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シナリオ詳細

<ヴァーリの裁決>背水の陣、恐れるに足らず

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)は、領地の巡察を強化していた。
 この数日、連日ローレットに張り出される依頼の多くは、幻想『レガドイルシオン』王国――特に、イレギュラーズが領地として管理する場所へのものが多い。
 これを受けて、リースリットの持つ領地の巡察も強化する必要性が出てきていたわけだ。
「ふむ……この件は後で担当者と相談した方が良さそうですね」
 日課の陳情を捌いて終わらせると、一息を入れた。
 窓辺から覗く風景は春の兆しを見せている。
 ちらりと視線を下げれば、幾つかの蕾を花に変える木々も見えているだろう。
 澄んだ空は晴れ渡り、長袖無しでもいられそうな心地よさを感じさせた。
 ゆたかな河川が流れ、草原が広がっているこの領地の風景を、脳裏に思い浮かべる。

 この土地をかつて保有していたメイフィス男爵は残念ながら『幻想では珍しくもない悪辣な』貴族だった。
 彼は後に反乱を起こしたオランジュベネ子爵と通じ、数多の悪逆を敷き、民政を放棄していた。
 肥沃な田畑は荒れて人々は気力を失い、搾取されたものは多くが贅沢に消えていく。
 そんな彼は、オランジュベネ子爵・イオニアスの反乱と崩壊に連座するようにして、一族諸共に没落していった。
 その後、一時的には代官預かりとなっていた場所を、リースリットが領地として選択したのである。


「ファーレル様、大変です!」
 木漏れ日に揺れるように、目を閉じていたリースリットはその声を聞くや目を開いた。
 机の向こう側、部屋に入ってきた女性が声を上げる。
 この地の執政官として抜擢した女性だった。
「どうしました?」
 相手を落ち着けるためにも、敢えて冷静に問いかけた。
「偵察中の巡察部隊より伝令です。北部より巨人が姿を現しました! その数、40!」
「今すぐ、ローレットに支援要請を。それから、今出せる兵を集めて防衛線を構築しましょう」
 旧メイフィス領北部には、河川が流れている。
 北からの侵攻であれば、そこを越えなければならない分、ある程度の時間稼ぎになるはず。
 脳裏で防衛のための策を考えながら、リースリットは歩き出した。
「ファーレル家は頼れないのでしょうか……?」
「頼るわけにはいきません。
 この領地が『ファーレル家の飛び地と解釈される』わけにはいきません。
 そのようなはずがなくとも、そう取られる可能性があってはならないのです」
 執政官の問いかけに、リースリットは静かに首を振った。
 腐敗した貴族達にむざむざ付け込む理由を与える必要はない。
 それに、イレギュラーズであれば、対処できる。
 確信であり、自信であり――何よりその覚悟で剣を取るのだ。
 イレギュラーズになって為す道を、こんなところで終わらせるつもりはない。


 怒号が聞こえている。それは、怒り狂う巨人の怒号だ。
 作り上げた防衛陣地の中、リースリットはやや見上げるようにして、向かい来る巨人たちへ視線を投げる。

 戦端が開かれるまで、あと少し。
 同じように戦場に姿を見せた仲間達と共に、リースリットは戦場にて緋炎の剣を抜いた。
「戦闘準備――皆さん、勝ちましょう」
 こちらから見れば、敵は背水の陣である。
 だが背水の陣が『勝利』のために使える状況ではない。
 抜かりなくやれば、負けるはずはない。あとは――勝つだけだ。

GMコメント

 そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
 ヴァーリです。リースリットさんの領地に姿を見せた巨人をぶっ潰しましょう。

なお、当シナリオは『相談日が6日』です。ご注意ください。

●オーダー
巨人40体の討伐

●フィールドデータ
 旧メイフィス領北部に築かれた野戦陣地です。
 会敵時点で陣地と巨人の間には50mの距離が開いています。
 巨人の背後20mは河川が流れ、その河川を壁として、巨人を半円状に囲う形で陣地が築かれています。
 基本的には平野部ですが、落とし穴や塹壕、大砲など、戦場への事前の工作は自由です。
 明らかに無茶なこと以外は大体可能です。

 なお、皆様の陣地が抜かれると2kmほど南に中心都市があります。
 抜かれないようにしましょう。

●エネミーデータ
・プルガトリオジャーマ
 全身から炎を吹き出す8m程の巨人の怪王種です。下記の巨人達に比べるとかなり強力です。
 巨体に見合ったタフネスさを持ちますが、鈍重です。
 ブロックに5人以上必要です。
 また、ブロックしない場合、戦場を無視して中心都市に向かってゆっくり侵攻します。

<スキル>
踏みつぶし(A):地面を踏みしめ、地響きを起こすと共に一帯を焼き付けます。
物近域 威力中 【業炎】【炎獄】【崩れ】【窒息】

煉獄焔波(A):直線上を焼き尽くす炎の光線を放ちます。
神超貫 威力中 【万能】【業炎】【炎獄】

・巨人〔武〕×20
 身長5m前後の巨人です。筋骨隆々とした壮年風の印象を受けます。
 斧や剣、こん棒のような物を握り、中距離戦闘を行ないます。

<スキル>
ウェポンアタック(A):手に持つ武器を目の前に振り下ろします。
物中範 威力中 【足止】【崩れ】

ウェポンスレイ(A):手に持つ武器を横殴りに叩きつけます。
物中扇 威力中 【ショック】【崩れ】

・巨人〔術〕×19
 身長5m前後の巨人です。やや線が細身な壮年のような印象を受けます。

<スキル>
エレメンタルブレス(A):魔力の籠った吐息で吹き付けます。
神遠範 威力中 【凍結】【業炎】

カースアイズ(A):呪力を持つ眼力で身動きを止めます。
神遠単 威力中 【呪縛】【呪殺】

●友軍データ
 今回、イレギュラーズは各々の領地から10人ずつ派遣します。
 兵科や使い方などは皆さんにお任せします。
 皆さんの個人間はもちろん、部隊単位の連携が勝利の鍵となるでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

  • <ヴァーリの裁決>背水の陣、恐れるに足らず完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年03月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)
ロクデナシ車椅子探偵
ルリ・メイフィールド(p3p007928)
特異運命座標
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
ヴィリス(p3p009671)
黒靴のバレリーヌ

リプレイ


 野戦陣地の作成は順調に進んでいる。

「こういう仕事が来てくれるのは助かるね。
 ボクは軍師だ。率いる兵士が居なくては脆く儚いもの」
 自分の領地から連れてきた兵士達をとりあえず塹壕堀に駆り出しつつ『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)は不敵に笑う。
「ここに塹壕を掘ろう。それから、こことここに砲台を幾つか」
 笑みを零さず、広げた地図はこの野戦陣地付近のもの。
 持ち前の戦略眼を駆使して敵の進路を予測し、描くのは最も効率的な戦闘配置。
 そしてそれを熟すための陣地形成である。

「あぁ、分かった。じゃあ、ここと、ここに追加だな?」
 シャルロッテからの指示を受けた『魔剣鍛冶師』天目 錬(p3p008364)はすぐさま連れて来た工兵の方を見る。
「さて、鉱山の坑道補強工事に比べたら軽い作業だぞお前たち! 気合い入れて行くぞ!」
 連れて来た工兵にビシバシ檄を飛ばし、応じる声を背に、自身の作業を進めていく。
 鍛冶屋たる自身にとってはお手の物。
 幾つもの砲台と砲弾を作りつつ。陣地形成のための道具を用意していく。

「コレ普通なら致命的だけど巨人じゃわかんねえなあ…」
 落とし穴の底、びっしりと穂先が覗く槍衾を見下ろして言ったのは『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)だ。
 落とし穴の数はこれで3個目。
 巨人が到着するまでにまだまだ作ることはできそうだ。
(にしたって昨今キナ臭いなんてもんじゃない。
 好い加減臭いの元を探りたいけど…)
 このほど、幾つも魔物の襲撃が起きている。
 しかもそれらは基本的には『攻撃を受け始めてから』の――後手後手だ。
 何とか反撃の手も出したいというもの。
 視線を上げれば、そこにはこの領地の主でもある『春告げの』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)の姿が見える。
(ま、なんにせよ、黒狼隊長夫人の領地は黒狼隊員の自領みたいなモンだ。
 そりゃあヘルプりもしようってな話ですよ)

「それでは、そちらの木材は塹壕用にあちらへ持っていってください」
 野戦陣地には続々と資材が集まってきつつある。
 それらを集めたのは『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)の交渉術の賜物であるといって良い。
 そのうえで、持ち前の交渉術を駆使して、陣地構築を熟す兵達へ声をかけていく。即ち――
「勝ったらリースリットさんが何でも言うことを聞いてくれるそうですよ。頑張りましょう!」
 ――何でも言うことを聞いてくれるとは言ってない。
 ちなみに、聞きはするけど叶えてくれるかは知らないが。
 それでも現金で俗物的な一部がちょっとだけ士気を向上させたのは事実。

「それじゃあ、ボクが持ちあげてるのでさっさと持っていくのです」
 兵士達が塹壕用の木材を持ち上げるのに加わった『特異運命座標』ルリ・メイフィールド(p3p007928)は術式を解除し、持ち前の膂力を解放する。
 ひょいと手を添えるように持ち上げるだけで、両脇を持つ兵士達へ蓄積するはずの疲労感は減り、持ち運ぶ時間が短縮される。

「最近なにかと縁があるわね、巨人さん。
 私がいない間に幻想も変わったのかしら?」
 不思議そうにつぶやくのは『剣靴のプリマ』ヴィリス(p3p009671)。
 剣脚を以って立つ仮面の少女は、ころりと首を傾げた。
「それにしても……あんなにたくさんの観客の前で踊るのは久しぶりね」
 ざっと見るに40体。その全てを直接相手取るわけでないにしろ、その数は多い。
「ふふ、ドキドキするわ」
 微かに笑みを零す。開幕まであと少し。

 巨人達が川を渡ってくる。
 水の流れをまるで気にせず、その腰ほどまでをとっぷりとしずめては、こちら岸へ。

「あれ程の数の巨人による進軍が、此処に辿り着くまで素通しとは……」
 リースリットの方はぽつりとつぶやいた。
「素通りでなければここに近い位置から湧いて出たということでしょうか……」
 気になることは山積みだった。
 しかし、それを調査するにしろ考えるにしろ、まずは勝つことが最優先だ。

「なんにせよ、あれほどの数の巨人が街に到達すれば、壊滅的な被害が容易に想像出来るわ」
 隣に並んだのは『プロメテウスの恋焔』アルテミア・フィルティス(p3p001981)だ。
 アルテミアはくるりと兵士達の方を向いた。
「リースリットさんと領民達の為にも、何としてでもここで食い止め、討伐するわよ!」
 おう、と兵士達が声を上げる。
 作戦の準備は整った。

「では、参りましょう。――勇者王よ、御照覧あれ!」
 魔昌剣を抜き放ち、リースリットが宣誓の声を上げる。
 巨人狩りが始まる。


 怒号が響き渡り、巨人たちの一歩の度に微かに地面が揺れているような感覚がした。
「勇敢と蛮勇を履き違えるな、全員生きて帰るわよ!」
 アルテミアはそんな戦場でそう告げるや、一気に走り出す。
 目標は跳びぬけて大きな巨人。
 全身から噴き出す炎に陽炎で空気が歪んでいる。
 脇目も振らず、兵士を引き連れて走り抜けた。
 巨人の眼前に立ちふさがるように立つと、双剣を構える。
 蒼玉を想わせる鮮やかな青色の刀身に纏われる美しき焔、銀青の輝きに纏われる焔。
 双焔を纏う剣を構え、細剣を縦に引くように、短剣を薙ぐように横へ振り抜いた。
 飛翔する青き炎が猛き炎鳥を形成しながら舞い上がり、プルガトリオを下から上へ駆けあがっていった。

『オォォォォ』
 振り抜かれた剣に反射的に叫び、巨人の足が上がる。
 それは、そのままアルテミアめがけて落ちてきた。
 踏みぬかれた足を躱して見上げた先で、巨人と目があった気がした。
 走り出した兵士達がプルガトリオに張り付いていく。
 剣を握るアタッカー達が続けてプルガトリオに攻撃を仕掛けていった。

「我々にまあまあ平穏ってのが架かってる。
 無事に済ませて! モテに行こうぜ野郎共!」
 夏子の現金ながらも人間らしい檄に呼応するように兵士達が叫ぶ。
「そんじゃま、行くか! 訓練通りやろ。死ぬなよ」
 筋骨隆々とした壮年風の巨人達、その中でも比較的集まっている方向めがけ、夏子は駆け抜ける。
 ある程度の距離まで来ると、夏子はグロリアスを真横に引くように叩きつけた。
 巻き込まれた3体の巨人が思わぬ衝撃と鋭い発砲音に煽られるように吹っ飛んでいった。
『シネ! シネ!シネ! シネ!!!!』
 咆哮と共に、逆上のまま、3体が夏子目掛けて走ってくる。
 そして――そいつらの足元が崩れた。
 踏み抜いた巨人が脛までを穴の中に落とし悲鳴を上げた。

 砲兵部隊の前面、夏子とアルテミアよりやや後ろよりの場所にリースリットたち3人はいた。
「我々の役目は敵巨人の足止めです。
 罠を突破した巨人に砲兵部隊が攻撃されないようこれを食い止めます。
 一体たりとも突破を赦してはなりません」
 兵士達へと厳命しつつ、剣を抜く。
 自分はここだと、それを証明するように地上から浮き上がり、夏子やアルテミアを無視してこちらに向かってくる敵を見る。
 向かってくる巨人達に合わせるように重装歩兵たちが走っていく。
 それを横目に、リースリットも走り出した。
 目の前にたつ壮年風の巨人へ、剣を閃かせた。
 紅に燃える焔を纏う緋炎が巨人へ走り抜ける。
 合わせるように動いた巨人の剣を体格差ゆえの小回りで躱して、強かに切り裂いた。

「準備は万端、如何に巨人といえど抜けるとは思わない事だな」
 巨人たちの動きを見ながら、錬は笑う。
 眼前には式符より形成した一つの大砲。
 戦場を見渡し、線の細い壮年のような巨人達複数に視線を向ける。
 彼らが徐々にこちらへ近づいてくる。
 それを見ながら、錬は大砲へ魔力を籠めた。
 形成されるは炎星、鮮やかに空に舞う一筋の炎の流星。
 弾丸が放物線を描いて巨人へと炸裂する。
 爆発に巻き込まれて巨人達が雄叫びを上げ、尻もちをついて――そこに在った落とし穴に貫かれて悲鳴を上げた。

「なるほど、巨体ゆえに我々より小回りが利いていませんね」
 寛治は敵の動きをやや俯瞰的に見るよう努めながら、閃いていた。
(それだけでは弱点や急所とは呼べませんが……
 それを踏まえれば弱点を突くことも難しくは無さそうですね)
 少し考えながら、散開の動きを取ろうとしつつも今はまだ固まっている者が多い巨人達へ向けて引き金を弾いた。
 ステッキに仕込まれた銃口から放たれた弾丸は限りない分裂を経て5体の巨人を纏めて穿つ。

 ヴィリスは後方、砲兵達の近くにいる。
「さぁ、踊りましょうか」
 笑みを刻み、そのまま剣脚を振るう。
 それは斬撃は乱れ舞い、複雑な金属音を奏でながら複数の巨人達を纏めて刻んでいく。
 それはさながら絶望の海に歌う呪いの如く。
 攻撃をまともに食らった巨人の数体が雄叫びを上げ、互いに魔力の籠った息を吹きかけ、睨み合う。

 シャルロッテは砲兵達と共に最後衛にいる。
「第一陣――撃て」
 静かな声と同時、巨人達へと砲撃の雨が降り注いでいく。
 比較的でたらめに見える攻撃は、イレギュラーズが入念に計算して配置したこともあって抜群の火力と化して襲い掛かる。
 十字砲火を逃れた巨人達が、イレギュラーズの迎撃を受けて怯み、動揺している。
 シャルロッテの指揮に、一切の例外はなかった。
 その瞳は敵陣の様子をつぶさに見つめて一つ一つを記憶し、その耳は敵の怒号と味方の声を聞き、心には一切の動揺はない。
「残念だが、そこはボクの罠がある場所だよ」
 こちらへ向かってくる、1体の巨人。
 薄く笑ったシャルロッテの目の前で、巨人が何かに足を取られて首を掻きむしる。
 呻き苦しむその巨人へ、仲間たちの攻撃が降り注いでいった。

 ルリは巨人の反撃を受けつつある兵士達の方へと走り寄ると、魔術を行使する。
 鮮やかな輝きを保ち広がった魔力術式。
 それ目掛けて、拳を握り締める。
 それは自身の持つ腕力を魔力へと変換する特殊術式。
 拳打が術式に叩きつけられた瞬間、魔力の染みわたった術式が作り出した聖域が傷を癒していく。


 戦いは続いている。
 戦況はイレギュラーズ優位のまま、巨人の数は半数を下回っている。
 けたたましい怒号は敵の数が減った事に反比例して、その劇場を示すように増していきつつある。
「ふふふ、観客の皆様はお静かにお願いするわ!」
 数を減らす巨人目掛け、ヴィリスは蹴撃を払う。
 剣閃が駆け抜け、巨人の周囲を取り囲んで――キューブ状の結界を形成し、その内側へと押し込んだ。
 最後の一刺しとばかりに蹴り飛ばせば、スパンとキューブが炸裂し、呪いが巨人を苦しめ殺す。

「弾を切らせるな! 数も減ってきたぞ! しっかり狙え!」
 錬は声を張り上げ指示を飛ばしながら、プルガトリオの付近にいる巨人へ照準を合わせた。
 術式を起こし、再び叩きつけられた紅蓮の弾丸は鮮やかに走り抜け、巨人の頭部へと炸裂した瞬間、周囲を巻き込み爆炎を振りまいた。
 崩れ落ちた巨人の後ろで、プルガトリオが足に肩辺りに傷を負っているのが見える。

「傷を負ってる者は下がってください! 足止めを後退します!」
 プルガトリオの足元へ走り抜けるリースリットはそう指示を飛ばしながら、剣へ魔力を籠めた。
 それまで足止めを熟していた兵士達が後退していく。
 対応するように連れて来た兵士達が足元へ張り付いていく。
 静かな風火の理が音を立てている。
 静かに見上げれば、その口元が紅蓮の焔を保っていた。
 打ち込むならこちらの方が早い。
 剣身の炎は雷霆へ変じ――撃ち抜くように刺突を放てば、一条の雷霆となってその胴部を貫いた。

 紅蓮の炎が放たれた。
 一直線上を焼き払う光線は真っすぐに。
 アルテミアはそれを危なげなく躱すと、合わせるように剣を構えた。
 その全身がプルガトリオのソレを越えるほどに熱く燃えている。
 踏み込みと同時、アルテミアは双剣の連撃を見舞う。
 青炎纏う己が身さえ気にせぬ凄絶なる剣撃はプルガトリオの脚の腱を削り落としている。
 三度の斬撃を受けたプルガトリオが初めて膝を屈した。

「退く選択肢は我々にこそ無いん…だ!」
 夏子はグロリアスを地面目掛けて叩きつけるように撃ち込んだ。
 ほとんど自身の周囲に近いその攻撃は片手で数え切れるほどの数しかいない巨人達の注意を夏子へ集中させる。
 振るわれた剣が、斧がこの身を削ろうと、それでも構わない。
 ただでさえ恨み嫉み妬み僻みの籠っていそうな巨人の眼が、怒りに染まって夏子を凝視する。

 寛治はショルダーホルスターから抜いた.45口径の自動拳銃をプルガトリオの怒りに満ちた声を上げる口に向けた。
「タフさはおみごとでしょうが……防御技術が高いわけでもないようですね」
 見抜いた弱点――静かに絞った引き金。
 放たれた弾丸は真っすぐにプルガトリオの口へと吸い込まれていき、幾つもの風穴を生みだしていった。

 シャルロッテは戦場の前の方へ移動しつつあった。
 味方の被害を減らすべく、後退してきた味方の兵士達をかき集める。
 その場で、静かに的確な判断を持って状況把握の指示を飛ばしていく。
 気力を振り絞る兵士達へ、そのまま自らの周囲へ齎した加護を用いてその傷を癒していく。

 ルリは強弓を振り絞る。
 膂力が次々と魔力へと変換され、増幅された魔力が一条の矢を作り出していく。
 静かに構えた弓の向こう側、射線は確実、敵はこちらに意識が向いていない。
 それを確認するや、手を放した。
 音速を為した一条の矢は放物線を描きながらプルガトリオの首に向かって駆け抜けていく。
 その矢が、強かに首に突き立つのをルリは静かに見据えていた。


 夏子の下へ集結した巨人達と、プルガトリオが潰れるのはほとんど同じ時だった。
 戦場の草を火が焼いている。それもすぐに鎮火されるだろう。
 兵士達にも傷は多い。それでも死者はなかった。
 イレギュラーズでも数人の傷は深いものがある。
 各々が各々の戦後処理を行なう中、ヴィリスは借り受けた兵士達を見ていた。
(私もそのうち領地を持てるみたいだし、その時はそこに勧誘するのもいいわね)
 傷の手当てを終わらせた兵士達を見ながら、ふとそう思う。
「今回はとっても助かったわ。皆とっても強いんだもの」
 お礼を言えば、兵士達が驚いた様子を見せて、嬉しそうに笑っていた。

成否

成功

MVP

アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女

状態異常

コラバポス 夏子(p3p000808)[重傷]
八百屋の息子

あとがき

お疲れさまでしたイレギュラーズ。
よく詰めておられたかと思います。お見事でした。

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