PandoraPartyProject

シナリオ詳細

絶許!!パカダクラ丸のみ事件

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●聞いてくれよ!
「兄が飼っているペットを殺してほしい」
 そう懇願してきたのは、30代ほどのとある商人――飛行種のマリムという男だった。
 並大抵ではない怒りを抱えた形相で、マリムは兄のアダムの非道さを訴えた。
「あの野郎のペットが、俺の『ローレルちゃん』を丸のみにしやがったんだ!」
 涙を浮かべるほど感情的になるマリムは、その詳細を語る。
「ローレルちゃんは、俺の大事な相棒だったんだ……それなのにあのブタ野郎、ヘラヘラしやがって! 新しいパカダクラを買ってやるからだと、ふざけんな!」
 パカダクラ1頭を丸のみにできるほどのペットとは――?
「確かに兄はあの蛇をよく手懐けているが、他のキャラバンのパカダクラを食ったのも1度や2度の話じゃないんだ。兄はその度に金で解決していたが、もう我慢の限界だ!!」
 マリムの話を聞かされていた【パサジールルメスの少女】リヴィエール・ルメス (p3n000038)は、パカダクラを丸のみするほどの大きさの蛇を想像して、どこか遠くを見つめていた。

●ペットの殺処分
「知り合ったキャラバンの方から、皆さんへの依頼を預かってきたっす!」
 招集された特異運命座標に向けて、リヴィエールは張り切って依頼の内容について説明した。
「ものすごくデカいペットは、大蛇のことっすね――」
 リヴィエールはジェスチャーを交えながら、パカダクラを丸のみにするほどの大蛇の大きさを表現しようとする。
「こう、馬車にみっちりはまるくらいの太さというか――というか、馬車をなぎ倒せそうな大きさで、10メートルくらいらしいっす……」
 説明を続ける内に、リヴィエールの表情はどんどん沈んだものになっていく。
「マリムさんのお兄さんが大事にされてるペットみたいっすけど、ペットを処分することに応じないので、内緒で殺してほしいと……了承を得ずに殺すのはよくない気もするっすけど――」
 リヴィエールは「パカダクラどころか、人間も丸のみにされても不思議ではないくらいの危険生物っすよね」、「被害が出てるのに、それを容認しているお兄さんもどうかと思いますし……」とぶつぶつとつぶやいていた。リヴィエールは渋い表情を見せて唸った後、
「――とにかく、引き受けてもらえるならありがたいっす」
 秘密裏に殺処分するための首尾は、マリムが整えてくれることになっている。マリムやアダムたちのキャラバンは、砂漠の町の一画に滞在する予定だ。アダムは町中まで大蛇のペットを連れ込むほど非常識ではないようだ。砂漠に面した馬車の駐車場的なところにアダムのペットも留まっている。マリムはアダムをその場から遠ざけるため、事前に連れ出してくれるそうだ。
「それにしても、パカダクラをなんだと思ってるんでしょうね」
 家族同然だったパカダクラを大蛇に食べられたマリムの気持ちを推し量り、リヴィエールは続ける。
「私だって『クロエ』を食べられたら、ぶち切れるだけじゃ済まさないと思うっす。マリムさんの気持ちも、わからなくはないっすね……」

GMコメント

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『ラサ傭兵商会連合』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。


●成功条件
 アダムのペットである大蛇の殺処分。

●シチュエーション
 町周辺の砂漠地帯。他のキャラバンも馬車を停めておくエリア。大蛇はそのエリアから少し離れた位置。
 パーキングエリアのような場所で、馬車で寝泊まりしている商人が騒ぎに気づく恐れもある。
 マリムは兄のアダムを食事に誘うため、すぐには戻ってこないでしょう。

●敵の情報まとめ
 パカダクラを丸のみにし、馬車をなぎ倒せるくらいの大蛇。全長10メートル。
 鋭い牙(物近単)と全身を使って薙ぎ払う、巻き付く(物近範)などの攻撃を用います。


 個性豊かな特異運命座標の皆さんの参加をお待ちしています。

  • 絶許!!パカダクラ丸のみ事件完了
  • GM名夏雨
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月18日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
海音寺 潮(p3p001498)
揺蕩う老魚
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
カレン・クルーツォ(p3p002272)
夜明けの蝶
河鳲 響子(p3p006543)
天を駆ける狗
チヨ・ケンコーランド(p3p009158)
元気なBBA
シャオ・ハナ・ハカセ(p3p009730)
花吐かせ

リプレイ

 多くのキャラバンが集う砂漠の町。一帯の砂漠はキャラバンのための駐車場として整備され、数十台には上る馬車が並んでいた。
 夕日が指すキャラバンの駐車場には、まだまだ人の出入りがあった。そこで寝泊まりをする者も多いらしく、軽食や日用品を売り歩く行商人が、馬車に滞在する客を見つけようと行き交っていた。
 『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)は馬車の間から大蛇の様子を窺っていたが、度々訪れる行商人の営業を睨みつけ、
「うるせえぞてめえ、こらあ! 散れ散れ!」
 仕事に支障が生じないよう、人払いのためにも、片っ端から行商人を追い払っていく。
 「ハッ……ペット殺したあ、くだらねえ仕事だぜ」と、グドルフはどこかやる気なさげにつぶやいたが、
「ま、カネさえ貰えりゃキッチリやってやるがね! ゲハハハ!」

 一方で、『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)は飛行能力を駆使し、大蛇の位置取りと周辺の地形を把握する。
 大蛇の北側には砂漠が広がるばかりだった。駐車場とは反対の砂漠方面に引き離すことで、無関係の者を巻き込まずに済むだろう。そう判断した潮は、大蛇を誘き出す段取りを他の者と詰めていく。
「なるほど……砂漠の方へ誘き出せば問題ないようですね」
 と、『花吐かせ』シャオ・ハナ・ハカセ(p3p009730)はファミリアー――鼠の使い魔を呼び出した。
「付き添いはこの子に任せます」
 シャオは蛇を誘き出すためのフォローを使い魔に任せ、自身は予定地までの偵察を請け負うことを申し出た。
 「それにしても……」とシャオは改めて、遠くに見える大蛇の姿を眺めながらつぶやいた。
「あんな大蛇では、犬も飲み込んでしまいそうな……」
 常に犬のことに重きを置くシャオは、わずかに表情を曇らせる。
「あまり気のりはせんが、わしもポチが不当に傷つけられたらと思うとのう……」
 ため息まじりにつぶやく潮のそばには、小判鮫のように付き従う小さなサメ――ポチの姿があった。
 『ポチ』という名前からも犬を連想しがちになるシャオは、「なるほど嫌ですね、殺しましょう」と即断した。

 ――かならずや、お力になって、さしあげましょう……おなじ悲劇を、これ以上、起こさないように。
 大蛇を誘き出すための囮役を買って出た『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)。自慢のゼラチン質の尻尾を揺らしながら、ノリアは水中にいるかのように空中を浮遊する。
 駐車場からは少し離れた場所――とぐろを巻いて動かない大蛇の前までノリアは移動する。大蛇は眠っているのか、ノリアが近づいても反応を示さない。
 『悪しき魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)、『夜明けの蝶』カレン・クルーツォ(p3p002272)、『天狗』河鳲 響子(p3p006543)の3人は、大蛇に近づくノリアを馬車の影から見守っていた。
「あれがペットの大蛇ね! うまく誘き出せたら、殺しましょう!」
 はつらつと殺意を口にするカレン。響子も被害が出てる以上は駆除しなければならないと割り切り、依頼の遂行に努める構えだった。
 同様に大蛇とノリアの様子を窺っていたことほぎは、「食べ物の恨みは怖ェなァ」とつぶやいた。しかし、何やら微妙な空気が流れたことをことほぎは感じ取ると、
「…………えっ、非常食じゃねェの?」
 パカダクラのことを非常食として認識していたことほぎに苦笑しつつも、響子は素朴な疑問を口にした。
「パカダクラって美味しいのでしょうか?」
 3人の背後に音もなく現れた人物――『元気なBBA』チヨ・ケンコーランド(p3p009158)は言った。
「まだヒトの味を覚えていないのが奇跡じゃよ!!」
 3人は一斉に、唐突に現れたチヨの方を顧みた。「この蛇自体に罪が無いのがちょっぴり悲しいがのー」と何食わぬ顔で言い添えるチヨに対し、
「気配を殺すなよ、バアさん」
 ことほぎは軽く悪態をついた。
 チヨは「ホッホッホ♪」と笑ってごまかしながら、
「ここは嬢ちゃんたちに任せたよ。わしはひとっ走りして道を確認して来るからのー」
 そう言った直後、チヨの姿は砂煙の向こうに消え、すでに砂漠の上を疾走する背中が見えていた。

 ノリアは大蛇に触れられるほどの距離まで近づいた。動く気配のない蛇に対し、ノリアはしっぽを揺らして食材としての魅力を猛アーピルする。
 ノリアの匂いに釣られたのか、蛇はとぐろを解き、ゆっくりと頭をもたげた。蛇の動きに合わせて、ノリアは透かさず距離を取った。
 心なしか、蛇は興味深そうにノリアを見下ろし、小刻みに舌を出し入れしている。
 このしっぽはつるんとした食感に、海塩の塩味と、チョコミントの香りつき――。
「――さあ、わたしを食べたくなってしまうと、いいですの!」
 そう言い放ったノリアは、蛇に背を向けて移動を開始した。蛇はまんまとノリアの誘惑に乗り、その巨体は砂上を滑り出した。
 蛇とノリアが動き出したのに合わせて、2匹のネズミがノリアに追従する。ことほぎは選りすぐりの大きなネズミを使い魔として使役し、シャオの使い魔と共にノリアのフォローに当たらせる。ノリアを見守っていた者たちも、蛇に気づかれないように並走して砂漠を進んだ。
 全力で宙を泳ぐノリアは懸命に尾ひれを動かすが、蛇の速さに危機感を覚えずにはいられなかった。
 秘かに並走するカレンは、「すごいスピードね……!」と感心しながらも、
「さすが、ローレルちゃんをローレルちゃんしただけのことはあるわ」
 引き離されないよう、カレンも全力でノリアたちに続く。
(これは……追いつかれ――?!)
 背後に気配を感じたノリアは、唐突に進路を脇へとそらす。ノリアに向かって牙を立てようとした蛇だったが、砂の中に頭を突っ込んだ。
 ノリアは紙一重の差で蛇から逃れたが、蛇の視線はノリアを捉え続けている。しかし、そこへ現れた使い魔のネズミたちが蛇の目の前を横切ろうとした。蛇はノリアからネズミに向けて意識をそらす。ネズミたちは、ノリアが蛇から充分な距離を取れるよう、時間を稼ぐ役目を担った。

 使い魔と視覚を共有していたシャオは、使い魔が蛇に襲いかかられた時点で感覚を切り離した。
 駐車場から充分に離れた地点――戦闘域となる場所で待機していたシャオは、その場に向かって来るノリアの姿をすでに確認できた。
 砂漠の上を必死に泳いできたノリアは、再度蛇の方を顧みる。その直後――。
「おぬしが食らっていいのは――」
 疾風の如く駆けつけたチヨは、拳を構えて蛇の横腹へと突撃した。
「わしの拳骨じゃよ!!!!」
 チヨの拳は確かな衝撃で蛇の横腹を突いたが、蛇は透かさずチヨの体に巻きつこうとする。しかし、チヨは即座に蛇から離れ、範囲外へと逃れた。
 蛇がチヨに向けて威嚇する間にも、絶望の響きを乗せたシャオの歌声は呪力を帯び、徐々に潮が満ちるように蛇を侵食していく。
 チヨたち以外の存在が続々と駆けつけたことで、蛇は体をジグザグに曲げながら飛びかかる瞬間を窺う。
 ――飼い主が帰ってくるかもしれねェし、なるべく早く終わらせねェと。
 ことほぎはそう考えつつ、呪力を引き出す媒介となる煙管を構えた。ことほぎが吹き出した紫煙は、たちまち呪力を凝縮した魔弾へと変化する。
 ことほぎの魔弾が直撃した瞬間に、蛇の体はもうもうと立ち上る煙に包まれた。蛇が怯んだ様子は一瞬で、取り囲もうとするイレギュラーズらに襲いかかる。
 接近し過ぎれば、蛇は瞬く間にイレギュラーズを捕えようと迫ってくる。常にぬるぬると動き続ける蛇は、長大な体を螺旋状に動かし、隙あらば獲物に巻きつこうとする構えが窺えた。
 ぐるりと輪を作る蛇の体を乗り越えながら、響子は攻撃の構えを見せた。
 響子はその右手に炎を出現させ、
「ローレルちゃんの仇……討たせてもらいます」
 火炎によって形成された扇から炎の力を発露させる。
 響子が扇型の炎を振りかざすと共に、凄まじい火炎が蛇へと放たれる。猛火にさらされる蛇は動きを乱され、斧を構えたグドルフはその隙を突こうと動く。
「さあて――クソヘビ野郎。覚悟はできたかよ?」
 グドルフの斧は禍々しい力を帯び、蛇の体を寸断する勢いで振り下ろされる。その刃が触れた瞬間、蛇はグドルフをはね除けるほどの力を見せ、分厚い体を瞬時に移動させた。
「しつけがなってねぇペットだな、おい」
 軽口を叩くグドルフは砂地の上に踏み止まり、即座に反撃に向かう。
「これはなかなか凶暴じゃのう」
 そうつぶやいた潮は、危険を顧みずに接近戦を仕掛ける者の身を案じ、対象を強化する支援術を施していく。
「誰かをローレルちゃんする前に、倒させてもらうわね」
 カレンは蛇の動きに注意を払いつつ、自らの能力を引き出す。人魂のような複数の疑似生命体を生み出し、カレンはそれらを蛇へとけしかける。
 各々の攻撃が入り乱れる中、蛇の注意はしばしばノリアに注がれているようだった。魅惑の食材――ノリアのゼラチン質のしっぽは獲物としてロックオンされていた。
 他の者を押し退けるために、砂地の上の体を鋭く滑らせ、蛇は瞬時にノリアとの距離を詰める。鉱物でできた杖を携えたノリアは、冷静に対処しようと身構える。
 ノリアは蛇を引きつけるように無防備な様子を見せ、蛇は思惑通りにノリアへと襲いかかった。カッと開かれた大口に収まってしまうかと思われたが、ノリアが手にしていた杖からは高圧高温の水流が透かさず放たれる。口内を傷つけられた蛇は、たまらずノリアの前から頭を引き戻した。
「お好きなだけ、噛みついてくださって、かまいませんよ?」
 ノリアは挑発的な一言と共に杖を向け、射出される高圧水流で蛇をけん制する。
 蛇はイレギュラーズに対し、一層攻撃的になった。攻撃を仕掛ける度に、蛇は頭を勢いよく突き出し、度々イレギュラーズを押し返すほどの力でけん制する。
 響子はその手に黒いキューブ状の物体を出現させる。見る見るうちに大きく膨れ上がるキューブは、蛇の体に覆い被さった。大部分をキューブの内側に覆われたが、蛇は弾かれたように外側へとすり抜け体をずらす。内にあらゆる苦痛を秘めた黒いキューブは静かに浮遊し、蛇の体を蝕む役割を果していく。
 ずるずると長大な体の半分を引き出す蛇の動きは鈍さを増し、グドルフは更に攻撃を畳みかける。
 グドルフが振り下ろした刃が蛇の体を深くなぞると、蛇は激しく体を波打たせてグドルフを跳ね返す。蛇からの衝撃を受け止めながらも、グドルフは攻撃の構えを崩さずに挑み続けた。
 「ホアアアアア!」と気合を入れるように雄叫びを上げたチヨは、目に見えてみなぎるほどのオーラを自身の周囲にあふれさせる。飛躍的な身体強化を可能とするチヨは、蛇を追い詰めようと一層苛烈に攻め立てる。
 身の丈ほどある錫杖を地面に突き立てる潮は、治療魔術を展開することで前線に臨む者を支援する。発露する魔力によって癒しの力を与え、潮は皆の体力を維持することに努めた。
 煙管を手にしたまま紫煙をくゆらせることほぎは、グドルフやチヨを援護しようと、魔弾と化す渦巻く紫煙を幾度となく発生させていた。
「ジイさん、バアさんがハッスルしてるのも見応えはあるけどよォ――」
 ことほぎの魔弾は隙なく蛇を捉え、ことほぎは悠々とした仕草でつぶやく。
「そろそろくたばってくれねェか?」
 激しく抵抗を続ける蛇をかわし続けるグドルフだったが、
「おい、コラ。その『ジイさん』には誰が含まれてんだ、おい」
 耳聡くことほぎの発言を問いただす。
「さすが、年の功というものね!」
 一方で、大弓を構えたカレンは「私も負けてられないわ」と勇み立つ様子を見せた。カレンが大弓から放つ一矢は、強烈な禍々しさを放ち、怨霊の力を込めた一撃を射掛けていく。
 尻尾の部分を激しく揺らして威嚇を続ける蛇だったが、頭の部分は馬車の駐車場の方角へと向き始めた。
 徐々に追い詰められていく蛇の動きを察知し、シャオは自らのオーラによって形成したロープを振り向ける。蛇を砂漠地帯に留めようと、シャオはロープをムチのように鋭く振り抜く。
シャオの攻撃によって打ち据えられる蛇は怯むような動きを見せていたが、即座に反撃に転じる。
 牙をむいてシャオの至近距離へと迫ろうとした蛇だったが、加勢するノリアは蛇に向けて強力な攻撃を放つ。鉄砲水のように激しく噴き出す水流――ノリアの体からあふれ出た海水は、蛇の体を押し返すほどだった。
 「さあ、どんどん行くわよ!」と言いかけたカレンは、ふと弓を引こうとした手を止めて、見えざる者の声に耳を傾けた。
「気づいたようね……ご親切にありがとう」
 独り言のようにつぶやいたカレンだったが、それは彼女にある情報を知らせた霊魂への言葉だった。
 カレンが霊魂と言葉を交わしている間にも、響子は冴え渡る動きを見せつける。蛇の攻撃を誘い、響子は牙をむいて突き出された蛇の頭を弾き飛ばす。
 気の流れを操る響子の体術は、蛇の生命力にも甚大な影響を及ぼしていく。響子は身を引く蛇を猛追し、その激しく的確な攻撃は蛇の体を宙へと浮かせるほどだった。
 蛇は非常にゆっくりととぐろを巻きながら、身構えるイレギュラーズとにらみ合いを続けていた。だが、蛇は傷だらけの体にぐったりと頭を預け、舌を出したまま動かなくなった。
「これで、ローレルちゃんの敵討ち完了――」
 そこへ響子の言葉を遮る男の声が響き渡り、皆は声の主の姿を探す。
 パカダクラに乗ってやって来た2人の男――兄のアダムと弟のマリムの兄弟が、イレギュラーズと大蛇の姿を見つけて駆け寄ってきた。
 マリムが追いかけてきたアダムらしき男は、「お前らーーーー!!」と半ば絶叫するように声をあげていた。パカダクラから降り、イレギュラーズと動かなくなった大蛇のそばまで近づくアダム。チヨはアダムと蛇の間に入るように立ち塞がると、「飼い主はおぬしか?」と問いただす。
「ええか、動物の行動に責任を持つだけでなく、きちんと管理できんのなら――」
 アダムにひとつ説教をしようとしたチヨだったが、蛇は途端にはね起き、止める間もなくチヨを丸のみにした。その場にいた全員が反射的に攻撃の構えを見せたが、蛇はすぐにチヨを吐き出した。
 チヨによってアゴの関節を砕かれた蛇は、今度こそ絶命していた。
「ひどい目にあったわい!!!!」
 唾液まみれになった状態で着地したチヨに目を丸くするカレンだったが、アダムに説教の続きをしようと、
「あなたもおまんまにはなりたくないでしょう? 今後はペットの管理にはとっても気をつけて――」
 アダムの方を顧みれば、マリムに抱えられたアダムは泡を吹いて意識を失っていた。目の前でチヨが食われた光景によほどショックを受けたようだ。
「いろいろな意味でショックを受けてるようだけど――」
 そう判断した響子は、依頼人のマリムに向けて言った。
「お兄さんのこと、慰めてあげて下さい。それはあなたの役目ですよ」
 響子のそばで頷く潮も、
「これに懲りて、おぬしの兄も肝に銘じることじゃろう」
 気絶したままのアダムを見つめてつぶやいた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。今回で2本目の悪依頼でした。前回の悪依頼は誘拐系でしたが、また今後もいろいろな悪依頼を出していきたいと思います。

PAGETOPPAGEBOTTOM