PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<ヴァーリの裁決>Defense Line

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幻想各地に謎の魔物が出没している――
 それは古廟スラン・ロウや神翼庭園ウィツィロにて異変が生じ始めた頃からである。関連があるのか今のところハッキリとはしていないが……しかし領地を襲われる貴族達にとっては放置し難い状況であるのだけは確かだった。
 それはここ――ライヒハート家が統括する地域でも同じくである。
「……やれやれ、最近多いなぁ」
 領地の一角。街へと続く道の途上にして、周囲が木々で覆われている地。
 この付近に魔物が出没したと出向いたシルト・ライヒハートは、思わずぼやいた。
 彼はライヒハート家が長男であり同時に騎士である。本来であれば家督を継ぐのは長子である彼……の筈だが諸々の事情からその役目は弟にあり、彼自身は一介の騎士として動いている。
 故に魔物との騒動があれば彼が往く。
 それを厭う事など無い。騎士であるのは、彼自身も願った事であるのだから。

 しかしそれはそれとして困り物である――ここ最近の魔物達の頻度は。

 今の所は抑える事が出来ている。
 されどもしも大群が来たら。もしもより強力な魔物が到来したら。
 『万が一』が在り得てしまうかもしれないとシルトは思考を。
「……というかそろそろブレンダの所に行きたいんだけどなぁ」
 それはそうと――頭を掻く。
 ブレンダ。ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)。
 イレギュラーズでもある彼女とは約束を交わしているのだ。再び会うという――約束を。
 ……しかしこのような事態が発生しては中々に時間がないものである。彼女の出会いの起点ともなったインベルとも触れ合いたいし……それにこの前のグラオ・クローネでは――
「シルト様。ご用命通り、幾つかに防衛用の拠点を築いております」
「うん。まぁこれを使わなければ使わないに越したことはないんだけれどね……」
 と、その時。配下の騎士より掛けられた声に思考を中断する。
 相次ぐ魔物の襲撃。ならばと領土内に複数の――魔物の襲来が予想される地点に防衛の拠点を築くのだ。拠点と言っても規模的には関所と言った程度だが、しかしあると無いとでは戦う者にとっても領民にとっても安心感が異なる。
 どの道、盗賊の類も出ない訳ではないのだ。そういう輩の警戒の役にも立つ。
 どう転んでも無駄にはなるまいと配下の騎士と共に備えて――しかし。
「シ、シルト様! 出ました! 南方より魔物が……!!」
「来たか――って、おいおい。なんだい、あれは?」
 シルトは眉を顰める。今まで現れていたのは鳥や獣の様な連中ばかりだったのだが……
 そこに居たのは『巨人』
 オーガとも言うべき――只人よりも一回りも二回りも巨大なる存在であった。


「――という訳で、まぁ。なんというか一度迎撃には成功したんだけど……
 どうにもこうにも倒しきれなくてね」
 後日。だからイレギュラーズ達の力を借りたいとシルトは言う。
 巨人たちの襲来はその場にいた者達でなんとか凌いだ。しかし――シルト達騎士側も少なくない被害が出たらしいのだ……関所は幾つか粉砕された所があり、負傷者も多数。
 その上巨人達を殲滅できたわけではなく一時的な退却に追い込んだ形。
 元々獣程度が来る事を想定した防備であった為、力も体格も遥かに優れる巨人を打破するには装備や人員が不十分だったのだ。それ故に中々苦戦させられたという訳で……本来なら他の地域から増援を行うべきなのだろう、が。
「そうもいかない。ああいうのが出てきたって言う事は他の地域にも、ね」
 だから守備を手薄にする事は懸念され――
 代わりにイレギュラーズ達に依頼が舞い込んできた訳である。
 目的は再度至るであろう巨人達の迎撃。
 奴らは力が強く、ある程度の障害物など粉砕してしまうらしい。図体の大きさに合わせた膂力を持っている――と言えるが。だからこそこちらの攻撃を当てるのは比較的容易い事だろう。
 そして、この防衛拠点は些か壊れてはいるがまだ使う事も出来る。
 奴らを引き込んで戦うか、或いは少しでも修繕して罠でも仕込むか……
 巨人たちの姿が見える前に行動出来る事もあるだろう――
「ああ勿論俺達も手伝うよ。負傷者が出たと言っても全滅した訳じゃあない。
 ――尤も、数が少ないからやっぱり君らを頼りにさせてもらうけどね」
 同時。シルトの後ろには騎士も三名程控えていた。
 全身に鎧を着込んだ彼らは守備の力に長けていそうだ……シルトも合わせて四名となれば、成程確かに数は多くない。イレギュラーズに依頼が出たのも納得――であるが。
「ところでシルトさんは『負傷』してないので?」
「……ははぁ、流石イレギュラーズって所だね。
 まぁ、前の戦いでちょっとね。動けないって訳じゃあないんだが――うん」
 それはそれとしてシルトにも見えぬ所に傷がある様だ。
 恐らくは服の上からでは分からない腹部かどこかだろうか……どうにもぼかしているが、前の戦いで誰かを庇った時に負傷してしまったらしい。かといってこの危うい時期にそれを口外しても家の者に動揺を広げてしまうだけだと。

「まぁ俺の事は内密に頼むよ。あんまり『皆』に心配かけさせたくも――ないからね」

 頭を掻きながら苦笑するシルト。
 ……将来的に貴族の地位に立たぬとは言え、色々と気を使っている訳か。
 まぁともあれ巨人の襲来までそう時間は無い――とにかく脅威の排除の準備に取り掛かるとしよう。

GMコメント

●依頼達成条件
 全ての敵戦力の撃退

●フィールド
 ライヒハート領の一角に存在する防衛拠点です。
 周囲は林に囲まれています。この拠点は頻発する魔物の襲来に備えて造られた一つで、簡易ながら石の壁で周囲が覆われてい……ました。しかし先日の巨人たちの襲撃により一部が損壊している様です。

 シナリオ開始後暫くすると巨人たちが到来します。
 防衛拠点の内部で戦う場合、多少『回避』と『防技』の判定に有利な補正がかかります。あくまで多少ですので、過信は出来ませんが。この効果は拠点を修理できるような非戦スキルなどがあれば効果が上昇するかもしれません。

 巨人到来までは若干時間があるので何かしら迎撃の準備をしてもいいですし、或いは巨人達の接近を調べるべく偵察を行ってもいいでしょう。

●敵戦力
・巨人『オルドブルグ』×10
 棍棒の様な物を持っている巨人達です。
 『巨人』の名の通り一般的な人間よりも遥かに巨大で、同時に優れた膂力があります。ただし巨体である為に比較的攻撃はあてやすい事でしょう。小回りも少し効きづらいように見受けられます。
 彼らの力は障害物の破壊にも優れています。
 その為、戦闘が長期化すると拠点の有利補正が減少していくかもしれません。

●シルト・ライヒハート
 ライヒハート家の長子にして騎士たる人物です。イレギュラーズたるブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)さんと知古の間柄であるとか。

 貴族の身でありながらも騎士としての実力もあり、そしてなにより平民にも分け隔てなく接する人物でもあります。尤も、あまりにも気兼ねなさすぎて貴族だと気付かれない事もあるようですが。

 今回襲来した巨人の被害により防備に不安が出てしまった為、イレギュラーズ達へ依頼を出しました。彼と協力して、再度襲来する巨人たちを撃退してください。

 ――なお、彼はこの依頼に至る前の戦いで若干負傷しています。
 命の危機に晒された配下の騎士を庇った際についた傷の様です。動けないという程ではないので、配下の面々に気付かれてはいないようですし彼自身配下の者――と、知古のブレンダさんには黙っている様ですが。

●ライヒハート家の騎士×3
 全身に鎧を着込んだ騎士達です。
 戦闘能力はそこそこ程度。攻撃よりも防御能力に優れており、基本的に皆さんの支援に回ります。何か指示があれば、余程妙な内容でない限りはその通りに動いてくれることでしょう。

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <ヴァーリの裁決>Defense Line完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年03月29日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)
メイドロボ騎士
久住・舞花(p3p005056)
氷月玲瓏
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
リディア・T・レオンハート(p3p008325)
勇往邁進
節樹 トウカ(p3p008730)
散らぬ桃花
微睡 雷華(p3p009303)
雷刃白狐
耀 英司(p3p009524)
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リプレイ


「――まったく。この間の騒動から忙しいったらないわねぇ。
 魔物があちこちに湧いて出てきてるだなんて……こんな調子がいつまで続くやら、だわ」
 尤も、そのおかげで食いっぱぐれずにすむと『never miss you』ゼファー(p3p007625)は独り言ちる。忙しいという事を吉と思うべきなのか、それとも……まぁ単純に己が飯の種があるという事だけに注目を置けば悪い話ではない。
「さ。とりあえずは準備しておきましょうかね――少しでも補強しておけばマシになるでしょ」
「ああ。まだ巨人の姿は見えない今の内だろう」
 とにかく拠点の修繕から始めておこうかとゼファーは『メイドロボ騎士』メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)と共に行動を開始するのだ。巨人達が訪れれば戦闘に掛かり切りになるが、それまでにやれる事はある。
 廃材やら、その場にある在り合わせでも何でもいい――ゼファーは過去の経験から培った知識で修復作業を進める。石を詰め込んで、柱で支えるぐらいでも、巨人達から見れば壁に見えてマシだろう……多分ね。
 同時、メートヒェンも同じく、だ。
 ほんの少しでも壁を成り立たせよう。それが間もなく起こる戦いの備えにきっとなる。
「損壊した防衛拠点で巨人の進行を阻止する……なかなか難しい戦いになりそう。でもここが抜かれれば……次は、後ろにある街が拠点と同じように破壊される事になる」
 だからと奮い立つのは『雷刃白狐』微睡 雷華(p3p009303)だ。
 今この場で見える拠点の惨状を眺めるだけでも――未来が想像できてしまう。
 もしも奴らが街へ到達したら? もしも奴らが戦う力を持たない者の前に……
「……そんな事はさせない。出来る限りの事を、しよう」
 故に彼女は跳躍し、拠点の外へと。
 成すべきは偵察である。優れし五感を周囲に巡らせ、敵の進行が今如何程であるのか調べよう。
 敵襲までの正確な時間、攻めてくる位置……通るルート。
 それらは全て武器になる。『来る』と分かる事が確実なる一助になるのだと。
「しかし迫って来る巨人に、築かれた防衛拠点……俺の故郷じゃお目にかかれないリアルファンタジーだな。父上の話や本とかで知ってはいたが――」
 実際にその場の空気を吸うのは違うものだと雷華に続いて拠点の外へと至る『薄桃花の想い』節樹 トウカ(p3p008730)は思いを巡らせるものだ。
 故郷の豊穣では見ぬ木々、草花、動物に水流――全てが新鮮にして高揚感を与えてくれる。
 特にこの一部損壊している所など、正に雰囲気を己が魂に響かせてくれて。
「巨人かぁ……まさか、漫画の中の存在かと思ってたがまさか本当に見る日が来るとはな。なぁ。もしかして弱点はうなじだったりするのか? くっそ、なんか木々とか建物にワイヤー打ち込んで飛び回れる装置があればな」
 同時。『Heavy arms』耀 英司(p3p009524)もまた外へと。
 巨人達は外から攻めてきた。ならば傷付いている拠点の壁も――また外からの衝撃だ。
 そこから見る事によって初めて気付く事の出来る損傷もある。激しき損傷があれば仲間に伝えようと思考していれば。
「初めまして、シルトさん! リディアと申します!
 ブレンダ師匠には、いつもお世話になっております!」
「ははは、ああ君が話に聞いたリディアって子かぁ。今日はすまない、よろしくね」
「え、話!? ブレンダ師匠、私の事を知らない所で一体どんな風に話して!!?」
 この拠点の主とも言える存在に『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)は一早く挨拶を。彼女にとってシルトは只の依頼人というだけではない――親しい師匠である『猪突!邁進!』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)の愛し人であれば礼を欠く訳にはいかない!
 と。振り向いたその時。
「――シルト。いいな? お前はこの拠点で指揮に務めろ。前線には私たちが出る。
 お前はお前にとって相応しい場所にいればいい」
 リディアはなんとなく気付いた。ブレンダは――怒っている。
「ん、ははは……いや、やっぱり叶わないなぁブレンダには誤魔化せないね」
「当たり前だ……それとも私がお前の怪我に気付かないとでも思ったのか? 無意識だろうが傷をかばって動きがいつもと違う。他の者は知らんが私にはわかる。手紙では特に何もないなどと言っておきながら……バカめ」
 一番シルトを見ているのは誰だと思っているのだ。
 例え他の誰が気付かなろうと――ブレンダだけは気付く。
 ほぼ瞬時に。なんなら手紙の文字の圧を、なんとなしにいつもと違うと気付いた程で。
「――みんな。巨人達が、来る。もうすぐ此処に来るから……準備を」
「来るぞぉ――! 備えろ備えろ、でっけぇ害虫共のお出ましだ!」
「ライヒハート卿は、まあ、無理はなさらず。その為に我々が来たのですから」
 同時。偵察に出ていた雷華と英司が敵の接敵を察知し帰還すれば、前線に出ようとしていたシルトに『月下美人』久住・舞花(p3p005056)は声を紡ぐ。
 ブレンダも言っている様に無理は駄目だと。連戦の上で、なおも戦場に立たんとする心意気は騎士として見事なものです、が。同時に指揮官と言うのは無事に姿を見せて、立っている事こそが何より大切なのだと。

 前は私達が張る。

 聞こえて来るは巨人達の声。咆哮の様な遠吠えの様な……いずれにせよ奴らは近い。
「心配するな、お前の部下は代わりに私が護ってやる。
 なぁに万が一なんて起こらんさ――誰も死なせん。では行ってくるよ、シルト」
「ああ……分かったよブレンダ、よろしく頼む」
 怒り一転、優しき微笑みを前に、最早誤魔化せぬシルトはブレンダらに託す。
 これよりの未来を。守るべきものを守る――戦いを。


 拠点は幾らか修復が果たされていた。
 ゼファーやメートヒェン、それからリディアによる陣地の構築は急ピッチに。バリケードの様な障害物を築く感覚で、なるべく頑丈なものを――と。その場に在った物をあり合わせ、鍛冶の如き錬成でリディアは次々と巨人を妨げる道具を作成していた。
 トラップでも良い。簡易でも奴らの足を止める事が出来れば上々なのだ。
 師匠とシルトと話しながらも彼女は手を休めずに動かし続けた――結果。
「さぁ来ましたね……拠点の内と外で倒していきましょうか……!」
「ああ、大きいだけの連中になんか負けてはいられないね――さ、鬼さんこちら、手の成る方へ――ってね。かかっておいで、図体ばかり大きいウスノロ木偶の坊さん」
 巨人達の進行ルートが限定される。
 その上でリディアとメートヒェンは名乗りを挙げる様に、或いは罵倒してこちらに注意を引くように巨人達を誘導するのだ。同時にメートヒェンは周囲に保護の結界も展開する。意図的に破壊を試みられれば壊れる可能性はある、が。些細な事での衝撃なら防げる筈だ。
 少しでも場を保たせ、優位を保つ。
 巨人が、オルドブルグと称された個体達がその中でも棍棒を振るう。
 激しき圧。されど元より引き付ける事を主眼とした彼女らがこの程度で崩れる事はなく。
「やっぱ話が出来るような連中じゃねぇよな――巨人は巨人の事情で領地を襲ってるのかもしれないが……直せる拠点への被害はまだしも、命を奪わせる訳にはいかねぇ」
 であればと外から回り込むのはトウカだ。
 連中の動きはやはり概ね予測通りの動きであった。先程述べた様に外壁を修繕した結果でもあるが……それに加えてトウカは間に合わなかった破損個所へと幻影を被せる。
 それが彼が先んじて外観を観察していた理由。
 幻影を被せ、まるで無事であるかのように演出させるのだ。さすれば上手くいけば『穴』の開いている方に奴らは回るだろうと……無論あくまで幻影、触れれば分かる夢幻。一時もあれば消える虚ろなるものである事は承知している。
 されど知恵なき巨人共を誤魔化すには十分であった。
「情けは掛けられねぇ。悪いが――ぶっ倒させてもらうぜ」
「騎士のお歴々も同じ相手へと続いてください。各個撃破し、敵を突き崩していきましょう」
 故に彼らの背か横を狙う形で舞花と、シルト配下の騎士も続く。
 トウカの乱撃は敵だけを穿ち鮮血を空に舞わせて。
 更に続く舞花が紡ぐのは――閃光が如き一撃だ。
 それは神速の踏み込みから至る、神域へと到達する紫電が一閃。
 巨躯であろうと焼き切りその身を穿たん。騎士達の刃も続けば巨人への傷を深まらせて。
「……しかし、巨人。こんなものが幻想国内の何処かに住んでいたなら、流石に知られていない筈もないでしょうし。となると何処からか湧いて出てきた存在の可能性が高い――か」
 反撃の棍棒が横薙ぎに。されど舞花は余裕をもって跳躍し躱せば、思考を巡らせる。
 幻想王国には『果ての迷宮』の様なダンジョンも多いのだ。
 人の知らぬ所から這いずり出てきたのかと彼らの様子を見ながら推察を重ねて。
「……でも、どんな敵でも。
 みんなで戦えば、集まったみんなで力を合わせれば――きっとできる」
 同時。盾役に引き寄せられている巨人達を雷華が狙う。
 可能な限り弱った個体を、だ。各個撃破の方針は勿論彼女も。
 跳躍すれば一歩を踏み込むごとに彼女の身に雷が纏われる――光が如き速度へと昇華せん迅雷が如き突進はそれ自体が力となす。奴らの動きを乱さんと斬りつけ、一刻も早く数を減らさんとし。
「こっちには怪我人もいるんだ。やっこさんがイビキかいていられるぐらいには働いてやらないと、面目が立たないんでね――おっと! ひでぇツラしかねぇ巨人共には馴染みのねぇ言葉か!」
 その傷口を抉る様に英司の一撃が往く。
 急所に容赦なく。華を咲かせるように鮮血舞わせるは次に繋げる為。
 彼が見据えるは各々の位置、だ。そしてその先にいるのは――
「貴様らの事情は知らん。が、理由があろうとなにがあろうと……
 ここに攻め込んだ貴様らが悪い。今回は全力で叩き斬らせてもらう!」
 ブレンダだ。虫の居所が悪い彼女の一撃は、最早万物を壊すが如く。
 英司が弱らせた個体へと紡がれる一撃は空を割り、全身全霊を持って――破砕。
 割断の一撃が全てを凌駕するのだ。
 ああだがこれでも足りぬ。腹の奥底では煮え滾る何かがあり、ソレはまだ晴れぬ。
『ォ、ァガッ――!!』
「はは、流石の巨人も激痛に苦しんでるのかしらね――でもまだ終わらないわよ!」
 直後、トドメの一撃とばかりにゼファーの一閃が轟いた。
 それは槍だろうと、剣だろうと、拳だろうと――流麗に放たれる人体破壊の業。
 巨人とて例外ではなく骨を穿ちて肉を貫き、その心臓を縫い留めるのだ。
「図体がデカいお陰で狙いを定める必要も無いんだから楽なもんだわ? こいつらも上手い事動けてないみたいだし――押していきましょうかね!」
 拠点に引き込み、外からも追撃して押し込むように。
 奴らの動きを束縛してイレギュラーズ達は闘い続けていた。
 その内に巨人達の限界がきて倒れる者達が出始めれば――さて、戦いはあと幾何程度か。


『ォォォ、アアア――!!』
 轟かんばかりの叫び声は巨人から。
 如何に巨躯から繰り出す怪力があるとはいえ、こうもイレギュラーズ達に立て続けに攻められればその身にも段々と傷が増え始めるものだ。振るう棍棒は叩き付けられれば外壁を傷つけ、その衝撃は盾となっているメートヒェンやリディアに痛烈だ――が。
「させないわよ。こっちも一人で戦ってるわけじゃないからね……!」
 彼女らの体力が削がれればゼファーが入れ替わる。
 拠点の内部で戦う彼女らにとっては、巨人達は小回りが利きづらい事もあってか立ち位置の調整は比較的容易であった。奴らの撃の隙間を縫って往くゼファーが棍棒を受け止め、そして――見据えた隙の刹那に槍を突き入れる。
 首を穿つ一閃はそれだけで致命だ。あらゆる生物の多くは首を断たればタダではすまぬ。
「やれ、良い運動になったわよ。
 仕留め甲斐のあるデカブツ相手も偶には良いもんね?」
 倒れる巨人。その様を眺めつつも、されどまだ戦いは終わらぬのであれば。
「前の者達は元々獣程度を想定した準備だったんだ……もう一度攻めれば今度は落とせると思ったのかもしれないが、甘いね。今度は――私達もいたんだよ」
 同時。メートヒェンは一瞬、後方にいるシルトに視線を向けた後に跳躍する。
 ゼファーと位置を交代した彼女は引き付けられし巨人へと撃を無しに行くのだ。振るわれる棍棒を躱し、捌いて。防御の姿勢を維持しながら流れる様に紡ぐは無双たる防の撃。
「やっぱ巨人って言っても基本的な形が人と変わらねぇなら、弱点も大体一緒だな」
「巨漢は足回りが弱点ってのがセオリーだ。普通にソコから攻めるか。
 体重支えられねぇんだよな――デブと一緒で」
 トウカは太ももの内側にあるであろう大腿動脈を狙い、多大な流血をさせんと試みて。英司もジョークを飛ばしながら足元を狙う。上手くすればただでさえ動きの遅い連中が、更に鈍くなろうと。

「貴方達は何者です」

 直後。紡がれた言葉は――舞花だ。
 ……誰何しても話が、言葉が通じてるとは思っていない。
 先程から彼らから伝わってくるのは、うめき声の他には憎悪と怒りのみ。
 されどそれでも問わずはおれない。
 何処からやってきて、何処へ行く?
 何故襲ってくるのか、何の目的で?
「その武器は知性の象徴。仮に人に及ばずとも、なんらかの智がなければソレを扱おうという発想にすら至らないでしょう――与えた者がいるのか、それとも」
 かつてはなんらか、もっと大規模な人の様な社会でもあったのかと。
 返されるのは棍棒の一閃のみ。ならばと刃を交わせ、その命を奪おう。
 再度の踏み込み。次なるはより深く、よりその魂に近き所へと踏み込み――そして薙ぐのだ。
 直死の一撃が如き一閃を。奴らの懐より食い破らんとするかの如き剣撃を。
 そうに至れば最早片手で数えられる以下程度の数だ。
 イレギュラーズ達も決して無傷ではない――が、拠点の修復作業や事前の偵察。可能な限り講じた策の様々が彼らを倒すには至らぬ。負傷を留め、その傷は闘えないという程ではなく。
「……背負うものの大きい戦い、だけど」
 だから雷華も巨人へとどめを刺しに行く。
 多くの標的に向かい、無数の傷を齎した。纏う雷と後に残りし軌跡が彼女の軌道であり。
 そのままの勢いで往く。疾風が如き連撃を。刀と体術による高速の連撃を。
「さぁ……最後の押し込みですよ! 行きましょう、師匠!!」
「ああリディア。このような巨人との戯れも――これで終わりだ!」
 さすれば。苦難を破り、栄光を掴み取る一手の輝きがリディアより。
 それだけではない。リディアの闘気が蒼炎の如く立ち上り、剣に纏いて力と成す。如何なる相手も真正面から粉砕せんとする絶技を――此処に。終焉を齎す鐘と成さん。己が師匠であるブレンダも、万物を愛する女神の抱擁が如き一撃を巨人へと紡げば――

『――ォ、アア、ォォォォオ――!!』

 一際甲高い金切り声の様な絶叫と共に――最後の巨人が倒れ伏した。
 もはや動く個体は居ない。念のためにとシルト配下の騎士達が槍で突いて様子を見るが、確かに絶命している。もはや彼らが動く事は――ないだろう。
「ブレンダ! 無事かい!? どこか傷ついていたりとか――」
 同時。今か今かと思っていたシルトがブレンダへと駆けよれ、ば。
「何が――傷ついていたり、だ。それはお前の方だろうに……
 どうせこうなるのだから最初から私を頼れ、ばかものが!」
 怒りの一声。
 しかし、その節々にある暖かみは決して――巨人達が抱いていた負の様なモノではない。
 むしろそれは……
「……しんぱいしたのだからな。
 次の逢瀬……行先はちゃんと探しておくのだぞ?
 書いていたではないか――とびっきりの水着を見せてやろう」
「ああ……本当かい? それならもう……無茶は出来ないなぁ……」
 互いへの情がある故に。蕩ける様な感情と共に――無事の抱擁を。

「はー、師匠……いいなぁ、私にも素敵な人が現れないかなぁ……!」

 すれば。そのちょっと後方でリディアが口端をによによと。
「シルトさん? あんまり無理して、師匠を困らせないであげて下さいよ?
 あと――お式には、絶対に呼んでくださいね! スピーチしますから!」
「リ、リディア、からかうな!!」
 惚気る二人を茶化す様に。或いは祝福するかのように。
 言葉を紡いで――さて、後はここの後始末をするだけかと。
「グンナイベイビー。そっちがどうかは知らないけれど、こっちに恨みはないんでね。
 一介の怪人だけど、まぁ弔いぐらいはしてやるよ」
 死ねば肉。疫病の発生や他の魔物が寄って来る可能性を潰すべく英司が火葬の準備を行う。
「しかし巨人たぁねぇ――一体本当に、何が起こってるんだかなぁ」
 さればトウカが死体となった巨人をまじまじと観察。
 斯様な存在がいる事の高揚感と、不穏な未来への不安が入り混じる、が。
 ひとまずは此処での勝利に喜ぶとしよう。

 脅威は――取り除く事が出来たのだから。

成否

成功

MVP

リディア・T・レオンハート(p3p008325)
勇往邁進

状態異常

なし

あとがき

 依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!

 ライヒハート領に出た巨人の脅威はひとまず過ぎ去りました。
 幻想に何が起こっているのかは……またいずれ!

 それではありがとうございました!

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