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シナリオ詳細

黒き風と乾いた夜

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●夜病(やまい)の節
 その数日間は、その間だけは、風と空に怯えねばならない。
 その間は窓を開けてはならない。
 その間は扉を開いてはならない。
 その間だけは、家の中の空気がいくら淀もうとも、空気を入れ替えてはならない。
 隙をみせれば、『風』は巧妙に我らの住処に入り込み、みいんな殺してしまうから。

●凶兆の風を断て
「風が風邪をひかせにやってくるのです。倒してほしいのです」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)の言葉に、集まったイレギュラーズは数秒間、考え込んだ。
 この時期の風に当たり続ければ、寒いし乾燥してるしで風邪をひくのは『幻想』では普通のこと、当たり前の話では? と。だが、どうやら違うらしい。
「『幻想』の辺境の村に吹く風は、誇張なしで『病魔そのもの』なのです。神秘の力を持った病魔が風の形でやってくるのです。風邪をひいたら夜を越せないので、その村では『夜病(やまい)』と呼んで恐れられているのですが‥‥イレギュラーズの皆さんなら倒せるかもしれない、と依頼が来たのです」
 村が冬をこすための、なけなしの資金から依頼するために持ち出して。年を追って減り続けた村人は、今度こそ一人残らず死んでしまうかもしれない、という苦渋の選択であったという。
「神秘が絡んでいる以上、『夜病』は形のある存在、打倒できる敵なのです。ただ、風なので物理攻撃よりは神秘攻撃のほうが効くと思うのです。それ以外は、いろいろまとめたので目を通して下さい、なのです」
 ぺこりと頭を下げたユリーカに、イレギュラーズは胸を叩いた。
 子供も大人も、元気であれば風の子だ、と。

GMコメント

 はじめまして、こんにちは、久しぶりですまたどうぞ。三白累です。
 風邪の季節ですが皆さん体調は崩されておりませんでしょうか。私は常時病に臥せっていますってなガハハ。
 冗談はさておき、詳細です。

●達成条件
『夜病』×3の消滅。倒したらその場から消えてしまいます。後処理不要のエコな敵。

●夜病
 とある村の風土病を引き起こす、神秘のこもった黒い風。この季節に数日間だけ現れ、病気を引き起こします。『●夜病(やまい)の節』は村にある謂れですが、目張りや隙間風対策をしても運が悪ければ、年に何人か死んでいるちょっと洒落にならない悪いやつです。今回倒せば、新たに訪れる可能性は激減するでしょう。
 攻撃手段は以下。
・風点穿(物至貫、『痺れ』)
・遡病毒(神遠ラ、『毒』)
 風であるため敏捷性はやや高め、防御性能は物理に『ちょっとだけ』強く、神秘に『かなり』弱いです。
 攻撃パターンは、至近に敵がいる場合『風点穿>>>遡病毒』、それ以上離れていれば『遡病毒』のみを使用します。

●情報確度
 A。記載情報以上のことは一切起こらず、また、想定外の敵も現れません。

●戦闘エリア
 村はずれ、『夜病』の進入路上。周辺環境は荒野、昼。風と地面が乾いている以外、特徴もなく歩きやすい地形です。
 イレギュラーズが攻撃射程に捉えられるまでの時間は3ターン。準備行動はその間であれば不利なく可能です。

●注意事項
 相談期間は『4日』です。
 そこまで特殊性のあるシナリオではないため、シンプルに済ませて次に向けて充電したい方、おすすめです。
 細密に段取りを決めたい! という方でも、4日あれば大分色々詰められるかな‥‥。

 せめて『幻想』だけでは風邪を打ち負かしましょう。ご参加、お待ちしています。

  • 黒き風と乾いた夜完了
  • GM名三白累
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年01月27日 21時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

焔宮 鳴(p3p000246)
救世の炎
アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
八田 悠(p3p000687)
あなたの世界
シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ(p3p000996)
悪食の魔女
ミーシャ・キュイ(p3p002182)
ただの手品師だよ?
陣真慈 識(p3p002691)
逝人丸
松庭 黄瀬(p3p004236)
気まぐれドクター

リプレイ


「……寒い」
「おや、風邪かい? 治療は要るかい? それとも手術?」
 冷たい風に肩を震わせた『逝人丸』陣真慈 識(p3p002691)に対し、『カンパニュラのこころ』松庭 黄瀬(p3p004236)はほぼノータイムで問いかけていた。冗談めかした口調ながらもどこか本気に聞こえるそれに、識は小さく首を振る。残念そうに首をすくめた黄瀬は、あらためて遠間にわだかまる『黒い風』を、目を眇めて観察する。
「夜病、ねぇ。聞いたことはあるけど、まさか直に殴れる日がくるとは思わなかったなー。生きてみるものだね」
 純種であるがゆえか、医者であるがゆえか。彼は『夜病』のことを知っている。よもや実物を目にして、なおかつ殴り掛かる日が来るとは考えもしなかっただろうが。
「『病魔そのもの』……伝承でもお伽噺でも噂でもなくて、本当に神秘の力を持った病魔が襲ってくる、と」
 『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)の目にも、その姿は見えていた。彼女の『眼』ではなくとも見えるもの。彼女のいた世界では珍しかろうそれが、『当たり前』として闊歩する世界。それが『無辜なる混沌』。両の足で立っている世界である。
「にししっ、楽しみ……っと、本音が漏れちゃったね」
 『マジシャン見習い』ミーシャ・キュイ(p3p002182)はと言えば、迫る戦いの気配に口元を歪めていた。外界に飛び出して初めての戦い。どれほど自分が通用するのかを試したいという単純な好奇心は、戦闘で傷つく危惧を大きく上回っていた。尤も、戦闘や荒事を求めていたのは彼女だけではないのだが。
「……楽しみじゃねえか」
 『任侠』亘理 義弘(p3p000398)はミーシャとは別の理由で戦いを求めていた。荒事に慣れた空気と浅黒い肌は、鉄火場に慣れたその出自を露わにし。そして同時に、混沌肯定『レベル1』により以前の実力を発揮しきれていない、という自覚はある。だが、以前の自分であれば『風を殴る』などという暴挙には出なかったであろう。そう考えれば、果たして今は『弱い』のか。ここで証明する事も一興と思えた。
「……洒落がきいているのやら、だ」
 『祖なる現身』八田 悠(p3p000687)は、呆れたように肩を竦める。風を敵に回すというのも笑い話のように思えるが、病を呼ぶ存在であるというのもまた、元の世界では理解できない要素。笑い話の範疇に収めてやる事も、一種の温情と言えるだろう。
「これ以上犠牲なんて出させない、『夜病』に苦しむ日々は今日で終わりにするの!」
 『緋焔纏う幼狐』焔宮 鳴(p3p000246)は目に強い決意をたぎらせ、拳を握って宣言する。
 寒村がローレットに依頼する為に、どの程度の苦労があったのかは、彼女は知る由もない。彼女が今理解しているのは、ここで依頼を成功させることで、村人達の恐怖や今後起きる不幸を潰せるということ。それは翻って、自らに蟠る不幸の気配を背に走り続ける焦燥感にも似ていた。いずれにせよ、成功を望むことに変わりはない。
「村からは十分に離れていますし、思い切り戦えますね。ささっと片付けましょう!」
 『悪食の魔女』シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ(p3p000996)は遠く離れた村に視線を向け、次いで迫る『夜病』を力強く睨みつけた。
 乾燥した風がその脇を駆け抜け、埃を巻き上げる。その風はおそらく村へと届く。対策なくこの地に住まうならば、たちまちその身を苛む病につながることだろう。それを差し引いても、訪れる災厄を素通りさせる道理はない。
 何より、彼女を含む少なくない面々が目の前の『夜病』を敵として、というよりは好奇心の対象として見ている、という事実。
 知的好奇心、暴力性のはけ口、或いは力試しの道具として、ありきたりの神秘を前に息を巻いている。恐怖にのたうつ村人とは全くの別種の登場は、『混沌』が抱える病理を象徴するかのような状況であったと言えよう。
 義弘は身構え、敵を待つ。常に心持ちを背水の陣とするその構えは、一歩も通すまいとするその決意そのもの。
「陣真慈 識。理解できてるかはわからないけど、倒させてもらうよ」
 識は間近に迫った『夜病』に名乗りを上げると、刀を抜いて半身に構えた。言葉を認識したわけではなかろうが……猛る風音とイレギュラーズは改めて、互いを確かな『敵』として認識した。


「……それでは、今の自分が程度実戦で使えるのか。試させていただくとしましょうか」
 アリシスは杖を掲げ、識へと殺到する『夜病』めがけて術式を放つ。敵意に全てを振り分けていた存在に、集中した彼女の一射をかわせる道理はなく。術式は、過たず命中する。実態を持たぬがゆえか、あるいは特性か。彼女の術式はことさらに『夜病』に強く浸透し、打撃を与えた。
「1人で抱えるには多すぎるな。手伝うぜ」
「俺も『夜病』には興味があるんだ。近くで観察させてもらうよ」
 義弘と黄瀬は、識に張り付いた『夜病』へと間合いを詰めると、拳を、或いは蹴りを叩き込み、その場に釘付けにする。接近戦に持ち込めば、攻撃手段を制限して後衛の負担を軽減できる。後衛は護りに割く力を攻めに転じることで、効率的に各個撃破を目指すことができる。
 頭数で上回るイレギュラーズは、連携を密にすることで相手に対し優位に立つ必要がある。『夜病』は個体数は多くはないが、それでも『混沌』が生み出した神秘そのもの。8人がかりで3体を御することは、決して簡単な依頼ではないことを十二分に心得ておかねばならない。さもなくば、瞬く間に戦局は傾くだろう。
 黒い風が収束し、行く手を遮る前衛3人に向けて放たれる。彼らの肉体を貫いたそれは、身を苛む痺れとともに油断ならぬものであることを理解させる。……そして、『夜病』の前に立った3名の攻撃手段は、いずれもそれらとの相性は芳しくない。
「ああ、攻撃が通りにくい……!!」
識の渾身の一撃は、滑らかな軌道で風の合間に吸い込まれ、確かな手応えを返してくる。だが、浅い。一度や二度で切り伏せることは敵わぬと直感的に理解させた力の差は、彼をして苛立ちを増す要因たり得た。
「鉄槌の黒の色彩、見せてあげるの!」
 鳴が魔術弾で狙うのは、識の正面に陣取った相手。先程アリシスが一撃を加えた相手は、他の個体と比べれば消耗していることは明らかだ。神秘による戦闘に特化した彼女の攻め手は、その攻撃精度もあいまって他の面々よりも『夜病』に深く浸透し、打撃を与えた。
「正面ばかり気にしてるから、後ろがお留守になるんだよ?」
 ミーシャはナイフを掲げ、識と相対する個体めがけて振り下ろす。進行方向とは逆、普通に考えれば『背後』にあたる一から振り下ろした斬撃は、しかし手応えが乏しく、切り裂きはしたものの手にかけたという実感が薄い。……攻撃の芯をずらされたのか。不定形の存在であるが故に、死角という概念がなかったのか。自らに叩きつけられた殺気に、彼女の肌が総毛立つ。
「さてさて、毒を以て毒を制すと。人の身体を冒す毒に別の毒をプレゼント、だなんて洒落た話だと思わないかい?」
 だが、悠のどこか間の抜けた声は、ミーシャの悪寒を打ち消すかのように放たれる。投げ込まれた薬瓶はクリーンヒットこそしなかったが、隙を生むには十分だった。
「何なら効くんでしょう……ファイア・ボルトとかでしょうか? フロスト・ボルトとかも効くでしょうか……」
 シズカはレイピアを構え、遠距離術式を撃ち放つ。風を媒体とした神秘に、果たして火や氷のたぐいが通じるのか。少なくとも、属性を問わず『神秘』の通りは間違いなく、いい。運悪く術式の通りが悪ければ、それも事故、不幸の範疇。彼女1人の不幸が味方全てに及ぶことは、おそらくあるまい。
「風邪はひかないから別にいいけど、やっぱり噂通りだね。こんなものが人里に入り込めば、そりゃあ人も死ぬさ」
 少なくない傷を負いながらも、しかし黄瀬に悲壮感はなかった。仲間の心強さも勿論のことながら、今の彼は好奇心が痛みや恐怖を遥かに上回っているのだ。実践あってこその試行錯誤。戦いもまた然り。すくい上げるように蹴り上げ、『夜病』を蹴った反動で地面を踏み締め、さらに宙に放ったナイフを蹴って相手に叩き込む。致命の一打に至らずとも、幾度となく叩き込まれた蹴りは地道に、相手の神秘強度を上回ろうとしていた。
「男にはよ、体張らなきゃならねえ時もあるって事だ。今みてえにな」
 義弘は深く息を吐き、至近距離からさらに一歩、踏み込む。鍛え上げた任侠としての力が『混沌』で抑制された代価は、窮地にあって一歩踏み込む覚悟の違い。ときに空振り、ときに浅い打撃の反動にままならぬ歯がゆさを覚えようと、彼に後退の二文字はない。
「風邪薬を……いや、傷薬の方が都合がいいかな? 材料が僕自身……って言ったらどう思う?」
「是非研究させてほしいね。効果は本物のようだ」
 回復薬を投げ渡しながら冗談を口にする悠に、しかし黄瀬の言葉には本気のトーンが感じられた。流石に思うところあったのか、悠は拒否するように首を振ったが……さて、どちらがどれほど本気だったのか。
 そんな彼らの冗談が気に食わなかったのか、どうか。『夜病』の一体の風が唸りを上げ、後衛の面々目掛けて吹き荒れる。風に切り刻まれたアリシスは、自らの身を苛む毒を祓いながら前を向く。前だけを見て、杖を掲げた。
「無理はいけないの、痛いなら治るまで待ってからでも遅くはないの!」
「ありがとうございます。でも、問題ありません」
 痛々しい傷に声を上げた鳴に、しかしアリシスは軽く笑みを返す。無理なものか。傷で倒れるなら力が足りぬ証拠、耐え、勝利を手にできるなら相応の力を得ていた証明になる。多少の無茶で押し通したとて、『無理』の一言で諦められる状況ではない。攻撃が最も集中している個体は、今もって識が全力で押しとどめている。彼の献身に報いぬうちに倒れるなど、あってはならない。不幸中の幸いというべきか、悠の治療はアリシスの傷を全てではないにせよ、癒やすことができるのだから。
「まだだ……まだ、倒れるほど弱くはないよ!」
 その一方で、識は『夜病』を追い詰めつつ、同時に追い詰められてもいた。決定打に欠くことは覚悟の上だが、予想以上に自分と相性の悪い相手。打撃の通りが悪い相手に苛立つ心の隙をつくように、神秘の風が繰り返しその体を貫けば……ただでは済むまい。
 血の気が失せた表情で刀を掲げ、渾身の勢いで踏み込んだ彼よりも『夜病』の風は一拍、早い。膝を屈し、倒れ込んだ彼の頬を乾いた砂が洗うようにまとわりつく……その視界の端で、『夜病』の一体が霧散したのが見て取れた。
 識の覚悟の踏み込みは無駄であっただろうか? 否。前線を受け持った面々で見劣りがあっただろうか? それもまた、否だ。負傷を重ねて倒れる直前まで粘った数十秒は、ミーシャが足止めに回る余地を作り、鳴やシズカが一撃でも多くと術式を打ち込む猶予を作り、味方の連携と結束をより強固なものとした。彼は己の身を挺して、仲間の鎹(かすがい)となったのだ。
「こりゃあ、もうちょっと踏ん張らねえといけねえか」
 義弘は仲間の姿を横目に、ぎりと歯を食いしばる。自らを追い込んだことで底上げした馬力で、さらに前へ、逃がすことなく追い込むべく拳を打ち込んでいく。負ければ村ひとつを犠牲にするという事実は、彼が背負うに十分な重みだ。ゆえに、退かない。
「あと2体、絶対に倒して帰るの!」
 鳴は怨念を束ねあげ、一条の矢に変えて撃ち放つ。この地に眠るのは、『夜病』の犠牲者達であろうか。成程、この上なき自業自得もあったものである。
「もう少し楽しませてもらって……それから倒しちゃおっか」
 ミーシャは黄瀬と対峙する個体に背後から襲いかかり、一気呵成と攻め立てる。浅からぬ傷を負った仲間の状況を慮りながら、彼女らの後ろで悠は冷静に、治療に専念する。
 イレギュラーズが全身全霊を尽くして討つべき敵は、少しずつ、だが確実にその神秘をすり減らし、消滅への道を辿っていた。
 だが同時に、前衛で足止めしている2人の負担も増し続けていた。このままの状況が続くのなら、どちらの勝利に終わるかはまだ、わからなかった。……一同が愚直にその間合いを守り続けていれば。

「遠距離ばかりじゃありませんよ!」
 シズカが、前線へ踏み込んでレイピアを握りしめる。術式の乗った刺突の連打は、黒き風の守りを削り取り、倒さんと迫る。その踏み込みが功を奏したか、幾度目かの刺突はことさらに重く、力強い反動を彼女の手に伝えてくる。……決定的な一撃の感触。仲間よりも僅かに秀でた『奇跡の確率』が、その一瞬だけ彼女に味方したのだ。そして、それが決定打となり、2体目の『夜病』は消滅する。
 それを見たアリシスが静かに前進する。構えた杖の握り方は明らかに本来の用途と別物だが、それに乗せられた神秘の力は本物だ。叩きつけるように振り下ろし、握り直して下方から突き上げる。薙ぎ払う。その全てが物理的な打撃ではなく、神秘による猛攻。負けじと拳を振るう義弘とでは阿吽の呼吸とは行くまいが、それでも確実に『夜病』を追い詰める。
 正面切っての神秘の猛攻。それは背後から引き絞られた一射を覆い隠す帳と化した。ひときわ強く振り抜かれた拳と杖の合間を縫って、怨霊の矢が突き立ち、霧散する。神秘の矢とほぼタイミングを同じくして、最期まで残っていた『夜病』も風と散っていく。イレギュラーズは、この地を襲う病魔を駆逐したのだ。

「……しかしよ、この世界でも、仕事終わりの一服はうまいんだな」
 疲労からか、どっかりとその場に腰を下ろした義弘はタバコを吸い、深々と息を吐く。呼吸すらも忘れたかのような猛烈な攻防のあとだ。思うところが多いのは当然といえるだろう。
「治療完了……でいいのかな? もう『夜病』で倒れる人はいないだろうしね」
「でも、普通の風邪に気をつけるべきだとは伝える必要がありそうですね。この辺り、乾燥しているので……」
 黄瀬が誰に問うでもなくそう告げると、シズカは考えるように口に手を当て、そう返した。村人達の命は救われたが、次は現実的な病魔と向き合わねばならないだろう。生きるために歩みを進めるのは、村人自身なのだ。
「温かい飲み物が飲みたい……」
 仲間に支えられ、識がようようと絞り出した言葉に一同は静かに頷いた。風邪をひかない身体であっても、気合いでなんとかなる身であっても。
 まずは一杯、勝利のための祝杯が必要だ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。少々の苦戦もスパイスと呼べる程度には、堅調な勝利だったと思っています。
 ……皆殴りたいんですね。わかる。

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