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シナリオ詳細

偽の迷宮を攻略せよ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

⚫︎軌跡を描く者達
 硝子の割れる音が木霊する。
 それは色鮮やかな硝子で造られた短剣だった。暗闇に包まれた洞窟の片隅に遺された何者かの亡骸が握っていた物である。
 舌打ちをしながら硝子の短剣を踏み砕いたのは、幻想に住むとある貴族の冒険家だった。
「何たる醜悪な偽物《イミテーション》! わざわざ精巧な罠まで仕掛けた上にこれとは、どうやらこの『迷宮』の主は良い趣味をしているらしいな」
 彼が従者達の前である事も忘れて苛立つのは無理もない。既に幾つもの宝やアイテムを発見していたがいずれも粗悪な偽物だったりガラクタだったのだから。
 彼等は王都の直ぐ側にある荒れた土地を所有していたのだが、ある日そこに奇妙な洞窟が現れた。
 常日頃から土地をどうすべきか悩み視察に来ている冒険家貴族が居なければ、恐らく誰も気付かなかっただろう。
 驚くべき事に何らかの魔物が掘った大穴というわけでもなく、洞窟は人為的な加工……即ち意図的に造られた迷路の様な地下空間を有していた。
 先祖代々冒険家の血を継いで来た冒険家貴族にとって、正にそれは天啓に等しき事実だったのだ。当然彼は持ち得る装備と物資、そして十数人の忠実で屈強な従者達を引き連れて中へと進んで行く。
 地下であるにも関わらず、空気が奥から噴き上げて来るのを感じた冒険家貴族。そして一時間もせず新たな地下へと進む階段を見つけ、目印に松明を彼等は階段の側に置いて行った。
 先に待ち受けるのはまるで伝説の、かの『果ての迷宮』の様だった。否、冒険家貴族は半ばこの洞窟もその類に違いないとすら思い込んだ程である。
 例え未だ果ての迷宮に踏み入った事がない若き冒険家貴族でも。巧妙に仕組まれた壁のパズルを解き明かし、服だけ弾けるレーザーの罠を掻い潜り、落とし穴を避けると毒矢の雨が降る罠を落とし穴の中でやり過ごし、宝箱の中に仕掛けられたワイヤー作動型の爆発物を解除する。
 これだけの危険を目の当たりにして体感すれば、経験少ない貴族の彼にとっては伝説の冒険の一ページの中にいるとさえ錯覚したのは無理からぬ事だった。
 残念ながら本来の果ての迷宮は更に大規模かつ、とても彼に易々と踏破出来る物ではないのだが。
「やれやれ、これではせっかくの迷宮も肩透かしで終わらないか不安になってしまうな」
 硝子で形作られた宝石を砕き、暫く歩いた先で僅かに滑る足元の床に「何だこのオレンジの液体は?」と呟きながらも冒険家貴族は進んで行く。
 迷宮内の構造は様々であり、敢えて表現するならばそれはチグハグな印象を与える。時に苔がびっしりと生えた岩に囲まれた広場もあれば、先ほどのように足元が妙な臭い漂う油のような物で満たされた細い道もある。
 ────果たして、冒険家貴族は最奥に辿りつけるのか。

●冒険者、集う
 『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)は集まったイレギュラーズに小首を傾げて見せた。
「辿り着けていると思う? ……ふふ、そうだったらあなた達に依頼の斡旋なんてしないわよね。
 知っての通りよ、かの冒険家貴族の探索は失敗に終わった。そして悔し涙混じりに冒険者を募ったの」
 一様に頷きつつ、イレギュラーズは何があったのかを訊ねた。
「フクシア、それかゴーストホワイト。の方が分かりやすいかしら?」
 プルーは指先をくるくると宙に何かを描いて、そこに吐息をほうと吹きかけた。
「道中の謎を解き明かす事が出来ず、そして彼は襲われた」
 ……その後に続いた言葉にイレギュラーズは微かに不安を抱く。
 謎に次ぐ謎。素性が一切不明な騎士六名に冒険家貴族は襲われたと言うのだから。

GMコメント

 ちくブレです、皆様宜しくお願いします。
 今回は冒険家貴族からの迷宮攻略を依頼されたイレギュラーズが、参加された皆様ということになります。
 ここでの情報は全て事前にイレギュラーズが情報屋を通して得た情報ですのでどうぞご相談や考察にお役立て下さい。

●情報精度:C
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●ロケーション
 王都の直ぐ側にある荒れた土地上に現れた地下迷宮。
 ローレットはこれを一時的に『偽の迷宮』と名付け、依頼人の情報提供を基に調査を進めています。
 内部構造は推定で地下十階。これは地形の突破率によって前後する可能性があります。
 各階、各通路、各空間はそれぞれ予測の難しい法則に基づいて様々な地形と性質を持っています。
 現時点で判明している情報から、『恐らく各フロアのキークエストを解く事が出来れば最短で奥へ辿り着けただろう』と確度Aの結論が出されています。

●トラップ、仕掛けの詳細
 罠一つ一つの精度は低く、避ける事は難しくありません。
 『地雷』(重量感知で作動するようです、体型が【普通】以上の者は注意が必要)
 『ワイヤートラップ』(身長が【普通】以上の者は注意が必要です、作動した場合戦闘マニュアルでの攻撃回避判定を行うと共に毒矢や落石に『頭上から』襲われます)
 『宝箱型罠』(無視しても構いませんが開ける場合は罠に関する知識、スキルが必要です。無いまま開ける、または後述の判定に失敗すると何らかのBSが付与される可能性があります)
 『レーザー』(15m範囲の四方が石造りの空間に出た後、正面から【攻略中、装備してる盾以外の防具を解除する】レーザーが迫ります。後述の判定に従い処理します)
 『悪霊の誘い』(突然一般人の女性が現れ、助けを求めてきます。後述の判定次第で【AP半減】されます)

 『各フロアに存在する謎の壁』
⚫︎一階層……冒険家貴族が解いた事で階段へのショートカットがされています。壁に記された内容は「言葉知る者に在って、言葉知らぬ者に無いモノは何か」
⚫︎二階層……半ばほど進んだ先で銀の壁に「腐り落ちぬ輝きに映る者は何者か」と記されており、それ以外に手掛かりがありません。従者の証言では『声がやたらと響く場所だった』
⚫︎三階層……「永き時を生きる者の手の温もりを、私に感じさせてくれ」と記された脈動する肉の壁が二階から降りた横にあります。
⚫︎四階層、五階層、六階層……「己が運命を象徴する物を見せてくれ……」と記された木の壁が『冒険家貴族が置いた松明の近く』にあります。果ての迷宮関係者の考察では『木が生木だったなら恐らくは本当に見せるだけで良いのかもしれない』との回答が出ています。
⚫︎七階層、八階層、九階層……「己が運命に選ばれし象徴たる贈り物の名を囁いてくれ……」と記された氷の壁がフロア中央のオレンジの液体が撒かれた広間にあります。氷は触れた物をたちまちに氷結させる効果を持ちます。

⚫︎敵エネミー
 最下層(依頼人の情報が曖昧な為、階層の詳細は不明)で現れたのは、六体の漆黒の鎧纏う両刃剣を携えた双角の騎士。
 屈強な従者達が敵わなかった事から、一体の戦闘力は特異運命点に迫る力を有している可能性があります。
 特筆するスキルや能力は持たず、シールドバッシュ(至近のみ)と剣による格闘戦が主体の様です。
 迷宮との関連性は不明。従者の証言では「言葉ある全ての者が寄り掛かる崩れぬ塔の名を答えろ」と言っているのが聴こえたとの事です。

⚫︎本シナリオにおける特殊判定
 様々なトラップ、仕掛け、謎解きの要素、『全て』に対してプレイングによる攻略、対応の記述によって判定が変わります。
 ステータスのみならず、あらゆるスキルや行動、持ち物により対応は可能です。
 適切なアイテム、または各種スキルを使用しての攻略がされた場合は各イベントにおいて大成功となり、地形突破率が大幅に上がります。
 地形突破率とは各イベント、判定において成功や正解を納める事によって加算される判定数値です。場合によっては何事も無く踏破可能です。
 
それでは皆様のご健闘を祈ります。

  • 偽の迷宮を攻略せよ!完了
  • GM名ちくわブレード(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年06月10日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
木漏れ日妖精
アラン・アークライト(p3p000365)
勇者の使命
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
七鳥・天十里(p3p001668)
ガンスリンガー
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
業壊掌
ラクリマ・イース(p3p004247)
協調の白薔薇
最上・C・狐耶(p3p004837)
狐狸霧中
エリーナ(p3p005250)
フェアリィフレンド

リプレイ

●いざ偽りの洞窟へ
「ダンジョン攻略だー!」
 七鳥・天十里(p3p001668)の快活な声が洞窟内に響き渡る。
 やっぱり異世界じゃこーゆーのがないとね、と語る彼女……ではなく彼は狭い階段を陽気に足取り軽く降りていた。
 旅人である天十里もやはり少年心からこういった冒険には少なからず浪漫を感じるのだろう。彼以外もそこは同じである。
「楽しそうでいいじゃない! どんどん行きましょ!」
  天十里と並んで蝶の形をした羽根を愛らしくパタつかせて進むのは『木漏れ日妖精』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)。彼女はその手に事前の打ち合わせの際に、依頼人の冒険家貴族から譲って貰った前回の探索時にマッピングした地図を開いている。
 地図上には所々に彼女が後から付け足した印や、パーティーメンバーの役割分担などがメモされており。階段を下りながら天十里に見せたりしてワクワクした様子を見せていた。
「未知なる迷宮の攻略……わくわくしますね!」
「ダンジョンか、しかも今回は謎解き要素があるときやがったか……クソが。正直言ってこういう頭使う系の奴ァ苦手だぜ」
 楽しそうに進む天十里達二人の前を歩くのは『太陽の勇者様』アラン・アークライト(p3p000365)と『白き歌』ラクリマ・イース(p3p004247)の二人。
 目を輝かせるラクリマの隣では項垂れるアランが額に手を当てて首を振っている。
 だが少なくとも彼のような純粋に戦闘対処が可能な者は必要になるだろう。ラクリマは苦笑しながらもアランの肩をポンポンと叩いて親指を立てた。
「コピーダンジョンですよ、困ったものですよね、設置した本人にも恩恵はないし、攻略する私達にもいまいち恩恵がありません」
 うーん、と狐耳を忙しなく動かしながら首を傾げている『狐狸霧中』最上・C・狐耶(p3p004837)が呟いた。とはいえ依頼人が攻略を望んでいるならばローレットとしては仕方ない。
 偽物だらけの迷宮であっても彼にとっては恐らく攻略しなくてはならないものなのだろう。
 いよいよ洞窟の内部へと入っていきながら。狐耶の隣だけでなく周りの仲間達から灯りが点き、『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)の灯した松明の赤い揺らめきが彼女の思考もぽやっと消した。
「ではではいきましょう。いざゆけボウケンシャー」
 マイペースな声に続いて冒険者たちはそれぞれ遂に迷宮の攻略に入っていくのであった。

●呼気在る扉
 カツ、カツ、カツ。一定の間隔を空けながらも慎重な様子で床や壁を小突く音が響く。
 床とは言うが、その『造り』は洞窟へ降りて来た際の土塊と変わって、石造りの空間もあれば、現在は五人は横に広がれるであろう木板を張り巡らせた空間となっている。
 軋む木板を踏み締めながらぱんぱかぱーん! とノリ良く取り出したその木の棒で罠の探知を行っているのは、『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)である。
 今回の迷宮攻略における作戦は、セオリーに則った隊列を組んでの進行。及び罠探知に秀でた者が先頭を行くことになっていた。
「しかしこれはこれで退屈じゃの」
 デイジーが周囲の木板を小突き、時折擦るような動きを見せる。彼女の腰元に提げているカンテラで照らしている他に仲間の光源もある事で視界は良好、だがそれだけでは様々な罠があったというのだから。
「このダンジョンは形を変えることは無いと聞きました。今進んでいるのは依頼人が通ったルートですが、罠や仕掛けが残されているかもしれないので慎重に進むのが良いと思います」
 そう後ろ手に「問題なし」と合図しながらデイジーより数歩前を行くのは、エリーナ(p3p005250)だ。彼女は罠対処の知識がある事から先頭で率先して罠探知を任されていた。
 勿論その手には3メートルの棒を持って機敏に進行方向を探っている。
「まぁ、そうだよな。あの依頼人の感じからすると虱潰しに探索したってわけじゃなさそうだしな」
 指先からロウソク程度の火を浮かばせて辺りを警戒しているアランが頷く。
「ふーん? みんな凄いなぁ、僕は探索に役立つ技も経験もてんでないんだけど」
 後方からひょいっと顔を出しながら「次の十字路を右で階段へのショートカットみたいだよ」と言う天十里がにっこりと笑う。
 とはいえ実際。今回はアラン含め冒険や探索をする上で力になれる者が集まっている。少なくとも天十里が無理する必要は無いだろう。
「あ、ここの脇に踏み込み式の罠がありますね」
 先頭のエリーナが注意を促した。
「踏み込み式って?」
「地雷って奴だな、あの色がくすんだ板の所か……踏むなよイグナート」
「ああ、気をつけるよ。オレも一回休みにはなりたくないしさ」
 松明を揺らしてエリーナが示した罠の位置を確認したイグナートとアランが避けていく。
 そうこう進む内に開けた空間に一行は辿り着く。慎重に進んでも一時間経たない間に到着したことで誰かのほっと息を吐いた声が聞こえた。
 開けた通路奥にはまるで門のように外側へ解放された木の壁が見える。
「これがこの階層の『謎々』か。この謎の答えは何だったか気になるの」
 解放された木の壁にデイジーが触れながら不満そうに言った。この壁のなぞかけに対する解答は果たして何だったのだろうか、尻尾をゆらゆらさせている狐耶が「私は頭脳労働があまり得意じゃないですからね」と言って投げる。
「そういえばラクリマ達って確か植物だか精霊と会話出来たが、何かわかったか?」
「どうでしょう、特に何か感じることはないですが」
「私もそうですね」
 ラクリマとエリーナが首を横に振った。どうやら彼等の自然会話では反応が無いらしい。
 しかし。一人だけ驚いた声を挙げた。一行が振り返った先にいたのは薄く光っている蝶型の羽根をパタつかせている、オデットだった。
「知能があったりはっきりした姿があるわけじゃないけど、小さな精霊たちが居るのよ。だけど、この子たちから流れて来るイメージはまるで……」
 オデットはそれまでに通って来た通路の木板へ視線を向けて、静かに「洞窟じゃないのかも」と言った。

●問いかける壁
 イレギュラーズ達はその後冒険家貴族の残した松明がある一階層の階段を見つけ、何の問題も無く二階層の半ばまで到着する。
 岩盤を削ったかのような地形にに変わったかと思えば、冷気漂う銀の壁が彼等の前に現れた。イグナートが周りの仲間達に静かにするように気をつけると、後方から天十里が出て来る。
「それじゃ、ここは僕が回答担当するよ。……僕は七鳥・天十里だよ!」
 【腐り落ちぬ輝きに映る者は何者か】、そう銀の壁に記されている文字が消えていく。しかしそれ以上の反応は無い。天十里はすかさず壁に一歩近づいて再び堂々とした表情で答えた。
「『特異運命座標』、今の僕はそう呼ばれてるよ」
 果たして今度は反応があったのか。一瞬だけ彼の前で波紋が壁に浮かんだ直後、淡い光の文字が浮かび上がった。
 ────【待ち侘びたり】
 刹那、銀の壁が突如水銀のように液状化して地面に消えて行った。しかし、それと同時に天十里の様子を後ろから見ていた狐耶が弾かれたように後方を振り返る。
 恐らくは彼女の『狐憑』によって何か気配を察知したのだろう。だが狐耶に気づかれたからか、別の要因か、彼女が振り向いた事で後方から迫っていた気配は霧散していた。
「…………」
「やったの、これで階段までのショートカットが開くのじゃろ?」
「そうですね。恐らくこれで大幅な迂回をせずに済むはずです」
 デイジーとエリーナが天十里の持つ地図に目を通しながら先へ進んで行き、地図上では円を描くような迂回の末に階段に辿り着く道程を縮められるのではと予想していた。
 木の棒で探知を慎重に行いながらイレギュラーズ達が向かった先で待っていたのは『大穴』だったのだが。

「まさか、ショートカットどころかそのまま下に降りる穴とはね」
「高さはレンジ1もない感じか? 俺とイグナートが先行して受け止めるか、どうする」
 穴の中を照らす、少し高いが彼等のステータスならば問題なく着地出来るだろう。階下には石造りの空間が広がっているようだった。
「それじゃお先に」
 最初に飛び降りたのはイグナートである。次に罠対処の出来るエリーナが彼に続いた。
 下では冷たい空気がどこからか流れてきており、光源が無ければ薄気味悪い気配を感じさせた。否、その正体をエリーナは看破する。
「ここが依頼人が言っていたレーザーの……」
 後続のデイジー、オデットが飛び降りて来る最中、エリーナが杖を取り出して魔石の埋め込まれた先端を通路の奥へ向けた。
 直後。まるで狙い澄ましたかのように天十里が降りて来た瞬間、通路奥から赤い光が格子状に広がってレーザーが迫って来たのだ。
 エリーナが仲間に下がるように言いながら遠距離術式によって光線の発射口を撃つ。しかし手が足りない。半ばまで残った格子が未だ迫ってくる。
 ───────ダダンッ!!
 その時、エリーナの隣から炸裂音と共に閃光が走った。その狙撃は見事光線の発射口を撃ち抜いたらしく、通路内には再び静寂と暗闇が戻った。
 硝煙立ち上る二丁の拳銃をしまいながらピースしたのは天十里である。
「離れた距離の罠を発動エリア外から狙撃して破壊とかできたらカッコいいと思ってたんだよね、どうかな?」
「ありがとう、格好良かったですよ」
 杖を納めながら褒めるエリーナに彼は「えへへー」と喜ぶと、レーザーの迫って来た方向とは反対へ退避していたイグナート達が戻って来た。
「向こうで悪霊を殴り飛ばして来たよ!」
「ええええなにそれ!?」
「あと次の壁まで見つけたぜ」
「はっや……!?」
「凄く気持ち悪い壁に触れてみたら開きました……」
「ラクリマ君落ち込んでる……」
 次々と駆け抜ける展開に天十里が何故かツッコミを入れて行くが追い付かない。だがそれでも全員無事なことに変わりはないだろう。
 彼等は互いに問題ないことを確かめ合うと、先へ進んで行った。

 ────四階層、五階層、六階層の壁はそれぞれの持つパンドラ蒐集器を示す事で解放された。
 当初の予想通り今度は階段までのショートカットが開く形で道は拓かれた事で一行は想像以上に攻略を進めることが出来たのだ。道中の罠を全てエリーナとデイジーが発見して回避する事ができたのも大きい。
 ラクリマとオデットが壁内を伝う木の根に気づいて謎の壁までにあるワイヤートラップ等を事前察知出来たのも幸先が良かったと言えよう。
 ────次いで、七階層。
 苔の生えた岩場を乗り越えてフロア中央を目指している際、エリーナが岩の陰に宝箱らしき物があるのを見つけた。
「あ、狐耶お前そこの岩乗るな、その先ワイヤー張られてんぞ」
 平坦な通路とは違い、岩場や障害物の多い空間は灯りの数だけ陰が生まれる。アランはその辺りの経験を思い出しながら仲間に注意を促していた。
 そうこうしている間にエリーナも宝箱の中に仕掛けられたワイヤーとボルトを分解したらしく、中から硝子で造られた短剣を取り出した。
「売れそう?」
「どうでしょうか、外で見てみない事には何とも言えないですね」
 短剣を杖と共にしまう。そして部屋を抜けた先でいよいよ氷の壁と一同は対面する事となる。

●偽の迷宮
「この迷宮、というかダンジョンって何なのかしらね」
 かくして七階層の謎を問う壁は拓かれた。
 【己が運命に選ばれし象徴たる贈り物の名を囁いてくれ】と記された壁はイレギュラーズの持つ『ギフト』を答える事で、突如振動した氷の壁が大量の冷気を散らして破砕したのだ。
 現れたのは二階層で見た大穴である。それも今度は真下に新たな壁があるのが確認できた。
 オデットが足元のオレンジ色をした油のような液体に目を細めて呟いたのだった。
「確かに気になりますね、ここまでの謎もそうですが罠の作りもなんというか……」
「私たちイレギュラーズが来ることを前提に作られてる、気がする」
「だよねー。これってようするにさ、この迷宮自体が罠なのかもね」
 天十里が下を確認してから降りた。
 もう既に数時間、誰もが薄々気づいていたのだ。この迷宮はそもそもローレットからイレギュラーズが派遣される事を前提に作られ、招き入れられているのだと。
 それぞれが感じた気配や違和感、それらはここまで来て初めて明確な形となる。いるのだ、彼等を招いた者が。
 しかしそれでも引き返す事を選択しないのはローレットのルールだけではなく、単純に直接聞けば良いからである。
 ……故に、薄暗い迷宮の中を進む彼等イレギュラーズは直に最奥へと辿り着くのだった。

 最下層は広大なドーム型の空間だった。
 否、『椀型』の広間が正解か。
 足元はフロア中央に向かって円形の下り坂のようになっており、緩やかなレベルとはいえまともな動きはできそうにないように見えた。
 尤も、今回のイレギュラーズに生半な足腰の者はいなかったが。
 それよりもそのフロアに辿り着いた一行は内部の様子に首を傾げた。天井に六つの灯火が点いていたのだ。
「……来やがったな、主催者にしちゃ遅刻だぜ」
 アランが背中の剣を抜いたのと同時にその場にいた全員が臨戦態勢となる。
 まるで六つの影が形を成したかの如く、姿を現したのはいずれも同じ意匠の漆黒の騎士達である。
 フロアに響く金属の擦れる音が鳴り響いた。問答は其処には無く、一切の躊躇無く距離を縮めて来た騎士達にイレギュラーズは後退する間もなく接敵した。
「賛美の生け贄と祈りを……集い来たれ裁きの蒼剣!」
 ラクリマが先頭の騎士へ魔力を編んで精製された刃を振らせてその場に釘付けにして、更に穿つ。
 と、そこで突如騎士達に向かって液体が撒かれた。イグナートが七階層でこっそりとバケツに採取していたオレンジの液体である。
 油のような滑りを見て騎士達への牽制のつもりで彼はぶちまけたのだが、これが思いもよらぬ結果を出す。
「……っ、折れ、やがったか!」
 アランは騎士から繰り出された袈裟斬りを剣で受けきり、返す刃に踏み込んで一太刀を浴びせて両断する。しかしその際に甲高い音が鳴って彼の聖剣が半ばから折れて宙を舞ってしまう。
「自分の攻撃が強すぎて衝撃に耐えられなかったか……しかし、聖剣なんだからそんな簡単に折れるんじゃねぇクソが!!」
 両断されても軋む音を立てて起き上がろうとする騎士に蹴りを叩き込んで転がすと、近くで騎士二人に接近されているイグナートの方へ向かって駆ける。
 後方から射ち込まれる遠距離術式が騎士一人を怯ませ、イグナートが渾身の拳を鎧の上から打ち込んで吹き飛ばした。
「ボウケンも悪くはないのだけれどさ。やっぱサイゴはバトルで締めなきゃね!」
「同感だな、剣が折れてなけりゃな!」
 折れた刃で盾を殴り付けて、イグナートの拳が、そして後方からエリーナの術式が騎士を打つ。
 その、瞬間。少し離れた位置でいきなり爆炎が吹き上げていた。
「っ、はぁ!?」
「うわあ、僕の銃撃でいきなり……!」
 燃え盛る騎士にデイジーが追い打ちをかけてフロア中央へ転げ落とすと、天十里がやってきた。
 その様子に思わずアランが首を傾げていると、突如やはり爆炎が別の位置で上がった。今度はオデットの魔法で騎士が燃えたという。
「……油、それもガソリン?」
 天十里が足元まで広がって来た炎から逃げながら呟く。まさか七階層からあちこちで撒かれていた液体が引火性の物だったとは想像もしたくないだろう。
「つーことは……エリーナ! 貸してくれ!」
 今の騎士達に近付きすぎるのは危険だと伝えて、アランはエリーナから一本の短剣を受け取る。宝箱から頂戴していた硝子製の短剣である。
 即座にアランは折れた聖剣を鞘に納めて一気に狐耶の方にいる騎士に向かい跳躍した。
「吹っ飛べオラァッ!!」
「~~ッ!!?」
 炎を纏った短剣の切っ先を騎士にすれ違いざまに斬りつけた瞬間、壮絶な炎を上げてフロアの中央へと落として行く。これで、六人目である。
 アランが使った硝子の短剣は割れてしまったが、これで終わりのはずだ。

「……言葉ある全ての者が寄り掛かる崩れぬ塔の名を答えろ」
「その答えはバベル。この混沌における奇跡の一端です」
 フロアの中央で倒れていた五人の騎士は全て消え、残されていたのは一人だけ。何らかの魔術で分身でもしていたのか。
 未だ息のある騎士に近付いたエリーナは彼の問いに答えた。
「あなたは何故、私達をこの迷宮に招いたのですか」
「……迷宮、だと? 馬鹿な、ここがお前達には迷宮に見えたのか。運命司る者達よ」
 騎士は年老いた老人のような声音で兜の中で嗤った。
「これは『塔』だ。決して崩れぬ、バベルを体現せし神の塔……目に見える物は美しく見えても触れれば偽物として色褪せる、この世界の模型だ。
 私は……証明するぞ、特異運命座標ども。言葉が全て通じる事が如何に人と人の争いを生むか……いずれ……」
 騎士の兜がその場に落ちる。鎧の中には空洞があるのみで何も無い。やがてその鎧も、兜も、全て黒い灰となって霧散していった。
 後に残されたのはフロア中央にいつの間にか出現していた台座、そしてヒビ割れた宝玉だけだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

●後日談
 イレギュラーズが持ち帰った宝玉にはどこかの魔術師が籠めたと思われる多重術式が発見され、これによって地下空間に描いた図面通りの迷路が出来上がったのではないかとされた。
 謎の黒騎士の『本体』は未だ存命していると見て冒険家貴族から別口の調査依頼が出されるのは、またまた別の話……
 後日他の調査機関が入ってマッピングしてみたところ『確かにこれは逆さになった塔である』と回答された。

 お疲れ様でしたイレギュラーズの皆様。
 今回はリプレイをご覧いただいた通り、ほぼ完璧な攻略となっていました。
 罠への対処、複数名による探知、隊列を組むプレイング、複数名による光源確保、各種スキルを用いての情報収集……etc
 戦闘に至るまで素晴らしいプレイングだったと思います。
 冒険の一幕をイレギュラーズの皆様には体験して頂けたかと思いますが如何でしたでしょうか、またの機会でもお楽しみいただけましたら幸いです。

 それではまたの機会をお待ちしております。
※称号を発行いたしました。

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