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シナリオ詳細

<ヴァーリの裁決> 理想を汚す腐食鬼

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幻想ことレガドイルシオン王国の北部に、やや大きな森が広がっている。
 空に向けて広がるように伸びる木々が、陽光も月明かりも打ち消して、一度入れば時間間隔さえ鈍くなる。
 それでも辛うじて伸びる明かりの中を、のろのろと影が動いていた。
 ぺきりと木の枝を踏み、草木を踏みしめる音さえ聞こえるかのような静寂の森。
 それらの影は、ゆっくりと森を進んでいる。
 何かの匂いに誘われるように、何かを追い求めるかのように、ただ、粛々と進み続けている。


 シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)は、幻想の北部の森林に領地を有している。
 気まぐれなる吸血鬼、遍歴の騎士でもある彼女が得たその領地は、どちらかというと訓練場というべき代物だ。
 彼女自身は日差しに傷を付けられることなどないが、その森の訓練場は、日差しが悪い。
 今日もシャルロットは気まぐれに訪れ、訓練にいそしんでいた。
(ひとまず今日の集団戦訓練はこれぐらいでいいかしらね)
 終了の号令を告げた時、シャルロットの耳が何かを捉えた。
 油断なく振り返り、長さの異なる二振りの愛刀を緩やかに構え。
「アヴァローナ様、いかがなさいましたか」
 執政官を務める男が声をかけてくる。
(何か……いる)
『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』
 呻くような叫ぶような声と共に、ソレが草影を突っ切ってシャルロット目掛けて突っ込んでくる。
 シャルロットはソレの突撃に合わせるようにして身を動かせ、紅き軌跡を閃いた。
 確かに炸裂した傷を物ともせず、ソレが振り返り、再び噛み付かんばかりに突っ込んできたのを片方で防ぎ。
 もう片方に収束させた紅い魔力の奔流ごと、打ち込むように貫けば、今度こそソレの身動きは停止する。
「これは……死んでる……」
 殺したわけじゃない。そもそも死んでいる。
 明らかに腐敗の進んだその姿は、生者には見えなかった。
「だ、大丈夫ですか、アヴァローナ様!」
 一瞬の出来事に固まっていた執政官が、慌ててシャルロットに声をかける。
「ええ。それよりこれが何か分かる?」
 片方の剣をソレに突きつけ油断なく問えば、執政官は首を傾げ。
「ぐ、グール、でしょうか。生きていた人間のようには見えませんし……」
「そんなものがここにいたのかしら……」
「近頃はとんと見かけておりませんでしたが……」
「そうね。私もここに来てから見た覚えはないわね。……ということは」
「ということは?」
「すぐに人員を割いて、明日はこの森の中で実戦訓練と行きましょう」
「じ、実戦ですが? 何との?」
「もちろん、こいつらよ」
 そう言って、もう一度、念のためにグールを貫いてから、執政官の方を向いた。
「まだいるとおっしゃるのですか?」
「ええ。実際、まだいくつか森の中から足音がするわ」
 シャルロットの言葉に、執政官が獄吏と唾を飲み込んでいた。

GMコメント

 さてそんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
 ヴァーリになります。

●オーダー
・グールの集団を討伐する

 ただし今回の依頼は、純粋な討伐依頼というよりも敵の居場所を探しては叩き潰す探索系になります。

 非戦スキルがあれば探索で有利になりますが、無くても問題はありません。

●フィールドデータ
 シャルロット・D・アヴァローナさんのご領地である訓練場です。
 時間間隔を忘れそうになるほど光が通りにくい森です。
 射線の確保が難しく、場合によっては範囲、広域系スキルが想定数通らない場合があります。

●エネミーデータ
・グール
 数は不明。かなり多くの数がいると思われます。
 知性を見受けられず、憎悪に満ちたうめき声をあげるばかりです。
 個体の実力自体はシャルロットさんの『紅流』と『黒顎魔王』を喰らってオーバーキルになる程度です。
 元々が死体なこともあって死に難く、EXFがやたら高い他は個体で脅威になることは少ないでしょう。

<スキル>
同朋形成(A):対象に食らいつき、対象へ毒性を齎すと共に狂気に陥らせます。
物至単 威力中 【猛毒】【狂気】【魅了】

●友軍データ
・アヴァローナ兵×40
 シャルロットさんの領地の訓練兵達です。
 皆さんに各5人ずつ付けられ小隊のようになります。
 基本的には付けられる方と同じような能力値になりますが、実際の使い方は自由です。
 平均的なイレギュラーズからやや格下程度のスペックになります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

  • <ヴァーリの裁決> 理想を汚す腐食鬼完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月09日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)
Legend of Asgar
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
大樹の精霊
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
ガヴィ コレット(p3p006928)
旋律が覚えてる
ソア(p3p007025)
愛しき雷陣

リプレイ


 視界の前を鬱蒼とした木々が生い茂っている。
 光が通りにくいのか、奥の方を見るのはここからでも至難の業だ。
(最近になってこの生きているのか死んでいるのかよくわからない連中が多くなってきたな。
 地獄が満杯なのか、それとも――蘇りなんて阿呆な夢物語を信じている馬鹿でもいるのだろうか)
 森を見据えながら、今回の敵がグールだと聞いている『死神二振』クロバ・フユツキ(p3p000145)は少しばかりの考え事をしていた。
「諸君、此度の訓練は実戦付きだ。敵はグールのアンデッド。
 人相手の訓練のように降参や白旗の通じる相手ではない。くれぐれも油断しないように。
 諸君らは兵。民を守る盾であり剣である。その誇りを胸に抱き戦ってほしい。
 そして、くれぐれも命を粗末にするしないように。諸君ら一人一人もまた、私にとっては大事な領民なのだから」
 この訓練場の主でもある『オトモダチ』シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)は前に出ると、兵士達に向けて言葉をかけていく。
「森の中にグールかあ……視界の効かない場所に、どれだけいるともわからないとなると厄介だね……」
 その演説を聞きながら、『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)はぽつりとつぶやく。
 その肩には小鳥が一匹、止まっている。
 掌を見せれば、肩に乗っていた小鳥がパタパタと飛んで、掌へちょこんと座りこむ。
 アレクシアはそれを『虎風迅雷』ソア(p3p007025)の方へ差し出した。
「ありがとう、預かるね!」
 そう言って預かれば、小鳥がソアの頭にちょこちょこ歩いていった。
「うーん、それにしても嫌な匂い! ボクはアンデッドは苦手だよ!」
 すんすんと鼻で空気を嗅いだソアは少しだけ顔をしかめる。
「狩っても食べられないし……楽しめないのは残念だけど、その分だけ早くやっつけたいな」
「不思議な森だね。光が入ってこないからかな?
 グールにカンケイなく変な感覚があって一度入ったらそのまま飲み込まれそうな気がするよ」
 森の方をじっと見つめて『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は言う。
「しかし、グール相手に山狩りとは。地味で地道な仕事になりそうです」
 森の中の獣道の情報を集めて地図にかきこんでいた『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)は完成品を見ながら溜息を吐いた。
 意外に広い。それに、獣道だって完全にこのままというわけでもないだろう。
 新しいものの発生や、グールに荒らされていてはこの地図通りともいかない。それでも、無いよりはましか。
「……それ以上に、グールの総数が不明、というのは厄介ですね。長期戦への備えが必要です」
 逆に、この大きさを踏まえれば一度の会敵で大量にぶつかることもなさそうであった。
「兵士さん達にもご一緒いただけるのですね」
 そういう『旋律が覚えてる』ガヴィ コレット(p3p006928)は微かに緊張しているように見える。
 心強くあると同時に、責任を感じるのだ。
 パンドラのあるイレギュラーズよりも危険性が高くなる。
 それ以前に、熟練の兵士ではない。訓練場で訓練している兵士達である。
「1人も欠けることなく戦いを終えられるよう、頑張りますね」
 頼もしい声を上げる。
(今回の仕事は森に潜む死人達を倒す事。
 視界が悪く、何処にいるかも分からない状態となると、無理に荒らして探索も難しいか)
 沈思黙考する『仁義桜紋』亘理 義弘(p3p000398)は班分けすることとなったメンバーの方へ視線を向ける。
 アレクシアとシャルロット、どちらも頼もしい相手だ。
「基本的に俺が先頭に立つ。おまえさん達には、左右両サイドと後ろに気を配ってもらえるか?」
 兵士との作戦を詰めて確認した後パシッと拳を掌に打ち付ける。
「おまえさん達も無事に戻れるように気張れよ」
 応、の声が響くのを受けながら、義弘は歩き出す。


「いいか、このような暗中でむやみやたらな突撃は死に直結する。
 万全を期して迎え撃つか斬り込むか、あらゆる角度から自分たちの選択を絞り込むんだ」
 森の中に入って少し、クロバは振り返ることなく、付き従う兵士達に声をかけていた。
 兵士達が小さく頷いて武器を握りなおすのが見えた。
「知性のないグールなら、おそらく自然と歩きやすい道へと流れるはずです。
 そういった箇所を中心に索敵しましょう」
 寛治は小隊の兵士達に指示を飛ばしながら自身も目ざとく木々の間に視線を配る。
 エネミーサーチは敵対心を持つ相手を感知する。
 その点で、今回の敵には相性が良かった。
 ガヴィは発動と同時、憎しみに満ちた感情を、周囲から感知する。
「感じます、こちらですね」
 目を開けて、クロバと寛治を先導するように歩き出して、少し。
 ガヴィは物陰に隠れるようにしながら立ち止まる。
 その向こう側、草を踏みしめる音と、うめき声がする。
「俺に続け。突出は許さない。一人として死ぬことは許さない」
 クロバの指示に兵士達が頷いた。
 そのまま、周囲を見れば、敵の数は目の前の8体ほど。
 ちらり、後ろに視線を配り走り出した。
 紅黒の刀が鮮やかな黒炎を纏う。
 その視線を受けた寛治は、兵士達に視線を配るや、ステッキの銃口をグールに向け、銃弾をばらまいた。
 幾つもの銃弾が駆け抜け、撃ち込まれたグールが身体を痺れさせながら呻いた。
 それに気づいた3体が驚きながら撃ち込まれた個体に近づいていく。
 その個体へ、クロバは駆けた。
 斬り払った斬撃は爆炎と共に炸裂し、グールの身体を吹き飛ばした。
 勢いのままに振り抜いた第二撃がグールを完全に滅ぼし、追撃とばかりに駆け抜けてきた兵士達がもう一体、グールを打ち破る。
『ヴァラァアアア』
 グールが発狂しながら襲い掛かり、食らいついてくる。
「回復はお任せください!」
 術式を展開しながら、ガヴィは叫ぶ。
 グールに噛み付かれた者達の近くへ歩みよる。
 苦しみ藻掻き、自傷にすら走る兵士達、その一人一人へ声をかけていく。
「落ち着いてください、今から毒を抜きます。それが終わったら、深呼吸して……」
 的確な指示に、兵士達が落ち着いていく。
 続くように寛治も再び仕込んだ銃口を1体のグールへ向けて、引き金を弾いた。
 恐ろしいほどに計算されつくした銃弾は鮮やかにグールの肉体を撃ち抜いていく。
 それだけで殺すことは、難しい。しかし、撃ち込まれた銃弾はグールの屍肉に食い込み、その身動きを阻害する。
 それだけで十分。それこそが狙いだった。


「悪いやつらがいるの。お願い、案内して」
 森の中に入ったソアは直ぐに森のささやきに耳をすませていた。
 聞こえてきたのは、数多の願い。
 これから倒さなくてはならない数がかなりのものになることを自覚しながら、ソアは一番近くの声の方へ走り出した。
「いた……」
 ちらり、振り返って他の者達がついてきていることを確かめるや、ソアは草影から跳ぶように駆けた。
 一斉にソアの方を向いたグールのうち、1体と視線がかち合う。
「ふっふーっ、お先にいただきっ!」
 吐きそうな腐敗臭に鼻をつまみたくなりながらも、もう一歩踏み込んだ。
 ばちりと雷霆が爆ぜる。
 打ち込んだ掌底が真っすぐにグールの肉体に炸裂する。
 それを見ながら、ソアはもう一度、もう片方の掌底を叩きつけた。
 強烈な肉の裂ける音がして、グールの腹部がごっそり削り取れた。
『グゥゥゥ』
 その状態のまま、こちらに噛み付かんとしたグールを、ぴょんと跳ねて躱す。
 ぐぎぎと動く首が死体であることを如実に示してくる。
 しかし、その個体は脳天と心臓辺りを吹き飛ばされるやぐらりと倒れていった。
 それを為したイグナートは、突きを放った姿勢を立て直しながら周囲を見渡す。
「あと4体かな? 防御にセンネンして俺達が行くまで止めておいて! 最低2人で!」
 周囲を見渡して、敵の数を視認するや、イグナートは指示を兵士達に向ける。
 呼応するように声を上げた兵士達がそれぞれグールに取り付き守りを固めていく。
 仄暗い森の中だが、暗視のおかげで殆ど外の昼間と同程度に見える。
「次に行くのはどれにするかキめた?」
 イグナートの問いに、ソアが頷いて爆ぜるように駆け抜ける。
 それに続くように動き出す。
 その壮絶な連撃が迸るのに合わせて、イグナートは至近、拳を握り振り抜いた。
 雷が吼え、黒雷はグールの全身を駆け抜け、内側から破砕する。


『森に異物が入ってきていないか』
 アレクシアの問いかけはやはり混乱しそうになるほどの数を指し示した。
 アレクシア達3人の班は既に1度、グールと会敵していた。
 幸い、4体ほどであったこともあって、処理するのに時間はかかっていない。
 今はそれを終わらせて少しの休息タイムだ。
 励起されたクロランサスが淡く輝かせ、アレクシアは班の面々を集めていた。
 面々が範囲内にまで近づいた辺りで、制御している魔力を魔術に転換していく。
 ブレスレットから零れ落ちた魔力の雫が地面へぶつかると同時、浸透して描くは大輪の花。
 色とりどりの花びらが咲き誇り、さながら小さな花畑のような光景を映し出す。
 充実した生命力は疲労を打ち消し、魔力を充実させる。
「何の考えもないと思っていたんだけど、アンデッドの割には森のアドバンテージを理解しているわね?」
 付着した腐肉を払いのけ、シャルロットは倒れ伏すグールを見下ろしていた。
「来るぞ」
 義弘の超聴覚が、聞き入れたのは、枝か何かを踏み抜いた音。
 ほぼ同時、踏み出てきたのはグールだった。
 そいつはこちらを見るや否や、一気に駆けだし、突っ込んでくる。
 一番近くにいた兵士がその攻撃を受ける頃には、更に追加のグールが4体。
 最前線へその身を走らせる。
 眼前の1体。踏み込みと同時、握りしめた拳を下から上へ、懐をぶち抜くように撃ち込めば、グールの懐に風穴が開く。
 死に至らぬグールが噛み付いてくるが、対処はしてあった。
 呼吸を短く、気持ちを平静に、それだけで十分だ。
「さぁ、休憩は終わりよ」
 シャルロットの言葉に合わせるように兵士達が雄叫びを上げてグールへ立ち向かい、それに続くように跳びこんでいく。
 2体のグールの間に立つようにして、走る紅き軌跡。
 紅の閃光に切り刻まれたグールが、ぽとりぽとりと腐肉の一部を零し始めた。


 がさり、音が鳴る。
 草影から姿を現したのは、金毛をじとりと濡らした少女――ソアだった。
 ソアはその姿を見て止めると眼をキラキラと輝かせ、そのままストン、と身体を落とした。
「アレクシアさん、ボクたちもうクタクタ!」
 疲労感をそのままに、そういうソアと、同じく疲労感を見せるイグナート。
 その後ろからは兵士達の姿も見える。
「もうちょっとだけ、待ってて」
 アレクシアはそんなソアにそう声をかけた。
 それとほぼ同時、別方向からも草が揺れる音がして、もう一つの班も姿を見せる。
 アレクシアは仲間達が集結するのを待ってから、清花の輝きを起こす。
 疲労感を取り除き、魔力を充実させる光が輝き、仲間たちの力を取り戻させていく。
 幾度となく輝かせ、今度はより多くの傷を負っているイグナートへ調和を齎していく。
 白黄の花はその身を包み込み、安定した癒しを齎していった。
『来るよ!』『くるよ!』『一番おっきなの!』
 その耳に、木々の声がする。視線を上げた先でソアもそれに気づいた様子を見せた頃――がさり、と音がして、周囲から複数のグールが飛び出してきた。
 その数は多い。ざっとみるだけでも20は下るまい。
 最速で動いたのは、もちろんソアである。
「これで終わりにするよ!」
 迸る雷霆に身を任せ、ソアは一番近くにいたグール目掛けて駆け抜けた。
 寛治は自分の近くにいる個体目掛けて傘を杖のようにしてひっかけると、くい、っと引いた。
 つんのめった個体の懐へもぐりこみ、足を払う。
 バランスを崩していく。
「生憎と、間合いを選ばない技でして」
 起き上がろうとする個体へ、眼鏡をクイッと上げながら不敵に笑む。
 続くように、クロバが、義弘が動く。
 ほんの一瞬だけ早く、義弘は敵陣へ到達していた。
 圧倒的な数の多さ。それ故にこそ、気にすることなく、それを放つ。
 漢の拳は、足は、複数のグールを相手に、その全てを以って嵐が如き猛攻撃を撃ち込んでいく。
 ある個体の首が吹き飛び、ある個体の身体が軋み、ある個体の腕が捩じり取れる。
 暴れまわるその果てに、体勢を崩す個体が多い。
 紅眼が輝く。鬼気を宿し、全身を覆いつくすは殺意の権化。
 深呼吸を整え、ただ前へ。斬撃の中心に寛治の攻撃でつんのめった個体を置き、双刀を振り抜いた。
 斬撃は影を踏み、真っすぐに黒き焔が疾駆する。
 直線上にあった全ての個体が、焼け付いて溶けた。
 それを見ながら、もう一歩前、爆ぜるように駆けるは偶然に打ちどころの甘かった個体。
 壮烈なる連撃が黒炎を引きながら走り、削り落としていく。
 射程外の一部、健在だったグールたちが怨嗟の声を上げて近づいてくる。
 ガヴィは怨嗟を巻きながら動き出したグールたちの方へ歩みながら、魔力を集めていく。
 その身に降ろすは熱砂の精霊。
 手を伸ばし、魔力を収束させて、齎すは熱砂の呪縛。
 絡めとられた複数のグールたちが身動きを止めてうめき声をあげる。
 イグナートはそんな個体の中で、混乱のままに他のグールへと食らいついた個体の方へ走り抜けた。
 一つ呼吸を入れ、気の流れを調整する。握りしめた拳に雷霆が走り、その色を黒へ変じ、拳を球体状の魔力が覆いつくす。
 踏み込み、全体重を乗せて、右半身のないその個体へ、拳を叩きつける。
 雷が爆ぜ、その個体は左半身を消し飛ばされ後ろへ倒れていった。
 兵士達が駆け抜け、攻撃を加えたうちの1体がふらりと崩れ落ち、そのままむくりと置き上がった。
 それを見た瞬間、シャルロットはその個体の眼前へ走り抜けた。
 握る双刀の一本でそれの足を縫い付けるように貫いて、もう片方で上段から真っすぐに斬り下ろす。
 真っ二つに分かたれたそれは、そのまま大地へ落ちていく。
 振り返り視界に移るは、残り6。苦戦の可能性はありえなかった。


 その後、順調に一番大きな集団を落とし、再び別れたイレギュラーズは別段の問題なくグールたちを殺していった。
 そして、戦いの終わりをソアとアレクシアが森からの情報で聞き知った後、イレギュラーズと兵士達は森の外に出てきていた。
 辺りへ転がるグールだった物のの山は多い。
「しかしまあ、こんな奴等がどうやってわき出て来たんだろうな。
 森の中に墓でも有るわけでもなさそうだったが」
 グールだったものを見ながら、義弘は一人呟いた。
(今日は満足いく結果になったわね。
 領主としての仕事も出来て、兵士達に領主の強さを見せられたし)
 個人的な感想を胸に抱き、ふと視線を兵士の方へ向け、思い出したように口を開く。
「怪我した兵はちゃんと申し出るように」
 大なり小なりの傷はその場での治癒が出来ている。それでも念のためには、と指示を飛ばす。
「……このまま土に還って出てこないようになればいいんだがよ」
 静かにそう言い残し、火葬されるグールだった物を義弘は見つめ続ける。
 ガヴィもまた、同じように火葬に消えるアンデッドを見ながら、そっと弔いの黙祷を捧げる。
 ぱちぱちという、火の音が聞こえてくる。
 燃える腐肉の臭いも気にならなかった。

成否

成功

MVP

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした、イレギュラーズ。
なんちゃってゾンビパニックホラー風サーチ&デストロイでした。

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