シナリオ詳細
<ヴァーリの裁決>ラブレターフロムカプリチオ
オープニング
●で、だから?
「春!」
うん、春ね。春。まだちょっと肌寒いけど、花もほころんできてるし水ぬるみまくる春だわー。
「それがうちの領と君の何に関係が?」
ピンクの、えーと、あれ、あれだあれ、比率を間違えたステゴサウルスみたいなのを相手に、フニクリ=フニクラ(p3p000270)はガラスの瞳で問いかけた。
「まあちょっと聞いてよ、だって春よ春。恋の季節よ?」
「……」
とりあえずフニクリは黙って聞くことにした。この山のような恐竜が暴れだしたらせっかく育てた領がギルドごとおしゃかになる。まあなってもいいかなとは思うもののそれは領主である自分の判断でそうなるべきであって、このふざけた恐竜におまかせするこっちゃない。
「なのに最近血なまぐさい事件ばっかりで嫌になっちゃう。こっちはもうお花見気分でルンルンだったのに、上司ったらどこでもいいからちょっと暴れてこいなんて、風情がないわよねー。フニクリちゃんはどうなの?
気になる人いない?」
「……」
「あーあ、すてきな恋バナが聞きたいなー! 情熱的で思わずキュンと来ちゃうようなラブレターとか朗読してくれるといいんだけどなー!」
「なにそのあからさまな誘導」
「すてきなあの人へ贈るプレゼントとか装備したり携行したりしてるともう私腰が立たなくなっちゃうかもー!」
「なにそのあからさまな誘導その2」
「あ、ちなみに私、まともに戦うと強いからね?」
そんなの見ればわかる。天を突くような巨躯の魔物と正面から事を構えたくはない。
●ローレットにて
「そういうわけで、私の領に頭のゆるい怪王種(アロンゲノム)が来たから、倒すの手伝ってほしい」
フニクリは超めんどくさそうにため息をついた。
「頭ピンクとでも呼ぼうかな。そいつはノロケ、ただのノロケじゃなくて限界まで煮詰まった感じのノロケが聞きたいんだと。聞けば聞くほど精神ダメージを食らって勝手に弱くなるから、飽きたらぼこって終わり」
ちなみに独り身だったらどうなるの?
「妄想の恋人あてのラブレターを書けとお達し」
なにそれこわい。逃げ場がないじゃん。フニクリは無表情のままその辺で拾ってきたと思しき小石を取り出した。
「プレゼントやその逸話があるとなおよし」
草とか小石とかでいいんかい。でも頭ピンクが納得するような熱量があればありなんじゃないかな。ようは恋のプレゼンだ。
「ちなみに本人を口説くのはなしらしい。あくまで他人の恋バナが聞きたいんだと」
てかなんで私のとこ来た……。フニクリは遠い目をした。
- <ヴァーリの裁決>ラブレターフロムカプリチオ完了
- GM名赤白みどり
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年03月20日 21時55分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
馬車で現場へ急行した一行は、まず頭ピンクのでかさに心が折れそうになった。
「何こいつむかつく、生理的にむかつく、自然界の法則をアグレッシブに無視してピンクってのがまずむかつくし、進撃しそうなくらいでかいのもむかつく。もうここまでくると一周回って好きかもしれない。新曲のインスピレーションくれろください」
馬車から飛び降りた『Adam』眞田(p3p008414)は頭ピンクのでかさにボーゼンとしながら「そういえばこいつどこから来たんだろう」と思った。
「これが作詞の依頼だったら誠心誠意がんばるけど……違うんだよなあ。なんだよ惚気話って……恋人居ないけど? 作り話でいいならやるけど……」
萎えていくテンション、下がっていく脳内気圧。
とんとんとつまさきで大地を叩き、片手で頭をかき回した『ザ・ハンマーの弟子』リサ・ディーラング(p3p008016)はというと。
「はっはー、すっげぇ頭痛い事やってくれるっすね。架空の恋人を作らなければいけないっすし、それ宛てに書くってひっでぇ話じゃないっすか? はっはっはっはーあーはっはっはっは、はっはっは、はあ……」
もう笑うしかなかった。そう、頭ピンクの要望は多岐にわたっている。人前でラブレターを披露するという時点でハードル高いのに、さらに恋人居ないやつは適当に脳内カレシ/カノジョつくってねというオプションつきだ。オプションがもろに刺さったリサは羞恥プレイの域に到達していると言っていい。
その隣では『特異運命座標』レべリオ(p3p009385)が、手鏡を使って自分で自分へ魔眼をかけていた。
「すなおになーれ、すなおになーれ、いや恥ずかしい普通に。ラブレターを書くだけならともかく、それを読み上げるのは素面では厳しい……だがしかし依頼だ、受けた以上はやらねばならぬ。頼んだぞ、催眠状態の俺。すなおになーれ……」
さて彼、今回唯一の恋人もちである。その恋人の前で素直になるんじゃなくてどでかいモンスター相手に素直になるんだから順番が違うような気がするが、人生とはままならない。イレギュラーズをやっている以上、たまによくあることだ。
「ここまで来たんだ。やるしかないだろう」
馬車の上でどっしりとかまえている『揺るがぬ炎』ウェール=ナイトボート(p3p000561)はその二つ名にふさわしい落ち着きを漂わせている。でも頭の中はたたひとりのことでいっぱいである。少なくとも今は。
(俺はこの日を待っていたのかもしれない。ラブレター、すなわち恋文、そしてかなうとはかぎらない恋もある。己の心へ決別するいい機会かもしれない)
ウェールは懐へ忍ばせた台本を、上着の上からそっと抑えた。
「単純にぼこすだけなら楽だったのになー」
『闘技戦姫』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)は屈伸をしながらため息をついた。
「ラブレターってアンタ……アタシはそんなの書いたことないよっ。よくクソ貴族や商人からは『何万ゴールドやるから愛人にならないかハァハァ』とか言われるけど、これってそういう類のものじゃないんだよね? うええーやだー恥ずかしいー」
「おほほほ! この程度で音を上げるとは笑止千万! 勝手知ったるカプリチオ、負ける道理がございませんわーーーー!!」
そこへ乱入した『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)。本日も5杯はひっかけてやがるぜこのアマ。
「覚悟なさいミルヴィ、開始3秒でリングに沈めて差し上げますわ!! 砂糖はいてぶっ倒れるがいいですのよ!!」
「それは頭ピンクの役目じゃないの!? というか目的がすり替わってない!?」
「だまらっしゃい、私からのプレゼントを受け取りなさい!! どっせーーー!???!??!」
酒瓶を振りかぶったヴァレーリヤが派手にころんだ。その脚には暗い金髪が絡みついている。
「フレンドリーファイアは、好ましく、ない」
よいしょよいしょと馬車からにじり降りてきた『金色のいとし子』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)がそう告げた。
「標的、頭ピンクの、性能も、わからない状況、だ。ここは、依頼書に、あったとおり、事を進めて……」
「おぅおぅおぅ、私(ウチ)の領地(シマ)で怪王種(チョーシ)出現(コイて)くれやがっちゃってまぁ」
某声優ガチャアニメかなって感じでピキピキきている『歪んだ杓子定規』フニクリ=フニクラ(p3p000270)が怨嗟の声を上げる。ガンギマリの目で頭ピンクをにらみ、今にも殴りかかりそうなテンションだったくせに、急にすんってなる。
「そんな心持ですがガチバトルしに来たのではないことだけは評価してあげよう。疲れるからね」
すっとぼけた彼女こそ、このカプリチオのマスター、期待の星なのだ。
●ミルヴィvsヴァレーリヤ
春の風が芳しい。
その風に吹かれながらミルヴィは口を開いた。
「拝啓ヴァレーリヤ様へ
寒さも峠を越えて日々暖かくなる今日この頃如何お過ごしでしょうか?
日頃から貴方の愉快な振る舞いに癒されてます
私は先日貴方と同じ飲み会に出席した折りにいきなりテロに巻き込まれ危うく私まで出禁処分や鉄帝のお世話になりかけた鮮烈な体験は今でも忘れられません……。
あの日から高まる貴方への想い、成人して初めての飲み会が血と硝煙にまみれた思い出……。
この溢れるパッションを貴方に是非ともぶつけたいと思っています……。
明日の夕方5時、黄昏時の河川敷で貴方を待っています……。
ミルヴィより愛(怒り)を込めて
かしこ
追伸
しっかり武器は持って来てくださいね♪」
「ああー惜しい! ラブレターじゃない、これラブレターじゃないよこれ! ラブレターの皮をかぶった何かだよ!」
頭ピンクは嘆きの声を上げてごろんごろん転がりまくった。
「でも三点リーダーを使って雰囲気だそうとしてるところは花丸ー!」
(いやそんな無理に褒めなくても)
そうミルヴィは思った。
対して両手を広げ、慈愛の笑みを浮かべながらヴァレーリヤが返礼する。
「拝啓 ミルヴィ様
桃の香り麗しい春分の候、鉄帝のコルホーズ(VDMランド)では債務者達が駆り出され、うめき声を挙げながらの強制労働が始まる季節となりました。
傭兵の貴女は、如何お過ごしでしょうか。
さて、情熱的なお手紙をありがとうございます。貴女の気持ち、とても嬉しく思います。
酒席で語り合った思い出を振り返りながら、決闘のお誘いを頂くのは、ゼシュテル人にとって最大のもてなしです。
これは最早、私達のコルホーズに志願して下さったと表現しても過言ではありませんね?
明日の17時の決闘に見事打ち勝ち、貴女をコルホーズに招待できるのを楽しみにしています。
元気で溌剌としている貴女をお招きできたらどんなに幸せだろうという妄想をずっとしていましたが、それがもうすぐ叶うのですね。
幸福で身震いがします。奴隷は何人居ても足りないのです。
馬車馬のように働くミルヴィの姿を思い浮かべながら。
最低限の着替えとツルハシだけは持ってきて下さいね。
真心を込めて。
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ」
「ラブレターじゃない! ラブレターじゃないこれ赤紙! 赤紙だからこれ! なのに出だしからして雰囲気たっぷりで何故か引き寄せられるぅ!」
「おほほほほほ! 私の本気に頭ピンクもメロメロですわー! ミルヴィ、奴隷労働の代わりにあなたの領地を丸裸にしてもよろしくてよ!」
「いい度胸ね、河川敷で待ってなさいよ!」
ヴァレーリヤにやり返しながらも、ミルヴィはその胸に、きっと誰にも言えない気持ちを抱えていた。
(本当に好きな人へ
アタシの勇者様へ
例え道が分かたれても私はずっと貴方の事を想っています
これが届かなくてもいいの、私がそう想っているだけだから
私、強くなったでしょう?
貴方好みに綺麗になれたかな?
もう手を貸すことはできないけれど
貴方が幸せでありますように
貴方の道が明るいものでありますように
もし本当に困った時は言ってね
一度だけ
貴方がどうしようもない困難や
望みを望んだ時は助けます
だってアタシがそうしたいもの)
●フニクリ&エクスマリア
「親愛なるエクスマリア・カリプルヌス様。
この些か馴染まないお名前もあなたの顔を思って書けば、なんとも愛おしいものですね。
底の見えない淵のような瞳は、私をどのように映しているのでしょうか。
深淵を覗き込む時、深淵もまたこちらを覗いているのだと嘯く者もいましたが、それを思えば私があなたを見ているときには、あなたも私を見てくれているのでしょうか
(ここでポケットからコインを取り出す)
この金貨を覚えていますでしょうか。
私は覚えてません。
なにこれ怖ッ。なんでポケットに入ってたのこれ。
あなたとの出会いはこの金貨のようなものです。
思いがけないものではあったけれど、ちゃんと見つめてみれば、その出会いはとても喜ばしいものでした。
この金貨で美味しいものでも食べに行きましょう。
フニクリ=フニクラ寄り合いを込めて」
「大丈夫? いろいろ大丈夫? なんか誤字っぽいの多いけど。恋文相手の名前間違えるとか普通はやらかさないわ。とりあえず一度書いたものは声に出して読み返すことをおすすめするわ?」
「えっ、なんか間違えてたっけ」
「『プ』でなくて、『ブ』だ、な」
「フニクリ・フニクラ様
貴方のことを考える度、私の心は深い深い迷路へと潜って戻れなくなってしまいます。
硝子玉のような紫の瞳は、いつも何を見据えているのでしょうか。いつか何かを見出すのでしょうか。
私とは正反対の陶磁のように白い肌と銀細工のような髪は、最高級の美術品に勝るとも劣らないことでしょう。
嗚呼、許されるならば、その針金のように細い手足を折り曲げて、小さな体を宝箱に閉じ込めてしまおうか。そうしたなら、どのように愛でて差し上げようか、夜毎にそんな夢想を抱きながら床につく日々を過ごしています。
しかし、きっと許されぬと秘めていたこの思い、こうして筆を執り白日の下に晒した今この時、どのような形であれ、大きな変革を免れぬことでしょう。
エクスマリア=カリブルヌス」
「そうそうそうそうそう! こういうの! こういうのでいいの! 全体にあふれるヤンデレ感がすてきよ! 独占欲ダダ漏れね、意外と束縛しちゃうタイプ?」
「いや、以前読んだ恋愛譚を思い返し、参考にした。とりあえず、形にはなっている、はず」
「なあんだそっかあー、でもこの文章に隠されたときめきはまちがいないわ。あなた、恋をしているわね!?」
「やかまし、い」
エクスマリアは懐をそっと抑えた。そこにある便箋ごと。
実のところ、届けられるなら言葉を贈りたい相手はいる。ラブレターと言えるほど強い思いかもわからない、けれどきっと恋なのだろうと、そう自覚する淡い思いを込めた手紙を送りたいとは思っている。しかしあのような珍獣に聞かせるためにそれを書いて語るのは、嫌だ。何かこう、「減る」。だって……。
「作り話であっても、恋を謳うというのは、随分と恥を晒している気分、だ」
●ひとりでがんばる
じゃらんとクラシックギターを響かせ、眞田は語り始めた。まぶたをとじた穏やかな表情は恋の歌を歌うかのようだ。
「My Dearest
元気にしてる? 君がエデンを離れてからもう随分経ちましたね
今何をしてるの? 君と話がしたくて慣れない手紙を書きました
このゴリラを見る度に君の事を考えています
そう、お揃いで買ったゴリラアイテム
あの店で最後の1つを取り合ったことが昨日の事のように思い起こされます
他の店行けばあったのにな
お互いが音楽とゴリラが好きと知った時は運命を感じました
ゴリラって素晴らしいですよね
あのドラミングに敵うドラマーはそういないと思います
アレグリアは喜びと幸せ
君と過ごす日々を表しています
俺は今もずっとエデンにいるから、いつでも帰ってきて下さい
また一緒に音楽を演奏しましょう
From Adam」
「なんでゴリラなの、なぜそれをチョイスしちゃったの、そしたらラブレターとしても歌詞としてもいい感じの出来だったのに……!」
「そういうなよ、クリエイティブの秘訣はフィクションの中に真実を混ぜることさ」
「つまりゴリラを取り合ったのは真実であると」
「あーカノジョ見えてきた。遠恋中の俺の彼女。長髪で優しくて、そうそうこの人! 幻覚だけど!」
ついにリサの番だ。
「つがい」ではなく「ばん」だ。
はたしてここに居もしない恋人相手にどこまでできるか!?
リサは大きく息を吸い込んだ。
「拝啓
堅き蕾も和らぎ花を咲かせる春が徐々に到来しつつある今日この頃、如何お過ごしでしょうか。
此方は日々楽しき仕事に励む毎日を送っております。
さて、今こうして筆を取り手紙として貴方に届けようと思っているのも、一つ想いを……あー、もう挨拶とか文法とか、全部まどろっこしいっす!
率直に伝えさせてもらうっす!
君の事が、好きなんですよ!
始め出会った時はその威圧的な見た目でちょっと怖かったっすけど、仕事に対して凄く熱心な姿勢であったりその見た目とは裏腹に紳士的に接して貰ったり、困った時とかですぐ手を差し伸べてくれたりとか!
そっから仲良くなりたいとは思っていたんすよ。ただ、その後も色々お話しさせて貰ってから時折見せる優しさとか照れたように頬を掻く仕草とか不器用そうに笑顔を作る表情とか!
君の事が頭からずっと離れないんすよ。
これを恋焦がれました、って言えばいいんすかね。
こんなの柄じゃないってのは理解しているんすよ。それでも、この想いはしっかり伝えたかったっす。
たぶん君がこれを知った所で困惑するだけだろうっすし、君のことだから自分に似合わないと優しく窘めてくれるんだろうと思うっす。
だからこそ宣告するっす。
絶対に君を私に恋させてやるから覚悟しておけっす!
以上!
リサより 」
「あまずっぱーい!」
頭ピンクは口元をおさえ(どうやってだ)転げ回った。木々がべきべき倒れる。
「相手がいるとかいないとかこの際どうでもいいわ。あなた文才あるわよ、若いわ、ほとばしる若さが溢れ出てるわ! 100点!」
「死にてぇ。いや、殺してくれ。これ公開処刑じゃん? めっちゃ恥ずいんすけど?」
そしてレベリオが立ち上がった。魔眼の効果は絶大だ。彼は優しく静かな声で愛を語り始めた。
「我が最愛の人であるメイヴィス・ドラモンドへ
最近は仕事のせいであまり会えなくてすまない。怪我や病気はしていないか?
こちらは怪我一つないから安心してくれ。とは言え、君はそれでも心配してしまうんだろうけどな。
初めて出会った時は意思疎通こそ上手く行かなかったが、その頃から君は優しく誠実だった。
そんな君と恋人になれたというのは俺の人生にとって間違いなく一番の幸運だ。
君と寄り添って静かに本を読んだり、調子に乗って髪を触りすぎて怒られたり、そう言った君と過ごす日々の何気ない事にこれ以上ない幸せを感じるんだ。お互い過ちを犯して1年も離れていたが、こちらで再会してまた共にも歩むことが出来ている。出来ることならこれからも一緒に人生を歩めることを願っているよ。
レベリオより愛を込めて
追伸
君が好きそうな本を見つけたので、この手紙と一緒に贈るよ。
少しでも君が喜んでくれるのなら嬉しい」
「きたああああああああああ! 純度100%のラブレター! 花を贈りあった仲なだけはあるわね! プレゼントの使い方もグッドよ、おうふおうふ、頭がフットーしちゃううううううううう!」
「……」
魔眼がとけてきたレベリオは急激に恥ずかしさにとらわれた。
「ちなみにこの手紙とプレゼントは後できちんと送るうつもりだ。満足したかな? 満足したなら頼む、どうか消えてくれ……」
そしてトリ、ウェールが姿を表す。いつになく真剣な表情。整ったマズルに影が落ちている。
「これから俺が述べることを、真実だと思ってもいいし、虚構だと思ってもいい」
そう宣言するとウェールは語りだした。
「 最愛の息子、梨尾へ
君に初めて出会った日を今でも思い出せる
同じ元生物兵器だった子供の保護者にならないかと同僚に誘われて
とりあえずついていった施設
君を一目見た時、胸の奥から不思議な衝動を
初めての衝動を感じた。梨尾が可愛くて食べちゃいたいような衝動を
一緒に暮らし始めたばかりの梨尾は黒毛の犬獣人なのに黒猫のようで
俺にツンツンとしながらも、あの時の俺が家事を出来ない事を知ると
頑張って練習して、仕事で忙しい俺の代わりに家の事を頑張ってくれる優しい子だったな
初めての誕生日プレゼントを贈った時に初めてパパと呼んだ時の事を思い出すと
今でも尻尾が揺れる
2つだけ謝りたい事を言います。
梨尾には絶対に伝わらないから言える卑怯なパパでごめんな
一つ、俺は梨尾が欲しいです。一人の雄として君が欲しいです
混沌に召喚される直前、梨尾の刃が俺の腹を貫いたあの時
俺より高くなった背に、強くなった息子に嬉しくなりながらも
置いて行かれるようで怖かった。意思が芽生えた時から変わらないこの身体では
成長も老化もしない化け物に近い俺は、梨尾に捨てられるのかもしれないと
だから捨てられないよう契りを結びたい
指輪じゃなくて首輪でいいから
一方的でいいから
ずっとずっと梨尾の傍らにいたい
父親なのに息子の巣立ちを許せなくてごめん
2つ目
梨尾に贈って、あの日返された時計が手元に無いと名前が思い出せなくてごめん
時計が無くても梨尾との思い出は覚えてるのに
時計が無いとどうしても、ギフトでも梨尾の名前が思い出せなくてごめん
もしかしたら俺はまだ洗脳されているのかもしれない
混沌だから平気なだけで、元の世界に帰ったらまた悪役になるのかもしれない
もしもそうだったら、今度こそ梨尾に会わずに俺はこの世を去ろうと思います
また会いたいけど、大好きな梨尾をまた泣かすような父になりたくないんです。
だからこの恋心にも嘘をつきます
さようなら、梨尾」
「悲恋」
頭ピンクはぱたりと倒れた。何かが限界を超えたらしく、もはやそれは「てぇてぇ……てぇてぇ……」とつぶやくしか能がない肉の塊だった。
「おっしゃー! 総攻撃だ! 俺の受けた苦痛を返してやる! 頭ピンクさんを頭真紅さんにしてしまおう!」
眞田が叫ぶなりイレギュラーズの全力攻撃が頭ピンクを襲った。頭ピンクは死んだ! ぽわぽわしたピンクのシャボン玉になって空へと消えていった!
「こんなもんでいいの? マジで?」
フニクリはうろうろと歩き回り、ふとなにかいいことを思いついたかのように振り返った。
「じゃあ怪王種討伐記念碑でも立てようか。観光資源観光資源」
「まあそれはいい案ですわね」
ヴァレーリヤを筆頭に全員がうんうんとうなずく。なにせフニクリはこの地方の領主なのであるからして、決定権はフニクリがもっているのだ。
「ついでにみんなのラブレターも石碑にしてのこそうぜ!」
「「それは断る」」
だがなにせフニクリはこの地方の領主なのであるからして、決定権はフニクリがもっているのだ……。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
おつかれさまでしたー!
字数余るだろと思ってたらそんなことはなかったねえ。
ツッコミが甘くて申し訳ない感じ。
またのご利用をお待ちしております。
GMコメント
●怪王種(アロンゲノム)とは
進行した滅びのアークによって世界に蔓延った現象のひとつです。
生物が突然変異的に高い戦闘力や知能を有し、それを周辺固体へ浸食させていきます。
いわゆる動物版の反転現象といわれ、ローレット・イレギュラーズの宿敵のひとつとなりました。
●ブレイブメダリオン
このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
このメダルはPC間で譲渡可能です。
やること
1)プレに好きな人あてのラブレターを書く ←ここがメイン
2)PCが読み上げる
3)敵がキュン死する
4)その隙にボコる
●戦場
ギルド「遥か夏のカプリチオ」近辺
うららかな昼下がりです。特にペナルティはありません。
●エネミー
頭ピンク(注文の多いステゴサウルス)
他人の恋バナが大好物というアロンゲノム
まともに戦うと到底倒せませんが8人がかりでノロケ倒すと弱くなっていきます。
●他
参加しないPCの名前をどうしても出したい場合は、本人に許可を取ったうえでその旨をプレに書いてください。NPCはいらんちゃうんかな。
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