シナリオ詳細
パサジール・ルメスの少女
オープニング
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混沌世界には主要的な国家が存在し、統治が行われている。
それは幼い子供でも知っていることだ。特に、ギルド・ローレットの拠点たる『幻想』は分かりやすい王政をとっており、貴族連中の存在感も強く西洋の気配を濃く感じさせた。
そんな主要国には数えられなくとも、国と国を渡り歩く少数勢力は多数存在している。
『パサジール・ルメス』――それもその一つだ。
闇市を開くキャラバン隊の護衛を担いラサより幻想国へと訪れた少数勢力『パサジール・ルメス』はラサへと戻ってゆく準備をしている。
「戻ろうにも街道にはモンスターがごった返してて、困っちゃってるんですよね」
棒付きキャンディーを口に含んだ幼い少女は不遜な態度でそう言った。
日に焼けた肌と対照的な真白な髪。明るい色の瞳をした少女はリヴィエールと名乗った。
「パサジール・ルメスの出身。リヴィエールっす。どうぞ、よろしく」
どこか中華風を思わせる伝統衣装に身を包んだ彼女は気軽にリヴィと呼んでほしいと告げた。
リヴィエール自身は相棒のパカダクラ『クロエ』と共に個別で旅をしているそうだが、家族がラサに戻る街道の様子が少しごった返しているのが気になるという。
「そこで、オレたちの出番なんだ」
『黒猫の』ショウ(p3n000005)は特異運命座標たちへと向き直る。
リヴィエールとクロエと共に街道に歩き回っている山賊まがいのゴブリンを退治してほしい。
先導は特異運命座標とリヴィエール(とクロエ)。その後方にキャラバンが進み、無事に街道を通り抜ける手伝いをしてほしいのだという。
「幻想の出口あたりまででいいんだよね?」
「そうっすね。あたしもできる限りは手伝うっすけど……あんまり役に立たないかもしれないっすから」
特異運命座標(ミンナ)を頼りにしてるっすよ、と減らりと笑いリヴィエールは不細工な敬礼をしてみせた。
- パサジール・ルメスの少女完了
- GM名夏あかね
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年06月16日 21時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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からからから――回り続ける車輪は止まらない。
のんびりと歩むパカダクラに騎乗していたリヴィエールはくるりと特異運命座標を振り返る。
「さあ、ここから先っすよ」
危険が多いのは此処から先だという案内人の少女に『ワンダラー』カーネリアン・S・レイニー(p3p004873)は「リヴィはこの辺の道には詳しいのかい?」と優しく尋ねた。
「そうっすね……多少はお勉強したというか――」
「旅には道を覚えることも大事だものな。なるべく被害を抑えて次の土地に行かなくてはならない」
カーネリアンの言葉にリヴィエールはこくりと頷く。 『再咲の』フォーガ・ブロッサム(p3p005334)にとってパサジール・ルメスという旅人たちは未だ新しい存在だ。土地から土地を渡り歩き生活する少数民族と呼ぶのがふさわしいのだろうか。生活の為には商いを行う事もある特徴からフォーガにとっては『この世界の見聞を広げる』きっかけになると好奇を擽る存在に他ならない。
「どのような国へ行くのか、どんな人に会ったのか、どんなモノを売り買いするのか……知りたいこと、知らねばならないことがまだまだ沢山ありますから」
「道中で良ければ話しますよ」
パサジール・ルメスの民の言葉にフォーガは嬉しそうに頷いた。
それにしても――何かを護りながら進むのは随分と久しぶりであるかのような気もしてしまう。
「普段より敵さんが多い感じなのかな? 何かあったりして」
きょとりとした 『特異運命座標』猫崎・桜(p3p000109)は首を傾げる。くりくりとした可愛らしい瞳は周辺を警戒するように見回し、がたごと音立て進む馬車から離れるように注意している。
尻尾をゆらゆらとゆらす桜の尾を目で追いかけながらパサジール・ルメスの子供たちが楽し気に笑っている。
「身を乗り出しては危ないよ!」
くすくすと笑った 『大賢者』レンジー(p3p000130)はいつもの帽子は忘れぬようにしっかりと指添える。飲み物と緊急用の薬もしっかりと準備済みだ。
大賢者の言葉に子供たちは「はぁい!」と無邪気に手を振る。
「お菓子いるー?」
桜とレンジ―に話しかける子供たちは今、特異運命座標が『護衛をしている』というよりも共に遊んでくれているという気持ちなのだろう。
「仕事中だけど、貰ってもいいかな?」
小さく笑ったレンジーに桜も「わあ」と頷く。子供たちが持っていたお菓子に見覚えがないと『祖なる現身』八田 悠(p3p000687)はぱちりと瞬いた。
「このお菓子は幻想のものでは、ない?」
「これはねー、ラサのマーケットで母さんが買ってくれたのー」
無邪気な子供の言葉にラサ、と小さく呟く。悠にとってラサに向かうのは『多分』初めての経験であった。
異国情緒を感じながら、こうしてパサジール・ルメスの民と交流できるのは悠にとっても楽しいことだ。
(新しい土地へ向かうのは、うん、子供のようにわくわくするところがある)
がたんごとんと音立てて進むキャラバン隊を見ながら『名探偵』クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)は「まさかねー」と小さく笑った。
「まさかラサまで届けてもらう贈物を自分で護衛するなんてねー。こりゃあ、ゴブリンどもは一匹でも通せないなー」
パカダクラに乗り慣れているというクロジンデはリヴィと共にパカダクラで先導する。ラサのパカダクラは少しばかり毛の質が違う。鉄帝のパカダクラはもこもことしているのに対してラサの暑さに対応するように少し毛先に水分が足りてないのだ。
「リヴィのパカダクラはラサの子なんだねー」
「そうっすよ。鉄帝には連れてけないっすね……」
相棒のことを口にして肩を竦めたリヴィエールにクロジンデは「そうだねー、鉄帝は寒いのだよー」と小さく笑う。
楽しげに話す仲間たちを見ながら「ふふ、良い旅になりそうね」と笑みを零したのは『特異運命座標』ヴィエラ・オルスタンツ(p3p004222)。
何処にでも湧いてくる山賊や物盗りからクライアントを守るのも冒険者の務めだ。聞き耳を立てて周囲の変化に気を配るヴィエラ。
闇市の品物には――呪われているものもあるが――世話になっている。商人たちが行き来する往来の平和をしっかりと築くことも重要なことなのだと彼女はやる気を漲らせた。
持ち前のハイセンスで周辺警戒に当たる『砂狼の傭兵』ラノール・メルカノワ(p3p000045)は前線を行きながら案内役のリヴィエールに「危険が伴えばすぐに後方へ避難してくれ」と声をかけた。
「了解っす」
「……何らかの気配があるな。気を抜かぬように、リヴィエール殿」
こくりと頷いたリヴィエールにラノールは息を潜め、耳を澄ます。
ふと、顔を上げたラノールがカーネリアンに合図した。さあ、お出ましだ――あそこに見えるのはゴブリンではないか!
●
長時間全員が緊張していては作戦に支障が出る。その可能性を考えたレンジ―が提案したのはローテーションでの護衛だった。
長距離移動の上で、ゴブリンの警戒を続け、接敵した際には全員が万全の体制で戦うことが求められる。
「……前方だな。先手を打つとしよう。」
ぐん、と距離を詰めたラノール。その身を反転させ、ゴブリンを相手取る。攻撃を集中させ、後方へゴブリンたちが抜けぬようにと対応する桜はガトリングを構え、一気に弾丸を放つ。
ゴブリンたちは慌てたようにタップダンスを踊る様に足をばたばたと動かし始めた。
「あはは、面白いっすね!」
「リヴィエールさんは、安全地帯からお願いね」
ヴィエラの言葉にこくりと頷きパカダクラを駆り一度、後方に下がるリヴィエール。クロジンデは心に渦巻く悪意を花に変え、ゴブリンの群れの中へと放った。
まずは第一戦は無事に終えられる。悠とフォーガ、カーネリアンの周辺警戒が続けられる中、林を抜け、太陽にさらされる場所へと入った。
じりじりとさす初夏の太陽に梅雨の気配が混じっている。四季が存在する混沌世界では、その気候のこともしっかりと考えなくてはいけなかった。
「なんだか数が増えてない!?」
次に接敵したゴブリンたち。数が増えていく様子に桜は「ひえ」と小さく声を上げた。
「リヴィエール殿は後ろに。あの程度なら私達だけでなんとかなるさ」
「じゃあ、後ろで馬車の護衛をするっす!」
ラノールの言葉にリヴィエールは大きく頷く。悠は回復薬を担い、馬車をくるりと振り返る。
「まあ旅路に置いて、食料ひいては医薬品はある種金より価値があるんじゃないかなって……快適な旅を目指すんだ、大盤振る舞いしますとも」
四象流転――春夏秋冬、火風水土。 廻り巡る四つの力、その具現にして象徴。手にする連鎖を武器に悠はただ、ゴブリンたちと戦い続ける。
「あー、後ろにはいかせないぞー」
クロジンデは穏やかな口調でゴブリンへと向き直る。すべてを飲み食らわんとする悪意の霧を放ちながら彼女は後方へ抜けんとするゴブリンたちの動きを止めた。
「さて、どれから行こうか」
弓を放ちながらカーネリアンは舌なめずりをする。ここから先、通すわけにはいかないと知っているからこそ、遠方よりの狙撃は足を止めさせるのに何よりも優れていた。
地面を大きく踏みしめて、肉薄したフォーガがゴブリンを受け止める。じり、と足が一歩下がるが構うことはない。厚い回復に適度なローテーションで体力は十分だ。
(……数が多くなるとやることが増える、けれど――)
ここで躊躇い負けることはない。特異運命座標たちはよくよくそれを知っていた。
ぐん、と前線を責めるように殴りつけたフォーガ。その背後より顔を出し悠は四つの力を武具に込め祈る様に戦線を維持させる。
レンジ―は襲撃を受けにくい道をリヴィエールと共に選び、できる限りの消費を抑えた。
「うん! この調子なら思った以上に『被害』は少なく済む――けど」
「問題は待ち構えるボスキャラクターっすね」
レンジ―の言葉にリヴィエールはどこか苦い顔をする。ゴブリンたちの情報網で、パサジール・ルメスの民を狙うゴブリンリーダーはこちらに向かってきていることだろう。
ラノールのハイセンスが掴んだものだと多数の軍勢がこちらに向かってきているらしい。
「リヴィエール殿、気を付けて」
「はいっす」
「そうね、キャラバンも危険がないように身を守って」
ラノールの言葉にヴィエラが続ける。周辺に身を隠す場所のない開けた一本道が林の中に飲み込まれる――その先、何者かが潜んでいることは特異運命座標たちの耳に、鼻に、反応していた。
「ゴブリンの親玉?」
ふむ、とカーネリアンは考える姿勢を見せる。パカダクラの「だかぁ」という鳴き声にどこか気が抜けてしまうが今はそんな場合でもない。
「大丈夫だよ、守って見せるから!」
ね、と微笑む桜はパサジール・ルメスの子供たちを励まし、敵と出会うことを待った。
戻る事ができないならばこのまま進み、無事に守り切るのみだ――がさ、と音がする。
「来るよ」
顔を上げたレンジ―に悠は大きく頷いた。
前線に飛び込んだラノールとフォーガ。ゴブリンたちの行く手を阻み、ラノールが「前に」と静かに声を発する。
「お待ちかねのメインディッシュね」
ヴィエラの言葉にカーネリアンは「これはこれは」と言わんばかりに手を打ち合わせた。
数を増やし馬車に向かうゴブリンたちが多くなる。その行く手を遮るクロジンデと桜の攻撃を抜け、馬車へと近づいたゴブリンにカーネリアンがはっと息を飲んだ。
「もう……じゃまっ!」
いらだったように声上げたカーネリアンがゴブリンを蹴り上げる。リヴィエールと共に馬車の護衛をするカーネリアンはそのままの勢いでゴブリンを地面に倒す。
「よーく狙ってっ!」
ゴブリンの向こう――覗くゴブリンリーダーに放った一撃は見事、その巨躯をよろめかせた。
「がら空きね」
囁く様にヴィエラの声がする。アイギス・レプリカで受け止めたゴブリンリーダーの一撃。
ぐぐぐ、と肉薄し、その力が徐々に少女の細腕を軋ませる。だが、彼女はそれだけでは止まらない。
(……このまま押し通せば、勝てる)
ノービスソードを手にフォーガが顔を上げる。周囲のゴブリンの対応を担い、戦い続けるフォーガに対し、レンジ―から声がかけられた。
「気をつけて! ゴブリンだからといって油断しないこと!」
「はい!」
癒し手からの回復を受け、倒れる事は相容れぬことであることを知るレンジ―はしっかりとカルネアデスの板を握りしめる。余談だが、今日のレンジ―は『ねこさん印のしろねこさんぱんつ』を身に纏っていた。
「何かでっかいのが暴れてるしっ、あれは危険だよね♪」
桜のガトリング攻撃が周辺に展開されていく。次いで、前線で戦うラノールはヴィエラが受け止めたゴブリンリーダーの隙を狙い巨大なマトックを振り下ろした。
「――――終わりだ!」
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あとはのんびりと進むだけ。その段階に至れば安堵が胸によぎったのだろう。
「あとはのんびりさせて貰おうかな」
馬車に乗り、んーと大きく伸びをしたカーネリアン。子供たちはここ座りやすいよお、と楽し気に進めてくる。
「本当に、ありがとうございました!」
口々に礼を言うパサジール・ルメスの民達。まだまだ仲間たちはのんびりと幻想より移動をしていることだろう。
ちら、と特異運命座標を見遣ったリヴィエールはどこか緊張したように「また、共に在っても?」と問いかける。
「ええ、勿論。これも何かの縁だわ、リヴィエールさん」
柔らかに微笑むヴィエラの言葉にリヴィエールの頬が薔薇色に染まる。流浪の民たる彼女たちにとって、こうした新たな出会いが続いていくのは『幸福なのだろう』。
「また、お話を聞かせて貰えますか? いろいろな国――いろいろな文化が、とても興味深いんです」
フォーガにとって知識に繋がる事は大歓迎であった。勿論、幼いリヴィエールにはまだまだ知らないことも多いのだろうがこれから彼女はもっと知識を蓄えるだろう。その流浪の民としての生活は様々な情報を齎してくれるはずだ。
「もうバッチリみんなの顔は覚えたからねー、それはボクの習性みたいなものだけどー」
クロジンデは受付嬢であった経験を生かしてパサジール・ルメスの民の顔を覚えたと胸を張って伝えた。いつどこでも、もう一度で会えばバッチリその名を呼ぶことができる。ギフトがない場合は少し呼び方が変わってくるが――そんなことは今は些細なことだろう。
「無事に危機を乗り越えたら一安心。さあ、幻想も後少しだよ!」
レンジーの言葉にパサジール・ルメスの民たちは皆、大きく頷く。
幻想の国境にたどり着けばこの仕事も終わりだ。そう思えば、どこか寂しい気にもなり、リヴィエールはちら、と特異運命座標を振り返った。
「……どうかしたか?」
「いえ、なんもねーっすよ」
ラノールの声掛けにリヴィエールはどこか視線を揺れ動かす。桜はくす、と小さく笑い「また会えるよ」と柔らかに告げた。
ああ、そうだ――この世界は案外狭いのかもしれない。
こうして流浪の民と出会う事だっていつだって叶う。ならば、こう言おう。
パカダクラに跨ってリヴィエールは手を振る。瞳を輝かせ、再会を心待ちにしていると堂々たる雰囲気でそう告げて。
「それでは、また、イレギュラーズ!」
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様です。イレギュラーズ!
パサジール・ルメスの民も安全に次の場所へと訪れる事ができました。
また皆様と冒険することを楽しみにしております。
GMコメント
すっかり暑くなりました。夏です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●パサジール・ルメス
混沌世界の少数勢力の一つ。パサジール・ルメス。
国から国を渡り歩く旅人の勢力です。リヴィエール曰く、自身の知る『パサジール・ルメス』は海種と人間種が比較的多く見受けられます。
今回はラサへ向かう道すがら。特異運命座標の後ろを小規模なキャラバンがついていきます。
●リヴィエール
通称:リヴィ。11歳。海種の少女。
浅黒い肌に白い髪。明るい瞳の少女。棒付きキャンディがお気に入り。
戦闘能力はそれほど高くありません。情報屋と同等レベル程度です。指示があれば攻撃に加わります。道案内役。
相棒はパカダクラの『クロエ』。まつげが少し長い美人なパカダクラ♀です。
●街道
幻想国の街道。バルツァーレク領です。比較的整備されていますが、最近は物取りが目立つようです。
●ゴブリンわらわら
街道を進むたびにゴブリンが数匹エンカウントしてきます。どうやら同じ盗賊団。
最初は4匹。その次に、5匹、6匹、と増えていき、最終的には8匹+ボスゴブリンです。
それぞれはそれほど強くありませんがボスゴブリンは普通に強敵です。アニキと呼ばれています。
皆様の冒険をお待ちしております。
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