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シナリオ詳細

鉄帝食料問題解決への第一歩!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

「どうしたの、みんな?」
 宿のテーブルに突っ伏している鉄帝の新兵達に、ミルヴィ=カーソン(p3p005047)は声を掛けた。
 いま彼女が居るのは、鉄帝で拠点にしている宿屋。
 1階部分が食堂を兼ねているので少し遅めのお昼を取りに来たら、見慣れた顔が居たのだ。
「ミルヴィさ~ん」
 突っ伏していた1人、ミリーが顔をあげる。
 いつもは快活な表情をしている彼女だが、ぐったりとしていた。
「疲れたよぅ」
 へにょり、と再びテーブルに突っ伏す。
 それは他のメンツも同じだ。
「え、ええ!? ロンサとウッズまでどうしたの?」
 鉄帝人らしい脳筋な2人は、いつもは騒がしいほど賑やかなのに、初めて見るぐらい大人しい。
 驚くミルヴィに、ロンサとウッズは顔を上げ言った。
「遺跡調査に行って」
「体力削られたんだ」
「そんなに危険な遺跡に行ったの?」
 ロンサ達の実力は、以前闘技場で戦ったり、一緒に遺跡を巡ったこともあるので知っている。
 若いがかなりの実力者で、その上、イレギュラーズ達と一緒に遺跡の発掘をしたことで、前よりも考えて戦えるようになっているのだ。
 だというのに、この有り様。
 心配していると、野太い声を掛けられた。
「大丈夫だ。ちょっとへばってるだけで怪我とかは無いからな」
 視線を向ければ、そこに居たのは新兵達の親代わりであるギギル。
 そして何度かローレットに依頼を出したリリスとヴァンが居た。
「怪我は無いの?」
 ミルヴィが聞き返すと、ギギルが応える。
「あぁ。鍛錬も兼ねて、新しく探索する遺跡の威力偵察させたんだが、そこのトラップに引っかかっちまってな」
「トラップ?」
「簡単に言うと、遺跡の中に居るだけで体力と魔力を吸い取られちまうトラップだな」
「それって、危険なんじゃないカナ?」
「いや、そうでもねぇ。そもそも、そうなる前に遺跡の外に出されたからな」
「どういうこと?」
「遺跡に居た機械達に外に出された。このままだと死んじまうから外に出してやらぁ、てな」
 ギギルの話では、遺跡は長方形の施設になっていたようなのだが、そこを2時間ほど調べて回る内に力が抜けていったらしい。
 危険を感じて外に出ようとした時、複数の機械達が現れ、新兵達を抱えて外に出したとのこと。
「こっちを殺す気はなかったみたいだな。あそこに収められてる遺物は、そういうもんじゃないみたいだからな」
「ひょっとして、イオみたいな子がいるの?」
 少し前、似たような遺跡で発掘したメイドロボの名前をミルヴィは口にする。
 これにリリスとヴァンが応えた。
「今回のは、食糧生産プラントと料理ロボですね」
「多分、兵站用のユニットじゃないかしら」
「食料生産プラントって、ひょっとして、食べ物を作り出せる機械なのカナ!?」
 少し興奮したようにミルヴィは尋ねる。
(もしそうなら、鉄帝の食糧問題が解決できるかも)
 鉄帝は幻想に進攻したことがあるが、それは食糧問題が最大の原因だ。
 寒冷地であるので植物の実りが悪く、常に食糧問題を抱えている。
 その問題が解決されるなら、余計な争いの種がひとつ減ることになるだろう。けれど――
「そう巧くは行かないようで」
 ヴァンが説明する。
「恐らく水と空気からアミノ酸を合成する物だと思いますが、合成する為にはエネルギーが必要になるんです」
「そのエネルギーを、遺跡の中に入った侵入者から奪っているんでしょう」
 幾ら食料を作れるとは言っても、そのためにエネルギーが大量に要るのでは意味が無い。
「そうなんだ……」
 残念そうに呟くミルヴィに、リリスが言った。
「落胆することは無いわよ。巧く行けば、食糧問題の解決の助けに繋がるかもしれないし」
「そうなの!?」
 期待して聞き返すミルヴィに、ヴァンが説明する。
「エネルギーを多く消費するのは、材料となる物がろくにないからです。材料となる物、なんらかの作物の不要部分を使用すれば、より少ないエネルギーで好きな食糧を生産出来る筈です」
「元々、私達はそのつもりで行動してたから」
 世界平和を目的に動いているヴァンとリリスは、鉄帝での計画を話す。
「鉄帝の食糧問題が解決すれば、少なくとも戦いの原因となる要因が減ると思うから。そのためにも、今回の遺物は欲しいわね」
「元々、鉄帝で育てるための魔法植物の品種改良も終わらせましたし、ちょうど良いタイミングです」
「魔法植物? そんなのも作ってたんだ」
 ミルヴィの問い掛けに、ヴァンが応える。
「ええ。マンドラゴラをモデルに作った物でマッチョラゴラと言いますが、育成に人の汗が必要な代わりに、鉄帝でも育ちます」
「鉄帝と言えば闘技場だけど、そこなら闘技者の汗が浸み込んでるから、ちょうど良いのよ」
「成長速度を向上させて質を高めるためには、戦って流した汗の方が良いみたいなんです。他所の土地だと、そうそう都合よく手に入りませんけど、闘技場という風習があるここなら集めやすいんです」
「で、マッチョラゴラを育てて。収穫した後に加工すると、どうしても廃棄物が出るから」
「それを材料にすれば、少ないエネルギーで食料を造り出せるようになる筈です」
「それって……無駄なく沢山の食糧を作れるようになるってことカナ?」
 ミルヴィの問い掛けに、ヴァンは応えた。
「はい、そういうことです。もっともそうなるためには幾つかの課題をクリアしなくてはいけませんが」
「それも、目的なんだけどね」
 リリスが、ヴァンの言葉を引き継いで続ける。
「鉄帝での食糧問題を解決するには、練達や深緑、他にも幻想や海洋、幾つもの国と関われるようにしないと。私達はそれぞれの国で利益を出せるようにして、協力関係を結べるようにしたいのよ。そうすれば、お互い利益関係になって、少しは争いが遠ざかるでしょ。まぁ、先の長い話だけどね」
「その長い道のりのひとつが、今回の遺跡で手に入る遺物なんです。ですから、ぜひ手に入れたいですね」
「そうなんだ……」
 2人の話を聞いて、ミルヴィは意気込むように言った。
「それなら、手に入れないと。人手が足らないなら、ローレットに依頼を出せば良いと思うよ」
「ええ、そのつもりです」
「この子達が遺跡の調査をしてくれたから、あとは手に入れるだけだしね」
 リリスはテーブルに突っ伏したままの新兵達を見て小さく笑みを浮かべると、続けて言った。
「これからローレットに依頼を出そうと思うわ。もしよければ、力を貸してね」
 ミルヴィに呼び掛けると、リリスはヴァンと一緒にローレットへと向かった。


「鉄帝の遺跡に行って、遺物を手に入れて欲しいのです」
 招集されたイレギュラーズに向けて、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は依頼の詳細を説明してくれる。
「細長い遺跡の奥に、食糧生産プラントの遺物があるのです。それを取って来て欲しいのです」
 詳しく話を聞くと、遺跡に侵入すると同時に体力と魔力を奪われ続けるとのこと。
「1分で1%ぐらい吸われちゃうみたいです」
 事前に探索した鉄帝の新兵の実体験から得られた情報であり、遺跡の外に出れば後遺症もなく回復していくとのこと。
 また、自力で動くのが困難になるほど吸収されると、遺跡を守っている機械達に外に出されるらしい。
 どうも、エネルギーを吸収したいようだが、殺したりはしたくないようだ。
「タイムアタックになると思うので頑張って欲しいのです」
 ユリーカに激励され、送り出されるイレギュラーズ達であった。

GMコメント

おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
11本目のシナリオは、アフターアクションで頂いた内容を元に作った物になります。
鉄帝の食糧問題の解決がテーマになる今回のシナリオですが、今回だけで「鉄帝の食糧問題が全て解決!」とは規模的にいかないので、今後も今回のような物を出し続けていく予定です。
その中で、他の地域とかにも関わっていく予定です。

そして今回のシナリオの詳細は以下になります。

●成功条件

遺跡の最奥にある食糧生産プラントを手に入れる。

●遺跡

横20m×縦200m程度の広さがあります。
床は平たんなので、戦闘の際に支障となる物はありません。
光源は内部にあるため、持って行く必要はありません。

遺跡の中に入ると、トラップが発動し、警備機械が一定時間ごとに湧いて出ます。

トラップ

1分ごとに最大HPと最大APの1%が吸収され減ります。

警備機械

意志の無い、ただの防衛機構。
防御と回避が高いです。
反面、攻撃力は高くありません。
基本的な戦術は、時間を稼いで侵入者が動けなくなるまでHPとAPを吸収させることです。
そのため、PCの移動を妨げようとしたりします。
遠距離攻撃と近距離攻撃が出来ます。
1体ごとの戦闘力は高くないです。

戦闘開始時に20体が天井から産み落とされます。
一定時間ごとに、追加で20体発生します。

発生時間については、ご参加いただいた皆さまのレベル帯によって変化します。
なので、どなたでも気軽にご参加いただけます。

遺跡の最奥に、3mぐらいの水銀のような球体と、人間大の水銀の球体があります。
その横に、遺跡の制御コアがあります。
制御コアを破壊すれば、遺跡からのHPとAPの吸収は止まり、警備機械も停止します。

水銀のような球体と依頼人がマスター登録すると依頼完了です。
3mぐらいの水銀のような球体は、甲羅に食料プラントを背負った巨大な亀のような姿になります。
人間大の水銀の球体は料理ロボになります。

●同行者

以下の協力者と依頼人が同行することになります。

鉄帝の新兵8人。
全員若いです。

他のシナリオでイレギュラーズとの共同戦闘を行ったこともあり、イレギュラーズに対する好感度は高いです。
そのため、指示通りに動きます。

近接4人。中距離2人。遠距離2人です。回復要員いません。
脳筋な近接が2人居ますが、少し前のイレギュラーズとの共同戦闘の経験で、マシになってます。
それでも基本は脳筋です。

依頼人

リリス&ヴァン

一切戦いません。
攻撃されれば逃げに徹します。
協力者に指示して守らせることも出来ますし、放置も出来ます。
死にはしません。

●情報精度

このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。

説明は以上になります。

それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリプレイに頑張ります。

  • 鉄帝食料問題解決への第一歩!完了
  • GM名春夏秋冬
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月13日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

志屍 志(p3p000416)
天下無双のくノ一
メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)
メイドロボ騎士
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
寿 鶴(p3p009461)
白髪の老婆
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
メイル=O=サマー(p3p009652)
いつの間にかいるイケメン

リプレイ

「出来あがりなのだわ」
 宿屋の厨房を借りて作った沢山の料理を前に、『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)は笑顔を浮かべる。
 諸事情で、皆に食事を奢る約束をしていた彼女は、食材の全てを荷馬車で持って来てくれ、ゴチックメヱドの技量も活かし作ってくれた。
 料理を作ってくれたのは彼女以外にも。
「お腹減った時にたべてネ♪」
 得意料理のトルティーヤを、『闘技戦姫』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)は皆にお弁当として配る。
「ありがとー!」
 新兵達は笑顔で礼を言い、イレギュラーズ達も笑顔で返す。
 遺跡に向かう前なので、軽く腹ごしらえ程度にして、本番は遺跡攻略後の打ち上げ。
 それを楽しみにしながら、笑顔で料理を食べている新兵達を見て華蓮は思う。
(お腹が空いた……そういう当たり前の欲求が当たり前に満たされる……幸せの為に最初に必要な事なのだわ)
 そして決意する様に意気込む。
(皆が笑顔で居る為の、絶対条件なのだわよ。だからここは、とってもとっても大切なお仕事なのだわ)
 食の大事さを知るのは、『白髪の老婆』寿 鶴(p3p009461)も同じだ。
(他のもんはまあ無くても食べもんはなあ……みんなが食うのに困らんようになるのが一番ええわな)
 元の世界で世界大戦を経験し、飢えの辛さを知る彼女としては身につまされる。
(争わんと、腹いっぱいになれるんが一番なんやけどなぁ)
 しみじみと思っていると、少し前に関わった子供達の顔が思い出される。
(あの子らも、ちゃんと食べとるか?)
 気になって様子をリリスに訊くと、イオと一緒に生活しつつお腹いっぱい食べてるらしい。
 そこからイオの話をしていると、『メイドロボ騎士』メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)が声を掛けて来る。
「イオ殿というのが、件のメイドロボなのだろうか?」
 同じメイドとして気になっていたので聞くと、リリスが応える。
「はい。まだメイドとしては未熟な子ですけれど、いつか貴女のように素敵なメイドさんになって欲しいですわね」
 料理の配膳やお茶の準備をしていたメートヒェンの手際の良さを見ていたリリスは笑顔で言った。
「そうか。それなら機会があれば少し話でもしてみたい所だね」
 メートヒェンは返しながら、今回の依頼に気合を入れている。
(鉄帝の食糧問題が、これで完全に解決とはいかないのだろうけど、少しでも解消されるというのなら全力を尽くそう)
 彼女のような鉄帝出身者にとって、鉄帝の食糧問題は切実である。
 メートヒェン達の話を聞いていた『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)も、どうにかしたいと思っていた。
(なるほど、また色々と進展があったんだな)
 色々と考えて気合を入れる。
(今度は遺跡か……トラップがなかなかキツそうだけど、遺物を手に入れるために頑張ろう!)
 そんな彼に、同行する新兵達が声を掛けて来る。
「よろしくー!」
「今回は勝負じゃなくて協力プレイだけど頑張るぜ!」
 以前、闘技場で勝負した新兵達が親しげに声を掛けて来る。
「背中はバッチリ守るからね」
 新兵達にイズマは力強く返した。
「お互い、あのときより強くなったかな。またよろしく!」
 歓声をあげるように応える新兵達。
 闘技場が関わる縁で、新兵達に囲まれているのは『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)。
「好い試合でしたのね」
 恋人な彼女が新兵達と闘技場で戦ったらしく、その時のことを笑顔で話してくれる。
「ああ! 強かったぜ!」
「それにかっこ好かったよ!」
 恋人を褒められくすぐったい気持ちになると、より一層依頼の完遂を意気込む。
「食料プラントの奪取、喜んで協力致しますわっ! これが成功すれば、きっと沢山の人が救われるに違いありませんものねっ!」
 ヴァレーリヤの言葉に、歓声をあげるようにして応える新兵達。
 皆の賑わいを目にして、複雑な気持ちになっているのは『遺言代筆業』志屍 瑠璃(p3p000416)。
(幻想に宿を借りる身としては複雑な所もありますが、とはいえ見知らぬ誰かが飢えずにすむ助けとなるならそれも良い事ではあります)
 新兵達の笑顔をを見ていると、これから先戦わずに済むなら、それに越したことは無いとも思う。
(できれば、それで進攻が無くなればいくらか有難いのですけど)
 そんなことを思っていると、新兵達が人懐っこく声を掛けて来て、トルティーヤを一緒に食べようと勧めてくる。
 食道楽な瑠璃は、ぴりりと刺激的な味を楽しんだ。
 そんな風に新兵達に囲まれているのは、『いつの間にかいるイケメン』メイル=O=サマー(p3p009652)も同じだった。
「遺跡の奥のものを奪取すれば良いのだろう? ダッシュで。なんつって」
「おう! ダッシュで突進だ!」
 ノリ良く応える新兵達に、メイルはイケメンな笑みを浮かべ思う。
(皆がたらふく食えるようにしてやらねばの。余のファン達のためだ、一仕事するかの)
 心の中もイケメンに。
 ならば行動もイケメンになるのは当たり前。
 世界がそこにあるのと同等に当然のこと。それに加えて――
「うむ、食いすぎて動けないのでちょっと待ってネ♪」
 愛嬌を見せるのも忘れない。
 真のイケメンは孤高よりも、人の輪にするりと入れる隙も併せ持つ。

 遺跡に入る前にワイワイガヤガヤ。
 気心が知れるような空気の中、遺跡に向かうことにした。

●戦闘開始!
「今回もアタシが指示するけどいい?」
 ミルヴィの問い掛けに歓声で返す新兵達。
 信頼を態度で示す新兵達に、くすりと笑みを浮かべ。
「ばっちりやっていくよっ!」
 ミルヴィは仲間と共に遺跡に踏み込む。

 この時点で事前準備は十分。
 ヴァレーリヤの提案で、新兵達から得た情報で遺跡内の地図を作り。
 それに基づきミルヴィがエコーロケーションで確認し、最短ルートを皆で共有している。
 踏み込むと同時に役割に応じて動く。

 真っ先に跳び出したミルヴィの背中を守るように、脳筋なロンサとウッズも跳び出す。
 ミルヴィに合せ左翼にイズマが、右翼にヴァレーリヤが陣形を組む。
 連携の取れる近距離で、ミルヴィはアブソリュートグレイスを使い皆を強化。
 回避力が上がった所で、敵を蹴散らしていく。
 敵の集団にミルヴィは躍り出るとメナス・ルーヤ。
 美しくも鋭い剣舞で敵を斬り裂く。
 敵は背後を突こうとするが、ロンサとウッズが迎撃しカバー。
 隙が無いと判断した敵は、左右側面から突こうとするが、イズマとヴァレーリヤが迎え撃つ。
「先に進むための突破口を作るんだ」
 イズマは敵を複数巻き込むようにして、H・ブランディッシュ。
 力強い乱撃で敵を斬り砕く。
 敵は死角から攻撃しようとするが、後方から遠距離攻撃の出来る新兵達が援護攻撃。
 銃撃で動きが鈍った敵に、イズマは外三光で追撃。
 後の先を取り半壊させた。
 敵は攻撃を受け、態勢を整えるため距離をとろうとするが、ヴァレーリヤが許さない。
「主の御手は我が前にあり――」
 聖句と共に手をかざし、敵の退路を断つように炎壁を発現。
 動けない敵に跳び込むと、炎を纏ったメイスを気合の咆哮と共に叩きつけた。
 敵は粉砕、炎に包まれ残骸へと変わる。

 先行遊撃組のお蔭で道が開ける。
 その好機を逃さず、陣形を組んで一気に進む。

(この距離なら、いけますね)
 後衛組の瑠璃は、前衛組の攻撃で一箇所に固まった敵に向け眩術紫雲を放つ。
 虹の如く煌く雲が敵を包み動きを鈍らせる中、前進を告げる。
「今の内に進みましょう」
 瑠璃の言葉を受け前進を開始する後衛組に、華蓮は加護の歌を響かせる。
 それは柔らかく頬を撫でる風のように。あるいは背を押してくれる母の手のように。
 前へと進む力を与えてくれる。
(『それは舞い降りる天使の様に』だなんて気取りすぎだけど、それでも皆、戦いやすくなってくれると思うのだわよ)
 彼女の思いを現すように、加護の力が皆を包み込む。
 力が増す中、皆は前へ前へと進む。
 敵は、させまいとするかのように襲い掛かって来るが、前進の勢いを止めないよう、引きつけ役が引き離す。
「逃げるな! 臆病者! 私一人に臆するか!」
 メートヒェンは罵倒のスキルを使い、敵を引きつける。
 ぶつかって来る敵を、ふわりとスカートを舞い上げながら避け戦力分析。
(どうやらこちらを殺すような意図はないようだな。1体1体の攻撃はそれ程強力でもない所を見ると足止め特化。ならば皆が早く中枢に辿り着いてくれるなら十分に耐えられる)
 多少自分が傷ついたとしても目的を素早く達成するため、仲間を信じ引きつけ役に徹する。
 彼女と同じように、鶴も動く。
「ちょっとそこの警備ロボさん、わたいと、遊んでや。そっちのロボさんもこっちやで」
 鶴は仲間との距離を意識しながら敵を引き付ける。
(あんま皆んなから離れやんようにせんとな)
 引き付けに集中し過ぎて倒されないよう、仲間との連携を意識しながら敵を捌いていく。
 可能な限り体捌きで敵の突進を避けながら、避け切れない攻撃は防御を固め受ける。
 攻撃よりも防御主体に動き、イモータリティで体力を維持しながら立ち回っていた。
 引き付け役が敵を捌く中、どうしても傷は受ける。
 それをメイルは走り周りながら癒していく。
「貴様に退場されては困るのだ……だって余はか弱いもん」
 ライトヒールで回復しながら、時に牽制代わりの攻撃を叩き込み敵の注意を引く。
「ファハハハ! 残念、後ろでした~! もっと、余を見て……♪」
 敵の後ろからこっそり、ズバッと、一刀両断で斬りつける。
 仲間の援護をしながら敵の攻撃を受け傷を受けるも、笑顔は消さない。
 それが出来るからこそのイケメンなのだ。

 連携のお蔭で、コアに素早く近付くことが出来た。
 敵の数も減り、このままなら問題なく破壊できる。
 そう思えた時、イズマが警戒の声を上げた。

「新手が来ます!」
 超聴力で、敵が天井から産み落とされる音を聞いたイズマが声を上げると、ミルヴィがエコーロケーションを使い詳細を把握。
「右後方! 新手が来るよっ!」
 仲間に知らせながら足止めに動く。
 ロンサとウッズが後方で援護しながら、メナス・ルーヤで敵を翻弄するように斬りつけていった。
 ミルヴィを脅威と感じた敵は、迂回して他のイレギュラーズを襲おうとするが、そこにイズマが突進。
「援護を頼むよ!」
「了解!」
 後衛の新兵達と連携し、攻撃に専念。
 死角からの敵は新兵達の援護射撃で抑えて貰いつつ、勢い良く跳び込み剣魔双撃。
 確実に敵を破壊していく。
 この時点で、ある種のこう着状態になる。
 単純な戦力はイレギュラーズの方が上だが、敵は数が多い。
 敵の邪魔でコアへの攻撃が出来ない中、攻撃の導線を作るため皆は動く。
「これ以上進めると思うな!」
 メートヒェンがスキルの罵倒を使いながら、邪魔な敵を引き剥がしていく。
 防御を固め敵を引き付け、仲間が自由に動ける猶予を作る。
 メートヒェンの体を張った引き付けに助けられながら、皆は積極的に攻勢に出ると、そこで華蓮が回復に動いた。
 柔らかな歌声で、祈りの歌と天使の歌を響かせる。
(私の歌声で、少しでも皆が元気になってくれるのならとっても嬉しいのだわ)
 華蓮の願いは形を成す。
 体力を底上げしてくれた上で回復。
「回復おおきんな! 助かったわ」
 鶴は礼を言いながら、回復役の華蓮に敵が向かわないよう引き付けていく。
 引き付け役の奮闘もあり、敵の囲いが薄れていく。
 そこにメイルも加勢する。
「見よ、狙い放題だ。周りの雑音は消しておくから気にするな」
 戦略眼で攻撃の導線を見極めると、そこに攻撃し易いよう敵を引き付ける。
 一連の動きで、コアへの攻撃のチャンスが訪れる。
 そこで大技を放ったのは、ヴァレーリヤだった。
「行きますわよ、準備はよろしくて?」
 味方を巻き込まないよう呼び掛けながら、聖句を高らかに謳いあげる。
「主よ、天の王よ――」
 聖句を唱えると、頭上に振り上げたメイスから炎が吹き上がる。
 夜の闇すら圧する太陽の如き炎は、メイスの振り降ろしと共に真っ直ぐに吹き荒れ、射線上の敵を焼き払い灰燼に帰した。
 コアへの道が開ける。
 させまいとする敵を引き付け、あるいは抑えながらコアを攻撃。
 コアは防御力場で耐えていたが、瑠璃が止めを刺す。
(これで――)
「――終わりです」
 幻法愛式で敵の足止めをした瑠璃は、コアに向けベリアルインパクトを発動。
 コアの四方を囲むように土壁が生まれ、一気に押し潰す。
 土壁の圧力に耐えられなかったコアは粉砕された。

「お、ロボ止まったやん。成功やな。皆さんお疲れさんでしたな。怪我あらへんか?」
 動かなくなった警備機械を見て、鶴は皆に声を掛ける。
 皆が応えを返す中、イズマは一息つく。
「戦ってるときはともかく、終わるとどっと疲れがくるな……。実は栄養ドリンクがあるんだけど……どうする?」
 持って来ていたドリーの特製ドリンクを差し出すと、新兵達が手を伸ばす。
 そして独特な味に、微妙な表情になった。
 皆が一息つく中、メイルは警備機械に近付く。
「何かに使えないかの? そうだ、腹話術」
 軽く持ち上げ動かす。
「ガチャチャ、メイサマ、カッコイイナァ! イケメンイケメン!」
 皆、反応に困った。
(誰も反応しないな。余がイケメンなのは当たり前すぎたか……)
 心の中で頷きながら納得するメイル。
 そうしている間に、念のため周囲の確認をする瑠璃とメートヒェン。
「あちら側に残った警備機械も動かなくなってますね」
「こっちも確認済みです。制圧が終わったと見て良いでしょう」
 安全を確認すると、ヴァレーリヤは依頼人を気遣い声を掛ける。
「怪我などはありませんわね?」
「はい、お蔭様で」
「ありがとうございます」
 リリスとヴァンは皆に礼を言うと、食料プラントと料理ロボを起こしに行く。
「今回は私がマスター登録しましょう」
 そう言うとヴァンは自分の掌を切り血を注ぐ。
 するとふたつの水銀の玉は震え、大きな方はカプセルを背負った巨大な亀に。小さい方は幻想種に似た男性の姿になった。
「へえ、これが食糧生産プラントと料理ロボっちゅーやつかいな。おもろいもんがあるんやなあ」
 ロボ達を興味深げに見る鶴。
 これに料理ロボは笑みを浮かべ応える。
「面白いだけじゃなくて役に立つぜ。お望みのものがあれば言ってくれ。俺っちと相棒で作ってみせるからよ」

 という訳で、宿屋に戻って早速作らせた。

「出来あがりだ!」
 亀型食料プラントが作った肉を料理ロボが焼き上げる。
「余のパワーをいっぱい吸ったのだ、さぞ美味で――美味いな」
 メッチャ美味かった。
 しかし量が少ない。
 料理ロボの話だと、フルパワーで周囲からエネルギーとなる物を吸い上げれば生産量は上がるが、人がバタバタ倒れるらしいので出来ないらしい。
 なので打ち上げのメインは、華蓮達が作ってくれていた美味しい料理。
「沢山あるから、みんなお腹いっぱい食べて欲しいのだわ」
 華蓮の言葉に、新兵達から歓声が上がる。
 賑やかに食べ始める中、街の住人達も顔をのぞかせ、軽いお祭り騒ぎに。
「美味しいですわね」
 勧められた料理を食べて、ヴァレーリヤは笑みを浮かべる。
 料理を食べながら、帰ったら恋人な彼女と一緒に食事に行こうかと考える。
 同じように美味しく料理を食べていたメートヒェンは――
(もてなされるだけというのも落ち着かない)
 ということで、給仕の手伝いに加わった。
 宴が続く中、食料プラントな亀を調べているヴァンに、瑠璃が声を掛ける。
「練達の専門機関で構造や量産可能かなど調べるのが、本来ならよろしいかと思うのですが、装置の重要度に加えて他国に預けて研究させるというのは、政治的にも難しいですよねえ。遺跡や装置をつくったひとの死体があれば構造や使い方を聴けるので、念のため探してみましょうか」
 これにヴァンが応える。
「ありがとうございます。所有権に関しては、事前に対価を支払っているので大丈夫です。ですので練達の知り合いに調べて貰う予定です。遺体から情報を得る方法については、遺体を探し出すことが非常に困難ですが、もし可能でしたらお願いします」
 2人が話している近くで、ミルヴィがリリスと言葉を交わす。
「世界平和は本当に素晴らしい事と思うけれどそれに囚われないように頑張ってほしいな……親父みたいに平和のための犠牲なんてなっちゃダメだよ」
 これにリリスは、柔らかな笑みを浮かべ応えた。
「ありがとう。大丈夫よ。でも心配させちゃってるなら、近い内に私達のしていることを教えるわ」
 これにミルヴィは笑顔を浮かべ応える。
「分かった。楽しみにしてるね」
 笑顔を浮かべ、ミルヴィは宴を盛り上げるため舞踏を披露する。
 音楽が得意なイズマと、新兵達が楽器を鳴らし、ミルヴィの舞踏を引き立てる。
(私達の理想が穢れる事無く成就しますように)
 祈りと共に舞い踊るミルヴィに、皆は歓声をあげていた。

 そうして宴も終わり帰路に着く。その前に――

(ファンから施しは受けぬのだ。イケメンだし)
 食事代を、こっそり華蓮に渡しておくメイルだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした!

皆さまのお蔭で、食料プラントの確保が出来ました。
現状ですと、まだまだ食料の安定供給とまでは行きませんが、練達や深緑を舞台にするシナリオを出しつつ、確保できる食料を増やしていきたいと思います。

そして舞台となっています鉄帝の街では、遺跡群がある設定ですので、また何かしらアイデアが浮かんで来れば舞台として出していく予定です。
それと街の住人&新兵達は、イレギュラーズ達との関わり合いで好感度が高くなっています。
なので今後、出て来ることがあっても、協力的な状況で進むことになります。

ではでは、これにて。
重ねて、皆さまお疲れ様でした。ご参加、ありがうござました!

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