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シナリオ詳細

<ヴァーリの裁決>ヘンテコ怪王種があらわれた!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●雨のひと時
 雨が強く降っている。此処は王都メフ・メフィート郊外、スラムに所在する領地。そこには多くの領民が暮らしている。
「オフィーリア、この雨はいつ止むのかなあ。今日はずっと、雨なの?」
 イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)は抱き抱えているうさぎのぬいぐるみ、オフィーリアに声をかける。
『もう、そんなこと私に分かるわけないじゃない。でも、危ないから今日は出かけちゃ駄目よ?』
「うん、そうだね。ねえねえ、見て欲しいな!」
 イーハトーヴは机を指差した。
『まったく突然ねぇ。あら、それは図鑑?』
 オフィーリアは言った。表紙に可愛いキノコの絵が描かれている。
「うん! 図書室で可愛いなあって思ったから、俺、借りてきちゃった! ねっね! このベニテングダケの赤、とっても素敵!」
 はしゃいでいるイーハトーヴ。オフィーリアは姉のように笑った。
『なんだ、今日もキラキラがあるじゃない』
「へへ。あっ、オフィーリアはどのキノコが好き?」
 イーハトーヴは鋭利な瞳を細め、朗らかに微笑んだ。

 それから、三時間後。イーハトーヴは図鑑に夢中になっている。
「ワカクサタケは、艶やかなエメラルド色で少しだけなら食べれるって! 不思議! オフィーリア、キノコといえばさ、幻想に新しいキノコ専門店が出来たみたい。美味しいキノコ鍋やキノコのピザ、キノコのサラダ、キノコのお刺身、色んなものがあって楽しいんだって!」
 目を細めるイーハトーヴ、誰かを思い出している。
(一緒に行きたいなあ、きっと、楽しくて幸せな気持ちになる)
「──アーケイディアンさんッ!」
 扉が開き、濡れ鼠の領民が一人、部屋の中に飛び込んだ。イーハトーヴはびっくりし、オフィーリアは驚きの声を上げている。
「え、どうしたのかな? びしょ濡れだよ、大丈夫?」
 イーハトーヴはすぐに柔らかで良い匂いのするバスタオルを領民に手渡した。
「あっ、ありがとうございます……」
 領民は困惑している。イーハトーヴは領民を見つめ、黙っている。彼が話し出すのを待っているようだ。
「え、ええと……し、信じられないと思いますが病院の前に変な生物がいるんです!!! ぬいぐるみみたいな可愛いやつが!」
「わっ! うん、俺、信じる! でも、変なって大きな鳥とかかなあ?」
「いいえ、ハリネズミです! 大きさはゾウくらいで身体の色は白で目だけが真っ赤に染まって……なんて言うか、アルビノっぽくて」
「想像だけで可愛い、かも!」
 目をキラキラさせるイーハトーヴ。テンションが上がっている。ゆるふわモンスターってやつだろうか、分かんないけど。
「そうですね……か、可愛いんですけど……何だか面倒なタイプみたいで……とろとろに甘やかされたいって言うんですよ。じゃないと暴れて針を噴射して最後には爆発するって言うんです」
「え?」
「そうですよね、驚きますよね。でも! 喋ったんです、そのハリネズミ。で、自分のことを怪王種(アロンゲノム)って言ったんですよ。ちょっとお喋りしてみたんですけど……何と言うか……社畜みたいな言動で、上司がクソ、残業代は上司の説教、休日は夜まで寝てあっという間とか……するめ美味いとか」
「あ、するめは美味しいよね」
 イーハトーヴは笑った。
「──口調はどんな感じかな?」
 質問もしてみるイーハトーヴ。
「え、ええと……確か……私、腹が立ってるんですよっ!! お昼、十分前にいきなりの説教タイム。それもこの前、ミスしちゃってどうにか解決したことを掘り返してきて……あ~うっせぇわ。判断ミスとかどうのこうの……そんなん、あたしが一番分かってるつーの!って感じですね」
「ありがとう、可愛い声だった」
「ありがとうございます……あの……その、どうしますか?」
「う~ん、ちょっとよく分からないから俺、ローレットに電話してみる!」
 イーハトーヴは言い、電話をかけてみる。

●なんだろう、事件の予感。
「どうでした?」
 戻ってくるイーハトーヴに領民の男は声をかけた。
「うん、幻想各地に多くの魔物が出現し始めてるみたい。俺のところは怪王種だけど、『鳥』に関わる魔物、『巨人』に関わる魔物が多いって」
「意図的に魔物が領地を襲っているってことですか……」
「そう言ってたよ」
「では、あれを一刻も早く倒さないとですね。ただ、倒し方がいまいち分かりませんね。見た目的に攻撃したら針にやられちゃいそうですし……」
 領民は困り果てている。怪王種は要求を呑んでくれるか待っている状態。今が大人しいだけで正直、何をするか分からない。
「うん。だから、俺、甘やかしてみるね。ストレスで身体が大きくなってるだけだと思う。休息大事……嫌なことは取り除いてスッキリさせちゃおう!」
 イーハトーヴはガッツポーズをする。
「え、無茶です! 一人でですか?」
「ううん、皆でかな。さっき、応援を頼んでみたよ。ふふ、頼もしいなあ」
 イーハトーヴは微笑んだ。

GMコメント

青砥です。今回の依頼はイーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)さんの領地で起こっています!!! ん? え、なにこの怪王種(アロンゲノム)?

●目的
 ヘンテコ怪王種(アロンゲノム)をとろとろに甘やかし、消滅させる。

●怪王種(アロンゲノム)とは
 進行した滅びのアークによって世界に蔓延った現象のひとつです。生物が突然変異的に高い戦闘力や知能を有し、それを周辺固体へ浸食させていきます。いわゆる動物版の反転現象といわれ、ローレット・イレギュラーズの宿敵のひとつとなりました。

●で、今回の怪王種(アロンゲノム)
 ふわふわもこもこのハリネズミのぬいぐるみそのもの。アルビノ色。口調や言動は社畜OL(五年選手)。ネガティブな話に同調して盛り上がる傾向。友達少なめ。むしろ、睡眠が友達。食べることは大好き。殺気や向けられた嫌悪に敏感。攻撃時は沢山の尖った針を噴射し、ストレスMAXで爆発する。爆発すれば領地が吹き飛びますね。幸せな話や恋愛トークにも敏感。な・の・で……ひたすら、甘やかしてください、褒めてください。ストレスが減っていくと身体がどんどん小さくなってやがて消滅します。ストレスが増えると身体が大きくなってやがて大爆発。

●天候
 お昼ごろ。ずっと雨が降っている。勿論、ハリネズミは濡れているようだ。

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。このメダルはPC間で譲渡可能です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <ヴァーリの裁決>ヘンテコ怪王種があらわれた!完了
  • GM名青砥文佳
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年03月31日 22時11分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

トリーネ=セイントバード(p3p000957)
飛んだにわとり
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日のフルール
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
寿 鶴(p3p009461)
白髪の老婆
ヴィリス(p3p009671)
黒靴のバレリーヌ

リプレイ

●ヘンテコ登場!
「あらあら、可愛らしい怪王種さんがいるって聞いていたけど本当だわぁ」
 レインコートに身を包んだ『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)が怪王種を見上げ、箒に跨った。
「任せたよ、おもてなしの準備が終わったらすぐに行くね。俺、ヴィリスの踊りやトリーネさんのお歌、とっても楽しみだから」
 『秋の約束』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)が皆に手を振る。
「ハロー、癒しにきたわぁ」
 アーリアは空を飛び、ビニール傘を怪王種の頭上にさせば──
「マ、ママぁ!」
 怪王種はバブみを感じ、途端にオギャった。『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)に合図を送るアーリア。
「ご指名、ありがとうございますCHIHIROです、フゥワッ!」
 シャンパンゴールドのスーツが眩しい。
「さぁて、今日は争いはナシ! ノーウォー! きゃわいいアンタに癒しを持ってきたぜ! まずはトリーネパイセン、フッフゥ♪」
「聖鳥withひよこよー、こけー!」
 『飛んだにわとり』トリーネ=セイントバード(p3p000957)がウィズ・マスコットぴよちゃんとファミリアーひよこと一緒に組体操のスーパーカブトのような技を披露し、怪王種を驚かせる。
「そんなとこにおったら雨に濡れて風邪引くで。ほれ、タオル持っとるでリディアさんと一緒に拭いたるわ。そのまま楽にしとってな」
 『白髪の老婆』寿 鶴(p3p009461)が笑う。
「お疲れ様です、お姉さん。上の方まで手が届かないので、手の届くところからバスタオルで拭いていきますね」
 『木漏れ日の魔法少女』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)が目を細めた。
「あれ、バスタオルあったかい?」
「ギフトの力であたたかくしてるだけなんです。もっとお姉さんに色々出来たらいいんでしょうけど、何にも取り柄なくてー」
 リディアの言葉に怪王種は穏やかな顔をする。
「ええ毛並みやわ、お姉ちゃん。ほんで、何としたん?」
 タオルで怪王種の顔を拭く鶴。
「やさぐれてました」
「そりゃあ大変やったなあ、よう頑張ってる」
「こけー! 身体が冷えてると心も冷えちゃうのよ! というわけでお近づきの印にお一つどうぞ」
 トリーネが怪王種に微笑み、連れてきたひよこちゃんを怪王種の腹の下に。
「あったかくておでんみたい」
「おでん、美味しいわよねー!」
 トリーネの言葉にアーリアが出汁割を思い浮かべる。
(日本酒とおでん出汁、最高だわぁ……あらぁ?)
 慌てて口元を拭うアーリア。怪王種に涎を垂らし、イーハトーヴの領地を吹き飛ばすところだった。
「私はトリーネ、こっちはぴよちゃん! お姉さんのお名前も教えて欲しいわー!」
「あたしはメイヴ。うう……このひよこ、あったかくて泣く」
「泣きなさい! そして、素敵な名前ねー!」とトリーネ。
「本当にあなたはとっても頑張り屋さんなのね。でも今日くらいはゆっくりしましょう?」
 車椅子に乗った『剣靴のプリマ』ヴィリス(p3p009671)が優しい言葉をかける。
「私甘やかされた経験がないからよくわからないけどあなたの頑張りは私に伝わっている、わっ!?」
 ひよこちゃんを頭の上に乗せた怪王種がヴィリスを抱きしめたのだ。その身に柔らかく沈むヴィリス。モフモフ好き達に衝撃が走る。
((う ら や ま し い))
「ふっかふかで甘い香りがするわ……!」
 夢心地のヴィリス。
「仲良しで俺、嬉しい!」
 イーハトーヴだ。荷車を引く大型の海老と一緒に料理や酒を運び、領民の提案によって集会用テントが建てられ、そこに料理や酒が保管される。
「初めまして、とっても可愛いお姉さん。あいにくのお天気だけど、めいっぱい歓迎するから寛いでもらえたら嬉しいな。お酒注ぐね! ごはんもいっぱい食べてね! そして俺もお酒を! 飲む!」
 イーハトーヴはビールをグラスに注ぎ、カマンベール&チェダーチーズのフリットを運ぶ。
「美味い料理と酒でも飲んで嫌な事を吐き出しちまおう! 今ここは地上の楽園、何せ俺とアンタがいるからな!」
 千尋が笑う。怪王種がビールを飲み干し、料理を口にする。
「美味い! 普通に飲むのは楽しいのに会社の飲み会ってクソ」
「つまんねー二次会もあるんだろ?」と千尋。
「そうそう、イライラしてトゲが鋭くなっちゃう」
「かっこいいじゃねぇか! でも、今日はそのトゲトゲすら可愛く見えるぜ。まるで高名な彫刻家の作品みたいだぁ……唯一無二の存在! ヨッ、天才!」
 千尋がうっとりし、怪王種が笑う。
「メイヴ、何かカクテルでも作ろう」
 『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)が尋ねればイーハトーヴが口を開く。
「リキュールは揃ってるから大丈夫! あと、俺にも作って欲しい!」
「私、ファジー・ネーブルがいい」
「了解した」
 ゲオルグは慣れた手つきでファジー・ネーブルを作る。
「ゲオルグさん、私が運びます」
 リディアがイーハトーヴに相談し、給仕を任せてもらったようだ。頷き、イーハトーヴのカクテルを作り始めるゲオルグ。
「ゲオルグさん特製のファジー・ネーブルです」
「ありがとう」
 怪王種はファジー・ネーブルを飲み、パッと表情を明るくする。
「美味しいわ!」
「それは良かった。飲み終わったらすぐに作ろう。遠慮なく、言ってくれ」
 ゲオルグが言う。
「うん、俺もそうするねー!」
 イーハトーヴがウォッカアイスバーグを手に喜ぶ。
「さて、私は踊りましょう。きっと、ストレス解消にいいはずよ! それにね、雨の中、傘をささずに踊る人がいてもいい。自由ってそういうものじゃない?」
 車椅子から立ち上がるヴィリスを怪王種は知る。
「私も混ぜてください」
 集会用テントにピアノ。椅子にはリディアが座っている。
「いいわね、楽しい即興よ。これより始まるのはプリマの一人舞台。どうぞ心行くまでお楽しみください」
 踊るヴィリス。リディアが静かにピアノを弾き始める。躍りのことは何も分からない。ただ、美しいと思った。ピアノの優しい旋律に雨音とヴィリスの音が溶け、涙が溢れてくる。ヴィリスとリディアは今を楽しんでいる。
「使ってね、その美しい涙に。貴女は全てを我慢してきたんだもん」
 アーリアがハンカチを手渡し微笑んだ。
 
 歓声の中、怪王種はライオンサイズとなる。
「姉さん、次はサーモンのあったかスープ! 喉が渇いたろ?」
 千尋が言い、あーんさせる。照れる怪王種。
「ささ、お酒もぐいぐい飲んじゃって! オワッ、い~い飲みっぷり! 流石姉さん! 俺ってば惚れちゃうな~!!!」
 千尋が手を叩き、モヒートを飲む。
「ゲオルグさん、ほんと美味いぜ!」
 ゲオルグはヴィリスとリディアにシンデレラ、鶴に緑茶を振る舞っている。
「ね、お酒美味しい。ヴィリスの踊り、最高だった!」
 イーハトーヴが興奮しながら、今度はマンハッタンを頼んだ。
『ちょっと、飲みすぎじゃない!』
 うさぎのぬいぐるみ、オフィーリアが言った。
「大丈夫、これはれっきとしたお仕事!」
 笑うイーハトーヴ。
「つぎはトリーネさんのお歌かな?」
「ええ、そうよ! 聖鳥のダンスに目と心を癒してほしいわー、こけー!」
 トリーネが躍り出る。
「お姉さんも大変だったのね。そんなお姉さんのために! 今日はお歌を歌います! リディアさん、私にも音楽を頂戴! 行くわよー! こけぴよソング発動! お姉さんバージョン!」
 
 ──すーごいーぞおねーさん、めーげなーいおねーさん
 ──でーもつらくなったらいつでもいってねー
 ──へーんなじょーしはぴよぴよキックでおしおきだー!
 
 華やかな旋律にトリーネの歌声。飛び上がってエアキックも最高に好きだ。
「応援ソングだわ、ピアノもキックもいい」
 孤独だと思っていた。でも、今は違う。
「こけー、最高だったわよ!」
「トリーネさんのお陰です」
 歌と演奏を終えたトリーネとリディアが抱き合う。
「メイヴちゃん、本当に素敵だったわねぇ」
 アーリアがシカサイズになった怪王種に声をかけ、地に降り立った。怪王種の腹の下からひよこが顔を出している。
「ええ、素敵だった。思い出して泣いてしまいそう。残業だらけの生活で私、何も知らなかった」
「そうよねぇ。私も再現性東京で教師やりながらスナックのお仕事もしてるんだけど、帰り支度した時に「明日まで」ってお仕事持ってこられたり、閉店間際にお客さんが来て帰れなくなったりするのよねぇ……ってごめんね、何だか親近感で私が愚痴っちゃった!」
 アーリアはタオルセットで怪王種の水滴を拭き、ふかふか毛布で包み込む。
「ふふ、私も酒宴スタートよぉ! 雨の日に乾杯っ♪」
 ゲオルグ特製のキールで怪王種と乾杯する。怪王種はホーセズ・ネックを飲み始めている。
「美味しいわぁ。私、思うんだけどぉ。ほぉんと、貴女は偉いわぁ。だって、ストレスを大爆発するまで溜め込んで我慢しちゃうんですもの。私なんてしょっちゅうヤケ酒してべろべろ! でも、頑張り過ぎは疲れちゃうわぁ、だから今日は、甘い声色でいいこいいこしてあげちゃう」
 アーリアは怪王種の頭を優しく撫でる。
「うう……ママぁー、辛い。辛いよぉ!」
 怪王種は泣き、ウサギサイズに変わる。

●素敵なおもてなし
 怪王種に傘をさすイーハトーヴ。話を聞いているのはヴィリス。
「この前さ、上司の昼食を買いに行かされたんだよね」
「私、お仕事のこととかよくわからないのだけれどそれって変じゃないかしら?」
「そうなの」
「偉いわ、理不尽に耐えて。でも、逆に心配になっちゃうわ。ねぇ、ハリネズミさん。そんな時、何を食べるのかしら? 私はあまり食べられないから聞いてみたくて」
「するめ! あれを噛むとほんと怒りを忘れる!」
「ありがとう、覚えておくわ」
「お姉さん、ありがとう」
「え、何が?」
 突然、お礼を言うイーハトーヴにびっくりする。
「ここの人達のこと傷つけないでいてくれたでしょう?」
「ああ、それはたまたま。本当は病院を破壊しようと思ってたし」
「でも、しなかった。それが全てじゃない? 優しいお姉さんに会えて、俺、とっても嬉しいよ。お姉さん、本当に可愛くて素敵だね。ね……触ってもいい?」
「ええ」
「わ、凄い! 見た目通りのふわふわもこもこ! これはずっともふもふしてたい……それに甘い香りが素敵だね。ずっとくんくんしたい! え? だいじょーぶ、ほぼ素面だよオフィーリア」
 イーハトーヴの言葉にオフィーリアが頭を抱え、きびきびと動くリディアを眩しそうに見つめる。リディアは給仕に徹し、空いたグラスや皿を片付けている。
「良ければ私も話を聞こうか」
 ゲオルグが怪王種を見る。
「ありがとう。仕事って理不尽。上司に伝えたのに聞いてない!って怒鳴られたり」
「それは辛いな。本当によくやっている」
 ゲオルグは相槌をし、ウイスキーを飲む。そこには幸せそうな怪王種がいる。
「イーハトーヴくん、一緒に飲みましょー」
「やった!」
 マティーニを飲むアーリア。バンブーを飲むイーハトーヴと厚切りの生ハムを食べ、幸福を眺める。傘は千尋が担当しているようだ。
「彼女、どんどん小さくなってるわぁ」
「うん。良いことだけど、なんか寂しい」
  息を吐くイーハトーヴ。

●おばあちゃんと一緒  
「休んでもバチ当たらんで、ようけ休みもろたらええに。酷いところやもん。上司に休み頂戴て言いにくかったらわたいが言うたろか?」
 鶴が言う。
「いいのかなぁ」
「ええって、一人いなくても仕事は回る」
「普通、そうだよね」
「素直でええ子や。甘いもん食べるか? ケーキあるで良かったら一緒に食べよか。頑張ったんやでご褒美もらわんとな」
 鶴がフルーツたっぷりなケーキセットを持ってくる。
「おばあちゃんちみたい!」
「孫のように甘えてや」
「ありがとう、美味しい」
「良かったわ、存分に楽しまんとな」
「うん!」
「メイヴお姉さん、楽しんでるー? このガーリックトーストも美味よー! こけー!」
 トリーネが元気よく現れ、ガーリックトーストをモリモリ食べ、オレンジジュースを飲む。
「楽しんでるよ。ガーリックトーストあったんだ」
「あったのよー! さぁー! にんにくパワーで元気になりましょー! そして、私はなんと、今からメイヴお姉さんを毛繕いします!」
 ガーリックトーストを食べる怪王種。美味しい、とても美味しい。え? 動きを止める。
「だって、こんなに良い毛並みなんだから雨に濡れて痛んだりしたらもったいないわー。お姉さんは優しいからつい頑張っちゃうんだろうけど、もっと自分にも優しくしないとダメよ?」
「……お酒を飲むとか?」
「そうねー! でも、お酒は適度によー!」
 トリーネはひよこ達と熱心に毛繕いし始めれば、すぐにとろんとする怪王種。
「やったわー! 私達の勝利よー! こけー!」
 トリーネが毛繕いの勝利を確信する。
「楽しいわ。なあ、こんなばあさんで良かったら友達になってや。暇やでいつでも話聞くし、行きたいとこあったら付いてくで。ほんで、一緒においしいもんでも食べに行こか。お姉ちゃんは何が好きなん?」
「ラーメン大好き!」
「いいな、明日、行こか。明日は晴れやし」
「行きたいなぁ」
(良い感じだぜ)
 千尋がほのぼのしていると──
「さぁて、そこのCHIHIROくん、私も指名するから肩でも揉んでちょうだいなぁ」
 絡むアーリア。
「え、肩? ひょっとして酔ってらっしゃる? あ、酔ってらっしゃいますね?」
「いいから早くよぉ?」
「あ、はい、伊達千尋肩揉みます。うわっ、アーリアさんの肩、めっちゃ硬い!? これって四十肩っすか?」
「CHIHIROくん?」
「え、あ! めっちゃ豆腐みたいですー、びっくりー!」

「この卵焼き旨いで。小さく切ったから口、開けてや」
 鶴がヴィリスに声をかける。
「口を?」
「そや。おっ、上手く開けられて偉いやん」
「ふふ、甘くて美味しいわ」
「そやろ。旨いなあ、イーハトーヴさんのとこの料理は」
 楽しそうに交流する鶴とヴィリス。
「疲れをほぐしてあげましょう。レッツ、マッサージ!」
 リディアが怪王種の背後を取り、高速で怪王種の肩を揉み始める。
(え? 想像より100倍や、柔らかいです!?)
 揉む手が止まらない。
「むっ、ライバルよー! 私達も気合を入れるわよー!」
 トリーネ達が匠の毛繕いを魅せ付ける。
「はー、すっきりしたー!!」
 怪王種は晴れやかな笑みを浮かべる。
「めっちゃ、いい毛並みになったところでちょっと触ってみてもいいすか?」
 千尋だ。アーリアの肩はイーハトーヴが揉んでいる。
「ええ、どうぞ」
「よぉ~~~~~~~しよしよしよしよしよし」
 千尋が撫でまくる。
「もう、犬じゃないんだから」
 怪王種は笑う。気持ち良さそうだ。
「次、私もいいかしら。とっても可愛らしいから撫でてみたくて」
 ヴィリスが言えば、怪王種はヴィリスの手に身体を押し付け始めた。
「わっ、ふわふわもこもこで気持ちいいわ!」
「ふふ、そうでしょう!」

●小さくなったあなたを見て
「そろそろ、消えちゃうかも」
 怪王種は笑った。
「え? お、お姉さん消えちゃうの!? ハムスターサイズになってるなとは思ったけどー!」
 トリーネとひよこたちが漫画のように落ち込んでいる。
「本当に消えてしまうの? 俺にできることがあったら教えてほしいな」
 イーハトーヴは言う。
「そうだぜ、折角知り合ったんだしよ。どうにかしてこう、程よい大きさで抑える事できないもんかねえ」 
 千尋が頭を掻いた。
「モフモフできなくなってしまうのはちょっと寂しいです」
 リディアが悲しそうな顔をする。
「ありがとう。でも、無理みたい。だからね、最期まで楽しみたいな」
「ならば、見てくれないか?」
 皆の前に立つゲオルグ。
「~♪」
 歌とダンスを披露し始める。怪王種のためのライブ。
「嘘、ときめいちゃう!」
「ありがとう、アイドル活動を二人でしているんだ」
 ゲオルグはターンとウインクをばっちりきめる。懐かしい。友人と一緒にコンサートに行ったりうちわを作ったりしたなぁ。ゲオルグが手を振れば怪王種はきゃーと叫んだ。
(良い感じだ)
 汗を拭い、ゲオルグは宙返りをする。
「!!」
 怪王種は笑顔でしゅわしゅわと消えていった。
「消えてしもたんか……すっきりしたんやろか? そうならええけど。一緒に食べに行きたかったわ。またどっかで会えるやろか?」
 鶴が呟く。
「ああ、すっきりしたと思うぜ。それに絶対に会える。生まれ変わったらまた会おうや。俺はいつでも横にいるぜ」
 千尋が空に叫んだ。
「うぅ、辛いわー! また生まれてきたら一緒に遊びましょうね! 今度は晴れた日に!」
 トリーネも続く。
「ね、イーハトーヴくん。彼女を忘れないよう、そっくりなぬいぐるみを作ってくれない?」
 アーリアの願いにイーハトーヴが頷けば、皆、安堵の表情を見せる。

 後日、イーハトーヴに招かれたイレギュラーズ。
「見て、リディアさんも作ってくれたんだよ! 可愛い!」
 テーブルにはハリネズミのぬいぐるみが沢山。驚くイレギュラーズ。リディアは怪王種の身体を拭いたバスタオルを使い、ハリネズミのぬいぐるみを人数分作ったのだ。イーハトーヴはぬいぐるみ達を抱きしめ、皆に微笑んだ。
「これでメイヴお姉さんを忘れないね!」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 皆様のお陰で怪王種はポジティブになり、消えていきました。ありがとうございます、お疲れさまでした! ギャグになると勝手に思っていたのですが、皆様のプレイングが素敵すぎました……楽しすぎて正直、消滅しないでくれ!と願ってしまいました。そして、ぬいぐるみ、青砥にもください!! 抱きしめて寝たい!!

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