シナリオ詳細
<ヴァーリの裁決>暴虐のアースタイタン
オープニング
●地中より出でし者
夜空から星を奪えば、きっとこのような深淵が生まれるだろう。
そんな黒曜石よりも暗く光の生まれない闇の中を、蠢く影があった。
――ズゥゥゥゥン……ズゥゥゥゥゥン……。
影が蠢く度に、空間が震える。考え得る膨大な質量が大地を踏み砕き、岩盤を抉っていた。
不意に、影が動きをとめた。
進むべき先がなかった。行き止まりだ。
引き返す……そう思ったとき、空気がゆらりと動いた。影が両の手を振り上げたのだ。
両の手には、岩塊の棒が握られていて――その質量の塊が無遠慮に振り下ろされた――。
●
その日、フィルティス領はアルテミア区の鉱山で働く者達は、朝から軽微な震動を感じていた。
地震のようにも思えるが、なんだか少し足下から揺れが伝わるような微妙な感覚で、崩落の危険も考えられたが、数時間も続くと慣れてきてしまい、作業を再開するに至っていた。
だから、突然鉱山の一番奥、掘り出し始めた最奥の岩壁が爆発するように崩れた時も、「やっぱり崩落か」と別の危機管理で動き出そうとしていた。
だが、鉱山労働者達はすぐにそれが間違いだったと気づく。
「……う、嘘だろ……」
尻餅をついた労働者が鉱山の天井を見上げる。
なぜなら視線の先。大穴の空いた最奥の岩壁の向こうから、まるで岩山のような硬質な肌をもった巨大な手が伸び、そして土煙の中から醜くも恐ろしい巨大な顔が姿を現したからだ。
ギョロリと、愚鈍そうが故に恐ろしい顔に張り付いた赤い瞳が労働者を見下ろした。
「ひっ……ッ!!!」
叫びを上げる間もなく、岩壁から現れた巨人が労働者を踏みつぶす。赤いシミが鉱山の岩壁に伸びた。
最奥の穴からはゾクゾクと巨人達が現れる。
目指すべきは鉱山の入口、そしてその先。
イレギュラーズたる、アルテミア・フィルティスが領地とするその場所だ。
●
執政官より巨人出現の知らせを聞いた『プロメテウスの恋焔』アルテミア・フィルティス(p3p001981)は、「ついに私の領地にも来たか」と、自身の領地図を確認しながら覚悟を決める。
「しかし、まさか鉱山の奥から出てくるなんてね……、地中に侵攻できるような空洞があるなんて聞いてないけれど、そこを巨人が使ってくることも想定外よね……」
このときのアルテミアもまさか巨人達が削岩しながら侵攻してきたとは思いもよらないだろう。
昨今よく聞く、イレギュラーズの領地が襲われる話もあって、警戒はしていたが鉱山内部から領地への侵入は、思いがけない間隙を許した形だ。
すでに採掘場周辺に被害が出始めていると聞くし、近くの騎士学舎から見習いの騎士を含む多くの者達が足止めに向かっているとも聞く。
「急ぎ討伐したいところだけれど……」
とはいえ、領地内に侵入した巨人の数は二十体にも及ぶという。倒せない数ではないが、闇雲に戦っても人的被害もさることながら、周辺地域への被害も大きくなるだろう。
領主である以上、領地領民を守る責務があることを、アルテミアはよく知っている。
そして武家貴族の出身である以上、自らが陣頭指揮を執るべきであるはずだ。
なれば、まずやるべきことは――
「至急、皆さん(イレギュラーズ)に連絡を。皆さんと共に、巨人達を迎撃するわ!」
タンッと音を立てて領地図上に駒を置いたアルテミアは、巨人達の迎撃に向けて動き出した。
- <ヴァーリの裁決>暴虐のアースタイタン完了
- GM名澤見夜行
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年04月04日 22時15分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●エンカウント
フィルティス領アルテミア区は鉱山地帯に建て並べられた長屋通りをイレギュラーズが走る。
先頭を行くのは、この領地の長たる『プロメテウスの恋焔』アルテミア・フィルティス(p3p001981)だ。
今回の襲撃事件と同じような事件は頻発していた。故に見回りの強化を行っていたがまさか、鉱山の地下から魔物が現れるとは思わなかった。完全に不意を突かれた格好だ。
「――でも、まだ居住地域へは到達していない。まだなんとかなる!」
それは希望に縋る言葉ではない。
この地を父より任されたものとしての責任と覚悟。そしてイレギュラーズとして積んできた経験からでた言葉だ。
「ええ、とにかくまずはこの場面を気に抜けましょう!」
アルテミアに並走する『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)がアルテミアの言葉に同意し鼓舞する。そんな彼女はアルテミアの幼馴染みだ。
だからこそ、この領地には思い出もあるし言うなれば第二の故郷とも言える。そんな場所を破壊されるのをだまって見過ごす訳には行かなかった。
住宅地を抜けると鉱山の入口が見えてくる。
遠目に見てもわかる。
巨大な岩のような巨人が鈍重に蠢いていた。
「見るからに――堅く、強く、数が多い……難敵なのが見て取れるね。
でも、負けないよ。ここはアルテミアの大事な場所だ」
『洗礼名『プィリアム』』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)が走りながら魔力を編み上げて鮮烈な雷気を集約する、
アルテミアの力になるために、この地に侵略してきた岩巨人達を打ち倒すのだと作り上げた雷槍を先制の一手として投げ放った。
騎士学校より鉱山夫達を守る為に出撃していた見習い騎士達。足止めが精一杯の彼等が岩巨人の暴虐たる叩き下ろしに潰されそうになった時――ウィリアムの放った雷華槍が雷鳴響かせながら雷の花を咲き乱れさせ、振り下ろしの軌道を騎士達から逸らした。
狙いを外された岩巨人が醜悪な顔に憤怒の色を広げ、駆け寄るイレギュラーズ達を睥睨する。今の一撃で、岩巨人達はこの場における厄介な敵対者の存在を認識したようだった。
「まるで自分達の怒りは正義でもあるかのような振る舞い。
大地の代弁者とでもいうつもりか?
面白い、その力――もらい受ける」
覇竜の導きの元に――呟く声とともに自らの形状変化を解除する『竜の力を求めて』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)。
漆黒という言葉に相応しい大鴉とも言える姿を晒し、翼をはためかせ僅かな――そして自由に動ける高度を取る。
レイヴンが構えると、手にしたいびつな杖は、気づけば刃を生やし大鎌へと姿を変える。
愚鈍な岩巨人達を翻弄するように周囲を舞って、岩巨人の首を狙うように大鎌を振るう。
”断頭台”と名付けられた大鎌による斬撃。愚鈍な岩巨人もその力を見抜いたか。首を落とされぬようにと腕による防御を行う。
だが、その斬撃に防御は無意味。庇った腕の周囲を囲む鋼鉄以上の硬度をもつ岩を斬り砕いた。
「この分なら同じような岩でできた奴等の武器も破壊できそうだな」
「なるほど、それがわかれば気兼ねなく打って出られるというものですね」
レイヴンの言葉を聞いて『天地凍星』小金井・正純(p3p008000)が彼我の距離を確かめる。
見習い騎士達が足止め可能な数分の間に目の前に立ち並ぶ岩巨人達をできるだけ多く破壊する必要がある。
その為の火力の中心はレイヴンと正純の二人だと言ってよいだろう。特に正純の得意とする攻撃は範囲、火力、そしてスキル特性も含め岩巨人相手に特攻とも言える性能を有していた。
「人間相手には過剰でも、この岩巨人相手ならちょうどいいでしょう。
全力で行かせてもらいます。みなさん巻き込まれないように気をつけて下さいね」
見開いた瞳が多くの巨人達を捉え、放たれるカルネージカノンの大火力が鉱山地帯に特大の轟音と衝撃を響かせる。
動くのを得意としない岩巨人達はただ堪え忍びながら、ボロボロとその身を包む岩を崩落させていった。土煙が周囲を包む。
「……さすがに、一撃でとは行かなかったようですね……! 気をつけて!」
正純の声と同時、土煙を振り払うかのように岩巨人達の豪腕が唐突に振るわれる。偶発的なものではあったが、視界が悪くなったところでの一撃で経験の少ない騎士達が構えた盾ごと盛大に吹き飛ばされた。
味方のサポートに徹する『青樹護』フリークライ(p3p008595)はそんな騎士達の傷を見過ごさず回復の手を伸ばす。
「心配スルナ スグ癒ヤス。モウ少シ フリック達 力ヲ貸シテ」
秘宝種であるフリークライの姿に騎士達は驚きつつも、その内部より発せられる癒やしのメロディによって傷を癒やされると、頼りになる仲間と認識する。
「岩巨人 強イ ケド 皆モ 強イ 大丈夫 負ケナイ」
辿々しいロボットのような音声だが、どこか力強く自信に溢れた言葉で語りかけるフリークライ。その言葉に鼓舞され騎士達は力の限り岩巨人の足止めに向かう。
騎士達は基本、領主であるアルテミアに統率されるが、フリークライもまた統率力に長けている。邪悪な岩巨人達に対し、心通う鋼の巨人はこれ以上ないほどに心強い。
「俺も負けてられないね――アルテミア、シフォリィ、傷はこっちでなんとかするよ」
「お願いするわ!」「前衛は任せて下さい!」
フリークライと共に仲間達の回復を担当するのは『漆黒の堕天使』マキシマイザー=田中=シリウス(p3p009550)だ。
美人が困っているならと手伝いに馳せ参じたシリウスは、そんな美人に前衛を任せてしまうことをどうなのかと思いつつも、自身の能力を把握し適材適所で動くことが依頼達成への条件なのだと理解している。
シリウスが注意深く監視するのは特にアルテミアとシフォリィの前衛二人だ。
岩巨人はその巨体通りに動きは緩慢だが、一度攻撃に回ると恐るべき破壊力で暴力を叩きつけるため、前衛の体力には特に注意しなくてはならない。
もし岩巨人達が連続でその鉄塊のような岩棒を叩きつけてくれば――如何にイレギュラーズと言えど無事では済まないだろう。
そんな危機一髪な猛攻に対し、シリウスの響き渡る歌声が前衛の仲間を支え、安全マージンというべき余裕を生み出していった。
この時点、イレギュラーズが駆けつけたことで鉱山の入口前で巨人達の侵攻をせき止めることができたと言えた。
アルテミアとフリークライの統率によって騎士達が崩れることなく耐えきることができたのも大きいだろう。もちろん、そんな騎士達をも癒やす行動があればこそだ。
そうして騎士達の限界が近づき、イレギュラーズもそれに気づく。
「貴方達は一度下がりなさい!
それと、貴方達は我が領の剣であり、盾だ。その誇りを持つ者、共に戦う覚悟がある者である事を期待しているわ!」」
アルテミアの一声で、騎士達が撤退をし始める。アルテミアはさらに周辺避難の確認、部隊の再編、再出撃を要請した。
撤退をはじめる騎士達は、満身創痍ながらもやり遂げたことを誇らしげに思っているようだ。その表情は明るさすら感じる。きっとすぐに再編して戻ってくるだろう。
さて、そんな騎士達が過ぎ去るのを横目に見ながら、モヤモヤとした感情を抱える者がいた。
「ああ……妬ましい……半端な強さでは太刀打ちできない岩巨人に対抗できる力を持った仲間達……。
それどころか、あんな破滅的な力で襲いかかる岩巨人達を食いとめていたのが、見習いを含む騎士達だなんて……」
力ある仲間達が、未来ある騎士達の才能が――。どうしても自分と比べてしまって、湧き上がる”嫉妬”が押さえられない、と『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)は深く息を吐くと同時に歯噛みする。
実際のところ華蓮はメンタルのコンディションはともかく、自身に出来ることはしっかりと行っていた。
騎士達が岩巨人の振り下ろすとてつもない質量に心が折れそうになるときも、その側で天子の福音を響かせる華蓮の姿に心を強く持たせることができたし、華蓮が側にいてくれるだけでなんだか万事上手くいくんじゃないかと根拠もなく思ったものだ。
結果、騎士達は岩巨人を足止めし、また欠けること無く撤退することに成功した。戦場から離れるとき、騎士達はイレギュラーズ全員に心の中で感謝していたが、そこには多分に華蓮に対する感謝も含まれていた。
残念ながら、今それに華蓮が気づくことはないが……。
足止めの中、可能な限り岩巨人を倒したイレギュラーズ。
だが倒した数と同等か、それ以上にまだ岩巨人は存在している。
ここからは、イレギュラーズと岩巨人の純粋な力のぶつけ合いだ。
●暴虐のアースタイタン
緊張感のある戦いは続いていた。
「シフォリィさん! 後ろ、振りかぶってるわよ!」
アルテミアの声に反応して、シフォリィが振り返ることなく目の前の岩巨人の足下を走り抜ける。
間一髪、振り下ろされた岩塊の棒が、シフォリィが居た場所の地面を抉り砕く。
シフォリィの動きを見届けたアルテミアは、即座に叩きつけてきた岩巨人に対し青き刀身の細剣を振るう。
迸る青い炎が鳥のように岩巨人へ飛びかかり、岩巨人の注意を奪う。
「その隙逃しません――ッ!」
岩巨人の注意が逸れたタイミングで、反転したシフォリィが疾駆し岩巨人の弱点を狙う一閃を見舞う。
火力が心許ないと考えたシフォリィは得意のC・フィエルテを駆使して、仲間へと攻撃を繋ぐ。
弱点を突かれ、自身に隙ができたと感じた岩巨人が、手にした岩塊の棒で防御を固めようと動く。
「武器に頼るのは知性か、本能か。どちらにせよ、その刃から砕かせてもらう」
それをレイヴンが低空から飛び上がって、”断頭台”を振るう。狙いは岩巨人が手にする岩塊の棒だ。
質量の塊は防御を無視した一撃に為す術無く両断されて落ちた。
「畳みかけるよ――! 雷よッ!」
雷電放射。ウィリアムの投げる槍は苛烈な雷華を咲かせる。如何に硬度の高い身体を持っていたとしても、絶縁体でない以上その内部を焼き切りながら走る雷を止めることはできない。
ウィリアムの得意とする”雷華槍”は、シフォリィのC・フィエルテと共にこの戦いの主軸であり、ダメージディーラーのレイヴンと正純の火力を効率よく高め、岩巨人を確実に倒す必勝パターンとして組み上げていた。
「それが貴様の核か――!」
「その巨体を消し飛ばしなさい!」
レイヴンと正純の高威力な連携が岩巨人を飲み込み活動を停止させる。
こうしたコンビネーションによって、岩巨人達は少しずつ数を減らしていった。
「ふぅ……さすがに疲れは溜まってきますね」
「任セテ。状況把握 全員ノ ステータスチェック 完了。気力回復 開始」
フリークライが仲間の状況を把握し、全体を立て直す号令を放つ。
言霊として広がる声に、イレギュラーズ達の気力は充実し、継戦する力をもたらした。
「おっと、俺のことを忘れてもらっては困るよ。声援なら任せて欲しいね」
シリウスも負けてはいない。
圧倒的な声量による声援は、特に前衛で敵の注意を引きつけるアルテミアとシフォリィに向けられて、彼女達の行動力を回復させていく。
「っと、俺自身の分はそこのボケッとしてる君からもらおうか」
もちろん自分の気力を回復するのを忘れない。シリウスが十八番たる歌を歌い上げる。
シリウスの詠唱に詩や呪文はない。
ただ心の奥から湧き上がる思いを単一の音に変えて歌い上げるのだ。
歌声に呼応して無数の星屑が降り注ぐ。幾重にも重なる色彩が岩巨人の行動力を奪う形と結実する。
「くぅ……あんな歌声だって、私には出せないのだわ……。ああ……妬ましい……」
今の華蓮にとっては、この依頼の環境は辛いものだったかも知れない。
同じ役割に立つフリークライとシリウスがいることもあって、嫉妬に囚われている彼女にはきっと二人が自分よりも優秀だと感じてしまったかもしれない。
嫉妬とはある種”願い”のようなものだ。
憧れや羨望、好意を抱き、そうありたいと願った時、その理想に近づくにつれて自己との対比によって変質してしまったようなもの。
目指すべき着地点に到達できないと感じてしまう歯がゆさが、高みを目指すが故に眼についてしまう自己の弱さが、自己の想いが報われない悲しさが――いつしか反転し妬み嫉みへと変わってしまう。
今、華蓮の身体は、そうした感情の茨が纏わり付いて、雁字搦めとなっている。
本来ならば役割を放棄しかねない強い感情だ。
けれど、それでも華蓮は、この依頼を達成するために動いている。
たとえどんなに、周りを妬ましく、羨ましく思おうとも、それでも自身に出来ることを最大限の力をもってやり遂げている。
「――せめてその強さのほんの一部でも、私の力が関わっていますように……」
そんな祈りを込めた願いは、きっと、仲間達には届いているはずだ。
華蓮達後衛の支援を受けて、前衛達がまた一体岩巨人を打ち倒した。
鉱山地帯に辿り着いた時に山脈のように居並んでいた巨人達は、一体、また一体と倒れて行き、その数を減らしてきた。
しかし、数が減ってもその暴威に変化はない。
怒りの赴くままに全員が力尽きるまで、暴れ回る算段の岩巨人達。
イレギュラーズの中にも幾人かが可能性の輝きに手を伸ばすこともあった。
流れ的にイレギュラーズ達の勝利は見えてきているが、疲れが溜まり始めたここからが危険な場面だ。
あと一つ、攻勢にでれる要因を欲したとき、力強い鬨の声が背後から聞こえた。
「うおおぉ――ッ! 領主様に続け――ッ!」
「貴方達、来たのね!」
一度は引いた騎士達が、傷を癒やし部隊を再編して――数も増やして――舞い戻ってきた。
これこそ好機。この勢いを逃す手はない。
「全員、私に続きなさい! この岩巨人達を逃すことなく倒しきるわよ!!」
アルテミアの号令が、この戦いの終わりへのはじまりだった。
●戦いの後――
「…… …… ……」
暗いトンネルの中を、フリークライが進んでいた。
「見ツケタ 遺品 此処ニモ 彼処ニモ」
岩巨人達を倒しきったイレギュラーズ達は、巨人達の侵入経路である鉱山の奥を確認した。
巨大な穴が空き、その黒洞々とした穴の先に何があるのか――何処へ繋がっているのか興味は持たれたが、いつ同じような巨人が奥から現れるかもわからない。今は安全の確保を行い、応急的ではあるが穴を塞ぐ方針にすることにした。
フリークライはその過程で、鉱山従事者で犠牲になったものの遺品を回収した。
守るのは生者だけではない。死者も、その想いも守れるのだと。
「しかし、そう大きな被害にならなくて不幸中の幸いではあったね」
シリウスの言葉に、アルテミアは「ええ、本当に」と同意する。
「これもイレギュラーズの皆と、この地で騎士を志して勤勉に励んでいた人達のおかげね。
特に見習い騎士達に死者がでなかったのは華蓮さんを始めとした貴方達のおかげだわ」
アルテミアの素直な感謝に、華蓮はどこか心苦しそうに視線を逸らした。
「でもこの後が大変ですね……瓦礫の撤去も大変ですけど、岩巨人の質量自体が結構問題というか」
正純の懸念はもっともで、二十体にも及ぶ山のような岩の塊が鉱山地帯に野ざらしになっている状態だ。
「これを砕いて運ぶとなると、それは結構大変かもしれないね」
苦笑するウィリアムは、最後の戦いで傷付いた騎士達を癒やしている。
「領地の後片付けもですけど、今回のように頻発してる領地侵略については何か情報が欲しいところですね。
幻想の土地に魔物がそんなにもいるものでしょうか? 自然発生したものとはあまり考えにくいのですが……」
シフォリィが顎に指を宛て考える。
イレギュラーズの領地を狙うかのように頻発する魔物の侵略。偶然ではない予感はヒシヒシと感じていた。
「……戦いはまだ始まったばかりなのかもしれないな」
人の身へと戻っているレイヴンの言葉。
次の戦いはもう始まっているのかも知れない。
「そうね……。できれば、もう領地内での戦いはしたくないところだけれど……」
一般人に被害がでるのは領主じゃなくとも辛いところだ。
被害を受けた鉱夫達への援助を記した書類にサインして、アルテミアは願うように呟いた。
何かに突き動かされるように現れた岩巨人達。
暴虐の限りを尽くした彼等は一体何処から来て、此処まで来たというのか。
晴れない疑問を抱きながら、イレギュラーズは岩山の頂きに目を細めた。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
依頼お疲れ様でした。
イレギュラーズの活躍もあって見事に岩巨人たちは打ち倒されました。
次の依頼に備えて、いまはゆっくりとおやすみ下さい。
ご参加ありがとうございました。
GMコメント
こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
アルテミアさんの領地内に岩巨人達が侵入しました。
領地を守る為、これを迎撃しましょう。
●ブレイブメダリオンについて
このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
このメダルはPC間で譲渡可能です。
●依頼達成条件
アースタイタン計二十体を全て倒す。
●情報確度
このシナリオの情報精度はBです。
情報は正確ですが、情報外の出来事も発生します。
●アースタイタンについて
岩のような肌を持ち、醜悪な巨顔で睥睨する岩巨人です。二十体います。
とんでもない質量を力任せにぶつけることが得意であり、その威力は尋常成らざる破壊力を生み出します。(クリティカル高)
また、耐久力、防御力共に飛び抜けており、低威力の攻撃を無効化します。
(状態異常及びクリティカルは通常通り計算されます)
反面、反応は鈍く、巨人達はニターンに一度だけ行動します。
巨人が手に持つ岩塊の棒は破壊する事が可能です。破壊すると周辺建築物の被害が少なくなることでしょう。
●NPC
見習い騎士×20
騎士×10
巨人達の足止めに徹しています。戦闘開始から三ターンで撤退します。
イレギュラーズの指示には従います。
●戦闘地域
フィルティス領、アルテミア区、鉱山地帯が戦場となります。
巨人達は採掘施設中心で暴れながら、南西へと向かっています。
周辺には騎士学舎と銀行があり、騎士学舎からの援軍が巨人達の足止めをしています。
障害物はあるものの、自由な戦闘が可能でしょう。
そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。
皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
宜しくお願いいたします。
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