PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<ヴァーリの裁決>Gentle lullaby

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 キラキラと――
 ビロードは艶やかな光沢を反射してステージへの道を彩る。
 ふわふわと――
 足の裏に感じる毛並みの深さは、おおよそ感じたことの無い上質な物だと分かった。
 言われるがまま、ステージへの道を歩いて行く。
 足首に付けられた紋章は逃げ出さない為の足枷だ。
 ステージの上に立てば眩しいスポットライトで視界がぼやける。
 視線を落とせば、仮面を付けた貴族達が自分を見ていた。

 カツカツとガベルが鳴らされ、ざわついた声が静まる。
「さて皆様、オークション会場へようこそおいでくださいました」
 司会の男が口上を述べ、貴族達の目が急かすようにギラつき出した。
「――美しく柔らかい髪に宝石の様な瞳。透き通る肌は傷一つ無い。これ程の商品は滅多にございません。
 さあ、十万ゴールドから!」
 次々に声が上がる。釣り上げられていく己の値段。
 震える指先をぎゅっと押さえた。
 親に捨てられてしまった自分の行く末など、もう誰も保証してくれない。
 全身が震えて立っている事すらままならない。

 けれど、真っ直ぐに此方を見つめる貴族が居る事に気付いた。
 周りの貴族と同じように豪奢なドレスを身に纏い、羽根飾りの付いた仮面を被っているけれど、その瞳はどこか優しかった。
 この貴族であれば、自分を虐めないのでは無いかと、そんな気持ちにさせてくれる。
 希望を与えてくれる眼差しだった。

 ――だから、その貴族が自分を落札してくれた事が嬉しかったんだ。


「皆さんには、悪徳貴族になって貰いますー」
 のんびりした口調で『旅の占い魔女』セスカ・セレスタリカ(p3p007979)は集まったイレギュラーズに語りかける。
「……」
 ギルド・ローレットのカウンターで、唐突に話し出したセスカに首を傾げたイレギュラーズ。
「悪徳貴族になって、奴隷を買って来てくださいー」
「あ、待って、待って。話しが突拍子も無いからもう少し詳しく」
 沈黙を同意と受け取ったセスカが話し出したのをイレギュラーズは割って入る。

「悪徳貴族ヅラをして、変な仮面を被り、綺麗なドレスを来て、オークションで奴隷を落札してくださいー」
「うん。話しは分かった」
 これは、潜入捜査的な何かなのだろうと、イレギュラーズは得心した。
「いくらはたいても構いませんー」
「え? お金は?」
「みなさんは奴隷を連れて、代金をとある悪徳貴族のツケにして、スッと席を立ちます」
「ツケに出来るんだ?」
「出来ます」
 実はこの地域――ティラシアでのオークションは完全に違法なのだ。
 商人も貴族も、ツケにされて奴隷を掻っ攫われようと泣き寝入りする他無い。

「奴隷達には、その後沢山優しくしてあげてくださいー。そのまま引き取っても良いですよー」
 悪徳貴族や商人が自分達に復讐する心配は無いのかと疑問を投げかけるイレギュラーズ。
「皆さんの存在は、イレーヌ様が秘密裏に、煙に巻いてくれますのでー」
 権力で握りつぶすというヤツだ!
「オークション会場を出るときにちょっと戦闘になるかもしれませんがー、皆さんなら大丈夫だと思いますー何より重要なのは、買い取った奴隷達に優しくしてあげる事ですのでー」
 よろしくお願いしますと頭を下げたセスカはイレギュラーズを送り出した。

GMコメント

 桜田ポーチュラカです。
 悪徳貴族ヅラして奴隷を買ってきて、やさしくしまくる依頼です。
 仮面を被り、良い服を着て、オークションで奴隷を落札しましょう。
 そして、奴隷に優しくしてあげてください。

■依頼達成条件
 オークションで奴隷を落札する
 奴隷に優しくする

■フィールド
 幻想のティラシアという地域です。
 月に一度の奴隷オークション。その会場です。
 オークションパートと交流パートにわかれています。

■オークションパート
・きらびやかなドレスコードで、ゴージャスな仮面を被り、悪徳貴族ヅラをします。
・オークションで奴隷を買います(いくらはたいても構いません)
・代金をとある悪徳貴族のツケにします。
・奴隷と一緒にスッと席を立ち会場を後にします。
・黒服と戦闘があるかも知れませんが、ちゃちゃっとどうにかしましょう。本題じゃないのです。

■交流パート
・なんと、実は悪徳貴族は心優しいイレギュラーズだったのです。
・買って来た奴隷がどんな子なのか教えて下さい。私に。
・奴隷に優しくしてあげてください。
・そのまま引き取っても構いません。
・実は、関係者の奴隷はここで出会ったとかでも大丈夫です。

■同行NPC
『旅の占い魔女』セスカ・セレスタリカ(p3n000197)
 世界中を旅して占いなどをしている魔法使いの女の子。
 旅の路銀も少ないため、もっとギルドに顔を出そうと決意した。
 魔法を使って攻撃や回復を行います。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

  • <ヴァーリの裁決>Gentle lullaby完了
  • GM名桜田ポーチュラカ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月09日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
鶫 四音(p3p000375)
カーマインの抱擁
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
希う魔道士
武器商人(p3p001107)
闇之雲
ソア(p3p007025)
雷虎
バルガル・ミフィスト(p3p007978)
酔狂者
メルランヌ・ヴィーライ(p3p009063)
翼より殺意を込めて
オウェード=ランドマスター(p3p009184)
黒鉄守護

リプレイ


 真っ暗な会場にパッと明かりが灯る。
 一番前の壇上にタキシードを着た仮面の男が現われお辞儀をした。
 此処はオークション会場。奴隷を買い漁る悪徳貴族達が集う場所。

『カーマインの抱擁』鶫 四音(p3p000375)は濃い紫色のドレスに仮面をつけてオークション会場へ足を踏み入れる。悪徳貴族になれるというのだ。不思議な体験だと袖を広げてみせる。
 自分は貴族ではないけれど、振りをするぐらいならできるだろうか。こういう時に肝心なのは、問題無いと押し通す気迫だと四音は目をカッと開いた。
 四音の見た目ならば、我儘なお姫様といったところだろう。
 とりあえず意味深な態度や微笑みを浮かべ毅然とした態度で臨む。
「そういうのは得意なんですよ? ふふふふ……」
 そこはかとない深淵が見えるような気がする。
 一番最初の奴隷は愛らしい少女だ。灰色の髪でオドオドした表情がどこか友人を思い出す。
 いくらでも吊り上げていいのであればと、どんどん金額を上げていく。
「では、そちらのお嬢様が落札ということで、宜しいでしょうか!」
「お代はツケで……」
 なんて、本当に大丈夫かと内心ビビりながらも、四音はにっこりと笑ってみせる。
「ハハハ! このような見窄らしい者どもが雁首揃えて買われるのを待っていると言うか!
 世の中はまさに愉快そのものよのぉ!……おっと、失礼。私は結構興奮しやすいタチでしてね」
 ついはしゃぎすぎたと『死神二振』クロバ・フユツキ(p3p000145)は仮面を抑えながら高笑いをする。
 仮面の奥の本心は真逆。このような場所今にでも叩き潰したいぐらい腸が煮えくり返っていた。
「次の商品は儚い陶器のような少女です! 愛玩用は勿論、非力なので実験道具にも最適です!」
 儚い陶器とはよく言ったもので、ようは脆弱で貧相な子供ということだ。身体も弱く無茶な仕事には耐えられないだろう。クロバはギリリと歯を食いしばる。
「どうせ使いつぶすのならすぐ買いかえられる方がよい」
 値段はつり上がり、膨れ上がる。それを漏れなく全部悪徳貴族に叩きつけた。

「悪徳貴族、思う事がない訳でもないんだよねぇ。混沌に召喚される直前に色々ね……まぁ今回のとは無関係だけど」
 美しい髪を掻き上げながら『希う魔道士』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)はオークション会場の壁にもたれ掛かる。豪華できらびやかな貴族服に身を包み、ゴージャスな仮面が彼の顔を飾る。
 顔に掛かる魔術紋は化粧で隠し両手にはシルクの手袋を嵌めた。
 ヨゾラは次のオークション商品を見上げる。どんな子が現われるだろうかと目を凝らした。
「次の商品は愛らしい猫。一応人間の形も取れます。どんな姿なのかは買った人のお楽しみです。ですがこの美しい毛並みから想像して貰えれば自ずと答えは見えてくるでしょう」
 ヨゾラはスポットライトに照らされた猫を見つめ、内心はその事で頭がいっぱいになる。
(猫……猫! 猫だー!)
 愛くるしいポーズが溜らない。素が出てしまわないよう必死に抑え、優雅に華麗に悪辣に、金に糸目は付けずにあの猫を落札するのだ!
「いやー、他人の金でするデカい買い物はいいねぇ。
 それが悪徳貴族の金なら実に後腐れが無くてよいものだ」
 男寄りの美しい衣装に身を包んだ『闇之雲』武器商人(p3p001107)は小さな声で呟いた。
「なかなか様になるであろ? ヒヒヒ!」
「うん、とっても綺麗。ボクはどうかな? こうやって綺麗な服を着て格好つけてみるの憧れていたの」
『虎風迅雷』ソア(p3p007025)は武器商人にドレスの裾を摘まんでみせる。
「良いじゃないか」
 にこにこと嬉しそうに笑うソアは、この日の為に沢山練習したからお披露目みたいで楽しいと小声ではしゃいで回る。けれど、仮面越しに目が合った奴隷の女の子を見つけ、ドキリと心臓を鳴らす。
「あ……!」
 ソアそっくりの人間種の少女がオークションに掛けられていたのだ。
 その瞬間ソアは物凄い値段で手を上げていた。
 とんでもない値段をつけたソアに、周りがシンと静まり返る。
「で、では。そちらのお嬢様が落札と言うことで!」
 ひしっとソアは奴隷の少女を抱きしめて会場を後にした。

「ワシの家系は無名で昔から不自由では無かったが……奴隷救出もまたワシの使命じゃワイ!」
『ティブロン海賊団“重戦騎”』オウェード=ランドマスター(p3p009184)は傲慢な貴族を演じる。
 まずは三倍の値段を出して驚かせるのだ。動揺する会場の悪徳貴族達。
「そんな値段払える訳無いだろ! 俺達に高く買わせる為の策略なんだろ!」
 殴りかかってきた悪徳貴族の拳をわざと受けるオウェード。
「お客様。争い事は御法度でございます」
「おい、くそ! 放せ! アイツが悪いんだよ。俺は悪くねぇ!」
 黒服に押さえつけられ、連行されていく悪徳貴族。
「すまない……助かった……」
「いえ、此方こそお見苦しい所をお見せ致しました。さあ、オークションの続きをお楽しみ下さい」
 オウェードは奴隷の子供を連れて席を立つ。

「……ふむ。些か奇怪な形での依頼ですね。ひとまずオークションの方は頑張りますか」
『影』バルガル・ミフィスト(p3p007978)はインスタントキャリアで仮面を着け、貴族らしく周囲に溶け込む。不自然にならない程度に彼等と会話を楽しむ。
「おや、貴方は以前お会いした方。お届けした商品はお楽しみ頂けましたか? あぁ今回はとある『お方』の使いという事で。今回の事は御内密に、お互い面倒事は避けましょうねぇ?」
 正義として正しくあるより、悪党として紛れ込む方がバルガルにとって楽なのだ。
 新しい奴隷が運ばれてくる。
 バルガルは特段この仕事に思い入れも無いと、三倍の値段で適当に買い付ける。
「あぁ、お支払いは『あの方』へのツケで」
 はいそうですかと通らぬかと思いきや。何故かツケで通るのだ!
『翼より殺意を込めて』メルランヌ・ヴィーライ(p3p009063)は、今回の作戦が素敵なものだと意気揚々と頷いた。悪い奴を金銭的に壊滅させるなんて心が躍るようだ。
「でしたらとことんまでやってしまいませんとね」
「何かおっしゃいましたか?」
「いえいえ。わたくしのお眼鏡にかなう豪勢な方が居たら、恋人になってもよくてよ、と」
「ほほう? それは……」
 人生に飽きた暇な貴婦人を装い、良い香りがする肌の綺麗な魅力でオークションに来ている悪徳貴族達を白熱させるのだ。自然につり上がっていく金額にメルランヌは赤い唇をにっこりと形作る。
「では、この子は私が頂きましょう。……あら、この宝石も素敵ね。これも頂くわ。あとこれも」
 次々と宝石や金のネックレスを奴隷につけていくメルランヌは悪趣味すぎる程に飾り付けてそそくさと会場をあとにする。

 オークション会場の外。
 馬車に乗り込もうとするイレギュラーズを黒服が取り囲む。
「お待ちください! 貴方達は奴隷の料金を払って居ません」
「もっと金が欲しかったのかね?」
 オウェードとバルガルが殺さぬように黒服をなぎ払う。
「わたくしの脚は高くてよ。感謝なさい」
 メルランヌは美しい足をドレスから出して黒服を蹴り上げた。
「命を軽々と道楽と金儲けの道具としてしか見てないお前らへの授業料だ。
 その価値は高くつくと知れ――!」
 クロバが格好いい口上と共に剣を振るう。
 ソアは死なせてしまわない程度にガッてする。
 昏倒する黒服達。さあ、馬車に乗り込み、脱出だ――


「もう、追手の心配は無いな」
 溜息を吐いたクロバは隣の奴隷の少女へと顔を向けた。
 この子達に食事を与えてやりたいが、真似事とはいえ悪徳貴族の振る舞いをしていたのだクロバを警戒しているだろうと、それを解く所から始める。
「怪我とかは無いか?」
「はい。大丈夫です。助けてくれてありがとうございました」
「家族とかは……」
「……焼き討ちに遭い、全員亡くなりました」
「そうか」
 少女の振るまいからしてどこぞの貴族の娘だろうか。
 しかし、お家騒動のカタにされ、こうして売り買いされるような扱いをされ、奴隷の身に落とされる。
 何処かで聞いた話だと、クロバは頭をガシガシと掻いた。容姿など全く似ていないが、その生い立ちに『彼女』を見て暗い気持ちになった。
「そうだな。でも悪いようにはしねぇ。キミの居場所を必ず見つけてみせるよ。だから、今は安心して眠るといい。もう大丈夫」
「……はい」
 泣きそうになる少女の頭をクロバはぽんぽんと撫でてやった。

 家に帰ってきた四音は灰色の髪をした少女の手を握る。
「私はこういう苦難に陥ってる子の助けになれることが好きなんです。目一杯優しくしますよー」
 まずはお風呂に入ろうか。温かい湯船に浸かれば落ち着くだろう。
 背中を流して、髪の毛を乾かして、櫛を入れる。
 ふわふわのパジャマを着せて、ご飯を共に食べよう。
「何処に住んでいたんですか?」
 四音は少女に微笑みかけた。少女は恥ずかしそうに幻想の貧しい村だと語る。
「ご家族は?」
 これには首を横に振る。奴隷にされた身寄りの無い少女。まるで友人のようだ。
 まあ、何処にでもある話ではあるけれど。それでも、少しだけ少女の事が気になった。
「大丈夫、私の友達にも奴隷にされてしまった子がいますけど、今は笑顔で生活していますよ。あなたもきっとそうなれますからね?」
 その言葉に少女は安心したように微笑んだ。少女の人生がどう転がって行くのか楽しみだと、四音はお気に入りの玩具を見るような目で彼女を眺めていた。

「改めて初めまして! 体は元貴族だけど本体はそうじゃないヨゾラだよ!」
 ヨゾラは買って来た奴隷の猫を持ち上げて風呂場に連れて行く。
「獣種なのかな、旅人なのかな……?」
「えっと獣種、です」
「そっかそっかー!」
 わしゃわしゃとお風呂で洗って、毛並みを乾かす。
 綺麗にブラッシングしたら、ふわふわもこもこの猫が現われた。
「可愛い! にくきゅうもぷにぷにだー! にゃーって! にゃーって!」
「にゃー!?」
 人の形になった猫はヨゾラの頭をぐいぐいと放すように押した。
 新しい洋服で着飾って、美味しいご飯を食べさせてあげる。
 奴隷時代に何を食べていたのかは分からないが、とりあえずスープからだろう。
「食べれそうならパンとか色々用意するね」
「ありがとう」
「良かったら……うちの領地に来る?」
「いいの?」
「勿論! 猫も猫好きさんも沢山いるよー。のんびりゆっくり、君の願いを叶えよう!」
 ヨゾラの笑顔に猫も嬉しそうに微笑んだ。

 武器商人は奴隷の少年を引き寄せる。金色の左目と赤い右目が印象的な幼い子供。
「我の小鳥とお揃いの目だ。近くで見るともっと可愛いねぇ」
 どうしようかと武器商人は思い悩む。最初はギルドの従業員として雇い入れようと思ったけれど、小鳥も喜びそうだし家に迎え入れるのも悪く無い。
「ま、それは追々キミが選べばいい事か。おいで、可愛いコ。まず服をもう一着買おうか」
 貴族に売られるのだから身なりは清潔にしている。けれど、何処へ行くにしろ替えの服はあった方がいいだろう。
「かっこいいのでも可愛いのでも、キミのお気に召すままに。それからご飯を作ってあげるからお食べ。
 人間、まず食べないと弱るからねぇ」
 料理は最近よく作っているのだ。色々と試行錯誤もしている。小鳥に食べさせてあげたいから。
「何か食べたい? しばらくありつけてないなら中華粥にしようか」
「ん……」
 この少年を自分達の子供にすると言っても小鳥は喜んで頷いてくれるだろう。
 だって、こんなに、可愛いのだから。

 ウルと名乗った少女はソアとうり二つの少女だった。
 金色にややツリ目気味の金色の瞳。身長もソアと同じ。
 けれど、厳しい生活ですっかり痩せている。
「可哀想に」
 ソアは少女の頭を撫でるがそこには獣耳は無い。尻尾も無い。手足もソアのように毛で覆われていない。
 彼女は人間種なのだ。
「えっと、貴族じゃなくてゴメンね、実は……」
 ソアはウルに包み隠さず貴族じゃない事を自白する。そして彼女は自由なのだと。
「そのうえでボクからのお願い。あなたが良かったらもう少しの間ここにいてもらえる?」
 ソアが本当は虎で、いつか人間に成ることが夢なのだと。完全な人の姿になれないのだ。
「だからウルを見ていると人間になったボクがいるみたいで嬉しいの」
 痛んだ髪を切りながらソアは少女に語る。ソアが着れなかった服。可愛い靴。
 いつか履こうと思って大切に仕舞っておいておいた夢の結晶をウルが身につけてくれている。
 それが嬉しくてソアは涙を零しながらウルに抱きついた。

 優しくするとはどうするかとバルガルは首を傾げる。
 外道の自分の後輩として扱うならともかく、真っ当な存在として生かすならば。
「まぁまずは飯でしょう。此処まで痩せた身では動くも億劫な事でしょうに」
 バルガルは適当に買って来た物で、適当におかゆを作る。デロデロした何かが出来上がったが、固形物を突然胃に入れるのは良く無い。
「飯を食べたなら次は休息を。見るにカオスシードのようですし湯の類は平気ですね?」
「うん」
 小さく頷いた少年にバルガルは風呂を指し示す。ゆっくりと湯船に浸かる少年はバルガルの優しさに安心したような微笑みを見せた。
「体を洗ったなら今日は眠りなさい。寝床と毛布はあちらにあるはずでしょうし。
 ……あぁ、取って食うつもりも寝込みを襲うつもりもないですのでご安心を」
 ベッドに入る少年を見つめバルガルは何を教えようかと思い悩んでいた。
 勉強だろうか。生きていくうえで必要最低限、仕事場で働くならば算術に品物の管理。
「護衛等には武術も必要でしょうし、そこらの事は丁寧に教えますよ」
「ありがと」
 だから、今はゆっくり休めというように、ぎこちない掌を少年の頭に置いた。

「で、奴隷ねぇ」
 メルランヌは人を鎖で縛る趣味は無いと少女の師になることを決意する。
「昔、獣同然であったわたくしが師にしてもらったように」
 ラッピングと称して集めた宝石やネックレスはさっさと換金して少女の生活を整える為の資金とする。
「あなた名前は……」
「デュレッタです」
 少女は語る。年は二十。さる貴族の愛人用に無理やり家から売られ、寵愛を失って更に売られたと。
「黒髪が艶やかだこと。それにその冷たく厳しい目、とてもいい目だわ。猛禽のよう。
 貴方は今日から自由の身……ですけど。わたくしの所でいろいろ学ぶ気はなくて?」
 物理的なもの、世の渡り方、生きて行く上で大切な事を沢山。
「わたくしの学んだ麗式格闘術は淑女の為の闘い方。そしてその中で一番大事なのは、「自分の主は自分」だという考え方。性急かしら? まぁ……わたくしの誘いは心の隅にでも置いていて頂戴な」
「いえ……」
 メルランヌの元で世間を深く知り、生き抜く術を教わるのは必要な事だと賢いデュレッタは分かったのだろう。
「そう。なら今から、わたくしは貴方の師よ」
 デュレッタに格闘術と同時に生き方の心得、学問、作法等を教え込ませると決意するメルランヌ。
「貴方は気高い。他人の下で働くのは嫌かもしれない。だったらわたくしを利用しなさい」
 生き抜くために。師になるということはそういうことだ。
 頑なに閉ざした心を無理やり開くつもりは無い。けれど、いつか暖かいお茶とお菓子が、世界の広さが彼女を前に進ませてくれるとメルランヌは信じている。
「その上でいずれ世にはびこる非道を叩く『仲間』になってくれるといいのだけど……」
 デュレッタは差し出された手にそっと指を乗せた。

 オウェードはインコの飛行種の青年をオークション会場から連れ帰っていた。
 青年ではあるが、どうみても女の子にしか見えない。所詮「男の娘」である。
「オークションの最初でも言ってたが彼は男じゃ……お見事じゃな……ワシは嫌いじゃないのう」
 オウェードは生粋の武人である。きめの細かい優しさはぱっと思いつかないのだ。
 様子を見に来ていたセスカに助けを求めるオウェード。
 セスカが青年を見るとアレゴリア、トリヤデぬい、とらぁ君クッションに囲まれて居た。
「ふふふ、十分優しいじゃないですかー」
「そ、そうかのう」
 そうして交流しているうちに青年が「声真似と歌が上手い」ということが分かる。
「怖がられると思っていたのじゃが……意外と懐いてくれるのう……驚いたワイ」
 青年の今後をどうするかとオウェードは思い悩む。
「そのまま引き取ってみてはいかがでしょうー。随分と懐いているみたいですしー。ねえ、あなたもそっちの方がいいでしょうー?」
「はい。ここに居られるなら、居たいです」
「そ、そうか……ううむ。お主が居たいなら、構わぬぞ」
「ありがとうございます! オウェード様!」
 少女にしか見えない青年は嬉しそうにオウェードに抱きついた。

 後日、とんでもないツケを払わされた悪徳貴族が地団駄を踏んだという話がイレギュラーズに回ってきたのだった。

成否

成功

MVP

オウェード=ランドマスター(p3p009184)
黒鉄守護

状態異常

なし

あとがき

 イレギュラーズの皆さん、お疲れ様でした。
 助け出された子供達はそれぞれの未来へ向かっていくでしょう。
 MVPは素敵な出会いをされた方にお送りします。
 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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