PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<ヴァーリの裁決>血涙天を穿ちて、薄命砂塵の如くに

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ハンマーランドより救援要請
 ハロルドよりローレットへ、緊急の救援要請がはしった。
 怪王種化した古代獣エビルグラントォルの出現により、領地は怪王種の大軍隊によって襲撃を受けている。
 兵を率い、戦える者が必要だ。
 至急救援を求む。
 至急救援を求む。

 情報によれば、ハンマーランドへ一時的に派遣された王国兵60名からなる特別大隊が神翼庭園ウィツィロ・新開発地区に発生した古代獣とその分裂体群によって壊滅し撤退したという。
 古代獣は怪王種化し、きわめて危険な状態にあるとのこと。

●今日も一日ナイスハンマー!
「『貴方はハンマーランドの復興に貢献されました。よってこれを送らせていただきます』……っと」
 ここは幻想建国以前より深き伝説のねむる大地、神翼庭園ウィツィロ。
 つい先日おきたハンマーランド崩壊のニュースと共に伝説の神翼獣ハイペリオン復活のニュースが流れいろんな意味で世間を賑わせたこの土地に、立て続けのニュースがあった。
 それはローレットいちのハンマーマンと名高いハロルド(p3p004465)が領地をいきなりこの土地へ移し、ウィツィロ家がハンマーランド経営及び崩壊によって被った多額の負債を肩代わりするという謎の暴挙に出たことであった。
 が、これに対し貴族アナリストたちは高評価。ハイペリオンは勇者王の実質的な仲間であり、幻想に眠っていた生きた伝説である。
 しかしぶっちゃけ本当に封印されてるのか疑わしかったしウィツィロ家は建国前までの功績のおかげで貴族を続けていただけでたいした利益や影響力も無かったことからなかば放置されていた形ばかりの貴族であったため、貴族連中にとってノーマークのところへいきなりハロルドというウォーカーが最高のタイミングで滑り込んできた形だったのだ。
「フッ、これでいいだろう。HLRC名誉会員証がまた増えてしまったな」
 『ハンマーランドは俺が護る』『ナイスハンマー』を合い言葉に今日も巧みな経営戦術と異様に手厚いローレット仲間からの支援によって、ハンマーランド再建へ向けて邁進している。しているが……。
 貴族連中が評価はしても『介入』はしてきていない理由が、実はある。
「事務仕事はここまでだ」
 うーんと背伸びをして、デスクを立ち、事務所の玄関へと歩いて行く。
 事務員達に『外回り行ってくる』と言い残すと、玄関脇にかかった帽子とコートと、そして聖剣リーゼロットを手に取り――扉を開けると。

 『血雷ノ古代獣』グラントォルが大地を突き破って現れ、咆哮によって大量の分裂体を発生させていた。
 六つの翼を持った山羊にも似たフォルム。角は真っ赤な電撃をそなえ、周囲には無数の雷が降り注いでいる。その巨大さは見上げるほどで、近づくだけでも命を落としかねない凶悪さであった。
 一族に伝わる巻物を手に駆け寄ってくるサニーサイド・ウィツィロ。おでこの広いオーバーオール女子である。チャームポイントは身体に巻いた鎖鉄球。
「グラントォルは封印から目覚めたばかりで、分裂体を増やしてる段階なのだわ。今攻めれば勝てるかも知れないのだわ!」
「慌てるな」
 手をかざし、そして剣を肩に担ぐ。
「俺のカンが言っている。奴は……古代のままのヤツじゃねえ」
 するとどうだろう。
 分裂体の一つが突如として巨大化。
 まるで人間のようなフォルムをとると、グラントォルへと食らいつく。
 突然のことに驚いたグラントォルを強引にねじ伏せ、肉を食らい角をもぎ取り、消滅させた。
「知ってるかサニーサイド。最近はな……『怪王種』ってのが出回ってるんだぜ」
 山羊頭をもつ巨人が、角のハンマーを天に掲げて咆哮した。
 『血雷怪王』エビルグラントォルの、誕生であった。
 聖剣を握りしめ、凶悪に笑うハロルド。
「サニーサイド、ローレットに救援要請だ。人の夢に土足で踏み入るやつぁ、ブッ――殺す!」

GMコメント

 このシナリオはPC各自が小隊を率いて戦う大規模戦闘シナリオです。
 詳しくは以下の小隊指揮ルールをご覧ください。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

■■■小隊指揮について■■■
・このシナリオには小隊指揮ルールが適用されます。
 PCは全員小隊長扱いとなり、十名前後の配下を率いて敵部隊と戦うことができます。
・兵のスキルや装備といった構成内容はおおまかになら決めることができます。
 防御重視、回復重視、機動力重視、遠距離砲撃重視、特定系統の非戦スキル重視……といった感じです。細かいオーダーは避けましょう(プレイング圧迫リスク回避のため)
・使用スキルや戦闘パターンの指定は不要です。(プレイング圧迫リスク回避のため)
・部下の戦意を向上させるプレイングをかけることで、小隊の戦力が上昇します。
 先陣をきって勇敢に戦って見せたり、笑顔で元気づけたり、料理を振る舞ってみたり、歌って踊ったり、格好いい演説を聴かせたり、効率的な戦術を指示したりとやり方は様々です。キャラにあった隊長プレイをお楽しみください。
・兵のデザインや雰囲気には拘ってOKです。
 自分と同じような服装で統一したり、自分の領地にいる戦力を選抜したり、楽しいチームを作りましょう。特に指定が無かった場合、以下のデフォルト設定が適用されます。
・兵のデフォルト設定:ハンマーランド警備兵
 多種多様なビルド構成。主人に似て大体何でも出来る。


●おまけ要素『自領兵の動員』
 自分の領地を持っているなら、その領地から兵隊を連れてきて戦うことができます。
 この際他国の領地とかでもOKとします。たぶん10人くらいで社員旅行をしていたとかそういう理由がつきます。
 自分の領地らしい兵隊設定を考えて、プレイングにぶつけましょう。

■■■シチュエーションデータ■■■
 このシナリオは『区画防衛パート』と『ラスボスパート』の二つに分かれます。

■区画防衛パート
 只今エビルグラントォルは分裂体を大量に生成し、領地へ広く進軍させている状態です。
 これ自体が動き出して暴れ回るのはまだ先でしょう。
 まずは『ハンマーファーム』『ハンマーマーケット』『ハンマーフォース』『ハンマーランド』の四区画を防衛してください。
 防衛が遅れると壊滅してしまうので、2個小隊ずつの計4個中隊規模にわけて防衛を行うとよいでしょう。

■ラスボスパート
 分裂体を倒されたことで『血雷怪王』エビルグラントォルがついに動き出します。
 神翼庭園ウィツィロ・新開発地区のエビルグラントォル発生地点へと軍を集中させ、最後の戦いに挑みます。

●選択要素『撤退と死力』
 『ラスボスパート』直前、自分の小隊が一定以上の損害を受けていた場合以下の二点から対応を選択することになります。
 『自分を残して撤退させる』か『全員で死ぬまで戦う』かです。
 皆さんはイレギュラーズとして運命に愛されています(通称パンドラ復活が使えます)が部下たちはそうではありません。
 部下達を撤退させた場合、身軽になり覚悟が座ったことで単独の戦闘力に補正がかかります。
 全員で死ぬまで戦う場合、小隊全体の戦闘力が平たく上昇しますが部下死亡のリスクが急激に高まります。

■■■エネミーデータ■■■
・血雷ノ眷属
 分裂体たちの軍勢です。
 翼のはえた山羊、人を呑む大蛇、蝙蝠の群衆などで構成される凶悪かつ狂暴なモンスターで構成されています。
 一部は怪王種化がおきており、中ボス級の力を持ちます。
 電撃系のBSをもつものが多く、対策できると有利。

・『血雷怪王』エビルグラントォル
 山羊の頭をもつ巨人です。
 雷の力をもったハンマーを武器に一騎当千の戦いをします。
 とにかくえげつなく強いので、チームの結束を高めたり残ったメンバーで固く連携をとったりと万全の状態で挑みましょう。

●怪王種(アロンゲノム)とは
 進行した滅びのアークによって世界に蔓延った現象のひとつです。
 生物が突然変異的に高い戦闘力や知能を有し、それを周辺固体へ浸食させていきます。
 いわゆる動物版の反転現象といわれ、ローレット・イレギュラーズの宿敵のひとつとなりました。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <ヴァーリの裁決>血涙天を穿ちて、薄命砂塵の如くに完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2021年03月31日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
フォークロワ=バロン(p3p008405)
嘘に誠に
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
微睡 雷華(p3p009303)
雷刃白狐

リプレイ

●永き後日談のブレイブサーガ
 聖剣が、手になじむ。
 初めて握ったその日のことを、とても思い出せはしないけれど。
(なに、今回も守ってみせるさ。俺は愛した少女は守れなかったが、人々の平和は守り通した男だぞ。それに――)
 『ハンマーマン』ハロルド(p3p004465)は強く柄を握りしめ、そして凶悪に笑った。
「今は仲間がいるからな! 頼んだぞ、HLRC名誉会員の諸君!」
 振り向けば揃った仲間達。
 仮面を手にした『嘘に誠に』フォークロワ=バロン(p3p008405)がサーカス団のように仰々しくおじぎをした。
「これはまた一段と強力な敵が現れましたね。ハンマーにはお世話になっていますし同じ国の領地として最大限助力いたしましょう。伝説の神鳥様にもあってお話してみたいですしね?」
 そういって顔を上げ、我が劇団員を紹介しましょうとばかりに後ろに並んだサーカスの一団を見せた。
 ラッパや太鼓で賑やかに飾った、一見して移動サーカスの一団だが、彼らの目にはどこかよく研いだナイフのような鋭さがあった。
「えっ、またハンマーランドに襲撃ですか……? 復興支援中ですし、見過ごす訳にはいきませんね」
 領民たちの戦闘準備を終え、配置についた『ジョーンシトロンの一閃』橋場・ステラ(p3p008617)。
 彼女にはよくなじむ、ほぼほぼ鈍器のグレートソードを背のホルダーに装着した。
 領民たちは観光でやってきた人々だが、ハロルド領の装備を借りて良い具合に防御が整っているようだ。半数くらいパン屋とか肉屋とかだけど。
「ナイスハンマー!!!」
 そこへ元気に手を振りながらやってきた『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)。
 わんこの集団とそれを飼育するもふもふ住民たちとのセットである。
「ここではこういう風にするって聞いたけど、何だか楽しい挨拶だよね!
 あっ、ところでここってペット連れてきても大丈夫? お庭とかで飼ってる子達連れて来ちゃったんだけど、お馬さんとかパカダクラさんとかも平……気……」
 陽気にるんたったしてた焔に、『優光紡ぐ』タイム(p3p007854)がスッと南の方角を指さした。
 巨大な六翼羊頭の怪物が雷をばちばち暴れさせながら怪物の群れを大量に生み出していた。
「なんだ大変なことになってる!!!!」
「むしろこの瞬間まで気付かなかったんだね?」
「ハロルド君のことだからまたそういう派手なアトラクションだとおもって……」
「ん、んー」
 ないとは言い切れないのがハロルドである。
 さておき。タイムもタイムで領民と共に観光にやってきたのだが、さっきの怪物を見た領民達が早くも殺気立っていた。
「遊園地っつうからどんな退屈な遊び場かと思えば、楽しめそうじゃねぇかよぉエェ!?」
「腕が鳴るぜェ!」
「ヒャッハー!」
「よく燃えそうですね」
「あらそえ、もっとあらそえ……!」
 放っておいたら勝手に突っ込んでいきそうなので、タイムはバスガイドさんの帽子と旗をもって彼らを統率していた。
(状況がいまいち飲み込めないけどハロルドさんとサニーサイドさんの夢を壊すわけにはいかない! ここは私がしっかりしなくては!)
 笛をくちに加えたまま、タイムはピュイーっていいながら怪物を振り返った。

 一方こちらは『宵闇の調べ』ヨハン=レーム(p3p001117)。
 ヨハン=レーム領オールドヘイヴンより派兵(名目上は観光)した兵達を整列させ、号令をかけていた。
「我々は尊き命を守る為、敵国であろうと介入する。
 人々は手を取り合う時! 信念の剣を掲げよ!」
 ちらりと見ればハロルド領の、今にも人の目とか耳とかもぎそうな顔してる悪人ヅラの兵達がこっちを見ていた。歯と目を剥きだしにして。
(さて、ハロルドさんの私兵といっても幻想の人間でしょう。協力はしても信用はされないかな。僅かな綻びを突かれるかもしれませんし……)
「おい、おまえ」
 先頭の一人がビッと指を立ててヨハンをさした。
 早速北方戦線の話題を持ち出されるのかと身構えた、そのとき。
「閃電バルドの息子だな!」
「えっ」
「後でサインください!」
「えっ」
「俺たち元々鉄帝民なんで」
「えっ」
「スズさんの写真あったら言い値で買います」
「えっ!?」
 歯と目ぇかっぴらいたまま、すげえ友好的にからんできた。
 『雷はただ前へ』マリア・レイシス(p3p006685)の領民もわりと快く受け入れられていた。
「訓練の成果を見せる時だ!
 生きて帰る為に死力を尽くそう! 死を恐れよ! それでも尚! 前へ進む勇気こそが! 人間に限界を超えた力を与える!
 なに! 私が君達の盾になる! 援護は任せたよ!」
 ダンッ、と軍靴を鳴らし一斉に敬礼する兵士達。グロワール・ドゥ・ティーグル、ブラーツトヴォ街道に位置する防衛学校の兵達である。守護神トラコフスカヤちゃん像が鋼のアームをガゴンを胸の前で打ち合わせ、低い声でニャーンと鳴いた。動くんだ、これ。
「わたしたちの役割は、主さまに迫る万難を排し、その道を切り開く事……。使用人魂の見せ所、だよ」
 その一方で、『雷刃白狐』微睡 雷華(p3p009303)は彼女と同じ戦闘メイド部隊を編成し、臨時メイド長として彼女たちを統率していた。
 古めかしい銃剣を構え、丸眼鏡の内で凶悪に目を細めるメイド達。
 雷華もまた刀の柄をそっと撫で、焔のほうを振り返り見た。
「今日の私は、お仕事モード……」

●ハンマーファーム
 『トリヤデさんありがとう』の札がかかったここハンマーファームは、ハイペリオンのちっちゃいやつと戯れることのできる牧場型娯楽施設である。
 ハイペリオンソフトクリームやらハイペリオンホットケーキやらハイペリオン唐揚げなどを目ぇかっぴらいたハロルドの殺人笑顔ポスターで宣伝されている。
 そんな建物が、巨大な有翼山羊型眷属によって踏み潰された。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
「園長おちつけ!」
「いま行くのはまずい、ひとりでいくのはマズいって!」
 目から血涙流しながらかけ出そうとするハロルドを、ハンマーフォースの隊員たちが羽交い締めで拘束している。
 そこへ追い打ちのように襲いかかる山羊と狼を混ぜたような怪物たち。バチバチと赤い雷をちらしながら、牧場の雛ペリオンたちへと迫っていく。
「ペ、ペリヤデ……」
 身を寄せ合って震える雛ペリオンたち。
 だが案ずることはない。
「密集陣形! ファランクスで迎え撃て!」
 ヨハン率いる鉄帝重歩兵たちがパワーアーマーからスチームをあげつつ展開。
 牧場を守るように整列すると、ヨハナによる笛の音によって一糸乱れぬ前身を始めた。
「行くぞ! 鉄帝国の魂を見せてやれ! イオニアスデイブレイク!!」
 彼らを蹴散らそうと山羊眷属たちは雷を纏って突進していくが、それをヨハン隊はがっしりと角を掴み固定。ダメージはヨハンの流し込む電力によって修復されていった。
「僕は父さんのような剣士にはなれない……だが、これが僕の戦い方だ!」
 ここは僕たちが抑えます! そう叫んだヨハンに対して、ハロルドは殺人笑顔(デススマイル)で答えた。
「徹夜で作り上げた夢一杯のポスターを踏み潰された痛み、とくと知れ」
「俺らのボスはちょいとカゲキだぜぇ」
「血ぃ見せるぜ血ぃ」
「キヒヒヒヒヒヒ!」
 全く同じ殺人スマイルで剣を構えるハロルド隊。
「サニーサイド、そしてテメェら。目の前にいる男が何者なのか、改めて知る時だ。
 テメェらの目の前にいるのは、かつて世界を救った男だぞ。さぁ、征くぞテメェら! 俺に続けッ!」
 目指すはハンマーファームに投入された敵部隊の主力、有翼山羊型の怪王種である。
 周囲に大量の雷を落としながら突進してくるこの怪物に対し、ハロルドは聖剣の力を解放。
 それを部隊全員と同期させると、全員一斉に、かつ全く同時に、かつ超高速で、かつ補足不能な走行距離で、かつ超高圧な打撃をたたき込み、そして弾丸のように駆け抜けていった。
 光を纏った十人規模の『弾丸』である。
「何ッ……! この速度を、全員だと!? 貴様らは一体……!」
 脚の骨をはじめ各所の部位を破壊され、よろめく眷属怪王種。
 ハロルドは部下達と一緒に殺人笑顔で振り向いた。
「忘れたか? ここはハンマーの聖地なんだよ。極まってるんだよお! ガチビルドなんだよおお!」

●ハンマーマーケット
 お土産売り場でポジトリ君帽子とかいう青い鳥そのまんまかぶったみたいな帽子をかぶってみる焔。
 そのまま空をみあげると、大量の蝙蝠が雷を纏いながらこちらに迫ってきているのがわかった。
「わー、これはやばやばだね。どうする?」
 振り返ると、『ハンマー』って墨汁で縦書きしたみたいなTシャツをきたマリアが同じように敵の群れを見上げる。
 蝙蝠眷属の中央には、ひときわ巨大な蝙蝠型眷属が陣取っていた。怪王種化した固体というのはあれで間違いないだろう。
「そうだね……あの真ん中を飛んでるデカいのは私の部隊で引き受けるよ。まわりの全部をひっぺがせる?」
 とりようによっては無茶ぶりに思える質問だが、焔は親指を立てて返した。
「任せて、バッチリだよ!」
 皆いくよ! といってパカダクラに飛び乗る焔。
 後に続く面々も馬やパカに騎乗し、もふもふの力を高めていった。
「モフモフのパワーで敵の戦意をそいでいこう! その間ボクが敵を引きつける!」
 焔が槍をかざして回転させると、炎が舞って空へと上がる。ファイヤーダンスのようなその有様に、蝙蝠たちが走光性のある虫のごとく集合していった。
 そこへもふもふパンチやもふもふスローによって回復や攻撃の手段を根っこからそいでいき、焔は焔で持ち前のタフネスで蝙蝠たちの攻撃を回避していく。
 怪王種個体はその強さゆえに焔に引きつけられることはなかったが、それがかえってマリアの作戦にハマった。
「砲撃隊構え、とらの陣!」
 怪王種個体に狙いをつけ、一斉に砲撃を開始するマリアの歩兵達。
 肩に担いだ大砲が次々に火を噴き、直撃をうけた巨大蝙蝠は低空飛行状態にはいりつつ雷を発射。
「させないよ!」
 マリアは突如質量を持った残像を作り出すと、雷のほとんどを代わりにうけとめた。
 そんなマリアにトラコフスカヤちゃん像が頭から回復ポーションの瓶をだぱーしてくる。
 ヒーラーなんだ、これ。
 第二の雷が打ち込まれよう……としたが、二度目の砲撃によってそれは阻まれた。巨大蝙蝠の放つ電力が弾に吸い取られ、体力の減少もあって巨大蝙蝠はズズンと地響きをたてて地面に墜落していった。

●ハンマーフォース
 ウィツィロの土地をまもる前線基地としても機能するハンマーフォース。
 他の区域が観光地である一方、ここだけガチガチに軍事施設であった。
 兵のほとんどは出払っているが、代わりにタイムとフォークロワの部隊がこの区域の防衛にあたっていた。
 見張り塔から双眼鏡をのぞき込むタイム。
 西の空から襲来する巨大蝙蝠の群れに、キッと表情を硬くした。
「フォークロアさん。周囲の通常固体は私の隊で引きつるね。フォークロアさんの部隊は敵の主力を一点集中で撃破して!」
「委細承知」
 お先へどうぞと丁寧に手をかざすフォークロア。タイムは頷き、見張り台からぴょんとジャンプした。大きなスカーフの両端を掴み、まるでパラシュートみたいに広げてふんわりと飛行しつつ着地。
「お待たせ! まずは私が強化術式を付与するからみんなは作戦どお――」
「虐殺タイムじゃああああああ!」
「ヒャッッハーーーーー!」
「よく燃えそうですねえええええ!」
「魔物も女の子扱いすれば女の子になるんだヘヘヘヘヘ!」
「ああっ、待って!」
 釘バットやバタフライナイフを持った獄人……っていうかオーガみてーな集団が頭に『タイム祭り』みたいなハチマキして走って行った。
「ここでわたしが可愛らしくみんなを応援したら背景にホワっと花が咲くところでしょ!? ちょ、もう! 誰も聞いてないわね!」
 いつのまにかチアガール衣装に着替えポンポン両手にもったタイムが頭の上でぶんぶん振ってみせると、両目かっぴらいた獄人女性が片手に灯油缶片手にガスバーナーを持ってニヘッて笑った。
「軍事施設は……よく燃えそうですね」
「やめて!?」
「あらそえ……もっとあらそえ……!」
「誰!?」
 派手な突撃で敵部隊をしっちゃかめっちゃかにしていくタイム隊。
 しかしそのスタイルがハマったようで、フォークロワ隊は効率的に敵主力固体だけを狙って攻撃をしかけることができた。
「さぁ、ここで新たな演目を演じましょうか! 主役はもちろん私達です」
 次々に走り出すアルトマーレサーカス団。
 火を噴くピエロや毒のナイフを投げる奇術師、猛獣使いやダンサーたちが一斉に襲いかかり巨大蝙蝠へと攻撃を浴びせていく。
 一人一人の攻撃は小さなものかもしれないが、重なり合えばそれが決定打となる。
「『自らの血に溺れ、悶え苦しみ、己の不運を呪う様』――」
 フォークロアのつぶやいた詩の一編が呪詛となり、サーカス団の攻撃を回避していた巨大蝙蝠に直撃。それまで少しずつ浸透していった呪詛が繋がり、心臓部を破裂させる。
「本日演目は、これにてお開き」
 仰々しく頭を垂れるフォークロアの後ろへ、巨大蝙蝠が頭から墜落していった。

●ハンマーランド
「小隊指揮というのは慣れませんが心強いですね、矢面には拙が立ちますから任せて下さい」
 武装したパン屋や肉屋たちがお弁当を構える中、ステラは単身巨大蛇の群れへと突っ込んでいった。
 前後左右から次々と襲いかかる蛇に食いつかれながらも、巨大な剣で『叩き潰して』いく。
 丸呑みにされようがお構いなしに内側から突き破り、怒濤の勢いで敵を殲滅していった。
 受けたダメージは橋場隊から次々とパスされるお弁当をもぐもぐすることで高速回復。
「いいぞ領主様!」
「領主様は俺達が支えないとな!」
「領主様つぎこれ食べて!」
 ステラをみんなで餌付けする会みたくなってるがちゃんとした戦闘である。しかもかなり有効な。
 そんなステラをフォローするのは雷華率いるメイド隊。
「わたしの主さまになってもらいます。これより3刻、わたしたち使用人部隊が主さまの剣となり、盾となりましょう」
 ステラをマスターと認定したことで本気モードとなった雷華は、ステラを遅う大量の敵の群れめがけて完璧な連携でもってカウンターアタックを仕掛けた。
 射撃と銃剣突きによる火力集中と適切な散開によって被ダメージを分散させ、その上で雷華が斬りかかっていく。
「制圧――疾風――迅雷」
 戦場をジグザグに駆け抜ける黒い風。すべてが通り抜けた後には、刀をカチンと納めた雷華と輪切りにされた蛇たちがあるのみ。
 そして――。
 雷華は、こちらをゆっくりと振り向く巨大な人型怪王種エビルグラントォルを見上げた。

●『血雷怪王』エビルグラントォル
「よし、キミたちの仕事はここまでだ。僕は完全な勝利しか望まないモンスターとの戦いに蛮勇やヒロイズムなど不要、僕の兵ならわかるな? 撤退!」
「此処まで、ですね。復興支援に来て死なせる訳にはいきませんもの?」
 味方の部隊を撤退させるヨハンとステラ。
 雷華もまた加わり、エビルグラントォルへと走って行く。
 振り向いたと同時にすさまじい雷が襲うが、ヨハンが雷をその身でうけ、拳を地面に打ち付けることで電撃を受け流した。
「今です!」
 ヨハンの左右を駆け抜けるステラと雷華の斬撃がエビルグラントォルの脚を切断。
 よろめいたエビルグラントォルはすぐさま脚を再生させ踏みとどまるも、タイムとフォークロワの部隊がそこへ合流。
「あとはイレギュラーズたるわたしがどどんと頑張ってくるから獄人さん達は待っててね! ね!?」
「貴方にピリオドを」
 部下を必死で帰らせたタイムのタイムはどーけんとフォークロアの放つ大量の投げナイフがエビルグラントォルに直撃。
「皆! 私に命を預けてくれ! 私達の雷と君の雷どちらが上か……勝負!」
 そこへ更にマリア隊及び焔隊が合流し、一斉砲撃を開始。
 マリアとエビルグラントォルが同時に紅蓮の雷を解き放ち、交差し、爆発する。
 その中を駆け抜けた焔の槍がエビルグラントォルの胸に突き刺さり、エビルグラントォルは思わずがくりと膝を突いた。
 ギラリ笑うハロルド。
「ようこそ(ウェルカム)、ハンマーランド!」
 抜刀。
 閃光。
 斬首。
 瞬殺。
 音を立てて落下したエビルグラントォルの首が、悪魔の頭めいてごろんところがった。

成否

成功

MVP

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者

状態異常

ヨハン=レーム(p3p001117)[重傷]
おチビの理解者

あとがき

 ウィツィロに現れた怪王種エビルグラントォルは撃破され、ハンマーランドにはつかの間の平和が訪れた。
 しかし魔物は依然として幻想各地を襲い、危険は続いている。
 戦いは、まだまだ続くようだ。

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