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シナリオ詳細

<ヴァーリの裁決>マミー!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


前略、前前前前母上さま。
転生5度目の生後3日目にして、全人生史上、最大のピンチです。


 バルツァーレク領の辺境に位置する緑豊かな森は、領主である巡離 リンネ(p3p000412)の思想を色濃く反映した、過剰なまでにシステム化された生命サイクルが模索されるモデル地区である。
 その名も『円環の森』。
 つねに穏やかな風が流れ、木々の葉が揺れる優しい音が満ちる風土を気に入って、ここに移住する若いカップルが多い。
 なにせ二つも騎士学舎があるので、治安がいい。気品もある。育児にとても適した環境なのだ。それに、この地の南に建つ病院には、正しい輪廻の輪に送られた死者の魂が新たに人として生まれ落ちるのに完璧な施設――つまり、設備の整った産婦人科があった。
 もちろん、産婦人科以外にも専門科が一通りそろっている。死んだ後のケアーもバッチリだ。まさに『揺りかごから墓場まで』。
 『円環の森』に総合病院があるからこそ、人々は安心して暮らしていた。
 数日前までは。

 輪廻の輪から外れたアンデットの集団が突如として森に現れ、繰り返し病院を襲撃し始めた。


 『未解決事件を追う者』クルール・ルネ・シモン(p3n000025)は、集まったイレギュラーズに問いかける。
「『古廟スラン・ロウ』の結界内にあった王家のレガリアが奪取されたことはもう知っているな。伝説の神鳥が眠る『神翼庭園ウィツィロ』の封印が破られたことも」
 うなずく面々を見て、クルールは依頼の説明を始めた。周知されている事件の背景に触れ、時間を無駄にすることもないだろう。
 そう、事は一刻を争う。
「リンネの領地にある病院が、アンデットたちに繰り返し襲われている。襲撃のたびに騎士学舎の学生たちが戦って退けていたが……若いとはいえ、度重なる夜間の戦いにかなり疲弊している。次に襲撃を受けたら、彼らだけで病院を守り切れないだろう。助けに行ってやってくれ」
 アンデットたちはどういうわけか、領地内にある民家や他の施設は襲わず、森の外に現れると、まっすぐ病院へ向かって襲うらしい。
「それも産婦人科の新生児室付近に集中するそうだ。赤ちゃんをさらって育て、奴隷として売りさばくつもりかもしれない」
 アンテッドが子育て?
 それだけ聞けば失笑ものだが、この事件の背後に奴隷商の暗躍がないとはいえない。そちらの事件もまだ継続中なのだ。
「ま、なにんせよ襲撃箇所と時間が限定されているのはありがたい。アンデットと戦った騎士見習いたちから、敵戦力に関する報告書が上がってきている。今配るから目を通してくれ」
 報告書によると、病院を襲うアンデットはマミーと呼ばれる魔物らしい。
その数20数体。
 ネメスという立派な頭巾を被ったマミーキングが、マミーの軍団を率いていると書かれてあった。
 このマミーキングを倒さない限り、どれだけザコを倒しても、翌夜にはマミーたちは復活して襲い掛かってくるようだ。
「民家は素通りとはいえ、マミーたちの襲撃に住民たちもみな怯えている。親しい人が入院していたなら、さぞや不安だろう。とくに出産前の妊婦や新生児たちの体にいいわけがない。今夜で片をつけて、平和な夜を取り戻すんだ」


 あの偽女神官の息子め。自分だけ転生の輪に乗り寄って。よくも騙してくれたな。
 落ちてここに生まれ落ちたことは解っている。神鳥から抜けおち、風に運ばれた羽が教えてくれたのだ。
 妙な術を使って二度と転生できないように、無力な赤子の内に殺してくれるわ!

GMコメント

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

●成功条件
 ・魔物の討伐
・赤ちゃんや入院患者、病院関係者たちの保護

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。不明点もあります。

●日時と場所
バルツァーレク領の辺境に位置する緑豊かな『円環の森』。
襲撃は夜です。月が出ています。
病院の敷地を遮蔽するように木々が生えていますが、敷地内は芝生が生えているだけで特に地形に問題はありません。
マミーたちが襲撃する産婦人科の新生児室は南側の一階にあります。
新生児室には窓はありませんが、その隣の家族室などには大きな窓があります。
病院内には非常口と正面玄関、南玄関から入れます。
新生児室に近いのは、南玄関です。
病院には入院患者が多数います。病室は三階より上が病室になっています。
何があっても下の階に降りないよう指示を出しておけば、マミーたちは階段を上がることはないので安全です。
宿直の看護婦や医者たちも夜は3階に避難しています。

●敵
・マミーキング
 ネメスという立派な頭巾を被った、包帯ぐるぐる巻きのアンテッドです。
 他のマミーを復活させる力があることから、怪王種の一種と考えられます。
 錫杖のような武器を所持しており、神秘攻撃で広範囲を攻撃することに長けているようです。指揮能力が高く、カリスマがあります。
 声は出せませんが、テレパスのようにもので会話できます。
 反応はやや緩めですが、他ステータスは総じて高いものと想定されます。
 マミーキングは建物の外にいます。

・マミー……25体
 ミイラ男です。ミイラ女もいるかもしれません。みんな全身を包帯でぐるぐる巻かれています。呻くばかりで喋れません。
 病院にたどり着く前に適当に見つくろった、クワや鍬、シャベルなどの鈍器を手にしています。
 動きは緩慢ですが体力はあるようで、なかなか倒れません。
 マミーキングの指示で建物の外(20体)からと、南玄関(5体)の二手に分かれて襲撃してきます。

 ※イレギュラーズはマミー軍団銃撃の10分前に病院に到着できます。

●友軍
・騎士学舎で修行中の騎士見習いたち×10名
 全員が10代の若い男性。度重なる襲撃で、まともに戦える数が減っています。
 いずれもロングソード・片手盾、チェインメイルを装備しています。イレギュラーズ側からの指示があれば従います。
 そこそこ戦えますが、イレギュラーズほど強くありませんので注意してください。
 二人でマミー(雑魚)一体と互角に戦える程度です。

●怪王種(アロンゲノム)とは
 進行した滅びのアークによって世界に蔓延った現象のひとつです。
 生物が突然変異的に高い戦闘力や知能を有し、それを周辺固体へ浸食させていきます。
 いわゆる動物版の反転現象といわれ、ローレット・イレギュラーズの宿敵のひとつとなりました。

●その他
とある古文書によると、マミーたちの魂の呪縛をとく呪文があるらしいのですが……。

宜しければご参加ください。お待ちしております。

  • <ヴァーリの裁決>マミー!完了
  • GM名そうすけ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月10日 21時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

奥州 一悟(p3p000194)
彷徨う駿馬
巡離 リンネ(p3p000412)
魂の牧童
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
ロロン・ラプス(p3p007992)
頂点捕食者
胡桃・ツァンフオ(p3p008299)
ファイアフォックス
一条 夢心地(p3p008344)
殿
セレーネ=フォン=シルヴァラント(p3p009331)
正剣
耀 英司(p3p009524)
怪人暗黒騎士

リプレイ


「あのね、どの面下げて人の土地にアンデッド沸いてるわけ?」
 『魂の牧童』巡離 リンネ(p3p000412)は領主として、また輪廻転生の化身たる死神として、今回の騒動に憤る。
 なぜアンデットたちが沸いたのか。それはここ『円環の森』が正しい輪廻を構築する実験地区だからこそ、なのだが……。
「でもまあ、ここに沸いたのは相手にとっては幸運だね。因縁全てガン無視で円環に送り返してあげるからねー」
「とにかく私達に出来る事を為しましょう。その為にこの場に居るのですから」
『正剣』セレーネ=フォン=シルヴァラント(p3p009331)がいう。
 周囲にまだアンテッドたちの気配がないが、連日領地を襲うマミーたちと応戦していた騎士見習いたちの話では、そろそろ森の奥からゾロゾロやってくるハズだ。
 もし、バリケードを作っている最中にマミーたちが襲ってきたら? 
その時は新生児室の外側に残り、周囲を警戒している『無垢なるプリエール』ロロン・ラプス(p3p007992)が知らせてくれるだろう。
 『彷徨う駿馬』奥州 一悟(p3p000194)とお手伝いに駆り出された職員たちが次々と集めてくる机や椅子を使って、リンネとセレーネ、胡桃と見習い騎士たちが南玄関を封鎖していく。
 『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)は書類の詰まった重いスチールキャビネットで、ガラスドアの前に置かれた机を固定した。
「コャー、あれれ? ドアを全部塞いじゃったら、外に出られなくなるね」
 出入口は三か所。南玄関以外の、非常口にも正面玄関にもバリケードが作られている。一階の窓もそうだ。作業が終われば、二階の窓から飛び降りるかしか外に出る方法がなくなる。
 リンネが持っていた椅子を、えいっ、とドアの半分の高さまで築かれたバリケードの上に放り投げた。
「その点は大丈夫だよー。全部の場所を上から下まで塞ぎ切れるほど、バリケードにする材料がないから」
 そうですね、とセレーネ。
 胡桃がこんなこともあろうかと、と用意していた縄を使って個々を結束していく。
「そのために私たちがここに残って、侵入してくるマミーを倒すのです」
 ベッドを病室から運びだそうにも、そうそう空きがない。診察や手術につかう機材はそもそも動かせないか、動かして壊すとのちのち病院の運営に支障が出てしまう。
 バリケードに使えるのは、本当に椅子や机、書類棚ぐらいしかないのだ。
「あとは私たちがやっとくから、胡桃はそろそろ新生児室の外に戻っていいよー」
「じゃあ、後はお願いなの」
 胡桃は炎狐を呼び出した。外は月が出ているし、病院の明かりがあるしで、歩くのに困るほど暗くはないが、念のためだ。
 ひょいひょい、ひょい、とバリケードを駆けあがると、上部に残された空間から外へ出ていった。
「よーし、バリケードはこんなものでいいでしょ」
 リンネは見習い騎士たちを入口の前で二列に並ばせた。
 緊張しきった若い背を見渡し、体の内から沸き立つ勇壮な音楽に耳を傾けて灰色のタクトを振れば、たちまち病院の廊下いっぱいに情熱の詩が溢れ出す。
 見習い騎士たちの体から緊張が取り除かれ、闘志に火がつけられたようだ。
 続けて第二章、長調から短調へ転じた曲は魔性を帯び、見習い騎士たちの心に仄暗い負の衝動を芽生えさせる。
「剣を抜け、構え!」
 領主の命令で剣を抜く見習い騎士たち。
 鞘から剣が滑り出る音を聞きながら、セレーネ自身も剣を抜く。
「こちら側に来る相手の数は私達よりも少数です、数の利を生かして足止め、殲滅しましょう」
 おう、と初々しくも勇ましい声がそれに答えた。


 二階では。
『殿』一条 夢心地(p3p008344)を先頭に、医師たちが列をなして廊下を歩く。病室のひとつひとつを覗いては、不安がる患者たちの声に真摯に耳を傾け、安心させるように微笑みながら声をかける。
「任せるがよい! まずは何より民を安心させることが、殿的存在である麿の役目よ」
これはもしや、伝説の部長回診というやつか?
「ん? いまのナレーションは一体どこから聞こえてきたのじゃ」
 急に立ち止まった夢心地の背に、後ろにいた年配のお医者がぶつかった。胸に下がった名札を見れば、どうやらこちらが本物の部長さんらしい。
 その後ろにいた医長、そのまた後ろにいた医員と次々に玉突き事故を起こし、先頭に立っていた夢心地はととと、と前にたたらを踏んだ。
「お医者たちは夜の勤めご苦労、ご苦労。今宵でケリをつけるゆえ、しばし辛抱してほしい。騒動が落ち着くまでは下の階には降りぬよう、周知徹底頼むのじゃ」
「あの……」
「なんじゃ?」
「二階に移動させられなかった新生児たちは大丈夫でしょうか。一名ずつでも医師と看護師を残して――」
「それには及ばぬ。磨たちを信じて待っていて欲しいのじゃ。赤子は必ず守って見せよう」
 きっぱりと部長の申し出を断ると、夢心地は錦織の袴の裾を手繰り上げた。
「麿は厠含めばーーっと最終チェックに走る。よいな、くれぐれも下に降りぬように。しからば御免!」
 その頃、一階では『Heavy arms』耀 英司(p3p009524)が病院職員たちに指示をだし、一秒でも早くバリケードを構築させるため、机や椅子の運搬を急がせていた。
「あ、それは向こうへ。そこ、ただ上に上にと積めばいいってもんじゃない。それじゃあ、すぐに崩れてしまうぞ」
 元の世界で戦隊ものの番組に多く出演、経験を積んできた。立派な怪人として、手下の動かし方が上手いという定評がある。
「民家に被害が出てないあたり、敵の首魁にゃ意思があるかもしれねぇ。見た目だけで判断するようなら、怪人はやってねーのよ。ほかはもういいから、残りいっぱいを使って新生児室周りの防御を固めるぞ」
 念のために、と二階に上がる階段口をふさいでいた『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)が、夢心地と一緒に英司のところへやってきた。
「そろそろマミーたちが来るころじゃないかしら? 職員たちを二階に避難させて。階段を完全に塞いでしまうから。あなたたちは先に外に出ていて……って、一悟は?」
「家族室で窓を塞いでいるんじゃないか?」と英司。
 三人で家族室を覗いてみると、そこに一悟の姿はなかった。
カーテンの隙間から、人の姿をとったロロンと胡桃が部屋の中を覗き込んでいる。
英司は職員たちを二階にあげていった。
フルールはバリケードを乗り越えて、窓を薄く開けた。
「玄関からは塞がれちゃったから、三人はここから出てね。戸締りは一悟がするって」
 戸口に立ってロロンの話を聞いていた夢心地が、「いや、英司は職員を二階にあげたらそのまま南玄関へ向かうそうじゃ。ここから出るのは磨とフルールだけじゃ」
「で、その戸締りしてくれる一悟は、どこ?」
「看護師さんたちになにか赤ちゃんたちのものを借りたいって、さっき上にあがっていったよ。雨どいを伝って下りるからここを締めても大丈夫だってさ」
 フルールたちが窓から外に出たあとで、一悟が戻って来て窓を締めた。
 ロロンの周りで精霊たちが騒めき始める。
「どうやら来たみたいだねー、マミーたち」


 暗い森に白い影が一つ、二つと浮かびあがる。それは瞬く間に森の闇を埋め尽くした。
 亜麻布に巻かれた動く死体、マミーだ。
 先頭を大股で堂々と歩いてくるマミーは頭巾をかぶっていた。キングだ。手に持つ錫杖で、新生児室の前に並び立つイレギュラーズを突くように指す。
 マミーたちが一斉に駆け……できる限りの早足で、腰をフリフリ向かってきた。一部のマミーはキングがいる本隊から別れて、建物の南へ回り込んでいく。
 リンネとセレーネたちか待ち構えているとも知らず、新生児室に近い南玄関からの侵入を図ったのだろう。
 夢心地は剣を鞘に納めたまま、まるでテニスコートに立っているかのように、両手で持ち構えた。
「よいか。一体、一体丁寧に対処するのじゃ。もしかすると包帯ぐるぐる巻きなだけの、ただの重症患者が混ざっている可能性もあるからの」
 ないない、と胡桃が顔の前で手を振る。
「重症患者はあんな元気に走……早歩きできないわよ」
 果たしてそうなのか。
「わからぬぞ。包帯の下に自立歩行を手助けするパワードスーツを着ている可能性が、一等宝くじに当たるぐらいはある」
「いや、ないでしょ」、とこれはロロン。
 マミー軍団とイレギュラーズの距離は、最初に姿を見つけてから半分しか縮まっていない。
 姿が見えたらすぐに長距離砲を放つ心づもりであったが、いまはまだマミーたちはバラバラで、うち損になる。対キングに取っておくことにした。
「それにしてもじれったいの。こっちから迎え撃ちにいく?」
 胡桃が痺れをきらせかけた頃、やっと先頭を早歩きしていたマミーがたどり着いた。呻きながらスコップを持ち上げる。
 夢心地はバックスイングした鞘で、マミーの頭を強打した。
 鈍い音とともに首があり得ない角度で後ろに倒れる。マミーはいきなり目が見えなくなってパニックを起こしたように、めちゃくちゃに腕を振り回し始めた。頭が後ろに向こうが、なくなってしまおうが、関係なさそうに思えるのだが。
「うむ。正しく死んでおるのじゃ」
 鞘を腰に戻し、剣を引き抜く。燃えながら滑り出て来た東村山を舞うように翻せば、藍色の夜に破邪の緋文字が艶やかに浮かびあがった。
 渦まきながら流れる炎が、マミーたちを次々に焼いた。
「ほいほいほいのほいっと。どんどん焼くのじゃ」
 胡桃とロロンも加勢して、ザコマミーを屠っていく。
 そこへ一悟が戻って来て、新生児室の前の芝は燃え上がる炎の海と化した。
(ザコは任せても大丈夫そうね)
七つの精霊が起こした花萌えの炎で体を包んだフルールが、春宵に沈丁花の香りを漂わせつつマミーキングの前に立ちはだかった。
「私の名前はフルール。ねぇ、マミーキング? あなたの本当の名前を教えて?」
<知ってどうする、小娘?>
 マミーキングの声は直接フルールの脳内に響いた。
「まず自己紹介、コミュニケーションの基本でしょ」
 ふん、とマミーキングは鼻で返すと、錫杖を振るってきた。
 炎の爪で受け止める。
 小さな花弁のような火の粉がぱっと四方に飛び散り、やや遅れて黄金の衝撃波が周りに広がった。
 衝撃波をモロに受けたフルールが体を折る。
「――っ、誰かがここにいるの? その人が憎いの?」
<黙れ>
 キングが錫杖を再び振り上げる。


 押し寄せて来たマミーたちを見て、英司は喉の奥で唸った。
(「おいおい、ハロウィンにゃまだ早いぜ。しかもえらく人間的な動きだ……」)
 南玄関でも戦闘が始まっていた。
 幸いなことに、マミーたちはここと新生児室の外の二手に分かれるのが精いっぱいのようだ。
 セレーネはスクラムを組んでバリケードを押すマミーたちを、見習い騎士たちとともに、隙間から剣で突き刺す。
 一進一退の攻防の末、バリケードを縛っていた縄が緩み、ぐらりと山が崩れた。
 リンネが後方から、机を蹴り飛ばして入ってきたマミーの頭を打ちぬいて倒す。その隙に、崩れたバリケードの下敷きになっている見習い騎士たちを、セレーネが助け出した。
 包帯ぐるぐる巻きの指が、セレーネの髪を掴み引っ張る。
「あうっ!?」
 後から入ってきたマミーたちが次々と異世界の皇女に群がったる
「こらこら。姫にダンスの申し込みをするなら、ちゃんと審査をうけないと」
 髪を掴むマミーの後ろにまわった英司が魔剣を振り回し、裂帛の気合を込めてその首を狙う。
 包帯とその下の干からびた皮膚を切ったところでピタリと止められた剣に空気が切り裂かれ、風が起こる。同時に刃の先端で制御を失ったエネルギーがスパークし、爆発した。
 頭部を丸ごと粉砕されたマミーは、髪から指を離すと、すとんとその場に尻を落とした。
「失格。はい、次の人どうぞー」
 髪からマミーの破片を払い落しながら、セレーネが立ちあがる。
「やだ、ここシャワー室があるかしら?」
「あるよ。好きなだけ使って、あとでね」
 リンネは見習い騎士たちを鼓舞すると、再びベアを組ませて前に送り出した。
 セレーネが盾でマミーたちを弾き飛ばした、そのまま方向を転換して、剣を横薙ぎに振り下ろす。
 深手を負って後退するマミーを、リンネの指示を受けた見習い騎士たちが追撃。順にトドメを刺していった。
「やっと片付いたね。いや、片付いてないけど。見習い君たち、悪いけど、ここを片しておいてくれるかな? 俺たちは外の応援にいくから、後をよろしく」
 英司はドアの前に残っていた机や椅子を脇に寄せて道を作り、レディたちを外にエスコートした。


 精霊の声でロロンは仲間のピンチを知った。
 体を震わせることで体内発光を促し、母なる海の響きを奏でてフルールのダメージを取り除く。
「ダメだ。傷は治したけど間に合わない! やられちゃう」
「わたしに任せるの」
 胡桃は、こやんぱんちをはめた手を組み合わせて前に突きだした。狙いはフルールに追撃を仕掛けるマミーキング。
 魔力のチャージ時間を知らせるかのように、炎狐が胡桃の顔の横でぐるりと輪を描く。こやんぱんちが光の粒子を集めてうなる。
「充填完了、コャー!!」
 必殺の一撃はザコマミーをまとめて貫いたうえに、キングに深刻なダメージをブチ食らわせた。
<ガッ!? おのれ、やりよったな>
 薄汚れた包帯の隙間の奥で、憎しみの炎が燃え上がる。
<あの偽女神官の息子の前に、お前たちから滅してくれるわ!>
 キングの体からどす黒い瘴気が染み出し、広がり始めた。
「させるか!」
 一悟は瘴気を吸い込むことも厭わず、二人の間にかけ込んで、燃えるトンファーをマミーキングの腹に叩き込む。
 炎が弾け、キングの胸に穴が穿れた。
 これを見ろ、と胸を手で押さえて呻くキングに写真を突きだした。
「もしかしてこの中に――」
 キングが腕を伸ばして写真を掴み取る。
<こ、こいつだ! こいつが永遠の命が得られると私たちを騙し、財宝を奪って逃げたのだ>
「え? 赤ちゃんがどうやって?」
「違うわよ。ここに輪廻転生したの、その……偽女神官の息子という人が」
「うーん。でもある意味ウソはいってねぇな、そいつ」
 一悟たちの目の前で、キングの胸に開いた穴がじわじわと閉じていく。自己再生能力がもともと異常に高いのか、それとも何か回復魔法を使ったのか。
 回りで呻いていたザコたちまで回復し、再び襲い掛かってきた。
「不死身に近いんじゃね、コイツら?」
「勝利は目前じゃ。あとひと踏ん張り、残る力を振り絞れい!」
 反撃の始まりは、フルール―がキングの腹を振るった紅蓮の爪だった。次々とイレギュラーズたちの闘志に引火して、燃え上がらせる。
 英司たちも加勢にきた。
 イレギュラーズの猛攻で辺りが昼のように明るくなった。マミーたちが灼熱の炎の中で身をくねらせ、燃え尽きていく。
 驚くべきことに、マミーキングが一階の窓を目がけて走り出した。
「わわっ! 一か八か、一人で赤ちゃんを殺しにいくつもりだね? そうはさせないよ」
 ロロンの体内のあちらこちらで激しく光が瞬く。
 体を砲撃形態に変形させると、走ってくるマミーキング目がけて魔砲を撃ちこんだ。
 光の尾を引いて波動弾が飛ぶ。
 マミーキングの腹に命中して爆発し、体を上下に引き裂いた。
 芝に倒れたマミーキングが、腕で熱光を遮りながらむせび泣く。
 上半身と下半身の傷口から触手のようなものが伸び、ずる、ずる、と芝の上を這って互いに絡み合い、引き寄せだした。また、再生しようとしているのだ。
<もう、こんな体でいるのはいやだ……。あのアンチ呪文を! 完全に死なせてくれ>
「その話、詳しく聞かせてくれ」
 英司が、そして他のイレギュラーズが、マミーキングを取り囲み、その顔を覗き込んだ。


 一悟がキングに奪われた赤ん坊の写真は燃えてしまったので、英司がハイペリオンの羽根を使って生まれ変わった『偽女神官の息子』を探し出した。
 キングが神鳥から抜けおちた羽に導かれて、リンネが治める『円環の森』に来たと言ったからだ。
 一悟が英司から指導をうけながらテレパスで赤ん坊を尋問したところ、マミーキングたちの魂にかけられた呪いを解く方法を聞きだすことに成功する。
「死神たるこの私の目の前で、魂の消滅なんてさせないよー。正しい輪廻の輪に乗ってもらうからねー」
 リンネが解呪の呪文を唱えながら灰のタクトを振るうと、横たわるマミーキングを光の玉が包んだ。
 フルールが光の玉にささやきかける。
「私はきっとあなたも転生の輪に戻れると思っているわ。そうじゃないと、魂は減る一方だし……寂しいじゃない?
だから、お眠りなさいな。子守唄なら歌ってあげるから」
 子守歌に揺られた光の玉は、ふわりと地面から十センチほど浮き上がった後、きゅっと縮まって天へ上っていった。
「ねえねえ、リンネ。あの赤ちゃんはどうするの」、とロロン。
「さて、どうしようかなー。とりあえず、成長してからの事だね」
 イレギュラーズの頭上で、星がキラリと輝いた。
「病院という場は何より清潔であることが肝心じゃ」と夢心地。
「そうですね。ではみんなで掃除に取りかかりましょう」
 セレーネの提案に、胡桃が元気よく手をあげる。
「はーい! もうひと頑張りするのー」

成否

大成功

MVP

奥州 一悟(p3p000194)
彷徨う駿馬

状態異常

なし

あとがき

マミーキングたちにかかっていた呪いは解け、その魂は輪廻転生の正しいサイクルにもどされたようです。
イレギュラーズたちが急いで院内の汚染を除去したため、赤ん坊をはじめ、入院患者たちに二次被害がでることはありませんでした。
『円環の森』はもとの静かで暮らしやすい領地に戻っています。

MVPはキングがなぜ病院を襲ったのか、その理由が分かるきっかけを作った貴方に。
ご参加ありがとうございました。

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