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シナリオ詳細

チョコで繁盛 賊が参上

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●盗賊達の企み
「お頭、面白い話を聞きやした」
「おう、どうしたい?」
「水都(みなと)は朝豊(あざぶ)の、外村 伝衛門(とむら でんえもん)てえ商人が、『ちょこれいと』なるもので一山当てたそうで……」
「ほう……じゃあ、次はそいつにするか。水都はちぃと遠いが、一山当てたってんならがっぽり貯め込んでやがるだろ」
 豊穣のとある長屋で、二人の男が周囲を憚ることもなく会話を交わしている。お頭、と呼ばれた男の方が、ギラリ、と鋭く目を光らせた。
 二人は――いや、この長屋にいる者全てが、盗賊だった。武士崩れの頭領に率いられたこの盗賊達は、前の住民を皆殺しにしてこの長屋に居着き、普段はただの庶民を装って暮らしているのだ。
「よし、皆に伝えろ。次の獲物は水都にあり、だ。長旅になるからな、準備はしっかり整えさせろよ」
「わかりやした、伝えてきます」
 頭領がそう告げると、もう一人の男は足早にその場を去った。そして、長屋中に頭領の命令を伝えていく。
「次の住処はそいつの店にするのも、悪くはねえな」
 襲撃を成功させた後を想像しつつ、頭領は唇の端を吊り上げて笑った。

●狙われた伝衛門
 水都領は朝豊の商人外村 伝衛門は、グラオ・クローネの風習を大陸から豊穣に持ち込んだ一人だ。そして、先のグラオ・クローネでは入念な準備を経てチョコレートを多数用意し、イレギュラーズの協力も得てその全てを売りさばくことに成功している。
 その時に協力したヒィロ=エヒト(p3p002503)は、しばらくぶりに伝衛門の元を訪れた。
「こんにちは、伝衛門さん」
「おや、これはヒィロはん。どないしました?」
 恩人の一人とも言えるヒィロの来訪に、伝衛門は人の良い笑顔を浮かべて迎えつつ、用件を尋ねた。
「伝衛門さん、この前のグラオ・クローネで大儲けしたよね?
 もしかしてその話を聞いた盗賊が伝衛門さんを狙うんじゃないかと思って、情報屋さんに調べてもらってたんだけど、そしたらビンゴだったんだよ」
「はあ、なるほど。それででっか……」
 ヒィロの言葉に、伝衛門は真剣な表情になって深く考え込んだ。伝衛門が言うには、このところ店の周囲で不自然な人の往来があると言う。
「きっと、押し入る際の下見でっしゃろなぁ……今回も、頼らせてもろてよろしいでっか?」
「もちろんだよ! 任せておいて!」
 縋るような伝衛門の問いに、ヒィロはいつもどおりの快活な笑顔を向けて答えるのであった。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。今回はヒィロさんのアフターアクションからシナリオを用意しました。伝衛門の店で強盗を働かんとする盗賊団の討伐をお願いします。

●成功条件
 盗賊団の討伐(生死不問)

●失敗条件
 以下の何れかの事態が発生する
・伝衛門が死亡する
・千両箱を1つでも奪われる

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 伝衛門の店です。1階が店舗、2階が住居となっています。時間は深夜、天候は曇りです。
 盗賊達を店の中で迎え撃つか外で迎え撃つかはイレギュラーズ達の判断に任されますが、中で迎え撃つ場合は保護結界を用意した方がいいでしょう。
 入口は店の入口と勝手口があり、木の扉で閉ざされていますが、それを押し破られたり、あるいはそれ以外の場所から店の中に進入される可能性はないとは言い切れません。
 店の資金が入っている千両箱数個は普段は2階の部屋の一つにまとめて置かれていますが、イレギュラーズの指示で別の場所に動かすことは可能です。
 また、伝衛門はイレギュラーズの指示どおりに行動します。

●盗賊団頭領 ✕1
 伝衛門の話を聞いて、襲撃を企んだ盗賊団の頭領です。その気性は獰猛にして凶悪。
 元が武士崩れのためか盗賊にしては戦闘力が高く、他国なら騎士団の団長、とまでは行きませんが隊長くらいは務めていてもおかしくはない腕前です。
 攻撃力と反応が特に高く、その他の能力も全体的にバランス良く高くなっています。
 また、殺魔示厳流(さつまじげんりゅう)と言う一撃必殺が特徴の剣術を囓っており、その初太刀は危険です。

・攻撃手段など
 壱の太刀 物至単 【必殺】【弱点】【致命】【出血】【流血】
  殺魔示厳流の特徴と言える必殺の初太刀です。圧倒的な速度で、全力で太刀を打ち込みます。APの大部分を消費します。
  さすがに最初の一撃でしか使えないと言うことはなく、必要APが貯まり次第再使用が可能となります。
 太刀 物至単 【邪道】【出血】
 鎌鼬 物遠単 【出血】
 猿叫 神至域 【識別】【変幻】【攻勢BS回復】
 覇道の精神
 充填

●盗賊 ✕約30
 頭領の部下の盗賊達です。頭領に普段から扱かれているため盗賊にしては戦闘力が高く、他国の一人前の騎士と同等の実力を持ちます。
 基本的に能力はバランス型で、その中でも攻撃力が高くなっています。

・攻撃手段など
 壱の太刀(偽) 物至単 【必殺】【邪道】【出血】
  流派を囓った程度の頭領に仕込まれて覚えたものであるため、頭領とは違って一度しか使えず、使った後には大きな隙が出来ます。そのため、初太刀ではなくここぞと言う時を選んで使ってくる事があります。
 太刀 物至単 【出血】
 暗器 物遠単 【変幻】

それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • チョコで繁盛 賊が参上完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月21日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
箕島 つつじ(p3p008266)
砂原で咲う花
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
司馬・再遊戯(p3p009263)
母性 #とは

リプレイ

●迎撃準備
 豊穣は水都領朝豊――グラオ・クローネの風習を豊穣に持ち込みチョコレートで儲けた商人外村 伝衛門を狙って、盗賊団が動き出していた。それを『特級回避盾』ヒィロ=エヒト(p3p002503)から知らされた伝衛門は、ヒィロに盗賊退治を依頼。ヒィロは依頼を受けて仲間を集め、伝衛門の店を訪れた……のだが。
「伝衛門さん、仲間の皆を連れてきたよ! 盗賊退治、ボク達に任せておいてよ!」
「これはヒィロはん、こないだに続いて今回もおおきに……ところで、その方もお仲間でっか?」
 ヒィロが仲間達と共に声をかけると、伝衛門はペコリと深く頭を下げて礼を述べる。そして頼れそうだと思いながらイレギュラーズ達に視線を移していたが、ある一点で伝衛門の視線が止まった。
 伝衛門の視線の先には、裸エプロンにしか見えない――一応、下着は着けている――豊満な肢体の女性がいた。『更なる縛りプレイを求めて』司馬・再遊戯(p3p009263)だ。再遊戯以外のイレギュラーズ達は、(まぁ、そういう反応をされるだろうな)と苦笑いするしかなかった。
 なお、再遊戯が他のイレギュラーズに語ったところによると「これは……性能! 性能で選んだんですってば!」とのことであり、実際着けているとダメージを受ける代わりに、気力を大きく回復するこの裸エプロンにしか見えない防具『肌色エプロン』は、戦闘中に気力を大きく回復させるという点では確かに優秀な性能であるため、他のイレギュラーズ達も着るなとは言えなかった。
 再遊戯もイレギュラーズの一人だと伝衛門に納得させたところで、盗賊退治の打ち合わせが始まる。盗賊達の侵入経路を限定すべく、勝手口は厳重に封鎖され、窓もわずかに銃眼の隙間だけ空けて塞がれ、二階へと通じる階段の前にもバリケードが置かれた。店や商品を除けば伝衛門の全財産とも言える数個の千両箱は二階の一室にまとめて置かれ、伝衛門自身はその部屋の押し入れに隠れることになった。
「少々、家屋で暴れますが、被害は出ないように取り計らいますので、ご心配なく。物音がしても、決して覗かず、物音を立てぬように」
「へ、へぇ」
 『玲瓏の壁』鬼桜 雪之丞(p3p002312)の指示に、伝衛門はこくこくと深く頷きながら、押し入れへと身を隠す。
「不安であれば、手ぬぐいを噛んでおくと良いでしょう。噛み締めても、歯を痛めませんから」
 さらに雪之丞にそう言われれば、伝衛門は素直に手ぬぐいを取り出して噛み、息を殺して盗賊退治が完了するのを待った。

(……全く。他人の成功を横から奪おうだなんて、性根がよろしくないようだな)
 店の正面のみを残して、他の場所は盗賊達が入って来れないように厳重に封鎖し終えた『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)は、一仕事終わったとばかりに額の汗を拭った。今回、封鎖にあたっては職人としての魂を発揮しただけに、これだけで一仕事終えたような気分にもなる。
 だが、仕事としてはこれからが本番だ。
「――豊穣に蔓延る賊は、放っておけない」
 故に、全力で対処する。その意も固く、錬は盗賊団の来襲を待った。
(せっかく素敵な文化を広げる手伝いをしたのに、それを盗賊に無下にされたらあかんよな。伝衛門も店の財産も、しっかり守っていかんとな!)
 商売目的とは言え、伝衛門がグラオ・クローネの風習を豊穣に伝えたことを、『砂原で咲う花』箕島 つつじ(p3p008266)は評価している。それだけに、それが原因で築いた財産や命を奪われるなどと言うことを、つつじは許してはおけない。パァン、と両の手で頬を張り、迫る戦闘に向けてつつじは気合いを入れた。
(人生、成功して有名になるのも大変だねー。掴み取った栄光と同じくらい悪意に晒されちゃうんだもん)
 店内の物陰に身を隠したヒィロは、はぁ、と溜息をついた。グラオ・クローネで商売に成功したことが、まさか盗賊団に襲われる呼び水になるとは。伝衛門が人を信じられなくなるのではないかと、ヒィロは案じる。
(ボク達がしっかり守ってあげられれば、信頼の絆築けるかなぁ? ちょうど、その礎にできそうなのが来てくれるし……。
 賊の命で伝衛門さんの真っ当な人生が購えるなら、安いもんだよね? あはっ)
 真っ当に生きる人の人生のためなら、賊の命は対価としては安いもの。無邪気であり、一方で酷薄でもある笑みを浮かべると、ヒィロはスゥ、と気配を断った。
(ヒィロの予測が的確だったのは良いことだけど、強盗が茶飯事じゃ商売も大変よね……)
 使い魔である梟に空を飛ばせ、空から店の周囲の監視を行っている『あの虹を見よ』美咲・マクスウェル(p3p005192)は、そう内心で独り言ちる。この世界において強盗は決して珍しいものではなく、商人や貴族が襲われるという事例は少なからず美咲も耳にしていた。
(……私たちが依頼を請けて抑止力になれば、少しはマシになるのかな?)
 その疑問の答えは、誰にもわからない。が、少なくともこの依頼を成功させれば、盗賊団が一つ消えるのは確かだった。
 店に保護結界を展開し終えた『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)は、二階に上ると、伝衛門が押し入れに潜み、千両箱がある部屋に陣取った。
(――今回は、実に分かりやすい。要するに、防衛戦だ。千両箱と主人の命を守りつつ、盗賊を撃退する。そう、ただそれだけさ)
 様々な依頼を受けてきたジェイクにとって、今回の依頼はシンプルなものだ。そんな依頼は、得意中の得意でもある。
(盗賊なら、殺しちまっても問題ないだろ)
 遠慮は不要、ならば思い切りいかせてもらう、と闘志を漲らせつつ、ジェイクは銃眼を覗き込んだ。

●襲撃開始
「……来たわ。表と裏、二手に分かれたわね」
 夜空を舞う梟の視界を通じて、美咲が盗賊団の襲来を察知する。半数は店の入口側に陣取り、半数は店の裏側、勝手口の方へと回る。
(……ここで、勝手口の封鎖を破ろうとするかどうかッスね)
 ゴクリと唾を飲み込み、緊張した面持ちで、『琥珀の約束』鹿ノ子(p3p007279)が耳を澄ませた。賊が勝手口から侵入しようとするなら、そちらへの対処も必要になる。だが。
「何だこれは! こんなものは無かったはずだぞ! ええい、お頭と合流だ!」
 下見の時にはなかった、錬による厳重な封鎖に、勝手口側に回った盗賊達はこれを破って侵入するのは困難と判断。入口側に陣取った半数との合流を試みる。
「勝手口は諦めたみたいッス! 入口側に合流して、まとめて来るみたいッスよ!」
 油断こそ出来ないが、盗賊が侵入してくる経路は一つに絞れた。警戒は続けつつも、イレギュラーズ達は入口の側に意識を向けた。

 盗賊達は店内に押し入るべく、入口を覆う木の扉を叩き壊しにかかる。だが、店の外で群れている盗賊達は、ジェイクからすればいい的でしかなかった。
「さあて、お楽しみはこれからだ」
「うぎゃあっ!?」
 銃眼から盗賊達を見据えて、大型拳銃『狼牙』で狙い撃つ。魔弾は盗賊の一人の頭に直撃し、短い断末魔の叫びをあげさせると同時にその命を奪った。
「何だ、今のは!? 何処から撃ってきた!?」
「落ち着け! あそこだ! これ以上撃たれたくなければ、とっとと戸を破り、中に押し入れ!」
 突然撃たれて死んだ仲間に、盗賊達は驚愕し、混乱する。だが、頭領はジェイクが狙撃してきた部屋を特定すると、盗賊達を落ち着かせて店に突入するよう指示を出した。飛び道具はあるにはあるが、銃眼の奥から狙撃されるのでは分が悪すぎたのだ。
 だが、盗賊達は扉を破る際に、多少の時を費やさざるを得なかった。その間は、ジェイクにとってボーナスタイムと言える。降り注ぐ鋼の雨に、盗賊達は幾人もバタバタと倒されていった。

 少なからぬ犠牲を出しながらも、盗賊達は扉を叩き壊して店内に押し入った。だが、盗賊達は中を物色するよりも先に、イレギュラーズ達の熾烈な迎撃に曝されることとなった。
「こっから先は、進ませへんで!」
「……う、ぐっ!?」
 まず、先頭を切って侵入してきた盗賊に、つつじが仕掛けた。圧倒的な速度で距離を詰め、手にしている風鷹剣『刹那』で袈裟に斬る。エンジンがかかって調子が出てきたかのように、つつじは次の斬撃を繰り出した。袈裟に斬られた傷を、逆袈裟に斬り上げられ、先頭の盗賊はふらりと意識を喪って倒れた。
「いくッスよ! 月の型『狂禍酔月』!」
「ぐああああっ」
 鹿ノ子が、『黒蝶』を手にしながらつつじに続く。倒れた盗賊の真後ろにいた盗賊に、高速の連続攻撃で斬りかかる。ズバッ、ズバッと、幾つもの斬撃が盗賊を斬り刻んでいく。到底耐えられるはずもなく、また一人盗賊は自らの血の海に沈んだ。
「賊がよくもまあ、これだけの数集まったものだ。だが、ここから先は通行止めだ。ひやかしの客未満は、詰め所まで御引取願おうか」
「熱ぃ、熱ぃよおっ!」
 錬の式符が、炎の大砲を象る。大砲から放たれた炎を纏う砲弾は、未だ店外にいる盗賊達の間で、花火の如き色鮮やかな大爆発を起こした。爆発に巻き込まれた盗賊達は、炎の熱に悶え苦しむ。そのうちジェイクの鋼の雨を既に受けていた者は、既に爆発に耐える力が残っておらず、一人、また一人と地に伏していった。
(くそっ……如何してこうなった! 何処にこんな腕利きがいやがった!)
 ここまでで部下の三分の一ほどを倒された盗賊団の頭領は、焦っていた。下見をさせた限りでは、簡単な仕事だったはずだ。襲撃を続けるか、逃亡するか――わずかな逡巡の末、頭領は、前者を選んだ。
「怯むな! やられっぱなしじゃいられねえ! 数ではこちらが上なんだ!」
「頭はそこだね! ボクが相手するよ!」
「なあっ!? 貴様あっ!」
 頭領が指示を出したが、それはイレギュラーズ達に盗賊団の頭領が誰かを教えることにもなった。気配を断ち物陰に隠れていたヒィロが飛び出して、頭領に肉薄すると、その身体に漲る闘気を一気に放ち、頭領と周囲の盗賊達へと叩き付ける。
 完全に不意を衝かれた頭領をはじめヒィロの周囲の盗賊達は、ヒィロの闘気に見事に当てられ、ヒィロへと敵意を向けた。
「いいわよ、ヒィロ。まとめて片付けるわ」
「ひいいいいっ!」
 その瞬間、ヒィロに合わせて美咲が動いた。美咲はヒィロを中心に、邪悪を灼く眩い閃光を放つ。ヒィロに敵意を煽られて隙だらけとなった盗賊達は、閃光を避けることも、身を守ることもままならず、光に包まれた者は頭領を除いて次々と床に崩れ落ちていった。
 ヒィロに敵意を煽られて隙だらけとなった敵に、美咲がその大火力を叩き付けて仕留める、黄金のパターンがここでも決まったのだ。
「うおおおおおっ!」
 美咲の閃光を耐えきった頭領をはじめ、ヒィロに敵意を煽られてかつ美咲の閃光に焼かれなかった盗賊達は、一斉にヒィロに斬りかかった。これまで、襲撃対象を一刀のもとに斬り伏せてきた初太刀が、ヒィロを襲う。だが、ヒィロはしなやかな動きで、そのことごとくをひらりひらりと躱してみせた。
 如何に初撃必殺を特徴とする殺魔示厳流の壱の太刀と言えども、所詮囓った程度の腕前では、回避の技量に極めて長けたヒィロには掠らせることさえも出来ないのだ。
 ヒィロの闘志から逃れた盗賊達数人は、店の奥へと押し入ろうとするが、果たせなかった。
 ぼよん、と盗賊二人の顔を、柔らかな感触が包み込む。その正体は、盗賊達が進むのを身体を張って止めようとした、再遊戯の乳房だった。
「きゃっ! 何するんですか!」
 ギフトによって、『肌色エプロン』の上から薄く光る光のロープに拘束された再遊戯が、防具越しとは言え左右の乳房で盗賊の顔を受け止めてしまったことに恥じらいながら可愛らしい悲鳴をあげる。豊満な肢体に裸エプロンでロープに拘束されていると言う、どう見ても男を誘っているとしか思えない姿の再遊戯だったが、その内面は清楚だった。
 なお、都合よく左右の乳房に盗賊の顔がぶつかるなんて都合のいい(悪い?)ことが起こるものかと思われるかもしれないが、これは盗賊達の襲撃前に思いっきり呷ったエッチな因果を引き寄せるラブポーションのせいである。
「すみません、行きました!」
「大丈夫でございます」
 それでも三人の盗賊が再遊戯の横をすり抜けて奥へと進まんとしたが、雪之丞を突破することは出来なかった。
 雪之丞は、霊気を込めつつ硬質化させた掌で、柏手を打つ。戦闘中にもかかわらず、シャンと鳴る鈴に似た澄んだ音色は、雪之丞の周囲に響き渡った。その音色を耳にした盗賊達は、雪之丞を討たねばならぬ化外の者として認識し、時間を浪費することになった。

●討伐完了、その後
 頭領を除く盗賊達が壊滅するまで、時間はほとんど要しなかった。そうなった理由はいくつか存在するが、根本的にはイレギュラーズと盗賊達との実力差が大きかった。何しろ、今回集まったイレギュラーズの大半は、ローレットの中でも上位の実力の持ち主なのだ。多少腕が立つとは言え、盗賊程度が敵う相手ではなかった。
 もう一つ大きな理由を挙げるとすれば、盗賊達の侵入経路を正面入口のみに限定させたことだろう。これによって、イレギュラーズ達は防衛のための戦力を、一点に集中させることが出来た。一方で盗賊達も戦力を集中させることにはなったが、狭い店内ではその集中は過剰であり、むしろ範囲攻撃の餌食でしかなかった。
 さすがに頭領は手下達よりも多少は粘ったが、すぐに手下達の後を追うことになった。イレギュラーズ八人が相手では、多勢に無勢でしかない。前方に立ちはだかるヒィロと、背後に回り込んだ再遊戯に挟み込まれて進退窮まったところに、つつじの神速の太刀、錬の放った無数の樹の槍、一階に降りてきたジェイクが飛ばした黒き大顎、鹿ノ子の狂気で侵食する連続攻撃、美咲のダークブルーの魔眼を立て続けに叩き込まれ、瞬く間に満身創痍に陥った。
「少しは心得があるようでしたが、本当に、多少でございましたね。その程度の太刀で、拙らの護りを揺らがせることは、難しいです」
 それだけ告げると、雪之丞は『夜刀・虚』を振り、不可視の斬撃を放った。斬撃は頭領の首を切断し、落ちた頭は床をゴロゴロと転がっていった。

「いやぁ、ホンマ、ありがとうございました」
 盗賊退治の完了を報された伝衛門は、押し入れから出てくるとイレギュラーズ達に丁重に礼を述べた。
「どういたしまして! また何かあったら、ボク達を頼ってよ」
 伝衛門の礼に、ヒィロは満面の笑顔で頷く。伝衛門の命も財産も守れたという結果に、ヒィロは満足していた。しっかり働いた人が、その成果を奪われること報われる、そんな世の中ならきっと皆信じ合って幸せに暮らせるだろうと、ヒィロは思う。
「うんうん、めでたしめでたしでよかったで。グラオ・クローネを広めたばかりに命や財を奪われたとあっては、報われへんものなぁ」
 今回の結果に満足しているのは、もちろんヒィロだけではない。つつじも満足げに何度も首を縦に振って頷きながら、伝衛門の命と財産の無事を喜んでいた。
「さぁ、知っていることを吐きなさい」
 美咲は生き残った盗賊を拘束すると、魔眼による催眠を用いて本拠地などを洗いざらい聞き出しにかかる。他人の成果を掠めとる類の奴は気に入らない美咲は、そんな手合いは確実に根絶されると知らしめるつもりだ。
(こう言う奴らは、徹底的に潰さないとな)
(遮那さんのおわす豊穣、少しでも綺麗にするッスよ)
 錬と鹿ノ子は、美咲を手伝いつつその様子を見守っていた。錬も鹿ノ子も、理由は違えど美咲と同様にこの盗賊団を根絶するつもりでいた。だが、元より頭領は本拠地を伝衛門の店に移すつもりで襲撃したのであり、元の本拠地は既に放棄していた。盗賊団もこれが全員で、この時点で既に壊滅したと言える。
「このエプロン、長期戦に向くのかどうか……」
「何を重視するのかによるのでございましょうが……」
 身につけている『肌色エプロン』を見下ろしながら、再遊戯はうむむ、と悩み顔をする。気力が満ちてくるのは確かなのだが、一方で体力を大きく削られるからだ。そんな再遊戯に、雪之丞は相談に乗りアドバイスをするのだった。
「ここのちょこは美味いって評判で、俺も気になっていた。悪いが少し分けてもらえないか? 妻への土産にしたいんだ」
「へえ、そりゃあもう!」
 全てが終わったとで、ジェイクは伝衛門にチョコを所望した。愛妻の幻が、豊穣に伝わったチョコレートを食べてみたいと言っていたからだ。伝衛門は喜んで、ジェイクにチョコを渡す。ジェイクは幻の喜ぶ顔を想像しながら、豊穣からへの帰途に着くのだった。

成否

成功

MVP

天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師

状態異常

なし

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。皆さんのおかげで、伝衛門と彼の財産は守られました。ほぼ瞬殺と言える結果になったのは、本文中でも触れましたが、基本的な実力差はもちろんですが、皆さんのプレイングの妙があったからです。
 MVPは、勝手口を封鎖して盗賊の侵入経路を店の正面入口からに限定させた錬さんにお送りします。

 それでは、お疲れ様でした!

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