PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<ヴァーリの裁決>幻想種に檻は似合わない

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

「やっぱり幻想種も、奴隷にするために浚われてるんだ」
 憤慨したように呟くのはクルル・クラッセン(p3p009235)。
 なぜ憤慨しているかと言えば、ローレットで話を聞いたからだ。
 ここ最近、幻想では奴隷取引が頻発している。
 なんでもファルベライズの動乱の影響らしいが、見過ごせる物ではない。
 奴隷を解放しようという依頼が沢山出ているので、少し前も奴隷として浚われた子供達を助けたクルルは、続けて同じような依頼は無いかと探しに来たのだ。
 その中で、幾つかの依頼の結末を聞いて。
 浚われた奴隷の中に幻想種が居たことを知り、同じ幻想種であるクルルとしては捨て置けない。
「助けないと」
 意気込みながら依頼を探していたが、直近では神翼庭園ウィツィロや古廟スラン・ロウから現れた魔物の討伐依頼が多く、奴隷達を助ける依頼を見つけることが出来なかった。
 けれどそこで諦めないのが、彼女らしい。
 何か手がかりは無いかと聞き込みなどを続けていた。
 そんな彼女に、声が掛けられる。
「おねーさん。お茶しない?」
 ナンパかと思いちらりと見ると、そこには以前一度見た顔があった。
「貴方は……」
 それは少し前、子供の奴隷を助けて欲しいと依頼した人物。
 同時に、泥棒だと自己紹介した人物でもある。
 訝しさを感じ警戒していると、赤い目をした左腕が義手の男は言った。
「幻想種が奴隷にされてないか探ってるんだろ? 心当たりあるから、話聞いてくれねぇ?」
「知ってるの!?」
「ああ。詳しいことは、お茶でも飲みながら話させてくれ」

 それから近くの喫茶店に訪れ、話を聞くことに。

「あんた達に捕まえて貰って突き出した奴隷商人たち居るだろ? あいつら保釈されて、次は幻想種の取り引きするみたいなんだ」
「どういうこと?」
 色々と驚いて聞き返すクルルに、赤目の男は言った。
「よくある話だ。とある悪徳貴族と奴隷商人が繋がってて、裏で金を払って便宜を図って貰ったらしい」
「悪い人達じゃない」
 憤慨するクルルに、赤目の男は笑みを浮かべながら言った。
「まったくもってその通り。で、保釈された奴隷商人は、悪徳貴族に払った金やらで損した分を取り戻そうと、性懲りもなく奴隷取引に手を出したって訳さ。今度は高く売れる、選りすぐりの幻想種を仕入れてな」
「捕まえなきゃ!」
「そいつは好い。だったら俺が依頼人になるから、悪い奴らを捕まえて奴隷にされそうな人達を助けてくれ」
 ここまで聞いて、クルルは訝しげに訊いた。
「なんで、そんなことするの?」
「そりゃ、こっちの得になるからさ」
 赤目の男は笑みを浮かべたまま続ける。
「奴隷商人が捕まりゃ、またバタバタするからな。その隙に泥棒に入ろうって訳さ」
「……貴方達も悪い人じゃない」
 呆れたように言うクルルに、赤目の男は笑いながら応えた。
「おう、そうだぜ。でも獲物にするのは、もっともっと悪い奴らだけさ。それが善いとは言わないが、マシな部類だぜ、俺らは」
 赤目の男の言葉に、なんだか釈然としないものを感じたクルルは言った。
「なんで、わたしに声を掛けたの?」
「あんたが幻想種だからさ」
 赤目の男は言った。
「今回取引されるのは幻想種だからな、助けに行くなら同じ幻想種が居た方が落ち着くかも知れねぇじゃん」
「……それだけ?」
「おう、そんだけ」
 あっけらかんと言う赤目の男に、クルルは小さくため息をつく。
「色々と思う所はあるけど、捕まっている幻想種がいるなら助けるよ」
「そいつは好い。んじゃま、早速依頼をしに行くよ。で、その時に気をつけて欲しいことがひとつある」
「内容次第だよ」
「人死には避けてくれ。もちろん、あんたらの身の安全が守れないってんなら、別だが」
「それって、奴隷商人も殺さないようにしてくれってこと?」
「ああ、そういうこった」
 赤目の男は言った。
「あいつらは生かして突き出して、また保釈されるようなら、そこから盗む相手になる悪い奴等を手繰れるんだ」
「……獲物を増やしたいから、生かしておけってこと?」
「ま、そういうことさ。悪い奴らからだけ盗むってのも大変なんだぜ。だって相手が本当に悪い奴かどうかは、調べなきゃ分かんねぇもん。それを調べるために必要なのさ。あとは、まぁ……」
 急に歯切れ悪くなると、バツが悪そうに言った。
「むかし離れ離れになったダチ交がいてよ。いつか会いたいけど、そん時に誰かに人殺しをさせてるとよ、会い辛くてさ」
「……それなら、泥棒もダメだと思う」
「ひひっ、違いねぇ。でも、ま、それぐらいはアイツも許してくれるさ。俺もアイツも、ガキの頃は飼われて盗みをさせられてたからな」
 そう言うと、喫茶店の支払いを終わらせ赤目の男は去って行く。
「じゃあな、依頼を出してくる。気が向いたら、引き受けてくれよ」
 店を出る赤目の男に、どうしたものかと思案するクルルだった。


「奴隷取引をされる幻想種を助けてあげて欲しいのです」
 招集されたイレギュラーズに向けて、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は依頼の詳細を説明してくれる。
「取引されるのは幻想領の端っこです。そこでラサの奴隷商人と幻想の奴隷商人が取引するそうなのです」
 詳しい話を聞くと、ラサで捌くのが難しくなった現地の奴隷商人が、幻想の奴隷商人に売るらしい。
「取引される日時や場所は判明してます」
 そう言ってユリーカは、取り引き現場となる場所の地図と、取引の日時などが書かれたメモを皆に渡した。
「奴隷にされている幻想種の人達は、馬車に拘束されて運ばれているみたいなのです」
 10人ほどの幻想種が捕らわれているらしく、救出の際は人質にされないようにするなどの工夫が必要になるだろう。
「それと、幻想種の人達を助ける以外にも、お願いがあるみたいなのです」
 可能な限り生かして捕え、幻想に突き出して欲しいらしい。
 話を聞き終ったイレギュラーズ達は、早速現地に向かうことにした。

GMコメント

おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
八本目のシナリオは、アフターアクションでいただいた内容を<ヴァーリの裁決>として出させていただいています。
今回のシナリオでは、以下の特殊アイテムを取得することが可能です。

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

奮ってご参加いただけると幸いです。
それでは、以下が詳細になります。

●成功条件

奴隷の救出

●場所

幻想領の端にある村の跡地。
魔種により滅ぼされた場所を、取引場所として使っている。
荒れ果てた家屋があり、一時的に隠れることが可能。

●状況

お昼の12時に取引は行われる。
それより前に現地である村の跡地に訪れることは可能。

ラサの奴隷商人と幻想の奴隷商人は、ほぼ同時に現地に訪れる。
PCが隠れる事の出来る家屋は、奴隷商人達の取り引き現場から、20メートル離れています。
そのため、隠れている間は見つかりませんが、跳び出して近付く間に気付かれる恐れはあります。

ラサの奴隷商人は傭兵を伴い、馬車2台に奴隷にする予定の幻想種を5人ずつ分けて乗せています。
幻想種は、全員が拘束されています。
全員大人なので、拘束が解かれれば、それぞれの判断で動いてくれます。
ただし拘束を解くために、ある程度の時間は掛かりますので、決着がつくまではあえてそのままにしておくことも出来ます。

幻想の奴隷商人は手下を伴い、馬車を2台持って来ています。
その馬車に、奴隷予定の幻想種を放り込んで持ち帰る予定です。

●敵

ラサの奴隷商人×1

戦闘に関しては一般人です。

傭兵×6

それなりに強いです。
近距離と中距離の攻撃を使い分け、連携も取れます。
雇い主である奴隷商人を見捨てることはありません。

幻想の奴隷商人×1

戦闘に関しては一般人です。
最近、スラムの子供を浚って奴隷にして売ろうとしていたら、泥棒に金や帳簿などを盗まれた挙句に拘束され、イレギュラーズの手により突き出された。

配下×10

傭兵より弱いです。
最近、スラムの子供を浚って奴隷にして売る手伝いをしていたら、イレギュラーズ達にボコられて突き出された。
本来はもう少し仲間が居たが、ボコられた怪我が治ってないので、現地には来ていない。
現地に来ている10人も、病み上がり状態。
状況が不利になると、奴隷商人を見捨てて逃げる可能性があります。

上記の敵は、可能な限り生かして突き出して欲しいというのが依頼人の要望です。

●奴隷

幻想種の女性8人、男性2人。
全員、メッチャ美形。
それぞれ普通に生活していたら、美形なので目に付けられ浚われた。
全員が大人なので、助けてあげれば、あとは自分で故郷に戻れます。

●流れ

今回の流れは、

1 現地に敵より早く訪れ、廃屋に隠れ待ち構える。
2 奴隷商人達が訪れれば、奴隷解放に動く。
3 敵の撃破と救出を完了させる。

という流れになります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 説明は以上になります。

 それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリプレイに頑張ります。

  • <ヴァーリの裁決>幻想種に檻は似合わない完了
  • GM名春夏秋冬
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年03月28日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
セララ(p3p000273)
魔法騎士
アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
志屍 瑠璃(p3p000416)
遺言代行業
アレフ(p3p000794)
純なる気配
シラス(p3p004421)
竜剣
クルル・クラッセン(p3p009235)
森ガール
ブライアン・ブレイズ(p3p009563)
鬼火憑き

リプレイ

 依頼内容を聞いて、幻想種である『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)はポツリと呟いた。
「……同族を奴隷に、ですか」
 関連する報告書を見て思う。
(何やら前科もあるようですし、反省の色もないのでしょうからいっそ亡き者にしてしまっても……)
 個人的には思うものの踏み止まる。
(可能な限り生かして捕える、というのがご依頼者のご意向のようですので、そのように)
「善処します」
 自分を納得させるように呟いた。

 彼女の言葉に頷くように皆は返しながら、現場である廃村に辿り着く。
 それぞれ廃屋の中に隠れ警戒しながら、思考を纏めるように考えていた。

「オラクルの一件によるラサの激しい追及があった上で、尚も幻想種を攫っての奴隷商売に手を出そうという者が居るとは……」
 ため息をつくように『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)は言葉を零す。
「死ぬまで本当に懲りないのですね、彼らは」
 それは終わるまで続く徒労のようにも思える。
 けれど依頼人の希望は、可能な限り生かして捕まえること。
 アリシスは自分の感情を抑え、奴隷商人達が来る時を待っていた。

 彼女のように憤りつつも依頼の完遂を考えているのは、他の仲間も同じだ。

「まったく、大した悪党だぜ」
 憤るように『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)は呟きながら、声には出さず心の中で続ける。
(誘拐したヤツを商品として売るなんざ、よほどキモが太いのか。或いは単なるバカなのか?)
 正直、呆れるしかない。
(売り手の頭も吹っ飛んでるが、買い手の頭も相当だ。よく商売が成り立つなんて考えるな)
 そこまで考えて、ふと思う。
(それとも……リスクが眼中に入らないくらいデカい商機とか。今回の取引なんて氷山の一角なのかもな)
 そこまで思いつき、憤りが増す。
(スゲぇムカつく)
 心の中でちりちりと怒りが燻り、それは言葉となって溢れる。
「連中をぶっ飛ばす!」
 決意を抱き、奴隷商人達が来るのを待っていた。

 彼と同じように憤りつつ、同時に皆は冷静に手順を組み上げる。

(奴隷の救出……依頼の内容としては比較的マシな部類だな)
 廃屋の中から外の状況を改めて確認しながら、『純なる気配』アレフ(p3p000794)は思う。
(依頼人が可能な限りの捕縛を求めるというなら、それにも応じよう。最も、相応に痛い目にあって貰う事にはなるかも知れないがね)
 生きてさえいれば、それ以上のことは求められていない。
「奴隷商人らが現れるという場所はあの辺りか……気づかれても一手は打てる程度の距離ではあるな」
 その時が来るまで幾つかのパターンを頭の中で組み立てながら待っていた。

 イレギュラーズ達は思う所はありつつも冷静だ。
 それはこれまでの経験が生かされている証拠でもあった。

「馬鹿につける薬はない……っん、こいつは名言だな」
 これまで幾つもの依頼をこなし熟練の域にある『鳶指』シラス(p3p004421)は、心を揺らがせることなく冷静に状況を組み立てていく。
 それでいて同時に、自身の感情を殺している訳ではない。
(なるべく殺すな、か)
 依頼人からの要望を思い出し、どこか共感する。
(たとえ間接的であっても殺人を避けたいという気持ちは分かるよ)
 そこまで思い、同時に苦い物も感じる。
(しかし再犯を期待するような含みもあったのが複雑だね)
 世の中、真っ当に事が進めば言うことは無いが、そういう訳にはいかない。
 現実を飲み込んで、シラスは自分が出来る最善を考えていた。

 皆が憤りを考えつつ手順を組み立てる中、少し異なった気持ちを抱く者もいた。

(何度間違えても終わりではないというのは、そんなに嫌いではないです)
 廃屋の中で戦闘の手順を考えながら、『遺言代筆業』志屍 瑠璃(p3p000416)は声にも表情にも出さず思う。
(此度の仲間の同郷の方が被害にあっているのですから、大っぴらにはできませんが)
 いま瑠璃が居る世界は無辜なる混沌。
 かつていた世界とは違うのだ。
 たとえどれほどの悪人であろうとも、死が回避できるなら越したことは無い。ただし――
(彼らには、自分たちが非常に幸運であることをよく理解してもらわないといけませんね)
 自分達の行いを自覚させる必要がある。
(牢屋入りを回避するのに幾ら支払ったは存じ上げませんが、存外無駄になりやすい投資だという事も)
 彼らに分からせるためにも、その時を待っていた。

 そして待ち続ける。
 じりじりと焦れるような時間が過ぎる中、やる気を見せているのは『魔法騎士』セララ(p3p000273)だ。

(人々を奴隷にするなんて許せないよ!)
 故郷の世界でも悪人を倒し人々の平和を守っていた彼女は、無辜なる混沌でも変わらない。
(彼らを助け出して解放してあげないとね)
 そのためにも、少しでも有利になるように事前準備に余念がない。
 透視と超視力を使い索敵。
 しばらく続けていると、こちらに来る馬車を確認する。
 事前に受けていた情報通りの数と方向だ。
「来たよ、用意しよう」
 超視力で確認しているので、まだ馬車はかなり離れた距離にいる。
 廃屋からは出ず、声で仲間に連絡すると、皆は戦闘態勢に移行した。

 馬車が近付く中、一際意気込むのは『森ガール』クルル・クラッセン(p3p009235)だ。

(あの人達にとっては只の商品でも、わたし達にとっては同胞で……きっと誰かの大切な人。だから絶対に助け出すよ)
 浚われている幻想種達のことを直接知っている訳ではない。
 けれどそんなこと、関係ない。なぜなら――
(だって、自分の大切な人がそんな目に遭ってたら、胸が痛むもの!)
 たとえ知らない誰かだとしても、自分のことのように思いながら、彼女は助け出すために準備する。
 用意するのは扱いやすい刃物。
 戦うためではなく、拘束されている幻想種達を自由にするためのものだ。

 準備は万端。
 そして戦いの時はやって来た。

●解放せよ!
 イレギュラーズ達の動きは素早く、かつ的確だった。
 まずは撹乱と奇襲。
 最善のタイミングを見計らい、馬車から奴隷商人達が降り立ち交渉を始め、護衛達もそちらに意識を向けた瞬間、一気に動き出す。

 最初に動いたのはセララ。
 事前に、セララおやつタイムで自己強化をした上で、ドリームシアターを使う。
 イレギュラーズ達が潜んでいる廃屋とは反対方向に、この場に居てもおかしくない野生の猪を投影し動かす。
 これに傭兵達が気付く。
 次いで奴隷商人達と護衛のゴロツキ達が気付き注意が向いた瞬間、即座に作戦は開始された。

(優先すべきは、ラサの奴隷商人)
 馬車の反対方向に移動していた瑠璃は、ラサの奴隷商人をよく狙って矢を飛ばす。
(多少外れても構わない。この距離なら届くはず)
 穿法匕首を使い放たれた矢は、奴隷商人の肩口に向かうも、気付いた傭兵が盾で防ぐ。
 しかしそれで構わない。
 瑠璃の狙いは撹乱。
 矢が防がれると同時に、チェンジボイスを使い翻弄する。
「バカが、まだ遠いぞ」
「うるせえ! 特別報酬は俺のもんだ!」
 離れた位置から聞こえてきた声に、奴隷商人達はイレギュラーズ達の位置を誤認。
 即座に瑠璃は物質透過を使用して衣服を枝葉に引っ掛けることのないようにして移動を開始

 ここまでの動きで、敵は近場から注意を逸らす。
 その隙を逃さず、近場で待機していたイレギュラーズは一斉に動いた。 

(今が狙い目)
 アリシスは潜んでいた廃屋から跳び出すと、ラサの奴隷商人と傭兵を中心にして神気閃光を放つ。
 眩い破邪の輝きは邪な者達の目を焼き、僅かとはいえ混乱させる。
 アリシスの動きに合わせ、アレフも動く。
 彼も神気閃光を放ち、奴隷商人達の動きを止める。
 連続して放たれた眩い輝きに、奴隷商人達の目はくらまされ状況を正しく把握できない。

 そこに、さらに混乱させるように奇襲を重ねる。

(幻想種の襲撃と悟られないようにしないと)
 ドラマは幻想種であると気付かれないよう、フード付きの暗色の外套で頭を覆った状態で跳び出す。
 狙いは奴隷商人。
 本来なら、すぐにでも捕らわれている同胞を助けたい所だが、その思いを飲み込み神気閃光を放つ。
 同時に、こちらの狙いを悟られないよう名乗り口上を使いながら誘導する。
「その首、討ち獲らせて貰う」
 先に言葉で誘導していた瑠璃の内容に合わせ、あくまでも狙いは奴隷商人だと印象付ける。
「ひっ、なんだ!」
「お前ら、儂を守れ!」
 身の危険を感じた奴隷商人が傭兵と護衛のゴロツキ達に命令する。
 傭兵達は幾らか訝しみを感じていたようだが、依頼主の命令を無視する訳にはいかない。
 残りの奴隷商人とゴロツキ達に至っては、未だ混乱が納まってすらいない状態だった。

 混乱する奴隷商人達に、距離を詰めたセララは、スピニングセララソードを使い一気に斬りつける。
 依頼人を傭兵達は守るため避けることも出来ず、防御を固め受けた。
「これ以上、悪いことはさせないよ!」
 奴隷達の乗せられた馬車から注意を逸らすため、引き離すように攻撃する。
 それにより馬車から奴隷商人達が離れていった。

 その流れをさらに加速させるように、ブライアンが動く。

(向こうは任せた。代わりに此方は任せろよ)
 馬車から奴隷商人達を引き離す仲間の動きに合わせ、ブライアンは名乗り口上をあげる。
「仕留めさせて貰うぜ!」
 敵を引き付けながら、積極的に前に出る。
 攻撃して来た所で、後の先を取りバックハンドブロウ。
 相手の勢いを利用したカウンターを叩き込みながら、馬車から敵を遠ざけていく。

 ブライアン達のお蔭で、馬車から奴隷商人達は引き離される。
 そこを解放役の2人が動いた。

 クルルとシラスが連携して動く。
 幸い、仲間のお蔭で馬車の近くには誰もいない。
 お互いアイコンタクトだけで担当する馬車を確認し、素早く動く。

「みんな、助けに来たよ!」
 クルルが入ってきた瞬間は身体を硬くした奴隷達だが、同族の幻想種だったこともあり安堵の表情を浮かべる。
 全員、後ろ手に縄できつく拘束されていたが、クルルは手早く刃物で斬り裂き一人を自由にすると、刃物を手渡して言った。
「これで他の人達を自由にしてあげて」
 相手は礼を言うと頷き、他の幻想種の拘束を解いていく。

 シラスも同じように開放していく。

「あんたらを助けに来た、幻想種の仲間も一緒に来てるぞ」
 馬車に居た幻想種は最初は警戒していたものの、拘束を解いてくれ声を掛けてくれたこともあり安堵の表情を浮かべる。
「ありがとう」
「気にするな。それより外にまだ奴隷商人達が居る。俺達はそちらを叩くから、その間に残りの人達の拘束を解いておいてくれ」
 シラスの言葉に、助けられた幻想種は頷き解放へと動き出し、シラスは仲間達との戦闘に加わっていく。

 イレギュラーズ達の動きは非常に巧い。
 敵の引きつけと奇襲、馬車から注意を逸らした上での解放と、解放した幻想種に協力を頼みながら敵を制圧。
 無駄がなく、実に効果的だった。
 だからこそ、圧倒的に有利な状況で戦いは進んでいった。

 シラスは幻想の奴隷商人を絶対に逃さないよう、逃走経路を潰すように動き護衛を叩きのめしていく。
「お、お前あん時の!」
 以前叩きのめされたゴロツキが、恐怖を浮かべ無茶苦茶に刃物を振るうが、シラスは難なく距離を詰め、手刀打ちで意識を狩りとっていく。
「ひぃっ!」
「お、お前ら逃げるな!」
 幻想の奴隷商人とゴロツキ達は逃げようとするが、そこにシラスは猫騙しを使い防ぐ。

 さらに追撃をクルルが放つ。

(殺しちゃわない様に)
 急所をなるべく避けて射撃。
「大人しく降参すれば殺すまではしないよ」
 出来る限り殺さないで済むよう警告するが、混乱しているゴロツキ達は暴れて逃げようとする。
 仕方ないので泣き叫ぶマンドレイクを撃ち込み、まとめて混乱させ動きを鈍らせた。

 混乱するゴロツキ達と幻想の奴隷商人は、それでも逃げようとするが、セララが完全にブロックする。

「逃がさないからね!」
 馬車に向かわないよう位置取りを気をつけながら、スピニングセララソード。
 不殺の刃で斬りつけながら、ドリームシアターで幻影を生み出し、逃走経路に立ち塞がせる。
 動きを止めた所でギガセララブレイク。
 天より招来した雷を聖剣で受け、殺さないよう気をつけながら斬り伏せた。

 幻想の奴隷商人とゴロツキ達はボロボロ。
 しかし傭兵達は手強い。
 連携を取りつつ戦い、イレギュラーズ達の狙いが馬車の奴隷達の解放と気付き人質に取ろうとした。
 だが、ブライアンが立ち塞がる。

「させねぇ!」 
 身体を張って傭兵達の動きを止める。
 無傷とはいかないが、それでも決して退かない。
(昔から頑丈なのは取り柄でね)

 身体を張るブライアンを、アリシスが援護する。

 聖なる歌が響く。
 ヴェニ・サンクテ・スピリトゥス。
 癒しの光陣が傷付いたブライアンを回復させ、それが終れば攻撃にも加わる。
 エンシス・フェブルアリウス。
 浄罪の剣たる光の刃を祈りにより生み出し、罪を滅ぼすように傭兵を斬り裂いた。

 馬車に向かう傭兵達の足を止めた所で、アレフが傭兵達の動きを誘導する様に攻撃する。

「さて、荒事は余り好きでは無いのだが依頼である以上はそうも言ってはいられん──始めようか、奴隷商人殿?」
 ラサの奴隷商人を狙う。
 気付いた傭兵達は、依頼人を守るため身体を張って護りに動く。
「傭兵というのも大変だな。どうだ、そろそろ荷が勝ち過ぎていると思い始めてはいないか?」
 殺さぬよう神気閃光を使いながら、揺さぶりを掛けるように呼び掛ける。

 しかし傭兵はプロとしての意地を見せる。
 依頼人は守りつつ決して屈することなく、逆転するために奴隷の幻想種達をどうにかして人質に出来ないかと動き続けた。
 けれど、ドラマが決して許さない。

「……同族に手出しは、させません!」
 悪撃を使い自分に引き付けると、神気閃光も使い敵の体力を纏めて削った。
 それでも敵は勢いを緩めず攻撃して来るので手傷を幾らか負うが、瑠璃が援護に動いてくれる。

 ドラマに切り掛かろうとした傭兵を、黒い棺で包む。
 檻術空棺。
 捕えた傭兵に総ゆる苦痛を施し時間を稼ぎ、ドラマが回復する余裕を作る。
「今の内に回復を」
「ありがとう」
 ドラマは礼を返すと即座にミリアドハーモニクスで回復。
 そこから間髪入れず攻撃を再開し、敵を抑えていった。

 傭兵達を抑えている間に、幻想の奴隷商人とゴロツキ達の制圧を終わらせた仲間が駆けつける。
 圧倒的にイレギュラーズ有利な中、敗北を悟った傭兵達は、依頼人の助命を求めながら降伏。
 これによりイレギュラーズ達の勝利が確定した。

●戦い終わり
「もう大丈夫だからね!」
 クルルの呼び掛けに、幻想種達は安堵を浮かべ何度も感謝の言葉を返した。
 彼らの様子を見ながら、ドラマも声を掛ける。
「怪我をしていたら言って下さい。回復しますから」
「ありがとうございます。皆さんのお蔭で怪我もせずに済みました」
 ドラマの呼び掛けに、幻想種達は嬉しそうに礼を言う。
 彼らの笑顔に、セララも笑顔で声を掛ける。
「怪我も無くて良かったよ!」
 そして続けて――
「このあと、どうするの? お家に帰るなら、連れて行ってあげる」
 セララの言葉に続けて、アレフも言った。
「望む者が居るのであれば故郷まで付き添っても私は構わないぞ」
 これに幻想種の何人かは頼んできたので、故郷まで同行することにした。

 幻想種達の方は問題ない。
 なので残りは奴隷商人達。

(ラサに引き渡せばほぼ確実に重罪で処理できるでしょうが……まあ、良いでしょう)
 静かに見つめながら、アリシスは心の中で呟く。
(ネズミ捕りに使うというのなら結果的により多くの一網打尽に繋がります)
 そのため殺さず突き出すことにする。

 けれど、その前にすることがあった。

 シラスと何人かが、奴隷商人達を廃屋へと連れて行く。
「官憲に突き出す、これに懲りたら二度と同じ真似をするなよ?」
 これに商人とゴロツキ達は媚びた表情で頷く。一方傭兵達は――
「仕事でなければしない。仕事なら別だ。俺達にはそれ以外に生活の術がない」
 敗者としての誠実さを見せ、嘘を口にしなかった。
(奴隷商人達は、嘘だな)
 リーディングで確認したシラスは、心が折れるまで物理的な説得を続け、奴隷商人達を分からせた。
 心が折れた奴隷商人達を見てブライアンは言った。
「別の何処かに奴隷を監禁してるかも知れねーし、喋って貰うことは多そうだぜ」
 彼の言葉に頷くように、瑠璃が魔眼を使ってから訊問。
「裏の顔でお付き合いのある方のお名前を挙げて頂きましょうか」
 心が折られていた奴隷商人は耐える事など出来ず喋った。
「奴隷は、もう他に捕えてない。それと、ワシらを釈放してくれたのは、ビブリオという犯罪組織だ。貴族連中とのコネがあって、それを使って保釈してくれた。そのあと金を要求されたが……接触とかは向こうが勝手にして来るから、それ以上は知らないんだ。なぁ、喋ったんだから助けてくれ。喋ったことがバレたら殺されちまう」
 泣きついてくる幻想の奴隷商人。
 そのあと彼らを突き出し、幻想種達を送り届け、依頼を完遂させるのだった。

成否

大成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした!

非常に、お見事でした! 連携やそれぞれの役割に応じた動き、そして戦闘や捕まっていた幻想種達への対応、戦闘後の行動など、実に好かったです!
全てを鑑み、大成功とさせていただきました!

助け出された幻想種達は、皆さんに対してとても感謝しています。
そして、ラサの奴隷商人に関しては、幻想に伝手がある訳ではないので、相応の罪で獄中行きになり、傭兵達は仕事で護衛していたとはいえ協力していたので、奴隷商人ほどではないですが獄中行きです。

残った幻想の奴隷商人とゴロツキ達は、心がへし折られたので再起不能ですが、リプレイの最後で名前だけ出てきた犯罪組織に食い物にされるでしょう。この辺りは、先々でシナリオ化する予定です。想定していたプロットよりも早く動いたので、現在プロットを組み替えつつ考え中です。

それでは最後に重ねまして、皆さまお疲れ様でした。ご参加、ありがとうございました!

PAGETOPPAGEBOTTOM