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シナリオ詳細

書題名『花咲小道の花招き』 副題名『花祭りへの招待』 著者 画家『華也野』 噺家『蓮野』

完了

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オープニング

●境界図書館より、初めまして。花見のお祭りへの招待。

 春爛漫と云う季節の頃に、イレギュラーズのあなたは境界図書館を訪れた。
 ここには混沌とは違う異世界の物語を集めた数多の蔵書がある。この図書館の司書のようなものである境界案内人に頼めば――、或いは境界案内人が紹介する依頼があれば――、イレギュラーズのあなたが気に入った本の境界世界へ行き、その世界を体験する事ができる。
 其れはあなたにとってはひと眠りの夢でも、本として描かれた世界の住人達にとっては、現実の出来事になる。本に描かれた世界は、それぞれが別個、または時々、連なったシリーズものの異世界だ。
 イレギュラーズのあなたにとっても、境界世界での体験は、――例え夢の中の出来事だとしても――、リアルな体験の経験値になるだろう。
 “それ”を知ったあなたは、境界図書館で、自分が気に入る本と依頼を探した。


●書題『花咲小道の花招き』 副題『花祭りへの招待』 著者 画家『華也野』 噺家『蓮野』

 花咲小道(はなさかこみち)と云うは、この陽之本國(ひのもとくに)の『花咲町』(はなさきまち)と云う宿場町に在る花の名所である。
 毎年、春になると『花祭り』(はなまつり)と云う行事が催され、春の訪れと桜花の見頃を祝い、『此花神』(このはなのかみ)を祭る儀式が執り行われる。
 拙(せつ)が友人に、華也野(かやの)と謂う画号の画家、腐れ慣れにし竹馬の友があるが、其奴(そやつ)は餓鬼(ガキ)の時分からこの花祭りが好きで、好きで、たまらなく好いており、毎年、欠かさず拙宅を尋ね、拙を道連れの友に、必ず観覧に行くのである。
 
 この花祭りで華也野と拙が毎年、何をするかは勝手が決まっていて、華也野は好きな絵を描き、拙はこの花祭りに集まった人間やアヤカシ、正体がよくわからん連中などにも混じって、そやつらの噺を集めて記憶し、記録する。

 それを普段は華也野は画壇で発表し、拙、噺家の蓮野は、寄席で大衆に向けて面白おかしく語るのであるが、この度は華也野と拙の合作で、本を創り候て、集めた『花祭り』景色を纏め、世間とやらに発表する事に致した。

 この本の華也野の絵を見て、拙、蓮野の噺を読んで、どこぞの誰か様、あなたが楽しいと思うてくれるならば、著者は幸いである。


 拙からの噺は先ず、『花祭り』の唄から始めよう。

●『花咲く小道の花招き』 伝、花咲町。詠み手知らず。

 花咲く小道に今年も花が咲いた。飲めや歌えや珍道中と人もアヤカシどもも騒ぎ出す。
 花咲く小道に今年も花が咲いた。川の流れに桜の花イカダ、こちらとあちらを繋ぐ朱塗りの太鼓橋。
 サァアッとド派手な袖が舞って、鈴がしゃなり、シャリン、赤い狐の親分が観客に向けて大見得を切る。唄えや踊れ花祭り。

 花咲く小道に今年も花が咲いた。親分に続くは笛吹き乙女狐の三人官女、芸妓、花魁の花盛り。社への道行きを桜花が彩る花祭り。

 美しや、まるで桃源郷。
 朱塗りの太鼓橋に行けば、橋の上を道行く花魁道中が、さっと狐面、おかめめん、鬼面、兎面、ひょっとこ面をとって、見得を切る。

 狐面は流し目、艶やかに。
 おかめ面は福よ来たれと笑い。
 鬼面は粋に女伊達。
 兎面は恥じらい琵琶をかき鳴らし。
 ひょっとこ面は音に合わせて楽しげに舞う。
 
 道中が社へ道行けば、花祭り本番、花咲町は賑わい、楽しき花宴。

 サアサ、寄ってらしゃい、見てらっシャアイ。店売りの掛け声、威勢よく楽しげに。

 道行く人もアヤカシも、昼と夜の垣根を越えて、一緒に祝う。今日は楽しい花祭り。
 
 花咲く小道に花が咲いたら花祭り。
 昼も夜も楽しめ、花よ。人よ。アヤカシどもよ。花が咲いたら花祭り、夜が明けたらお終いだ。花祭り、花祭り。


●境界図書館より、花見の誘い企画。

 その『花咲小道の花招き』は、華也野の絵が主体の画集のような本だった。華也野の絵に添えるように、蓮野の詞書きのような噺が、彼の達筆な墨走りの筆使いで記されている。
 ――そしてこの本は、絵と噺の連なりの終わりまで見て読んでも、まだ終わりではない。不思議な事に空白の白いページがまだまだたくさんあるまま、綴られた本だった。

 あなたは何故だろうと思った事だろう。
 この本が気に入り、この疑問を持ったイレギュラーズのあなたはこの本を持って、この本を案内してくれる、担当の境界案内人を探した。


●境界世界『此花朔夜』、担当の境界案内人は、サフィラス=ウィータエ・アエテルナエ 

 そのヒトは、琥珀の長杖をついて、サラサラと衣擦れの音をさせながら、滑るように現れた。まろい褐色の肌に魔力を湛えた白銀の髪、長身で性別不明の、なんとも不思議な出で立ちをしたヒトだった。
 先ず目に入ったのは、白いローブと群青色のホルターネックワンピースに、灰雪色の袴を重ねたような服装。まるで魔法使いかなにかのようである。さらに極めつけに目を引いたのは、顔の上半分を覆い隠す目隠しである。黒地に金色の装飾模様のそれは、一種、魔術的に見えた。白銀の髪を留める金色の精緻なカチューシャが、光を反射して鈍くきらめく。

 そのヒトは境界図書館の本を手にしたイレギュラーズを、見える筈がない目で、つと見た仕草をして、あなたの前に立ち止まった。そのヒトは、白いローブの袖先をぴんと張って持ち、琥珀の長杖を握り直すと、片足を引くお辞儀をした。

「よう来なさったのう、イレギュラーズや。この妾がその本、『花咲小道の花招き』の境界世界、『此花朔夜』の案内を担当する境界案内人、流転の魔女、サフィラス=ウィータエ・アエテルナエじゃ。――妾の事は、境界案内人のサフィラス、またはサフィと、妾の顔と名前を覚えてくれると嬉しいのう。以後、お見知りおきをよろしくのう、イレギュラーズ」

 にこりと微笑んで、サフィラスは本とイレギュラーズの願いを受け取った。

「ほう。ならばこの妾が境界世界への道を案内してしんぜよう、ついて参れ、イレギュラーズ。異世界への入り口には、相応しき場所というものがあるものじゃ。道々、これからおぬしらに向かってもらう予定の異世界『此花朔夜』と、妾が案内する依頼について、説明しよう――」

 サフィラスはイレギュラーズを呼び集めながら、自分が境界案内人として所有する領域へと案内した。

「今回、妾がおぬしらに行って欲しい事は、和風の境界世界、『此花朔夜』の『花咲町』と云う宿場町にて開催される、『花祭り』と云う、『春を言祝ぐフェスティバル』への参加じゃ。――つまりは『観光』じゃのう」
「観光!?」
 イレギュラーズの1人が飛び跳ねた。
「うむ。そうじゃ。これから行く境界世界、『此花朔夜』は恥ずかしながら、妾が境界案内人として案内する初めての異世界じゃ。――おぬしらにとっても、妾にとっても、至極、簡単な依頼を妾達から用意させていただいた」
 サフィラスが書架の行き止まりを、魔力をおびて光る琥珀の杖で、コンコンコンと3回ノックした。すると本が杖で叩いた真ん中かから、クルクルクルと回って、樫の木の扉が現れる。
 扉には、“境界案内人・サフィラスの部屋”と云う意味の言葉が、『崩れないバベル』の自動翻訳効果によって読みとれた。
 サフィラスは「近道じゃ。この事は他の者には秘密じゃぞ」と口元に人差し指を立ててニヤリと笑い、イレギュラーズ達を室内へ招き入れた。

 立ち並ぶ書架には、魔術や魔法の香りが、不思議の気配が漂う。その大部屋には、ヒトをダメにするソファやクッション、寝心地が良さそうな寝台、ぬいぐるみや薬草のポプリなど、様々なものがある種の規則性を持って、雑多にあった。
 サフィラスはこの依頼に参加するイレギュラーズに、「おのおの、好きな場所でくつろいで話の続きを聞いておくれ」と促した。

 サフィラスは床に描かれた魔法陣の上に立ち、境界世界『此花朔夜』と今回の依頼について語る。
「先程も申した通り、境界世界『此花朔夜』は、和風の世界じゃ。時代背景や文化的には、おぬしらがおる混沌世界の『豊穣』と云う国や、日本という国の『江戸時代』、中期から後期ぐらいの感じを有しておる。――じゃが、そこはおぬしらが知る『和風の国』とは、似て非なる異世界の場所じゃ」
 サフィラスは息を継いだ。
「そこでは『此花』と『朔夜』と云う神が崇められており、神の血を引く『帝』と『斎巫女』がおり、祭事を取り仕切る帝の血筋とは別に、政治を司る『幕府』が、神々と帝の血筋を敬いながら、世の中の物事を取り仕切っておる。そして、その幕府の管理下で、民衆はおおらかに、四季を楽しみ、戦争の少ない太平の世を生きておるのじゃ」
 サフィラスは続けて、イレギュラーズに語りかける。
「この境界世界『此花朔夜』には、大きくわけて『昼の世界』と『夜の世界』、二つの世界がある」
 昼と夜の世界は、一つの世界の時間帯で分けられていると、サフィラスは語る。
「そして、この世界に住む種族も大きく分けて二種類じゃ。おぬしら人間種(カオスシード)と一部の旅人(ウォーカー)のような外見の『人間』と、その他の種族のような『アヤカシ』の二種類じゃ」
 人間とアヤカシは、普段は人間は昼の世界、アヤカシは夜の世界と住み分けて暮らしていると云う。
「じゃが、この『花祭り』は別じゃ。人間もアヤカシも入り乱れ、昼夜の世界の境界線が曖昧になる。そこに何が紛れ込んでも、誰も不思議には思わない、とっておきの花見日和じゃ!」
 サフィラスはバサリと依頼スクロールを広げて、イレギュラーズ達に見せた。

「イレギュラーズよ、書物『花咲小道の花招き』より、和風境界世界『此花朔也』の『花咲町』へ行き、そこで催されている春の祭典『花祭り』に参加しておくれ。――この書物の白紙のページは、今回の依頼人であるこの書物の著者、華也野と蓮野がおぬしらイレギュラーズの姿を描く事によって、うまる仕組みになっておる!」
 サフィラスは表情をゆるめて、言葉をしめくくる。
「気楽に遊んでおいで、イレギュラーズ。妾たちからの、春の最初の贈り物じゃ。ゆるりと観光を楽しむが良い」

 そうして魔女は、自身の魔力を宿した琥珀の長杖の石突きを魔法陣に突き立て、境界案内人として、境界世界『此花祭朔也』の『花咲町』へ続く、魔法陣の門を開いたのだった。

NMコメント

 はい。初めてのシナリオを出させていただきました、神寺 柚子陽です。
 長々と4000字程度もあるOPを書きましたが、内容は簡潔に、お花見メインのお祭りイベントシナリオです。観光して下さい。

●内容
 和風ファンタジーな江戸時代風の境界世界、『此花朔也』(このはなさくや、と読みます。)に行き、『観光客』になって、『花祭り』(はなまつり)が行われている、宿場町『花咲町』(はなさきまち)で自由に行動して下さい。

 季節は春。宿場町は桜の花見客と花祭り関連の催し物や見物客で、いつもよりも賑わっています。

ちなみに、この本『花咲く小道の花招き』の作者、NPCの華也野と蓮野は連れだって、花祭りを楽しみながら、絵とお噺を集めています。特に絡まなくても、絡みに行っても構いません。本の作者どもは絡まなくとも、シナリオに参加した皆様の絵姿やお噺を集めて、本のページにします。
気楽に皆様のやりたいことを、やって下さい。


●章構成予定
第一章:昼の部(太陽が沈むまで)
人間達のお祭り風景に、昼も活動できるアヤカシ達が混ざって、花祭りを楽しんでいます。

お陽様の下の桜見物と、人間達の花祭り風景や、江戸時代の宿場町みたいな『花咲町』観光はいかがですか?


第二章:夜の部(日暮れから夜明けまで)
多くの人間達は屋内や安全な処へ引っ込み、アヤカシ達の活動が活発になる時間帯。
アヤカシ達の百鬼夜行の花祭りに、一部のワケ有りな人間や物好きな人間達が仮面をかぶって参加しています。

アヤカシは妖怪、もののけ、精霊、中には神とあがめられるものや、よくわからないもの、人間を食べるものだっていて、何でもアリです。

夜はあぶないから、多くの人間達は夜に出歩きたがりません。

人間達と旅籠(宿屋)などの屋内で過ごすも良し。
屋外に出て、夜桜見物と、アヤカシあやしのあやしい町を体験しに行くも良しです。
夜に屋外に出た場合、身の安全の保証はないです。それでも良ければ、遊びに行ってみて下さい。
もし、運悪くおそろしい目にあったり、アヤカシに食べられても、イレギュラーズは特に問題なく、境界図書館で夢見る眠りから目覚めます。


第三章:花祭りの終わり(夜明け)
花祭りで交わった人間の世界とアヤカシの世界の境界線が、再び分かたれ、住民たちは日常に戻ります。祭りはお開き。

百鬼夜行の親分衆は仲間を連れて帰り、人間達も朝が来たと帰り支度を始めますが、どうにも人間を食い足りねえ、遊びたりねえと唸るアヤカシがいるようで……侍達や腕に覚えがある者たちが警備の為に、アヤカシ討伐へ乗り出します。

人食いアヤカシ相手の簡単な戦闘や、警備を行う侍の手伝い、または花祭りが終わって境界図書館で目覚めるまでのひと時を過ごすというのは、いかがでしょう?

※全体3章構成予定ですが、勿論、どこか1章だけからの参加も歓迎します。どなたもお気軽に、ご参加下さいませ。


●今作の対応可能NPC

・華也野
 『花咲く小道の花招き』の作者。画家。描く能力は凄いが、それ以外はどこか頼りない若い男。いつも幼馴染の蓮野と歳が離れた妹や画壇仲間によく世話を焼かれている。ぽやんとした憎めない性格。
 物心ついた頃から花祭りに惚れ込んでおり、毎年、蓮野を誘って花祭りを観に来ている。

・蓮野
 『花咲く小道の花招き』の作者。噺家。面倒見が良く、気風が良くて、義理堅い、若い男。
 幼い頃は華也野が近所の餓鬼共に虐められれば、身を張って守り、虐めた餓鬼共をブチのめした上で、従えちまうような気持ちの良いガキ大将だった。昔、弱りきっていた時分に、華也野に助けられた事がある。それを差し引いても、華也野の絵が好きで、彼を人間的に好いて、彼を助けている。

●注意点
・ボヤ騒ぎはやめてね?
 江戸時代、火事は大罪、桜を愛でる花祭りだから周りは木と森、住民の住居も木造仕立て。燃え広がりやすいですよ。

・プレイング募集期間、一章につき、1週間程度を予定しております。

・同行者について(合わせプレイング)
 同行者が居る、合わせプレイングの場合は、タグ【】をご使用下さいませ。
 例、【花咲町散策隊】など、プレイングの一番最初の上部にお願いします。


●サンプルプレイング

【花咲町散策隊】
 サフィじゃ。此花朔夜の花咲町で開催されている花祭りに来たは良いが、さて、何をしようかのう。
 とりあえず、花見とやらでもやってみるかのう。妾は桜の花の実物を見るのは、初めてじゃ。昔、或る旅人が桜の花枝の絵を描いて、妾に見せながら思い出話をしてくれた。懐かしいのう。あれは、何十年前、いや何百年前、じゃったかのう? よう思い出せんわ。かかか。
 こうして実物を見れる日が来ようとは、思わなんだ。長生きはしてみるものじゃのう。
やや、坊主、覗き見かのう?
蓮野?
 ははあ、おぬしが例の噺家かのう。やあっと来たのう!待ち人よ。
 なに? 話を聞かせておくれ?
 良いとも! たーっぷり語って聞かせようぞ。妾の話をのう!


【花咲町散策隊】

「初めまして、華也野、と申します。サフィラスさん。お手紙のやり取りを通じて、こうして今日、お会いする事が出来、感無量です!」
 あ、見て下さい! サフィラスさん!! 花祭り行列です!! 僕、子供の頃からあの花祭り行列が好きで、大好きで、毎年見に来て、ここの桜の木の下で、花祭りの写し絵をしているんです! これが僕の成長の記録です。って、わあああああ!? そっちは開けちゃダメです。見ないでくださいよぅ。ぼ、僕の遊女姿絵、見ちゃダメです、そっちは春……あ、あう……///
 え、あ、はい! 片付けましょう。あいつが来る前に。別の話をしましょう。ええ、サフィラスさんは桜についての思い出など、おありですか?


【花咲町散策隊】
 華也野の守りと仕事で来た蓮野だ。で、お前さん、良い噺は持ってンのかい? ひとつ、どうかこの俺に、オメェさんの噺を聞かせちゃ、くれねェだろうか?
 こう見えても俺ぁ、流しの売れっ子噺家でねェ、こうして出会った奴の噺を聞くのも、芸の肥やし、仕事の内、趣味の内ってワケよ。噺をしてくれたら対価に、あっこに並んでる屋台の中から好きなモン、何か1つ、奢ってやるよ。
(顎クイっと屋台を示してニヤリ悪い顔)
どうだい?

行動:
祭り客から噺を集めながら行くから、ちーっと仲間との合流が遅れる。あとはお任せだ。
アドリブ、アレンジ、絡み歓迎!
よろしく頼むぜ。

 火事と喧嘩はつきものだが、今日ばかりはご遠慮願うぜ。

●備考
 この境界世界やオープニング(OP)で出た情報、NPC達について、尋ねられれば情報をお出ししますが、今回はリアルで人間が、花見やお祭り、旅行や観光を楽しむみたいに、イレギュラーズ達に遊んでいただければ、幸いです。

 それでは春の空気と花祭りの雰囲気をお楽しみ下さい。ここまで読んでいただき、誠に有り難うございます。

 それでは、いってらっしゃいませ!

  • 書題名『花咲小道の花招き』 副題名『花祭りへの招待』 著者 画家『華也野』 噺家『蓮野』完了
  • NM名神寺 柚子陽
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年06月15日 14時30分
  • 章数3章
  • 総採用数9人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

ダリル(p3p009658)
勇猛なる狩人

「話を聞くに我がいた世の東の果て、仙や武が集う地すら超えた先にある場とは。くはははは! 面白そう催し物じゃ! 是非とも向かわさせて貰おうかのう!」
 そう意気込んだダリル(p3p009658)は花咲町に転送された。

「ごめんなさい!!」
 侍が刀に手をかけたのを見て、ダリルは即座に土下座した。
「我はまっこと悪しきアヤカシではない。じゃからのう、その刃をちと収めてくれんかえ?」
「笑止! あの高笑いにその容貌は怪しき。悪しきアヤカシに我らが天誅を下す!」
「ご、誤解じゃ! 堪忍してくれ!」
「問答無用!」
 間に割って入った蓮野が、鉄扇で凶刃を弾く。
「野暮だぜ。今日は花祭りだってのに。周りを見な。俺はテメェの度胸、恐れ入る」
 人集りが出来ていた。侍を白い目で見てひそひそ声。どれも侍を批難するものばかり。
「わかったら帰んな。花祭りにテメェのような反アヤカシ派思想の連中はお呼びじゃねえ」
 侍は分が悪いと悟って逃げた。
「災難だったな。大丈夫か?」
「ふぅ、たかが地に頭をこすりつけるだけで誤魔化されるとはまだまだよのう」 
「ハッ、その分なら大丈夫そうだな。そうだおめぇさん、花咲小道の桜並木はもう、見たか?」

 ダリルは桜に見惚れた。
「この花というより樹木はなぜ同じものがこう多く立ち並ぶのか、しかして咲き乱れるは小ぶりの花が多数……」
 舞う桜を掌中に受け止める。
「いやぁ、まっこと美しき。来たかいがあった物じゃ」

成否

成功


第1章 第2節

甘露寺 結衣(p3p008114)

 花咲小道に転送された甘露寺 結衣(p3p008114)は、桜並木の美しさに息を呑んだ。桜の下では人間とアヤカシが入り混じって、和やかに宴会を楽しんでいる。結衣の胸中に郷愁のような想いが立ち込めた。
(この世界は……何だか、居心地が良いです。しばらくここに居たいです)
 胸に当てた手を想いごと握り締める。
 花祭りは明日の朝にはお開きだ。それまでは各自、自由に行動できる。
(江戸時代の中期から後期位だと聞きました……だから、この世界には、色々なお菓子がありそうです)
 結衣はギフトを使い、お菓子を探して花咲町を歩き回る事にした。

「絶対、美味しい……お菓子がある気がします。ありますよね!?」
 拳を握ってお菓子への熱と実家の和菓子屋の噺を華也野と蓮野へ語った末に、結衣は期待を込めて問いかけた。
「ありますよ〜。花祭りは毎年、桜や春を題材にしたお菓子を売るお店が多いみたいです〜。時々、海外やアヤカシ製の珍しいコも販売されていたりして〜……よろしければ僕のオススメ店を紹介しましょうか?」
 結衣の表情が明るく華やいだ。
「……はい! 是非、参りとうございます!」
「じゃあお嬢さん、あなたにこれを差し上げましょう」
 華也野は書き込みした『花咲町 花祭り観光案内絵図』を、紹介状と共に差し出した。
「時間は有限。紹介状がなければ召し上がれない極上の甘味もあります。どうか夜までに訪ねて、魅惑の味をご賞味下さいませ〜」

成否

成功


第1章 第3節

トリーネ=セイントバード(p3p000957)
飛んだにわとり
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞

 花咲小道に転送された『ハンマーガール』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)と『飛んだにわとり』トリーネ=セイントバード(p3p000957)。
「風景が変われば花も雰囲気が変わる。のんびりと散策しましょう、トリーネさん」
「じゃあ私、またアンナちゃんの頭の上に乗って桜が見たいわ!」
「はいはい」
 アンナはトリーネを頭の上に乗せて歩き出す。人々が花見を楽しむ花咲小道を抜けて、太鼓橋から一望できる桜並木と川の流れの絶景を観覧し、人々の流れに沿って此花神を祀るお社の境内に入った。
 境内の中はお社への参拝者と屋台巡りをする者達であふれていた。
 大小や容姿が様々なアヤカシとすれ違う度に、トリーネが目をキラキラさせて「アンナちゃん、見て見て!」とはしゃぐ。アンナも驚きはするが、「混沌にだってそんなのはたくさんいるじゃない」と冷静だ。
「もうっ、そんなこと言わないの! あっ、アンナちゃん! あっちに行って! あっち!」
「やめてっ、髪をついばんで引っ張らないで!」 

 参拝を終えて、貰った桜餅を呑み込んだトリーネはふと上を見た。
「わあ、とっても綺麗ね! 満開ね!」
 桜餅が入ったお祝いの包み袋を鞄にしまっていたアンナも、つられて見た。感嘆の溜め息がもれる。大きく立派な桜の御神木が祀られていた。
「この町の桜は綺麗ね」
「それにこの町には何か見たことない人達がたくさんいるわ、アンナちゃん!」
「アヤカシは昼間に出ているのは比較的温厚なのかしら?」
「わからないけれど、私達が見たアヤカシは人間と仲が良さそうだったわ!」
「……確かにそうね。こうも色々いたら、頭に鶏を乗せていること位は大して目立たないわよね」

 アンナ達は流れに乗って、屋台を巡る。
「ほらほら見て見て、チョウチン? みたいなのが浮かんでる!」
 見ると提灯お化けが客引きをしていた。
「あっちの人は首が長いわ! すごい! 楽しそう!」
 ろくろ首が長い首を伸ばして踊りを披露していた。
 トリーネが騒ぐほど、アンナは自分達を見る視線が増える気がする。
(……目立ってない、わよね?)
「聞いてるアンナちゃん!?」
「はいはい、聞いているわ。でも桜はともかく、アヤカシっぽい貴女が彼らに反応しすぎるのはさすがに不自然だからもう少し大人しくしてて」
「ほらほら、あっちの人もすごいわよ!」
 アンナはトリーネの口に、りんご飴を押し付けた。
「むぐー!」
 トリーネが翼をバタつかせる。
「もしくはさっき買ったりんご飴でも舐めてて」
「あ、これ美味しい。でも翼だと持ちにくい。アンナちゃん持ってて」
「え……舐め終わるまで私、腕を上げっぱなしなの?」
「はむはむ。うまうま。こけー」
(……周囲の目が気になりすぎて桜どころじゃないわ)

「ねぇねぇ、もっと色々買いましょう!」
「いいわ。だけど早々にどこか座れる所を探しましょう」
「よし、今日は食い倒れよー! こけこっこー!」

成否

成功


第1章 第4節

黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家

 『零れぬ希望』黒影 鬼灯(p3p007949)と腕の中の章姫は、此花社の御神木前に転送された。桜吹雪に鬼灯が上を見る。その桜は言葉を失う程に咲き誇っていた。章姫が歓声をあげて手を伸ばす。落ちてきた花を掌中に捕ると、夫に差し出した。
「みてみて鬼灯くん、卯月さんが好きな桜さんなのだわ!」
「章殿も好きな花だな」
 章姫が満面の笑顔で頷く。鬼灯の顔がゆるむ。
「これだけ見事な桜の花、卯月にも見せてやりたかったがそれはまた別の機会に」

 参拝を済ませ町を散策する。
(しかしこの町は俺の元いた世界を彷彿とさせるな。懐かしい)
 折角の花祭り、楽しばねば損というもの。夫婦は呉服と小間物を扱う『亀甲屋』の暖簾をくぐる。
「章殿に似合いの装飾品や衣装に使えそうな反物はないだろうか」
「はい、意匠の御希望は御座いますか?」
「そうだな、桜の花の意匠が望ましい」
「かしこまりました」
 すぐに数十種類の反物と装飾品が用意される。売り子が一つずつ丁寧に取り出して売り口上を述べかけるのを制して。鬼灯は嫁を愛情込めた優しい目で見る。
「章殿どれがいい?」
「鬼灯君が選んでくれるものならなんでも!」
「ふふ、そうだなあ。ならばこの桜の髪飾りはどうだ?」
 鬼灯が手にとって見せる。
「透き通る花弁が美しく陽の光を反射して煌めいている。職人技というやつだな」
「鬼灯くんお願い、つけて」
 鬼灯は願いを聞き、鏡を見せた。
「とても似合っているよ章殿」

成否

成功

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