シナリオ詳細
<フィンブルの春>偽の名誉を求め
オープニング
●<フィンブルの春>
ローレット本拠地が立する幻想王国。
中心部の王都メフ・メフィート郊外に広がるは、ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)の領地。
その一角には、様々な鉱物が採掘出来る『狐鉱山』が存在しており、彼女が保護した、働き先の見つからない貧しい人々が採掘業務に精を出していた。
採掘業務は力仕事で、簡単に稼げるような物では無い。
更にただ掘っただけでは価値がつくものは一握り……例えば宝飾品に加工したりする事で、少しでも良い条件で売れるようにしてみたり。
そんな様々な工夫をする事により、狐鉱山で産出される鉱物の名は少しずつではあるが、広まりつつある。
……だが、名が知れればこそ、それを悪用しようとする悪者もいる訳で。
『おうおう、ここがかの『狐鉱山』かぁ!』
『みたいだなぁ! ここの鉱物、意外に出来がいいみたいなんだぜ?』
『そうか、ならここの鉱物を大量に差し押さえて、それで偽造メダリオンを大量に作れば、俺達の勇者は安泰だな! ははは!』
『そういう訳さ! ま、下手に誰かに作らせると色々と面倒だし、ここだと加工もしてるようだから、強引にでも作らせればいいだろ。ま、ここに居るのは貧しい奴らばっかりみたいだしな、金積めば何でもしてくれるだろうしな!』
『そうだな! 金を掴ませとけばいい! ま、もしバレたら勝手にこいつらが作ったとか言わせればいいしな! がははは!!』
……そんな悪巧みを企むのは……ならず物上がりの勇者候補生……いや、偽勇者一行。
彼らは権力を求める悪徳貴族に金で雇われ、ブレイブメダリオンを偽造することで勇者になろうとしているのであった。
●偽の名誉を求め
「イレギュラーズの皆さん。あの、ちょっと話、聞いて貰っていいです?」
と『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は、ギルド・ローレットに来た君達をカウンター越しにぴょこんと顔を出して、誘う。
その誘いに乗った君達を連れてきた所には、ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)の姿。
「皆さんもブレイブ・メダリオン・ランキング、通称『勇者総選挙』に東奔西走していると思うのですが……幻想国内でも、にわかに勇者ブームが巻き起こっているのです!」
「勇者ブームに乗っかっているのは、イレギュラーズの皆さんの他にも勇者に憧れた人、勇者を志す人、自分が勇者と疑わない人……と色々いるのです。本当はローレットだけで行われる筈だったのですが……王フォルデルマンは乱立する状況に喜んでて、更に有力な貴族の擁立した勇者候補生達にもメダリオン・ランキングへの参入を認めるお触れを出してしまったのです!」
「このお触れの結果、皆さんとは違う勇者候補生達が事件を解決し、報酬としてメダルを受け取りランキング上位へと食い込もうとしているのですが……これとはまた違った方法でランキング上位に上り詰めようとしている、悪事を企てている勇者もまた居る様なのです」
「今回集まって貰ったのは、そんな悪事を企てている、通称『偽勇者』達が、ルルリアさんの領地で取れる鉱物を利用し、偽のブレイブメダリオンを作らせて、チートでトップに立とうとしているという様なのです!」
と、そこまでユリーカが言うと、ルルリアが代わり。
「そうなのです! 私の領地の『狐鉱山』では、色んな鉱物が出るのですが、その中にゴールド、ミスリルも含まれているのです。それを使って、加工技術を利用して、ルルの領民さんに、偽の『ブレイブメダリオン』を作らせているのです!」
「領民さん達に金を握らせ、一度作ったからには共犯だからな、と脅している様で……作るのもやめられず、この偽勇者達に泣く泣く従っているという状況なのです。領民さん達を人質に取られてて、ルル一人じゃ対処が難しくいのです……だから、力を貸してほしいのです!」
とルルリアがぺこり、と頭を下げると、ユリーカも。
「偽のブレイブメダリオンを利用するなんて、許せないのです! イレギュラーズの皆さん、どうかよろしくお願いします、なのですよ!」
と、力強く拳を振り上げるのであった。
- <フィンブルの春>偽の名誉を求め完了
- GM名緋月燕
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年04月26日 22時30分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●偽物達の挽歌
ローレットが本拠地を構える国、幻想王国。
その中心部である王都メフ・メフィートの郊外には、『光の槍』ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)の管理する『ルルフェルルーク領』が広がっている。
……だが、そんな領地に忍び寄る、悪意の手。
「全く……今回の偽勇者は心底まで腐っている様ニャね……」
と『放浪の騎士』ニャンジェリカ・ステュアート(p3p006044)が瞑目し溜息を吐くと、ルルリアがこくり、と頷き。
「そうなのです……ルルの領民さん達は、貧しく辛い思いをしていた人たちが多いのです……」
悲しげに俯くルルリア……彼女が大切にしている領民達を利用された事に対する悔しさをにじませる。
彼女が貧しい人の為に作った狐鉱山……そこで産出される鉱石を利用し、今世間で騒がれている『勇者総選挙』の武勲の証明であるブレイブメダリオンを偽装するという不正な手段でトップに立とうとしているのが、今回の敵。
「本当に、メダリオンのために無理やり働かせるだなんて許せません……」
静かに、ぐっと拳を握りしめるルルリア。
それに『春告げの』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)と『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)、『黒花の希望』天之空・ミーナ(p3p005003)が。
「メダリオンの偽造とは……後先考え無い愚かさには溜息が出ますね」
「ええ……しょうもない事を考える輩も居る物ですね。その行為をする事こそが小物だと証明していると言うのに……何故気付かないのでしょう?」
「全くだ。バッカだねぇ……いくら偽りのハリボテで着飾った所で、実力が無ければすぐにボロが出るって言うのに」
「そうですね……頭が悪いのかもしれませんね。可哀想に……」
吐き捨てるリースリットに肩をすくめるミーナ、そして冷たくいい放つリュティス。
確かに今回の偽勇者達の作戦……深く考えられている様には思えない。
とは言え彼らだけで考えたとも思えない……この幻想王国には多くの領地がある。
更には。
「何? 確かブレイブメダリオン・イミテーションって、生産工場を壊されたんじゃなかった?」
と『オトモダチ』シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)が言う通り、同様の事件が起きては潰されていたりしているのだ。
「……まぁ、本物が一個あったら複製は出来るか……」
「ええ。この偽勇者事件、まさか彼らだけの考えではないでしょうから、間違いなく背後が居るでしょう……さて、何処の貴族の命令やら……その辺りをしっかりと調べ上げて、叩き潰さねばなりませんね」
シャルロットにリースリットが頷き、そして『激情のエラー』ボディ・ダクレ(p3p008384)も。
「そうですね。出し抜く為に違反行為を行うのは感心しません。それにこうした不正が続けば、選挙が滞る事は容易です。それだけは回避しなくてはなりません」
不正選挙となれば、いわれ無き不正も炙り出されてしまうかもしれない……そうなれば、勇者の選出も間違いなく遅れる事であろう。
それに『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)が。
「まぁ偽勇者とやらが随分と面白そうな事をしているようだ。俺は別に勇者とか特段興味はねぇが……」
含み笑いを浮かべるエイヴァン、それにミーナが。
「彼らが本当に強いのならば、このような不正を行わなくてもなれる筈。という訳で少なくとも私に勝てなきゃ勇者になれないって、教えてやらないとな」
聖剣を掲げる彼女に、ルルリアが。
「そうなのです。領民さんに手を出したらどうなるか、思い知らせてあげます! 皆さんも、力を貸してください、なのです!」
仲間達にぺこりと頭を下げ、シャルロットとボディが。
「勿論。従わせる領民も可哀想だし、解放しないとね?」
「ええ。では行きましょう。偽勇者退治、全霊で遂行します」
強い決意と共に、イレギュラーズは『狐鉱山』の『特産施設』へと向かうのであった。
●偽りの形
「皆さん……ここです」
そしてルルリアの案内で、狐鉱山の特産施設へとやってきたイレギュラーズ。
端から見る限り、特に何の変哲も無い状態……ただ加工する為に、金槌のカンカンという音と、何かを削る音だけが、延々と響き渡っている。
「さて、と……んじゃ、作戦を確認しよう。数人で特産工場の中へと潜入し、偽造させている偽勇者達を出来る限り外へと誘い出す……でいいか?」
「ええ。ただ気を付けなければならないのは、誘い出したとしても全ての偽勇者達が出てくるとは限らない事ですね……」
「そうニャね。もし出てこなかった場合は……施設内に強行突入が必要ニャ。その場合はニャンジェリカが突撃するニャ」
「分かりました。逆に敵が全員誘い出されたら、彼らが領民達を人質に取らない様に退路を塞ぐ必要もあるでしょう……偽勇者は12人居るとの事ですから、出てきた人数をカウントして、その退路を塞ぐように動く事としましょう」
エイヴァン、リュティス、ニャンジェリカの三人が細かく作戦を詰め、全員と共有。
そして。
「後は突入するメンバーだが……ミーナとダクレ以外に居るか? 居なければ俺が行くが」
とエイヴァンが訪ねると、ルルリアは。
「ルル、行きたいのです。領民さんを苦しめている偽勇者達は、絶対に許せないのです……! 特産施設の内部構造も一番知り尽くしているのです!」
「まぁ……それに異論はありませんが、大丈夫ですか……?」
ダクレの言葉に、ミーナが。
「……ま、大丈夫でしょ。私が領主の護衛をしてあげるわ」
と軽く微笑むと共に、その肩を叩く。
「ありがとうございます、なのです! 一応顔バレしない様に、これを持ってきたのです!」
と顔を隠す為の外套をぱぱっ、と被るルルリア。
特徴的な金髪と狐耳を覆い隠し、尻尾も服の中に押し込んで……普通の人の様に振る舞うよう細工。
「これで、良しっと……それじゃ、行くのです、こちらなのです」
とルルリア、ミーナ、ボディの三人が、特産施設へと潜入。
カンカンと音が鳴り響く鍛冶場へ、息を潜めて近づいていくと。
『オラ、もっと早く、もっとたくさん作りやがれ!』
『そうだ、もう時間もあんまりねえんだ! てめえらの生産が遅い結果トップに立てなかったら……分かってんだろうなぁ!?』
と……少し苛立ち気味に領民達に無理を強いる。
勿論領民達は必死に作っているのだが……寝食を制限された状態では、ペースが上がるわけも無い。
そんな鍛冶場に頃合いを見計らい……バタン、と扉を蹴破るルルリア、ミーナ。
『な、何だ!?』
慌てて振り返る偽勇者達に、ふふん、と自信満々の笑みを浮かべてミーナが」
「さぁ、ここの責任者、監督役は誰? ちーっとばっか話があるのよ」
「貴方達! 偽メダリオンを作って点数を稼ごうとしていると、風の噂で聞きましたよ……! 貴方達の上に居る悪徳貴族には恨みがあるから、妨害させて貰うわ!」
と二人の宣言と共に、ボディがその場に保護結界を張る事で、施設への不可抗力な破壊を回避する様に工夫。
更には偽勇者達へ威嚇するよう、天井に向けてライフルを2、3発発砲し、更なる注意を引き付け、そしてミーナが。
「ま、そういう事だ。文句があるならかかってきな。実力を見せれば、堂々と勇者を名乗れるぜ!」
最後のミーナの言葉には、名乗り口上も組み合わせる事で怒り効果をまとめて付与する。
……そして、最後のトドメとばかりにルルリアは。
「貴方達が支援している勇者のメダリオンは偽物だ、と王に伝えたら、はたしてどうなるでしょうね……? ほら、これですよ、これ」
その手には、偽造されたブレイブメダリオン。
『っ、ま、待てっ!』
「待ちません! 嫌なら力尽くで奪ってみなさい!」
さっさと、鍛冶場を後にする三人……それを当然追いかけていく偽勇者達。
特産施設を左へ、右へと駆け回り、敵を撒かないように、でも攻撃も受けないような絶妙な距離を取って、特産施設の外の広場へ。
『待て、待ちやがれっ!!』
と、追いかけてきた彼らを広場で踵を返し。
「それじゃ、待ってやろうかな?」
と立ち止まる。
『はぁ、はぁ……てめぇら、俺達の事を告白なんてしたら、どうなるか分かってんだろうなぁ!』
『そうだ! この場で力尽くでぶっ殺してやる……覚悟しろ!』
苛立つと共に武器を構える敵陣……だが、その瞬間。
「では……始めましょう」
小さくリュティスが呟き、最後尾に居た偽勇者の白魔法使いへと黒死蝶を飛ばす。
『……!?』
突然の不意打ちに、バタン、と倒れる白魔法使い。その隣の仲間が。
『お、おい、どうした!?』
と驚いているが、その間に更に。
「御用改めである!!」
「人々を守るのは騎士の務め、悪党は騎士ニャンジェリカが成敗ニャ!」
突如として背後へと立ち塞がるのはシャルロットとニャンジェリカ。
勿論二人だけで無い……前後左右、全ての包囲を隠れていたイレギュラーズ達が一斉に包囲する。
『何だと!?』
驚き、更に騒いでいる偽勇者達……その数を改めてカウントするリュティス。
「……12人居ますね。どうやら頭が悪いというのは本当のようですね……」
と辛辣な事を言い放ちつつ、一歩後方へと下がる。
そんなイレギュラーズの動きに対し、偽勇者共はまだざわつき、少し混乱している様な状態。
そこに追い打ちとばかりにシャルロット、ニャンジェリカの追加口撃。
「当施設にはブレイブメダリオンの粗悪品の疑いが掛かっている。お前達がその主犯だな? 神妙にお縄につけ!」
「そうにゃ! ブレイブメダリオンを持つ者は、相応の活躍をしているニャ。つまり、お前達がメダリオンをたくさん持ったところで、名声の足りない偽勇者だって事、一発でバレて終わりニャ。メダリオンだけでは真の勇者にはなれない。そんな簡単な事も分からないのかニャ?」
痛いところを指摘し、更に名乗り口上の効果を載せて挑発していくスタイル。
元々そんなに頭が良く無い彼らは、イレギュラーズ達の挑発にすっかりと載せられてしまい。
『ふざけたことぬかしてんじゃねー! どんな手段使ったってメダリオンが一番多けりゃ勇者なんだ! そうなりゃお前達に指図される筋合いもねーんだよ!』
『そうだそうだ! 邪魔する奴等はぶっ潰してやる!!』
怒りへ従うままに、バスターソードや長剣を前衛陣が振り、後方の魔法使い達が攻撃魔法を繰り出していく。
ただランキングに不正な手段を使ってトップに立とうとしている彼らに対し、イレギュラーズは正当なる手段で実績を積み重ねている訳で……熟練度は天と地程の差がある。
「何人かが残ってたら、それはそれで厄介だったかもしれませんが……のこのこと出てくるようならば、手加減する必要はありませんね」
「ええ……まずは数をさっさと減らしていくとしましょう」
とリースリットの言葉に頷き、ボディが早速ブルーコメット・TSを一番厄介そうな白魔法使いに放ち、恍惚効果を付与。
続くリースリットが雷光の剣を狙い済ました形で放ち、恍惚効果もあり、その一撃で気絶させる。
『何、だとっ!?』
流石に二撃で倒されると思っていなかった、隣の黒魔法使いが驚愕の表情。
でも、イレギュラーズ達の勢いは決して止まらず、エイヴァンがヴィエルナシチ・ザミルザーニイで更なる怒りを付与して敵を逃さない。
そして前方に発つミーナとルルリアは。
「んじゃ、ちょっとばかし本気出すぜ。悪いが、死んでくれるなよ!」
「……ルルの領民を虐げる輩は、誰であっても許す事は出来ません。倒したい所ですけど……貴方達の背後のをしっかりと吐いて貰う為にも、ギリギリで止めるのです」
並々ならぬ気合いと共に、エイミーナが呪刻奪命剣、ルルリアはディアノイマンで塩山力を高めた上で、暴風で敵に纏めて恍惚効果を付与。
恍惚が付いた後衛へ、ニャンジェリカのリーガルブレイドの一閃と、リュティスの黒死蝶がはためく事で、黒魔法使いを一人、二人と倒して行く。
そして、一番最後にシャルロットが。
「貴方達が戦うつもりなら、こちらも容赦はしないわよ? 無抵抗でいたいのなら身を低くして隅で固まってなさい!」
投降を呼びかけつつも、黒顎魔王の高攻撃力の一撃を放つ。
そうしたイレギュラーズ達の攻撃が三巡した頃には、元々体力が少ないのもあるが……6人の魔法使い達は地面に臥していく。
残るは前衛の偽勇者の戦士六人達。
『くそったれが! こんな事ならあいつの話、聞かなきゃ良かったぜ!』
『てめぇが最初に言い出したんだろうが! 責任取るならお前が取れや!』
醜く、仲間同士で言い争い。
どうやら偽勇者達の性根も、完全に腐りきっていた様で……。
「本当、醜い人達ですね。仮にも勇者と名乗るのなら、もう少し勇敢な心を持っていてほしかった物です」
「ええ。もはやそこら辺にたむろっているごろつきと変わりません」
放たれる冷徹なボディとリュティスの言葉。
でも、もう偽勇者達は、そんなイレギュラーズの言葉に耳を貸すことも無い……いや、貸せるような状況ではない。
「内乱はどうぞ勝手にやってください。ただ、こちらとしては貴方達を倒す事が目的ですから……容赦しませんよ」
とボディがスーパーノヴァの一撃を相手の腹に打ち付けて、昏倒させると、別の敵にはリースリットが神鳴る縛鎖で感電させ、行動阻害。
抵抗力を大幅に失った彼らを一人一人、ターゲットを集中。
それに偽勇者達はたいした抵抗も出来ず……次々と倒れていくのであった。
●救いの手を取り
「……終わった様ニャね」
静かに、深く息を吐くニャンジェリカ。
打ち倒した12人の偽勇者達は最早意識無く、完全に伸びている……恐らく、しばらくの間意識を取り戻すことは無いだろう。
「まったく……恨みとかはねーんだけどよ。真面目に頑張っている奴を食い物にするような真似は許せねぇんだよ、私はな」
「そうですね……取りあえず偽勇者達の背後に何が居るかはまだ分からないし、その辺り尋問して背後関係を吐かせる必要がありますね。愚かな企てをした貴族の急所を掴めば、後々に繋がっていくでしょうから」
「ああ、そうだな。その辺りは私達が対処するとしよう。ルルリアは……ほら、領主としての仕事が残っているだろう? こちらは私達に任せてください」
そうミーナとリースリットは頷き合い、ニャンジェリカと共に転がっている偽勇者達を転がし、領地の人が居ない所へと連行していく。
その一方で、ルルリア、エイヴァン、シャルロットらは再度特産施設の中へと戻る。
「大丈夫です? みんな、もう終わったから、安心してくださいなのです!」
疲弊仕切っている領民達へ、元気一杯に声を掛けるルルリア。
そんな彼女の言葉に、今迄偽勇者達に監視され、寝食も満足に与えられずに働きづめだった領民達は……領主に怒られると考えてしまったのだろう。
『……ほ、ほんとう……に、ごめん……な、さい……』
堰を切ったように涙が零れ……謝罪の言葉を紡ぐ。
そんな領民達の一人一人をぎゅっと抱きしめ、頭を撫でるルルリア。
「大丈夫なのです、気にしないでなのです……皆さんが気に病む必要は、全く無いのです」
そして、落ち着いた領民達の怪我を治療し、お腹いっぱいになる位の食べ物を用意するエイヴァン。
「ほら、取りあえずたくさん食いな! 腹が減ったら、気持ちも沈むばっかりだしな!」
とエイヴァンはご飯で領民達を励ます。
……そう二人が励ましてくれた横で、領民達が量産していた偽造ブレイブメダリオンを手にするシャルロット。
正真正銘のブレイブメダリオンと比較し、ぱっと見た限りは瓜二つだが……手に取り撫でてみると、ざらざらとしている部分が多い。
「……凄いわね」
と、他意無く言葉を零すシャルロット。
『あ、あの……何か……ありましたか?』
少し怯えた感じで問いかけてくる領民に、シャルロットは優しく微笑み。
「素材の割合が雑。光沢やデザインは見事だけれど、複製だってわかる処理がされていたわ。善意の抵抗、見事ね?」
『善意……いや、それは……』
「それが例え不可抗力だったとしても、そういう事を偽勇者達に分からないように紛れ込ませるのは素晴らしいわ……ルルリアには聞いてなかったんだけど、ここは元々何を作ってたの? 幻想各領地の特産品にはかなり興味があるのよね」
『え? ……ええっと……装飾品とかです……余り豪華な物はありませんが』
「そう。一つ二つ、買わせて貰おうかしら。いいわよね、ルルリア?」
「ええ、勿論なのです! 狐鉱山自慢の特産品、是非とも買っていってください、なのです!」
その尻尾を嬉しそうに振るわせるルルリア……勿論領民達の表情も、ぱぁっと明るくなる。
「あ、でもちゃんと寝るのです。万全の体制で、心を込めて作れば、もっともっと喜んでくれるのです!」
とルルリアの言葉にはぁい、と笑う領民達。
そして働きづめにさせられていた領民達を休ませつつ……一方で目を覚ました偽勇者達には、詰問が行われるのであった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
偽造メダリオン工場撃破依頼、参加頂きありがとうございました。
領主さんの、領民さん達を護りたい心、凄く強く感じさせて頂きました。
領主の皆様の、領地に掛ける思い、これからも大事にして頂ければと思います……!
GMコメント
皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)です。
今回は領地シナリオですが……ちょっと傾向が違い、『偽勇者』を成敗するというシナリオとなっています。
●成功条件
偽ブレイブメダリオンを作らされている領民さん達の保護、そして偽勇者達を退治する事です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●ブレイブメダリオン
このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
このメダルはPC間で譲渡可能です。
●周りの状況
今回はルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)さんの領地『ルルフェルルーク領』の『狐鉱山』が舞台となります。
鉱山から産出された鉱物を加工する『特産施設』の中で働く10人位の領民さんが、『偽勇者』12人組に脅されて、偽の『ブレイブメダリオン』を加工している所です。
領民さん達は、偽勇者に欺されて加工を始めてしまい、今は連帯責任と言って偽ブレイブメダリオンの加工から抜け出せないように仕向けています。
最初の幾つかは精巧に作られていますが、領民さん達のささやかな抵抗で今は見る人が見ればバレる位の出来に落とされています。
ただ偽勇者達は、その事に気付いていませんし、最初の物はもう提出済みで現存しません。
偽勇者達は領民達の侵食を侵し、昼夜問わずに作らせているので、出来る限り早く領民の保護が必要です。
●討伐目標
偽勇者12人ですが、彼らは悪徳貴族に雇われ、ブレイブメダリオンランキングに参加為ている様です。
偽ブレイブメダリオンを治めればトップは安泰だ、と言う具合で慢心気味の様です。
とは言え皆さんが表立って突入してきては、邪魔はさせんと対抗してくるのは間違いありません。
戦場も『特産施設』の中になってしまうので、そのまま戦えば領民達に被害が及ぶことも十分に考えられますので、どうすればいいかは考えて見て下さい。
なお、偽勇者達の構成ですが、長剣やバスターソードを武器とする戦士タイプが6人。
攻撃魔法を使う魔法使いタイプが4人、回復・エンチャントを使う白魔法使いタイプが2人という構成になります。
それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。
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