエリアは平野と山岳の混合。砂漠ってほどまっさらでもないけど木々もまばらで歩きが多いイメージです。
 歩いてる間のプレイングってピンとこないと思うので、プレイングは主に野営部分にさきましょう。

・野営
 野営にそこそこ適したエリアがあるっぽいので、テントをたてて野営します。
 ご飯作るにも何するにも自力なので、みんなで協力してあたりましょう。
 いっそご馳走を作ってもいいですが、みんな何食べたいか聞いておくのがお勧めです。楽しいから。

・目的地
 タリズというオアシス街です。荷物を引き渡したらもう自由なので、ちょっと観光してかりましょう。
 観光は全員で一緒に動いていてもいいですが、プレイングが爆発するのでいくつかのチームに分かれて行きたいとこに行くのがお勧めです。

 ここはそこそこ栄えている街なので、市場でのショッピングなんかが観光のメインになります。絹織物やアクセサリー、へんな文字かいてあるTシャツとかが売っています。
 もっというと地質の影響で青い建物が多いので、高い場所から眺めるとちょっとキレイです。その辺を意識したカフェなんかもあるので、興味が湧いたらいってみてください。
 遊び処としてはナイトプールできゃっきゃするのがチョットお勧めかもしれません。
 他にもまあまああるものはあるので、こういうのあったら行ってみたいなっていうのがあったらそのへんのオッサンに聞いてください。案内するヨ。

  • 黒狼キャラバン完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年04月21日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
ハンス・キングスレー(p3p008418)
運命射手
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華

リプレイ

●黒狼キャラバン
 カシヤシの白木に黒紋様。鉄の車輪を回して山河をゆくは二台の馬車。
 馬車にかかったクロスには、交じり矛に抱き鷹羽、盾に黒狼――これをベネディクトの故郷を示す紋として誇らしげに風にゆらしていた。
 とはいえこちらは古い馬車であるようで、新しい馬車には輪をかけた黒狼に焔の新『黒狼隊』紋章がプレートとしてかけられている。
「戦いもねえ、大人数でのんびり旅っつーんは初めてかもな」
 『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)は御者席に寄りかかって、片膝を立てた少々崩れた姿勢で馬をゆっくり歩かせている。
 野犬や野良の魔物が出ないとも限らないので眠りこけたりはしないが、それにしたって随分とくつろいだ様子である。
 話によれば今回の旅はハンスとの距離を縮めるものであるらしい。みなでじゃれていてもちょっと離れたところで本を読んでいるハンスである。それはそれで付き合い方としては悪くない距離感なのだが、もっと気心の慣れた間柄になるのもわるくない。
 それに何より……。
(折角気ぃ使って距離を近づける機会を作ってくれたんだ。ちゃんと活かさねえとな)
 一方の『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)は馬車の荷台にのっかって、組んだ両手を幌の枠にひっかけてすやすやと昼寝をしていた。
 ……とみせかけて、実はちょっぴり起きているらしい。
(元々新人とか古参とかあんま気にした時ないケド、居心地良い場所がより良くなりゃソレに越したこたぁないもんな)
 ハンスと仲良くなるための旅らしいが、さてどうしたものか。無理に距離を詰めるのも自分らしくない気がする……などと考え始めたところでやっとスヤりはじめた。
 一方の『人為遂行』笹木 花丸(p3p008689)は箱馬車の御者席について、手綱もそこそこに組んだ足に顎肘をつき、ぼうっと流れる景色と空の雲を眺めていた。
「花丸ちゃんも色々と関わってきた心算だったけど、こうしてただ旅だーって皆とナニカするのは初めてだったかも? この機会にもっと皆と仲良くなれたら嬉しいな」
 並んだ馬車は山道をまわり、やがて開けた野原に出るという。
 空の日は西へ傾き、もうじき日も暮れる。そこで一晩テントを張って野営をしようという段取りらしい。
 そんな馬車のまんなか。もとい幌馬車の端っこに腰掛ける形で、『虚刃流直弟』ハンス・キングスレー(p3p008418)は旅をぼんやり楽しむ仲間達の様子を眺めてみた。
 聞くに今回の旅は輸送の依頼であるという。割れ物を運ぶから馬車をかっとばしてもらっても困るし、戦闘に巻き込まれても困る。そんなわけでおおきく回り道をして安全にゆっくり運ぶ必要があるらしい。
 とはいえローレットでも腕利きのイレギュラーズが八人がかりでやる仕事かといえばそうでもない。報酬からアシがでないとも限らないトントン仕事だ。
 なぜこんな仕事に八人がかりなのかといえば。
(気、遣わせちゃったかな……)
 フランたちの想いには未だ気付かぬ、ハンスであった。
「ねえ、ハンス」
 それまで読書をしていたマルク・シリング(p3p001309)が、日の陰りに文字が読みにくくなってきたのかパタリと閉じて顔をあげた。
「のどかな旅だね」
「えと……うん、そうですね」
 想えば、この旅に出かける前からもう旅は始まっていたような気がした。
 ドゥネーヴの集会場で、キャンプのメニューやらタリズについてからの観光について話している時間もまた、確かに『旅』であったように想う。
「いつもこうならいいのに」
 と、マルクはどこか冗談のように言った。

 馬車を挟んで進む馬は、山道でも疲れることなくゆったりと歩いて行く。
 『青と翠の謡い手』フラン・ヴィラネル(p3p006816)はその背に乗って、マルクと語らうハンスの様子をやや遠目に眺めていた。
「うまくやれてるかな。ハンスさんって引っ込み思案なところあるから」
 同じ馬にのって横を進む『優光紡ぐ』タイム(p3p007854)。
 最近しつらえたアラビアンな装束を纏って、黒い布を頭にかけている。使った布といい飾りといい、夏子のそれにだいぶ似ているのでペアルックかなにかかと想ったフランだが、どうつついたもんか分からずそのままにしている次第である。
「仲良くなれるといいね」
「ん? んー。ハンスさんが気になるのは勿論だけど、あたしももっとみんなと仲良くなりたかったんだよねー」
 ついでとばかりに腕に抱えたポメ太郎(この旅における九人目の仲間)を掲げた。
「皆とマブダチになるぞー!」
「おー」
 手を伸ばしてポメ太郎のおなかをさわさわするタイム。
 自分の馬にのってその横へつけた『曇銀月を継ぐ者』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)が、ポメ太郎の頭をぽんっと撫でていった。
「目的地まではそれなりにあるが、急ぐ旅でも無い。各々、気晴らしも含めて楽しんでくれ。
 ポメ太郎もあまりはしゃいで皆に迷惑をかけるんじゃないぞ」
 あうっ、と返事でもするようにポメ太郎は声をあげた。

●夜と友達になる
 満天の星空のした、たき火に照らされた花丸は馬車からおろしたテントセットを構えた。
 そう、構えた。
「ちょっとしたお手伝い位バーッて出来る様になったんだから!
 花丸ちゃんにマルっとお任せ!」
 てやーといってテントセットを天空に射出。そう射出。
 そして勢いよく跳躍するとテントセットを連続花丸パンチによって地上に撃ちまくりざくざくと刺さった骨に勢いよく広がったテントシートがなんかこうファーッって巻き付いてびゃーってなってボッってなった末なんかわかんないけど三階建てのコテージが完成する――。

「――っていう想像でいたんだけど」
「なぜ投げた?」
「なんで殴ったの?」
「どうして最後コテージになったの?」
 マナガルムたちがいそいそとテントの設営をしながら振り返った。
 グーをかざして真顔になる花丸。
「拳はなんでも解決すると思って」
「解決の仕方が花丸ちゃんらしいや」
 夏子がにんまり笑って竹竿とミニハンマーを手渡した。
「まずはテントの軸をつくるから、この竹竿を地面にうちこんでいってもらえる?」
「アイヨー」
 そいやーといってグーで竹竿を殴る花丸。実際に打ち込まれる竹竿。
「ほんとだ、拳が解決してる」
「あんな解決方法は予想していなかった……」
 地道にハンマーでかんこんしていたマナガルムが小さく首を振った。
「所で」
 夏子がスッとろくろを回す姿勢をとった。
 視線が料理をするタイムやフランへと向く。
「フランちゃんはうん、シュッとしてシュッとして……シュッとスレンダーで可愛いよね。
 タイムちゃんもうん、シュッとしてシュッとして……ほぅ…悪くな…いや良いね良い」
「何の話だ?」
「そこへ来ると花丸ちゃんはすごい花丸っては話さ。例えばオゴォ!?」
 飛んできたハンマーにぶつかって転倒する夏子。
 もちろんこのあと秒で復活した。
「えっと……僕は何をしたらいいのかな」
 そんな中。どんな道具を持ったらいいのかも分からずにそわそわしているハンス。傭兵稼業で野営は慣れたモンだというルカが手際よくシートを広げている所へ、マナガルムがちょいちょいと手招きをした。
「ルカ、ハンスにテント設営を教えてやってくれないか。覚えておけば役に立つこともあるだろうからな」
「だな。知ってるか? 傭兵団が合同で出かけるとキャンプ場の設営はウデの見せ所になるんだぜ。俺が『兄貴』とファルベライズに繰り出したときなんか――」
 軽く武勇伝を話し始めるルカが、それこそ慣れた調子でハンスにテントの設営方法を教えていた。
 すっごい余談になるが、彼らマジになるとそのへんの木を切り倒して巨大な集合テントやキッチンを作り始める。ボーイスカウトの巨大イベントや軍事キャンプみたいなものである。
「体動かすと腹が減るからなぁ。メシが楽しみだぜ。なぁ、ハンス」
「そうですね」
 ハンスが柔らかい性格をしていることは別としても、元々他人にはフランクに接することのできる奴……のはずだとルカは思っていた。
 なんとなーくではあるが、『兄貴』と話すようになった頃の自分に似てるな、とも思ったりした。最近じゃあフツーに息抜きに誘ったりするのだが。

 一方で。
「えーと本によると、おろし玉ねぎに漬けておいた羊肉に、スパイスはクミンとフェンネル……多分、これで合ってるはず!」
 マルクが羊肉の串焼きをたき火の上で作っていた。
 太い木の枝を組み合わせて作った調理台でくるくるやりながら、片手でひらいた本をちらちら見るという作り方である。
「焼くだけだと思ってたけど、奥が深いね……串焼き」
 うーんと唸るマルクの横では、もうひとつの焚き火台をタイムとフランがじーっと見つめていた。
 厳密にはそこにのっけたカレー鍋を見つめていた。
「あのね、チャパティ作ってきたよ」
「カバディ?」
「チャパティ。フライパンでうすーく焼いた……パンかな」
「へー。ナンみたいなやつ?」
 当たらずとも遠からずなことをいうフラン。きった野菜と干し肉をカレーにひたすら突っ込んでぐーるぐーるすればできるやろっていう力業みたいな料理を繰り出した直後のことである。
 タイムとフランは立ち上がると、エプロンをきゅきゅっと結び直して振り返った。
「みんなー! そろそろできあがるよー」
「はいポメ太郎、味見」
 マルクの串焼きをを一本取ってわたすと、ポメ太郎が秒でかじりついてから『熱あ!』て顔して飛び退いた。
 フーフーしてからお皿にのっけて地面においてやると、はぐはぐ食べ始めるポメ太郎。
「おぉ、フラン。ありがてえ。おまえさんの作ったメシも楽しみにしてたぜ」
 ルカたちがやってきて、たき火を囲んで腰をおろした。
「はいっ、ハンスさんはご飯大盛りねっ!
 ふっ、これぞ花丸ちゃんなりのサービスっ!
 いっぱい食べて君も立派な黒狼隊のメンバーにっ!」
「ほれほれ、しっかり食えよハンス。成長期なんだろ? 食わねえとでかくなれねえぜ」
 後から座ったハンスには、花丸がいきなりすげー勢いでご飯を盛り始めた。
 苦笑しながらとりわけをはじめるマルク。
「今日はこういうメニューにしてみたけど、皆はどんなメニューが好きかな」
「好きな食べ物かぁ…パフェでしょー、ケーキでしょー、ドーナツでしょー。
 あ、でもでもこうやって外で皆で食べるご飯も大好き!」
 フランが指折りして数え始めると、串焼きを早速食べ終えたポメ太郎を抱きかかえてタイムが隣に座った。
「わたしも甘いもの好きっ。誰かと一緒に食べるのはも~っと好きポメ太郎もそうよね~? ハンスさんは?」
 ポメ太郎と一緒にくいっと振り向くタイム。
 ハンスは少し考えてから、山盛りのカレーライスを見つめた。
「美味しいのは好きなんですけど……ちょっと前まで適当に食べてれば身体は大丈夫だったから、どれぐらい食べられるのかわからなくって」
 マナガルムがカレーライスを前に手を合わせ、スプーンを差し込んでいく。
「俺はやはり皆で食べられる様な食事は好きだな、特に今回の様な」
 その言葉を聞いて、ハンスも同じようにスプーンを手に取った。
 食べるもの。
 食べる場所。
 一緒に食べるひと。
 これも、大事な経験になるのだろう。
「い、いただきます」
 この後、明らかに食べ過ぎたハンスは目を回した。

●タリズ
 仕事終わり、というべきだろうか。
 運搬の仕事を一通り済ませて報酬を受け取った両手を広げてたかたかっと道走る花丸。
 『タリズを見て死ね』という言葉があるほど、タリズはラサでも有名なオアシス街である。
 観光客も多く、海からすぐ急斜面になった山形の地形は要塞のようにそびえ、地質のせいか青い建材の家が多い。そのせいか風景は爽やかな空色となっていた。
 そんな街を背景に、くるりと身体ごと振り返る花丸。手には人数分に分配した報酬のコイン袋。
「皆でどっかいこっかー! パフェ美味しいらしいからパ――」
 ギャアン! という謎の効果音をたててタイムとフランが花丸の間後ろにスライドイン。
 両目かっぴらいた二人が同時に花丸の肩を掴んだ。間から顔だしてハッハしてるポメ太郎。
 タイムとフランはゆーっくり顔を近づけて無言の何かを訴えた。
「あっ、んー、ふーん」
 何かを察し虚空を見上げる花丸。
 タイムはサッと夏子へ振り返ると、。
 あっちこっちをチラチラ見ながら耳をぴこぴこさせた。
「あ、えっと、別に~? 予定はないけど、折角だから夏子さん一緒に、回る?」
「ふーん? デート? いいよ?」
 そして秒で答えるサムズアップ夏子である。
 ハイこのときの脳内夏子。
(ははーん、さてはアレだね? 歓迎会用のサプライズでもしたいんだなぁ?)
 そしてそんな二人の顔を見たルカの脳内。
(さてはコイツらなんかすれ違ってるな)
 同じくマルク。
(面白そうだから放っておいてみよう)
 同じく花丸とフラン。
「おなかすいた!」
「ファ〇チキください!」

 というわけで、マルクたちはショッピングに繰り出した。
「夜はナイトプールに出かけるつもりなんだけど、どっちの水着がいいかな。黒狼隊らしく黒?」
「そ、そんなことを言われても……」
 黒とグリーンの海パンを掲げられてハンスがもじもじしていた。
 助けをもとめてか何気なくか振り返る……と。
「ルカせんぱーいっ! ベネディクトさんっ! こっち! ねっ、こっちなんかすごいのありますよ!」
 ハンスが、タリズのお土産屋さんを指さした。
 なるほどと言ってマナガルムが歩み寄り。
「妙な形のサングラスだな、どうだ?似合うか?」
 ピンクの星型サングラスをかけてキメ顔で振り返った。
 ベヒューとタピオカドリンクを吹き出す花丸とフラン。
 その隣ではハンスとルカが『アラブ歓迎』『石油王』って書いてあるTシャツを着ていた。
 もっかい吹き出すタピ。
「後は旅の記念にアクセサリーの一つでも買って見るか、どれ、ハンスにも一つ買ってやろう。ルカ、どれが良いと思う」
「ハンスに似合うアクセサリーか」
「そうだな……」
 彼らはそのまま真面目に話しだし……。

 そして、夜。
 ライトアップされたプールを、黒い競泳用水着とゴーグルをつけたマナガルムがガチのバタフライで永遠に往復していた。
「ナイトプールってこういうのだっけ……?」
「いいプールだ。さすがはオアシス街だな。競争しないか?」
「するー!」
 バカンス専用みたいな水着で飛び込んでいく花丸。
 そんな様子を、浮き輪つけて浅いところでちゃぷちゃぷしていたフランとハンスがぼんやり眺めていた。
 そこへグリーンの海パンをきたマルクがやってきた。
「僕も実は、黒狼隊に正式加入したの、そんなに前じゃないんだよ。だからお互い新入り同士みたいなものなんだ。改めて、よろしくね」
「う、は、はい」
 ちょっと照れた様子のハンス。
 彼らの様子を遠目に見ていたルカと夏子が、カクテル片手にくつろいでいた。
「たまにゃあこんなのんびりした時間も良いな」
「フランちゃんタイムちゃん花丸ん! 僕がプールだ飛び込んでお――」
「みんなー! サプライズでーす!」
 タイムがワゴンに名物パフェ(お持ち帰り用)を人数分につんで現れた。
 その様子に、デート(?)中なにがあったのかをうっすら察するルカとフラン。
 まあいいやとばかりに花丸たちはパフェを手に取った。
 ザパァとプールからあがったマナガルムが、濡れた髪をかきあげる。
「今回の仕事……いや、旅はどうだった、ハンス」
 パフェを手に、振り返るハンス。
 食べるもの。
 食べる場所。
 一緒にたべるひとたち。
 腕にまいたブレスレットを見て、ハンスはほっこりと笑った。
「初めての経験ばっかりで、少し気恥ずかったりもしたけど、嬉しい事がたくさんで。
 僕、黒狼隊に入れて……ううん、皆の仲間になれて良かったです」

 これからもよろしくね。
 なんていいながら、彼らは夜のプールで乾杯した。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 おかえりなさい

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