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シナリオ詳細

書題名『花咲小道の花招き』 副題名『花祭りへの招待』 著者 画家『華也野』 噺家『蓮野』

完了

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オープニング

●境界図書館より、初めまして。花見のお祭りへの招待。

 春爛漫と云う季節の頃に、イレギュラーズのあなたは境界図書館を訪れた。
 ここには混沌とは違う異世界の物語を集めた数多の蔵書がある。この図書館の司書のようなものである境界案内人に頼めば――、或いは境界案内人が紹介する依頼があれば――、イレギュラーズのあなたが気に入った本の境界世界へ行き、その世界を体験する事ができる。
 其れはあなたにとってはひと眠りの夢でも、本として描かれた世界の住人達にとっては、現実の出来事になる。本に描かれた世界は、それぞれが別個、または時々、連なったシリーズものの異世界だ。
 イレギュラーズのあなたにとっても、境界世界での体験は、――例え夢の中の出来事だとしても――、リアルな体験の経験値になるだろう。
 “それ”を知ったあなたは、境界図書館で、自分が気に入る本と依頼を探した。


●書題『花咲小道の花招き』 副題『花祭りへの招待』 著者 画家『華也野』 噺家『蓮野』

 花咲小道(はなさかこみち)と云うは、この陽之本國(ひのもとくに)の『花咲町』(はなさきまち)と云う宿場町に在る花の名所である。
 毎年、春になると『花祭り』(はなまつり)と云う行事が催され、春の訪れと桜花の見頃を祝い、『此花神』(このはなのかみ)を祭る儀式が執り行われる。
 拙(せつ)が友人に、華也野(かやの)と謂う画号の画家、腐れ慣れにし竹馬の友があるが、其奴(そやつ)は餓鬼(ガキ)の時分からこの花祭りが好きで、好きで、たまらなく好いており、毎年、欠かさず拙宅を尋ね、拙を道連れの友に、必ず観覧に行くのである。
 
 この花祭りで華也野と拙が毎年、何をするかは勝手が決まっていて、華也野は好きな絵を描き、拙はこの花祭りに集まった人間やアヤカシ、正体がよくわからん連中などにも混じって、そやつらの噺を集めて記憶し、記録する。

 それを普段は華也野は画壇で発表し、拙、噺家の蓮野は、寄席で大衆に向けて面白おかしく語るのであるが、この度は華也野と拙の合作で、本を創り候て、集めた『花祭り』景色を纏め、世間とやらに発表する事に致した。

 この本の華也野の絵を見て、拙、蓮野の噺を読んで、どこぞの誰か様、あなたが楽しいと思うてくれるならば、著者は幸いである。


 拙からの噺は先ず、『花祭り』の唄から始めよう。

●『花咲く小道の花招き』 伝、花咲町。詠み手知らず。

 花咲く小道に今年も花が咲いた。飲めや歌えや珍道中と人もアヤカシどもも騒ぎ出す。
 花咲く小道に今年も花が咲いた。川の流れに桜の花イカダ、こちらとあちらを繋ぐ朱塗りの太鼓橋。
 サァアッとド派手な袖が舞って、鈴がしゃなり、シャリン、赤い狐の親分が観客に向けて大見得を切る。唄えや踊れ花祭り。

 花咲く小道に今年も花が咲いた。親分に続くは笛吹き乙女狐の三人官女、芸妓、花魁の花盛り。社への道行きを桜花が彩る花祭り。

 美しや、まるで桃源郷。
 朱塗りの太鼓橋に行けば、橋の上を道行く花魁道中が、さっと狐面、おかめめん、鬼面、兎面、ひょっとこ面をとって、見得を切る。

 狐面は流し目、艶やかに。
 おかめ面は福よ来たれと笑い。
 鬼面は粋に女伊達。
 兎面は恥じらい琵琶をかき鳴らし。
 ひょっとこ面は音に合わせて楽しげに舞う。
 
 道中が社へ道行けば、花祭り本番、花咲町は賑わい、楽しき花宴。

 サアサ、寄ってらしゃい、見てらっシャアイ。店売りの掛け声、威勢よく楽しげに。

 道行く人もアヤカシも、昼と夜の垣根を越えて、一緒に祝う。今日は楽しい花祭り。
 
 花咲く小道に花が咲いたら花祭り。
 昼も夜も楽しめ、花よ。人よ。アヤカシどもよ。花が咲いたら花祭り、夜が明けたらお終いだ。花祭り、花祭り。


●境界図書館より、花見の誘い企画。

 その『花咲小道の花招き』は、華也野の絵が主体の画集のような本だった。華也野の絵に添えるように、蓮野の詞書きのような噺が、彼の達筆な墨走りの筆使いで記されている。
 ――そしてこの本は、絵と噺の連なりの終わりまで見て読んでも、まだ終わりではない。不思議な事に空白の白いページがまだまだたくさんあるまま、綴られた本だった。

 あなたは何故だろうと思った事だろう。
 この本が気に入り、この疑問を持ったイレギュラーズのあなたはこの本を持って、この本を案内してくれる、担当の境界案内人を探した。


●境界世界『此花朔夜』、担当の境界案内人は、サフィラス=ウィータエ・アエテルナエ 

 そのヒトは、琥珀の長杖をついて、サラサラと衣擦れの音をさせながら、滑るように現れた。まろい褐色の肌に魔力を湛えた白銀の髪、長身で性別不明の、なんとも不思議な出で立ちをしたヒトだった。
 先ず目に入ったのは、白いローブと群青色のホルターネックワンピースに、灰雪色の袴を重ねたような服装。まるで魔法使いかなにかのようである。さらに極めつけに目を引いたのは、顔の上半分を覆い隠す目隠しである。黒地に金色の装飾模様のそれは、一種、魔術的に見えた。白銀の髪を留める金色の精緻なカチューシャが、光を反射して鈍くきらめく。

 そのヒトは境界図書館の本を手にしたイレギュラーズを、見える筈がない目で、つと見た仕草をして、あなたの前に立ち止まった。そのヒトは、白いローブの袖先をぴんと張って持ち、琥珀の長杖を握り直すと、片足を引くお辞儀をした。

「よう来なさったのう、イレギュラーズや。この妾がその本、『花咲小道の花招き』の境界世界、『此花朔夜』の案内を担当する境界案内人、流転の魔女、サフィラス=ウィータエ・アエテルナエじゃ。――妾の事は、境界案内人のサフィラス、またはサフィと、妾の顔と名前を覚えてくれると嬉しいのう。以後、お見知りおきをよろしくのう、イレギュラーズ」

 にこりと微笑んで、サフィラスは本とイレギュラーズの願いを受け取った。

「ほう。ならばこの妾が境界世界への道を案内してしんぜよう、ついて参れ、イレギュラーズ。異世界への入り口には、相応しき場所というものがあるものじゃ。道々、これからおぬしらに向かってもらう予定の異世界『此花朔夜』と、妾が案内する依頼について、説明しよう――」

 サフィラスはイレギュラーズを呼び集めながら、自分が境界案内人として所有する領域へと案内した。

「今回、妾がおぬしらに行って欲しい事は、和風の境界世界、『此花朔夜』の『花咲町』と云う宿場町にて開催される、『花祭り』と云う、『春を言祝ぐフェスティバル』への参加じゃ。――つまりは『観光』じゃのう」
「観光!?」
 イレギュラーズの1人が飛び跳ねた。
「うむ。そうじゃ。これから行く境界世界、『此花朔夜』は恥ずかしながら、妾が境界案内人として案内する初めての異世界じゃ。――おぬしらにとっても、妾にとっても、至極、簡単な依頼を妾達から用意させていただいた」
 サフィラスが書架の行き止まりを、魔力をおびて光る琥珀の杖で、コンコンコンと3回ノックした。すると本が杖で叩いた真ん中かから、クルクルクルと回って、樫の木の扉が現れる。
 扉には、“境界案内人・サフィラスの部屋”と云う意味の言葉が、『崩れないバベル』の自動翻訳効果によって読みとれた。
 サフィラスは「近道じゃ。この事は他の者には秘密じゃぞ」と口元に人差し指を立ててニヤリと笑い、イレギュラーズ達を室内へ招き入れた。

 立ち並ぶ書架には、魔術や魔法の香りが、不思議の気配が漂う。その大部屋には、ヒトをダメにするソファやクッション、寝心地が良さそうな寝台、ぬいぐるみや薬草のポプリなど、様々なものがある種の規則性を持って、雑多にあった。
 サフィラスはこの依頼に参加するイレギュラーズに、「おのおの、好きな場所でくつろいで話の続きを聞いておくれ」と促した。

 サフィラスは床に描かれた魔法陣の上に立ち、境界世界『此花朔夜』と今回の依頼について語る。
「先程も申した通り、境界世界『此花朔夜』は、和風の世界じゃ。時代背景や文化的には、おぬしらがおる混沌世界の『豊穣』と云う国や、日本という国の『江戸時代』、中期から後期ぐらいの感じを有しておる。――じゃが、そこはおぬしらが知る『和風の国』とは、似て非なる異世界の場所じゃ」
 サフィラスは息を継いだ。
「そこでは『此花』と『朔夜』と云う神が崇められており、神の血を引く『帝』と『斎巫女』がおり、祭事を取り仕切る帝の血筋とは別に、政治を司る『幕府』が、神々と帝の血筋を敬いながら、世の中の物事を取り仕切っておる。そして、その幕府の管理下で、民衆はおおらかに、四季を楽しみ、戦争の少ない太平の世を生きておるのじゃ」
 サフィラスは続けて、イレギュラーズに語りかける。
「この境界世界『此花朔夜』には、大きくわけて『昼の世界』と『夜の世界』、二つの世界がある」
 昼と夜の世界は、一つの世界の時間帯で分けられていると、サフィラスは語る。
「そして、この世界に住む種族も大きく分けて二種類じゃ。おぬしら人間種(カオスシード)と一部の旅人(ウォーカー)のような外見の『人間』と、その他の種族のような『アヤカシ』の二種類じゃ」
 人間とアヤカシは、普段は人間は昼の世界、アヤカシは夜の世界と住み分けて暮らしていると云う。
「じゃが、この『花祭り』は別じゃ。人間もアヤカシも入り乱れ、昼夜の世界の境界線が曖昧になる。そこに何が紛れ込んでも、誰も不思議には思わない、とっておきの花見日和じゃ!」
 サフィラスはバサリと依頼スクロールを広げて、イレギュラーズ達に見せた。

「イレギュラーズよ、書物『花咲小道の花招き』より、和風境界世界『此花朔也』の『花咲町』へ行き、そこで催されている春の祭典『花祭り』に参加しておくれ。――この書物の白紙のページは、今回の依頼人であるこの書物の著者、華也野と蓮野がおぬしらイレギュラーズの姿を描く事によって、うまる仕組みになっておる!」
 サフィラスは表情をゆるめて、言葉をしめくくる。
「気楽に遊んでおいで、イレギュラーズ。妾たちからの、春の最初の贈り物じゃ。ゆるりと観光を楽しむが良い」

 そうして魔女は、自身の魔力を宿した琥珀の長杖の石突きを魔法陣に突き立て、境界案内人として、境界世界『此花祭朔也』の『花咲町』へ続く、魔法陣の門を開いたのだった。

NMコメント

 はい。初めてのシナリオを出させていただきました、神寺 柚子陽です。
 長々と4000字程度もあるOPを書きましたが、内容は簡潔に、お花見メインのお祭りイベントシナリオです。観光して下さい。

●内容
 和風ファンタジーな江戸時代風の境界世界、『此花朔也』(このはなさくや、と読みます。)に行き、『観光客』になって、『花祭り』(はなまつり)が行われている、宿場町『花咲町』(はなさきまち)で自由に行動して下さい。

 季節は春。宿場町は桜の花見客と花祭り関連の催し物や見物客で、いつもよりも賑わっています。

ちなみに、この本『花咲く小道の花招き』の作者、NPCの華也野と蓮野は連れだって、花祭りを楽しみながら、絵とお噺を集めています。特に絡まなくても、絡みに行っても構いません。本の作者どもは絡まなくとも、シナリオに参加した皆様の絵姿やお噺を集めて、本のページにします。
気楽に皆様のやりたいことを、やって下さい。


●章構成予定
第一章:昼の部(太陽が沈むまで)
人間達のお祭り風景に、昼も活動できるアヤカシ達が混ざって、花祭りを楽しんでいます。

お陽様の下の桜見物と、人間達の花祭り風景や、江戸時代の宿場町みたいな『花咲町』観光はいかがですか?


第二章:夜の部(日暮れから夜明けまで)
多くの人間達は屋内や安全な処へ引っ込み、アヤカシ達の活動が活発になる時間帯。
アヤカシ達の百鬼夜行の花祭りに、一部のワケ有りな人間や物好きな人間達が仮面をかぶって参加しています。

アヤカシは妖怪、もののけ、精霊、中には神とあがめられるものや、よくわからないもの、人間を食べるものだっていて、何でもアリです。

夜はあぶないから、多くの人間達は夜に出歩きたがりません。

人間達と旅籠(宿屋)などの屋内で過ごすも良し。
屋外に出て、夜桜見物と、アヤカシあやしのあやしい町を体験しに行くも良しです。
夜に屋外に出た場合、身の安全の保証はないです。それでも良ければ、遊びに行ってみて下さい。
もし、運悪くおそろしい目にあったり、アヤカシに食べられても、イレギュラーズは特に問題なく、境界図書館で夢見る眠りから目覚めます。


第三章:花祭りの終わり(夜明け)
花祭りで交わった人間の世界とアヤカシの世界の境界線が、再び分かたれ、住民たちは日常に戻ります。祭りはお開き。

百鬼夜行の親分衆は仲間を連れて帰り、人間達も朝が来たと帰り支度を始めますが、どうにも人間を食い足りねえ、遊びたりねえと唸るアヤカシがいるようで……侍達や腕に覚えがある者たちが警備の為に、アヤカシ討伐へ乗り出します。

人食いアヤカシ相手の簡単な戦闘や、警備を行う侍の手伝い、または花祭りが終わって境界図書館で目覚めるまでのひと時を過ごすというのは、いかがでしょう?

※全体3章構成予定ですが、勿論、どこか1章だけからの参加も歓迎します。どなたもお気軽に、ご参加下さいませ。


●今作の対応可能NPC

・華也野
 『花咲く小道の花招き』の作者。画家。描く能力は凄いが、それ以外はどこか頼りない若い男。いつも幼馴染の蓮野と歳が離れた妹や画壇仲間によく世話を焼かれている。ぽやんとした憎めない性格。
 物心ついた頃から花祭りに惚れ込んでおり、毎年、蓮野を誘って花祭りを観に来ている。

・蓮野
 『花咲く小道の花招き』の作者。噺家。面倒見が良く、気風が良くて、義理堅い、若い男。
 幼い頃は華也野が近所の餓鬼共に虐められれば、身を張って守り、虐めた餓鬼共をブチのめした上で、従えちまうような気持ちの良いガキ大将だった。昔、弱りきっていた時分に、華也野に助けられた事がある。それを差し引いても、華也野の絵が好きで、彼を人間的に好いて、彼を助けている。

●注意点
・ボヤ騒ぎはやめてね?
 江戸時代、火事は大罪、桜を愛でる花祭りだから周りは木と森、住民の住居も木造仕立て。燃え広がりやすいですよ。

・プレイング募集期間、一章につき、1週間程度を予定しております。

・同行者について(合わせプレイング)
 同行者が居る、合わせプレイングの場合は、タグ【】をご使用下さいませ。
 例、【花咲町散策隊】など、プレイングの一番最初の上部にお願いします。


●サンプルプレイング

【花咲町散策隊】
 サフィじゃ。此花朔夜の花咲町で開催されている花祭りに来たは良いが、さて、何をしようかのう。
 とりあえず、花見とやらでもやってみるかのう。妾は桜の花の実物を見るのは、初めてじゃ。昔、或る旅人が桜の花枝の絵を描いて、妾に見せながら思い出話をしてくれた。懐かしいのう。あれは、何十年前、いや何百年前、じゃったかのう? よう思い出せんわ。かかか。
 こうして実物を見れる日が来ようとは、思わなんだ。長生きはしてみるものじゃのう。
やや、坊主、覗き見かのう?
蓮野?
 ははあ、おぬしが例の噺家かのう。やあっと来たのう!待ち人よ。
 なに? 話を聞かせておくれ?
 良いとも! たーっぷり語って聞かせようぞ。妾の話をのう!


【花咲町散策隊】

「初めまして、華也野、と申します。サフィラスさん。お手紙のやり取りを通じて、こうして今日、お会いする事が出来、感無量です!」
 あ、見て下さい! サフィラスさん!! 花祭り行列です!! 僕、子供の頃からあの花祭り行列が好きで、大好きで、毎年見に来て、ここの桜の木の下で、花祭りの写し絵をしているんです! これが僕の成長の記録です。って、わあああああ!? そっちは開けちゃダメです。見ないでくださいよぅ。ぼ、僕の遊女姿絵、見ちゃダメです、そっちは春……あ、あう……///
 え、あ、はい! 片付けましょう。あいつが来る前に。別の話をしましょう。ええ、サフィラスさんは桜についての思い出など、おありですか?


【花咲町散策隊】
 華也野の守りと仕事で来た蓮野だ。で、お前さん、良い噺は持ってンのかい? ひとつ、どうかこの俺に、オメェさんの噺を聞かせちゃ、くれねェだろうか?
 こう見えても俺ぁ、流しの売れっ子噺家でねェ、こうして出会った奴の噺を聞くのも、芸の肥やし、仕事の内、趣味の内ってワケよ。噺をしてくれたら対価に、あっこに並んでる屋台の中から好きなモン、何か1つ、奢ってやるよ。
(顎クイっと屋台を示してニヤリ悪い顔)
どうだい?

行動:
祭り客から噺を集めながら行くから、ちーっと仲間との合流が遅れる。あとはお任せだ。
アドリブ、アレンジ、絡み歓迎!
よろしく頼むぜ。

 火事と喧嘩はつきものだが、今日ばかりはご遠慮願うぜ。

●備考
 この境界世界やオープニング(OP)で出た情報、NPC達について、尋ねられれば情報をお出ししますが、今回はリアルで人間が、花見やお祭り、旅行や観光を楽しむみたいに、イレギュラーズ達に遊んでいただければ、幸いです。

 それでは春の空気と花祭りの雰囲気をお楽しみ下さい。ここまで読んでいただき、誠に有り難うございます。

 それでは、いってらっしゃいませ!

  • 書題名『花咲小道の花招き』 副題名『花祭りへの招待』 著者 画家『華也野』 噺家『蓮野』完了
  • NM名神寺 柚子陽
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年06月15日 14時30分
  • 章数3章
  • 総採用数9人
  • 参加費50RC

第2章

第2章 第1節

●第二章【夜桜と百鬼夜行の宴】

 料亭旅館『春霞』の二階の一室『緑葉の間』、ここに華也野と蓮野は泊まっていた。

「月が綺麗だねぇ」
 蓮野は風呂上がりに足を組んで酒を呑みながら、障子戸の窓枠に座って外の景色を眺める。
「なあ、おめぇさんもそう思わないかい?」
 問いかけに、花祭りを題材に描いた絵の整理をしていた華也野が手を止めて、幼馴染の友を見る。
「ええ、月と夜桜の組み合わせは綺麗ですよねえ。僕は絵を描く以外に才が無いので、百鬼夜行が出る花祭りの夜のお出かけは、遠慮したいですけれども……蓮野は、今年も行くのでしょう? アヤカシ市と見回りへ」
 華也野の心配するような表情に、蓮野はカラリと笑ってみせる。
「はんっ、あたぼうよ。この花霞の親父や方々にも来てくれって頼まれてっからな。この酒が尽きて、酒が抜けたら出る」
 華也野は手元の絵に視線を落とした。
「それまでに今年は何人、犠牲になるでしょうか?」
 華やかで和やかな人間達の花祭りと違って、アヤカシ達の花祭りは妖しく、時に凄惨な事件が起きる事もある。火の灯りが多い場所では危険は少ないだろうが、暗がりに入ってしまえば、ーー何があるかわからない。夜の暗がりの中では、人もアヤカシも用心する事に越した事はないのだから。
(心配するのは当たり前でしょう)
 蓮野はくつくつと笑って、カラになった酒瓶を置く。
「でぇじょうぶだろ? アヤカシに喰われたって花祭りの間は、此花社の奥に常駐されてる斎宮の姫巫女様が、なんとかしてくれらァ」
「だといいのですが……こう、何やら胸騒ぎがするのです。今年は常と違うような……」
「気のせいだろ。例年通りの事しか起きやしねえよ」
「そう、ですね……」
「華也野。アヤカシはアヤカシを喰い、人も傷つける事もあるが、そうじゃねえやつだっている。人間だってそうさ。むしろ人間の方が、何だって喰うし傷つけるじゃねえか。逆に良いやつだってたくさんいる。――要はな全部個性だ。そいつ次第だ。こっちが気をつけて、対応を間違わなきゃあ、大抵の場合はなんとかなる!」
「そういうものですか?」
「そうだぜ? とにかく危ないやつにあったら、俺も戦わずに逃げ帰ってくるから、安心して待ってろって話だ!」
「ふふっ、そうですね。ならばあなたのご武運を祈って、ここで絵を描きながら、あなたのお帰りをお待ちしております」
「おう」
 夜も更けた。アヤカシの花祭りは夜中が本番だ。これからどんどんアヤカシ達が出てくる。何組もの百鬼夜行がこの花咲町に集まって、何が起こるかわからない。
(今宵はどんな噺が起きるかねえ? 楽しみで仕方ねえぜ!)
 蓮野は外出着に着替え、武装する。腰に刀を差し、体の至るところに仕込みをして、頭に鉢金を巻いて、最後に白狐面を着けた。
「いってくるぜ。体を壊さねえように早めに寝ろよ?」
「わかっていますよ。もう子供じゃありませんって!」
「じゃあな」
 蓮野は華也野に手を振って部屋を出て行った。

 華也野が窓の下を見ると、仮面と武装をした見回りの警備団が集まっていた。そこに蓮野が合流した。
 火打ち石を打ち鳴らした。旅籠通りのあちこちから同じように火打ち石を打ち鳴らす音が聞こえる。空を見上げれば月に叢雲、桜吹雪と百鬼夜行。花咲町に各地からアヤカシが集まってきている。春の夜は肌寒い。華也野は窓を締めた。

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●NMコメント2
 はい、上記はフレーバーの物語です。
 第一章に参加して下さった方々、改めてご参加有り難うございます。
 ここからは第二章【百鬼夜行と夜桜の宴】、始めさせていただきます。
 第二章は最大、第4節〜第8節くらいでの終了を予定しております。
 プレイング受け付け期間は1週間程度を目安に受け付けて、順次、リプレイを返却していきます。
 第一章から引き続き第二章に参加して下さる方、この第二章へ新規に参加して下さる方、どちらも歓迎します。この長いOPを見て、参加して下さるだけでも私は有り難い。


 さて、第二章の説明に移ります。
 作中の時間軸は、日暮れから夜明け前までの夜。
第二章のスタート地点(境界案内人サフィラスが魔法陣で送る、イレギュラーズの転送先)は、料亭旅館『花霞』です。

【行き先】
 第二章は行き先のパートが二手に別れます。
 ①は料亭旅館『花霞』でお泊りして過ごすパート。

 料亭旅館『花霞』は、華也野と蓮野が毎年泊まる定宿です。料亭旅館『花霞』は今回、常連である彼らの依頼を受けて、宿のお部屋をいくつか用意し、イレギュラーズ達を受け入れてくれます。
 この宿屋で何をするかは皆様の案次第。イベントシナリオ感覚でご自由に決めて下さって構いません。

②は夜の外出パート。
 夜桜と百鬼夜行見物、不思議なものを売るアヤカシ市(屋台)巡り、戦闘、怪談、何でもアリです。
 こちら②のパートに行かれる方には、御希望の際、桜模様の花提灯とお面が貸し出されます。

 今回は第一章の結果を受けて、花咲町の簡単なイメージ地図をご用意させていただきました。

●花咲町付近、簡易地図1
■=木(ほぼ桜)、建物、障害物
□=道、広場
太鼓橋を渡れば、花咲町(簡易マップ2)

  北
  ↑
西← →東
  ↓
  南

■■■■■■■■■■■■■|■|□□□|
■■■花咲山■■■■■■■|■|□□□|
■■■■■■■■■|□□□|■|□□□|
■■■|■■■|■|□□□|□|太鼓橋|
■■■|■花■|■|□花□|■|□□□|
■花■|□咲□|桜|□咲□|桜|□花□|
■咲■|□観□|並|□小□|並|□咲□|
■山■|□音□|木|□道□|木|□川□|
■■■|■堂■|■|□□□|■|□□□|
■■■|■■■|■|玄関口|■|□□□|


●花咲町、簡易地図2
■=木、建物、障害物
□=道、広場

■|□□□|■■■|□■■■■□■■■■
■|□□□|■□■|□神楽舞台□|社|■
■|□□□|■□■|□■■■■□|務|森
□|□□□|□□□|□□□□□□|所|■
桜|□大□|■旅■|□■□|■■■■|■
並|□通□|■籠■|□□□|■本殿■|■
木|□り□|■通■|□■□|■■■■|■
■|□□□|■り■|□□□□□□□□|■
■|□□□|■□■|□□屋台通り□□|■
■|□□□|■■■|□□□□□□□□|■

 花咲町は、だいたいこんな感じのイメージの町です。

●場所紹介
・本殿=此花神を祀るお社。近くに桜の御神木がある。
・神楽舞台=善系のアヤカシと人間の巫女が神様に奉納を捧げている。
・社務所=困った時はここへ。神職の方が常駐している。
・屋台通り=アヤカシ市=アヤカシ達が屋台で市を開いているところ。普通の商品の他に、アヤカシ製の不思議な商品やアヤシゲな物も売られている。
・旅籠通り=料亭旅館『花霞』がある区画。夜遅くなると窓から空飛ぶアヤカシや、大通りの百鬼夜行パレエドが視える。人間達が多く居る。
・花咲小道周辺=桜の名所。アヤカシ達が多くたむろする。
・お寺。通称『花咲観音堂』=アヤカシの花祭りの中心地。かがり火がたかれて、多くの百鬼夜行が集う場所。たぬきの住職やら何やらが人を化かす事は有名。現地の人間達はこの寺と花咲山のアヤカシを恐れて、夜は無闇に近づかない。
・花咲山=別名、桜山。山一面の桜が絶景。アヤカシが多く隠れ住む。昼は寝ていた人間にとって危険な大アヤカシ達も、夜は起きて花祭りに参加している。

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 第二章のオープニングと説明は以上です。
 それでは第二章【夜桜と百鬼夜行】、始めます。よろしくお願いします。


第2章 第2節

黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家

 黒影 鬼灯(p3p007949)は依頼連絡に来た華也野に答えた。
「夜桜見物も悪くないが異世界にきて章殿を危険な場所へ連れ出す気にはなれん。――俺の部下たちがいるなら兎も角、な」
 その台詞には章姫への愛情と、彼が率いる忍衆『暦』の部下に対する信頼と誇りがこもっていた。
 その後、華也野の案内を受けた鬼灯と章姫は料亭旅館『花霞』に宿泊する事にした。通された客室は『花暦の間』、その名の通り、花暦を題材に意匠を凝らした個室だ。

 鬼灯に体を綺麗にして貰った章姫は、夫から貰った桜の髪飾りをつけて、宿の浴衣に着替えた。先程から章姫は畳の上にちんまりと座って、夢中で何かをしている。畳に散らばるのは何かの札とそれを納めていた箱か。章姫は手に持った札をじっと見る。
 鬼灯は章姫の傍に座って問いかけた。
「何をなさっているのだ? 章殿」
 章姫は夫に無邪気に甘える顔で、手元の札を見せた。
「とっても綺麗なお札なのだわ! これはなあに?」
「何かと思えば花札か。これは役を作って遊ぶんだよ」
「そうなのねぇ」
(確かに花札の絵は色鮮やかで美しいからな、章殿も気に入ったのだろう)
「どの札が章殿は好きだ?」
「これ!」
 章姫が札を指差す。
(ふむ……桜、桔梗、菊に雨?)
「花は予想通りだが雨は意外だな……何故だ?」
「神無月さんに似ているのだわ! それにカエルさんが可愛いのだわ!」
「ふふ、確かに神主姿の彼に似ているかもしれないなあ」

成否

成功


第2章 第3節

ダリル(p3p009658)
勇猛なる狩人

「ほうほう、今宵はまた面白き市が開かれているのであるか。ならば行かねばならんのう! 楽しみじゃ!」
 ダリル(p3p009658)は依頼案内を聞くと、好奇心を疼かせて何も持たずに宿から出ようとした。
「あ、……」
 忘れものを思い出して振り返る。
「絡まれても大丈夫なように灯りと面を用立てては貰えんけ?」
 華也野はふっと相好を崩す。
「いいですよ。気をつけていってらっしゃいませ」
 彼はダリルに切り火のまじないをして送り出した。
 天狗面を着けたダリルは花提灯で足元を照らす。光の桜の結界が地面に浮き上がった。空は月明かりに妖しく桜が咲き誇り、花が舞い散る。
「ふむ。昼にも見たが、我としては今この暗き時に淡く咲く桜が良いな」
(宿から見える物でも中々良い、通りや山に満ちる物はなお壮観であろうな)
「ま、それより今宵は市じゃ市。急ぎ向かおうぞ!」

 ダリルは怪しい市を好奇心に足どり任せて巡る。
「堕天のコ、いいモノがあるよォ」
 わくわく覗き見たダリルは驚いた。壺の中で管狐が蠢く。
「ほうほうほう!!! 東の果てに伝わっていたという物よ! いや見慣れぬからこそ、こういう物はとても良いであるな!」
「ヒヒヒ、お安くしとくよぉ?」
「まぁ駄賃も無い故冷やかしとしてであるがな! 店主よすまぬぞ!」
 ダリルは逃げた。
「しかしまぁ人の賑わいも多いのう、それだけ栄えているという事。此処を治める主とやらは腕が良き事は確かであるな」

成否

成功


第2章 第4節

辻岡 真(p3p004665)
旅慣れた

 祭り囃子が聞こえる夜の花咲町。出店された屋台は数多く、この居酒屋のおでん屋台もその内の一件。片目に傷跡がある大きい黒兎の大将とおでんの匂いに誘われて、【旅慣れた】辻岡 真(p3p004665)はここで呑んでいた。
「あぁ、良いお酒だねぇ、たーいしょ。もう一杯頼むよ」
「兄ちゃんよく呑むねえ。そんなに呑んで後は大丈夫か?」
 真は酒気で頬を赤らめ、にへらーと笑み崩れる。手をひらひら横に振った。
「あぁ、へーき、へーき」
 ぐでーと腕を伸ばして台の上に伸び、指先で空になった盃を台の上で回して弄ぶ。
「お酒は呑んでも昔から悪酔いだけはしねえのよ。笑い上戸にはなるけれどねー。ねぇ、おっちゃんは毎年ここで屋台してるの?」
「あぁ、もう二十年になるな」
「へえ?」
 徳利から霞がかった金色の気を帯びた酒が注がれる。
「兎月の酒だ」
「これは月見酒ってわけかい? 桜と月が浮かんで見える。風流だねえ」
 盃を両手の指先で抱えて口づける。甘口で呑みやすい。
「ごめん」
 猫又を腕に抱えた狸僧侶が暖簾を潜って入ってきた。
「なーご」
 猫又が真の膝に跳び乗って丸くなる。
「あっ、おまえこら!」
「構わまいさ。好きにさせておやりよ。ここは春の夜とはいえ、まだ肌寒いからねえ、丁度いい温もりだよ」
 真は猫又を抱き上げて、よーしよーしと慣れた仕草で可愛がる。
「うちのがすまないねえ旦那」
「なら一杯付き合っておくれ。一人酒が嫌になった」
「喜んで」

成否

成功

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