シナリオ詳細
再現性東京2010:見習い騎士と学園生活
オープニング
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「―――ッ、此処が……希望ヶ浜……!」
息呑んだイル・フロッタは天義とは大きくかけ離れた文化に――自身の『父』にとっては馴染みのある練達に足を踏み入れた。
事の始まりは希望ヶ浜学園に遊びに行こうという誘いであった。学園も丁度春休み、いつもは学生でにぎわう校舎内もしんと静まり返っている。
天義の復興も滞りなく、アドラステイアの動きは気になるがイルは毎日を充実して過ごしていた。
さて、「遊びに行こう」と誘ったのはスティア・エイル・ヴァークライト (p3p001034)である。丁度、リンツァトルテ・コンフィズリーが休暇を貰ったという情報がどうした事かスティアの耳に入った。
此の儘では過労で倒れてしまうと心配した聖騎士たちにより突然の休暇を与えられたリンツァトルテは明らかに手持ち無沙汰であった。
「――という訳で、行こう! 学園に夜妖が現れて大変なの!
倒すためには目一杯学園生活を楽しまないといけないんだって!」
「そ、そうなのか!? 往こう!」
「さすがイルちゃん優しいなぁ!」
そんな勢いで言うスティアと勢いで快諾するイルにサクラ (p3p005004)はちょっと待ったをかけたが――今は希望ヶ浜学園前に揃っている。
長旅ではあったが春の休暇に栄えた他の国家を見に行くのは悪い事ではないと考えたらしい。
「……凄いな」
「はい。天義とはまるで違います」
驚く二人の前に「お客様というのはこのお二人ですか?」と声を掛けたのは音呂木・ひよのであった。
再現性東京は『練達』内に存在する東京をイメージして作られた都市である。その文明レベルは現代日本と称されるほどではあるが、天義で騎士をしているイルとリンツァトルテにとっては馴染みのないものなのだろう。
「さて、スティアさんから(口裏合わせて)話を聞いているかと思いますが、此処ではモンスターの事は『悪性怪異:夜妖』と呼びます。
幽霊的な存在であったり、精霊の様なものであったり……まあ、そういうモンスターが居ると考えていただければ幸いです。
今回学園に現れた夜妖は学園生活を目いっぱい楽しまねばならないというもの……(嘘)。
丁度、天義の騎士様がいらっしゃるという事なので、これはお願いするしかないと考えていました」
ひよののぺらぺらと回る口には嘘が含まれていることをサクラは知っている。
これは、イルとリンツァトルテ先輩に楽しい学園生活を送ってほしいというスティアの『心遣い』なのである。
「――と、いう訳で夜妖を倒してほしいのです。レッツ、学園生活!」
とても雑な導入からひよのはえいえいおーと拳を掲げた。彼女は今回はサポーターであるらしい。困ったら協力しますとaPhoneを貸与してくれた巫女は心の底から愉快であるような笑みを浮かべていた。
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イル・フロッタは天義の聖騎士見習いである。人間種と旅人のハーフであり、本人はそれより『本来の現地の民ではない』事に悩んでいたこともある。
騎士となりたい彼女は、断罪や正義の遂行を疑問に思う様な非常に人間らしい少女だった。
そんな彼女が片思いをしている相手こそがリンツァトルテ・コンフィズリーその人だ。
コンフィズリーと言えば『不正義』とされた家門である。嘗ての天義の大戦の際にその汚名を注ぎ、今は聖騎士として国家の復興に尽力しているそうだ。
そんなイルの恋をちょっぴり応援したいスティア。
折角の春休み、そして希望ヶ浜の春の到来を目いっぱい楽しみたいという気持ちも大きい。
幸いにしてひよの達も手伝ってくれるらしい。
オリエンテーションの気持ちで希望ヶ浜を楽しんでみようではないか。
学園の中を探検して見たり、街へ出てクレープを食べたり……なんだって溢れているから。
「行こうよ、イルちゃん!」
微笑んだスティアはきっと楽しいよ、と微笑んだ。
- 再現性東京2010:見習い騎士と学園生活完了
- GM名夏あかね
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年04月12日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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練達は再現性東京、2010街の希望ヶ浜――天義より遠く離れたその場所までリンツァトルテを引っ張ってくるお膳立てを整える。親友の行動力には驚かされることばかりだと『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)は息を飲んだ。イル・フロッタならば少しの誘いでもほいほいと応じてくれそうなイメージはあるがリンツァトルテは実直な騎士だ。そうも簡単に国を離れてはくれなかっただろう。
(ううん、折角スティアちゃんが作ったチャンス! ものにしないとね!)
――そう、『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)には密やかでもない大いなる計画が存在して居たのだ。
折角の学園生活。強敵を目の前にしたイルとリンツァトルテ。そのお膳立てをばっちり行ったスティアは自慢げである。
(イルさんとリンツァさんの進展を応援、それもさり気なく……という難しいミッションもあるけど。
僕は希望ヶ浜で過ごした経験はあまりない。学園生活を体験できる所は少し新鮮だな)
希望ヶ浜での学園生活を楽しみにするマルク・シリング(p3p001309)に課せられた試練とは『イルとリンツァトルテの恋の進展を応援する』事なのだった。
「よくわからないですけど、イル様がリンツァトルテ様ともっと仲良くなれるようにがんばる、ということですね?
では、ニルもお手伝いがんばります。ところで恋って甘酸っぱいと聞きました。おいしいのでしょうか?」
こてんと首を傾げた『はらぺこフレンズ』ニル(p3p009185)に「甘酸っぱくて、胸の奥が一杯になると言われているな」と『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は頷いた。『恋の応援企画・学園編』と名付ければ俄然面白さがアップするというもので。
「ほうほう、これは気の利いた休暇計画ですね。二人の進展を狙いつつ、私も何かしましょうか。
ちょうど練達の……再現性都市が保持する甘いものの知識には興味があったところです」
『ホワイトウィドウ』コロナ(p3p006487)も二人の進展にプラスして興味のある甘味処を回る計画を立てていた。
「なるほど。経験豊富な私から見ても、これは中々に厄介な夜妖(コイバナ)だ」
成程成程と頷いてaPhoneで綾敷なじみの予定を確認していた『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は大きく頷いた。
スティアに手を引かれて慌てた様子で姿を見せたイルとその後ろをゆっくりと歩いてくるリンツァトルテに気付いてから、再現性東京風の衣裳に身を包んだ汰磨羈は歩き出す。
「――という訳で。早速、思いっきり楽しんでみようか☆」
くるっと振り返って舌をぺろっと見せてサムズアップ。今日の汰磨羈――いや、『たまちゃん先生』はお茶目である。
「レッツ、学園生活っ! ――って事で、学園案内なら花丸ちゃんとひよのさんにマルっとお任せっ!」
ぴーすぴーすとふんすとして見せた『はなまるぱんち』笹木 花丸(p3p008689)に「私もですか?」とひよのが問い掛ける。
「ひよのさんに学園案内……もとい、学食の事を教えてもらってた頃が何だか懐かしいや。
あの頃よりは花丸ちゃんも学園の事に関しては詳しくなった心算だけど、それでもひよのさんの方がまだまだ詳しいだろうしサポート宜しくね、ひよのさんっ!」
仕方ありませんねと微笑んだひよのに花丸はにんまりと笑みを見せてからくるりと振り向いた。
「それじゃイルさん、リンツァトルテさんも花丸ちゃん達について来てっ!」
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――此処はどんな文化が栄えているのだ。
リンツァトルテの混乱を感じ取りながら、スティアはくすくすと小さく笑みを零した。普段は余裕を浮かべた彼も今日という日は借りてきた猫状態だ。
制服を着用していれば天義の騎士などには見えない。早速の学校探検はひよのと花丸がガイドとして立ち回り、ニルとスティア、イズマを連れて各自が紹介するスポットへと向かうこととなった。
「探検します。学校ってこんなところなのですね。
いろんな教室、たくさんの人が同じことを勉強したり、体を動かしたり……楽しいところなのですね」
首をこてんと傾いでいたニルにひよのは「ええ、興味があれば気軽に遊びに来て下さいね」と微笑んだ。リンツァトルテは貴族としてのある程度の教育の傍らでそうした養成機関に通ったことがあると告げる。
「先輩は学校経験があるのですか? じゃあ、ここでも先輩ですね!」
「……どこに居ても俺はお前の先輩だと思うが」
へらりと笑ったイルはスティアと手を繋いでいる。頬を掻いたリンツァトルテはふと、傍らのイズマに気付く。
「ああ、イルさんとリンツァトルテさんさんは初めましてだな。希望ヶ浜の学校は初めて? 俺も初めてだよ!
決まった日課で過ごしつつ自由な時間もあるんだな。色々経験できて楽しそうだよな。真面目に取り組むのもいいけど、気楽に行ってもいいと思うよ」
「ああ、折角の休暇だし……彼女も楽しんでいるようだ。俺ものんびりとさせて貰おうか」
勿論だと微笑んだイズマは後ほど『マルク先生』の授業を受けようと提案した。教育実習生であるマルクは社会の授業の一環としてコミュニケーション論を教えてくれるらしい。
「学校とは。学び舎であると同時に、心霊スポットとなりやすい所でもある。
ほら、七不思議という言葉を聞いた事は無いか? トイレの花子さん然り、テケテケ然り、ピアノの霊然り――そして、……歩く標本とか!」
ひょいっと何処かから突然骨格標本を見せた汰磨羈に「ぎゃあ」と叫んだイルがスティアにしがみ付く。折角ならばリンツァトルテに抱きついてくれればいいものの――と考えるがリンツァトルテは「イル、騎士として幽霊にも凜として接するように」と些かズレた教育を行っていた。
「くく……っ、イルは怖がりだったか」
汰磨羈がくすくすと笑えば、イルは小さくむくれて見せた。そんな様を伺っていた花丸は「オススメに到着しました!」と意気込んだのが学生食堂。
「花丸ちゃん達イレギュラーズはココを負担なしで使えちゃうから、お腹一杯美味しいものを食べられるんだっ! 花丸ちゃんのお勧めは……えーっと、全部かなっ!」
「花丸さん、それじゃあお勧めできてませんよ?」
花丸がしまった、という表情をするが決めきれないとあれやこれやと考え続ける。ニルは「おひるごはんは学食で、皆様と食べれると嬉しいのです」と穏やかな空気を纏って見せた。
「ここの食堂は普段は食べれない物が食べれたりするから好きなんだよね。私のお気に入りはプリンだよ。イルちゃんも食後のデザートにどうかな?」
「うむ!」
はしゃぐ二人の様子を確認しながら花丸は「一杯好きなもの食べようね!」と微笑んだ。そう、メニューは驚くほどに多い――それも希望ヶ浜学園の生徒が山ほど存在するからだろうか。
「メニュー、いっぱいあって迷いますね。イル様やリンツァトルテ様は何が好きですか? 天義はどんなごはんがおいしいのですか?」
「私はそうだなあ……オムライスなんか好きだぞ?」
「リンツさん、肉じゃがとかどうかな?」
ニルに対してスティアはナイス! と言いたかった。イルの為に彼の好物を発見しておきたかったがリンツァトルテは何でも食べるだとか、特に拘りは無いなどと言うのだ。乙女の敵である。
(食にこだわりがないと言っても好みの物はあるはず、その反応を見逃さないぞ!)
今はニルの質問もある。屹度無碍にはしないことだろうと考えるスティアの傍でイズマは「リンツァトルテさんはこちらとこちらな?」と問うた。
「ああ……俺は、そうだな、肉じゃがとやらを。洋食は国で食べ飽きてしまっていて」
「「成程!」」
――乙女の声がハモったのだった。
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食後は調理室に来て下さいとコロナの言伝を受けて、花丸&ひよのに案内を受けながら学内を進む一同。三角巾に割烹着の家庭的な聖女は「家庭科の授業です」と微笑んだ。
「はい、二人一組でペアになってー」
その言葉に、直ぐさまにペアを作成し、リンツァトルテとイルを引っ付けるスティア。コロナはと言えば、準備として甘味の知識を取り入れ続けたらしい。
「流石は旅人が作った国です。さて、お花見の時期も考えてこの白玉団子にしましょうか。学園内の桜を見下ろしながら食べるのも良いものでしょう?
緑茶も天義では紅茶や珈琲がメインですし、急須を使って淹れるのはいい体験になるはずです」
「急須……?」
まじまじと急須を眺めるリンツァトルテに「珍しいですか?」とコロナは問い掛けた。彼女の言うとおり『日本的』なものといえば海向こうの神威神楽か、ここ再現性東京でしかお目見えしないだろう。リンツァトルテは物珍しいと小さく頷いた。
「ふふ、それではお茶を淹れてみましょうか。イルさん、手順はこうですよ。火傷などには気をつけて」
「は、はい! コロナ――先生!」
先生だった、と慌てるイルに「慌てないように」とリンツァトルテが声をかけた。スティアは彼も彼なりにイルの事をちゃんと見て居るのだと何となく喜ばしくなったのだった。
「教育実習生のマルク・シリングです。皆、よろしくね」
コミュニケーション論について体験してみましょうと微笑んだマルクは教育実習生ながらも教師の姿が板に付いている。
「これはウォーカーの人から聞いたんだけど、ある世界の研究では、誰かを褒めたり、肯定的に認めたりする事で、体調が良くなったり仕事の能率や生産性が上がったりする効果があるらしいんだ」
感心したようなイズマにリンツァトルテも「不思議なものだな」と小さく頷く。どうやら後輩教育に行かせそうだと考えたのだろう。
「そこで今回は、二人一組でペアになって『お互いの良いところを言葉にして褒める、肯定する』ということを、実際に演習でやってみようと思う。隣の席の人とペアを作って。イルさんとリンツァさんは、見学者同士でペアを作ってね」
ちら、とリンツァトルテの視線を受けたイルが「先輩に褒められる!?」と肩を跳ねさせてしどろもどろになり始める。どうやら、先輩を褒めるのも褒められるのもイルにとっては大きすぎるイベントのようであった。
授業は一人で受けるだけではなく、皆で話し合ったり実践を交ぜるのだとイズマは感心していた。自分で考えて、皆で意見交換をし、課題解決に取り組む授業。それは非常に興味深いのだ。
「イルさんはどんな風に考えた?」
「褒める、って、嬉しいし、先輩に認めて貰えた気がする」
もじもじと、言葉を紡いだイルにイズマは大きく頷いた。マルクの『距離を近づける』作戦は大いに成功していたのだろう。
「じゃあ、リンツァトルテさんの考えも聞いてみようよ」
「ああ。この肯定というのは他者が行う事で自己肯定が進むのだろう。褒めて伸ばすという言葉も此処から来ているのだろうな。……イルの底抜けの明るさは俺には無いものだから眩しく思うよ」
「すごくキレイにまとめてるな。わかりやすい……!」
感心するイズマをばしばしと叩いたイル。これからも明るく元気微笑んでいきますと宣言するかのようであった。
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放課後となり剣道部体験に注力していたサクラは「お疲れ様です」と微笑んで見せた。
汰磨羈は剣道部の臨時顧問であると一行を道場の中に招いた。
「こう見えて、武術の教導経験は豊富だ。準備運動から、ちときつめの掛かり稽古まで、その手の進行は任せて欲しい。
今は完全な人化を行えぬから、面を被るのは少々きついが。ほら、こう、耳がな?」
ぴこぴこと耳を動かした汰磨羈にサクラはくすくすと笑みを浮かべた。再現性東京だとその耳も『アクセサリー』扱いなのだという。
「リンツァトルテ様は実際に私と剣道してみましょう! イルちゃんはリンツァトルテ様のサポートお願いね!」
「これは、騎士団の稽古とは違うのだな。説明を頼む」
簡単な打ち込み稽古と、基礎を説明するサクラ。訓練としては意味があるだろうと軽い立ち会いを行えるまでの説明とサポートを行うサクラの様子を見てイルはもやもやとして居た。
見られている気がする――とサクラ。イルの視線の意味と言えば、サクラとリンツァトルテの距離が近い気がして気になったのだろう。
彼女の心模様と言えばこうだ。自身より素晴らしい騎士で家柄も確りとしているサクラであればリンツァトルテと釣合う――なんて、ちょっとした乙女の不安が滲んでいた。
「マネージャーさんのさしいれ、はちみつレモンというのを聞いたことがあるのです。イル様も差し入れたりするのでしょうか?」
「差し入れ、というわけで、イルちゃん、はい! これはタオルだよ。それから、飲み物もも一緒に差し入れしてみたら如何かな? 女子力アピールだよ!」
ニルの疑問に待っていましたと言わんばかりのスティア。準備は万端なのだ。イルは「それだけでもいいだろうか」ともごもごと言葉を繰り返す。
大丈夫だと応援する汰磨羈の言葉にイルは「先輩、頑張って下さい!」と頬を赤らめながら叫んだ。
「あ、サクラちゃんの応援も忘れてないよ。本当ダヨ……」
「スティアちゃん……」
――一方の親友サイドは色々とすっぽ抜けていたようだが……。
汰磨羈から剣道のことを教わりながら、『差し入れ』ポイントを見極める。立ち会いを見詰めるイルの瞳には熱が籠もり、期待に輝いていることに一行は気付いていた。これが恋する瞳だというのだろうかとニルは首を傾いで。
「今ですね」「今だよ」と背を押したイズマと花丸に頷いてイルは「先輩、その差し入れ」と駆け寄った――が、「ああー、激しく動いたせいでちょっとめまいがー。ふらふらー」
棒読みのサクラがイルの世を勢いよく押した。バランスを崩したイルがリンツァトルテの胸に飛び込んでゆく形となる。「危ない」と咄嗟に支えて抱き締める形となったリンツァトルテは「大丈夫か」と落ち着いた声音で問うが。
「ああああああ―――――――!?」
少女騎士は危うく気をも失うところであった。
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「こういうのは、賑やかであればある程にいいだろう? 最後にぱーっと楽しんで、盛大に夜妖を祓おうではないか。
――あー、なじみ? そう、そう、さっき伝えた面白い夜妖案件だ。ひよのも一緒だぞ。一緒に遊ばないか?」
という連絡を受けてにっこりと笑顔で現われたのは汰磨羈と同じく猫耳を揺らした怪しくない綾敷なじみであった。
「なじみさんも来てくれてありがとうっ! 紹介するね、この二人が天義から来たお客さんのイルさんとリンツァトルテさん!
で、こっちはなじみさん! なじみさんはこっちの学園の生徒さんじゃないけど花丸ちゃん達のお友達なんだ!」
「なじみさんだよ! とびっきりのよろしくだよ、二人とも!」
にんまりと微笑んだなじみにスティアは「桜の名所に行こうと思うんだ!」と提案した。花のアーチがお気に入りのイルにとってはとびきりのポイントだろうとスティアは考えていた。
なじみの案内を受けながら、マルクはちらりと時計を確認する。皆で屋台を見て回り、花見をして『少しのハプニング』を挟んでから帰宅の計画だ。
「そういえばリンツァトルテ様ってどういう女性が好みとかありますか?」
サクラの問い掛けにリンツァトルテは驚いたように彼女を見た。「サクラに聴かれるとは」と言ったのは彼女は色恋よりも剣術というイメージであったからだろうか。
「そうだな……芯の強い、明るい子、はどうだ」
(まさか、サクラ先輩では――!?)
イルの表情から何を考えているのか気付いたスティアとサクラが顔を見合わせて小さく笑みを浮かべる。イズマは「良い時間を過ごせるように」とリンツァトルテの肩をぽんと叩いた。
「……? ああ、そういえば、買い物はこれで最後だったか?」
イズマの問い掛けにニルは「飲み物を買ってくるのです」と立ち上がる。花丸も絶好の花見スポットをゲットしたのにみたらし団子を買い忘れたとひよのの手を引いて走り出した。
「ふふ、どうです? いいリフレッシュになりましたか? 私も少し買い物に行ってきますね」
微笑んだコロナにイルは「皆?」と首を傾げる。マルクは「お土産を買って帰りたいからちょっと買い物に行くね。二人のも買ってくるから」と立ち上がった。
「騎士たるもの、女性をエスコートぐらい出来ないとですよ!」
肩をぽんと叩いたサクラにスティアが「サクラちゃん、行くよー!」と手を振った。
「ああ、記念撮影もしよう。ほれ、そこの二人は並んだ並んだ」
aPhoneで記念撮影をしていた汰磨羈の頬をつんと突いたなじみは「現像行くぞ、たまきちちゃん!」とその手を引っ張り走り始める。
気付けば二人きり。こそりと覗いたスティアは心の中で熱い応援を叫んだ。
――頑張れー! イルちゃん! リンツさん、甲斐性をみせろー!
「……その、先輩。今日、楽しかったですね。知らない事ばっかりで」
「ああ、そうだな」
「先輩、あの、私! 先輩の好みのタイプの女の子になって見せます! だから、だから、その……見ててくれますか!?」
立ち上がり、そう宣言するイルにリンツァトルテは大きく頷いた。
ずっと見て居たよ、の言葉は秘密にするように「応援している」と揶揄い笑った彼に真っ赤な顔をしたイルは「桜を見てきます」と走り出したのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした!
天義騎士恋愛事変、学園編でした。
二人の応援を有難うございます!でも、もうちょっとつづくんじゃよ。
GMコメント
夏あかねです。社会見学です。
●成功条件
夜妖(嘘)に満足してもらう。
●夜妖(嘘)
実は本当に居るかもしれないけど、いないかもしれないな夜妖です。
学園生活をとっても楽しむことがオーダーです。
・学園内を探検してみる
・部活動棟で混じって遊んでみる
・学校の外で買い食い
・ショッピング
・桜の名所に遊びに行ってみる!
等など、学生っぽい事を思いっきり楽しむことが求められます。
希望ヶ浜は『現代日本』的な場所ですので、ある程度は何をしても問題はありません。
aPhone(スマートフォン)の貸与も可能です。お持ちではない方はひよのにお声かけください。
●イル・フロッタ&リンツァトルテ・コンフィズリー
制服姿です。見習い騎士のイル・フロッタと、天義の聖騎士のリンツァトルテ・コンフィズリーです。
イルは明るく天真爛漫。普通に再現性東京で生活してそうな女の子です。
リンツァトルテ先輩は真面目を絵に描いたような青年なので本で読んだ学園生活を履行しようとしています。
イル→リンツァトルテは明確な方想いですが、リンツァトルテ→イルは可愛い後輩(好意に気付かない)です。
そんな二人ですが、どの様にでも動きますので気軽にお声かけください!
イルちゃんは新しい物も楽しい物も何でも大好きです。
●音呂木ひよの
サポート枠。なんでもお申し付けください。再現性東京希望ヶ浜に存在する音呂木神社の巫女です。
aPhoneも貸してくれますし、何なら綾敷なじみさんも呼んでくれます。清く正しく女子高生です。
「どこいけばいいかな?」と聞けば「取り合えず学食とか言って見てはどうですか?」なんて言ってくれます。
ひよの曰く「夜妖が居るかどうかと言われれば居ますがまあ、それはさて置いておきましょう」です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
自由に学園生活を楽しんでください!
それでは、いってらっしゃいませ!
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